JP2002086510A - 網目フィルター用金型およびその成形品 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】 射出成形による狭いピッチで大型の網目構
造の製品の製造において、網部の中心部や周辺でリブ抜
けの発生が防止できる金型の提供。 【解決手段】（ａ）上型および／または下型に、ストラ
イプ状または格子状に形成された網溝２ （ｂ）上型および／または下型の網溝２上に形成され、
枠体溝１とは直接連通しない複数の略十字状の誘導帯溝
５であって、それぞれを略対称に配置した複数の誘導帯
溝５ （ｃ）網溝２上に形成された複数の誘導帯溝５間には、
熔融材料の流動を阻害、抑制する仕切り的な作用をする
溝を設けない網溝２ （ｄ）網溝２および複数の誘導帯溝５を囲うように、上
型および／または下型に形成される枠体溝１ （ｅ）熔融材料を金型内に注入するために、上型または
下型の複数の誘導帯溝上に設けられた複数のゲート９を
有する金型。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、自動車、電子機器用の
オイル又はエアフィルター、厨房用品や水まわり品を含
む日用雑貨品のフィルターなどの各種フィルターにも当
然適用できるが、特にエアコン、網戸などの大型の一体
成形フィルターに利用して好適な網目フィルター用金型
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種枠体部を有する網目状フィ
ルターや薄板状成形品は、成形の難しさから一体成形で
はなくインサート成形をするのが常識であった。しか
し、インサート成形では工数が多くなることからコスト
アップになり、さらに枠体部分と網目との合わせが重要
でありそのためには熟練工や高価な位置決め装置や溶着
装置が必要であった。その中で、一体成形を試みたもの
もあるが以下の欠点があった。 （１）注入圧力を低圧にして熔融プラスチック材料を注
入すれば材料が末端まで到達せずにゲートから遠い部分
では網目リブや薄板の一部が抜けたり欠けたりする。 （２）注入圧力を高圧にすれば、網目リブ抜けや薄板の
一部の欠けは改善されるものの、そのためには装置を大
型化しなければなならず、また、網目リブの場合はリブ
間が閉塞されるバリが生じて、フィルターまたはネット
としての機能を果たさず、バリを極力少なくするために
は製造工程での圧力調整等が大変であった。 上記欠点は、本出願人の誘導帯技術によって既に解消さ
れている。その誘導帯技術というのは、射出成形する場
合に、ゲートから流入する熔融材料を、網溝よりも太径
の誘導帯溝で一定圧力を蓄えてから連通する細い網溝に
圧入するので熔融材料は網溝の末端まで流入するように
働き、低圧成形で微細な網目フィルターの成形を可能と
するものである。しかし、その誘導帯技術をもってして
も大型のフィルターを得ようとすると、以下の更なる欠
点が生じた。 （３）誘導帯技術により、１００ｍｍ角程度の面積のフ
ィルターは問題なくできるものの、３００角ｍｍ以上の
フィルターの場合は、非常に間隔の狭い網溝に無理やり
熔融材料を流し込もうとすることで、そのために高温の
熔融材料から発生するガスまたはエア金型内に滞留し、
注入圧力を高くしても熔融材料が細溝の末端までまわり
きれないという欠点があった。 （４）末端でのリブ抜けをなくするために、無理に注入
圧力を高くすると、今度はバリが生じて、とてもフィル
ターとしての役目を果たせないようなものになってしま
うという欠点があった。 （５）３００ｍｍ角以上の大型フィルターの場合は、フ
ィルターの強度補強やの流動力の強化のために、網部を
分断するような形で太径／幅広の補強リブを設けていた
が、この補強リブが熔融材料のスムースな流動を逆に妨
げる、という欠点が生じた。 （６）また、射出圧力も高くする必要があったことか
ら、そのために成形装置を大型化しなければなならず、
安価な汎用成形機では成形できなかった。 （７）さらに、流動性を良くするために樹脂温を上げる
必要があり、そのために高価なホットランナーを採用し
たり、金型の温度調節を相当高めに設定する必要があっ
た。これら（１）から（７）の欠点を解決するために、
本出願人は誘導帯を有するプラスチックフィルターまた
は誘導帯溝を有する金型等の改良手段を以下の出願にお
いて提案済みである。特公平第７−２０６７７号、特開
平６−１２６７８４号、特開平６−１５５５３１号、特
開平７−５２１６４号、特開平７−１３７１６６号、特
開平７−２８４６１７号などがある。しかし、さらに成
形性や歩留まりが良く、バリなども無い完全な成形品を
得るためには、もう一段の工夫が必要であった。先行技
術としては、プラスチック性のザルや、台所用排水口の
ゴミ受け皿製品があるが、いずれも単に、太くて幅広で
ある溝と細い網溝との組合せだけの構成であり、熔融材
料の流れが悪く大型の網目フィルターはできなかった。
また、成形効率または成形能力が低く、網目および網糸
の幅が１ｍｍ未満の微細な網目製品で、かつ、３００ｍ
ｍ角以上の大型フィルターには適用できない程度のもの
であった。

