JP2002088074A - 酸化エチレン製造用触媒の処理方法及び酸化エチレンの製造方法 - Google Patents

酸化エチレン製造用触媒の処理方法及び酸化エチレンの製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 保存により酸化エチレンへの選択性が低下し
た触媒を、活性を低下させずに製造直後の性能に回復す
るための触媒の処理方法と、該処理後に酸化エチレンを
製造することにより高い選択性と活性で酸化エチレンを
製造することができる方法を提供する。 【解決手段】 担体に銀化合物と錯体形成剤化合物とを
含有する溶液を含浸後、焼成して得られる銀とアルカリ
金属群から選ばれる少なくとも1種の金属とを担持させ
た酸化エチレン製造用触媒を、酸化エチレンの製造に使
用するまでの間に、酸素濃度が1〜10容積%である酸
素含有ガスの雰囲気下、120〜250℃で加熱処理す
る酸化エチレン製造用触媒の処理方法及び該処理後原料
のエチレン及び酸素を導入して反応を行う酸化エチレン
の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エチレンと酸素と
の気相接触酸化による酸化エチレンの製造方法に使用す
る銀触媒の処理方法及び該触媒の加熱処理後に酸化エチ
レンを製造する方法に関する。酸化エチレンは活性水素
化合物に付加重合させて非イオン系界面活性剤の製造に
向けられる他、水を付加させてエチレングリコールとな
し、ポリエステルやポリウレタン系高分子の原料、エン
ジン用不凍液等に使用される。
【0002】
【従来の技術】エチレンと酸素との気相接触酸化により
工業的に酸化エチレンを製造する際に、使用される触媒
は銀触媒である。酸化エチレンを効率良く生産するため
に、この銀触媒の改良への要請が強く、より高活性、よ
り高選択性、より長寿命な触媒の出現が望まれている。
このため、銀の担持方法、銀の反応促進剤となるアルカ
リ金属やその他の添加成分についての検討、またはこれ
ら添加成分を担持する担体の改良等、種々の方法が提案
されている。
【0003】例えば、銀を錯体形成剤を使用して担持す
る方法として、次のような提案がなされている。例え
ば、硝酸銀にモノエタノールアミンが結合した銀錯体の
水溶液を使用する(特公昭46−19606号公報参
照)、乳酸銀水溶液を使用する方法(特開昭47−20
079号公報参照)、炭酸銀/アセチルアセトン錯体の
エタノール溶液として使用する(特公昭49−2660
3号公報参照)、シュウ酸銀/エチレンジアミン、モノ
エタノールアミン錯体の水溶液として使用する(特開昭
47−11467号公報参照)、シュウ酸銀/エチレン
ジアミン、1,3−ジアミノプロパン錯体の水溶液を使
用する(特開昭61−54242号公報参照)、及びネ
オデカン酸銀のトルエン溶液として使用する(特開昭6
0−244338号公報参照)等が挙げられる。
【0004】また、錯体形成剤を使用して銀を担持する
際に、銀化合物の分解工程の加熱方法を過熱水蒸気とす
ることで、短時間で均一な大きさの銀粒子を得る方法
が、特開昭61−71837公報及び特開平5−200
289号公報等で提案されている。一方、酸化エチレン
を工業的規模で製造する設備では、酸化エチレンの製造
に使用する触媒の量が、通常、数十トンにもおよぶた
め、触媒の製造能力にもよるが、必要量になるまで数ヶ
月以上かけて製造するのが通常である。また、触媒の製
造場所から酸化エチレンの製造設備までの輸送期間に、
数ヶ月を用する場合等もある。このような理由から触媒
は、1年間近く保存した後、酸化エチレンの製造に使用
されるのが一般的である。
【0005】他方、工業的に使用するための触媒の製造
方法として、バンド式加熱装置のように、連続的に触媒
を装置に投入し、加熱処理により銀化合物を分解して銀
を担持させる方法により、大規模に製造する方法が採用
されている。その際に使用する雰囲気ガスとしては、窒
素等の不活性ガス、過熱水蒸気、空気、酸素と不活性ガ
