JP2004025819A - 射出成形金型及びプラスチックフィルター - Google Patents
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Abstract
【課題】パリの抑制とリブ抜けの防止の両方を同時に解決する手段を提供する。
【解決手段】上型1と下型を押し合わせてプラスチック製品を成形する金型装置において、以下の構成であることを特徴とする射出成形金型。(a)上型1および/または下型に、縦および/または横方向の細溝を形成するための網溝5(b)上型1および/または下型に、網溝5を囲うように形成される枠体溝4(c)上型1および/または下型に形成された、熔融樹脂を金型内に注入するためのゲート11(d)上型1および/または下型に、枠体溝4には直接接続されず、金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから細溝へ流入させる棒状の誘導帯溝6(e)上型1および/または下型に、ゲートから金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから細溝へ流入させる平板状の誘導板溝(f)平板状の誘導板溝と棒状の誘導帯溝6を組み合わせた複合誘導体溝。
【選択図】 図1
【解決手段】上型1と下型を押し合わせてプラスチック製品を成形する金型装置において、以下の構成であることを特徴とする射出成形金型。(a)上型1および/または下型に、縦および/または横方向の細溝を形成するための網溝5(b)上型1および/または下型に、網溝5を囲うように形成される枠体溝4(c)上型1および/または下型に形成された、熔融樹脂を金型内に注入するためのゲート11(d)上型1および/または下型に、枠体溝4には直接接続されず、金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから細溝へ流入させる棒状の誘導帯溝6(e)上型1および/または下型に、ゲートから金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから細溝へ流入させる平板状の誘導板溝(f)平板状の誘導板溝と棒状の誘導帯溝6を組み合わせた複合誘導体溝。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車、電子機器用のオイル又はエアフィルター、厨房用品や水まわり品を含む日用雑貨品のフィルター、さらには排水用受け皿などの各種フィルターに利用できるプラスチック成形品を成形するための金型およびその成形品に関するもので、特に微細な網目フィルターの成形に適した金型装置およびその成形品を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種枠体部を有する網目状プラスチックフィルターは、微細であるがための成形の難しさから、一体成形ではなくインサート成形をするのが常識であった。しかし、インサート成形では工数が多くなることからコストアップになり、さらに枠体部分と網目との合わせが重要であり、そのため歩留まりが悪くなり検査工程を厳密にする必要があった。
その改良のひとつとして、一体成形を試みたものもあるが以下の欠点があった。
(1)熔融樹脂の注入圧力を低圧にして注入すれば、射出圧力の不足により材料が末端まで到達せず、ゲートから遠い部分では網目リブの一部が抜けたり、欠けたりした。
(2)熔融樹脂の注入圧力を高圧にすれば、網目リブの抜けは改善されるものの、網目リブの場合はリブ間が閉塞されるバリが生じて、フィルターとしての機能を果たさず製造工程での圧力調整等も大変であった。
(3)流動性を良くするために樹脂温を上げる必要があり、そのために高温の熔融樹脂から発生するガスまたはエア金型内に滞留することで、どんなに注入圧力を高くしても熔融樹脂が細溝の末端までまわりきらないという欠点があった。
(4)また、射出圧力も高くする必要があったことから、そのために成形装置を大型化しなければなならず、安価な汎用成形機では成形できなかった。
これら(1)から(4)の欠点を解決するために、本出願人は誘導帯を有するプラスチックフィルターまたは誘導帯溝を有する金型等の改良手段を以下の出願において提案済みである。
特公平第7−20677号、特開平6−126784号、特開平6−155531号、特開平7−52164号、特開平7−137166号、特開平7−284617号などがある。
しかし、さらに成形性や歩留まりが良く、バリなども無く、かつ、低圧での成形を行うためには、もう一段の工夫が必要であった。
そのために、本発明は射出圧力を上げない低圧成形が可能で、かつ、ガスやエアを極力抑えるために樹脂温も常温とするために、誘導帯の改良に着目した。改良点の特徴は、従来の棒状の誘導帯に平板上の誘導板を組み合わせて複合誘導体にある。
平板状の誘導板については、その形状からあえて先行技術として上げるとすれば、コップや薄板プレートに使用されている「へそ」と言われているものがある。これは、ゲートの直下に、円形で平板状の段部になっており、薄肉成形時には良く用いられる構造である。
しかし、この「へそ」を採用しても、例えば300角の網目構造のフィルターを成形するには不十分な構造であった。通常の「へそ」は、成形品本体の肉厚より薄いのが一般的であり、金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから網部へ流入させるという誘導帯的な作用効果までは発揮できなかった。
また、一般的には「樹脂溜り」という周知技術もあるが、形状的には一部類似する部分はあるが、次の出願のようにいずれもその作用効果においては異なるものである。
(1)特願2000−287670
熱硬化性樹脂の粘度が高くても的確に成形キャビティに充填するために、樹脂溜りを設けて、溶融樹脂をサブランナ経由で成形キャビティに充填する。
(2)特開平08−197575
第1及び第2表皮の接合端部を合わせた成形用金型の部位に、樹脂溜りを設ける。この樹脂溜まりは、第1表皮及び第2表皮の裏面に向けて射出された溶融樹脂が他の表皮の側へ流れないように溶融樹脂を溜めて、第1表皮と第2表皮の接合端部で溶融樹脂の流れを生じない作用がある。
