JP2001291225A - 磁気記録媒体及び磁気記録装置 - Google Patents

磁気記録媒体及び磁気記録装置

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JP2001291225A
JP2001291225A JP2000105946A JP2000105946A JP2001291225A JP 2001291225 A JP2001291225 A JP 2001291225A JP 2000105946 A JP2000105946 A JP 2000105946A JP 2000105946 A JP2000105946 A JP 2000105946A JP 2001291225 A JP2001291225 A JP 2001291225A
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JP2000105946A
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English (en)
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Fumiyoshi Kirino
文良 桐野
Teruaki Takeuchi
輝明 竹内
Nobuyuki Inaba
信幸 稲葉
Koichiro Wakabayashi
康一郎 若林
Harumi Sakamoto
晴美 坂本
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Maxell Holdings Ltd
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Hitachi Maxell Ltd
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  • Manufacturing Of Magnetic Record Carriers (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長時間の保存においても良好な記録再生特性
を有し、低ノイズ、低熱揺らぎ、低熱減磁の高密度記録
可能な磁気記録媒体を提供する。 【解決手段】 本発明の磁気記録媒体は、基板上に下地
層、磁性層、保護層をこの順に備える。下地層は、結晶
粒子が非晶質相中にハニカム状に配列した構造であり、
軟磁性を有している。この結晶粒子上に磁性層の磁性粒
子をエピタキシャル成長させることにより、磁性粒子の
粒子径が揃い、低ノイズ、低熱揺らぎ、低熱減磁で40Gb
its/inchを超える高密度記録に適した磁気記録媒体
が製造できる。また、磁性層と下地層で磁気的な結合が
生じるため、長時間保存後も記録磁化状態が安定に保た
れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高密度記録に適し
た磁気記録媒体及び磁気記録装置に関し、特に、低熱揺
らぎで低ノイズであり、長時間経過後も良好な記録再生
特性を有する磁気記録媒体及びその磁気記録媒体を用い
た磁気記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の高度情報化社会の進展にはめざま
しいものがあり、各種形態の情報を統合したマルチメデ
ィアが急速に普及してきている。マルチメディアの一つ
としてコンピュータ等に装着される磁気ディスク装置が
知られている。現在、磁気ディスク装置は、記録密度を
向上させつつ小型化する方向に開発が進められている。
【0003】磁気記録装置の高密度化を実現するために
は、(1)磁気記録媒体と磁気ヘッドとの距離を狭める
こと、(2)磁気記録媒体の保磁力を増大させること、
(3)信号処理を高速化すること等が要望されている。
【0004】ところで、磁気記録媒体は基板上に磁性粒
子が集合してなる磁性層を有しており、磁気ヘッドによ
りいくつかの磁性粒子がまとまって同方向に磁化される
ことによって情報が記録される。それゆえ、高密度記録
を実現するには磁性層の保磁力の増大に加え、この磁性
層中で一度に同方向に磁化され得る最小面積、即ち磁化
反転が生じ得る単位面積を小さくする必要がある。磁化
反転単位面積を小さくするには、個々の磁性粒子を微細
化するか、あるいは磁化反転単位を構成する磁性粒子数
を減らすことが必要である。例えば、20Gbits/
inch(3.10Gbits/cm)を超える記
録密度を達成するためには、磁性粒子径を10nm以下
に制御することが必要とされている。また、磁性粒子を
微細化する際に粒子径のばらつきを低減するとともに、
熱揺らぎを小さくする対策も必要となってきている。こ
れらを実現する試みとして、例えば、米国特許第4,6
52,499号に開示されているように、基板と磁性層
との間にシード膜を設けることが提案されている。
【0005】また、現在実用化されている磁気ディスク
装置は、面内磁気記録方式を用いている。すなわち、デ
ィスク面と平行な方向に磁化しやすい磁性層を有する磁
気ディスクを用い、その磁性層のディスク面内方向に磁
区を形成して記録を行うものである。この面内磁気記録
方式で高密度記録を行うには、記録磁区を微小化する必
要があるが、磁化方向の異なる磁区の境界から生じる磁
界(反磁界)が、微小磁区の形成を阻害するという問題が
生じる。すなわち、反磁界の増加により高密度記録が困
難となる。この反磁界は、記録を行う磁性層の膜厚を薄
くすると低下するため、記録密度を向上させるにはこの
膜厚を薄くすることが必要となる。しかし、磁性層が非
常に薄くなると、室温においても、磁化の熱揺らぎによ
り時間の経過に伴って記録磁化が減少し、再生出力が低
下するという問題が生じる。
【0006】このような問題を解決する技術として、キ
ーパー層を有する磁気記録媒体が特許公報第27049
57号に開示されている。キーパー層は、軟磁性の補助
膜であり、記録を行う磁性層(記録層)の表面に密着する
ように配置されている。磁性層が記録磁化状態にある
時、キーパー層は軟磁性であるため、磁性層の磁化反転
領域からの漏洩磁界により、磁性層の記録磁化部分に接
するキーパー層部分は磁性層と逆方向に磁化する。磁性
層の記録磁化部分とこのキーパー層の逆方向の磁化部分
とで環状の磁路が形成され、磁性層の膜厚を薄くした場
合にも記録磁化が減磁することなく安定に保たれる。ま
た、これによって記録磁化部分の磁性層に働く反磁界が
減少する。そのため、記録磁区を微小化することで記録
密度を増加させても、磁性層の膜厚を薄くできるため反
磁界の影響が緩和され、これに基づく減磁も低減され
る。同時に、記録磁化状態がキーパー層によって安定化
されるため、時間の経過に伴う熱揺らぎによる減磁も低
減でき、長期間に渡る記録情報の保存安定性が高い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記の基板上にシード
層を介して磁性層を設ける方法では,磁性層における磁
性粒子径およびその分布を制御するには限界があった。
例えば、粒子径10nm前後の磁性層の磁性粒子を得る
ために、シード膜材料、成膜条件、シード膜の構造等を
調整しても、粒子径分布はブロードであり、10nmの
2倍程度に粗大化した粒子や、逆に、10nmの1/2
程度に微細化した粒子がかなり混在していた。磁性粒子
中、平均よりも微小な粒子は、情報記録時(磁化を反転
させる時)に、周囲の磁性粒子からの漏洩磁界の影響を
受けたり、熱揺らぎを増大させたりする。逆に、平均よ
りも大きな粒子は、隣接する記録磁区に磁気的な相互作
用を与え、またノイズ増大の原因ともなる。そのため
に、20Gbits/inch (3.10Gbits
/cm)を超える超高密度記録を行う場合、安定した
記録ができなかった。さらに、従来の磁気記録媒体の磁
性層における磁化反転単位を構成する磁性粒子数は、5
〜10個分と比較的多かった。
【0008】さらに、キーパー層を形成した場合には、
以下のような理由により、記録再生に現在のハードディ
スク装置で広く用いられている磁気抵抗効果(MR)磁
気ヘッドをそのまま用いることができないという問題点
がある。上述のキーパー層の役割から明らかなように、
磁性層に対してはキーパー層は一種のシールドとして作
用するため、磁気ヘッドで漏洩磁界を読み取る再生動作
及び磁気ヘッドにより磁性層の磁化を反転させる記録動
作においては、キーパー層の存在が障害となる。すなわ
ち、記録時にはキーパー層の漏洩磁界により記録磁界が
遮られるため、実効的な記録磁界が低下する。再生時に
は、キーパー層である下地層の磁極が磁性層の磁極を打
ち消す配置になっているため、磁性層の磁化反転領域か
らの漏洩磁界は小さくなり、再生感度が低下する。した
がって、この状態で磁気ヘッドの再生素子を動作させて
も、再生出力は小さい。
【0009】この記録再生時の問題に対処するため、記
録動作及び再生動作を行う場合にのみキーパー層の作用
をなくすために、磁気ヘッドに直流のバイアス電流を流
し、磁気ヘッド直下の領域に直流磁界を印加する方法が
知られている。この直流磁界によって、直流磁界の及ぶ
領域のキーパー層を磁気的に飽和させて、いわば実効的
にシールドに窓を開けることができる。一方で、磁気ヘ
ッドの再生素子としては、再生感度の高い磁気抵抗効果
(MR)素子あるいは巨大磁気抵抗効果(GMR)素子
を用いることが望ましい。しかし、これらの素子は、上
記のように直流磁界印加機能を有していないため、通常
のMR素子あるいはGMR素子をそのまま用いてキーパ
ー層を設けた磁気記録媒体の再生を行うことはできな
い。
【0010】そこで、本発明の第1の目的は、高密度記
録化に伴う記録減磁を緩和するキーパー層の役割をする
層を設けながらも、再生感度の高いMR素子又はGMR
素子をそのまま使用できる、高密度記録に適した磁気記
録媒体及び磁気記録装置を提供することにある。
【0011】本発明の第2の目的は、磁性層における磁
性粒子の粒子径を微細化することにより、ノイズの発生
が小さい磁気記録媒体及び磁気記録装置を提供すること
にある。
【0012】本発明の第3の目的は、磁性層の磁性粒子
径のばらつきを抑制することにより、低ノイズ、低熱揺
らぎ及び低熱減磁の磁気記録媒体及び磁気記録装置を提
供することにある。
【0013】本発明の第4の目的は、磁性層の結晶配向
性を制御することにより、高密度記録に適した磁気記録
媒体及び磁気記録装置を提供することにある。
【0014】本発明の第5の目的は、磁性粒子間の磁気
的相互作用を低減することにより、磁化反転単位が低減
された高密度記録可能な磁気記録媒体及び磁気記録装置
を提供することにある。
【0015】さらに、本発明の第6の目的は、40Gb
its/inch(6.20Gbits/cm)を
超える超高密度記録可能な磁気記録媒体及び磁気記録装
置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の態様に従
えば、磁気記録媒体であって、基板と;上記基板上に形
成された下地層と;上記下地層上に形成された磁性層
と;を備え、上記下地層は、酸化コバルト、酸化クロ
ム、酸化鉄及び酸化ニッケルからなる群より選ばれた少
なくとも1種類の酸化物から実質的に構成される六角形
状の結晶粒子と、該結晶粒子を取り囲む酸化ケイ素、酸
化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル及び酸化亜
鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種類の酸化物を
含む結晶粒界部とから構成され、該結晶粒子が基板面に
平行な面内においてハニカム状に配列した構造を有し、
かつ、軟磁性を有することを特徴とする磁気記録媒体が
提供される。
【0017】本明細書において「酸化コバルト、酸化ク
ロム、酸化鉄及び酸化ニッケルからなる群より選ばれた
少なくとも1種類の酸化物から実質的に構成される六角
形状の結晶粒子」とは、六角形状の結晶粒子が酸化コバ
ルト、酸化クロム、酸化鉄及び酸化ニッケルからなる群
より選ばれた少なくとも1種類の酸化物のみならず、不
純物として、又は、結晶粒子の特性を変化させるため
に、例えば、結晶粒界部に含まれる酸化物又はそれを構
成する元素を数%程度含んでもよいことを意味する。
【0018】本発明の磁気記録媒体は、以下に説明する
二つの特徴を有する下地層を基板と磁性層との間に備え
る。下地層の第1の特徴は、下地層が、複数の六角形状
の結晶粒子がそれぞれ結晶粒界部により取り囲まれてハ
ニカム状に規則正しく配列した構造を備えることであ
る。本発明では、このような下地層上に磁性層を積層し
た場合、下地層のハニカム構造を反映させて、磁性層に
磁性粒子の規則正しいハニカム構造をもたらすことがで
きる。下地層のハニカム構造は、一つの結晶粒子の周囲
に5.8〜6.2個の結晶粒子が配置するような規則性
を示し得る。そして結晶粒子の集合体は、平均粒子径が
10nm程度であり、粒子径の標準偏差が平均粒径に対
して8%以下で表されるような微小で且つ粒径が揃った
粒子群となり得る。特に結晶粒子の粒子系分布は正規分
布に近い分布を有し得る。このため、下地層上に形成さ
れる磁性層においても、微小で且つ均一な粒径の磁性粒
子が下地層の結晶粒子上に形成され、各磁性粒子は、下
地層の粒界部に対応して形成される磁性粒子の粒界部に
より磁気的に有効に隔てられ得る。ここで下地層の粒界
部は非晶質になり得、磁性粒子の粒界部は非磁性になり
得る。従って、磁性粒子の粒界部から生じるノイズを低
減するとともに、記録の際の磁化反転単位を極めて小さ
くすることでき、これにより記録感度及び記録密度を著
しく向上させることが可能となる。
