JP2002083484A - 磁気ディスク装置 - Google Patents

磁気ディスク装置

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JP2002083484A
JP2002083484A JP2001185753A JP2001185753A JP2002083484A JP 2002083484 A JP2002083484 A JP 2002083484A JP 2001185753 A JP2001185753 A JP 2001185753A JP 2001185753 A JP2001185753 A JP 2001185753A JP 2002083484 A JP2002083484 A JP 2002083484A
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magnetic disk
lubricant
perfluoropolyether
head slider
molecular weight
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JP2001185753A
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Inventor
Takayuki Nakakawaji
孝行 中川路
Mina Ishida
美奈 石田
Yutaka Ito
伊藤  豊
Hiroyuki Matsumoto
浩之 松本
Kouji Tani
谷  弘詞
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】磁気ディスク表面の潤滑膜厚の減少が小さく、
磁気ヘッドと磁気ディスク表面との間の摺動信頼性に優
れる磁気ディスク装置を提供する。 【解決手段】サスペンションの表面にパーフロロポリエ
ーテルを付着させるか、フィルターにパーフロロポリエ
ーテルを含浸させるかして、磁気ディスク装置内の熱と
気流を使ってパーフロロポリエーテルを磁気ディスク表
面に供給する。パーフロロポリエーテルは分子量400
0以下の成分を40%以上含む。 【効果】磁気ディスク表面の潤滑膜厚の減少が小さく、
磁気ヘッドと磁気ディスク表面との間の摺動信頼性に優
れる磁気ディスク装置が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気ディスク装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスク表面に塗布された潤滑剤の
膜厚減少は、磁気ヘッド・スライダーによる掻き取り、
磁気ディスクの回転に伴って生じる遠心力や気流の剪断
力,装置内部の温度上昇による飛散などが原因で発生す
る。磁気ディスクと磁気ヘッド・スライダーとの間での
摺動耐久性の確保のために、磁気ディスク表面に潤滑剤
を塗布する以外に、潤滑剤をディスク表面に供給するこ
とが行われている。磁気ディスク装置内で潤滑剤をディ
スク表面に供給する方法が、特開昭59−218668号,特
開昭60−239921号,特開平8−45238号,
特開平10−312660号,特開平8−45239
号,特開平6−295579号,特許番号 第2796
852号等に提案されている。
【0003】特開昭59−218668号は磁気ディス
クの回転によって発生する熱空気流により装置下部に設
けた潤滑剤含浸部材から潤滑剤蒸気を発生させ、ハブ中
心の通気穴より磁気ディスク表面に潤滑剤を供給する。
特開昭60−239921号はミリスチン酸を含浸させ
た部材に熱風を入射させて蒸発したミリスチン酸蒸気を
磁気ディスク表面に付着させ潤滑膜を形成する。特開平
8−45238号は、アームもしくはサスペンションに
液体潤滑剤からなる潤滑膜を形成し、ディスク回転に伴
う気流によってディスク表面に潤滑剤を供給する。特開
平10−312660号,特開平8−45239号,登録第2
796852号は、ウィック材に低粘度の液体潤滑剤を
含浸させてディスクの近傍に取り付け、ディスク表面に
液体潤滑剤を供給する。特開平6−295579号は、
加熱素子を内蔵したリザーバーから潤滑剤を供給するこ
とを記載する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】掻き取りおよび飛散に
よって減少する潤滑剤の量と、熱や気流によって供給さ
れる潤滑剤の量とのバランスが釣り合った状態ではディ
スク表面の潤滑膜厚は一定となり、磁気ディスクと磁気
ヘッド・スライダーとの間の摺動耐久性は確保される。
しかし、バランスが崩れると潤滑膜厚の減少が続いた
り、逆に潤滑膜厚が厚くなりすぎたりして、潤滑性能が
低下する。さらに、潤滑性能が低下する他の原因として
は装置内外からもたらされるコンタミによるヘッド・ス
ライダーに付着する汚れも挙げられる。
【0005】これらの課題を潤滑剤供給によって解決す
るには、潤滑剤の分子構造や分子量などの物性および磁
気ディスク装置内に保持される潤滑剤の量を詳細に検討
し、適用しなければならない。上記の従来技術には、熱
や気流によって供給される潤滑剤の量の最適化やヘッド
・スライダーに付着する汚れを低減するために、潤滑剤
の分子構造や分子量などの物性および磁気ディスク装置
内に保持される潤滑剤の量についての具体的な検討や提
示がされておらず、現行では潤滑剤を熱や気流によって
安定に供給することができない。
【0006】さらに、磁気ディスク装置の動作方式や構
造も考慮しなければならない。例えば、特開昭59−2
18668号等に記載されているCSS(Contact Star
tStop)方式では、潤滑膜厚が厚くなるとヘッド・スラ
イダーと磁気ディスク間で強い吸着が発生し、磁気ディ
スクが起動できなくなる等の障害が発生する。このた
め、潤滑剤を供給するにはL/UL(Load/Unload)方
式が望ましいと言える。
【0007】本発明の目的は、磁気ディスク表面の潤滑
膜厚の減少が小さく、磁気ヘッドと磁気ディスク表面と
の間の摺動信頼性に優れる磁気ディスク装置を提供する
ことにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者等は、磁
気ディスク表面の潤滑膜厚の減少を少なくするために、
磁気ディスク装置内の熱とディスク回転による気流を利
用して、潤滑剤を保持する部品から磁気ディスク表面に
供給される潤滑剤について、最適な分子量と分子構造を
見出した。また、潤滑剤を保持する部品についても検討
し、これを最適化した。
【0009】熱や気流によって潤滑剤を供給する場合、
供給潤滑剤を保持する部品の材料,その設置位置の気流
の方向・強さ,温度等によって、供給される潤滑剤の量
が大きく異なる。磁気ディスク装置の容積,ディスクの
回転数,搭載される磁気ディスクの枚数によって、必要
な潤滑剤の量も異なる。また、分子量や分子構造によっ
て潤滑剤の物性が異なるため、潤滑剤の供給量を最適化
するためには、これらも特定する必要がある。
【0010】磁気ディスク用潤滑剤であるパーフロロポ
リエーテルは、一般的な産業機械で使用される鉱油等の
炭化水素系潤滑材料と比較して、蒸発しにくい潤滑剤で
ある。分子量が高くなるとより蒸発しにくくなる。従っ
て、熱と気流によってパーフロロポリエーテルをディス
ク表面に供給するには、蒸発しやすい比較的低分子量成
分が必要となる。
【0011】また、パーフロロポリエーテル分子の末端
基の構造によって、潤滑剤を保持する部品との吸着力や
潤滑剤分子同士の相互作用が大きく異なるので、供給量
を最適にするためには、末端基の構造を特定する必要が
ある。潤滑剤を保持する部品と潤滑剤との吸着力は潤滑
剤の供給され易さに影響し、潤滑剤分子同士の相互作用
はディスク表面の潤滑膜の修復に影響する。
【0012】また、磁気ディスク装置の外部から入った
ガスや装置内で発生したガス,摩耗粉,塵埃などがスラ
イダーの摺動部やヘッド素子部に付着するのを可能な限
り軽減できる潤滑剤を選定するとよい。
【0013】本発明の特徴は、磁気ディスク表面以外か
ら磁気ディスク表面へ潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段
が、磁気ディスク装置の内部に設けられていて、潤滑剤
供給手段が供給する潤滑剤は、構造式1〜5のうち少な
くとも1つを含み、含まれるパーフロロポリエーテルの
分子量4000以下の成分である、更に望ましくは分子
量1000以上であって分子量4000以下の成分が4
0%以上含まれていることにある。
【0014】
【化1】
【0015】潤滑剤供給手段を、潤滑剤を塗布したサス
ペンションもしくはアームとしてもよい。
【0016】潤滑剤供給手段として、潤滑剤を保持する
潤滑剤保持手段を用いてもよい。この場合、潤滑剤は構
造式1〜5のパーフロロポリエーテルを含むとよい。潤
滑剤保持手段は、フィルター,ウィック材など、潤滑剤
を液垂れせずに保持できる材料がよい。
【0017】前記潤滑剤保持手段は構造式1〜5のパー
フロロポリエーテルを含浸させたフィルターであるとよ
い。この場合、前記磁気ヘッド・スライダーの浮上面へ
の付着物を低減するには構造式1〜5のパーフロロポリ
エーテルを0.15 μリットル以上含浸させるとよい。
【0018】前記磁気ヘッド・スライダーの浮上面への
付着物を低減し、さらに潤滑膜厚の減少も低減するには
構造式1〜5のパーフロロポリエーテルを0.5 μリッ
トル以上含浸させるとよい。尚、フィルタに含浸させる
量は、液垂れ等の装置の動作上不都合を生じない範囲に
おいて特に制限は無く、潤滑膜の補修効果を考慮して定
める。
【0019】磁気ディスクに形成された潤滑膜が、構造
式1〜5のパーフロロポリエーテルのうち少なくとも1
つを含むと、潤滑剤供給手段から供給された潤滑剤が磁
気ディスク表面の潤滑膜に付着しやすく、潤滑膜の補修
効果が高い。
【0020】潤滑剤供給手段を有する磁気ディスク装置
の動作方式としては、従来のCSS(Contact Start Sto
p)方式でもヘッドクラッシュ等を防止する上で効果があ
るが、磁気ヘッド・スライダーが磁気ディスク回転時の
み該磁気ディスクの面上にあり,該磁気ディスク停止時
には磁気ディスクの外周側の面外に退避するL/UL
(Load/Unload)方式の方が吸着等の問題が発生しない
点でより有利である。
【0021】以上のように潤滑剤を潤滑剤供給手段から
供給することにより、磁気ディスクと磁気ヘッド・スラ
イダーとの間の摺動耐久性を確保することができる。ま
た、潤滑剤を安定に供給でき、大幅な装置の設計変更や
部品数の増加が不要である。
【0022】
【発明の実施の形態】(1)潤滑剤の供給源 本発明では、磁気ディスク装置内の熱とディスク回転に
よる気流によって潤滑剤を供給するために、以下のよう
にして潤滑剤の供給源を磁気ディスク装置内に設けた。
【0023】サスペンション上、アーム上の表面に潤
滑剤を塗布する。または 潤滑剤保持手段(フィルター,ウィック材など)に潤
滑剤を含浸させて、磁気ディスク装置内に内蔵する。
【0024】ディスクが回転して装置内の温度が上昇す
ると、供給源から潤滑剤が蒸発しディスク表面に供給さ
れる。なお、潤滑剤を含浸させたフィルターは、装置内
の気流を効果的に利用できるよう配置した。
【0025】(2)潤滑剤の構成 本発明では、供給用潤滑剤としてパーフロロポリエーテ
ルを用いる。安定供給が可能で、かつヘッドによる掻き
取りに対して十分な修復機能を達成するために、吸着性
の極性基を有するパーフロロポリエーテルを使用する。
そして、パーフロロポリエーテルの分子量を、磁気ディ
スク装置内の温度で蒸発し、気流によって供給できるに
十分な値に規定した。具体的なパーフロロポリエーテル
としては以下のものが挙げられる。
【0026】
【化1】
【0027】これらの潤滑剤はパーフロロポリエーテル
鎖の両端に極性基を有しており、ディスク表面に吸着し
やすく、潤滑膜の修復効果が高い。また、塗布若しくは
含浸させる潤滑剤の量は、装置筐体の構造と容積に応じ
て調整した。
【0028】(3)本発明の磁気ディスクの構成 磁気ディスクは、基板上に下地膜,磁性層,カーボンを
主体とする保護膜、更にその上にパーフロロポリエーテ
ルからなる潤滑膜を最外層として形成する構成である。