スとの混合が使用されて、雰囲気ガスは大部分が循環さ
れ、その一部が系外に排出され、排出した分、新たな雰
囲気ガスを追加して加熱処理が行われている。
【0006】雰囲気ガスの一部を系外に排出するのは、
雰囲気ガスに、銀化合物又は銀錯体の分解により生成す
る錯体形成剤化合物、その分解物、そして、銀化合物と
錯体形成剤化合物とを溶解するために使用した溶媒が含
まれることになるため、雰囲気ガスに含まれた錯体形成
剤化合物やその分解物が触媒に吸着されたり、また、溶
媒が充満することにより加熱処理が不十分となり、触媒
が完全に乾燥されないことがあることを防止するためで
ある。
【0007】しかしながら、排出量を多くすることは、
経済的に好ましくなく、通常は、若干量の排出を行うこ
とで錯体形成剤化合物やその分解物の蓄積を抑制して触
媒を製造しているのが現状である。このようにして製造
された触媒には、錯体形成剤由来と思われる有機物及び
その分解物が、約0.1〜0.5重量%残存しているこ
とがある。通常、この程度の残存量は、触媒製造直後の
触媒を使用して酸化エチレンを製造するには、何ら影響
を及ぼすものではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、理由は
明らかではないが、触媒を長期間保存していると、触媒
の製造において、焼成後触媒に微量残存した銀の担持に
使用した錯体形成剤化合物、またはその分解物が何らか
の作用を触媒に及ぼすために、酸化エチレンの選択性が
数%のオーダーで低下して、酸化エチレンの製造コスト
に大きな悪影響を及ぼすことが分かった。
【0009】本発明の目的は、保存により酸化エチレン
への選択性が低下した触媒を、製造直後の性能に回復す
るための触媒の処理方法と、該処理後に酸化エチレンを
製造することにより高い選択性及び活性で酸化エチレン
を製造することができる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に記載
の発明は、担体に銀化合物と錯体形成剤化合物とを含有
する溶液を含浸後、焼成して得られる銀とアルカリ金属
群から選ばれる少なくとも1種の金属とを担持させた酸
化エチレン製造用触媒を、酸化エチレンの製造に使用す
るまでの間に、酸素濃度が1〜10体積%である酸素含
有ガスの雰囲気下、120〜250℃で加熱処理する酸
化エチレン製造用触媒の処理方法に関するものであり、
また、請求項7に記載の発明は、担体に銀化合物と錯体
形成剤化合物とを含有する溶液を含浸後、焼成して得ら
れる銀とアルカリ金属群から選ばれる少なくとも1種の
金属とを担持させた酸化エチレン製造用触媒の存在下、
エチレンと酸素との気相接触酸化により酸化エチレンを
製造する方法において、反応前に該触媒を酸化エチレン
製造用反応管に充填し、酸素濃度が1〜10体積%であ
る酸素含有ガスの雰囲気下、120〜250℃で加熱処
理を行った後、原料のエチレン及び酸素を導入して反応
させる酸化エチレンの製造方法に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に使用する触媒は、担体に銀とアルカリ金属群か
ら選ばれる少なくとも1種の金属とを担持した触媒であ
る。そして、担体に銀を担持させるには、銀化合物と錯
体形成剤化合物とを含有する溶液を含浸後、焼成する。
触媒に使用する担体としては、アルミナ、炭化ケイ素、
チタニア、ジルコニア及びマグネシア等の耐火物が挙げ
られる。そのうち主成分がα−アルミナである耐火物が
最終的な触媒の性能の面から好ましい。
【0012】また、この担体は、それ自体で使用する他
に、担体にアルカリ金属群の少なくとも1種の金属を含
有する溶液を含浸し、乾燥を行った担体として使用する
こともできる。担体にアルカリ金属を担持した担体が、
最終的に得られる触媒としての性能向上の面から好まし
い。担体にアルカリ金属を含有する溶液を含浸させる方
法としては、アルカリ金属化合物を含有する溶液中に担
体を浸漬する方法、又は該溶液を担体に噴霧する方法等
が挙げられる。
