JP2002083417A - 磁気記録媒体及びそれを用いた磁気記録装置 - Google Patents

磁気記録媒体及びそれを用いた磁気記録装置

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JP2002083417A
JP2002083417A JP2000271236A JP2000271236A JP2002083417A JP 2002083417 A JP2002083417 A JP 2002083417A JP 2000271236 A JP2000271236 A JP 2000271236A JP 2000271236 A JP2000271236 A JP 2000271236A JP 2002083417 A JP2002083417 A JP 2002083417A
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Fumiyoshi Kirino
文良 桐野
Norio Ota
憲雄 太田
Teruaki Takeuchi
輝明 竹内
Akira Yano
亮 矢野
Harumi Sakamoto
晴美 坂本
Koichiro Wakabayashi
康一郎 若林
Satoru Matsunuma
悟 松沼
Nobuyuki Inaba
信幸 稲葉
Mitsutoshi Honda
光利 本田
Hirotaka Yamamoto
浩貴 山本
Tetsuo Nakazawa
哲夫 中澤
Takashi Naito
内藤  孝
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Hitachi Ltd
Maxell Holdings Ltd
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Hitachi Ltd
Hitachi Maxell Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 非晶質の磁性膜に形成される磁区の位置を高
精度に画定でき、高い信頼性を有する磁気記録媒体及び
それを備える磁気記録装置を提供する。 【解決手段】 磁気記録媒体10は基板1上に下地膜2
と磁性膜3とを備える。下地膜2は、二次元的に規則的
に配列した六角形の結晶粒子とそれを取り囲む粒界部か
ら構成される。結晶粒子とその粒界によって下地膜表面
に凹凸が規則的に形成されている。かかる凹凸を有する
下地膜上に形成される磁性膜は下地膜の凹凸に対応した
凹凸が形成される。磁性膜の凹凸は磁壁の移動を妨げる
ピンニングサイトとして機能する。磁性膜に形成された
磁区は所望の位置に高精度に画定される。その結果、磁
区の揺らぎが低減されるので、エラーが低減され、高い
信頼性を有する磁気記録媒体を提供できる。本発明によ
り60Gb/inを越える超高密度記録を実現でき
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高密度記録用の磁
気記録媒体及びそれを備える磁気記録装置に関し、特
に、微小磁区のエッジの揺らぎを低減でき、高性能でか
つ高信頼性を有する超高密度記録に好適な磁気記録媒体
及びそれを用いた磁気記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の高度情報化社会の進展にはめざま
しいものがあり、各種形態の情報を統合したマルチメデ
ィアが急速に普及してきている。マルチメディアの一つ
としてコンピュータ等に装着される磁気ディスク装置が
知られている。現在、磁気ディスク装置は、記録密度を
向上させつつ小型化する方向に開発が進められている。
また、それに並行して装置の低価格化も急速に進められ
ている。
【0003】磁気ディスクの高密度化を実現するために
は、1)ディスクと磁気ヘッドとの距離を狭めること、
2)磁気記録媒体の保磁力を増大させること、3)信号
処理方法を高速化すること、4)磁気記録媒体の熱揺ら
ぎを低減すること、等が要望されている。
【0004】磁気記録媒体において高密度磁気記録を実
現するには、磁性膜の保磁力の増大が必要である。磁気
記録媒体の磁性膜には、Co−Cr−Pt(−Ta)系
の材料が広く用いられていた。この材料は、20nm程
度のCoの結晶粒子が析出した結晶質材料である。かか
る材料を用いた磁気記録媒体において、例えば、40G
bit/inch(約6.20Gbit/cm)を
超える面記録密度を実現するためには、記録時や消去時
に磁化反転が生じる単位(磁気クラスター)を更に小さ
くするとともに、その粒子サイズの分布を小さくして、
磁性膜の構造や組織を精密に制御しなければならない。
このように磁性膜構造や組成を制御することにより、再
生時に媒体から発生するノイズを低減することができ
る。しかし、結晶粒子サイズに分布が存在し、サイズの
小さな粒子が存在していると、熱減磁や熱揺らぎが生じ
て、形成した磁区が安定に存在できない場合があった。
これは、サイズの小さな粒子がトリガーとなり、この粒
子を核として磁化反転が生じるためである。特に、記録
密度の増大に伴って磁区が微細化されると熱減磁や熱揺
らぎの影響は著しい。
【0005】このように、高密度記録のためには、磁性
層の熱的安定性を高めなければならない。磁性層の熱的
安定性については、Ku・V/k・Tで示される値を指
標とすることができる。ここで、Ku:磁気異方性エネ
ルギー、V:活性化体積、k:ボルツマン定数、T:温
度である。この値が大きいほど、磁性層は熱的に安定で
あることを示す。それゆえ、磁性層の熱的安定性を高め
るには、活性化体積V及び磁気異方性エネルギーKuを
大きくする必要がある。現時点においてCo系材料で
は、Ku・V/k・Tの値は60〜70程度である。
【0006】これまで、活性化体積Vや磁気異方性エネ
ルギーKuを増大するために、磁性膜の組成や構造、更
には、磁気記録媒体の構造を工夫することにより検討さ
れてきた。それを実現する方法として、例えば、米国特
許4652499号には基板と磁性膜との間にシード膜
を設ける方法が開示されている。
【0007】また、活性化体積Vや磁気異方性エネルギ
ーKuを増大させるための材料として、例えば、第23
回日本応用磁気学会学術講演会8aB−11(199
9)には、光磁気記録媒体において用いられている希土
類−鉄族系の非晶質合金を用いることが開示されてい
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
シード膜を設ける方法を用いて磁性膜における磁性粒子
径及びその分布を制御することには限界があり、微小な
粒子や粗大化した粒子が混在している場合があった。微
小な粒子や粗大化した粒子は、情報を記録する場合(磁
化を反転させる場合)に、周囲の磁性粒子からの漏洩磁
界の影響を受ける。例えば、大きな粒子は、周囲の粒子
に磁気的な相互作用を与えるために、安定した記録が行
なえないという課題があった。
【0009】また、希土類−鉄族系の非晶質合金(希土
類−遷移金属合金)を磁性膜に用いた場合、かかる非晶
質合金は磁壁移動型の材料であるために、情報記録時に
磁壁位置を高精度に制御して記録磁区の位置を正確に確
定させる必要があった。また、かかる材料は、記録時や
消去時に磁化反転が生じる単位である磁気クラスターの
間で極めて強い磁気的相互作用が発生しているために所
望の記録磁区を形成することが困難であった。また、磁
気的相互作用の強さの違いにより様々な大きさの磁気ク
ラスターが混在する結果、磁化反転の生じた領域と生じ
ていない領域との境界線は、図8(B)に示すように、
全体として粗いジグザグのパターンを呈し、ノイズを増
大させることがあった。このように、非晶質合金を用い
て磁性膜を形成した場合は、磁区の位置や磁区の形状の
制御に課題があり、60Gbit/inch(約9.