潤滑膜はパーフロロポリエーテルで構成されている。具
体的には構造式1〜4の潤滑剤が挙げられるが、本発明
はこれらに限定されるものではない。
【0029】(4)本発明の磁気ディスク装置の用途 本発明に記載の磁気ディスク装置の用途としては、電子
計算機,ワードプロセッサー等の外部メモリー(具体的
にはハードディスク装置等)が挙げられる。またモーバ
イルコンピューター,ナビゲーションシステム,ゲー
ム,携帯電話,PHS等の各種情報機器等にも適用可能
である。
【0030】以下、実施例により本発明を更に具体的に
説明する。
【0031】(実施例1)本実施例では、サスペンショ
ン15に潤滑剤の供給源を設けた場合と、潤滑剤の供給
源を設けなかった場合とで、潤滑膜厚の変化を測定する
ことにより潤滑剤供給の効果を検証した。
【0032】図1に本実施例で使用した試験装置1を示
す。試験装置1は実際の磁気ディスク装置をベースにし
ており、実機の動作での評価が可能である。磁気ヘッド
・スライダー2はサスペンション15の先端に取り付け
られており、サスペンション15はアーム部3で支持さ
れている。アーム部3には歪みゲージが内蔵されてお
り、ヘッド/ディスク間の摩擦力測定が可能である。ス
ピンドル部とボイスコイルモーター部は、ディスク回転
数やシークの周波数を変えられるよう改良している。ま
た、装置内部の温度をコントロールするために装置のカ
バー5にはコードヒータ6が取り付けられており、室温
から80℃まで温度を変化させることが可能である。さ
らに、潤滑剤を保持し加熱が可能なバーヒータ7とフィ
ルター8も内蔵している。装置の内容積は450mlで
ある。磁気ディスク4は、直径63.5mm(2.5インチ)の
ガラス基板上にCr合金からなる下地膜,CoCrTa
Ptの磁性層,カーボン保護膜を順に成膜して形成され
ている。カーボン保護膜は、Ar/N2 ガス雰囲気下で
成膜して硬度を高めており、膜厚は5nmである。
【0033】カーボン保護膜の上に構造式1のパーフロ
ロポリエーテル(数平均分子量3000)からなる潤滑膜2n
mを形成した磁気ディスク4を用意した。膜厚はFT−
IRによって測定した。
【0034】構造式1のパーフロロポリエーテルをHP
LC(High Pressure LiquidChromatography)にて分子
量分画した。図2に、パーフロロポリエーテルを8領域
に分子量分画した結果を示す。分子量分画したパーフロ
ロポリエーテルの中から、試料1〜5を作成した。
【0035】試料1:分子量1340 試料2:分子量2180 試料3:分子量3060 試料4:分子量4640 試料5:分子量7100 これらのパーフロロポリエーテルをサスペンション15
の磁気ディスク4と対向する面で、磁気ヘッド・スライ
ダー2から10mmの位置16に1.0 μリットル滴下し
て、サスペンション15を試験装置1に装着した。
【0036】65℃環境下で、磁気ディスク4の半径1
6mmから28mmの面をランダムシーク(ランダムシーク
試験)させた。磁気ディスク4の回転数は5400rpm
である。本実施例の試験では磁気ヘッド・スライダー2
と磁気ディスク4が接触に近い状態で摺動させ、加速実
験を行うために磁気ヘッド・スライダー2の荷重を通常
(25mN)の約1.5倍となる37.5mNで実施し
た。
【0037】図3に測定時間に対する磁気ディスク4表
面の潤滑膜厚の変化を示す。パーフロロポリエーテルを
サスペンションに滴下しなかった場合を比較例1として
示す。
【0038】比較例1では120時間後には0.3nm
にまで低下しているのに対し、試料1〜5のパーフロロ
ポリエーテルを滴下した場合は、潤滑膜厚の減少が小さ
い。またこの結果は、分子量が小さいほど潤滑膜厚の減
少が小さいという傾向を示している。
【0039】比較例1の結果から、ディスク表面以外か
ら潤滑剤が供給されない場合には、潤滑膜厚が平均0.
3nm/24h で減少する。実施例1での潤滑剤供給
率は図3の結果から、分子量が1340のとき0.34
nm/24h,分子量が2180のとき0.3nm/24
h,分子量が3060のとき0.26nm/24h,分
子量が4640のとき0.19nm/24h,分子量が
7100のとき0.08nm/24hであると計算でき
る。十分な膜厚を保持し装置の信頼性を得るには、少な
くとも潤滑剤供給率を約0.2nm/24h 以上にする
必要があるが、以上のように分子量が約4000以下の
パーフロロポリエーテルを用いることで、磁気ヘッド・
スライダー2によって磁気ディスク4表面の潤滑剤が掻
き取られた場合であっても、サスペンション15から潤
滑剤が熱と気流によって供給されるため、磁気ディスク
4表面の潤滑膜厚の減少を大幅に低減することができ
る。
【0040】実施例1は潤滑剤の分子量と供給量の関係
を明らかにするためにHPLCによって分子量を分画し
た潤滑剤を使用した。しかし、実際に装置で使用する場
合、市販されている潤滑剤を使用した方がコスト的には
有利である。比較例1の結果から潤滑剤が供給されない
場合には潤滑膜厚が平均0.3nm/24h で減少する
ことから市販潤滑剤が数平均分子量4000以上であっ
ても潤滑剤の供給量から計算すると数平均分子量が40
00以下が全体に対して40%以上あれば、潤滑膜厚の
減少を軽減できる。
【0041】以上より分子量4000以下の成分が全体
に対して40%以上含むパーフロロポリエーテルの使用
であれば、熱と気流によって安定に潤滑剤を磁気ディス
ク表面に供給でき、潤滑膜厚の減少を軽減することがで
きる。
【0042】次に先ほどHPLCで分子量分画した試料
1〜5を塗布した磁気ディスク4を磁気ヘッド・スライ
ダー2と磁気ディスク4を完全な接触状態で摺動させた
ときの摺動耐久性を評価した。試験は磁気ヘッド・スラ
イダー2と磁気ディスク4を回転数150rpm,荷重1
1.76mNで連続接触摺動させディスククラッシュが
発生するまでの摺動回数で評価した。なお、試験は最高
で100k回まで実施し、実際の磁気ディスク装置での
摺動耐力の目標値として50k回以上を目安とした。図
4に結果を示す。なお、ここでは実施例1と同じパーフ
ロロポリエーテルをHPLCによって分子量分画した分