【０００３】

【本発明が解決しようとする課題】射出成形による狭い
ピッチで大型の網目構造の製品、例えばエアコン用のフ
ィルターや網戸などの体成形には、以下の課題がある。 （１）金型内にガスまたはエアをあまり生じさせない金
型構造が必要である。 （２）金型全体に熔融材料を均一に行き渡らせる金型構
造が必要である。 （３）熔融材料の流動性を高めるとともに、熔融材料の
まわりにくい部分でのリブ抜けや厚肉部分でのヒケが生
じにくい金型構造が必要である。 （４）成金型内にガスまたはエアは必ず生じるものなの
で、その影響を避けるためには、一枚ものの金型で成形
をすることが必要である。複数の入れ子の組合せでは、
その間隙がガスやエアで変化を来たして、金型メンテナ
ンスにも非常に手間がかかる。 （５）フィルターの強度補強やの流動力の強化のため
に、太径／幅広の補強リブを設けていたが、この補強リ
ブが熔融材料のスムースな流動を逆に妨げ、網部の中心
部や周辺でリブ抜けが生じやすく、リブ抜けを解消する
ために射出圧力を高めるとバリが生じる。 （６）また、射出圧力も高くする必要があったことか
ら、そのために成形装置を大型化しなければなならず、
安価な汎用成形機では成形できなかった。 そこで本発明は、以下に述べる手段により従来の射出成
形の欠点を解決しようとするものである。