【0019】さらに、下地層の結晶配向性及び結晶粒子
の格子定数を制御することにより、下地層の結晶粒子上
に磁性粒子を柱状構造にエピタキシャル成長させること
ができる。すなわち、結晶粒子の結晶系を適宜選択する
ことにより磁性層の結晶配向性を制御することができ
る。それゆえ、高密度記録に適した磁性層の結晶配向性
と整合する結晶系が得られるように、下地層の結晶粒子
の材料及び形成条件を予め選択するのが望ましい。な
お、エピタキシャル成長を確実にするためには、下地層
の結晶粒子間の距離(結晶粒界部の幅)を0.5nm〜2
nmになるように調整するのが好ましい。
【0020】下地層の第2の特徴は、下地層が軟磁性を
備えることである。軟磁性の下地層は前述のキーパー層
として機能するため、磁性層の記録磁化領域の反磁界に
よる減磁を抑制することができ、磁気記録媒体の記録さ
れた磁化状態を安定に保持することができる。また、磁
性層の膜厚を薄くすることも可能になる。それゆえ、か
かる下地層を備えることにより、長期保存性に優れた磁
気記録媒体を実現することができる。
【0021】下地層に軟磁性を持たせるには、下地層中
の結晶粒子の組成を適宜変化させればよい。例えば、後
述する実施例で用いたCoO−SiO膜においては、
主にCoOで構成される結晶粒子の組成を化学量論的な
組成からずらしてゆくこと(CoO1−Xで表した場合
にX≠0)、すなわちCoO膜中にCoを存在させるこ
とよって軟磁性を生じさせることができる。これは、例
えば、スパッタリングで下地層を形成する場合に、スパ
ッタガスとして、Arガスに1%程度のHを混合した
混合ガス(還元雰囲気)を用いることにより達成するこ
とができる。このようにしてCoO中に磁性を有する金
属のCo原子を生じさせそれにより下地層に軟磁性をも
たらすことができる。下地層の軟磁性として、下地層の
保磁力が0.05(Oe)〜10(Oe)(約3.95
A/m〜約790A/m)であり、かつ、比透磁率が5
00〜10000であることが、キーパー層の機能を果
たす上で好ましい。
【0022】ところで、キーパー層を磁気記録媒体に設
けた場合、前述したような記録感度及び再生感度に関す
る問題が生じる。本発明においては、軟磁性の下地層が
比較的低いキュリー温度を有する点に着目し、磁気記録
媒体の記録(又は再生)時には、情報が記録される領域
に収束光を照射させてその領域の温度を局所的に上昇さ
せた状態で記録磁界をその領域に印加する。ここで、光
照射された領域は温度上昇により保磁力が低下し、キュ
リー温度を超えるとその領域の磁化が消失する。この状
態で、磁気記録媒体は、キーパー層である下地層が存在
しない磁気記録媒体と実効的に等価となる。すなわち、
本発明では、下地層が存在するにも拘わらず、磁化反転
を生じさせるため記録磁界が小さくてよい。また、再生
時においても、情報再生領域に光照射しつつ、再生磁界
を印加する。このような再生方法(光アシスト再生法)
を用いることにより、磁性層からの漏洩磁界をキーパー
層により阻害されることなく高感度で磁化情報を検出す
ることが可能となる。そして、記録又は再生が終了し、
その情報が記録又は再生された領域の温度が低下する
と、保磁力が徐々に増大し、下地層は軟磁性を取り戻
す。室温下では、磁性層の磁化反転領域すなわち磁化方
向の異なる領域の境界から生じる漏洩磁界により、下地
層の磁化方向は磁性層の磁化方向と逆方向を向き、環状
の磁路が磁性層と下地層を通じて形成されるため、記録
磁化状態が安定化される。
【0023】下地層の結晶粒子は、酸化コバルト、酸化
クロム、酸化鉄もしくは酸化ニッケル又はそれらの混合
物から構成される。また、結晶粒子を取り囲む結晶粒界
部は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸
化タンタルもしくは酸化亜鉛又はそれらの混合物から構
成される。下地層の構造や組織を精密に制御するには、
下地層の結晶粒子を構成する物質の濃度(組成)、結晶
粒界部を構成する物質、成膜方法、成膜条件等を調整す
ることができる。これによって、さらに、下地層の構造
や結晶配向性、結晶粒子径等のパラメータを制御するこ
とができる。これらを適切に制御した結果、得られた下
地層は、正六角形の結晶粒子が規則的に配列したハニカ
ム構造を有し、かつ、結晶粒子を取囲むように非晶質部
分が存在する構造となる。前述のように、1つの結晶粒
子の周囲に配置している結晶粒子の数(以下、配位粒子
数と記す)が平均で5.8〜6.2個であることが好ま
しい。
【0024】下地層の膜厚は2nm〜100nmである
ことが好ましい。2nm未満では安定した成膜が行えな
かったり、安定した構造が得られないという問題が生じ
る。また、100nmを越えると、成膜に時間がかかる
ため、量産に適していない、膜厚が厚くなると内部応力
が増大するために基板からの剥離や膜にクラックが発生
する等の問題が生じる。そのため、この膜厚範囲が好ま
しい。
【0025】格子定数については、下地層の格子定数と
磁性層の格子定数との差が±10%以内となるように格
子の整合性を確保することが、磁性層が下地層から良好
なエピタキシャル成長をするために重要である。そのた
めに、磁性層と下地層との間に格子定数の差を緩和する
ための層を設けてもよい。
【0026】また、下地層の構造は成膜方法によっても
制御できる。この場合、下地層を、共鳴吸収によりプラ
ズマを発生させ、発生したプラズマをターゲットに衝突
させてターゲット粒子をスパッタさせ、上記基板と上記
ターゲットの間にバイアス電圧を印加することにより、
スパッタしたターゲット粒子を上記基板上に誘導しつつ
堆積させて形成することが好適である。このような方法
を用いると、基板上に堆積するターゲット粒子を一定の
運動エネルギーに制御できるため、形成する膜の構造や
密度を精密に制御することができる。共鳴吸収によりプ
ラズマを発生させる際には、マイクロ波を用いることが
好適である。さらに、共鳴吸収には電子サイクロトロン
共鳴(Electron Cyclotron Resonance:ECR)を用
いることが好ましい。また、バイアス電圧を印加する際
には、高周波(RF)電源又は直流(DC)電源を用い
ることが好ましい。
【0027】一方、磁性層は、Cr、Pt、Ta、N
b、Ti及びSiからなる群より選ばれた少なくとも2
種類の元素を含むCo合金の磁性薄膜を用いることが好
ましい。さらに、この磁性層が結晶質で、かつ、先の下
地層の結晶質相からエピタキシャル成長していることが
好ましい。さらに、磁性層の形態が先の下地層の有する
組織及び粒子径ともに等しい構造であることが好まし
い。
【0028】さらに、この磁性層のミクロな構造は、C
r、Ta、Nb、Ti及びSiからなる群より選ばれた
少なくとも1種類の元素が磁性粒子を構成するCoの粒
界近傍あるいは粒界に析出(偏析)している構造である
ことが好適である。あるいは、磁性層が結晶質相と非晶
質相の2つの相から構成され、結晶質相がCoを主体と
し、Nd、Pr、Y、La、Sm、Gd、Tb、Dy、
Ho、Pt及びPdからなる群より選ばれた少なくとも
1種類の元素を含み、非晶質相として酸化ケイ素、酸化
亜鉛、酸化タンタル及び酸化アルミニウムからなる群よ
り選ばれた少なくとも1種類の化合物が結晶質相を取囲
むように存在している構造の材料から構成されていても
よい。後述する実施例では、Coを主体とする金属が粒
状にSiO相中に存在するグラニュラ型の磁性膜を用
いた。
【0029】本発明の第2の態様に従えば、本発明の第
1の態様に従う磁気記録媒体と;上記磁気記録媒体に情
報を記録又は再生するための磁気ヘッドと;上記磁気記
録媒体を上記磁気ヘッドに対して駆動するための駆動装
置と;を含む磁気記録装置が提供される。
【0030】本発明の磁気記録装置は、本発明の磁気記
録媒体を装着しているので、音声情報、コードデータ、
画像情報等の情報を低ノイズで高密度記録することがで
きる。この装置は、記録時及び再生時において上述した
ように磁気記録媒体の下地層の軟磁性を消失させるた
め、レーザー光を照射するための光ヘッドを備えていて
もよい。本発明の磁気記録装置は、さらに、40Gbi
ts/inch(6.20Gbits/cm)を超え
る面記録密度で情報を記録することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】本発明の磁気記録媒体及び磁気記
録装置の実施の形態を以下の実施例を用いて具体的に説
明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されな
い。
【0032】
【実施例1】本実施例では、図1に断面構造を示すよう
に、基板1上に下地層2、磁性層3及び保護層4を積層
した磁気ディスク10の製造方法、並びに、各層及び磁
気ディスクの特性の測定結果について説明する。
【0033】(1)磁気ディスクの製造 直径2.5inch(6.35cm)の円形のガラス基
板1上に、ECRスパッタ法により、下地層としてCo
O−SiO膜2を形成した。ターゲットには、CoO
とSiOを2:1に混合した焼結体を、スパッタガス
には1%の水素を含むAr(還元雰囲気)をそれぞれ使用
した。ここで、還元雰囲気で下地層2を形成したのは、
下地層2を構成するCoOの一部を還元してCoO以外
にCoを析出させることによって酸化コバルトに軟磁性
を持たせるためである。スパッタガスの圧力は0.5m
Torr(約66.5mPa)、投入マイクロ波電力は
1kWであった。また、共鳴吸収により励起されたプラ
ズマをターゲット方向に引き込むと共に、プラズマによ
ってターゲットから叩き出された粒子を基板方向に引き
込むため、500WのRFバイアス電圧をターゲットと
基板の間に印加した。このようなECRスパッタ法によ
り、下地層であるCoO−SiO膜2を膜厚20nm
に形成した。
【0034】(2)下地層の特性測定 上記のようにして得られた下地層であるCoO−SiO
膜2の表面を、高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)
により観察した。得られた観察像の模式図を図2に示
す。図2に示すように、この薄膜は、対辺の間隔が10
nmの正六角形の結晶粒子12の集合体であり、それら
の結晶粒子12がハニカム状に規則的に配列していた。
結晶粒子間距離は、0.7nmであった。この結晶粒子
間距離は、ターゲットの組成(CoOとSiOの比
等)を変化させることにより容易に所望の値に形成し得
ることが分かった。しかし、結晶粒子間距離を2nm以
上にするとハニカム構造が崩れてしまうため、2nm未
満になるように制御することが望ましい。
【0035】また、極微小領域のエネルギー分散型X線
分析(μ−EDX分析)により、結晶粒子12はコバル
トの酸化物であり、結晶粒界部14に存在しているのが
酸化ケイ素であることが分かった。さらに、この下地層
2の格子像観察から、コバルト酸化物は結晶質であり、
酸化ケイ素は非晶質であることが分かった。格子定数を
求めたところ、この下地層2上に形成する磁性層3の磁
性粒子を形成するCoにほぼ等しい値であった。この格
子定数は、成膜条件、さらには、CoOにイオン半径の
異なる金属(例えば、クロム、鉄、ニッケル等)又はこ
れらの金属の酸化物を添加することで精密に制御でき
る。また、ECRスパッタ法により形成したCoO粒子
には、前述のようにCoOの一部が還元されてCoO中
にCoが析出しており、CoO及びCo中のCoの比率
は、約1at%であることが分かった。
【0036】本発明の磁気記録媒体において、CoO:
Coの比は、以下のようにして下地層の比透磁率の値か
ら求めることができる。まず、予め既知量のCoOとC
oを混合し、種々の混合比の混合物を調製する。次い
で、この混合物を錠剤成型器に投入し、減圧しながら成
型する。この状態で、この混合物の比透磁率を求める。
実際に得られた混合比と比透磁率の値を以下の表1に示
す。この表から、Coの割合が増えるにつれて比透磁率
も増加していることが分かる。この2つの値の間の関係
式を求め、下地層の比透磁率の値を用いれば、形成した
下地層中のCoの割合を求めることができる。なお、比
透磁率を求めるには、次のような簡易的な手法を用い
た。まず、コの字型のコイル上に試料を置いたときと試
料を置かないときのインピーダンスをそれぞれ測定し
て、それらのインピーダンスの差から比透磁率を計算し
て求めた。
【0037】
【表1】
【0038】また、TEMによりこの薄膜の断面を観察
したところ、基板に対して垂直方向に柱状の構造が観察
された。この柱状構造は、正六角形の結晶粒子12が、
基板上から上方に結晶粒子径を保って成長したことを示
している。次に、下地層2の表面のTEM観察結果を用
いて、結晶粒子の粒子径分布及び配位粒子数を解析し
た。粒子径分布は、正規分布をしており、標準偏差
(σ)を求めると0.6nm以下であった。配位粒子数
は、ランダムに選択した280個の結晶粒子について調
べたところ、平均6.02個であった。このことは、サ
イズのそろった六角形を有する結晶粒子が、ハニカム状
に極めて規則的に配列していることを示している。配位
粒子数は、結晶粒子間の距離に依存して変化することが
分かった。すなわち、SiO濃度を低くすると、粒子
間距離は狭くなる(結晶粒子同士が接近する)と同時
に、粒子形状に乱れが観測された。このとき配位粒子数
は、7個程度と大きい粒子が存在し、逆に4〜5個程度
の小さい粒子も存在しており、ばらつきが大きくなっ
た。また、二次元の配列に乱れが生じ、ハニカム構造が
崩れた。このように、結晶粒界部に存在する物質は、構
造に規則性を持たせる重要な役割を有している。
【0039】また、比較のため、CoO−SiO系の
下地層をECRスパッタ法の代わりに、RFマグネトロ
ンスパッタ法により形成した。この下地層の構造を解析