子量850のパーフロロポリエーテルを塗布した磁気デ
ィスク4を同様の条件で試験した結果と比較検討した
(試料15)。試料15では、摺動回数7k回でディス
ククラッシュするのに対し、実施例1の他の試料は何れ
も50k回以上の摺動耐力を示している。このことか
ら、十分な摺動耐力を確保するには供給する潤滑剤(パ
ーフロロポリエーテル)は少なくとも分子量が1000
以上であることが望ましいといえる。但し、図3の結果
を考慮する限りにおいて、分子量が1000以下であっ
ても、潤滑膜厚の減少の防止できるという有効な効果が
否定されるわけではないことには留意すべきである。
【0043】以上の結果より分子量4000以下の成分
が全体に対して40%以上含むパーフロロポリエーテル
を使用すれば、熱と気流によって安定に潤滑剤を磁気デ
ィスク表面に供給することで潤滑膜厚の減少を軽減で
き、さらに少なくとも分子量が1000以上分子量40
00以下の成分を40%以上含む潤滑剤(パーフロロポ
リエーテル)を使用することとすれば、熱と気流によっ
て安定に潤滑剤を磁気ディスク表面に供給でき、潤滑膜
厚の減少だけでなく、優れた摺動信頼性をも確保するこ
とができる。
【0044】(実施例2)実施例1ではサスペンション
15に潤滑剤の供給源を設けたが、実施例2では潤滑剤
をフィルター8に含浸させ、潤滑剤の供給源として磁気
ディスク装置内に設置した。使用したフィルター8は縦
10mm×横20mm×厚さ2mmのシート状である。設置個
所の例を図1に示す。
【0045】試料1〜5のパーフロロポリエーテルをフ
ッ素系溶媒(HFE7100)に40wt%溶解させ、
マイクロピペットによりフィルター8に20μリットル
滴下し、実施例1と同条件でランダムシーク試験を行っ
た。図5に試験結果を示す。パーフロロポリエーテルを
用いなかった場合を比較例1として示す。
【0046】比較例1と比較して、パーフロロポリエー
テルを含浸させたフィルター8を設置した場合は、潤滑
膜厚の減少が小さく、潤滑剤供給による摺動耐久性が優
れている。実施例1の結果と同様、分子量が4000以
下では潤滑膜厚がほとんど一定である。したがって、分
子量4000以下の成分を40%以上含むパーフロロポ
リエーテルを用いることにより、フィルター8から潤滑
剤が熱と気流によって供給されるため、磁気ディスク4
表面の潤滑膜厚の減少を大幅に低減することができる。
【0047】(実施例3)実施例3では、試験装置1内
に試料6〜11のパーフロロポリエーテルを含浸させた
フィルター8を設置し、磁気ディスク表面に潤滑剤がど
の程度供給されるかを調べた。試料6〜8は構造式1、
試料9は構造式2、試料10は構造式3、試料11は構
造式5、試料16は構造式4のパーフロロポリエーテル
をそれぞれ分子量分画したものである。試料6〜16の
パーフロロポリエーテルをフッ素系溶媒(HFE710
0)に40wt%溶解させた溶液を作り、フィルター8
に20μリットル含浸させた。
【0048】試料6:分子量2000 試料7:分子量4000 試料8:分子量6000 試料9:分子量2000 試料10:分子量2000 試料11:分子量2000 試料16:分子量2000 潤滑剤を塗布しない磁気ディスク4(無潤滑)を回転さ
せ、24h回転させた後のディスク表面の潤滑膜を測定
する。回転数は5400rpm である。試験装置1には磁
気ヘッド・スライダー2とアーム部3を装着しない。回
転中はコードヒータ6によって試験装置1内部を65℃
に加熱した。
【0049】図6に結果を示す。実施例3の評価におい
て試料6,7,9,10,11,16の潤滑剤は24h
後に潤滑膜厚が0.3nm 以上である。これに対し、試
料8の潤滑剤は、潤滑膜厚が0.15nm 以下であり、
潤滑剤の供給が非常に少ないことがわかる。
【0050】ディスク表面以外から潤滑剤を供給しない
とき(比較例1)に潤滑膜厚の減少は24時間で0.3
nm であるから、試料6,7,9,10,11,16
の潤滑剤をフィルターに含浸させて潤滑剤供給源に用い
れば、熱と気流によってディスク表面に潤滑剤を安定に
供給することができる。
【0051】(実施例4)図7に磁気ディスク装置14
の上面模式図及び側面模式図を示す。磁気ディスク装置
14は直径63.5mm(2.5インチ)の磁気ディスク
4,筐体10,スピンドルモーター9,アクチュエータ
ー12,磁気ヘッド・スライダー2,サスペンション1
5,制御回路13を備える。磁気ディスク4の表面に
は、構造式1のパーフロロポリエーテルで数平均分子量
3000の潤滑剤を膜厚2nmで塗布した。この磁気デ
ィスク装置14はLoad/Unload機構を有する。磁気ディ
スク装置14は、磁気ディスク4を2枚装着しており、
装置内部の容積は30.0ml である。試料6(分子量
2000)と下記構造式の潤滑剤(分子量4000)を
フッ素系溶媒(HFE7100)に40wt%溶解させ
た溶液1.25 μリットル(パーフロロポリエーテル
0.5 μリットル含有)をそれぞれ作製し、フィルター
8に含浸させた。
【0052】
【化2】
【0053】なお、上記構造式の潤滑剤を含浸させたも
のを比較例2とする。磁気ディスク装置14を半径16
mmから28mmの面を65℃環境下で1000hランダム
シーク(ランダムシーク試験)させた。また、比較例3
として潤滑剤を供給しない場合も同様に試験した。磁気
ヘッド・スライダー2の荷重は25mNで、磁気ディス
ク4の回転数は4500rpm である。
【0054】図8に装置稼動時間に対する膜厚の変化を
示す。1000hでの膜厚の減少が試料6では約0.1
8nm 、比較例2では約0.37nm である。これに
対し、潤滑剤を供給しない比較例3では1000hでの
膜厚の減少が約1.2nm であった。試料6並びに比較
例2では潤滑剤の供給により膜厚の減少が大幅に低減さ
れている。これは先述のとおり、分子量の制御による効
果である。なお、磁気ディスクを3枚搭載した場合で
も、同じ傾向の結果が得られている。
【0055】次に、前記ランダムシーク試験1000h
後の磁気ヘッド・スライダー2の浮上面を写真撮影し
た。図9に結果を示す。
【0056】比較例2と比較例3(潤滑剤供給無し)で