【０００４】

【問題を解決するための手段】本発明の金型は、以下の
ことを特徴とするものである。請求項１においては、上
型と下型を押し合わせるとともにゲートを介して熔融材
料を注入することで枠付きの網目フィルター成形品を成
形する金型装置において、以下の構成であることを特徴
とする網目フィルター用金型。 （ａ）上型および／または下型に、ストライプ状または
格子状に形成された網溝 （ｂ）上型および／または下型の網溝上に形成され、枠
体溝とは直接連通しない複数の略十字状の誘導帯溝であ
って、それぞれを略対称に配置した複数の誘導帯溝 （ｃ）網溝上に形成された複数の誘導帯溝間には、熔融
材料の流動を阻害、抑制する仕切り的な作用をする溝を
設けない網溝 （ｄ）網溝および複数の誘導帯溝を囲うように、上型お
よび／または下型に形成される枠体溝 （ｅ）熔融材料を金型内に注入するために、上型または
下型の複数の誘導帯溝上に設けられた複数のゲート 請求項２においては、前記請求項１に加えて、網溝の中
心部分に、網溝より太径または幅広の帯体溝を設けて、
網溝の中心部の流動力を増強したことを特徴とした網目
フィルター用金型。請求項３においては、前記請求項１
に加えて、枠体溝と直結またはその近傍部分に、網溝よ
り太径または幅広の帯体溝を設けて、網溝の周辺部の流
動力を増強したことを特徴とした網目フィルター用金
型。請求項４においては、上型と下型を押し合わせると
ともにゲートを介して熔融材料を注入することで枠付き
の網目フィルター成形品を成形する金型装置において、
以下の構成であることを特徴とする網目フィルター用金
型。 （ａ）上型および／または下型に、ストライプ状または
格子状に形成された網溝 （ｂ）上型および／または下型の網溝上に形成され、枠
体溝とは直接連通しない複数の略十字状の誘導帯溝であ
って、それぞれを略対称に配置した複数の誘導帯溝 （ｃ）網溝上に形成された複数の誘導帯溝間には、熔融
材料の流動を阻害、抑制する仕切り的な作用をする溝を
設けない網溝 （ｄ）網溝および複数の誘導帯溝を囲うように、上型お
よび／または下型に形成される枠体溝 （ｅ）熔融材料を金型内に注入するために、上型または
下型の複数の誘導帯溝上に設けられた複数のゲート （ｆ）上型および／または下型の網溝上に少なくとも一
本以上形成され、網溝より太径または幅広で、かつ、誘
導帯溝より細径または幅狭の中線溝 請求項５においては、前記請求項４に加えて、複数の中
線溝の間に、網溝より太径または幅広で、かつ、中線溝
よりも細径または幅狭の細線溝を設けることを特徴とし
た網目フィルター用金型。 請求項６においては、前記請求項４に加えて、複数の中
線溝のうち、網溝２の中心部に配置された中線溝の間を
結合するように、少なくとも一本以上の結合溝設けるこ
とを特徴とした網目フィルター用金型。請求項７におい
ては、上型と下型を押し合わせるとともにゲートを介し
て熔融材料を注入することで枠付きの網目フィルター成
形品を成形する金型装置において、以下の構成であるこ
とを特徴とする網目フィルター用金型。 （ａ）上型および／または下型に、ストライプ状または
格子状に形成された網溝 （ｂ）上型および／または下型の網溝上に形成され、枠
体溝とは直接連通しない複数の略十字状の誘導帯溝であ
って、それぞれを略対称に配置した複数の誘導帯溝 （ｃ）網溝上に形成された複数の誘導帯溝間には、熔融
材料の流動を阻害、抑制する仕切り的な作用をする溝を
設けない網溝 （ｄ）網溝および複数の誘導帯溝を囲うように、上型お
よび／または下型に形成される枠体溝 （ｅ）熔融材料を金型内に注入するために、上型または
下型の複数の誘導帯溝上に設けられた複数のゲート （ｆ）熔融樹脂を金型内に注入するためのゲートであっ
て、プラスチック製品の形状や大きさに合わせてゲート
径を１．５φ以上の大きさで形成したピンポイントゲー
ト 請求項８においては、前記請求項１ないし７に加えて、
網目フィルター用金型により得られる成形品。