一方、本出願人の特許である誘導帯技術においても、300角の網目構造のフィルターを低圧で、かつ、低い樹脂温で成形するには多少難点があった。特に、非対称のフィルター形状の場合は、いかに誘導帯といえどもその効果が十分発揮できない欠点があった。
本発明は、上記の難点や欠点を解消するために、平板状の誘導板と棒状の誘導帯を組合せ、これらの特徴を併せ持つ複合誘導体を用いることを特徴とするものである。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
射出成形による狭いピッチの網目構造の製品であって、特に大型フィルターや非対称形状のフィルターの一体成形には、以下の課題がある。
(1)金型全体に熔融樹脂を均一に行き渡らせるためには棒状の誘導帯だけでは限界がある。
(2)熔融樹脂の流動性を高めるとともに、熔融樹脂のまわりにくい部分でのリブ抜けや厚肉部分でのヒケが生じにくい金型構造が必要である。
(3)複数の棒状の誘導帯が放射状に形成される構造は、リブ抜けなどを無くするために高圧で溶融樹脂を金型内に押し込もうとすると、ゲートに近い部分の誘導帯のあいだでバリが生じるという課題があった。
つまり、バリの抑制とリブ抜けの防止の両方を同時に解決する手段が必要であった。
そこで本発明は、以下に述べる手段により従来の射出成形をより改善し、その金型成形により欠陥のないフィルターを提供しようとするものである。
【0004】
【問題を解決するための手段】
本発明の金型は、以下のことを特徴とするものである。
請求項1においては、上型と下型を押し合わせるとともにゲートを介して熔融樹脂を注入することでプラスチック製品を成形する金型装置において、以下の構成であることを特徴とする射出成形金型。
(a)上型および/または下型に、縦および/または横方向の細溝を形成するための網溝
(b)上型および/または下型に、網溝を囲うように形成される枠体溝
(c)上型および/または下型に形成された、熔融樹脂を金型内に注入するためのゲート
(d)上型および/または下型に、枠体溝には直接接続されず、金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから細溝へ流入させるための棒状の誘導帯溝
(e)上型および/または下型に、ゲートから金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから細溝へ流入させるための平板状の誘導板溝
(f)平板状の誘導板溝と棒状の誘導帯溝を組み合わせた複合誘導体溝。
請求項2においては、請求項1に加えて、前記棒状の誘導帯溝上に熔融樹脂を金型内に注入するためのゲートを配置し、さらに前記棒状の誘導帯溝上に楕円を含む円形状の誘導板溝を形成する。
請求項3においては、請求項1に加えて、誘導板溝をひし形を含む矩形状に形成する。
請求項4においては、請求項1に加えて、誘導板溝を多角形状に形成する。
請求項5においては、射出成形により成型されるプラスチック製品において、以下の構成であることを特徴とするプラスチックフィルター。
(a)縦および/または横方向の細糸からなる網部
(b)網部を囲うように形成される枠体部
(c)枠体部には直接接続されず、金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから網部に流入させるための棒状の誘導帯
(e)金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから網部へ流入させるための平板状の誘導板
(f)平板状の誘導板と棒状の誘導帯を組み合わせた複合誘導体。
請求項6においては、請求項5に加えて、前記棒状の誘導帯上に、楕円を含む円形状の誘導板を形成する。
請求項7においては、請求項5に加えて、誘導板をひし形を含む矩形状に形成する。
請求項8においては、請求項5に加えて、誘導板を多角形状に形成する。
ことを特徴とする射出成形金型及びプラスチックフィルター。
【0005】
【発明の実施の形態】
【実施例】
図1は、本発明の網目構造を有するプラスチックフィルターの金型を一例にあげて示すものであり、本発明のプラスチックフィルター用金型の上型1の平面図を示し、上型1には縦方向のみの細溝5とそれを囲う形の枠体溝4が形成されている。
さらに、細溝5の中間には熔融樹脂の流動を促進するための太径の誘導帯溝6が細溝5に交差するように形成されている。成形品の種類によっては下型2および上型1と下型2同時に設けても良い。誘導帯の中心には熔融樹脂を金型内に注入するゲート11が設けられている。ゲート11から誘導帯溝6に流入した熔融樹脂は、枠体溝4に向かって流れるとともにその左右の細溝5にも流れて、ストライプ状の枠付き網目フィルターができる。
細溝5は一方向にしか形成されていないので、金型内の熔融樹脂の流動が細い溝の間で互いにぶつかり合うことがなく流動性も良くなる。
網溝5上には、枠体溝4の近傍に切欠部溝3が設けられ、網部が非対称の構成のフィルターになっている。
図2は、図1の上型1と押し合わされる下型2の平面図を示すものである。下型2には横方向のみの細溝5とそれを囲う形の枠体溝4が形成されており、さらに、上型のゲートに対抗する位置に平板状の誘導板溝7が設けられている。成形品の種類によっては上型1および上型1と下型2同時に設けても良い。また、上型1の切欠部溝3に対向する位置に、下型2に切欠部溝3が設けられ、上型1と下型2とが押し合わされ際に、楕円の貫通孔が形成される。
上型1と下型2に一方向の細溝5をそれぞれ縦横に形成して押し合わす構成としたので、メッシュ状の網目になり強度の高いフィルターが得られる。
さらに、平板状の誘導板溝7について詳細に説明する。図では誇張して大きな面積で図示しているが、出願人の実験では棒状の誘導帯溝6の交差部に、その交差面積よりも若干大きい程度で効果が出てくるのを確認した。したがって、フィルターの形状により、誘導帯溝6の交差部でバリが発生しやすい場合は、誘導板溝7の面積を少し大きくして余剰の溶融樹脂を誘導板溝7に流してやる構成にすれば良い。試験成形においては、誘導板溝7の面積は、誘導帯溝6の交点からメッシュ状の網目の一目をカバーする程度の面積で良いことが分かった。
