JP3749845B2 - 磁気記録媒体および磁気記録装置 - Google Patents

磁気記録媒体および磁気記録装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体および磁気記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のコンピュータの処理速度向上に伴って、情報・データの記憶・再生機能を担う磁気記憶装置(HDD)には、高速・高密度化が常に要求されている。しかし、高密度化には物理的な限界があると言われており、この要求を満たし続けて行けるかどうか問題視されている。
【0003】
HDD装置の場合、情報が記録される磁気記録媒体は、微細な磁性粒子の集合体を含む磁性層を有する。高密度記録を行うには、磁性層に記録される磁区を小さくする必要がある。小さな記録磁区を分別できるためには磁区の境界が滑らかであることが必要であり、そのためには磁性層に含まれる磁性粒子を微小化する必要がある。また、隣接する磁性粒子まで磁化反転が連鎖すると、磁区の境界の乱れとなるので、磁性粒子間に交換結合相互作用が働かないように、磁性粒子間は非磁性体によって磁気的に分断されている必要がある。また、ヘッド−媒体間の磁気的相互作用の観点から、高密度の記録を行うには磁性層の膜厚も小さくする必要がある。以上の要請から、磁性層における磁化反転ユニット(上の要求を満たしていくと磁性粒子とほぼ等しくなる)の体積をさらに小さくする必要がある。ところが、磁化反転ユニットを微小化すると、そのユニットが持つ磁気異方性エネルギー(磁気異方性エネルギー密度Ku×磁化反転ユニットの体積Va)が熱揺らぎエネルギーよりも小さくなり、もはや磁区を保持することができなくなる。これが熱揺らぎ現象であり、記録密度の物理的限界(熱揺らぎ限界と呼ばれる)の主因となっている。
【0004】
熱揺らぎによる磁化の反転を防ぐには、磁気異方性エネルギー密度Kuを大きくすることが考えられる。しかし、上記のようなHDD媒体の場合、記録時、すなわち高速で磁化反転動作を行うときの保磁力HcwはKuにほぼ比例するので、現状の記録ヘッドが発生しうる磁界では記録ができなくなってしまう。
【0005】
熱揺らぎによる磁化の反転を防ぐために磁化反転ユニットの体積Vaを大きくすることも考えられる。しかし、媒体面内での磁性粒子のサイズを大きくすることによりVaを大きくすると、高密度記録を達成できない。また、記録層の膜厚を厚くすることによりVaを大きくすると、ヘッド磁界が記録層の下部まで十分に到達せずに磁化反転が起こらなくなり、やはり高密度記録を達成できない。
【0006】
以上の問題を解決するために熱アシスト磁気記録というアイデアが提案されている。これは、記録時に記録層を加熱してKuを局所的に小さくすることにより磁気記録を行うものである。この方式では、媒体の使用環境下(通常は室温)において大きなKuを有する記録層に対しても、現状のヘッドで発生可能な記録磁界で磁化反転が可能になる。
【0007】
しかし、記録時には隣接トラックが多少なりとも加熱されるので、隣接トラックで熱揺らぎが加速されて記録磁区が消去される現象(クロスイレーズ)が起こり得る。また、記録直後にヘッド磁界がなくなった時点でも媒体がある程度加熱されていることから、やはり熱揺らぎが加速されて、いったん形成された磁区の消失が起こり得る。
【0008】
これらの問題を解決するには、記録温度近傍においてKuの温度に対する変化ができるだけ急峻な材料を用いる必要がある。しかし、現在開発が進んでいるCoCr系、CoPt系磁性薄膜のKuの温度変化は概ねリニアなので、上記の条件を満たすことができない。