したところ、平均粒径は10nmであり、粒子径分布は
正規分布であったが、σは1.2nmであり、粒子径の
ばらつきがECRスパッタ法により形成した場合より大
きいことがわかる。また、ランダムに選択した280個
の結晶粒子について配位粒子数を調べたところ、平均
6.3個であり、やや規則性が低下していることが分か
った。以上のことより、CoO−SiO下地層の形成
のためにECRスパッタ法を用いると、下地層の構造の
規則性を向上させることができることが分かった。
【0040】また、下地層であるCoO−SiO膜2
の膜厚を30nm程度としても、逆に、100nmと厚
くしても得られた膜の表面及び断面の組織や構造、下地
層2中の結晶粒子の粒子径及び粒子径分布等に、膜厚に
依存した変化は見られなかった。さらに、成膜初期に、
20nm程度の特定の構造を持たない微結晶の集まりで
ある初期成長層が観察され、膜厚を30nm以上とする
ことで安定したハニカム構造を有する層を成膜すること
ができた。この初期成長層は、基板上にHfやCo−C
r−Zr等の非晶質膜又はCrやCr−Ti合金等の結
晶質膜を介して下地層を形成することによりその生成を
抑制でき、下地層を薄膜化することができる。一方で、
下地層の膜厚が100nm以上では成膜に時間がかかる
ので、生産性の点から下地層の膜厚は100nm未満が
好ましい。
【0041】また、下地層であるCoO−SiO膜2
の結晶構造をX線回折法により解析した。得られた回折
プロファイルを図3に示す。図3に示すように、2θ=
62.5°付近にCoOの(220)の回折ピークが観
測され、この他のピークは観測されなかった。この結晶
構造は、下地層の成膜条件や組成を制御することによ
り、所望の構造に形成し得る。すなわち、配向性の制御
が可能である。
【0042】次に、下地層であるCoO−SiO膜2
の磁気特性を測定した。飽和磁束密度:Bs=1.8
T、保磁力:Hc=0.1Oe(約7.9A/m)、磁
歪定数:λ=4×10−7、比透磁率:μ=5000
(5MHz)であり、良好な軟磁気特性を有していた。
また、この膜の磁化容易軸は、基板と平行な方向にあ
り、下地層2はいわゆる面内磁化膜であった。
【0043】(3)磁性層の形成 上記のように形成した下地層であるCoO−SiO
2上に、磁性層としてCo69Cr17Pt11Ta
膜3を、DCスパッタ法により形成した。ターゲットに
はCo−Cr−Pt−Ta合金を、スパッタガスにはA
rをそれぞれ使用した。スパッタガスの圧力は、3mT
orr(約399mPa)であり、投入DC電力は1k
W/150mmφであった。また、磁性層の成膜中は、
基板を300℃に加熱した。このようにして磁性層3を
15nmの膜厚に形成した。
【0044】(4)磁性層の特性測定 次に、この磁性層であるCo69Cr17Pt11Ta
膜3の構造をTEMにより観察した。その結果、磁性
層3は、下地層2の構造を反映して、下地層2と同様の
ハニカム構造をしていることが分かった。この磁性層表
面の観察から求めた磁性粒子の平均粒子径は10nmで
あり、粒子径分布におけるσは0.8nm以下であっ
た。このように、磁性層の磁性粒子は微細化し、かつ、
粒子径のばらつきが小さいことが分かった。次に、配位
粒子数を、ランダムに選択した250個の結晶粒子につ
いて調べたところ、平均6.01個で、先の下地層2に
おける値とよく一致していた。このことは、サイズの揃
った六角形を有する磁性粒子が、ハニカム状に極めて規
則的に配列していることを示している。
【0045】また、この磁性層であるCo69Cr17
Pt11Ta膜3の断面構造をTEMにより観察した
ところ、下地層と磁性層との間には格子のつながりが観
察され、磁性層は下地層上からエピタキシャル成長して
いることが分かった。また、磁性層中において、下地層
の結晶粒子上から成長した磁性粒子部分と、下地層の結
晶粒界部上から成長した磁性粒子の境界部分とでは成長
機構が異なり、異なる金属組織を有していることが分か
った。特に、下地層の結晶粒子上からは良好な柱状構造
が成長していたが、結晶粒界部上から成長した部分は、
明確な組織は見られず、多結晶体の集合体であった。こ
のような多結晶体の組織は非磁性的な挙動を示すため、
磁性粒子同士が均一な幅の非磁性部分で隔てられること
により、磁性粒子間の磁気的相互作用が低減されている
ことが分かる。
【0046】また、磁性層であるCo69Cr17Pt
11Ta膜3を形成後に、X線回折法による解析を行
った。得られた回折プロファイルを図4に示す。図4に
示したように、2θ=62.5°付近の下地層2中のC
oの(220)を示すピークに加えて、2θ=72.5
°付近にピークが観測された。TEMによる観察結果と
合わせて考えると、このピークはCoの(11.0)を
示しており、Coがこの方位に強く配向していることが
分かった。よく知れらているように、Coの(11.0)
は、高密度記録に好適な配向性である。
【0047】この磁性層であるCo69Cr17Pt
11Ta膜3の磁気特性を測定した。得られた磁気特
性は、保磁力が3.6kOe(約284.4kA/
m)、Isvが2.5×10−16emu、M−Hルー
プにおけるヒステリシスの角型性の指標であるSが0.
9、Sが0.93であり、良好な磁気特性を有してい
た。このように、角型性を示す指標が大きい(角型に近
い)のは、下地層のハニカム構造を反映して磁性層が成
長し、磁性層中の磁性粒子が均一な幅で隔離されたた
め、磁性粒子間の磁気的相互作用が低減されたことを示
している。
【0048】(5)保護層の形成 最後に、保護層として、炭素膜4をDCスパッタ法によ
り形成した。ターゲットにはカーボンターゲットを、ス
パッタガスにはArをそれぞれ用いた。スパッタの条件
は、投入DC電力密度が1kW/150mmφであり、
スパッタガスのガス圧が5mTorr(約665mP
a)であった。このようにして保護層4を5nmの膜厚
に形成し、図1に示す構造の磁気ディスク10を得た。
【0049】(6)磁気ディスクの評価 さらに、上述のように形成した保護膜5の上に潤滑剤を
塗布して磁気ディスク10を完成させた。同様のプロセ
スにより複数枚の磁気ディスクを作製し、それらを磁気
記録装置に組み込んだ。磁気記録装置の概略構成を図5
及び図6に示す。図5は磁気記録装置70の上面の図で
あり、図6は、図5の破線B―B’方向における磁気記
録装置70の断面の一部を概略的に示した図である。記
録用磁気ヘッドとして、2.1Tの高飽和磁束密度を有
する軟磁性膜を用いた薄膜磁気ヘッドを用い、再生のた
めに巨大磁気抵抗効果を有するデュアルスピンバルブ型
磁気ヘッドを用いた。磁気ヘッドのギャップ長は0.1
2μmであった。記録用磁気ヘッド及び再生用磁気ヘッ
ドは一体化されており、図5及び図6では磁気ヘッド6
3として示した。この一体型の磁気ヘッド63は磁気ヘ
ッド用駆動系64により制御される。複数の磁気ディス
ク10は、回転駆動系(図示せず)のスピンドルにより、
同軸回転される。磁気ヘッド面と磁気ディスク表面との
距離(磁気ヘッドの浮上量)は14nmであった。
【0050】記録時及び再生時には図6に示すように、
光ヘッド65から収束させたレーザー光66を磁性層3
に集光するように照射した。レーザー光66を照射した
のは、レーザー光66により発生する熱を用いて下地層
2の磁化を消失させるためである。記録時には、光照射
により、磁気ディスク表面上で光照射領域に対向する領
域の温度は約170℃に上昇した。下地層2のキュリー
温度は約130℃であるため、温度上昇により、光照射
領域直下では下地層は保磁力が低下し非磁性となる。す
なわち、磁気的には下地層が存在しないのと等価であ
る。この状態で、磁性層に磁界を印加することにより記
録動作を行った。光照射を止めるか、又は記録された領
域が光照射領域を外れると、温度が室温近傍となるの
で、下地層は軟磁性を有し面内磁化層となる。この面内
磁化層は、磁性層の磁化反転領域から発生する漏洩磁界
により、磁性層の磁化方向と逆方向となる。このような
磁化配置により、磁性層の反磁界が低下するため、長時
間の保存においても記録の安定性は高い。再生時には、
光照射により、磁気ディスク表面上で光照射領域に対向
する領域の温度を約180℃に局所的に上昇させて再生
を行った。この温度上昇により、下地層は光照射領域直
下では非磁性となり、この領域では磁気的に下地層が存
在しないのと等価である。この状態で、磁化が消失した
下地層の直上の磁性層における磁化反転の境界から生じ
る漏洩磁界をGMRヘッドにより検出した。このように
して、磁気ディスク10に40Gbits/inch
(6.20Gbits/cm)に相当する信号(70
0kFCI)を記録してディスクのS/Nを評価したと
ころ、34dBの再生出力が得られた。
【0051】この磁気ディスクの記録再生特性を測定し
た結果、線記録密度700kFCIで記録した場合に、
100時間後の再生出力の減衰量は初期の再生出力の2
%であった。比較のために、下地層を設けない磁気ディ
スクに対して同様の測定をしたところ、100時間後の
再生出力の減衰量は初期再生出力の4%であった。した
がって、熱揺らぎによる減磁が抑制された結果、長時間
経過後の記録再生特性は向上し、本発明の磁気ディスク
の効果が確認できた。
【0052】また、磁気力顕微鏡(MFM)により磁化
反転単位を測定した。その結果、1ビットのデータを記
録する際に印加した記録磁界に対して磁性粒子2〜3個
が一度に磁化反転した。これは、従来の磁化反転単位5
〜10個に比べて十分に小さい。これに伴い、隣接する
磁化反転単位の境界に相当する部分(ジグザグパター
ン)も従来の磁気ディスクより著しく小さかった。これ
は、磁性粒子が微細化し、磁化反転単位も小さくなった
ため、磁化反転領域の境界線が滑らかになったことを示
している。また、熱揺らぎや熱による減磁も発生しなか
った。これは、磁性層であるCo69Cr17Pt11
Ta膜3の磁性粒子の粒子径のばらつきが小さいこと
に基づく。また、このディスクの欠陥レートを測定した
ところ、信号処理を行わない場合の値で、1×10−5
以下であった。
【0053】
【実施例2】本実施例では、図7に示すように、基板上
21上に、第1下地層22を形成し、この上に第2下地
層23、磁性層24及び保護層25を形成し、磁気ディ
スク30を作製した。以下に、磁気ディスク30を製造
する方法、並びに、各層及び磁気ディスクの特性の測定
結果を説明する。なお、本実施例及び後述する実施例3
では、基板上に形成した層を第1下地層、第1下地層上
に形成したハニカム構造を有する下地層(実施例1での
下地層2と同様の層)を第2下地層と記す。
【0054】(1)第1下地層及び第2下地層の形成 基板21として、直径2.5inch(6.35cm)
のガラス円板を用いた。基板21上に、第1下地層とし
てHf膜22を、DCスパッタ法により形成した。ター
ゲットにはHfを、スパッタガスにはArをそれぞれ使
用した。スパッタガスのガス圧は3mTorr(約39
9mPa)であり、投入DC電力は1kWであった。こ
のような条件で、Hf膜22を5nmの膜厚に形成し
た。
【0055】次いで、第1下地層であるHf膜22上
に、第2下地層としてCoO−SiO 系の無機化合物
薄膜23をECRスパッタ法により形成した。ターゲッ
トにはCoOとSiOとを2:1に混合した焼結体
を、スパッタガスには1%のHを含むAr混合ガスを
それぞれ使用した。スパッタガスのガス圧は3mTor
r(約399mPa)、投入マイクロ波電力は1kWであ
った。また、プラズマをターゲット方向に引き込むと共
に、プラズマによりターゲットから叩き出された粒子を
基板方向に引き込むために、ターゲットと基板間に50
0WのRFバイアス電圧を印加した。このようなECR
スパッタ法により、第2下地層であるCoO−SiO
膜23を膜厚15nmに形成した。
【0056】(2)第2下地層の特性測定 上記のようにして得られた第2下地層であるCoO−S
iO膜23の表面をTEMにより観察した。その結
果、観察像は実施例1と同様であり、この膜は図2に示
した構造をしていた。すなわち、この膜は対辺の間隔が
10nmの正六角形の結晶粒子の集合体であり、結晶粒
子はハニカム状に規則的に配列していた。結晶粒子間の
距離は、0.6nmであった。この値は、ターゲットの
組成(CoOとSiOの比等)を変化させることによ
り所望の値に成膜し得る。
【0057】また、μ−EDX分析により、結晶粒子は
コバルトの酸化物で、結晶粒界部に存在しているのが酸
化ケイ素であることが分かった。さらに、格子像観察か
ら、コバルト酸化物は結晶質であり、酸化ケイ素は非晶
質であることが分かった。
【0058】第2下地層23の格子定数を求めたとこ
ろ、後述する磁性層中に含まれるCoの値にほぼ等しか
った。第2下地層23の格子定数は、成膜条件を選択す
ること、又は、CoOにイオン半径の異なる金属(例え
ば、クロム、鉄、ニッケル等)若しくはこれらの金属の
酸化物を添加することで制御できる。
【0059】また、TEMにより第2下地層であるCo
O−SiO膜23の断面を観察したところ、基板に対
して垂直方向に柱状の組織が観察された。これは、Co
O−SiO膜23中の結晶粒子が粒子径を保ったまま
上方に成長したことを示している。また、CoO−Si
膜23の形成に先立ってHf膜22を形成すること
により、特定の構造を持たない初期成長層は7nm以下
となり、初期成長層の形成が大きく抑制できた。これに
より、CoO−SiO膜23の膜厚を薄くできるとと
もに、後述するように磁気異方性の増大等、CoO−S
iO膜23の有する軟磁気特性も向上することができ
た。
【0060】また、CoO−SiO膜23表面のTE
M観察結果を用いて、結晶粒子の粒子径分布及び配位粒
子数を解析した。粒子径分布は正規分布をしており、そ