そして、誘導板溝7に流れ込んだ余剰の溶融樹脂は、誘導板溝7でいったん蓄圧され、そしてその後に網溝5に流れ込む。その作用効果については後述するが、この誘導板溝7を追加形成することで低圧成形を可能とし、これまでの成形機に対する負荷が大きく、そのために熔融樹脂の温度を高温にし射出圧力を高くする必要があったが、それらを不要としたものである。
本出願人の実験でも、射出圧力を高めることなく、かつ、樹脂温が通常よりも2〜3割低くても成形ができた。そして、フィルター周辺でのリブ抜けを解消するために射出圧力を高めたとしてもバリの発生が抑えられるという効果が確認できた。
【0006】
図3は、図1の上型と図2の下型を押し合わせて成形したことで得られるフィルターの成形品を示すものである。枠体部4’は、メッシュ状の網部5’を囲うように形成され、フィルターの外周となる。網部5’には、3個の切欠部3’が外方に形成される。フィルター中央部には十文字状の誘導帯6とその交差部に誘導板7’が形成され、これの組み合わせで複合誘導体8’が構成される。そして、複合誘導体8’の中心部にはゲート11のゲート跡11’が残る。
本図の誘導板7’の形状は真円になっているが、正方形や円形などの一般的な形状のフィルターに最も適した形である。その理由は、円形の場合は溶融樹脂の押し出しが全方向へ均等に行えるためである。長方形や楕円形のフィルターの場合は、溶融樹脂の押し出しが全方向へ均等になると長辺側の末端で溶融樹脂が回りきらない場合がある。
図4は、ストライプ状の網部5’を囲うように枠体部4’が形成され、それがフィルターの外周となる。網部5’には、3個の切欠部3’が外方に形成される。フィルター中央部には十文字状の誘導帯6とその交差部に誘導板7’が形成され、これの組み合わせで複合誘導体8’が構成される。そして、複合誘導体8’の中心部にはゲート11のゲート跡11’が残る。
ストライプ状の網部5’の場合は、開効率や溶融樹脂の流動性に優れた面があり、フィルター強度が余り必要としない排水口などのフィルターには適している。
図5は、メッシュ状の網部5’を有するフィルターであり、誘導板7’の形状に特徴がある。誘導帯6’の空間部に正方形の鋭角部を配置する構成にしたもので、溶融樹脂の送り出しに若干の方向性を持たせたものである。正方形はひし形であっても良く、棒状の誘導帯6’の間の空間部を補う形になれば良い。
図6は、ストライプ状の網部5’を有するフィルターであり、誘導板7’の形状に特徴がある。誘導帯6’の空間部に楕円形の先端部を配置する構成にしたもので、溶融樹脂の送り出しに若干の方向性を持たせたものである。ひし形より方向性は弱いが、均一性があるので汎用性の高い形状と言える。また、切欠部3’が左右対象にあるフィルターには特に有効な形状である。
図7は、メッシュ状の網部5’を有するフィルターであり、誘導板7’の形状に特徴がある。誘導帯6’の空間部に多角形の誘導板7’を形成したもので、溶融樹脂の送り出しに若干の方向性を持たせたものである。ひし形より方向性は弱いが、均一性があるので汎用性の高い形状と言える。また、帯体9を枠体部4’から中心に向けて設けることで、棒状の誘導帯6’の間の空間部での流動圧力の低下を補うものである。
図8は、誘導帯6’の空間部に三角形の先端部を配置する構成にしたもので、切欠部3’の無い方向へ少し先端部を突出させて誘導帯6’の効果の補完をするための形状である。
【0007】
図9は、下型2の平面図の変形例を示すものである。下型2に縦方向のみの細溝5を設け、それを囲う形の枠体溝4が形成されており、さらに、上型のゲートに対抗する位置に平板状で多角形の誘導板溝7と棒状の誘導帯溝6を設けて、複合誘導体溝8を形成している。上型には、同様に誘導帯溝6を設けても良い。
図10は、図9の下型のA−A’断面図と上型の断面図を示すものであり、上型のゲートに対抗する位置に平板状で多角形の誘導板溝7と棒状の誘導帯溝6を設けて、複合誘導体溝8を形成している状態を断面で示したものである。枠体溝4は、上下型にそれぞれ設けているが、どちらか一方に設けることでも良い。
【0008】
図11は、従来の誘導板7’が無い状態のフィルター平面図を示すもので、誘導帯6’のみの場合のリブ抜け現象を図示したものである。特に切欠部3’がある場合は溶融樹脂の流れが不均一になり、流動圧力の弱い部分にリブ抜けが生じる。本図の場合は、網部5’の上下方向にリブ抜けが生じやすくなる。このリブ抜けを解消するために射出圧力を上げると、リブ抜けは解消するが矢印A12で示すように誘導帯6’の交差部での流動が過多になってしまい、バリが生じることになる。この原因は、隣接する誘導帯6’の間が近すぎるために、溶融樹脂が誘導帯6’の間で重なり合うような現象が生じるからである。
図12は、この誘導帯6’の間で重なりを解消するために、誘導板7’を設けたものである。この誘導板7’の作用効果により、誘導帯6’の交差部で供給過剰になる溶融樹脂が誘導板7’に分散吸収されてバリの発生が抑えられる。そして、矢印B13で示すように、網部5’への流出時には誘導帯6’と同様に溶融樹脂を一旦蓄圧して放出することになるので、網部5’外周でのリブ抜けも防止できる。
また、本実施例は熔融樹脂の材料を流動性の高いものに変えたときにも活用できる。つまり、熔融樹脂の流入がスムースになり過ぎて網溝5の中心への流動力が増強され、逆に中心部分でバリが発生しやすくなるが、これを誘導板7’で吸収できるからである。
誘導帯6’は、畜圧力および流出力の向上という抜群の効果を有するが、その反面その流出力の強さのためにバリが発生しやすいという弱点を有している。その弱点を、誘導帯6’上に設けた誘導板7’の吸収力で補う、という原理である。
したがって、誘導帯6’と誘導板7’からなる本発明の複合誘導体8’は、複雑で非対称のフィルター成形時や、流動性の高い樹脂材料を用いる成形の場合に特に効果がある。
【0009】