30Gbits/cm)を超える記録密度で情報を記
録することは困難であった。
【0010】本発明は、このような状況に鑑みてなされ
たものであり、本発明の第1の目的は、非晶質の磁性膜
に記録磁区を所望の形状及びサイズで所望の位置に確実
に形成することができる磁気記録媒体及びそれを備える
磁気記録装置を提供することにある。
【0011】本発明の第2の目的は、磁化遷移領域にお
ける磁区の形状がジグザグパターンになることを防止
し、情報を低ノイズで再生することができる磁気記録媒
体及びそれを備える磁気記録装置を提供することにあ
る。
【0012】本発明の第3の目的は、60Gbit/i
nch(約9.30Gbits/cm)を越える超
高密度記録に好適な磁気記録媒体及びそれを備える磁気
記録装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の態様に従
えば、磁気記録媒体において、基板上に、下地膜及び非
晶質の磁性膜を備え、上記下地膜は、結晶粒子と当該結
晶粒子を取り囲む非晶質の結晶粒界部とから構成され、
該結晶粒子及び結晶粒界部によって下地膜表面に凹凸が
形成されていることを特徴とする磁気記録媒体が提供さ
れる。
【0014】本発明の磁気記録媒体は、基板上に下地膜
を備え、当該下地膜は、結晶粒子が非晶質の結晶粒界部
により取り囲まれ、それぞれの結晶粒子が下地膜面内で
規則的に配列した構造を有している。そして、基板上に
形成された下地膜の表面には、規則的に配列された結晶
粒子とその周囲の結晶粒界部とによって凹凸が規則正し
く形成されている。下地膜表面の凸部は、結晶粒子がそ
の周囲の結晶粒界部の表面から突出することにより形成
され得、その結果、結晶粒界部が凹部を画成することに
なり得る。このように表面に規則正しく凹凸が形成され
た下地膜上に非晶質の磁性膜を形成すると、図5に模式
的に示すように、この下地膜表面の凹凸を反映して磁性
膜の表面にもまた同様の凹凸が形成される。
【0015】例えば、下地膜表面に形成されている凹凸
の凸部が、下地膜の結晶粒子から形成されている場合に
は、磁性膜の表面には、下地膜の結晶粒子に対応した磁
性膜凸部が形成され、磁性膜凸部を取り囲むように、結
晶粒界部に対応した磁性膜凹部(窪み)が形成される。
ここで、磁性膜凸部と磁性膜凹部は、同一材料で成膜さ
れているが、互いに異なる応力が発生しているために組
織や組成が異なる。かかる磁性膜に記録磁区を形成する
と、磁性膜凹部が磁壁移動の障害となり、形成された記
録磁区がピン止めされる。すなわち、下地膜の凸部上
(結晶粒子上)に形成された、結晶粒子とほぼ同一形状
の磁性膜凸部は、その周囲の磁性膜凹部と異なる磁気的
性質を有するために磁性膜凹部と磁気的に分断され、磁
性膜凸部が磁化反転単位となって、あたかも磁気クラス
ターのように振舞う。このように、下地膜の微細な凹凸
を反映して形成された磁性膜の凹凸が物理的(構造的)
なピン止めとして作用するので、磁性膜として磁壁移動
型の非晶質材料を用いたとしても、磁区と磁区との間に
形成される磁壁の移動を有効に防止し、磁性膜に所望の
形状及び寸法の記録磁区を所望の位置に形成することが
可能となる。また、下地膜の凹凸を反映して形成された
磁性膜の凹凸は、磁気ヘッドが磁気記録媒体に吸着する
ことを防止するためのテクスチャとしても有効である。
【0016】また、下地膜の結晶粒子の寸法を制御する
ことによって上述の磁気クラスター(磁化反転単位)の
大きさを制御することができるので、下地膜の結晶粒子
を微小化することにより高密度記録を実現することがで
きる。例えば、60Gbits/inchの記録密度
を実現するには、結晶粒子サイズを5nm〜15nm程
度にすればよく、更に記録密度を高めるには結晶粒子サ
イズを更に微小にすればよい。
【0017】本発明の磁気記録媒体において、下地膜の
一つの結晶粒子は、図3に示すように、基板面に平行な
面内における形状が正六角形状であることが好ましく、
基板面に垂直な断面ではその結晶粒子が上方に柱状に成
長した構造を有していることが好ましい。特に、結晶粒
子の柱状の断面は、下地層の成長とともに扇状に広がる
ことなく、結晶粒界部の幅が均等な構造を有しているこ
とが好ましい。このような、一つが正六角柱をなす結晶
粒子の集合体は、正六角柱が規則的に配列したハニカム
構造を形成していることが好ましい。また、一個の正六
角形の結晶粒子の周囲に存在する粒子の個数は、平均で
5.8〜6.2個であることが好ましい。また、結晶粒
子サイズの分布が、統計学的な標準偏差:σが粒子サイ
ズの15%以下であることが好ましく、更に、粒子サイ
ズの分布が正規分布または正規分布に近い分布であるこ
とが好ましい。
【0018】ここで、磁性膜に形成される磁気クラスタ
ー同士の距離は、下地膜中の結晶粒子間の距離すなわち
結晶粒界の幅を制御することによって調整でき、磁気ク
ラスター間で働く磁気的相互作用を弱めるには、0.5
nm以上2nm以下が好適である。
【0019】本発明において、下地膜の結晶質粒子は、
酸化コバルト、酸化ニッケル及び酸化鉄から選ばれる少
なくとも1種類の化合物が好適であり、結晶粒界部は、
酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タ
ンタル及び酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種類の酸
化物が好適である。
【0020】また、本発明の磁気記録媒体では、下地膜
が磁性を有するように構成することもできる。下地膜に
磁性を持たせるには、下地膜中の結晶粒子を、例えば、
ストイキオメトリーを制御することにより実現できる。
例えばCoOは非磁性を示すが、酸素濃度を制御してC
をCoOに含ませることにより、磁性を示すよ
うにすることができる。酸化コバルトに限らず、酸化鉄
や酸化ニッケルについても同様である。下地膜の結晶粒
子に磁性を持たせて、下地膜の結晶粒子上に形成される
磁性膜とのみ磁気的に結合させ、結晶粒子の周囲の結晶
粒界部上に形成される磁性膜とは磁気的に結合させない
ようにすれば、下地膜の結晶粒子上に位置する磁性膜の
ピン止め効果をより一層促進させることができる。すな
わち、下地膜の結晶粒子上に位置し、結晶粒子とほぼ同
一の形状を有する磁性膜部分(磁気クラスター)を、そ
の周囲の磁性膜部分から磁気的に孤立させることが可能
となり、前述の構造的なピン止めのみならず、磁気的に
ピン止めすることが可能となる。
【0021】また、本発明の磁気記録媒体は、基板と下
地膜との間に、非晶質薄膜または一定の方位に配向した
配向膜を備えることができる。非晶質薄膜または配向膜
は、基板と下地膜との接着性を向上させたり、下地膜に
初期成長層が形成されることを抑制したりすることがで
きる。非晶質薄膜または配向膜を構成する材料は、金属
または非晶質無機化合物が好ましく、例えば、Hf、R
u、Ti、Ta、Nb、Cr、Mo、W、Si
C、Al、Cr、SiO及びNi−Pか
ら選ばれる少なくとも1種類の材料が好適である。
【0022】また、本発明の磁気記録媒体は、下地膜と
磁性膜との間に、下地膜中の遊離の酸素が磁性膜を構成
する材料と反応することを防ぐための中間膜を形成して
も良い。かかる中間膜を構成する材料としては、例え
ば、Hf、Ru、Ti、Ta、Nb、Cr、Mo、W、
Ni−P、Cのうちより選ばれる少なくとも1種類の材
料が好適である。
【0023】また、下地膜上に形成される種々の膜、例
えば、磁性膜や上述の中間膜は、下地膜表面に形成され
ている凹凸と密着して凹凸形状を維持した状態で形成さ
れることが好ましい。すなわち、下地膜と磁性膜との界
面、下地膜と中間膜との界面、または中間膜と磁性膜と
の界面を、例えば電子顕微鏡により観察したときに、各
界面が良好に密着していることが好ましい。より好まし
くは、下地膜上に形成される磁性膜が下地膜の表面の組
織及び形状を反映し、下地膜の結晶粒子に対応する磁性
膜部分が構造的及び磁気的に孤立して磁化反転の単位と
なることである。
【0024】本発明において、上述したような規則正し
い凹凸を有する下地膜の成膜には、電子サイクロトロン
共鳴(ECR)スパッタ法が好適である。このスパッタ
法は、バイアス電圧の印加の方法により、ターゲット粒
子の運動エネルギーを揃えることができ、且つそのエネ
ルギーをより精密に制御できる。特に、ECRスパッタ
法を用いて下地膜を形成することにより、複雑なスパッ
タ条件を必要とせずに、所望の形状のハニカム構造を形
成することができる。また、結晶粒子とその粒界によっ
て画成される凹凸を下地膜全体にわたって所望の高さで
均一に形成することができる。
【0025】従来、磁気ヘッドが磁気ディスクに吸着す
ることを防止するために、磁気ディスクの表面を研磨テ
ープや微細な砥粒を用いて研磨して磁気ディスクの表面
に微細な凹凸(テクスチャ)を形成する方法が知られて
いる。かかる方法を用いても下地膜に微細な凹凸を形成
することができるが、下地膜に20nm以下の凹凸を生
産性良く形成することは困難であると考えられる。上述
のECRスパッタ法を用いれば、下地膜にナノメートル
オーダーの凹凸を高精度に且つ生産性良く形成すること
ができる。
【0026】本発明の第2の態様に従えば、本発明の第
1の態様に従う磁気記録媒体と、上記磁気記録媒体に情
報を記録または再生するための磁気ヘッドと、上記磁気
記録媒体を磁気ヘッドに対して駆動するための駆動装置
とを備える磁気記録装置が提供される。
【0027】本発明の磁気記録装置は、本発明の第1の
態様に従う磁気記録媒体を装着しているので、音声情
報、コードデータ、画像情報等の情報を高密度記録で
き、記録された情報を低ノイズで再生することができ
る。また、本発明の磁気記録装置は、60Gbits/
inch(約9.30Gbits/cm)を超える面
記録密度で情報を記録することができる。
【0028】本発明の磁気記録装置において、磁気ヘッ
ドは、磁気記録媒体に記録された情報を再生するための
再生素子として、MR素子(Magneto Resistive素子;
磁気抵抗効果素子)やGMR素子(Giant Magneto Resi
stive素子;巨大磁気抵抗効果素子)、TMR素子(Tun
neling Magneto Resistive素子;磁気トンネル型磁気抵
抗効果素子)を備え得る。これらの再生素子を用いるこ