【0013】担体に担持するアルカリ金属群としては、
セシウム、リチウム及びナトリウム等が挙げられる。ま
た、乾燥温度は、アルカリ金属を含有する溶液に使用し
た溶媒が、蒸発除去される温度であればよい。工業的に
は、120〜500℃、操作上好ましくは120〜25
0℃が採用できる。乾燥工程の雰囲気としては、窒素、
ヘリウム及びアルゴン等の不活性ガス、空気、酸素と不
活性ガスの混合物及び過熱水蒸気が使用できる。そのう
ち、過熱水蒸気を使用する方法が、最終的に得られた触
媒中でのアルカリ金属の分布が均一となるため好まし
い。
【0014】次に、前記した担体、すなわち担体それ自
体又はアルカリ金属を担持した担体に、銀とアルカリ金
属を担持させる。銀の担持の方法は、銀化合物と錯体形
成剤化合物とを含有する溶液を担体に含浸後、焼成す
る。溶液中の銀濃度は、最終的に得られる触媒に対し
て、5〜30重量%の担持量となるように決定される。
一方、アルカリ金属の担持は、アルカリ金属化合物を、
銀化合物と錯体形成剤化合物とを含有する溶液に一緒に
添加して行うことが簡便であり好ましいが、初めに銀を
担持後、アルカリ金属を含有する溶液に含浸後、焼成し
て担持することもできる。
【0015】銀化合物としては、500℃以下、好まし
くは300℃以下、より好ましくは260℃以下の温度
で分解して銀を析出する化合物であればよい。具体的な
銀化合物の例としては、酸化銀、硝酸銀、炭酸銀、硫酸
銀や酢酸銀及びシュウ酸銀等の各種カルボン酸銀等が挙
げられる。なかでも、分解温度の低さから、シュウ酸銀
が好ましい。
【0016】錯体形成剤化合物としては、アンモニア、
アミン化合物及びカルボニル基又はカルボキシル基を有
する化合物等が挙げられる。アミン化合物の具体例とし
ては、例えば、モノアミン、ポリアミン及びアルカノー
ルアミン等が挙げられる。このうち、モノアミンとして
は、ピリジン、アセトニトリル及び炭素数が1〜6のア
ミン類等が挙げられ、ポリアミンとしては、エチレンジ
アミン及び1,3−ジアミノプロパン等が挙げられる。
アルカノールアミンとしては、エタノールアミン等が挙
げられる。なかでも、エチレンジアミン及び1,3−ジ
アミノプロパンが最終的に得られる触媒の性能面から好
ましく、特に両者の混合物が好ましい。また、カルボニ
ル基を有する化合物の具体例としては、アセチルアセト
ン等が、カルボキシル基を有する化合物の具体例として
は、ネオデカン酸等が挙げられる。 銀化合物と錯体形
成剤化合物とを溶解させるための溶媒としては、水溶液
が操作の簡便さから最も好ましいが、アルコール等を加
えた水溶液又はトルエン等の有機溶媒も使用することが
できる。アルカリ金属としては、前記の担体に使用した
金属が使用できるが、そのうち少なくともセシウムを含
有することが最終的な触媒の性能面から好ましい。アル
カリ金属は、金属そのもの又は有機金属化合物を使用す
ることができるが、使用上の簡便さから、アルカリ金属
水酸化物及びアルカリ金属塩が好ましい。アルカリ金属
塩としては、ハロゲン化物塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸
塩、重炭酸塩及び硫酸塩が挙げられる。
【0017】銀化合物と錯体形成剤化合物とを含有した
溶液を担体に含浸させる方法としては、該溶液中で担体
を浸漬する方法又は該溶液を担体に噴霧する方法等が挙
げられる。銀化合物又は銀化合物と錯体形成剤化合物か
ら合成された銀錯体の焼成の方法は、含浸担体を固定床
又は移動床の形で、単層又は多層に堆積させ、加熱した
雰囲気ガスを含浸担体に接触させて行う方法が採用でき
る。雰囲気ガスは、含浸担体に対して上方、下方、斜め
上方又は斜め下方等から流通させる方法が一般的であ
る。生産性の面から、含浸担体を移動床の形態で連続的
に投入し、多層焼成する方法が好ましい。
【0018】触媒を製造する際に使用する雰囲気ガス
は、窒素、ヘリウム及びアルゴン等の不活性ガス、空
気、酸素と不活性ガスとの混合物及び過熱水蒸気が使用
できる。なかでも、過熱水蒸気を使用する方法が、最終