したがって、従来の磁気記録媒体ではトラック密度および線記録密度の向上はそれほど期待できない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱揺らぎ限界を超える高密度記録を実現できる磁気記録媒体および磁気記録装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る磁気記録媒体は、基板と、室温で反強磁性もしくは常磁性を示し温度T f で強磁性へ変化する材料、または室温近傍に補償点を有するフェリ磁性体を含み、局所加熱による記録温度における飽和磁化が室温における飽和磁化よりも大きい機能層と、室温における磁気異方性エネルギー密度KuRLが、前記機能層の室温における磁気異方性エネルギー密度KuFLよりも大きく、かつ5×106erg/cc以上である磁気記録層とを具備し、前記機能層と前記磁気記録層とが交換結合することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る磁気記録装置は、上記のような磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体を加熱する手段と、前記磁気記録媒体に磁界を印加する手段とを具備したことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてより詳細に説明する。最初に、本発明の各態様に共通する、磁気記録媒体および磁気記録装置の構成について説明する。
【0015】
本発明に係る磁気記録媒体の概略的な構造を説明する。本発明の各態様に係る磁気記録媒体は、非磁性基板と磁気記録層との間に、各種の機能層および必要に応じて中間層を設けた構造を有する。本発明に係る磁気記録媒体に用いられる機能層は温度によって磁気特性が変化する。なお、必要に応じて、磁気記録層などの性能を制御するための下地層を設けてもよい。また、必要に応じて、磁気記録層上にカーボン、SiO2などの保護層を設けてもよい。
【0016】
基板は通常円形(ディスク)で硬質の材料で形成されている。基板の材料としては、金属、ガラス、セラミックスなどを用いることができる。
【0017】
磁気記録層としては、例えば複数の磁性粒子と磁性粒子の間を埋める非磁性体とを有し、磁性粒子が非磁性体中に分散された構造を有するものが用いられる。
【0018】
記録層に用いられる磁性粒子の材料は、飽和磁化Isが大きくかつ磁気異方性が大きいものが適している。この観点から、磁性金属材料として、Co、FeおよびNiからなる群より選択される磁性元素と、Pt、Sm、Cr、Mn、BiおよびAlからなる群より選択される金属との合金を用いることが好ましい。結晶磁気異方性の大きいCo基合金、特にCoPt、SmCo、CoCrをベースとしたものや、FePt、CoPtなどの規則合金がより好ましい。具体的には、Co−Cr、Co−Pt、Co−Cr−Ta、Co−Cr−Pt、Co−Cr−Ta−Pt、Fe50Pt50、Fe50Pd50、Co3Pt1などが挙げられる。また、磁性材料として、Tb−Fe、Tb−Fe−Co、Tb−Co、Gd−Tb−Fe−Co、Gd−Dy−Fe−Co、Nd−Fe−Co、Nd−Tb−Fe−Coなどの希土類(RE)−遷移金属(TM)合金、磁性層と貴金属層との多層膜(Co/Pt、Co/Pdなど)、PtMnSbなどの半金属、Coフェライト、Baフェライトなどの磁性酸化物などを用いることもできる。
【0019】
さらに、上述した磁性材料の磁気磁性を向上させるために、例えばCr、Nb、V、Ta、Ti、W、Hf、V、In、Si、Bなど、またはこれらの元素と、酸素、窒素、炭素、水素の中から選ばれる少なくとも1種の元素との化合物を添加してもよい。
【0020】
磁気異方性に関しては、従来のHDDで用いられてきた面内磁気異方性でも、光磁気記録で用いられてきた垂直磁気異方性でも、両者が混合されたものでも構わない。
【0021】
磁性粒子を非磁性体で分断する方法は特に限定されない。例えば、磁性材料に非磁性元素を添加して成膜し、磁性粒子の粒間にCr,Ta,B,酸化物(SiO2など)、窒化物などの非磁性体を析出させる方法を用いてもよい。また、リソグラフィー技術を利用して非磁性体に微細な孔を形成し、孔に磁性粒子を埋め込む方法を用いてもよい。PS−PMMAなどのジブロックコポリマーを自己組織化させて一方のポリマーを除去し、他方のポリマーをマスクとして非磁性体に微細な孔を形成し、孔に磁性粒子を埋め込む方法を用いてもよい。また、粒子線照射によって加工する方法を用いてもよい。