図13は、長方形のフィルターに適用する変形実施例を示すもので、直線の誘導帯6’と矩形の誘導板7’からなる複合誘導体8’を用いたものである。本実施例の場合、誘導帯6’は長辺に平行して設けているが、長辺に直交する方向に設けても良い。フィルターの形状やサイズによって、複合誘導体8’の形状も随意に変える必要がある。
図14は、長方形のフィルターに適用する他の変形実施例を示すもので、直線の誘導帯6’と複数の円形の誘導板7’からなる複合誘導体8’を用いたものである。本実施例の場合、誘導帯6’上には複数の円形の誘導板7’が形成されているので、周辺でのリブ抜けに効果がある。ゲート直下の誘導板の方が効果的であるが、ゲート直下にない誘導板も畜圧と流出力の作用は有するので一定の効果は上がる。
図15から17までは、本発明金型の他の変形実施例を示すもので、図15は、ゲート11を除き、上型1と下型2の形状をまったく対象に形成したものである。それぞれの型に誘導帯溝6と誘導板溝7、細溝5、枠体溝4を形成したものである。
図16は、上型1には網溝5は設けず、下型の誘導板溝7を誘導帯溝6の厚みよりも薄くしたものである。溶融樹脂の畜圧・流出力を高めるために有効な構造である。
図17は、上型1には誘導帯溝6と網溝5を設けない構造を示すものである。上型1には網溝5しかないため、フィルター全体が薄手にでき、サンドイッチ構造の中に収納される場合のフィルターに適している。いずれの図面にも図示はしないが、実際の成形時には、下型2の誘導板7’には押し出しピンが設けられる。
【0010】
【発明の効果】
本発明は以上のように、従来の誘導帯に加えて、誘導板との組み合わせで複合誘導体を採用したので、低圧成形であるにもかかわらず金型内の熔融樹脂の流動が格段にスムースになり、大型の一体成形プラスチックフィルターが製造可能になるとともに、流動性の向上によるバリの発生が抑えられるという、大きな効果が得られる。
以下請求項に対応して効果を述べる。
(請求項1)
フィルターのリブ抜けを解消するために射出圧力を上げると、リブ抜けは解消するが誘導帯溝6の交差部での流動が過多になってしまい誘導帯溝6の交差部ではバリが発生しやすいが、誘導板溝7を設け誘導帯と組み合わせて複合誘導体溝8を形成することで、バリの抑制とリブ抜けの防止ができる。誘導板溝7に流れ込んだ余剰の溶融樹脂は、誘導板溝7でいったん蓄圧され、そしてその後に網溝5に流れ込むが、複合誘導体溝8の作用効果により、射出圧力を高めることなく、かつ、樹脂温が通常よりも2〜3割低くても成形ができるという効果がある。また、熔融樹脂の材料を流動性の高いものに変えたときにも活用できる。つまり、熔融樹脂の流入がスムースになり過ぎて網溝5の中心への流動力が増強され、逆に中心部分でバリが発生しやすくなるが、これを誘導板溝7で吸収できるので、誘導帯溝6の交差部でのバリの発生を抑制すると同時に、網溝5の外周でのリブ抜けも防止できるという効果がある。
(請求項2、請求項3、および請求項4)
誘導板溝7の形状を種々に変えることで、特殊な形状のフィルター成形に効果がある。矩形、三角形などの鋭角な誘導板溝7は、誘導帯溝6の空間部に鋭角部を配置する構成にしたもので、溶融樹脂の送り出しに対して積極的に方向性を持たせたものである。これにより、棒状の誘導帯溝6の間の空間部での流動圧力の低下を積極的に補うという効果を奏する。
楕円形、円形、多角形などの誘導板溝7は、半円状の先端部を誘導帯溝6の空間部に配置する構成にしたもので、溶融樹脂の送り出しに若干の方向性を持たせたもので、鋭角な矩形の誘導板溝7より方向性は弱いが、溶融樹脂の送り出しに均一性があるので汎用性の高い形状のフィルターの成形に効果がある。
(請求項5、請求項6、請求項7、および請求項8)
請求項1から請求項4の金型で成形されるフィルターの形状を記載したもので、その作用効果は上記請求項1から請求項4の記載と同様である。
以上種々の実施例を挙げて説明したが、本発明の原理を利用した他の実施例についても本発明の保護の対象になることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明射出成形金型の上型の平面図である。
【図2】本発明射出成形金型の下型の平面図である。
【図3】本発明射出成形金型からできたメッシュ状フルターの平面図である。
【図4】本発明射出成形金型からできたストライプ状フルターの平面図である。
【図5】本発明メッシュ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図6】本発明ストライプ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図7】本発明射出成形金型の他の変形実施例の平面図である。
【図8】本発明メッシュ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図9】本発明ストライプ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図10】本発明ストライプ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図11】従来のメッシュ状フルターの解析を説明するための平面図である。
【図12】本発明のメッシュ状フルターの解析を説明するための平面図である。
【図13】本発明メッシュ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図14】本発明メッシュ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図15】本発明射出成形金型の他の変形実施例の平面図である。
【図16】本発明射出成形金型の他の変形実施例の平面図である。
【図17】本発明射出成形金型の他の変形実施例の平面図である。
【符号の説明】
1 上型 2 下型 3 切欠部溝
3’ 切欠部 4 枠体溝 4’ 枠体部
5 網溝 5’ 網部 6 誘導帯溝
6’ 誘導帯 7 誘導板溝 7’ 誘導板
8 複合誘導体溝 8’ 複合誘導体 9 帯体
10 リブ抜け部 11 ゲート 11‘ ゲート跡
12 矢印A 13 矢印B