は浮上面に汚れが付着しているのが目立つが、試料6で
は汚れが全くといってよいほど付着していない。つま
り、比較例3は潤滑剤の供給(膜厚の減少の防止)とい
う有用な効果があるものの、浮上面への汚れ付着防止に
は効果が少ないことを意味する。試料6と比較例2の構
造上の差異は分子の末端近傍に存在する極性基の有無で
ある。これは極性基を有する分子の方が浮上面とより強
く作用するため、比較例3で示されるような無極性潤滑
剤よりも汚れ付着防止に効果を奏するものと考えられ
る。
【0057】以上、分子中に極性ある有機基を有する試
料6等の潤滑剤を供給すれば磁気ヘッド・スライダーの
浮上面への汚れをも防止できるようになる。
【0058】(実施例5)実施例5では、磁気ディスク
4の表面に下記構造の潤滑剤を膜厚2nmで塗布した。
【0059】
【化3】
【0060】そして試料6,7,8の潤滑剤(パーフロ
ロポリエーテル)を磁気ヘッド・スライダー2を支持し
ているサスペンションの磁気ディスク4と対向する面で
磁気ヘッド・スライダー2から10mmの箇所にそれぞれ
1.0μリットル滴下した。
【0061】この磁気ヘッド・スライダー2を実施例4
に記載の磁気ディスク装置14に装着し、実施例4と同
条件で1000hランダムシーク(ランダムシーク試
験)させ、装置稼動時間に対する潤滑膜厚の変化の測定
を行った。また、測定終了後(1000h終了後)の磁
気ヘッド・スライダー2の摺動部に付着した異物を光学
顕微鏡で観察した。
【0062】図10に装置可動時間に対する潤滑膜厚の
変化を示す。実施例5と同じ磁気ディスク装置14でサ
スペンションに潤滑剤を滴下せずに(供給無し)同様の
試験を実施した場合を比較例4とする。また、分子量が
850で実施例5と同じ分子構造の潤滑剤を同様にサス
ペンションに滴下した場合を比較例5とする。比較例4
では、1000hでの膜厚の減少が約1.1nm であっ
た。比較例5では、1000hで膜厚の減少が約0.9
nm であった。このことは、本装置の実験においてで
はあるが、比較例5の潤滑剤は分子量が4000以下で
あり、膜厚の減少という効果を有し得るものの、摺動耐
久性が低いためにディスク表面に供給される潤滑剤の量
よりも、磁気ヘッド・スライダー2によって容易に掻き
取られる量の方が多かったためであると考えられる。ま
た、試料8では1000hで比較例4より潤滑膜厚の減
少が少ないものの、試料6,7と比較して潤滑膜厚の減
少量が2倍以上であり潤滑剤供給の効果が小さい。これ
に対し試料6,試料7は、潤滑膜厚の減少が1000h
でも0.25nm 以下であり、潤滑剤の供給による効果
が大きく磁気ディスク装置として信頼性に優れると言え
る。また、比較例4,5では磁気ヘッド・スライダー2
の摺動面に汚れが付着していたのに対し、試料6,7で
は磁気ヘッド・スライダー2の摺動面に汚れの付着は見
られなかった。
【0063】以上の結果より、分子量が1000以上で
あって分子量4000以下の成分を40%以上含む潤滑
剤(パーフロロポリエーテル)であれば、潤滑剤の安定
供給が可能であり、かつ摺動耐力に優れ、正常な動作を
維持できる信頼性に優れる磁気ディスク装置を得ること
ができる。
【0064】(実施例6)実施例6では、サスペンショ
ン15に試料6〜8および比較例2のパーフロロポリエ
ーテルを滴下し、実施例3と同様にランダムシーク試験
を行い、装置可動時間に対する潤滑膜厚の変化を測定
し、また1000h終了後の磁気ヘッド・スライダー2
の浮上面に付着した汚れを光学顕微鏡で観察した。
【0065】磁気ディスク装置は実施例4と同じ図7の
装置を使用した。磁気ディスク4の表面には、構造式1
のパーフロロポリエーテルで数平均分子量3000の潤
滑剤を膜厚2nmで塗布した。ディスク表面以外の潤滑
剤供給源として、サスペンション15の磁気ディスク4
と対向する面で磁気ヘッド・スライダー2から10mmの
箇所に、実施例3で用いた試料6〜8と比較例2のパー
フロロポリエーテルを1.0 μリットル滴下した。比較
例2のパーフロロポリエーテルを滴下したものを比較例
6とする。
【0066】図11に装置可動時間に対する潤滑膜厚の
変化を示す。潤滑剤供給無しの場合(比較例3)では、
1000hで潤滑膜厚が0.8nm 程度にまで減少して
いる。また、試料8では1000hで比較例3より潤滑
膜厚の減少が小さいものの、試料6,7と比較して潤滑
膜厚の減少が2倍以上であり潤滑剤供給の効果が小さ
い。これに対し試料6,試料7は、潤滑膜厚の減少量が
1000h経過後でも0.3nm 以下であり、潤滑剤の
供給による効果が大きく磁気ディスク装置としての信頼
性に優れると言える。
【0067】なお、比較例3と比較例6では磁気ヘッド
・スライダー2の浮上面に汚れが付着していたのに対
し、試料6,7,8では磁気ヘッド・スライダー2の浮
上面に汚れの付着は見られなかった。
【0068】以上の結果から、分子量4000以下の成
分を、より望ましくは分子量が1000以下であって400
0以下の成分を、40%以上含むパーフロロポリエーテ
ルを用いることにより、フィルター8から潤滑剤が熱と
気流によって供給されるため、磁気ディスク4表面の潤
滑膜厚の減少を大幅に低減することができる。
【0069】さらに、極性基を有する潤滑剤(パーフロ
ロポリエーテル)を供給すれば磁気ヘッド・スライダー
2の浮上面への汚れの付着も防止でき、信頼性に優れる
磁気ディスク装置を得ることができる。
【0070】(実施例7)試料6の潤滑剤を磁気ディス
ク4と対向するサスペンション表面上で磁気ヘッド・ス
ライダー2のヘッド素子部から8mm(試料12),15
mm(試料13),20mm(試料14)の箇所にそれぞれ
1.0 μリットル滴下した。これらの磁気ヘッド・スラ
イダー2を磁気ディスク装置14に装着し実施例4と同
条件で試験を実施した。
【0071】図12に装置可動時間に対する潤滑膜厚の
変化を示す。磁気ヘッド・スライダー2のヘッド素子部
から30mmの個所に試料6の潤滑剤を滴下した比較例7
では潤滑膜厚の減少が多く、潤滑剤を十分に供給できな
いのに対し、実施例7では潤滑膜厚の減少が少ない。一
方、磁気ヘッド・スライダー2のヘッド素子部から3.