とにより磁気記録媒体に記録された情報を高いS/Nで
再生することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の磁気記録媒体及び
それを備える磁気記録装置について実施例を用いて更に
詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは
ない。
【0030】
【実施例】本実施例では、本発明に従う磁気記録媒体と
して、図1に示すような、基板1上に無機化合物薄膜
(下地膜)2、磁性膜3及び保護膜4を積層した構造を
有する磁気記録媒体10を作製した。以下に、かかる磁
気記録媒体の製造方法、並びに、下地膜、磁性膜及び磁
気記録媒体の特性測定の結果について説明する。
【0031】〔ECRスパッタ装置〕まず、磁気記録媒
体の無機化合物薄膜を成膜する際に用いるECRスパッ
タ装置について説明する。図2に、ECRスパッタ装置
の断面構造を概念的に示した。
【0032】ECRスパッタ装置80は、プラズマが発
生する第1チャンバ81と、第1チャンバ81の上方に
連結された環状のターゲット70と、ターゲット70の
上方に連結された第2チャンバ83とを主に有する。第
1チャンバ81は、石英製の円筒管であり、軸方向の上
方及び下方に一対のコイル64、66がそれぞれ周回し
て設けられている。第1チャンバ81には、マイクロ波
発生器74が導入管を介して連結されており、導入管は
第1チャンバ81のコイル64と66との間に連結され
ている。第2チャンバ83は金属製の真空チャンバであ
り、その頂部には、ターゲット70から叩き出された粒
子を堆積させる基板68が設置されている。さらに、第
2チャンバ83の上方には、印加されたバイアスにより
引き出されたプラズマを収束させる(発散を抑制させ
る)ためのコイル62が設けられている。ターゲット7
0と第2チャンバ83内に設置された基板68は、バイ
アス電圧が印加できるように、電源90に接続されてい
る。
【0033】第1チャンバ81内部、ターゲット70の
内側及び第2チャンバ内部は連通され、外部から閉塞さ
れている。装置動作時に不図示の真空ポンプにより、第
1チャンバ81内部、ターゲット70内側及び第2チャ
ンバ83内部の共有の空間を減圧すると共に、第1チャ
ンバ81内に不図示のガス供給口を介して気体(例えば
Ar)を導入する。次いで、装置内部にコイル64及び
66を用いて一定の磁界を印加する。この磁界によっ
て、装置内部に存在する自由電子は、磁界軸を右回りに
サイクロトロン運動する。この電子サイクロトロン運動
の角振動数は、例えば、電子密度が1010cm−3
度である場合には、約109Hz程度であり、マイクロ
波領域の角振動数となる。この磁場内にマイクロ波発生
器74から、発生したマイクロ波を導入すると、マイク
ロ波は電子のサイクロトロン運動と共鳴し、そのマイク
ロ波のエネルギーが電子に吸収される共鳴吸収が起こ
る。この共鳴吸収によって電子は高エネルギーを得て加
速され、気体に衝突してその気体の電離を引き起こし、
高エネルギーを有するECRプラズマ76を第1チャン
バ81内に発生させる。ここで、電子には共鳴吸収によ
り一定レベルのエネルギーが与えられるので、電子のエ
ネルギー状態もまた一定の高エネルギーレベルにある。
このような電子を気体に衝突させてプラズマを発生させ
るため、このプラズマを構成する粒子は高エネルギーで
あると共に、放電などにより発生する通常のプラズマに
比べて各粒子のエネルギーが揃い、エネルギー分布の狭
いプラズマが得られる。
【0034】プラズマの発生位置の上方にある環状のタ
ーゲット70と基板68の間には、バイアス電圧が印加
されているため、発生したプラズマはターゲット70に
向かって引き出され、ターゲット70に衝突してターゲ
ット粒子を叩き出す。この際に、バイアス電圧を変化さ
せることによって、ターゲット70に衝突するプラズマ
の運動エネルギー、ひいてはプラズマによって叩き出さ
れたターゲット粒子の運動エネルギーを精密に制御する
ことが可能となる。このようにしてエネルギーが制御さ
れたターゲット粒子は、図示したようにターゲット粒子
の流れ72として基板68に向かい、基板68上に均質
にかつ等しい膜厚で堆積する。
【0035】〔下地膜の作製〕かかるECRスパッタ装
置を用いてガラス基板1上に無機化合物薄膜2を成膜し
た。無機化合物薄膜の成膜では、CoOとSiO
4:1に混合して焼結したものをターゲットに、放電ガ
スには純Arをそれぞれ使用した。スパッタ時の圧力は
0.3mTorr、投入マイクロ波電力は0.7kWで
ある。また、基板には500WのRFバイアスを印加し
た。作製した薄膜の膜厚は30nmである。
【0036】得られた無機化合物薄膜2の表面及び断面
の構造を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。
観察された薄膜の平面構造の模式図を図3に示す。図3
に示したように、無機化合物薄膜2は、粒子径が10n
mの正六角形の粒子12がハニカム状に配列した集合体
であり、各粒子は互いに粒界部14を介して二次元的に
規則正しく配列していた。粒子間の距離は0.5〜0.