【０００５】

【発明の実施の形態】

【実施例】図１は、本発明のプラスチックフィルター用
金型の上型の平面図を示すもので、横方向のみの細溝で
ある網溝２とそれを囲う形の枠体溝１が形成されてい
る。なお、本発明における熔融材料は、プラスチック樹
脂を使うことで説明するが、熔融材料であれば紙などと
の混合材料であっても良い。フィルターを構成する網溝
２の上には熔融材料の流動を促進するための太径の中線
溝３が、網溝２と直交するように縦方向に複数本略等間
隔に配置されている。本図においては、縦方向のみ図示
しているが、フィルターの形状、大きさによっては縦横
に複数本ずつの溝として略対照に形成されても良い。図
示はしないが、下型にも上型と同様に横方向のみの網溝
２とそれを囲う形の枠体溝１が形成されている。本図の
ストライプ型フィルターにおいては、網溝２は横網溝７
により一方向にしか形成されていないので、金型内の熔
融材料の流動が細い溝の間で互いにぶつかり合うことが
なく流動性が非常に良くなる。図示はしないが、上型と
下型に対称に横網溝７を設けることによって、垂直方向
にテーパーをつけて切削される形になる上型と下型のそ
れぞれの横網溝７は、上型と下型の網溝２で菱形または
円形状の網溝２を形成することになるので、その空間容
積は非常に大きく特に網溝２の中心部は膨らみをもつこ
とになり、熔融材料が流動中または流動後にできる円形
状の内層スキンにとっては適した溝形状になる。さら
に、上型と下型に一方向の網溝２をそれぞれ対称に形成
して押し合わす構成としたので、金型内の熔融材料の流
動が細い溝の間で互いにぶつかり合うことがなく、流動
が格段にスムースになる。その結果低い射出圧力であり
ながら、大面積の成形品や微細網目の成形品が歩留まり
良く大量に成形が可能になる。本出願人の実験でも、通
常２００角や１１０角の格子状の網目フィルターを作ろ
うとした場合は射出圧力が１００Ｋｇ以上必要であった
ものが、８０Ｋｇ前後、場合によっては６０Ｋｇ前後で
も簡単に成形できた。また、通常２００トン前後の型締
力が必要であったものが、１００トン未満の小さな型締
力でも簡単にできてしまう。さらに一方向だけの溝の押
し合わせなので格子状の溝とは異なり型離れも非常に良
く、ショット数をあげることが可能となり短い成形時間
で微細網目の成形品ができる。したがって、上述の金型
で成形されるストライプ状の網目フィルターで、網戸の
ような超大型のフィルターが得られる。ただこのこと
が、格子状の網目フィルターは不適当ということを意味
するのではなく、フィルターの形状または網目の太さに
よっては格子状の網目フィルターの方が有利な場合もあ
る。特に強度が必要なフィルターにおいては、格子状の
網目フィルターが必須である。しかし、上記の技術で
も、３００ｍｍ角以上の大型フィルターを作る場合に
は、きわめてわずかではあるが、リブ抜けの現象が生
じ、これをなくするために注入圧力を高めると今度はバ
リが生じるという欠点があった。略十字状で太径の誘導
帯溝５は、網溝２上に配置され、この十字状の誘導帯５
の中心部にゲート９が設けられる。誘導帯５の先端は、
枠体溝１の方向に伸びているものの、枠体溝１には直結
されない。従って、誘導帯溝５の中心にあるゲート９か
ら熔融材料が注入されると、その熔融材料は網溝２に流
入してゆく。この際、誘導帯溝５はその先端が細径の網
溝２上で閉じた形になっているので、注入された熔融材
料を一旦蓄圧する働きをする。そして熔融材料の注入が
続くとその圧力に耐え切れずに、強い力で熔融材料を網
溝２に放出する働きをする。これによって、熔融材料は
枠体溝１に集中的に流れ込まずに網溝２を優先的に埋め
るようにしてから枠体溝１に流れる。このような作用を
する誘導帯溝５を、フィルターのサイズに合わせて、複
数個設けることでフィルターの大型化を図ることができ
る。２個、４個、６個や８個などその数はフィルター形
状によって変わる。しかし、単に誘導帯溝５の数を増や
すだけでは、完全な網目のフィルターはできない。特に
大型になればなるほど難しくなる。図１１の従来例で説
明すると、複数の誘導帯溝５を囲うように補強リブ溝６
が設けられ、この補強リブ溝６で大型フィルターの強度
を補強してフィルターの反りなどを防止するとともに、
フィルター全体の熔融材料の流れを良くすることを目的
とするのが一般的であった。この形状は、３００ｍｍ角
未満の小型フィルターにおいては有効であったが、それ
以上の大型フィルターを製造する場合には、この補強リ
ブ溝６が熔融材料の流動を妨げる作用をする欠点があっ
た。広い範囲に熔融材料を流動させようとするとどうし
ても注入圧力を上げてやる必要があるが、このことによ
って補強リブ溝６が熔融材料の流動を妨げる要因の一つ
になることが分かった。なぜならば、熔融材料の流動は
流れやすい個所を瞬時に判断して、太径／幅広の補強リ
ブ溝６や枠体溝１に流れ込もうとし、この流れが網溝２
の形成を阻害してリブ抜けを生じる結果になっていた。
そこで、本発明は、補強リブ溝６が熔融材料の流動を妨
げる作用をする点に着目して、網溝２上には極力余分な
溝を形成せずに、複数の誘導帯溝５のみで大型のフィル
ターを得ようとするものである。本発明の基本形は、図
４に示すようにストライプ状の網溝２上に複数の誘導帯
溝５を略対称形に配置したものである。しかし、３００
ｍｍ角を越えるようなフィルターにおいては、強度的に
弱くなりフィルターの反りも生じやすくなるので、本図
のように誘導帯溝５より細径または幅狭の中線溝３を上
型および／または下型の網溝上に複数本形成したもので
ある。枠体溝１や誘導帯溝５より細径なので、熔融材料
の流動そのものには悪影響を与えないが、フィルター全
体の強度補強に効果がある。同時に、特にストライプ状
の網溝２の場合においては、熔融材料の通路が少ない傾
向になるので、流動を補完する作用もある。中線溝３の
本数は、フィルターの大きさ、形状、網目のピッチによ
って任意に変えることができるが、その配置は熔融材料
の流動に秩序を持たすために等間隔、対象であることが
望ましい。