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車、電子機器用のオイル又はエアフィルター、厨房用品や水まわり品を含む日用雑貨品のフィルター、さらには排水用受け皿などの各種フィルターに利用できるプラスチック成形品を成形するための金型およびその成形品に関するもので、特に微細な網目フィルターの成形に適した金型装置およびその成形品を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種枠体部を有する網目状プラスチックフィルターは、微細であるがための成形の難しさから、一体成形ではなくインサート成形をするのが常識であった。しかし、インサート成形では工数が多くなることからコストアップになり、さらに枠体部分と網目との合わせが重要であり、そのため歩留まりが悪くなり検査工程を厳密にする必要があった。
その改良のひとつとして、一体成形を試みたものもあるが以下の欠点があった。
(1)熔融樹脂の注入圧力を低圧にして注入すれば、射出圧力の不足により材料が末端まで到達せず、ゲートから遠い部分では網目リブの一部が抜けたり、欠けたりした。
(2)熔融樹脂の注入圧力を高圧にすれば、網目リブの抜けは改善されるものの、網目リブの場合はリブ間が閉塞されるバリが生じて、フィルターとしての機能を果たさず製造工程での圧力調整等も大変であった。
(3)流動性を良くするために樹脂温を上げる必要があり、そのために高温の熔融樹脂から発生するガスまたはエア金型内に滞留することで、どんなに注入圧力を高くしても熔融樹脂が細溝の末端までまわりきらないという欠点があった。
(4)また、射出圧力も高くする必要があったことから、そのために成形装置を大型化しなければなならず、安価な汎用成形機では成形できなかった。
これら(1)から(4)の欠点を解決するために、本出願人は誘導帯を有するプラスチックフィルターまたは誘導帯溝を有する金型等の改良手段を以下の出願において提案済みである。
特公平第7−20677号、特開平6−126784号、特開平6−155531号、特開平7−52164号、特開平7−137166号、特開平7−284617号などがある。
しかし、さらに成形性や歩留まりが良く、バリなども無く、かつ、低圧での成形を行うためには、もう一段の工夫が必要であった。
そのために、本発明は射出圧力を上げない低圧成形が可能で、かつ、ガスやエアを極力抑えるために樹脂温も常温とするために、誘導帯の改良に着目した。改良点の特徴は、従来の棒状の誘導帯に平板上の誘導板を組み合わせて複合誘導体にある。
平板状の誘導板については、その形状からあえて先行技術として上げるとすれば、コップや薄板プレートに使用されている「へそ」と言われているものがある。これは、ゲートの直下に、円形で平板状の段部になっており、薄肉成形時には良く用いられる構造である。
しかし、この「へそ」を採用しても、例えば300角の網目構造のフィルターを成形するには不十分な構造であった。通常の「へそ」は、成形品本体の肉厚より薄いのが一般的であり、金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから網部へ流入させるという誘導帯的な作用効果までは発揮できなかった。
また、一般的には「樹脂溜り」という周知技術もあるが、形状的には一部類似する部分はあるが、次の出願のようにいずれもその作用効果においては異なるものである。
(1)特願2000−287670
熱硬化性樹脂の粘度が高くても的確に成形キャビティに充填するために、樹脂溜りを設けて、溶融樹脂をサブランナ経由で成形キャビティに充填する。
(2)特開平08−197575
第1及び第2表皮の接合端部を合わせた成形用金型の部位に、樹脂溜りを設ける。この樹脂溜まりは、第1表皮及び第2表皮の裏面に向けて射出された溶融樹脂が他の表皮の側へ流れないように溶融樹脂を溜めて、第1表皮と第2表皮の接合端部で溶融樹脂の流れを生じない作用がある。
一方、本出願人の特許である誘導帯技術においても、300角の網目構造のフィルターを低圧で、かつ、低い樹脂温で成形するには多少難点があった。特に、非対称のフィルター形状の場合は、いかに誘導帯といえどもその効果が十分発揮できない欠点があった。
本発明は、上記の難点や欠点を解消するために、平板状の誘導板と棒状の誘導帯を組合せ、これらの特徴を併せ持つ複合誘導体を用いることを特徴とするものである。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
射出成形による狭いピッチの網目構造の製品であって、特に大型フィルターや非対称形状のフィルターの一体成形には、以下の課題がある。
(1)金型全体に熔融樹脂を均一に行き渡らせるためには棒状の誘導帯だけでは限界がある。
(2)熔融樹脂の流動性を高めるとともに、熔融樹脂のまわりにくい部分でのリブ抜けや厚肉部分でのヒケが生じにくい金型構造が必要である。
(3)複数の棒状の誘導帯が放射状に形成される構造は、リブ抜けなどを無くするために高圧で溶融樹脂を金型内に押し込もうとすると、ゲートに近い部分の誘導帯のあいだでバリが生じるという課題があった。
つまり、バリの抑制とリブ抜けの防止の両方を同時に解決する手段が必要であった。
そこで本発明は、以下に述べる手段により従来の射出成形をより改善し、その金型成形により欠陥のないフィルターを提供しようとするものである。
【0004】
【問題を解決するための手段】
本発明の金型は、以下のことを特徴とするものである。
請求項1においては、上型と下型を押し合わせるとともにゲートを介して熔融樹脂を注入することでプラスチック製品を成形する金型装置において、以下の構成であることを特徴とする射出成形金型。
(a)上型および/または下型に、縦および/または横方向の細溝を形成するための網溝
(b)上型および/または下型に、網溝を囲うように形成される枠体溝
(c)上型および/または下型に形成された、熔融樹脂を金型内に注入するためのゲート
(d)上型および/または下型に、枠体溝には直接接続されず、金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから細溝へ流入させるための棒状の誘導帯溝