8nmであった。粒子径及び粒子間の距離は、無機化合
物薄膜2の成膜に用いるターゲットの組成(CoOとS
iOの比など)を変化させることにより、任意に選択
することができる。また、薄膜2の断面構造を観察する
と、図4に示すように、正六角形の粒子12が基板面に
対して垂直方向に柱状に成長していることがわかった。
かかる柱状組織は、途中で結晶粒子が大きくなるなど異
常成長することなく成長していた。
【0037】また、薄膜表面には、規則性に優れた凹凸
が存在しており、凸部が粒子12に相当し、凹部が粒界
部14に相当していた。凸部と凹部との高低差は6〜7
nm程度であった。この高低差は、無機化合物薄膜の表
面をドライエッチングすることにより、更に大きくした
り、逆に小さくしたりすることができる。すなわち、エ
ッチング条件を選択することにより所望の値に制御可能
である。磁気ヘッドを安定浮上させたり、磁性膜におけ
る磁壁のピンニングサイトになるには、上記範囲が好適
である。また、薄膜表面を巨視的に観察したところ、う
ねりが形成されており、その周期は150nm〜160
nm程度であった。うねりの周期が短すぎるとテクスチ
ャとして機能せず、磁気ヘッドを媒体上で浮上させたと
きに、磁気ヘッドと媒体との距離が離れるために好まし
くない。また、うねりの周期が長すぎても高密度記録に
適さない。
【0038】また、無機化合物薄膜2のエネルギー分散
型X線分析(μ-EDX)を行なって粒子12とその粒
界部14を分析したところ、粒子12は主にコバルトの
酸化物であり、粒界部14に存在しているのは主に酸化
シリコンであることがわかった。ここで、粒子12のコ
バルト酸化物中には酸化シリコンが微量含まれ、また粒
界部14の酸化シリコンにはコバルト酸化物が微量含ま
れているが、その組織や物性に及ぼす影響は小さい。ま
た、無機化合物薄膜の格子像観察を行なったところ、粒
子12のコバルト酸化物は結晶質であり、粒界部14の
酸化シリコンは非晶質であることがわかった。
【0039】つぎに、上述の無機化合物薄膜の表面のT
EM観察結果を用いて、結晶粒子径の分布及びある1つ
の結晶粒子の周囲に存在している結晶粒子の数(以下、
配位粒子数と呼ぶ)を解析した。結晶粒子径について
は、ランダムに選択した一辺が200nmの正方形中に
存在している粒子について調べた。その結果、平均結晶
粒子径は10nmであった。粒子径の分布は正規分布を
しており、標準偏差を求めると0.6nm以下であっ
た。このように粒子径分布が小さいのは薄膜形成にEC
Rスパッタ法を用いたためである。RFスパッタ法やR
Fマグネトロンスパッタ法を用いて薄膜を形成した場合
では、粒子径分布は1.0nm程度であることから、E
CRスパッタ法を用いて薄膜を形成する方法は高密度記
録という観点から極めて有効な方法である。配位粒子数
について、ランダムに選択した280個の結晶粒子につ
いて調べた。その結果、平均で6.02個であった。こ
のことは、結晶粒子の粒径のばらつきが少なく、基板面
に平行な面内で結晶粒子の正六角形がハニカム状に極め
て規則的に配列していることを示している。
【0040】この配位粒子数は、結晶粒子間の間隔に依
存して変化する。ここで、SiOは構造に規則性を持
たせる重要な役割を有しており、SiO濃度は形成す
る結晶粒子の間隔を決定していることが分かった。この
結晶粒子間の距離は、ターゲットの組成(CoとSiの
比、あるいはCoOとSiOの比等)を変化させるこ
とにより所望の値を容易かつ任意に選択することができ
る。例えば、CoO−SiO膜中のSiO濃度を多
くすると、この結晶粒子間距離は長くなる。結晶粒子間
の距離は、基板温度を上げるなどの成膜プロセスを最適
化することにより変化させることができる。一方、Si
濃度を低くすると結晶粒子間の距離は狭くなる(結
晶粒子どうしが接近する)。それと同時に、粒子形状に
乱れが観測された。配位粒子数は、7個程度と多い粒子
があったり、逆に4〜5個と少ない粒子が存在してお
り、ばらつきが大きくなった。また、二次元の配列に乱
れが生じ、ハニカム構造が崩れているのが観察された。
適当な結晶粒子間隔範囲は0.5〜2nmであり、本実
施例では、この範囲に含まれるようにSiO濃度の制
御を行った。
【0041】また、比較のために無機化合物薄膜をEC
Rスパッタ法に代えてRFマグネトロンスパッタ法によ
り形成した。マグネトロンスパッタ法により形成した無
機化合物薄膜の構造を、TEMによる観察像を用いて前
述のECRスパッタ法による膜の場合と同様に解析し
た。その結果、平均粒子径は10nmであり、粒子径分
布は正規分布をしているものの、標準偏差(σ)は1.