0mm の個所に試料6の潤滑剤を滴下した比較例8で
は、潤滑膜厚の減少は殆ど見られない。しかし、100
0hの試験終了後に磁気ヘッド・スライダー2の摺動面
を観察した結果、磁気ヘッド・スライダー2のヘッド素
子部側の摺動面に汚れの付着が確認された。また、比較
例7でも異物の付着が確認された。これに対し、試料1
2,13,14では汚れの付着は少なく、特に試料1
2,13では汚れの付着は全く観察されなかった。比較
例8で観察された摺動面の汚れの付着は、潤滑剤を滴下
する位置が素子部に近すぎるために潤滑剤がヘッド素子
部に滲んだためである。また、ヘッド素子部から30mm
の個所に試料6の潤滑剤を滴下した比較例7では潤滑剤
を滴下する位置が素子部に遠すぎるめに潤滑剤を十分に
供給するための気流の力が弱いためと考えられる。
【0072】以上の結果から潤滑剤を滴下するサスペン
ションの表面はヘッド素子部から5.0mm 以上25mm以
下程度が望ましい。
【0073】(実施例8)図13に磁気ディスク装置1
7の上面模式図及び側面模式図を示す。磁気ディスク装
置17は76.2mm(3.0インチ)の磁気ディスク1
8,筐体10,スピンドルモーター9,アクチュエータ
ー12,磁気ヘッド・スライダー2,制御回路13を備
える。この磁気ディスク装置17は、磁気ディスク装置
14と同様にLoad/Unload機構を有する。磁気ディスク
装置17は、磁気ディスク18を5枚装着しており、装
置内部の容積は120mlである。磁気ディスク18に
は構造式1のパーフロロポリエーテル(数平均分子量6
000)からなる潤滑膜2nmを形成した。
【0074】試料6と下記構造式の潤滑剤(分子量40
00)をフッ素系溶媒(HFE7100)に40wt%溶解さ
せた溶液2.5 μリットル(パーフロロポリエーテル
1.0μリットル含有)作製し、フィルター8に含浸さ
せた。
【0075】
【化2】
【0076】上記構造式の潤滑剤を含浸させたものを比
較例9とする。これらのフィルター8を磁気ディスク装
置17に装着し、ディスク回転数10000rpm でラン
ダムシーク試験を1000hまで行った。また、比較例
10として潤滑剤を供給しない場合も同様に試験した。
【0077】図14に装置可動時間に対する膜厚の変化
を示す。1000hでの膜厚の減少は試料6では約0.
22nm、比較例9では約0.46nmである。これに
対し、潤滑剤を供給しない比較例10では1000hで
の膜厚の減少が約1.35nmであった。試料6並びに
比較例9では潤滑剤の供給により膜厚の減少が大幅に低
減される。
【0078】また、1000h終了後の磁気ヘッド・ス
ライダー2の摺動面を観察した結果、図9の結果と同
様、比較例9と潤滑剤供給無しの比較例10では摺動面
に汚れが付着したのに対し、試料6では磁気ヘッド・ス
ライダー2の浮上面に汚れの付着は見られなかった。
【0079】以上の結果より3.0 インチ対応の磁気デ
ィスク装置においても潤滑剤(パーフロロポリエーテ
ル)の供給により膜厚減少の低減効果が発現する。さら
に試料6のような極性基を有する潤滑剤(パーフロロポ
リエーテル)を供給すれば磁気ヘッド・スライダー2の
浮上面への汚れの付着も防止でき、信頼性に優れる磁気
ディスク装置を得ることができる。
【0080】(実施例9)実施例9では、フィルター8
に滴下する試料6のパーフロロポリエーテルの量を変え
た場合の装置稼動時間に対する潤滑膜厚の変化を測定し
た。また、1000h終了後の磁気ヘッド・スライダー2の
浮上面に付着した汚れをも比較した。
【0081】試験は、実施例4と同じ図7の装置を使用
し、ランダムシーク試験を行った。
【0082】磁気ディスク4の表面には、構造式1のパ
ーフロロポリエーテルで数平均分子量3000の潤滑剤
を膜厚2nmで塗布した。フィルター8に滴下する試料
6のパーフロロポリエーテルの量は以下の通りである。
【0083】0.1μリットル(パーフロロポリエーテ
ル0.04μリットル含有) 0.25μリットル(パーフロロポリエーテル0.1μリ
ットル含有) 0.375μリットル(パーフロロポリエーテル0.15
μリットル含有) 0.7μリットル(パーフロロポリエーテル0.28μリ
ットル含有) 1.25μリットル(パーフロロポリエーテル0.5μリ
ットル含有) 2.5μリットル(パーフロロポリエーテル1.0μリッ
トル含有) 図15に装置可動時間に対する潤滑膜厚の変化を示す。
潤滑剤供給無しの場合(比較例3)では、1000hで