(e)上型および/または下型に、ゲートから金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから細溝へ流入させるための平板状の誘導板溝
(f)平板状の誘導板溝と棒状の誘導帯溝を組み合わせた複合誘導体溝。
請求項2においては、請求項1に加えて、前記棒状の誘導帯溝上に熔融樹脂を金型内に注入するためのゲートを配置し、さらに前記棒状の誘導帯溝上に楕円を含む円形状の誘導板溝を形成する。
請求項3においては、請求項1に加えて、誘導板溝をひし形を含む矩形状に形成する。
請求項4においては、請求項1に加えて、誘導板溝を多角形状に形成する。
請求項5においては、射出成形により成型されるプラスチック製品において、以下の構成であることを特徴とするプラスチックフィルター。
(a)縦および/または横方向の細糸からなる網部
(b)網部を囲うように形成される枠体部
(c)枠体部には直接接続されず、金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから網部に流入させるための棒状の誘導帯
(e)金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから網部へ流入させるための平板状の誘導板
(f)平板状の誘導板と棒状の誘導帯を組み合わせた複合誘導体。
請求項6においては、請求項5に加えて、前記棒状の誘導帯上に、楕円を含む円形状の誘導板を形成する。
請求項7においては、請求項5に加えて、誘導板をひし形を含む矩形状に形成する。
請求項8においては、請求項5に加えて、誘導板を多角形状に形成する。
ことを特徴とする射出成形金型及びプラスチックフィルター。
【0005】
【発明の実施の形態】
【実施例】
図1は、本発明の網目構造を有するプラスチックフィルターの金型を一例にあげて示すものであり、本発明のプラスチックフィルター用金型の上型1の平面図を示し、上型1には縦方向のみの細溝5とそれを囲う形の枠体溝4が形成されている。
さらに、細溝5の中間には熔融樹脂の流動を促進するための太径の誘導帯溝6が細溝5に交差するように形成されている。成形品の種類によっては下型2および上型1と下型2同時に設けても良い。誘導帯の中心には熔融樹脂を金型内に注入するゲート11が設けられている。ゲート11から誘導帯溝6に流入した熔融樹脂は、枠体溝4に向かって流れるとともにその左右の細溝5にも流れて、ストライプ状の枠付き網目フィルターができる。
細溝5は一方向にしか形成されていないので、金型内の熔融樹脂の流動が細い溝の間で互いにぶつかり合うことがなく流動性も良くなる。
網溝5上には、枠体溝4の近傍に切欠部溝3が設けられ、網部が非対称の構成のフィルターになっている。
図2は、図1の上型1と押し合わされる下型2の平面図を示すものである。下型2には横方向のみの細溝5とそれを囲う形の枠体溝4が形成されており、さらに、上型のゲートに対抗する位置に平板状の誘導板溝7が設けられている。成形品の種類によっては上型1および上型1と下型2同時に設けても良い。また、上型1の切欠部溝3に対向する位置に、下型2に切欠部溝3が設けられ、上型1と下型2とが押し合わされ際に、楕円の貫通孔が形成される。
上型1と下型2に一方向の細溝5をそれぞれ縦横に形成して押し合わす構成としたので、メッシュ状の網目になり強度の高いフィルターが得られる。
さらに、平板状の誘導板溝7について詳細に説明する。図では誇張して大きな面積で図示しているが、出願人の実験では棒状の誘導帯溝6の交差部に、その交差面積よりも若干大きい程度で効果が出てくるのを確認した。したがって、フィルターの形状により、誘導帯溝6の交差部でバリが発生しやすい場合は、誘導板溝7の面積を少し大きくして余剰の溶融樹脂を誘導板溝7に流してやる構成にすれば良い。試験成形においては、誘導板溝7の面積は、誘導帯溝6の交点からメッシュ状の網目の一目をカバーする程度の面積で良いことが分かった。
そして、誘導板溝7に流れ込んだ余剰の溶融樹脂は、誘導板溝7でいったん蓄圧され、そしてその後に網溝5に流れ込む。その作用効果については後述するが、この誘導板溝7を追加形成することで低圧成形を可能とし、これまでの成形機に対する負荷が大きく、そのために熔融樹脂の温度を高温にし射出圧力を高くする必要があったが、それらを不要としたものである。
本出願人の実験でも、射出圧力を高めることなく、かつ、樹脂温が通常よりも2〜3割低くても成形ができた。そして、フィルター周辺でのリブ抜けを解消するために射出圧力を高めたとしてもバリの発生が抑えられるという効果が確認できた。
【0006】
図3は、図1の上型と図2の下型を押し合わせて成形したことで得られるフィルターの成形品を示すものである。枠体部4’は、メッシュ状の網部5’を囲うように形成され、フィルターの外周となる。網部5’には、3個の切欠部3’が外方に形成される。フィルター中央部には十文字状の誘導帯6とその交差部に誘導板7’が形成され、これの組み合わせで複合誘導体8’が構成される。そして、複合誘導体8’の中心部にはゲート11のゲート跡11’が残る。
本図の誘導板7’の形状は真円になっているが、正方形や円形などの一般的な形状のフィルターに最も適した形である。その理由は、円形の場合は溶融樹脂の押し出しが全方向へ均等に行えるためである。長方形や楕円形のフィルターの場合は、溶融樹脂の押し出しが全方向へ均等になると長辺側の末端で溶融樹脂が回りきらない場合がある。
図4は、ストライプ状の網部5’を囲うように枠体部4’が形成され、それがフィルターの外周となる。網部5’には、3個の切欠部3’が外方に形成される。フィルター中央部には十文字状の誘導帯6とその交差部に誘導板7’が形成され、これの組み合わせで複合誘導体8’が構成される。そして、複合誘導体8’の中心部にはゲート11のゲート跡11’が残る。
ストライプ状の網部5’の場合は、開効率や溶融樹脂の流動性に優れた面があり、フィルター強度が余り必要としない排水口などのフィルターには適している。
図5は、メッシュ状の網部5’を有するフィルターであり、誘導板7’の形状に特徴がある。誘導帯6’の空間部に正方形の鋭角部を配置する構成にしたもので、溶融樹脂の送り出しに若干の方向性を持たせたものである。正方形はひし形であっても良く、棒状の誘導帯6’の間の空間部を補う形になれば良い。