2nmであり、ECRスパッタ法により形成した膜の標
準偏差(σ)0.7nmと比較すると粒子径のばらつき
が大きかった。また、配位粒子数を280個の結晶粒子
について調べたところ、平均6.30個であり、ECR
スパッタ法を用いて形成した場合に比べて規則性が低下
していることが分かった。この比較実験から、ECRス
パッタ法を用いて無機化合物薄膜2を形成すると、薄膜
2の規則性を大きく改善でき、高密度記録に有利な膜が
得られることがわかった。
【0042】上述の無機化好物薄膜の成膜では、ターゲ
ットとして、CoOとSiOとの混合したものを焼結
して用いたが、これらの各化合物を単体で焼結したもの
をターゲットに用い、二元同時スパッタにより成膜して
もよく、成膜法やターゲットの種類には依存しない。無
機化合物薄膜の成膜において重要なことは、マイクロ波
を用いたECRスパッタ法を用い、スパッタ粒子のエネ
ルギーを精密に制御することである。
【0043】また、無機化合物薄膜の成膜において、膜
厚を5nm程度としても、逆に、100nmと厚くして
も得られる膜の表面および断面の組織や構造、粒子サイ
ズおよびサイズ分布などに、膜厚に依存した変化は見ら
れなかった。5nm以下の膜厚では、成膜装置の都合
上、安定して作製することが困難であり、また、100
nm以上では成膜に時間がかかるとともに、膜の内部応
力が増して膜が基板から剥離するので製造上の制限があ
る。
【0044】〔磁性膜の成膜〕つぎに、無機化合物薄膜
上に情報記録用の磁性膜3として、Tb15Fe70
15膜をRFマグネトロンスパッタ法により成膜し
た。かかるTb−Fe−Co膜の組成は、遷移金属の副
格子磁化が優勢となる組成である。スパッタの際には、
Tb−Fe−Co合金をターゲットに、純Arを放電ガ
スにそれぞれ使用した。形成した磁性膜の厚さは20n
mである。スパッタ時の圧力は20mTorr、投入R
F電力は1kW/150mmφである。
【0045】かかる磁性膜を成膜する前に、無機化合物
薄膜上に、Cr、Ti、Nb、Alなどの金属膜やSi
などの窒化物膜を形成し、これらの膜を介して磁
性膜を成膜してもよい。かかる金属膜や窒化物膜は、磁
性膜(Tb−Fe−Co膜)の保護や凹凸の制御に効果
がある。
【0046】また、磁性膜表面に形成される凹凸は、無
機化合物薄膜表面の凹凸を反映しているが、成膜方法や
成膜条件を選択することにより所望の凹凸(平坦を含
む)を得ることができる。
【0047】〔保護膜の成膜〕次いで、磁性膜3上に保
護膜4として、ECRスパッタ法によりカーボン薄膜を
形成した。ターゲットにはカーボンターゲットを用い、
放電ガスにはArを使用した。スパッタ時の圧力は0.
3mTorr、投入マイクロ波電力は1kW(周波数は
2.93GHz)、基板温度は室温である。マイクロ波
により励起されたプラズマを引き込むためのRFバイア
スをターゲットに印加した。その値は500Wである。
なお、カーボンは導電体であるのでDC電圧を印加して
引き込んでも同様の効果が得られる。
【0048】こうしてカーボン膜を膜厚3nmで成膜し
た。得られたカーボン膜の組織を高分解能透過型電子顕
微鏡にて観察したところ、カーボン膜は3nm膜厚でも
アイランド状になることなく全体にわたって均一な膜を
形成していた。
【0049】ここで、保護膜の保護性能を調べるため
に、保護膜の膜厚を次第に薄くして形成したところ、膜
厚が1nmになっても保護膜のカバレージに変化はな
く、アイランド状にはならなかった。膜厚を1nmより
も更に薄くしたが、電子顕微鏡の分解能以下になり、十
分な解析を行なうことはできなかった。しかし、保護性
能を考えると、少なくとも1nm程度以上の膜厚が必要
であると考えられる。
【0050】また、カーボン膜の密度を、体積が既知の
試料を溶解して濃度を定量する方法により求めたとこ
ろ、ECRスパッタ法により作製したカーボン膜の密度
は理論密度の69%であった。
【0051】こうして図1に示す積層構造を有する磁気
記録媒体10を作製した。
【0052】〔磁気記録媒体の諸特性〕つぎに、得られ
た磁気記録媒体の磁気特性を測定した。VSM(Vibrat
ing Sample Magnetometer)による測定からM−Hルー
プを得た。その結果から、角型比のSおよびSはとも
に1.0であり、良好な角型性が得られた。また、保磁
力:Hcは3.5kOe(約278.53kA/m)、
飽和磁化:Msは500emu/cmであった。ま
た、基板面に対して垂直方向の垂直磁気異方性エネルギ
ーが6×10erg/cmであり、基板面に垂直な
方向に大きな磁気異方性を有する磁性体であった。
【0053】この磁気記録媒体の活性化体積を測定した
ところ、磁気記録媒体として広く用いられているCo−
Cr−Pt系磁性膜における値(約70)の約30倍と
著しく大きかった。このことは、この磁性膜が熱的安定
性に優れていることを示している。
【0054】つぎに、磁性膜の構造をX線回折法により
調べたところ、回折ピークは得られず、X線的には非晶
質であった。また、高分解能透過型電子顕微鏡(高分解
能TEM)により組織や構造を調べたところ、明確な格
子は見られず、非晶質か、極微細な組織の集合体である
ことがわかった。ここで、Tb−Fe−Co膜には非晶
質合金を用いたが、Tbからなる層、Feからなる層及
びCoからなる層を交互に積層して構成されるTb/F
e/Co多層膜や、Tbからなる層とFe−Co合金か
らなる層とを交互に積層してなるTb/Fe−Co多層
膜のような、希土類元素と鉄族元素の交互積層多層膜
(人工格子膜)を用いても同様の効果が得られた。
【0055】〔磁気記録装置〕つぎに、かかる磁気特性
を有する磁気記録媒体の表面上に潤滑剤を塗布すること
によって磁気ディスクを完成させた。そして同様のプロ
セスにより複数の磁気ディスクを作製し、磁気記録装置
に同軸上に組み込んだ。磁気記録装置の概略構成を図6
及び図7に示す。
【0056】図6は磁気記録装置100の上面の図であ
り、図7は、磁気記録装置100の図6における破線A
−A’方向の断面図である。記録用磁気ヘッドとして、
2.1Tの高飽和磁束密度を有する軟磁性膜を用いた薄
膜磁気ヘッドを用いた。また、記録信号は、巨大磁気抵
抗効果を有するデュアルスピンバルブ型GMR磁気ヘッ
ドにより再生した。磁気ヘッドのギャップ長は0.12
μmであった。記録用磁気ヘッド及び再生用磁気ヘッド
は一体化されており、図6及び図7では磁気ヘッド53
として示した。この一体型磁気ヘッドは磁気ヘッド用駆
動系54により制御される。
【0057】複数の磁気ディスク51はスピンドル52
により同軸回転される。ここで、磁気ヘッド面と磁性膜
との距離は12nmに保った。この磁気ディスク51に
50Gbits/inch(約7.75Gbits/
cm)に相当する信号(800kFCI)を記録して
磁気ディスクのS/Nを評価したところ、30dBの再
生出力が得られた。また、この磁気ディスクの欠陥レー