的に得られた触媒中での銀及びアルカリ金属の分布が均
一となるために好ましい。焼成の温度と時間は、銀が担
体上に析出する条件を選択すればよく、一般的には、1
20〜500℃、30分〜24時間で行うことができ
る。
【0019】雰囲気ガスとして、過熱水蒸気を使用した
場合の焼成温度は、120〜300℃、好ましくは13
0〜260℃で行われ、焼成時間は、焼成する含浸担体
の量、過熱水蒸気の温度及びその流速にもよるが、1分
〜3時間が適当である。実用性及び触媒の性能の面から
時間は短い方が好ましく、通常3〜30分が好ましい。
過熱水蒸気の流速は、最終的に得られる触媒の性能面か
ら0.3〜5m/秒が好ましい。
【0020】また、焼成中は雰囲気ガスの一部を系外に
パージすることが必要であり、例えば、過熱水蒸気で焼
成する場合には、含浸担体の投入量、過熱水蒸気の循環
量及び焼成の温度と時間にもよるが、約10体積%を系
外へパージして行い、錯体形成剤化合物やその分解物の
蓄積を抑制するように製造する。このような方法で得ら
れた触媒の錯体形成剤化合物及びその分解物の有機物残
存量は平均で0.1〜0.5重量%である。
【0021】この際の有機物残存量とは、熱重量測定及
び示差熱分析を併用して求めた値である(TGーDT
A)。TGーDTA測定方法については、社団法人日本
化学会編(1992年)「第4版実験化学講座4 熱・
圧力」の57〜77ページ(丸善株式会社、平成4年2
月5日発行)を参考に行った。具体的には、触媒を空気
気流中で、温度が約225℃から275℃まで昇温した
際に、有機物及びその分解物の燃焼除去に由来すると思
われる発熱と重量減少が起こることから、錯体形成剤化
合物及びその分解物の有機物残存量は、該重量減少より
算出した値である。 本発明の処理方法では、前記の方
法により得られた酸化エチレン製造用触媒を酸化エチレ
ンの製造に使用するまでの間に、酸素濃度が1〜10体
積%である酸素含有ガスの雰囲気下、120〜250℃
で加熱処理することが必要である。ここで、酸素含有ガ
スの酸素以外のガス成分としては、処理温度において、
酸素と反応しない不活性なガス成分であれば、どのよう
なガスでも使用できる。具体的なガス成分としては、窒
素、ヘリウム及びアルゴン等の不活性ガス、また、メタ
ン等の飽和炭化水素等が挙げられる。
【0022】120〜250℃で加熱処理するとは、処
理を行う触媒の温度が所定温度に維持されていることを
いう。具体的には、例えば、所定温度に加熱した酸素含
有ガスの雰囲気ガスを触媒に対して十分量接触させて、
触媒を所定温度まで加熱して処理する、又はヒータ等で
触媒を所定温度まで加熱する等の方法が採用できる。加
熱処理温度が250℃を超える場合は、銀粒子がシンタ
リングを起こし、また、120℃未満の場合は触媒性能
向上の効果が不十分なため好ましくない。この処理を行
うことにより、保存により低下した酸化エチレンの選択
性を触媒製造直後の性能にまで回復することができる。
【0023】加熱処理方法としては、触媒を固定床又は
移動床の形で、単層又は多層に堆積させ、加熱した酸素
含有ガスを触媒に接触させて行う方法が採用できる。酸
素含有ガスは、触媒に対して上方、下方、斜め上方又は
斜め下方等から流通させる方法が一般的である。固定床
の設備としては、箱形の乾燥機やマッフル炉等または酸
化エチレン製造用反応管のような加熱可能な管を使用す
ることができ、また、移動床の設備としては、バンド式
乾燥機等を使用することができる。
【0024】処理を行う時期は、触媒を製造した後から
酸化エチレンの製造までに行えばよく、酸化エチレンを
製造する直前に行うのが、装置及び工程上簡便で好まし
く、その際は、触媒を酸化エチレン製造用反応管中に充
填して処理を行った後、すぐに酸化エチレンの製造工程
に入れるので好ましい。本発明の処理方法において、保
存により低下した選択性を回復するには酸素ガスが必要
であるが、酸素濃度が高いガスで処理を行うと、活性が
低下してしまう。更に、酸素濃度が高い場合には、酸化