図6は、ストライプ状の網部5’を有するフィルターであり、誘導板7’の形状に特徴がある。誘導帯6’の空間部に楕円形の先端部を配置する構成にしたもので、溶融樹脂の送り出しに若干の方向性を持たせたものである。ひし形より方向性は弱いが、均一性があるので汎用性の高い形状と言える。また、切欠部3’が左右対象にあるフィルターには特に有効な形状である。
図7は、メッシュ状の網部5’を有するフィルターであり、誘導板7’の形状に特徴がある。誘導帯6’の空間部に多角形の誘導板7’を形成したもので、溶融樹脂の送り出しに若干の方向性を持たせたものである。ひし形より方向性は弱いが、均一性があるので汎用性の高い形状と言える。また、帯体9を枠体部4’から中心に向けて設けることで、棒状の誘導帯6’の間の空間部での流動圧力の低下を補うものである。
図8は、誘導帯6’の空間部に三角形の先端部を配置する構成にしたもので、切欠部3’の無い方向へ少し先端部を突出させて誘導帯6’の効果の補完をするための形状である。
【0007】
図9は、下型2の平面図の変形例を示すものである。下型2に縦方向のみの細溝5を設け、それを囲う形の枠体溝4が形成されており、さらに、上型のゲートに対抗する位置に平板状で多角形の誘導板溝7と棒状の誘導帯溝6を設けて、複合誘導体溝8を形成している。上型には、同様に誘導帯溝6を設けても良い。
図10は、図9の下型のA−A’断面図と上型の断面図を示すものであり、上型のゲートに対抗する位置に平板状で多角形の誘導板溝7と棒状の誘導帯溝6を設けて、複合誘導体溝8を形成している状態を断面で示したものである。枠体溝4は、上下型にそれぞれ設けているが、どちらか一方に設けることでも良い。
【0008】
図11は、従来の誘導板7’が無い状態のフィルター平面図を示すもので、誘導帯6’のみの場合のリブ抜け現象を図示したものである。特に切欠部3’がある場合は溶融樹脂の流れが不均一になり、流動圧力の弱い部分にリブ抜けが生じる。本図の場合は、網部5’の上下方向にリブ抜けが生じやすくなる。このリブ抜けを解消するために射出圧力を上げると、リブ抜けは解消するが矢印A12で示すように誘導帯6’の交差部での流動が過多になってしまい、バリが生じることになる。この原因は、隣接する誘導帯6’の間が近すぎるために、溶融樹脂が誘導帯6’の間で重なり合うような現象が生じるからである。
図12は、この誘導帯6’の間で重なりを解消するために、誘導板7’を設けたものである。この誘導板7’の作用効果により、誘導帯6’の交差部で供給過剰になる溶融樹脂が誘導板7’に分散吸収されてバリの発生が抑えられる。そして、矢印B13で示すように、網部5’への流出時には誘導帯6’と同様に溶融樹脂を一旦蓄圧して放出することになるので、網部5’外周でのリブ抜けも防止できる。
また、本実施例は熔融樹脂の材料を流動性の高いものに変えたときにも活用できる。つまり、熔融樹脂の流入がスムースになり過ぎて網溝5の中心への流動力が増強され、逆に中心部分でバリが発生しやすくなるが、これを誘導板7’で吸収できるからである。
誘導帯6’は、畜圧力および流出力の向上という抜群の効果を有するが、その反面その流出力の強さのためにバリが発生しやすいという弱点を有している。その弱点を、誘導帯6’上に設けた誘導板7’の吸収力で補う、という原理である。
したがって、誘導帯6’と誘導板7’からなる本発明の複合誘導体8’は、複雑で非対称のフィルター成形時や、流動性の高い樹脂材料を用いる成形の場合に特に効果がある。
【0009】
図13は、長方形のフィルターに適用する変形実施例を示すもので、直線の誘導帯6’と矩形の誘導板7’からなる複合誘導体8’を用いたものである。本実施例の場合、誘導帯6’は長辺に平行して設けているが、長辺に直交する方向に設けても良い。フィルターの形状やサイズによって、複合誘導体8’の形状も随意に変える必要がある。
図14は、長方形のフィルターに適用する他の変形実施例を示すもので、直線の誘導帯6’と複数の円形の誘導板7’からなる複合誘導体8’を用いたものである。本実施例の場合、誘導帯6’上には複数の円形の誘導板7’が形成されているので、周辺でのリブ抜けに効果がある。ゲート直下の誘導板の方が効果的であるが、ゲート直下にない誘導板も畜圧と流出力の作用は有するので一定の効果は上がる。
図15から17までは、本発明金型の他の変形実施例を示すもので、図15は、ゲート11を除き、上型1と下型2の形状をまったく対象に形成したものである。それぞれの型に誘導帯溝6と誘導板溝7、細溝5、枠体溝4を形成したものである。
図16は、上型1には網溝5は設けず、下型の誘導板溝7を誘導帯溝6の厚みよりも薄くしたものである。溶融樹脂の畜圧・流出力を高めるために有効な構造である。
図17は、上型1には誘導帯溝6と網溝5を設けない構造を示すものである。上型1には網溝5しかないため、フィルター全体が薄手にでき、サンドイッチ構造の中に収納される場合のフィルターに適している。いずれの図面にも図示はしないが、実際の成形時には、下型2の誘導板7’には押し出しピンが設けられる。
【0010】
【発明の効果】
本発明は以上のように、従来の誘導帯に加えて、誘導板との組み合わせで複合誘導体を採用したので、低圧成形であるにもかかわらず金型内の熔融樹脂の流動が格段にスムースになり、大型の一体成形プラスチックフィルターが製造可能になるとともに、流動性の向上によるバリの発生が抑えられるという、大きな効果が得られる。
以下請求項に対応して効果を述べる。
(請求項1)
フィルターのリブ抜けを解消するために射出圧力を上げると、リブ抜けは解消するが誘導帯溝6の交差部での流動が過多になってしまい誘導帯溝6の交差部ではバリが発生しやすいが、誘導板溝7を設け誘導帯と組み合わせて複合誘導体溝8を形成することで、バリの抑制とリブ抜けの防止ができる。誘導板溝7に流れ込んだ余剰の溶融樹脂は、誘導板溝7でいったん蓄圧され、そしてその後に網溝5に流れ込むが、複合誘導体溝8の作用効果により、射出圧力を高めることなく、かつ、樹脂温が通常よりも2〜3割低くても成形ができるという効果がある。また、熔融樹脂の材料を流動性の高いものに変えたときにも活用できる。つまり、熔融樹脂の流入がスムースになり過ぎて網溝5の中心への流動力が増強され、逆に中心部分でバリが発生しやすくなるが、これを誘導板溝7で吸収できるので、誘導帯溝6の交差部でのバリの発生を抑制すると同時に、網溝5の外周でのリブ抜けも防止できるという効果がある。