トを測定したところ、信号処理を行なわない場合の値で
1×10−5以下であった。
【0058】ここで、磁気力顕微鏡(MFM)を用い
て、記録した部分の磁化状態を観察した。その結果、磁
化遷移領域には、従来の結晶質系の磁性膜において観測
されるような特有なジグザグパターンは観測されなかっ
た。このように本実施例の磁気記録媒体では磁化遷移領
域にジグザグパターンが形成されていないために、ノイ
ズレベルがCo−Cr−Pt系の従来の磁気記録媒体に
比べて著しく小さくなっている。また、磁性膜が非晶質
であることもノイズレベルが低い原因である。また、従
来の磁気記録媒体では、隣同士の記録磁区の間や記録磁
区の中に、反磁界の影響によって生じる、周囲と逆向き
の磁化を有する微小な逆磁区が観察されたが、本実施例
の磁気記録媒体では、隣同士の記録磁区の間や記録磁区
の中に、微小な逆磁区は殆ど観察されなかった。隣同士
の記録磁区の間や記録磁区の中に、微小な逆磁区が殆ど
存在しないこともノイズレベルが低い原因の1つであ
る。
【0059】本実施例の磁気記録媒体において、磁化遷
移領域に、ジグザグパターンが観測されなかったのは、
表面に凹凸を有する無機化合物膜を磁性膜の下地として
形成したために、下地膜の凹凸に対応して形成された磁
性膜の凹凸が磁壁の移動の障害となったからである。磁
壁部分においては、図8(A)に示すように僅かにジグ
ザグパターンが形成されている。かかるジグザグパター
ンは、無機化合物薄膜の表面に存在する凹凸に依存して
形成されるものであり、規則性を有している。それゆ
え、凹凸の構造や形状を考慮して信号処理を行なうこと
により、更に高S/Nで情報を再生することができる。
なお、図8(A)においては、ジグザグパターンが下地
膜の凹凸に沿って形成される様子を強調して示すため
に、下地膜の六角形状の凸部2個程度を磁化反転の単位
(記録磁区)として模式的に示している。ジグザグパタ
ーンの変化はジッタの変化として観測できる。そこで、
一定のパターンを磁気記録媒体に記録し、タイムインタ
ーバルアナライザ(TIA)により磁区のエッジの揺ら
ぎを測定した。測定の結果、無機化合物薄膜を備えない
磁気記録媒体に比べて、エッジの揺らぎは1/10以下
に低減していた。
【0060】以上、本発明に従う磁気記録媒体及びそれ
を備える磁気記録装置について実施例により説明した
が、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の改
良例及び変形例を含み得る。
【0061】例えば、上記実施例では、無機化合物膜2
をガラス基板1上に直接成膜して磁気記録媒体を作製し
たが、例えば、Hfなどの非晶質の膜を介して無機化合
物薄膜を形成して磁気記録媒体を構成してもよい。これ
により、無機化合物薄膜の初期成長層の形成を抑制する
ことができるので、無機化合物薄膜の結晶粒子の配列の
規則性や結晶性を更に向上させることができる。また、
Hf以外に、Ru、Ti、Ta、Nb、Cr、Mo、
W、Si、C、Al、Cr、SiO
、Ni−Pなどの材料を用いても同様の効果を得るこ
とができる。
【0062】また、上記実施例では、磁性膜を、RFマ
グネトロンスパッタ法を用いて成膜したが、DCマグネ
トロンスパッタ法やエレクトロンサイクロトロンレゾナ
ンスを利用したスパッタ法(ECRスパッタ法)を用い
て行ってもよい。また、磁性膜として、Tb−Fe−C
o系の非晶質合金膜を用いたが、これ以外に、例えば、
Gd−Fe−Co、Dy−Fe−Co、Ho−Fe−C
o、Tb−Gd−Fe−Co、Tb−Dy−Fe−Co
などの希土類と鉄族の合金膜や多層膜、更には、Pt
(あるいはPd)/Co交互積層多層膜などの磁壁移動
型の情報記録用の磁性膜を用いてもよい。
【0063】また、磁性膜と無機化合物薄膜との間に中
間膜を設けることもできる。これによりディスクの信頼
性をさらに向上させることができる。中間膜に用いる材
料は、Hf、Ru、Ti、Ta、Nb、Cr、Mo、
W、Ni−P、Cなどの元素や、これらの元素を母元素
とし、これに母元素以外の元素を添加した合金が好まし
い。これらの材料から構成される中間膜を磁性膜と無機
化合物薄膜との間に設けることにより、無機化合物層か
ら磁性膜中への酸素が拡散することを抑制することがで
きる。それゆえ、磁性膜の磁気特性の変動が抑制される
ので、磁気記録媒体の信頼性を向上させることができ
る。
【0064】
【発明の効果】本発明の磁気記録媒体は、結晶粒子とそ
の粒界によって表面上に微細で且つ規則正しい凹凸が形
成された下地膜を有し、この下地膜上に非晶質の磁性膜
を備えるので、磁性膜にも下地膜に対応した微細な凹凸
が形成されている。かかる磁性膜の凹凸は、磁壁の移動
の障壁となって磁性膜に形成された磁区のエッジ位置を
高精度に画定することができる。それゆえ磁性膜に形成
される記録磁区の揺らぎが低減され、低ノイズで且つ高
い信頼性で情報を再生することができる。
【0065】本発明の磁気記録媒体及びその磁気記録媒
体を装着した磁気記録装置は、60Gbits/inc
を越える高記録密度で情報を記録することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の断面構造を模式的に示
す図である。
【図2】ECRスパッタ装置の概略構成を示す図であ
る。
【図3】無機化合物薄膜の平面構造の概略を示す図であ
る。
【図4】無機化合物薄膜の断面構造の概略を示す図であ
る。
【図5】無機化合物薄膜とその上に成膜された磁性膜の
断面構造の概略を示す図である。
【図6】本発明に従う磁気記録装置の概略構成図であ
る。
【図7】図6の磁気記録装置のA−A’方向における断
面図である。
【図8】磁化遷移領域の様子を模式的に示した図であ
り、図8(A)は本発明の磁気記録媒体の磁化遷移領域
の様子であり、図8(B)は従来の磁気記録媒体の磁化
遷移領域の様子である。
【符号の説明】
1 基板 2 無機化合物薄膜 3 磁性膜 4 保護膜 51 磁気ディスク 52 スピンドル 53 磁気ヘッド 54 磁気ヘッドの駆動系