エチレンの反応を行うために反応原料ガスを導入する際
に、予め反応管内の酸素ガスを不活性ガスで置換するこ
とが必要となる。この理由は、処理に使用した酸素ガス
が残っていると酸化エチレンの反応を行うために反応原
料ガスを導入した際、酸素濃度が爆発範囲内となってし
まい、爆発を起こす可能性があり、安全性の点で好まし
くない。
【0025】また、置換に要する時間は、反応器内への
ガスの導入量及び排気量、反応器の内容積、反応原料ガ
スを導入する時の酸素濃度等にもよるが、同じ条件の場
合、酸素濃度が5体積%のガスと酸素濃度が20体積%
のガスでは、酸素濃度が20体積%のガスの方が、酸素
濃度が5体積%のガスより置換に要する時間が約2倍必
要となる等、生産性においても好ましくない。
【0026】そのために酸素濃度は1〜10体積%であ
ることが必要である。また、酸素濃度が1〜3体積%で
あると、該処理を酸化エチレン製造用反応管に触媒を充
填して行う場合に、その後の酸化エチレンを製造するた
めに反応原料ガスを導入する際、不活性ガスによる置換
工程を経ずに、直ちに原料のエチレン及び酸素等の反応
ガスを導入し、酸化エチレンの製造を開始することがで
きるので、好ましい。
【0027】該処理中における酸素含有ガスは、流通さ
せなくとも処理は可能だが、流通させることが処理の効
果上有効であり、触媒の処理効率も高く好ましい。酸素
含有ガスの流量は、GHSV換算で、100〜1000
0hr-1が可能であるが、操作の容易さから、100〜
7500hr-1が好ましく、更に500〜5000hr
-1が好ましい。ここで、GHSVとは、0℃、常圧下に
おける触媒単位体積あたりのガス流量で定義される。加
熱処理時間は、酸素濃度と処理温度に依存するが、1〜
48時間で行うのが操作上現実的であり、好ましくは1
〜24時間である。加熱処理時の圧力は、減圧下でも加
圧下でも可能であるが、0.1〜4MPa(0〜39k
g/cm2G)が操作上好ましく、0.1〜2MPa
(0〜19kg/cm2G)が更に好ましい。
【0028】本発明による酸化エチレンの製造方法は、
前記の処理をした触媒を使用して、従来公知の方法で行
うことができる。装置及び方法の簡便さから、処理をし
ない触媒をまず、酸化エチレン製造用反応管に充填し、
その後、前記した処理を行った後、原料のエチレンと酸
素を導入して反応させるのが好ましい。従来公知の方法
としては、例えば、反応原料ガスの組成は、エチレンが
1〜40体積%、酸素分子が1〜20体積%の混合ガス
が用いられ、また、一般に希釈剤、例えばメタンや窒素
ガスを一定割合、例えば1〜70体積%を共存させ、酸
素源としては、空気を反応原料ガスに直接導入するか、
又は工業用酸素を使用して、反応原料ガスの流量は、前
記により定義されたGHSVで、1000〜10000
hー1、また、反応圧力は0.1〜4MPa(0〜39k
g/cm2G)、反応温度は180〜350℃、好まし
くは200〜300℃で行うことができる。なお反応原
料ガスに、更に、反応改変剤として、例えばハロゲン化
炭化水素を0.1〜50体積ppm程度を加えて行う
と、触媒中のホットスポットの形成を防止でき、かつ触
媒の性能、特に選択性が大幅に改善されるので好まし
い。
【0029】
【実施例】本発明を実施例及び比較例により具体的に説
明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。なお、実施例及び比較例で使用した触媒は、次
のように調製した。また、錯体形成剤化合物及びその分
解物の有機物残存量は次の通りに測定、算出した。
【0030】〈有機物残存量〉社団法人日本化学会編
(1992年)「第4版実験化学講座4 熱・圧力」の
57〜77ページ(丸善株式会社、平成4年2月5日発
行)に記載のTGーDTA測定を参考に行った。有機物
残存量は、触媒を空気気流中で、温度が約225℃から
275℃まで昇温した際の重量減少から算出した値であ
る。
【0031】〈触媒の調製〉αーアルミナ担体(表面積
1.04m2/g、吸水率32.3%、平均細孔径1.