の分布におけるσは0.6nm以下であった。次に、ラ
ンダムに選択した280個の結晶粒子について配位粒子
数を調べたところ、平均6.02個であった。このこと
は、サイズのそろった六角形を有する結晶粒子が、ハニ
カム状に極めて規則的に配列していることを示してい
る。この配位粒子数は、粒子径分布や粒子形状に加え、
結晶粒子間隔に依存して変化する。
【0061】また、CoO−SiO膜23の磁気特性
を測定した。飽和磁束密度:Bs=1.8T、保磁力:
Hc=0.1Oe(約7.9A/m)、磁歪定数:λ=
4×10−7、比透磁率:μ=5000(5MHz)で
あり、良好な軟磁気特性を有していた。この比透磁率の
値からすれば、CoO及びCoの合計量に対するCoの
濃度は1at%程度であると考えられる。また、この膜
の磁化容易軸は基板と平行な方向にあり、CoO−Si
膜23はいわゆる面内磁化膜であった。この膜の磁
気異方性を求めたところ、実施例1の下地層2より約3
割大きい、6×10erg/ml(0.6J/ml)
であった。
【0062】(3)磁性層の形成 上記のように形成した第2下地層であるCoO−SiO
膜23上に、磁性層としてCo69Cr17Pt11
Ta膜24を、DCスパッタ法により形成した。ター
ゲットにはCo−Cr−Pt−Ta合金を、スパッタガ
スにはArをそれぞれ使用した。スパッタガスのガス圧
は、3mTorr(約399mPa)であり、投入DC電
力は1kW/150mmφであった。磁性層の成膜中
は、基板を300℃に加熱した。この成膜条件で、Co
69Cr17Pt11Ta膜24を15nmの膜厚に
形成した。
【0063】(4)磁性層の特性測定 上記のように磁性層であるCo69Cr17Pt11
膜24を形成後に、この磁性層の構造をTEMによ
り観察した。その結果、第2下地層であるCoO−Si
膜23の構造を反映して、同様のハニカム構造を有
していた。TEMによる表面の観察像から求めた磁性粒
子の平均粒子径は10nmであり、粒子径分布における
σは0.8nm以下であった。このように、磁性層の磁
性粒子は微細化し、かつ、粒子径のばらつきが小さく、
第2下地層23と同様の形態であることが分かった。
【0064】次に、ランダムに選択した250個の結晶
粒子について配位粒子数を調べたところ、平均6.01
個で、先の実施例1の下地層2における値とよく一致し
ていた。このことは、サイズのそろった六角形を有する
磁性粒子が、CoO−SiO 膜23中の結晶粒子上か
ら連続して成長し、ハニカム状に極めて規則的に配列し
ていることを示している。
【0065】また、磁性層であるCo69Cr17Pt
11Ta膜24の断面構造をTEMにより観察した。
その結果、第2下地層であるCoO−SiO膜23と
磁性層24との間には、格子のつながりが観察され、磁
性層24は第2下地層23上からエピタキシャル成長し
ていることが分かった。また、第2下地層23中の結晶
粒子上から成長した磁性粒子と結晶粒界部上から成長し
た磁性粒子の境界部分とでは、磁性層の成長機構が異な
り、異なる金属組織を有していることが分かった。特
に、第2下地層23の結晶粒子上からは良好な柱状構造
が成長していたが、第2下地層23の結晶粒界部上から
成長した部分は、明確な組織は見られず、多結晶体の集
合体であった。このような多結晶の集合体は、非磁性的
な挙動を示すため、磁性粒子が均一な幅の非磁性部分で
隔てられることになり、磁性粒子間の磁気的相互作用が
低減できる。
【0066】また、磁性層であるCo69Cr17Pt
11Ta膜24を形成後に、この積層体のX線回折法
による解析を行った。その結果、2θ=62.5°付近
のピークに加えて、2θ=72.5°付近に弱いピーク
が観測された。TEMによる観察結果と合わせて考える
と、このピークはCoの(11.0)が強く配向してい
ることを示している。この配向は高密度記録に好適であ
り、磁性層において所望の配向性が実現できた。
【0067】この磁性層であるCo69Cr17Pt
11Ta膜24の磁気特性を測定した。得られた磁気
特性は、保磁力が3.9kOe(約308.1A/
m)、Isvが2.5×10−16emu、M−Hルー
プにおけるヒステリシスの角型性の指標であるSが0.
91、Sが0.95であり、良好な磁気特性を有して
いた。このように、角型性を示す指標が大きい(角型に
近い)のは、第2下地層のハニカム構造を反映して磁性
層が成長したために、磁性粒子間の相互作用が低減され
たことを示している。
【0068】(5)保護層の形成 最後に、磁性層であるCo69Cr17Pt11Ta
膜24上に、保護層として炭素膜25をDCスパッタ法
により形成した。ターゲットにはカーボンターゲット
を、スパッタガスにはArをそれぞれ用いた。スパッタ
の条件は、投入DC電力密度が1kW/150mmφ、
スパッタガスのガス圧が5mTorr(約665mP
a)である。このような条件で、保護層である炭素膜2
5を5nmの膜厚に形成し、図7に示す構造の磁気ディ
スク30を得た。
【0069】(6)磁気ディスクの評価 上記のように形成した保護層である炭素膜25の上に潤
滑剤を塗布して、磁気ディスク30を完成させた。上述
したプロセスにより複数枚の磁気ディスク30を作製
し、それらを磁気記録装置のスピンドルに同軸上に取り
付けた。磁気記録装置は実施例1と同様に、図5及び図
6に示す構成とした。磁気ヘッドの浮上量は14nmで
あった。実施例1と同様に記録時及び再生時に、第2下
地層23の磁化を消失させるため、レーザー光を磁性層
に集光し温度を第2下地層のキュリー温度130℃以上
に上昇させた。記録時には磁気ディスク表面上で光照射
領域に対向する領域の温度が約170℃に上昇し、再生
時には光照射領域に相当する領域の温度が約180℃に
上昇した。このディスクに40Gbits/inch
(6.20Gbits/cm)に相当する信号(70
0kFCI)を記録してディスクのS/Nを評価したと
ころ、36dBの再生出力が得られた。
【0070】上記の磁気ディスク30の記録再生特性を
測定した。その結果、線記録密度700kFCIで記録
した場合における100時間後の再生出力の減衰量は、
初期の再生出力の2%であった。比較のために、この第
2下地層23を設けない磁気ディスクを作製して同様の
測定をしたところ、100時間後の再生出力の減衰量は
初期の再生出力の4%であった。したがって、軟磁性の
下地層を用いた結果、反磁界の減少及び熱揺らぎの低減
により、時間経過に伴う減磁が抑制されて記録再生特性
が向上し、本発明の効果が確認できた。
【0071】また、MFMにより、磁気ディスク30の
磁性層24の磁化反転単位を実施例1と同様に測定し
た。その結果、磁性粒子2〜3個が一度の磁化反転し、
従来の磁気ディスクと比較して、十分に小さいことが分
かった。これと共に、磁化反転領域の境界に相当するジ
グザグパターンも従来の磁気ディスクより著しく小さか
った。このことは、熱揺らぎや熱による減磁も発生しな
かったことと合わせて考えると、磁性層24の磁性粒子
の粒子径のばらつきが小さいことに基づいている。この
ディスクの欠陥レートを測定したところ、信号処理を行
わない場合の値で、1×10−5以下であった。
【0072】本実施例では、第1下地層22に非晶質の
Hf膜を用いたが、この他に、Co−Ta−ZrやCo
−Nb−Zr等の非晶質合金膜を用いてもHfと同様の
初期成長層形成を抑制する効果が得られる。
【0073】
【実施例3】本実施例では、図8に示すように、基板3
1上に第1下地層32、第2下地層33、格子定数制御
層34、磁性層35及び保護層36をこの順に積層した
磁気ディスク40の製造方法、並びに、各層及び磁気デ
ィスクの各種特性の測定結果について説明する。
【0074】(1)第1下地層及び第2下地層の形成 基板として、直径2.5inch(6.35cm)のガラ
ス基板31を用いた。この基板31上に結晶性の第1下
地層としてCr85Ti15合金膜32を、DCスパッ
タ法により形成した。ターゲットにはCr−Ti合金
を、スパッタガスにはArをそれぞれ使用した。スパッ
タガスのガス圧は3mTorr(約399mPa)、投入
DC電力は1kWであった。このような条件で、第1下
地層のCr85Ti15合金膜32を5nmの膜厚に形
成した。次いで、第2下地層としてCoO−ZnO膜3
3を、ターゲットにCoOとZnOの3:1の混合物の
焼結体を用いた以外は、実施例1における下地層2の形
成条件と同様にして、還元雰囲気下でのECRスパッタ
法により、15nm膜厚に形成した。
【0075】(2)第2下地層の特性測定 第2下地層であるCoO−ZnO膜33の表面をTEM
により観察した。その結果、この膜は実施例1の下地層
であるCoO−SiO膜2と同様の構造をしており、
対辺の間隔が10nmの正六角形の結晶粒子の集合体で
あることが分かった。次に、ランダムに選択した250
個の結晶粒子について配位粒子数を調べたところ、平均
6.01個で、先の実施例1の下地層2における値とよ
く一致していた。このことは、サイズのそろった六角形
を有する結晶粒子が、ハニカム状に極めて規則的に配列
していることを示している。
【0076】ところで、結晶粒子が酸化コバルトであり
実施例1と同一であるにもかかわらず、この結晶粒子の
CoOの格子定数は、磁性層の格子定数より20%大き
かった。これは、結晶粒界部に存在するZnOが結晶粒
子中に固溶するためであることがμ−EDX分析により
明らかになった。すなわち、結晶粒界部の組成によって
格子定数を変化させ得ることが分かった。
【0077】第2下地層のCoO−ZnO膜33の磁気
特性を測定したところ、飽和磁束密度:Bs=1.8
T、保磁力:Hc=0.1Oe(約7.9A/m)、磁
歪定数:λ=4×10−7、比透磁率:μ=5000
(5MHz)であり、良好な軟磁気特性を有していた。
また、この膜の磁化容易軸は基板と平行な方向にあり、
この膜はいわゆる面内磁化膜であった。比透磁率の値か
らすれば、結晶粒子中のCoの含有率は、CoO及びC
oの合計量に対して1at%程度であると考えられる。
CoO−ZnO膜33の磁気異方性を求めたところ、実
施例1より約3割大きい、6×10erg/ml
(0.6J/ml)であった。
【0078】(3)格子定数制御層の形成 第2下地層であるCoO−ZnO膜33を形成後、Co
O−ZnO膜33と磁性層35との格子定数の差を調整
するために、CoO−ZnO膜33と磁性層35との中
間の格子定数を有するCr85Ti15合金の薄膜34
を、格子定数制御層として磁性層35の形成に先立って
CoO−ZnO膜33上に形成した。このCr−Ti合
金は、Ti濃度を制御することによりCrの格子定数が
変化するため、Cr−Ti合金膜34は磁性層35の格
子定数に近い所望の格子定数を有する膜になるように形
成することができる。そのため、第2下地層33と格子
定数制御層34との格子定数の差、並びに、第2下地層
33と格子定数制御層34との格子定数の差をそれぞれ
10%以内に抑えることができる。格子定数制御層であ
るCr85Ti15合金薄膜34は、DCスパッタ法に
より形成した。ターゲットにはCr−Ti合金を、スパ
ッタガスにはArをそれぞれ使用した。スパッタガスの
ガス圧は、3mTorr(約399mPa)であり、投
入DC電力は1kW/150mmφであった。このよう
な条件で、Cr85Ti15合金薄膜34を25nm膜
厚に形成した。
【0079】(4)磁性層の形成 Cr85Ti15膜34を形成後、磁性層として、(C
69Cr19Pt 97Ta膜35を形成し
た。ターゲットにはCo−Cr−Pt−Ta合金を、ス
パッタガスにはArをそれぞれ使用した。スパッタガス
のガス圧は3mTorr(約399mPa)であり、投
入DC電力は1kW/150mmφであった。この条件
で磁性層の(Co69Cr19Pt1297Ta
35を12nm膜厚に形成した。
【0080】(5)磁性層の特性測定 上記のように磁性層である(Co69Cr19
1297Ta膜35を積層後、この積層体の構造
をX線回折法により解析した。その結果、得られた回折
プロファイルからCoの(11.0)が強く配向してい
ることが分かった。このことは高密度記録に要求されて
いる所望の配向性が磁性層に実現できたことを示してい
る。
【0081】また、磁性層である(Co69Cr19
1297Ta膜35のTEMによる表面の観察か
ら、先に形成した第2下地層のCoO−ZnO膜33と
同様のハニカム状に配列した磁性粒子が観察された。磁
性粒子の平均粒子径は10nmであり、第2下地層33
における結晶粒子の粒子径とほぼ同じであった。また、
磁性粒子の粒子径分布を求めたところ、σは0.8nm
以下であった。このように、磁性層35の磁性粒子は微
細化しており、かつ、粒径分布のばらつきがが小さいこ
とが分かった。また、TEMによるこの積層体の断面観
察から、磁性層35が第2下地層33から連続する良好
な柱状組織をしており、第2下地層の結晶粒子上から成
長した磁性層の磁性粒子は粒子径を保ったまま上方に成
長していることが分かった。すなわち、第2下地層33
上から磁性層35は格子定数制御層34を介してエピタ
キシャル成長していることが分かった。
【0082】次に、磁性層である(Co69Cr19
1297Ta膜35の磁気特性を測定した。得ら
れた磁気特性は、保磁力が3.9kOe(約308.1
kA/m)、Isvが2.5×10−16emu、M−
Hループにおけるヒステリシスの角型性の指標であるS
が0.91、Sが0.95であり、良好な磁気特性を
有していた。
【0083】(6)保護層の形成 磁性層である(Co69Cr19Pt1297Ta
膜35を形成後、保護層として炭素膜36をECRスパ
ッタ法により形成した。ターゲットには環状のカーボン
ターゲットを、スパッタガスにはArをそれぞれ用い
た。スパッタの条件は、投入マイクロ波電力密度が0.