【０００６】図２図は、中線溝３を図１の実施例よりも
多く設けたような形にしたもので、かつ、網溝２の中心
部において縦方向の中線溝３を結合するような形で、結
合溝１０を２本設けたものである。この特徴は、複数の
誘導帯溝５の間に生じる空間、つまり熔融樹脂が流動す
るための溝がない部分を補完するためのものである。し
たがって、フィルターが大型になり中心部における誘導
帯溝５間の空間が広くなる場合は、さらに３本、４本と
本数を増やせば良い。つまり、複数の誘導帯溝５のゲー
ト９から注入される熔融材料も、誘導帯５間の空間部分
では流動力が弱くなりリブ抜けが生じやすくなる。そこ
で、それを補完するために流動を促進する溝を追加して
やるものである。ただ、多用すると熔融材料の流動を阻
害するので、本数は少ないほうが良い。したがって、サ
イズの小さいフィルターにおいては不要か、１本のみで
結合する形にしても良い。さらに、本図では複数の中線
溝３の間に、中線溝３よりは細径／幅狭で、かつ、網溝
２よりは太径／幅広の細線溝４を設けている。この細線
溝４により網目の形成はより楽になるが、余り本数が多
くなると熔融樹脂の流動を妨げることになるので、フィ
ルターのサイズや形状および誘導帯溝５の長さなどによ
って最小必要限の本数に抑えるべきである。粘性の高い
強度のある熔融材料などを使用する場合などには有効で
ある。

【０００７】図３は、他の実施例を示すもので、金型構
成の基本は図１、図２と同じであるが、複数の誘導帯溝
５の略十字状のうち、左右に配置された誘導帯溝５の縦
方向の溝をフィルター中心部に寄せるように形成し、上
下に配置された誘導帯溝５の横方向の溝をフィルター中
心部に寄せるように形成したものである。出願人の実験
結果では、フィルター中心部が熔融材料の充填の最も遅
い場所になっており、これを補完するために、誘導帯溝
５の形状を少し変えた例を示すものである。図示はしな
いが、他の変形例としては、複数の誘導帯溝５をフィル
ター中心部に寄せる構成でも良いし、上述の構成とは逆
に左右に配置された誘導帯溝５の横方向の溝をフィルタ
ー中心部に寄せるように形成し、上下に配置された誘導
帯溝５の縦方向の溝をフィルター中心部に寄せるように
形成したものであっても良い。いずれにしても、流動力
が弱いフィルター中心部での補完をするような形状であ
れば何でも良い。

【０００８】図５は、リブ抜けの生じやすい部分を補完
するための帯体溝８を設けた変形実施例である。一つの
構成としては、枠体溝１のコーナー部分を補強するため
に、コーナーから中心方向へ向かって帯体溝８を設けた
ものである。誘導帯溝５の熔融材料の蓄圧／放出による
効果とあいまって、帯体溝８の存在によりさらに熔融材
料の金型内の充填がよりスムースになる。その結果とし
て、網目フィルターのリブ抜けが完全に無くなることと
成形のショット数が上がって大量生産が可能になるとい
う効果もある。他の構成としては、帯体溝８をフィルタ
ーの中心部に設けている。中心部は流動力が低下するの
で特に有効である。また、本図においては一本の直線状
の帯体溝８として図示しているが、略十字状の形状でも
良い。いずれにしても、帯体溝８の形状は、誘導帯溝５
との関係や、フィルター全体での配置がアンバランスに
ならない範囲で変形させることは可能である。