4μm、シリカ含有量3.0重量%、8φ×3φ×8m
mのリング状)50gを炭酸リチウム(Li2CO3
0.94gと炭酸セシウム(Cs2CO3)0.087g
が溶解した水溶液100mLに浸漬させ、余分な液を切
り、次いで、これを150℃の過熱水蒸気にて15分
間、2m/秒の流速で加熱し、リチウム(568重量p
pm)とセシウム(227重量ppm)成分を担持した
担体を調製した。 次に、硝酸銀(AgNO3)228
gとシュウ酸カリウム(K224・H2O)135gを
各々1Lの水に溶解した後、水溶液中で60℃に加温し
ながら徐々に混合し、シュウ酸銀の白色沈殿を得た。濾
過後、沈殿物を蒸留水により洗浄して得られたシュウ酸
銀(Ag224、含水率19.47%)の一部である
12.3gを、エチレンジアミン3.42g、1,3−
ジアミノプロパン0.94g、及び水4.54gよりな
るアミン混合水溶液に徐々に添加し、溶解させ、銀アミ
ン錯体溶液を調製した。
【0032】この銀アミン錯体溶液に、塩化セシウム
(CsCl)1.14重量%と硝酸セシウム(CsNO
3)1.98重量%を含有する混合水溶液1mLを攪拌
しながら添加した。該混合液に、更に、水酸化バリウム
八水和物(Ba(OH)2・8H2O)水溶液1mL
(0.66重量%濃度)を添加した。そして、前記で調
製したリチウムとセシウムを担持したαーアルミナ担体
50gと前記方法で調製したセシウム及びバリウムを含
有する銀アミン錯体溶液とを、エバボレーターに入れ、
エバポレーター中で減圧下、40℃の加温中で含浸し
た。その後、該含浸担体を、200℃の過熱水蒸気に
て、2m/秒流速の気流中に15分間保持し、触媒を調
製した。なお、触媒は、酸化エチレンの製造に使用する
までの間、ポリエチレン製袋(0.1mm厚)中に密閉
し、屋内で保存した。 得られた触媒の銀(Ag)、セ
シウム(Cs)、リチウム(Li)及びバリウム(B
a)の担持率は、それぞれ12重量%、590ppm、
470ppm及び47ppmであった。また平均の有機
物残存量は、0.2重量%であった。
【0033】
【実施例1】18ヶ月間保存した触媒を、6〜10メッ
シュに破砕し、その3mLを内径7.5mmのSUS製
反応管に充填した。その後、酸素濃度1%残りが窒素で
あるガスを、ガス量GHSV換算で4300hr-1で供
給し、加熱温度は190℃、処理時間は2時間、系内の
圧力は0.8MPa(7kg/cm2G)で処理を行っ
た。処理後、反応ガス(エチレン30%、酸素8.5
%、塩化ビニル1.5ppm、二酸化炭素6.0%、残
り窒素)を、GHSV4300hr-1、圧力0.8MP
a(7kg/cm2G)で流通させ反応を行い酸化エチ
レンを製造した。触媒性能は、反応を開始して1週間経
過後の触媒活性と酸化エチレンへの選択性で表した。な
お、触媒活性は酸素転化率が40%になるときの反応温
度T40(℃)、選択性は酸素転化率40%におけるエ
チレン基準の酸化エチレンへの選択率S40(%)であ
る。活性T40(℃)及び選択性S40(%)の結果を
表1に示す。
【0034】
【実施例2〜13、比較例3】実施例1において、18
ヶ月保存した触媒を、表1に示す酸素含有ガスの酸素濃
度、処理時間及び温度に代えて処理を行った。処理後、
実施例1と同様な方法で反応を行い酸化エチレンを製造
した。活性T40(℃)及び選択性S40(%)の結果
を表1に示す。
【0035】
【実施例14】実施例6において、ガス量をGHSV換
算で1600hr-1に代えて処理を行った。処理後、実
施例1と同様な方法で反応を行い酸化エチレンを製造し
た。活性T40(℃)及び選択性S40(%)の結果を
表1に示す。
【0036】
【比較例1】実施例1において、18ヶ月保存した触媒
に本発明の処理を行わず行わなかった他は、実施例1と
同様な方法で反応を行い酸化エチレンを製造した。活性
T40(℃)及び選択性S40(%)の結果を表1に示
す。
【0037】
【比較例2】実施例1において、18ヶ月保存した触媒
を100%窒素ガスの雰囲気下で処理を行った。処理
後、実施例1と同様な方法で反応を行い酸化エチレンを