【0022】
記録層の厚さは特に制限されないが、高密度記録を考慮すると100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、20nm以下がさらに好ましい。ただし、記録層の厚さを0.1nm以下にしようとすると膜を形成するのが困難になるので好ましくない。
【0023】
必要に応じて設けられる下地層は、磁性体でも非磁性体でもよい。下地層の厚さは特に限定されないが、500nmよりも厚いと製造コストが増加するので好ましくない。
【0024】
磁性下地層は、記録層における記録/再生を効率的に行えるように、記録層中の磁区や記録/再生ヘッドと交換相互作用・静磁気相互作用を介して磁気的に結合されることが好ましい。例えば、記録層として垂直磁化膜を用いる場合、下地層として軟磁性膜を用い、単磁極ヘッドで記録することにより、高密度記録が可能になる。また、記録層として面内磁化膜を用いる場合、記録層の上または下に軟磁性層を設け、再生時に軟磁性層を飽和させる強度の磁界を印加することによって、高密度の記録が可能となり、また熱揺らぎ耐性も向上する。
【0025】
非磁性下地層は、記録層の磁性体または非磁性体の結晶構造を制御する目的、または基板からの不純物の混入を防ぐ目的で設けられる。例えば、磁性体の所望の結晶配向の格子間隔に近い格子間隔を持つ下地層を用いれば、磁性体の結晶配向を制御することができる。また、適切な表面エネルギーを有するアモルファス下地層を用いることにより、記録層の磁性体または非磁性体の結晶性またはアモルファス性を制御することもできる。下地層の下にさらに別の機能を有する下地層を設けてもよい。この場合、2つの下地層で機能を分担できるので、所望の効果の制御が容易になる。たとえば、記録層の結晶粒を小さくする目的で、基板上に粒径の小さいシード層を設け、その上に記録層の結晶性を制御する下地層を設ける手法が知られている。基板からの不純物の混入を防ぐためには、下地層として格子間隔が小さいかまたは緻密な薄膜を用いることが好ましい。
【0026】
さらに、下地層は上述した機能を兼ね備えていてもよい。例えば、磁性下地層が記録層の磁性体の結晶性を制御する機能を有していてもよい。この場合、記録/再生特性上の効果と結晶性上の効果とが相乗されるので、単独の機能のみを有する下地層の場合よりも好ましい。また、下地層として、イオンプレーティング、雰囲気ガス中でのドープ、中性子線照射などによって生じた基板の表面改質層を用いてもよい。この場合、薄膜を堆積するプロセスを省略できるので、媒体作製上好ましい。
【0027】
本発明に係る、熱アシスト磁気記録を行う磁気記録装置は、磁気記録媒体を加熱する手段と、磁気記録媒体に磁界を印加する手段とを有する。磁気記録媒体を加熱する手段は、記録温度に達する部分が局所的であれば、ディスク全面を均一に加熱するものでもよいし、局所的に加熱するものでもよい。一般に、記録保持特性(アーカイブ特性)や使用電力を考慮すると、媒体の一部を局所的に加熱し、媒体の大部分を室温以下の温度に保つことが好ましい。高速かつ局所的な加熱が可能な加熱手段としては、レーザー、誘導加熱手段、媒体面との距離が可変に保持された、電熱線などで加熱されるプローブ、または電子線放出プローブなどが考えられる。また、より局所的な加熱を行うためには、レーザー光をレンズなどにより媒体面状で絞りこむ方式、レーザー光を微小開口やソリッドイマージョンレンズ(SIL)を用いて近接場光とする方式、プローブ先端に微細なアンテナを形成して誘導加熱を行う方式、加熱プローブの媒体対向部の形状をできる限り先鋭化するか媒体面との距離を短くする方法、電子線放出プローブの媒体対向部の形状をできる限り先鋭化する方法などが挙げられる。加熱手段は媒体の記録層側に設置してもいいし、その反対側に設置してもよい。
【0028】
磁気記録媒体に磁界を印加する手段は、通常のHDDで用いられているような浮上スライダーの端面に誘導コイルと磁極を含む磁気回路を有するものでもよいし、永久磁石を設置してもよいし、媒体に磁性層を追加して温度分布または光照射によって磁化分布を生じさせ瞬間的・局所的な磁界を発生させてもよいし、情報の記録を行う磁性層自身から発生する漏洩磁界を利用してもよい。永久磁石を設置する場合には、媒体との距離を可変にするか、磁石を微細化するなどの工夫によって、高速・高密度の磁界印加ができるようになる。