【０００９】図６は、ストライプ状の網目フィルターで
はなく、格子状網溝９を使った格子状の網目フィルター
を得る金型の例を示したものである。フィルターの強度
を補う方法としては、格子状網溝９も有力な構造であ
る。しかし、３００ｍｍ角を越えるような大型のフィル
ターを製造しようとすると、縦横に走る格子状網溝から
の熔融樹脂の流入によって、熔融樹脂同士の衝突が生じ
てまともなフィルターができない。本図では、少ない本
数の格子状網溝しか描けないが、実際には６０から１０
０メッシュ相当の網目なので、行き場を失った熔融樹脂
の通路になってしまうということである。流れにくい細
い溝の格子状網溝といえども、その溝数が多いので充分
に熔融材料の通路の役目を果たしてしまうものである。
それが熔融材料の乱流を引き起こしてうまく成形できな
いことにつながっている。しかし、逆に強度的な面では
ストライプ状のフィルターより有利である。そこで、本
発明はこの格子状のフィルターで熔融材料同士の衝突が
生じやすいという欠点を解消して、格子状の大型フィル
ターを製造しようとするものである。そのために、本発
明は低圧成形で射出圧力を上げずに、かつ、ガスやエア
を極力抑えるために樹脂温も常温とするために以下の構
造を付加した。それは、ピンポイントゲートでの成形の
常識である０．８〜１．２φのゲート径を１．５φ以上
にしようとするものである。ピンポイントゲートの径が
大きくなると、必ずゲートカットが必要になるとのこと
で１．２φ程度までが限度とするのが金型業界での常識
であったが、成形品部分が蓄熱しにくい網目状の製品で
はゲート部と成形品部との温度差が大きいことから網目
フィルターにおいては、ゲート径を大きくしてもゲート
カットが不要になる点に着目したものである。あえて先
行技術として上げるとすれば、単にゲート径が大きいと
いうものでは、ダイレクトゲート方式がある。プラスチ
ック製のざるや薄板のボックス製品の成形に用いられる
が、後工程として必ずゲートカットが必要となるので本
発明の作用効果は奏し得ないものである。本発明の補完
技術の一つとして、ピンポイントゲート９の径を太くす
るということである。このことで、３００角の大型プラ
スチックフィルターで、６０から１００メッシュ相当の
網目であっても、以下の実験数値でバリやリブ抜けの無
い商品になるフィルターが得られた。網目は、一方向だ
けの溝の押し合わせによるストライプ状のものではな
く、あえて成形条件の厳しい格子状の溝によるメッシュ
状のもので実験したものであるが、汎用の安価な成形機
で十分に成形できることが立証できた。それは、以下の
ようにこれまでの成形の常識では考えられないような、
低圧射出、低い樹脂温、低い型締での成形が可能になっ
たということである。さらなる利点としては、型締があ
まくできるので通常は成形の障害になる金型内で発生す
るエアやガスが金型の押し切り面から逃げてゆくことで
リブ抜けなどが無くなることである。 ピンポイントゲートに関する今までの常識では、その径
は０．８〜１．２φ程度が限界と考えられていたが、そ
れはゲート部と成形部との温度差が無い製品で成形後の
後工程としてゲートカットをする必要があったからであ
る。確かに微細な網目フィルター以外の成形品では生じ
る現象である。しかし、本発明のように微細な網目フィ
ルターに適用した場合は、成形部が非常に微細なため冷
却が早く、そのため比較的冷却の遅いゲート部との間に
かなりの温度差ができることになり、それが非常に大き
な剪断力となるのである。ピンポイントゲートの径が大
きくなると低圧成形が可能になると理論的には分かって
いても、ゲートカットが必ず必要となることからピンポ
イントゲートの径を大きくすることが全く顧みられなか
ったのである。また、それをやったとしても後述するよ
うな金型の種々の改善がなければできないことなので、
これまでこの種の微細な網目フィルターが世にでなかっ
たのも無理がないことである。したがって、現存してい
る一体成形の網目フィルターは、網目の線径が１ｍｍ程
度のものしかなく、それ以上の細い線径の場合は織布を
プラスチック枠にインサート成形するタイプの製品しか
存在しなかった。上記の説明は、格子状の場合に特に有
利であるということであって、ストライプ状の場合も有
効であることは当然である。