製造した。活性T40(℃)及び選択性S40(%)の
結果を表1に示す。
【0038】
【比較例4】実施例1において、18ヶ月保存した触媒
をマッフル炉(内径:15cm×15cm×15cm、
ヤマト科学(株)社製)に投入し、マッフル炉内の空気
中(酸素濃度20%の酸素含有ガス)で、加熱温度30
0℃、加熱処理時間4時間、大気圧に代えた他は、実施
例1と同様な方法で処理を行った。処理した触媒3mL
を内径7.5mmのSUS製反応管に充填し、実施例1
と同様な方法で反応を行い酸化エチレンを製造した。活
性T40(℃)及び選択性S40(%)の結果を表1に
示す。
【0039】
【比較例5】比較例4において、加熱温度を500℃に
代えて処理を行った。処理後、同様な方法で反応を行い
酸化エチレンを製造した。活性T40(℃)及び選択性
S40(%)の結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】本発明の処理方法を行うと、保存により
低下した触媒の酸化エチレンへの選択性を活性を低下さ
せずに回復することができ、また、この処理後、酸化エ
チレンを製造することで高い選択性及び活性で酸化エチ
レンを製造することができる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 担体に銀化合物と錯体形成剤化合物とを
    含有する溶液を含浸後、焼成して得られる銀とアルカリ
    金属群から選ばれる少なくとも1種の金属とを担持させ
    た酸化エチレン製造用触媒を、酸化エチレンの製造に使
    用するまでの間に、酸素濃度が1〜10体積%である酸
    素含有ガスの雰囲気下、120〜250℃で加熱処理す
    ることを特徴とする酸化エチレン製造用触媒の処理方
    法。
  2. 【請求項2】 酸素含有ガスの酸素濃度が1〜3体積%
    であることを特徴とする請求項1に記載の触媒の処理方
    法。
  3. 【請求項3】 酸素含有ガスの酸素以外のガスが不活性
    ガスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の触
    媒の処理方法。
  4. 【請求項4】 酸素含有ガスの雰囲気下での加熱処理が
    酸素含有ガスを流通させて行うことを特徴とする請求項
    1〜3のいずれかに記載の触媒の処理方法。
  5. 【請求項5】 錯体形成剤化合物がアミン化合物である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の触媒
    の処理方法。
  6. 【請求項6】 酸化エチレン製造用触媒を得る際の焼成
    が、過熱水蒸気を用いて行うことを特徴とする請求項1
    〜5のいずれかに記載の触媒の処理方法。
  7. 【請求項7】 担体に銀化合物と錯体形成剤化合物とを
    含有する溶液を含浸後、焼成して得られる銀とアルカリ
    金属群から選ばれる少なくとも1種の金属とを担持させ
    た酸化エチレン製造用触媒の存在下、エチレンと酸素と
    の気相接触酸化により酸化エチレンを製造する方法にお
    いて、反応前に該触媒を酸化エチレン製造用反応管に充
    填し、酸素濃度が1〜10体積%である酸素含有ガスの
    雰囲気下、120〜250℃で加熱処理を行った後、原
    料のエチレン及び酸素を導入して反応を行うことを特徴
    とする酸化エチレンの製造方法。
  8. 【請求項8】 酸素含有ガスの雰囲気下での加熱処理が
    酸素含有ガスを流通させて行うことを特徴とする請求項
    7記載の酸化エチレンの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116474769A (zh) * 2023-04-06 2023-07-25 武汉工程大学 一种反应气体诱导提高乙烯环氧化反应体系催化剂活性的方法

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