7kW/150mmφ、スパッタガスのガス圧が0.5
mTorr(約66.5mPa)であった。このような
条件により、炭素膜36を5nmの膜厚に形成し、図8
に示す構造の磁気ディスク40を得た。
【0084】(7)磁気ディスクの評価 上記のように形成した保護層である炭素膜36の上に潤
滑剤を塗布して、磁気ディスク40を完成させた。上述
したプロセスにより複数枚の磁気ディスク40を作製
し、それらを磁気記録装置のスピンドルに同軸上に取り
付けた。磁気記録装置は実施例1と同様に、図5及び図
6に示す構成とした。磁気ヘッドの浮上量は14nmで
あった。実施例1と同様に記録時及び再生時に、第2下
地層33の磁化を消失させるため、レーザー光を磁性層
に集光し温度を第2下地層のキュリー温度130℃以上
に上昇させた。記録時には磁気ディスク表面上で光照射
領域に対向する領域の温度が約170℃に上昇し、再生
時には光照射領域に相当する領域の温度が約180℃に
上昇した。このディスクに40Gbits/inch
(6.20Gbits/cm)に相当する信号(70
0kFCI)を記録してディスクのS/Nを評価したと
ころ、34dBの再生出力が得られた。
【0085】また、磁気ディスク40の記録再生特性を
測定した結果、線記録密度700kFCIで情報を記録
した場合に、100時間後の再生出力の減衰量は初期の
再生出力の2%であった。比較のために、第2下地層を
設けない磁気ディスクを作製し、この磁気ディスクに同
様の記録再生特性の評価を行ったところ、700kFC
I記録における100時間後の減衰量は初期再生出力の
4%であった。したがって、軟磁性の下地層を用いた結
果、反磁界の減少及び熱揺らぎの低減により、時間経過
に伴う減磁が抑制されて記録再生特性が向上し、本発明
の効果が確認できた。
【0086】また、MFMにより磁化反転単位を実施例
1と同様に測定したところ、粒子2〜3個が一度に磁化
反転した。これは、従来の磁気ディスクの磁化反転単位
5〜10個と比較して、十分に小さい。これと共に、磁
化反転領域の境界に存在するジグザグパターンも従来の
媒体より著しく小さかった。また、熱揺らぎや熱による
減磁も発生しなかった。これらのことは、磁性層である
(Co69Cr19Pt1297Ta膜35の磁性
粒子の粒子径のばらつきが小さいことに基づく。また、
このディスクの欠陥レートを測定したところ、信号処理
を行わない場合の値で、1×10−5以下であった。
【0087】本実施例で格子定数制御層に用いたCr−
Ti合金はbcc構造であるが、この他に、Co−Cr
−Ru合金膜に代表されるhcp構造の層を用いてもよ
い。また、格子定数制御層は、DCスパッタ法以外にE
CRスパッタ法に代表される共鳴吸収により励起された
プラズマを用いる方法により形成してもよい。この方法
は、結晶粒子の配向性や結晶粒子径の制御性の点で一層
優れている。
【0088】
【実施例4】本実施例では、磁気記録用の磁性層に、C
o−SiO系のグラニュラ型磁性膜を用いた以外は、
実施例1と同様の材料及び方法を用いて図1に示す構造
の磁気ディスクを作製した。
【0089】(1)磁気ディスクの製造 実施例1と同様にして、ガラス基板上に下地層であるC
oO−SiO膜を30nmの膜厚に形成した。次い
で、磁性層として酸化物中に粒状の金属が存在するグラ
ニュラ構造を有するCo−SiO系の磁性膜を、EC
Rスパッタ法により形成した。ターゲットにはCo−S
iO系混合(混合比は、Co:SiO=1:1)タ
ーゲットを、スパッタガスには、ArにHを1%含ん
だ混合ガスをそれぞれ使用した。スパッタガスのガス圧
は0.3mTorr(約39.9mPa)、投入マイクロ
波電力は1kWであった。マイクロ波により励起された
プラズマをターゲット方向に引き込むと共に、プラズマ
によりターゲットから叩き出された粒子を基板方向に引
き込むため、500WのRFバイアス電圧をターゲット
と基板間に印加した。また、磁性層の成膜中は、基板を
300℃に加熱した。このようなECRスパッタ法によ
り、磁性層のグラニュラ型Co−SiO系磁性膜を膜
厚10nmに形成した。次いで、実施例1と同様にして
保護層である炭素膜を膜厚2nmに形成し、図1に示し
た構造の磁気ディスクを得た。
【0090】(2)磁性層の特性測定 上記のように形成した磁性層であるグラニュラ型Co−
SiO系磁性膜を、TEMにより観察した。断面観察
の結果、下地層の結晶粒子上から磁性層のCoがエピタ
キシャル成長しており、下地層中で結晶粒子を取囲む非
晶質相(結晶粒界部)上からはSiOが成長してい
た。断面は柱状組織であり、磁性粒子であるCoは非磁
性のSiOに囲まれ、磁性粒子同士が均一な幅で分離
されており、磁気的相互作用を大きく低減できることが
理解される。この磁性層の構造は、高密度磁気記録にと
って有効である。
【0091】このように、下地層及びCoの格子定数を
整合させることと成膜時の基板温度を調整することによ
って、磁性層の構造は下地層の構造を反映し、結晶相と
非晶質相との相分離が生じる。さらに、磁性粒子同士を
分離する非磁性部分の幅、粒子間の距離は、SiO
成を選択することにより容易に制御できる。この場合、
下地層と同様に粒子間の距離が2nmを越えるとハニカ
ム構造が崩れるので、この距離は2nm未満に形成する
ことが好ましい。
【0092】また、原子力間電子顕微鏡(AFM)によ
り測定した磁気ディスクの表面の凹凸は、ある山(凸部)
の頂点から最も近い山の頂点までの水平方向の距離が6
μm、ある山の頂点から谷(凹部)までの垂直方向の距離
が10nm以下(AFMの測定下限以下)であった。し
たがってこの凹凸は基板表面の凹凸や傷に比較して微小
であり、磁気ディスク表面がむしろ平坦であることを示
している。さらに、この磁気ディスク表面には、ハニカ
ム構造の下地層において結晶粒子部分と結晶粒界部の成
長速度がわずかに異なることに由来する微小な凹凸が存
在していた。
【0093】また、保護層である炭素膜形成後の磁気デ
ィスク表面をTEMにより観察した。その結果、上記の
磁性層表面の凹凸と同様の凹凸を有し、しかも、磁性層
表面は炭素膜で完全に覆われていることが分かった。
【0094】また、磁性層であるグラニュラ型Co−S
iO系磁性膜の磁気特性を測定した。この磁性層の磁
気特性は、保磁力が4.0kOe(約316kA/
m)、Isvが2.5×10−16emu、M−Hルー
プにおけるヒステリシスの角型性の指標であるSが0.
89、Sが0.93であり、良好な磁気特性を有して
いた。このことは、磁性層の磁性粒子の粒子径が小さ
く、そのばらつきが小さいこと、さらに、磁性粒子間の
磁気的相互作用が低減された結果を反映している。ま
た、著しく微小な磁性粒子がほとんど存在していないの
で、得られた磁気ディスクは耐熱揺らぎに優れているこ
とが理解される。
【0095】また、ECRスパッタ法の代わりにマグネ
トロン型RFスパッタ法により炭素膜を形成した磁気デ
ィスクを作製し、磁気特性を比較した。マグネトロン型
RFスパッタ法で形成した場合の磁気特性は、保磁力が
2.5〜1.8kOe(約197.5〜約142.2A
/m)に低下していた。その上、その保磁力は1枚の磁
気ディスク上に大きなむらを生じていた。このように、
ECRスパッタ法による炭素膜形成は、磁性層を均一に
被覆できることや緻密な膜を形成できることに加えて、
成膜時の磁性層への損傷も抑制できることが分かった。
【0096】(3)磁気ディスクの評価 保護層である炭素膜の上に潤滑剤を塗布して、磁気ディ
スクを完成させた。上述したプロセスにより複数枚の磁
気ディスクを作製し、それらを磁気記録装置のスピンド
ルに同軸上に取り付けた。磁気記録装置は実施例1と同
様に、図5及び図6に示す構成とした。磁気ヘッドの浮
上量は14nmであった。実施例1と同様に記録時及び
再生時に、下地層の磁化を消失させるため、レーザー光
を磁性層に集光し温度を下地層のキュリー温度130℃
以上に上昇させた。記録時には磁気ディスク表面上で光
照射領域に対向する領域の温度が約170℃に上昇し、
再生時には光照射領域に相当する領域の温度が約180
℃に上昇した。このディスクに40Gbits/inc
(6.20Gbits/cm)に相当する信号
(700kFCI)を記録してディスクのS/Nを評価
したところ、34dBの再生出力が得られた。
【0097】また、この磁気ディスクの記録再生特性を
測定した結果、線記録密度700kFCIで情報を記録
した場合に、100時間後の再生出力の減衰量は初期再
生出力の1.5%であった。比較のために、下地層を設
けないで作製した磁気ディスクに対して同様の測定をし
たところ、700kFCI記録における100時間後の
再生出力の減衰量は初期再生出力の3.5%であった。
したがって、記録再生特性は向上し、本発明の下地層の
効果が確認できた。
【0098】また、MFMにより実施例1と同様に磁化
反転単位を測定したところ、磁性粒子2〜3個が一度に
磁化反転した。この粒子数は、従来の磁化反転単位5〜
10個に比較して、十分に小さい。これと共に、磁化反
転領域の境界に存在するジグザグパターンも従来の媒体
より著しく小さかった。また、熱揺らぎや熱による減磁
も発生しなかったことと合わせて考えると、これらの結
果は、磁性粒子の粒子径のばらつきが小さくなったこと
を示している。また、このディスクの欠陥レートを測定
したところ、信号処理を行わない場合の値で、1×10
−5以下であった。
【0099】本実施例では、磁性層の形成にECRスパ
ッタ法を用いたが、Co−SiO混合(あるいは複
合)のターゲットを用いてマグネトロンスパッタ法等を
用いてもよい。しかし、この場合は、磁性粒子形状がE
CRスパッタ法を用いた場合よりやや劣化することがあ
る。
【0100】実施例1、2及び4では、下地層又は第2
下地層としてCoO−SiO膜を形成した。このCo
O−SiO膜形成には、ターゲットとしてCoOとS
iO との混合物の焼結体を用いたが、各化合物の焼結
体をターゲットに用い、二元同時スパッタにより成膜し
てもよい。
【0101】
【実施例5】本実施例では、結晶質相の格子定数が良好
に制御された下地層を有する磁気ディスクを製造した。
以下に、磁気ディスクの製造方法、並びに、各層及び磁
気ディスクの特性の測定結果を説明する。
【0102】(1)下地層の形成 実施例1と同様の基板上に、下地層としてFeを含むC
oO−ZnO膜をRFマグネトロンスパッタ法により形
成した。ターゲットにはCoOにFeを3:1に
混合した焼結体とZnOの二元のターゲットを用いて、
同時スパッタ法を行った。このとき、両者の混合比が
2:1になるようにスパッタのパワーを調整した。ま
た、スパッタガスのガス圧は3mTorr(約399m
Pa)、スパッタガスは水素を1%含むAr混合ガスで
あった。このような条件で、下地層を膜厚30nmに形
成した。
【0103】(2)下地層の特性測定 上記のようにして得られた下地層であるFeを含むCo
O−ZnO膜の表面をTEMにより観察したところ、実
施例1と同様の図2に示す観察像が得られた。図2に示
すように、この膜は結晶粒子径が10nmの正六角形の
結晶粒子の集合体であり、それら結晶粒子が規則的に配
列したハニカム構造をしていた。結晶粒子間距離(結晶
粒界部の幅)は、0.7nm程度であった。
【0104】μ−EDX分析によれば、結晶粒子はコバ
ルトの酸化物から構成され、コバルト酸化物の格子の隙
間に鉄が存在していることが分かった。また、結晶粒界
部には酸化亜鉛が存在していた。格子像を観察すると、
コバルト酸化物は結晶質であり、酸化亜鉛は非晶質であ
ることが分かった。
【0105】次に、ランダムに選択した250個の結晶
粒子について配位粒子数を調べたところ、平均6.01
個で、実施例1の下地層における値とよく一致してい
た。このことは、サイズのそろった六角形を有する結晶
粒子が、ハニカム状に極めて規則的に配列していること
を示している。また、格子定数を求めたところ、0.4
02nmであった。この格子定数は、酸化鉄の含有率を
調整することで制御することができ、例えば、酸化鉄の
含有率を増すと格子定数が大きくなることが分かった。
【0106】また、この下地層であるCoO−ZnO膜
の磁気特性を測定した。飽和磁束密度:Bs=1.8
T、保磁力:Hc=0.1Oe(約7.9A/m)、磁
歪定数:λ=4×10−7、比透磁率:μ=5000
(5MHz)であり、良好な軟磁気特性を有していた。
また、この膜の磁化容易軸は基板と平行な方向にあり、
この膜はいわゆる面内磁化膜であった。この膜の磁気異
方性を求めたところ、実施例1より約3割大きい、6×
10erg/ml(0.6J/ml)であった。
【0107】(3)磁性層及び保護層の形成 下地層であるCoO−ZnO膜上に、磁性層として、C
69Cr19Pt 膜を12nm膜厚にECRスパ
ッタ法により形成した。ターゲットにはCo−Cr−P
t合金を、スパッタガスにはArをそれぞれ使用した。
スパッタガスのガス圧は、0.3mTorr(約39.