【００１０】図７は、複数の十字状の誘導帯溝５を４５
度傾斜させて形成したものである。その他の構成は、図
６と同様に太径のゲートを有して低圧成形を可能とした
ものである。格子状になった網溝２に対して、誘導帯溝
５は対角線上に配置されるので、特に線形の太い網溝２
の場合に有効である。図８は、図６の格子状フィルター
の構成に中線溝３を付加したもので、熔融材料の流動性
を優先させた構成なので、網溝２の線径が非常に細い微
細なフィルターの製造に有効な構造である。図９は、図
２の部分拡大図で、中線溝３の先端がテーパー状になっ
ているのを示す。先端をテーパー状にすることで、熔融
材料が枠体溝１に簡単に流入しないようにしたものであ
る。これによって、熔融材料が優先的に網溝２に流れる
ようにしている。本発明の効果をさらに高めるためのも
のである。図１０は、本発明の他の実施例を示すもの
で、長方形のフィルターを製造する場合に有効な形状で
ある。長方形であるので、水平方向に二つの誘導帯溝５
を設ける。作用効果は上述の各実施例と同様である。上
述したように、本発明は、従来は不可能とされていた微
細で大型の網目フィルターを得ることができる。さら
に、同一材料および一体成形なので再利用に好適であ
り、昨今のリサイクル思想にも合致するものである。

【００１１】

【発明の効果】本発明の効果を請求項に対応して述べ
る。 （請求項１）誘導帯溝５を複数設けることで蓄圧／放出
の作用を高めるとともに、誘導帯溝５間の仕切り的な溝
を無くすることで、３００ｍｍ角以上の一体成形による
大型網目フィルターを得ることができる。 （請求項２および３）請求項１の効果に加えて、帯体溝
８を設けることにより、誘導帯溝５の熔融材料の蓄圧／
放出による効果とあいまって、さらに熔融材料の金型内
の充填がよりスムースになる。その帯体溝８を網溝２の
中心部分または網溝２の周辺部に配置したので、その部
分の流動力が増強し、その結果として、網目フィルター
のリブ抜けが完全に無くなることと、成形のショット数
が上がって大量生産が可能になるという効果がある。 （請求項４および５）請求項１の効果に加えて、網溝２
より太径または幅広で、かつ、誘導帯溝５より細径また
は幅狭の中線溝３を付加することで、網溝２への熔融材
料の流入を格段に良くすることができ、特に大面積のフ
ィルターの製造に有効である。さらに、複数の中線溝３
の間に、網溝２より太径または幅広で、かつ、中線溝３
よりも細径または幅狭の細線溝４を設けることで、ピッ
チ間隔の狭い微細なフィルター製造においても網溝２へ
の熔融材料の流入を格段に良くすることができる。（請
求項６）請求項４の効果に加えて、網溝２の中心部に配
置された中線溝３の間を結合するように、少なくとも一
本以上の結合溝１０を設けたので、熔融樹脂の流入力が
弱まるフィルター中心部のリブ抜けを防止することがで
きる。 （請求項７）請求項１の効果に加えて、複数の誘導帯溝
５上に設けられた複数のゲート９を１．５φ以上の大き
さで形成したピンポイントゲートとしたので、低圧で熔
融材料を金型内に充填することが可能となり、大面積、
微細フィルター製造に有効である。熔融材料が網溝２間
で衝突する格子状のフィルターにおいては、特に効果を
発揮する。