フロントページの続き (72)発明者 太田 憲雄 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 竹内 輝明 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 矢野 亮 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 坂本 晴美 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 若林 康一郎 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 松沼 悟 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 稲葉 信幸 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 本田 光利 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 山本 浩貴 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 中澤 哲夫 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 内藤 孝 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 Fターム(参考) 4K029 AA09 BA02 BA03 BA06 BA07 BA09 BA11 BA12 BA16 BA17 BA21 BA26 BA32 BA34 BA35 BA43 BA44 BA46 BA48 BA58 BB02 BD11 CA05 DC09 DC48 5D006 BB07 CA01 CA05 CA06 EA03 FA09

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気記録媒体において、 基板上に、下地膜及び非晶質の磁性膜を備え、 上記下地膜は、結晶粒子と当該結晶粒子を取り囲む非晶
    質の結晶粒界部とから構成され、該結晶粒子及び結晶粒
    界部によって下地膜表面に凹凸が形成されていることを
    特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 上記結晶粒子は、基板面に平行な面内に
    おいて六角形状を有しており、各結晶粒子が基板面に平
    行な面内においてハニカム状に配列していることを特徴
    とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 上記結晶質粒子は、酸化コバルト、酸化
    ニッケル及び酸化鉄からなる群から選ばれた少なくとも
    1種類の化合物から構成され、上記結晶粒界部は、酸化
    シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタ
    ル及び酸化亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種
    類の酸化物からなる無機化合物から構成されていること
    を特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 上記基板と下地膜との間に、非晶質薄膜
    または一定の方位に配向した配向膜を備えることを特徴
    とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気記録媒
    体。
  5. 【請求項5】 上記非晶質薄膜または配向膜は、金属ま
    たは非晶質無機化合物から形成されていることを特徴と
    する請求項4に記載の磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 上記非晶質薄膜または配向膜が、Hf、
    Ru、Ti、Ta、Nb、Cr、Mo、W、Si
    、C、Al、Cr、SiO及びN
    i−Pからなる群から選ばれた少なくとも1種類の材料
    から構成されていることを特徴とする請求項5に記載の
    磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 上記下地膜と磁性膜との間に中間膜を備
    え、該中間膜が、Hf、Ru、Ti、Ta、Nb、C
    r、Mo、W、Ni−P及びCからなる群から選ばれた
    少なくとも1種類の材料から構成されていることを特徴
    とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の磁気記録媒
    体。
  8. 【請求項8】 上記下地膜の結晶粒子が凸部を形成し、
    結晶粒界部が凹部を形成していることを特徴とする請求
    項1〜7のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】 上記凸部と凹部の高さの差が3nm〜1
    0nmであることを特徴とする請求項8に記載の磁気記
    録媒体。
  10. 【請求項10】 上記下地膜は、電子サイクロトロン共
    鳴スパッタ法を用いて形成されていることを特徴とする
    請求項1〜9のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  11. 【請求項11】 上記結晶粒子の粒子径分布の標準偏差
    が平均粒子径の15%以下であることを特徴とする請求
    項1〜10のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  12. 【請求項12】 上記結晶粒子は、基板表面に垂直な方
    向における構造が柱状構造であることを特徴とする請求
    項1〜11のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  13. 【請求項13】 上記結晶粒子は、5nm〜15nmの
    範囲内の粒子径を有することを特徴とする請求項1〜1
    2のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  14. 【請求項14】 上記結晶粒界部が、0.5nm以上2
    nm以下の幅を有することを特徴とする請求項1〜13
    のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  15. 【請求項15】 1つの結晶粒子の周囲に析出している
    結晶粒子数の平均が5.8以上6.2以下であることを
    特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の磁気
    記録媒体。
  16. 【請求項16】 上記磁性膜の表面に、上記下地膜の表
    面の凹凸を反映した凹凸が形成されていることを特徴と
    する請求項1〜15のいずれか一項に記載の磁気記録媒
    体。
  17. 【請求項17】 上記磁性膜表面の凹凸の凸部と凹部と
    の高さの差が3nm〜10nmであることを特徴とする
    請求項16に記載の磁気記録媒体。
  18. 【請求項18】 請求項1〜17のいずれか一項に記載
    の磁気記録媒体と、上記磁気記録媒体に情報を記録また
    は再生するための磁気ヘッドと、上記磁気記録媒体を磁
    気ヘッドに対して駆動するための駆動装置とを備える磁
    気記録装置。
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