9mPa)であり、投入マイクロ波電力は0.8kWで
あった。マイクロ波により励起されたプラズマをターゲ
ット方向に引き込むと共に、プラズマによってターゲッ
トから叩き出された粒子を基板方向に引き込むため、5
00VのDCバイアス電圧をターゲットと基板間に印加
した。磁性層を成膜中は、基板を300℃に加熱した。
最後に、保護膜として炭素膜をECRスパッタ法により
形成した。ターゲットには環状のカーボンターゲット
を、スパッタガスにはArをそれぞれ用いた。スパッタ
の条件は、投入マイクロ波電力密度が0.7kW、スパ
ッタガスのガス圧が0.5mTorr(約66.5mP
a)であった。このような条件で炭素膜を3nmの膜厚
に形成し、図1に示した構造の磁気ディスクを作製し
た。
【0108】(4)磁性層の特性測定 得られた磁性層であるCo69Cr19Pt12膜の構
造をX線回折法により解析した。その結果、Coの(1
1.0)が強く配向していることが分かった。これは高
密度記録に好適な配向性であり、所望の配向が磁性層に
おいて実現できたことを示している。
【0109】次に、磁性層であるCo69Cr19Pt
12膜の格子定数を求めたところ、0.402nmであ
った。前述のように、下地層に酸化鉄を含ませて結晶粒
子の格子定数を磁性層の格子定数と同一になるように制
御したため、磁性層と下地層において格子定数を整合さ
せることができた。
【0110】また、磁性層であるCo69Cr19Pt
12膜表面のTEMによる観察から、磁性層が先の下地
層の構造を反映してハニカム構造を有していることが分
かった。磁性粒子の平均粒子径は10nmであり、粒子
径分布におけるσは2nm以下であった。このように、
磁性層の磁性粒子は微細化しており、かつ、粒子径のば
らつきが小さいことが分かった。また、ランダムに選択
した250個の結晶粒子について配位粒子数を調べたと
ころ、平均6.01個で、実施例1の下地層における値
とよく一致していた。このことは、サイズのそろった六
角形を有する磁性粒子が、下地層の結晶粒子上から連続
して成長し、ハニカム状に極めて規則的に配列している
ことを示している。
【0111】また、保護層である炭素膜形成後の磁気デ
ィスク表面のTEMによる観察から、形成した炭素膜が
3nmと薄膜であるにもかかわらず、炭素膜は一様に磁
性層を覆っていることが分かった。炭素膜の硬度もCV
D法により形成した場合と同等以上であった。これらの
特長は、炭素膜をECRスパッタ法により形成したため
である。
【0112】また、TEMによる断面観察から、磁性層
は良好な柱状構造を有し、下地層上から磁性層はエピタ
キシャル成長していることが分かった。すなわち、磁性
粒子は下地層の結晶粒子と等しい粒子径を保って成長し
ていることが分かった。
【0113】また、磁性層であるCo69Cr19Pt
12膜の磁気特性を測定した。得られた磁気特性は、保
磁力が3.9kOe(約308.1kA/m)、Isv
が2.5×10−16emu、M−Hループにおけるヒ
ステリシスの角型性の指標であるSが0.86、S
0.91であり、良好な磁気特性を有していた。このこ
とは、磁性層が下地層のハニカム構造を反映して成長
し、磁性粒子が均一な幅で隔離された結果、粒子間の磁
気的な結合が切断されていることを示している。
【0114】(5)磁気ディスクの評価 上記のように形成した保護層である炭素膜の上に潤滑剤
を塗布して、磁気ディスクを完成させた。上述したプロ
セスにより複数枚の磁気ディスクを作製し、それらを磁
気記録装置のスピンドルに同軸上に取り付けた。磁気記
録装置は実施例1と同様に、図5及び図6に示す構成と
した。磁気ヘッドの浮上量は15nmであった。実施例
1と同様に記録時及び再生時に、下地層の磁化を消失さ
せるため、レーザー光を磁性層に集光し温度を下地層の
キュリー温度130℃以上に上昇させた。記録時には磁
気ディスク表面上で光照射領域に対向する領域の温度が
約170℃に上昇し、再生時には光照射領域に相当する
領域の温度が約180℃に上昇した。このディスクに4
0Gbits/inch(6.20Gbits/cm
)に相当する信号(700kFCI)を記録してディ
スクのS/Nを評価したところ、32dBの再生出力が
得られた。
【0115】また、この磁気ディスクの記録再生特性を
測定した。線記録密度700kFCIで情報を記録した
ところ、100時間後の再生出力の減衰量は初期再生出
力の1.5%であった。比較のために、下地層を設けな
い磁気ディスクを作製し、同様の測定を行ったところ、
700kFCI記録における100時間後の減衰量は初
期再生出力の3.5%であった。したがって、軟磁性の
下地層を用いた結果、反磁界の減少及び熱揺らぎの低減
により時間経過に伴う減磁が抑制されて記録再生特性は
向上し、本発明の効果が確認できた。
【0116】また、MFMにより実施例1と同様に磁化
反転単位を測定したところ、磁性粒子2〜3個が一度に
磁化反転した。この粒子数は、従来の磁化反転単位5〜
10個に比較して、十分に小さい。これと共に、磁化反
転領域の境界に存在するジグザグパターンも従来の媒体
より著しく小さかった。熱揺らぎや熱による減磁も発生
しないため、これらの結果は、磁性層の磁性粒子の粒子
径のばらつきが小さいことに起因していることが分かっ
た。また、このディスクの欠陥レートを測定したとこ
ろ、信号処理を行わない場合の値で、1×10−5以下
であった。
【0117】上記実施例1〜5では、情報の再生時にG
MR素子を用いたが、トンネル接合を用いたTMR素子
を用いてもよい。これを用いれば、さらに高い検出感度
が得られる。
【0118】
【実施例6】本実施例では、特に下地層の結晶粒界部に
SiO/ZnOを用いて結晶粒子間の距離を制御した
以外は、実施例1と同様の材料及び方法で図1に示す構
造の磁気ディスクを作製した。以下に、磁気ディスクを
製造する方法、並びに、各層及び磁気ディスクの特性の
測定結果を説明する。
【0119】(1)磁気ディスクの製造 実施例1と同様の基板上に、下地層としてCoO−Si
/ZnO膜を、RFマグネトロンスパッタ法により
形成した。ターゲットには、CoOの焼結体と、SiO
及びZnOを3:1の割合に混合した混合物の焼結体
との2つを用いて二元同時スパッタ法を行った。下地層
の組成は、二元のターゲットに投入する電力を調製する
ことにより制御できる。スパッタガスには1%のH
含むArの混合ガスを使用し、スパッタガスのガス圧は
3mTorr(約399mPa)とした。投入RF電力
は、CoOとSiO/ZnOの比が2:1になるよう
に調整した。このような条件で、下地層のCoO−Si
/ZnO膜を30nm膜厚に形成した。次いで、下
地層上に実施例1と同様にして磁性層及び保護層を形成
し、図1に示す構造の磁気ディスクを作製した。
【0120】(2)下地層の特性測定 上記のように下地層であるCoO−SiO/ZnO膜
を形成後、TEMにより表面を観察した。その結果、実
施例1と同様の図2に示すような観察像が得られた。こ
の観察像から、粒子径が10nmの六角形の結晶粒子が
ハニカム状に規則配列していることが分かった。また、
結晶粒子の周囲には0.8nm程度の幅の結晶粒界部が
存在していた。結晶粒子と結晶粒界部をμ−EDXによ
り分析したところ、結晶粒子はコバルトの酸化物で、結
晶粒界部に存在しているのが酸化ケイ素と酸化亜鉛であ
ることが分かった。
【0121】次に、ランダムに選択した250個の結晶
粒子について配位粒子数を調べたところ、平均6.01
個で、先の実施例1の下地層における値とよく一致して
いた。このことは、サイズのそろった六角形を有する結
晶粒子が、ハニカム状に極めて規則的に配列しているこ
とを示している。
【0122】ところで、結晶粒子間の距離(結晶粒界部
の幅)は、結晶粒子を構成する物質の濃度(相対的に結
晶粒界部を構成する物質濃度を変化させてもよい)及び
結晶粒界部を構成する物質の組成(ここではSiO
ZnOとの比)を制御することにより変化させることが
できる。例えば、Co酸化物の濃度を低くしていくと、
結晶粒子間の距離は長くなった。例えば、CoO:(S
iO+ZnO)=3:1の場合には、結晶粒子間の距
離は0.5nmであった。そして、これよりCoO濃度
を低くすると、結晶粒界部が不明確になった。それと同
時に、ハニカム構造が崩れてきた。このことから、ハニ
カム構造を維持するためには、結晶粒子を構成する物質
が少なくとも25%程度必要であることが分かった。逆
に、結晶粒界部を構成する物質濃度をCoO:(SiO
+ZnO)=1:4のように高くすると、結晶粒子間
の距離は3.0nmになった。さらに結晶粒界部を構成
する物質の濃度を高くすると、結晶粒界部を構成する物
質は結晶粒子を取り囲むのではなく、円形に近い形状で
析出するようになり、ハニカム構造が崩れてくることが
分かった。したがって、CoO:(SiO+ZnO)
=3:1〜1:4の範囲で各物質の相対濃度を変化させ
ることにより、ハニカム構造を保って結晶粒子間の距離
を選択することができる。また、結晶粒界部を構成する
物質の組成を変化させて結晶粒子間距離を制御する場合
は、混合する材料同士のスパッタ速度の違いを利用した
り、イオン半径の異なる原子をさらに混入させて体積変
化を生じさせることを利用し得る。上記のいずれの方法
を用いて結晶粒子間の距離を制御してもよい。
【0123】ところで、高密度記録のためには、磁化反
転単位を小さくするため磁性粒子相互の磁気的相互作用
を低減することが重要である。そこで、下地層上に磁性
層をエピタキシャル成長させて磁気ディスクを製造する
場合に結晶粒子間の距離を制御できると、磁気的相互作
用を変化させることができる。なぜならば、結晶粒子上
と結晶粒界部上とでは、形成される磁性層の組織や構造
が異なるので、磁性が全く異なるためである。磁性粒子
は下地層の結晶粒子の構造を反映し、良好な結晶性を有
しているのに対して、下地層の結晶粒界部上に形成され
た粒界部分ではランダム配向で非晶質に近い状態であっ
た。下地層の結晶粒子上の磁性層部分は通常のハードな
磁性を示し、結晶粒界部上の磁性層部分では非磁性に近
くなっていた。このように、磁性層や磁気ディスクの磁
気特性は、磁性層、ひいては下地層の膜構造を反映して
いることが分かった。したがって、上記のように簡易な
手法を用いて、磁気的相互作用を容易に制御できること
が分かった。
【0124】次に、このCoO−SiO/ZnO膜の
磁気特性を測定した。飽和磁束密度:Bs=1.8T、
保磁力:Hc=0.1Oe(約7.9A/m)、磁歪定
数:λ=4×10−7、比透磁率:μ=5000(5M
Hz)であり、良好な軟磁気特性を有していた。また、
この膜の磁化容易軸は、基板と平行な方向に存在してお
り、この膜はいわゆる面内磁化膜である。この膜の磁気
異方性を求めたところ、実施例1より約3割大きい、6
×10erg/ml(0.6J/ml)であった。
【0125】本実施例では、RFマグネトロンスパッタ
法を用いて下地層を形成したが、ECRスパッタ法を用
いてもよい。この場合、SiO−ZnO等の系の選択
により、スパッタ速度が制御できるので、固溶系(ここ
ではCoOとSiO−ZnO)とならない材料系を選
択すればよい。
【0126】
【実施例7】本実施例では、図9に示すように、基板4
1上に下地層42、格子定数制御層43、磁性層44及
び保護層45を順次積層した磁気ディスク50を製造し
た。以下にこの磁気ディスクを製造する方法、並びに、
各層及び磁気ディスクの特性の測定結果を説明する。ま
た、本実施例では、実施例1〜6で用いた光ヘッドを用
いないで記録及び再生を行う例を示す。
【0127】(1)下地層の形成 基板として、直径2.5inch(6.35cm)のガ
ラス基板41上に、ECRスパッタ法により下地層とし
てNiO−Al膜42を形成した。ターゲットに
はNiOとAlの2:1の混合物をターゲット
に、Hを1%含むAr混合ガスをスパッタガスにそれ
ぞれ使用した。スパッタガスのガス圧は0.3mTor
r(約39.9mPa)、投入マイクロ波電力は0.7
kWであった。プラズマをターゲット方向に引き込むと
共に、プラズマによりターゲットから叩き出された粒子
を基板方向に引き込むため、ターゲットと基板間に50
0WのRFバイアスを印加した。このようなECRスパ
ッタ法により、下地層のNiO−Al膜42を3
0nmの膜厚に形成した。ここで、ECRスパッタ法を
用いたのは、DCスパッタ法やRFスパッタ法と比較し
て、スパッタ粒子の有するエネルギーを制御しやすいか