【図面の簡単な説明】

【図１】ストライプ状網目フィルターに適用する本発明
成形金型の他の実施例の平面図である。

【図２】本発明成形金型の他の実施例の平面図である。

【図３】本発明成形金型の他の実施例の平面図である。

【図４】本発明成形金型の平面図である。

【図５】本発明成形金型の他の実施例の平面図である。

【図６】格子状網目フィルターに適用する本発明成形金
型の平面図である。

【図７】本発明成形金型の他の実施例の平面図である。

【図８】本発明成形金型の他の実施例の平面図である。

【図９】本発明成形金型の部分拡大した平面図である。

【図１０】本発明成形金型の他の実施例の平面図であ
る。

【図１１】従来例を示す平面図である。

【符号の説明】

１ 枠体溝 ２ 網溝 ３ 中線溝 ４ 細線溝 ５ 誘導帯溝 ６ 補強リブ ７ 横網溝 ８ 帯体溝 ９ ゲート １０ 結合溝

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 上型と下型を押し合わせるとともにゲ
   ートを介して熔融材料を注入することで枠付きの網目フ
   ィルター成形品を成形する金型装置において、以下の構
   成であることを特徴とする網目フィルター用金型。 （ａ）上型および／または下型に、ストライプ状または
   格子状に形成された網溝 （ｂ）上型および／または下型の網溝上に形成され、枠
   体溝とは直接連通しない複数の略十字状の誘導帯溝であ
   って、それぞれを略対称に配置した複数の誘導帯溝 （ｃ）網溝上に形成された複数の誘導帯溝間には、熔融
   材料の流動を阻害、抑制する仕切り的な作用をする溝を
   設けない網溝 （ｄ）網溝および複数の誘導帯溝を囲うように、上型お
   よび／または下型に形成される枠体溝 （ｅ）熔融材料を金型内に注入するために、上型または
   下型の複数の誘導帯溝上に設けられた複数のゲート
2. 【請求項２】 前記請求項１において、網溝の中心部
   分に、網溝より太径または幅広の帯体溝を設けて、網溝
   の中心部の流動力を増強したことを特徴とした網目フィ
   ルター用金型。
3. 【請求項３】 前記請求項１において、枠体溝と直結
   またはその近傍部分に、網溝より太径または幅広の帯体
   溝を設けて、網溝の周辺部の流動力を増強したことを特
   徴とした網目フィルター用金型。
4. 【請求項４】 上型と下型を押し合わせるとともにゲ
   ートを介して熔融材料を注入することで枠付きの網目フ
   ィルター成形品を成形する金型装置において、以下の構
   成であることを特徴とする網目フィルター用金型。 （ａ）上型および／または下型に、ストライプ状または
   格子状に形成された網溝 （ｂ）上型および／または下型の網溝上に形成され、枠
   体溝とは直接連通しない複数の略十字状の誘導帯溝であ
   って、それぞれを略対称に配置した複数の誘導帯溝 （ｃ）網溝上に形成された複数の誘導帯溝間には、熔融
   材料の流動を阻害、抑制する仕切り的な作用をする溝を
   設けない網溝 （ｄ）網溝および複数の誘導帯溝を囲うように、上型お
   よび／または下型に形成される枠体溝 （ｅ）熔融材料を金型内に注入するために、上型または
   下型の複数の誘導帯溝上に設けられた複数のゲート （ｆ）上型および／または下型の網溝上に少なくとも一
   本以上形成され、網溝より太径または幅広で、かつ、誘
   導帯溝より細径または幅狭の中線溝
5. 【請求項５】 前記請求項４において、複数の中線溝
   の間に、網溝より太径または幅広で、かつ、中線溝より
   も細径または幅狭の細線溝を設けることを特徴とした網
   目フィルター用金型。
6. 【請求項６】 前記請求項４において、複数の中線溝
   のうち、網溝２の中心部に配置された中線溝の間を結合
   するように、少なくとも一本以上の結合溝設けることを
   特徴とした網目フィルター用金型。
7. 【請求項７】 上型と下型を押し合わせるとともにゲ
   ートを介して熔融材料を注入することで枠付きの網目フ
   ィルター成形品を成形する金型装置において、以下の構
   成であることを特徴とする網目フィルター用金型。 （ａ）上型および／または下型に、ストライプ状または
   格子状に形成された網溝 （ｂ）上型および／または下型の網溝上に形成され、枠
   体溝とは直接連通しない複数の略十字状の誘導帯溝であ
   って、それぞれを略対称に配置した複数の誘導帯溝 （ｃ）網溝上に形成された複数の誘導帯溝間には、熔融
   材料の流動を阻害、抑制する仕切り的な作用をする溝を
   設けない網溝 （ｄ）網溝および複数の誘導帯溝を囲うように、上型お
   よび／または下型に形成される枠体溝 （ｅ）熔融材料を金型内に注入するために、上型または
   下型の複数の誘導帯溝上に設けられた複数のゲート （ｆ）熔融樹脂を金型内に注入するためのゲートであっ
   て、プラスチック製品の形状や大きさに合わせてゲート
   径を１．５φ以上の大きさで形成したピンポイントゲー
   ト
8. 【請求項８】 前記請求項１ないし７記載の網目フィ
   ルター用金型により得られる成形品。