【0029】
以下、本発明の第1の態様に係る磁気記録媒体についてより詳細に説明する。図1に、第1の態様に係る磁気記録媒体と磁界印加手段と加熱手段を模式的に示す。図1の磁気記録媒体は、基板11上に、下地層12、機能層13、磁気記録層14、および保護層15を形成した構造を有する。この磁気記録媒体の基板11としてはガラスなどの透明基板が用いられており、基板11側に加熱手段としてのレーザー21が設けられている。レーザー21と基板11との間にレンズ(図示せず)を設けてもよい。この磁気記録媒体上に磁界印加手段としての記録ヘッド22が設置されている。図示されていない他の部分は概ね従来のHDD装置と同様である。媒体は例えば矢印で示すように右から左へと移動する。レーザー21による局所的な加熱と、記録ヘッド22による局所的な磁界印加により記録層15に微細な磁化反転部分を形成することができる。なお、レーザー21は記録ヘッド22と一体化して磁気記録媒体上に設置してもよい。
【0030】
第1の態様に係る磁気記録媒体に用いられる機能層13は、局所加熱による記録温度における飽和磁化が室温における飽和磁化よりも大きいという特性を有する。また、磁気記録層14および機能層13については、磁気記録層14の室温における磁気異方性エネルギー密度KuRLが機能層13の室温における磁気異方性エネルギー密度KuFLよりも大きく、かつKuRLが5×106erg/cc以上である。
【0031】
第1の態様に係る磁気記録媒体では、記録層に磁区が形成される温度(局所加熱による記録温度Tw)が、少なくとも機能層の飽和磁化が増加し始める温度より高くなるように、磁界印加および加熱を行うことにより、磁気記録する。
【0032】
上記の特性を示す機能層の材料として、例えば常磁性または反強磁性から強磁性へと変化する材料が挙げられる。この場合、常磁性または反強磁性から強磁性へと変化する温度Tfは、媒体の一部を局所加熱して記録するときの温度(以下、記録温度Twという)よりも低いことが望ましい。また、温度Tfは、50℃以上であることが好ましく、さらには100℃以上であることがより好ましい。反強磁性−強磁性転移を示す材料としては、代表的にはFe−Rhが挙げられる。また、Fe−RhにCo、Ni、Pd、Pt、Irなどの元素を添加した合金を用いることもできる。これらの他にも、Mn−Rh、Mn−Cr−Sb、Mn−V−Sb、Mn−Co−Sb、Mn−Cu−Sb、Mn−Zn−Sb、Mn−Ge−Sb、Mn−As−Sbなどを用いることができる。これらのうちから、記録温度に合わせて適切な材料を選択すればよい。
【0033】
また、上記の特性を示す機能層の材料として、室温近傍に補償点(Tcomp)を有するフェリ磁性体を含む材料が挙げられる。フェリ磁性体としては、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選択される少なくとも1種の希土類元素(RE)と、Fe、CoおよびNiからなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属元素(TM)とを含有する非晶質合金が挙げられる。具体的には、Tb−Fe、Tb−Fe−Co、Tb−Co、Gd−Tb−Fe−Co、Gd−Dy−Fe−Co、Nd−Fe−Co、Nd−Tb−Fe−Coなどのアモルファス希土類(RE)−遷移金属(TM)合金が挙げられる。また、CrPt3のような規則合金や、MFe24(M=Mn、Fe、Co、Ni、Co、Mg、Zn、Cd)、LiFe58などのフェライトおよびこれらを固溶させた多元系フェライトもフェリ磁性となることが知られている。第1の態様においては、室温付近に補償点を有するフェリ磁性体が用いられる。例えば、一般式RExTM100-x(REおよびTMは上記の元素から選択され、15≦x≦40)で表されるアモルファス希土類−遷移金属合金を用いることが望ましい。より好ましくは、20≦x≦30の組成を好適に用いることができる。本発明において効果がある補償組成とは、REおよびTMが上記組成に入っているか、あるいは、室温における保磁力が15kOe以上、あるいは飽和磁化が50emu/cc以下であることを言う。