らである。エネルギーを制御することにより、下地層表
面の凹凸を所望の値に制御できる。
【0128】(2)下地層の特性測定 上記のように得られた下地層であるNiO−Al
膜42の表面をTEMにより観察した。得られた観察像
は実施例1と同様で、下地層は図2に示したような構造
であった。この観察像より、粒子径が10nmの正六角
形の結晶粒子の集合体であり、その粒子がハニカム状に
規則的に配列していることが分かった。結晶粒子間距離
は2nmであった。
【0129】次に、下地層であるNiO−Al
42をμ−EDX法により分析したところ、六角形の粒
子はニッケルの酸化物で、結晶質粒子であった。その結
晶粒子の周囲を取り囲むように結晶粒界部が形成されて
おり、結晶粒界部に存在しているのが酸化アルミニウム
で、非晶質であった。
【0130】また、下地層であるNiO−Al
42の断面をTEMにより観察した。それによると、形
成した下地層42の断面は、基板上から上方に成長した
柱状の組織であった。このことは、薄膜が成長しても結
晶粒子径は変化していないことを示している。このよう
な粒子径を保った柱状組織は下地層の膜厚が厚くなって
も同様であった。
【0131】また、下地層であるNiO−Al
42のTEMによる断面観察から、この膜の表面には凹
凸が存在していることが分かった。凸部は結晶質相であ
り、凹部は非晶質相であった。この凹凸について、AF
Mにより、ある山(凸部)に最も近い谷(凹部)との高
さの差を測定したところ、平均で10nmであった。こ
れは、ランダムに選択した500箇所の平均値である。
測定値に対して、統計処理を行ったところ、測定値の標
準偏差は電子顕微鏡の観察下限の0.5nm以下と著し
く小さかった。また、山と谷の基板と平行方向の距離は
5nmであった。この凹凸はハニカム構造に由来してお
り、凹凸が規則的で形状やその分布が良好であるため、
このような下地層付きの基板は、磁気ディスク用のテク
スチャ付き基板として用いることができる。凹凸の形状
は成膜温度やスパッタの速度、スパッタ時の雰囲気ガス
の圧力を制御することにより、所望の値が得られる。
【0132】また、上記のようなハニカム構造に由来す
る微小な凹凸のほかに、下地層であるNiO−Al
膜42にはより大きい周期の凹凸が現れていた。この
大きい周期の下地層の凹凸と基板表面の凹凸とを比較す
るため、次のような測定を行った。まず、用いたガラス
基板41の凹凸をAFMにより測定した。その結果、あ
る凸部に最も近い凸部までの基板と平行方向の距離を、
約500箇所について測定したところ、平均で50nm
であった。次に、ある凸部から最も近い凹部までの基板
と垂直方向の距離を約500個所について測定したとこ
ろ、平均60nmであった。この値は、一辺が300μ
mの正方形中をランダムに選んだ数箇所について調べた
結果をさらに平均した値である。この基板41上に下地
層42を形成した後の表面の凹凸は、同様の測定におい
て、基板と平行方向の距離が6μm、基板と垂直方向の
距離が10nm以下(AFMの測定下限以下)であっ
た。ここで、さらに凹凸が大きい(平行方向:30n
m、垂直方向:100nm)基板上に形成しても、表面
の凹凸は同じで基板と平行方向の距離が6μm、基板と
垂直方向の距離が10nm以下(AFMの測定下限以
下)であった。このように、ECRスパッタ法により下
地層42を形成することにより、基板表面の凹凸に関係
なく平坦な面が得られることが分かった。
【0133】また、下地層であるNiO−Al
42の磁気特性を測定した。飽和磁束密度:Bs=1.
8T、保磁力:Hc=0.1Oe(約7.9A/m)、
磁歪定数:λ=4×10−7、比透磁率:μ=5000
(5MHz)であり、良好な軟磁気特性を有していた。
また、この膜の磁化容易軸は、基板と平行な方向に存在
しており、この膜はいわゆる面内磁化膜である。この膜
の磁気異方性を求めたところ、実施例1より約3割大き
い、6×10erg/ml(0.6J/ml)であっ
た。
【0134】(3)格子定数制御層及び磁性層の形成 下地層であるNiO−Al膜42と磁性層との格
子定数の差が10%以上であったため、各層との差が1
0%以下になるように格子定数制御層としてCr90
10合金薄膜43を、下地層42上に設けた。Cr
90Ti10合金薄膜43は、DCスパッタ法により形
成した。ターゲットにはCr−Ti合金を、スパッタガ
スにはArをそれぞれ用いた。基板温度は300℃、ス
パッタガスのガス圧は3mTorr(約399mP
a)、投入DC電力密度は1kW/150mmφであっ
た。このような条件で、Cr90Ti10合金薄膜43
を膜厚75nmに形成した。次いで、磁性層としてCo
69Cr12Pt19膜44をDCスパッタ法により形
成した。スパッタガスにはArを、ターゲットにはCo
Cr12Pt19合金ターゲットをそれぞれ使用し
た。スパッタガスのガス圧は、3mTorr(約399
mPa)であり、投入DC電力は1kW/150mmφ
であった。成膜中は、基板を300℃に加熱した。この
ような条件で磁性層であるCo69Cr12Pt19
44を膜厚15nmに形成した。
【0135】(4)磁性層の特性測定 上記のように得られた磁性層であるCo69Cr12
19膜44の表面をTEMにより観察したところ、磁
性層の構造は、下地層であるNiO−Al 膜42
の構造を反映したハニカム構造を有していた。すなわ
ち、下地層42の結晶粒子に対応してNiが磁性粒子と
して析出し、その形状は正六角形であり、粒子径分布も
下地層42と同様であった。また、TEMによりこの積
層体の断面を観察した。その結果、下地層42上から格
子定数制御層43を介して磁性層44が結晶的なつなが
りを持って成長し、下地層42から連続する良好な柱状
組織であることが分かった。このように、磁性層44の
磁性粒子を下地層42の結晶粒子上からエピタキシャル
成長させることにより、磁性層44の磁性粒子の粒子径
を制御できる。比較のため、格子定数制御層を設けない
で磁性層を形成した場合には、粒子径や粒子径分布、断
面組織が下地層を反映していなかった。磁性層の組織
は、柱状組織は得られず、多結晶状態になっていた。こ
の磁性層は、磁気特性、特に、保磁力や異方性が大きく
劣化しており、10Gbits/inch (約1.5
5Gbits/cm)を超える超高密度な磁気記録に
用いることができなかった。
【0136】また、磁性層44の磁性粒子の境界部分で
ある非晶質領域は、結晶質の磁性粒子部分に成長した領
域とは異なる組織であり、磁性粒子部分のような柱状組
織は観察されなかった。このような非晶質領域は、柱状
組織を有する磁性粒子部分と異なる磁性を有しており、
磁気的にはセミハードな磁性を示した。これにより、磁
性粒子同士が均一な幅で分離され、磁性粒子間の磁気的
な結合を低減できる。このことと、粒子径のばらつきが
低減されたことにより、この磁性層は高密度記録に有効
であることが理解される。この他に、磁性層をECRス
パッタ法を用いて形成すると、磁性層の磁性粒子の粒子
径や規則性をより精密に制御することが可能である。
【0137】(5)保護層の形成 上記のように磁性層であるCo69Cr12Pt19
44を形成後、DCスパッタ法により、保護層として炭
素膜45を形成した。スパッタの条件は、投入DC電力
密度が1kW/150mmφ、スパッタガスのガス圧力
が5mTorr(約665mPa)であった。この条件
で炭素膜45を5nmの膜厚に形成し、図9に示す構造
の磁気ディスク50を得た。
【0138】次に、このようにして形成した磁気ディス
ク50の構造をX線回折法により解析した。その結果、
2θ=62.9°付近に回折ピークが観測され、このピ
ークは、下地層中の結晶粒子を構成するNiOの(10
4)に対応していることが分かった。また、2θ=73
°付近にもピークが観測され、このピークは磁性層のC
oの(11.0)に相当していることが分かった。この
ように、磁性層中のCoが配向するのは、下地層中の結
晶粒子上から磁性粒子がエピタキシャル成長したため
で、下地層の結晶配向を反映した結果である。また、こ
の下地層が存在しない場合は、Coの(11.0)面は
観測されず、Coの(1122)面が観測された。な
お、本明細書において、2は、アッパーバー付きの2
を意味する。この配向は、高密度磁気記録には適さな
い。このことから、下地層42の存在は磁性層44の配
向性制御に大きく寄与していることが分かった。
【0139】次に、磁性層であるCo69Cr12Pt
19膜44の表面のTEMによる観察を行った。その結
果、磁性層44の磁性粒子の平均粒子径は10nmであ
り、粒子径分布におけるσは0.7nm以下と著しく小
さかった。σの値は下地層であるNiO−Al
42における値と同じであり、磁性層44の磁性粒子径
や粒子径分布は、下地層42における値を反映している
ことが分かった。また、磁性層は、下地層42の構造を
反映して、六角形の磁性粒子が二次元に規則的に配列し
たハニカム構造であった。
【0140】次に、磁性層であるCo69Cr12Pt
19膜44の磁気特性を測定した。得られた磁気特性
は、保磁力が3.5kOe(約276.5A/m)、I
svが2.5×10−16emu、M−Hループにおけ
るヒステリシスの角型性の指標であるSが0.92、S
が0.94であり、良好な磁気特性を有していた。こ
のことは、磁性層の磁性粒子の粒子径が小さく、そのば
らつきが小さいこと、さらに、磁性粒子間の磁気的相互
作用が低減された結果である。また、著しく微小な結晶
粒子がほとんど存在しないので、耐熱揺らぎに優れた磁
気記録媒体であることが理解される。
【0141】(6)磁気ディスクの評価 上記のように形成した炭素膜45の表面に潤滑剤を塗布
して磁気ディスク50を完成させた。同様のプロセスに
より、複数枚の磁気ディスク50を作製し、磁気記録装
置に同軸上に組み込んだ。磁気記録装置の概略構成を図
10及び図11に示す。図10は磁気記録装置60の上
面の図であり、図11は図10の破線A−A’方向にお
ける磁気記録装置60の断面図である。記録用磁気ヘッ
ドとして、2.1Tの高飽和磁束密度を有する軟磁性層
を用いた薄膜磁気ヘッドを用い、巨大磁気抵抗効果を有
するデュアルスピンバルブ型磁気ヘッドにより再生し
た。記録用磁気ヘッド及び再生用磁気ヘッドは一体化さ
れており、この一体型磁気ヘッドは図10及び図11で
は磁気ヘッド53として示した。磁気ヘッド53のギャ
ップ長は0.12μmであった。この磁気ヘッド53は
磁気ヘッド用駆動系54により制御される。磁気ディス
ク50はスピンドル52により同軸回転される。磁気ヘ
ッド53の浮上量は15nmであった。本実施例におい
ては、記録時及び再生時には光ヘッドを用いていない。
これは、格子定数の整合を得るために設けた格子定数制
御層であるCr90Ti10膜43により、下地層42
と磁性層45が接しているために生ずる磁気的な結合で
ある交換結合が切断されているためである。もちろん、
光(実効的には熱)を照射して記録及び再生を行っても
よい。この磁気ディスク50に40Gbits/inc
(6.20Gbits/cm)に相当する信号
(700kFCI)を記録してディスクのS/Nを評価
したところ、33dBの再生出力が得られた。
【0142】また、MFMにより実施例1と同様に磁化
反転単位を測定したところ、磁性粒子2〜3個が一度に
磁化反転した。これは、従来の磁化反転単位5〜10個
に比較して十分に小さい。これと共に、磁化反転領域の
境界に存在するジグザグパターンも従来の磁気ディスク
より著しく小さかった。また、熱揺らぎや熱減磁も発生
しなかった。このディスクの欠陥レートを測定したとこ
ろ、信号処理を行わない場合の値で、1×10−5以下
であった。
【0143】また、磁気ディスク50の記録再生特性を
測定した。その結果、線記録密度700kFCIで記録
した場合に、100時間後の再生出力の減衰量は初期再
生出力の1.5%であった。比較のために、磁性層の下
に下地層を設けずに格子定数制御層のみを設けた磁気デ
ィスクに対して同様の測定をしたところ、700kFC
I記録における100時間後の再生出力の減衰量は、初
期再生出力の3.5%であった。このように、軟磁気特
性を有する下地層42は、記録した情報の再生出力が減
磁により低下するのを抑制する効果を有している。
【0144】ここで、磁気ヘッドと磁気ディスク表面と
の距離は15nmとしたところ、磁気ヘッドは安定に浮
上した。しかし、ECRスパッタ法により形成した下地
層を有していない磁気ディスクを同様の条件で駆動した