(請求項2、請求項3、および請求項4)
誘導板溝7の形状を種々に変えることで、特殊な形状のフィルター成形に効果がある。矩形、三角形などの鋭角な誘導板溝7は、誘導帯溝6の空間部に鋭角部を配置する構成にしたもので、溶融樹脂の送り出しに対して積極的に方向性を持たせたものである。これにより、棒状の誘導帯溝6の間の空間部での流動圧力の低下を積極的に補うという効果を奏する。
楕円形、円形、多角形などの誘導板溝7は、半円状の先端部を誘導帯溝6の空間部に配置する構成にしたもので、溶融樹脂の送り出しに若干の方向性を持たせたもので、鋭角な矩形の誘導板溝7より方向性は弱いが、溶融樹脂の送り出しに均一性があるので汎用性の高い形状のフィルターの成形に効果がある。
(請求項5、請求項6、請求項7、および請求項8)
請求項1から請求項4の金型で成形されるフィルターの形状を記載したもので、その作用効果は上記請求項1から請求項4の記載と同様である。
以上種々の実施例を挙げて説明したが、本発明の原理を利用した他の実施例についても本発明の保護の対象になることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明射出成形金型の上型の平面図である。
【図2】本発明射出成形金型の下型の平面図である。
【図3】本発明射出成形金型からできたメッシュ状フルターの平面図である。
【図4】本発明射出成形金型からできたストライプ状フルターの平面図である。
【図5】本発明メッシュ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図6】本発明ストライプ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図7】本発明射出成形金型の他の変形実施例の平面図である。
【図8】本発明メッシュ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図9】本発明ストライプ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図10】本発明ストライプ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図11】従来のメッシュ状フルターの解析を説明するための平面図である。
【図12】本発明のメッシュ状フルターの解析を説明するための平面図である。
【図13】本発明メッシュ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図14】本発明メッシュ状フルターの他の変形実施例の平面図である。
【図15】本発明射出成形金型の他の変形実施例の平面図である。
【図16】本発明射出成形金型の他の変形実施例の平面図である。
【図17】本発明射出成形金型の他の変形実施例の平面図である。
【符号の説明】
1 上型 2 下型 3 切欠部溝
3’ 切欠部 4 枠体溝 4’ 枠体部
5 網溝 5’ 網部 6 誘導帯溝
6’ 誘導帯 7 誘導板溝 7’ 誘導板
8 複合誘導体溝 8’ 複合誘導体 9 帯体
10 リブ抜け部 11 ゲート 11‘ ゲート跡
12 矢印A 13 矢印B
Claims (8)
- 上型と下型を押し合わせるとともにゲートを介して熔融樹脂を注入することでプラスチック製品を成形する金型装置において、以下の構成であることを特徴とする射出成形金型。
(a)上型および/または下型に、縦および/または横方向の細溝を形成するための網溝
(b)上型および/または下型に、網溝を囲うように形成される枠体溝
(c)上型および/または下型に形成された、熔融樹脂を金型内に注入するためのゲート
(d)上型および/または下型に、枠体溝には直接接続されず、金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから細溝へ流入させるための棒状の誘導帯溝
(e)上型および/または下型に、ゲートから金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから細溝へ流入させるための平板状の誘導板溝
(f)平板状の誘導板溝と棒状の誘導帯溝を組み合わせた複合誘導体溝 - 前記棒状の誘導帯溝上に熔融樹脂を金型内に注入するためのゲートを配置し、さらに前記棒状の誘導帯溝上に楕円を含む円形状の誘導板溝を形成したことを特徴とする前記請求項1記載の射出成形金型。
- 誘導板溝をひし形を含む矩形状に形成したことを特徴とする前記請求項1記載の射出成形金型。
- 誘導板溝を多角形状に形成したとしたことを特徴とする前記請求項1記載の射出成形金型。
- 射出成形により成型されるプラスチック製品において、以下の構成であることを特徴とするプラスチックフィルター。
(a)縦および/または横方向の細糸からなる網部
(b)網部を囲うように形成される枠体部
(c)枠体部には直接接続されず、金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから網部に流入させるための棒状の誘導帯
(e)金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから網部へ流入させるための平板状の誘導板
(f)平板状の誘導板と棒状の誘導帯を組み合わせた複合誘導体 - 前記棒状の誘導帯上に、楕円を含む円形状の誘導板を形成したことを特徴とする前記請求項5記載のプラスチックフィルター。
- 誘導板をひし形を含む矩形状に形成したことを特徴とする前記請求項5載のプラスチックフィルター。
- 誘導板を多角形状に形成したとしたことを特徴とする前記請求項5記載のプラスチックフィルター。
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