【0034】
機能層と記録層とが強磁性交換結合するようにするには、スパッタリングなどによる一般的な媒体製造工程において、真空を破ることなくこれらの層を連続的に成膜する方法が用いられる。
【0035】
機能層と記録層との間には、厚さが5nm以下であれば、実質的な非磁性層が存在していてもよい。実質的な非磁性体とは、単独で存在する場合には非磁性であるが磁性体と積層すると界面または膜中に磁性が誘起されるような性質を示す材料(例えば、Cr、Mn、Pd、Ptなど)でもないことを意味する。実質的な非磁性体でない場合には、その材料により形成される間隙は、第1の態様による効果が得られる強磁性交換相互作用をもたらす範囲であれば、特に限定されない。また、機能層と記録層との間に別の磁性層を入れることによっても交換結合力を制御できる。したがって、機能層と記録層との間に複数の磁性層および非磁性層が存在していてもよい。機能層と記録層との間隙は膜の形態である必要はなく、欠陥、ボイド、部分的な酸化膜/粒子または表面改質部分であってもよい。
【0036】
上述したように、熱揺らぎ限界を打破するために磁性粒子の持つ磁気異方性エネルギーKuを大きくすると記録保磁力Hcwが増加する。しかし、磁気異方性エネルギーは温度とともに減少する特性があるので、記録時に媒体を加熱すれば、現行のヘッドでも記録できる程度にHcwを下げることができる。これが、熱アシスト磁気記録の基本的な考え方である。しかし、従来から検討されていた熱アシスト磁気記録では、記録直後の熱揺らぎ劣化およびクロスイレーズの問題があった。これは、記録直後は媒体が加熱された状態であるため熱揺らぎ劣化がより起こりやすいためである。すなわち、ヘッド磁界で反転磁区を形成できても、ヘッドが通り過ぎて磁界が印加されなくなった直後に、熱揺らぎにより磁区が崩壊すると記録ができない。また、加熱の際には必ず温度分布が生じるので、記録動作時には隣接するトラックも同時に加熱され、室温では熱揺らぎを起こさないようにKuおよびVaが調整されていても、昇温によって熱揺らぎ現象が加速されて劣化が起こる。
【0037】
本発明の第1の態様に係る磁気記録媒体の原理は、熱アシスト記録動作時に局所加熱により記録媒体の温度が記録温度Tw相当まで上昇した状態で一時的に媒体の保磁力(磁気異方性エネルギー)を減少させ、その後の熱揺らぎ劣化を防ぐために急峻に保磁力(磁気異方性エネルギー)を増加させるという点にある。図2に、本発明の第1の態様において想定している、理想的な保磁力(磁気異方性エネルギー)の温度変化を模式的に示す。図2に示すような保磁力(磁気異方性エネルギー)の温度依存性が実現できれば、従来の熱アシスト磁気記録において問題となっていた、記録直後の熱揺らぎの加速による磁区の消失および記録時の隣接トラックの加熱によるクロスイレーズを抑制し、熱揺らぎに強い高密度磁気記録を実現できる。
【0038】
次に、本発明の第1の態様に係る磁気記録媒体を用いることにより、図2に示した保磁力(磁気異方性エネルギー)の温度依存性が得られることを説明する。
【0039】
図3は図1の機能層13と記録層14の部分のみを取り出し、モーメント(スピン)Sの向きを模式的に矢印で示したものである。ここでは、理解を容易にするために、機能層13および記録層14が垂直磁化膜である場合を示す。強磁性交換結合相互作用とは、この図に示すように機能層13と記録層14のスピンの向きが同じであるときに最もエネルギーが低く安定となるような交換結合相互作用を意味する。
【0040】
図3のような交換結合二層膜の磁化反転(ヒステリシスループ)についてはすでに多数の研究がなされている。例えば、 Japanese Journal of Applied Physics, Vol.20, No.11, 1981, pp.2089-2095 においては、交換結合した二層の垂直磁化膜について磁化反転の解析がなされている。この文献には、交換結合エネルギー面密度σと各層の磁気特性に応じてヒステリシスループの形が変わることが開示されている。