ところ、安定した再生信号が得られなかったり、ヘッド
クラッシュが発生し磁気ヘッドと磁性層双方が損傷した
りした。このように安定した再生信号が得られないの
は、磁気ディスク表面の凹凸が大きく、磁気記録装置が
磁気ヘッドと磁気ディスク表面との間の距離を一定に制
御できる範囲を超えているためである。
【0145】本実施例では、NiOとAlを2:
1に混合した焼結体をターゲットに用いたが、Al
上にNiOを貼り付けた複合体ターゲットを用いても
よい。また、NiOとAlを、ECR二源を用い
て同時にスパッタする方法により、下地層を形成しても
よい。
【0146】上記実施例1〜7で用いたガラス基板は一
例であり、いずれのサイズの基板を用いても、また、A
lやAl合金基板、さらにはアモルファスポリオレフィ
ンやポリカーボネイト等の樹脂の基板を用いてもよい。
また、ガラス、樹脂、AlやAl合金の基板上にNiP
をメッキ法により形成して用いてもよい。
【0147】上記実施例1〜7では、保護層形成時のス
パッタガスにArを使用したが、窒素を含む混合ガス、
あるいは窒素と水素を含む混合ガスを用いてもよい。混
合ガスを用いると、スパッタ粒子が微細化するために、
得られる炭素膜が緻密化し、保護性能を向上させること
ができる。また、成膜法としてECRスパッタ法を用い
ると、保護性能を向上できると同時に、磁性層等が成膜
時に受けるダメージをさらに小さくすることができる。
【0148】
【発明の効果】本発明によれば、下地層として一定方位
に配向した結晶粒子が非晶質物質の間にハニカム状に配
置した膜を用い、磁性層の磁性粒子をこの結晶粒子上か
らエピタキシャル成長させるため、磁性層の磁性粒子の
粒子径が微細化し、かつ粒子径が揃うため粒子径のばら
つきも小さくなる。したがって、ノイズの低減、熱揺ら
ぎや熱減磁の低減に効果がある。さらに、磁性層を下地
層の結晶配向性を反映させて成長させるため、磁性粒子
の結晶配向性を制御することができ、磁性層に高密度記
録に適した配向性を持たせることができる。さらにま
た、磁性層の磁性粒子間の距離を制御できるので、磁性
粒子間の磁気的相互作用を低減することができる。これ
により、ノイズの低減、形成される磁化反転単位の微細
化により高密度記録が可能になる。
【0149】また、軟磁気特性を有する下地層を用いる
ことにより、下地層はキーパー層としての機能を有し、
情報の記録磁化状態を安定化させる。したがって、膜厚
を薄くできるため磁性層中の反磁界が減少し、同時に記
録磁区を微小化しても熱揺らぎが低減できる。そのた
め、高密度記録が可能であり、反磁界や熱揺らぎによる
減磁は少なく、長期保存の後の再生信号出力の低下を抑
制できる。
【0150】上述したような効果により、本発明の磁気
記録媒体及び磁気記録装置は40Gbits/inch
(6.20Gbits/cm)を超える超高密度磁
気記録を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に係る磁気ディスクの断面構造を示す
模式図である。
【図2】実施例1における下地層表面のTEMによる観
察像を示す模式図である。
【図3】実施例1における下地層のX線回折プロファイ
ルである。
【図4】実施例1における下地層及び磁性層のX線回折
プロファイルである。
【図5】本発明の実施例1に従う磁気記録装置の一例の
概略構成図である。
【図6】図5のB−B’方向における断面の一部分を模
式的に表した図である。
【図7】実施例3に係る磁気ディスクの断面構造を示す
模式図である。
【図8】実施例4に係る磁気ディスクの断面構造を示す
模式図である。
【図9】実施例7に係る磁気ディスクの断面構造を示す
模式図である。
【図10】本発明の実施例7に従う磁気記録装置の一例
の概略構成図である。
【図11】図10のA−A’方向における断面図であ
る。
【符号の説明】
1、21、31、41 基板 2、42 下地層 3、24、35、44 磁性層 4、25、36、45 保護層 10、30、40、50 磁気ディスク 12 結晶粒子 14 結晶粒界部 22、32 第1下地層 23、33 第2下地層 34、43 格子定数制御層 51 回転駆動系 52 スピンドル 53、63 磁気ヘッド 54、64 磁気ヘッド用駆動系 60、70 磁気記録装置 65 光ヘッド 66 レーザー光 67 記録磁化領域
フロントページの続き (72)発明者 稲葉 信幸 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 若林 康一郎 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 坂本 晴美 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 Fターム(参考) 5D006 BB01 BB02 BB07 CA01 CA03 CA05 CA06 DA03 FA09 5D112 AA03 AA04 AA05 AA11 AA24 BB05 BD02 BD03 FA04 FB26 5E049 AA04 AA09 AC01 BA06 BA12 CB01

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気記録媒体であって、 基板と;上記基板上に形成された下地層と;上記下地層
    上に形成された磁性層と;を備え、 上記下地層は、酸化コバルト、酸化クロム、酸化鉄及び
    酸化ニッケルからなる群より選ばれた少なくとも1種類
    の酸化物から実質的に構成される六角形状の結晶粒子
    と、該結晶粒子を取り囲む酸化ケイ素、酸化アルミニウ
    ム、酸化チタン、酸化タンタル及び酸化亜鉛からなる群
    より選ばれた少なくとも1種類の酸化物を含む結晶粒界
    部とから構成され、該結晶粒子が基板面に平行な面内に
    おいてハニカム状に配列した構造を有し、かつ、軟磁性
    を有することを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 上記下地層の保磁力が0.05Oe〜1
    0Oeであり、かつ、比透磁率が500〜10000で
    あることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 上記結晶粒界部が非晶質であることを特
    徴とする請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 上記結晶粒子の粒子径分布が正規分布で
    あり、該粒子径分布における標準偏差が平均粒子径の8
    %以下であることを特徴とする請求項1〜3に記載の磁
    気記録媒体。
  5. 【請求項5】 上記結晶粒子が結晶配向していることを
    特徴とする請求項1〜4に記載の磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 上記下地層中の結晶粒子の結晶配向性及
    び格子定数が上記磁性層の組成に合わせて制御されてい
    ることを特徴とする請求項5に記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 上記下地層の格子定数と上記磁性層の格
    子定数との差が±10%以内であることを特徴とする請
    求項6に記載の磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】 さらに、上記磁性層と上記下地層との間
    に格子定数を調整するための層を備えることを特徴とす
    る請求項6に記載の磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】 上記結晶粒界部の幅が0.5nm〜2n
    mであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項
    に記載の磁気記録媒体。
  10. 【請求項10】 上記下地層中の一つの結晶粒子の周囲
    に配置している結晶粒子の数が平均5.8〜6.2であ
    ることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載
    の磁気記録媒体。
  11. 【請求項11】 上記下地層の膜厚が、2nm〜100
    nmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか
    一項に記載の磁気記録媒体。
  12. 【請求項12】 上記下地層が、共鳴吸収によりプラズ
    マを発生させ、発生したプラズマをターゲットに衝突さ
    せてターゲット粒子をスパッタさせ、上記基板と上記タ
    ーゲットの間にバイアス電圧を印加することにより、ス
    パッタしたターゲット粒子を上記基板上に誘導しつつ堆
    積させて形成されていることを特徴とする請求項1〜1
    1のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  13. 【請求項13】 上記共鳴吸収にマイクロ波を用いたこ
    とを特徴とする請求項12に記載の磁気記録媒体。
  14. 【請求項14】 上記バイアス電圧が、RF電源又はD
    C電源により印加されることを特徴とする請求項12又
    は13に記載の磁気記録媒体。
  15. 【請求項15】 上記共鳴吸収が、電子サイクロトロン
    共鳴であることを特徴とする請求項12〜14のいずれ
    か一項に記載の磁気記録媒体。
  16. 【請求項16】 上記磁性層がCr、Pt、Ta、N
    b、Ti及びSiからなる群より選ばれた少なくとも2
    種類の元素を含むCo合金であることを特徴とする請求
    項1〜15のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  17. 【請求項17】 上記磁性層が結晶質であり、上記下地
    層の表面上からエピタキシャル成長していることを特徴
    とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の磁気記録
    媒体。
  18. 【請求項18】 上記磁性層中において、Cr、Ta、
    Nb、Ti及びSiからなる群より選ばれた少なくとも
    1種類の元素が、磁性粒子の粒界近傍あるいは粒界に存
    在していることを特徴とする請求項1〜17のいずれか
    一項に記載の磁気記録媒体。
  19. 【請求項19】 上記磁性層が結晶質相と非晶質相とか
    ら構成され、該結晶質相がNd、Pr、Y、La、S
    m、Gd、Tb、Dy、Ho、Pt及びPdからなる群
    より選ばれた少なくとも1種類の元素を含むCo合金の
    結晶粒子であり、該非晶質相が酸化ケイ素、酸化亜鉛、
    酸化タンタル及び酸化アルミニウムからなる群より選ば
    れた少なくとも1種類の酸化物を含み、かつ、該結晶粒
    子を取囲むように存在しており、該磁性層の構造が上記
    下地層の構造を反映し、該結晶粒子の粒子径が上記下地
    層中の結晶粒子の粒子径にほぼ等しいことを特徴とする
    請求項1〜18のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  20. 【請求項20】 請求項1に記載の磁気記録媒体と;上
    記磁気記録媒体に情報を記録又は再生するための磁気ヘ
    ッドと;上記磁気記録媒体を上記磁気ヘッドに対して駆
    動するための駆動装置と;を含む磁気記録装置。
  21. 【請求項21】 さらに、情報を記録又は再生する際に
    磁気記録媒体に光照射するための光源を備えることを特
    徴とする請求項20に記載の磁気記録装置。
  22. 【請求項22】 上記磁気記録媒体が、複数の磁気ディ
    スクであり、上記駆動装置が複数の磁気ディスクを同軸
    上に支持して回転するための回転軸を備えることを特徴
    とする請求項20又は21に記載の磁気記録装置。
  23. 【請求項23】 磁気記録媒体の面記録密度が40Gb
    its/inchを超えることを特徴とする請求項2
    0〜22のいずれか一項に記載の磁気記録装置。
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