潤滑膜厚が0.7nm 程度にまで減少している。これに
対し、パーフロロポリエーテルを0.15 μリットル以
上含有すれば膜厚の減少を低減することができ、さらに
0.5 μリットル以上含有すれば膜厚の減少を0.3n
m 以下に抑えること即ち、膜厚の減少を大幅に抑制す
ることができる。なお、含浸する潤滑剤の量は装置容積
や搭載する磁気ディスクの枚数によって調整することは
有用であり、この際、装置筐体の構造によって気流の流
れ等を考慮することも有用であろう。
【0084】図16に磁気ヘッド・スライダー2の浮上
面への汚れ付着を観察した結果を示す。図9にも示した
とおり、比較例3(潤滑剤供給無し)の磁気ヘッド・ス
ライダー2の浮上面には多量の汚れが付着していた。ま
た、パーフロロポリエーテル0.1 μリットル含有では
比較例3(潤滑剤供給無し)よりは少ないものの、磁気
ヘッド・スライダー2の浮上面に若干の汚れが付着して
いるのが確認された。これに対し、パーフロロポリエー
テル0.15 μリットル含有と0.5 μリットル含有で
は汚れの付着は見られなかった。
【0085】以上の結果から、装置内の様様な部品から
発生する微量なガスやミスト等の要因による多少の変動
はありうるが、フィルター8に滴下する試料6のパーフ
ロロポリエーテルの量が0.15 μリットル以上である
ときは磁気ヘッド・スライダー2の浮上面への汚れ付着
を防止でき、さらに、0.5 μリットル以上であれば潤
滑膜厚の減少の大幅な抑制という効果をも得ることがで
きる。
【0086】(実施例10)実施例10では磁気ディス
ク装置の動作方式に対する潤滑剤供給の効果を検証し
た。実施例10では、アルミ基板表面上にNiP膜,C
r膜からなる下地膜,CoCrTaPtの磁性層,カー
ボン保護膜を順に形成した磁気ディスクを使用した。な
お、NiP膜にはレーザーにより半径10mm〜20mmの
範囲にバンプ状の突起を形成しているため、カーボン保
護膜表面にも同じ半径位置にバンプ状の突起が帯状(レ
ーザーゾーン)に形成されている。通常この様な形態の
磁気ディスクはCSS(Contact Start Stop)方式の磁
気ディスク装置で使用される。なお、カーボン保護膜表
面には、構造式1のパーフロロポリエーテル(数平均分
子量3000)からなる潤滑膜2nmを形成した。ま
ず、上記磁気ディスクを図1の試験装置に装着し、実施
例2と同様に120hまでランダムシーク試験を行っ
た。シークはレーザーゾーン以外の平滑な面で行った。
フィルター8には、試料2のパーフロロポリエーテルを
フッ素系溶媒(HFE7100)に40wt%溶解させ
た溶液を、マイクロピペットにより20μリットル滴下
している。120hのランダムシーク試験後、磁気ディ
スクの回転を停止すると同時に、レーザーゾーン上に磁
気ヘッド・スライダー2を退避させ、接触状態で24h
放置した。24h放置後に磁気ディスクを再度回転さ
せ、その際に発生するスティクションと120hシーク
した磁気ディスク表面の潤滑膜厚を測定した。
【0087】潤滑膜厚の測定では、初期の膜厚に対して
膜厚の減少が約0.6nm であり、実施例2の試料2と
ほぼ同程度の結果が得られた。つまり、潤滑剤供給によ
り膜厚の減少が大幅に軽減されることがわかった。しか
し、スティクションは7.8gfとなり、非常に高い値
を示した。即ち、CSS方式では潤滑剤を供給すると磁
気ディスクと磁気ヘッド・スライダー間での吸着が発生
し易くなる。このため、CSS方式において潤滑剤を供
給して膜厚減少を防止する効果を得るには、吸着の防止
として磁気ヘッド・スライダーの浮上面に突起を形成す
る等の対策が必要となる。これに対し、磁気ヘッド・ス
ライダーが磁気ディスク停止時には、必ず磁気ディスク
の外周側の面外に退避するロード/アンロード方式で
は、磁気ディスクと磁気ヘッド・スライダー間での吸着
は考慮する必要が無く、潤滑剤供給において有利と言え
る。
【0088】なお、上記した各実施例は、潤滑剤の供給
源として、潤滑剤を含浸させたフィルター8を用いた
が、液垂れを起こさずに潤滑剤を保持でき、磁気ディス
ク装置内の温度と気流によって潤滑剤が容易に移動でき
るような手段に潤滑剤を含浸させてもよい。例えば、ガ
ス吸着フィルター,ウィック材,不織布,紙などを用い
ることができる。また、サスペンションへの塗布や含浸
させる潤滑剤の量は、装置容積に応じて変えることによ
り同様の効果が得ることができる。例えば、直径45.
72mm(1.8インチ),33.02mm(1.3イン
チ),25.4mm(1.0インチ)等のより小径の磁気デ
ィスクを搭載した小形磁気ディスク装置においても十分
に対応可能である。
【0089】
【発明の効果】本発明により、磁気ディスク表面の潤滑
膜厚の減少が小さく、磁気ヘッドと磁気ディスク表面と
の間の摺動信頼性に優れる磁気ディスク装置が得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の試験装置の上面模式図と側面模式図
である。
【図2】パーフロロポリエーテルを8領域に分子量分画
した結果を示す図である。
【図3】実施例1のランダムシーク試験の時間に対する
潤滑膜厚変化を示す図である。
【図4】実施例1で実施した潤滑剤の分子量と摺動特性
との関係を評価した結果である。
【図5】実施例2のランダムシーク試験の時間に対する
潤滑膜厚変化を示す図である。
【図6】実施例3の潤滑剤の分子構造と潤滑剤供給量と
の関係を示す図である。
【図7】実施例4の磁気ディスク装置14の上面模式図
と側面模式図である。
【図8】実施例4の装置可動時間に対する潤滑膜厚の変
化を示す図である。
【図9】実施例4の装置評価試験(図8)1000h後
の磁気ヘッド・スライダー2の浮上面を写真撮影した図
である。
【図10】実施例5及び比較例4,5の装置稼動時間に
対する潤滑膜厚の変化を示す図である。
【図11】実施例6及び比較例6の装置稼動時間に対す
る潤滑膜厚の変化を示す図である。
【図12】実施例7及び比較例7,8の装置稼動時間に
対する潤滑膜厚の変化を示す図である。
【図13】実施例8の磁気ディスク装置17の上面模式
図と側面模式図である。
【図14】実施例8及び比較例9の装置稼動時間に対す
る潤滑膜厚の変化を示す図である。
【図15】実施例9及び比較例3の装置稼動時間に対す
る潤滑膜厚の変化を示す図である。
【図16】実施例9の装置評価試験(図15)1000
h後の磁気ヘッド・スライダー2の浮上面を写真撮影し
た図である。
【符号の説明】
1…試験装置、2…磁気ヘッド・スライダー、3…アー
ム、4…磁気ディスク、5…カバー、6…コードヒータ
ー、7…バーヒータ、8…フィルター、9…スピンドル
モーター、10…筐体、11…ランプ、12…アクチュ
エーター、13…制御回路、14,17…磁気ディスク
装置、15…サスペンション、16…潤滑剤滴下位置、
18…磁気ディスク(3インチ)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C10N 40:18 C10N 40:18 (72)発明者 伊藤 豊 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 松本 浩之 神奈川県小田原市国府津2880番地 株式会 社日立製作所ストレージシステム事業部内 (72)発明者 谷 弘詞 神奈川県小田原市国府津2880番地 株式会 社日立製作所ストレージシステム事業部内 Fターム(参考) 4H104 CD04A PA16 5D006 AA01 5D076 AA01 BB01 CC05 EE01 FF09 FF18 GG20

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】磁気ディスクと、前記磁気ディスクを回転
    させるスピンドルモーターと、前記磁気ディスクにデー
    タを記録するもしくは再生する磁気ヘッド・スライダー
    と、筐体と、を有する磁気ディスク装置であって、 前記磁気ディスク装置は、 前記ヘッド・スライダーが前記磁気ディスクが回転して
    いる場合には該磁気ディスクの面上にあるように、該磁
    気ディスクが停止している場合には前記磁気ディスクの
    面外に退避するように、前記ヘッド・スライダーを制御
    する制御回路部と、前記磁気ディスクの表面に潤滑剤を
    供給する潤滑剤供給手段と、を有し、 該潤滑剤供給手段は、潤滑剤として下記構造式1〜5の
    パーフロロポリエーテルうちの少なくとも1つを含み、
    かつ、前記潤滑剤は分子量が4000以下の前記パーフ
    ロロポリエーテルを含むことを特徴とする磁気ディスク
    装置。 【化1】
  2. 【請求項2】磁気ディスクと、前記磁気ディスクを回転
    させるスピンドルモーターと、前記磁気ディスクにデー
    タを記録するもしくは再生する磁気ヘッド・スライダー
    と、筐体と、を有する磁気ディスク装置であって、 前記磁気ディスク装置は、 前記ヘッド・スライダーが前記磁気ディスクが回転して
    いる場合には該磁気ディスクの面上にあるように、該磁
    気ディスクが停止している場合には前記磁気ディスクの
    面外に退避するように、前記ヘッド・スライダーを制御
    する制御回路部と、前記磁気ディスクの表面に潤滑剤を
    供給する潤滑剤供給手段と、を有し、 該潤滑剤供給手段は、潤滑剤として下記構造式1〜5の
    パーフロロポリエーテルうちの少なくとも1つを含み、
    かつ、前記潤滑剤は分子量が4000以下の前記パーフ
    ロロポリエーテルを40%以上含むことを特徴とする磁
    気ディスク装置。 【化1】
  3. 【請求項3】磁気ディスクと、前記磁気ディスクを回転
    させるスピンドルモーターと、前記磁気ディスクにデー
    タを記録するもしくは再生する磁気ヘッド・スライダー
    と、筐体と、を有する磁気ディスク装置であって、 前記磁気ディスク装置は、 前記ヘッド・スライダーが前記磁気ディスクが回転して
    いる場合には該磁気ディスクの面上にあるように、該磁
    気ディスクが停止している場合には前記磁気ディスクの
    面外に退避するように、前記ヘッド・スライダーを制御
    する制御回路部と、前記磁気ディスクの表面に潤滑剤を
    供給する潤滑剤供給手段と、を有し、 該潤滑剤供給手段は、潤滑剤として下記構造式1〜5の
    パーフロロポリエーテルうちの少なくとも1つを含み、
    かつ、前記潤滑剤は分子量が1000以上であって40
    00以下である前記パーフロロポリエーテルを40%以
    上含むことを特徴とする磁気ディスク装置。 【化1】
  4. 【請求項4】前記潤滑剤は構造式1のパーフロロポリエ
    ーテルを含み、前記潤滑剤供給手段は、前記潤滑剤を塗
    布したサスペンションまたはアームであることを特徴と
    する請求項1記載の磁気ディスク装置。
  5. 【請求項5】前記潤滑剤供給手段は、前記潤滑剤を保持
    する潤滑剤保持手段を含む、請求項1記載の磁気ディス
    ク装置。
  6. 【請求項6】前記潤滑剤保持手段は、前記パーフロロポ
    リエーテルを0.5 μリットル以上含浸させたフィルタ
    ーであることを特徴とする請求項5記載の磁気ディスク
    装置。
  7. 【請求項7】前記潤滑剤保持手段は、構造式1乃至5の
    うちいずれかのパーフロロポリエーテルを0.15 μリ
    ットル以上含浸させたフィルターであり、前記磁気ヘッ
    ド・スライダーの浮上面への付着物が少ないことを特徴
    とする請求項5記載の磁気ディスク装置。
  8. 【請求項8】前記磁気ディスクの潤滑膜が構造式1〜4
    のパーフロロポリエーテルのうち少なくとも1つを含む
    ことを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク装置。
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