【0041】
ここで、図4に示す2つの層(層1および層2)を積層した典型的な交換結合二層膜を考える。この図に示すように、各層の磁気異方性エネルギー密度、飽和磁化および膜厚を、それぞれ、層1についてKu1、Ms1、t1、層2についてKu2、Ms2、t2と表す。第1の態様に係る磁気記録媒体では、Ku1>Ku2となる。
【0042】
いま、各層のMsが同じであるとすれば、理想的な系では、保磁力Hc=2Ku/Msは、層1の方が層2よりも大きくなる。このとき、交換結合エネルギーは各層のスピンを揃えるようにエネルギーを与える作用を有する。その作用は、各層に交換磁界Hw=σ/2Mstが印加されたのと等価である。ここで、各層のHcがHwよりも大きければ、両層のスピンが対向してエネルギー的に安定となる状態(準安定状態)が生じる。
【0043】
このような媒体は、図5のようなヒステリシスループを示す。図5のようなヒステリシスループが得られる場合、上記で開示した交換結合二層膜の理論によれば、磁化の変化点HR1、HR2を以下の(1)式および(2)式に従って解析的に求めることができる。
R1=Hc1−Hw1=Hc1−σ/2Ms11 (1)
R2=Hc2+Hw2=Hc2+σ/2Ms22 (2)
すなわち、σを介して、保磁力の大きい層1は保磁力の小さい層2より保磁力を下げる作用を受け、逆に層2は層1より保磁力を増加させる作用を受ける。
【0044】
一方、Hc1<Hw1である場合、図5のHR2に相当する磁界で層2が磁化反転しようとするとき、交換力が大きいために層2と同時に層1も反転する。このような媒体は、図6のような通常の単層膜と同様なヒステリシスループを示す。この場合の、反転磁界HR3は下記(3)式で求められる。
R3=(Ms22Hc2+Ms11Hc1)/(Ms22+Ms11) (3)
この反転磁界HR3は、Hc1とHc2の中間の値を有する。
【0045】
したがって、いずれの場合でも保磁力は層1と層2の中間の値となる。つまり、高Kuの層と低Kuの層が強磁性交換結合した二層膜の保磁力は、高Kuの単独膜の保磁力よりも低くなる。
【0046】
本発明者らは、上記の現象を利用し、熱アシスト記録時(記録温度Tw)において、高い磁気異方性エネルギーを有し熱揺らぎ耐性の強い磁気記録媒体の保磁力(磁気異方性エネルギー)の温度変化を図2のように制御できることを見出した。
【0047】
まず、機能層として、反強磁性から強磁性に変化する材料を用いた場合について説明する。図7に、この材料の飽和磁化の温度依存性の一例を示す。この材料は反強磁性から強磁性に変化する温度Tfで飽和磁化が急激に上昇する特性を有する。上述したように、高Ku層と低Ku層とが強磁性的に交換結合すると、高Ku層の保磁力が低Ku層につられて小さくなる。高Ku層の保磁力の減少の程度は、交換結合エネルギー面密度σ、記録層および機能層の磁気異方性エネルギー密度Ku1、Ku2、飽和磁化Ms1、Ms2、膜厚t1、t2、キュリー温度Tc1、Tc2により調整可能である。また、記録動作時以外では、機能層は反強磁性を示し、記録層はKuが回復した状態となっている。この状態では、記録層のKuは機能層に比べて大きいため、機能層が冷却過程で記録層の磁化の向きに影響された磁化配列となり、機能層の磁化配列の影響で記録層の磁化が反転することはない。反強磁性材料と強磁性材料との交換結合については、例えばGMRヘッドで用いられているような軟磁性材料(例えばNiFe)と反強磁性材料(例えばPtMn)に関して知られているように、軟磁性材料の保磁力が増大する、MHループのシフトなどが起こる。
【0048】
第1の態様においては、記録層に磁気異方性エネルギーの大きな材料を用いるため、記録層への影響は軟磁性材料に比べて小さく、記録層の磁化が反転しないと予想される。保磁力が増大する場合は、反転磁界が大きくなったことと見なせば、熱揺らぎの観点からは望ましい変化であり、交換結合により磁化反転ユニットが反強磁性材料の膜厚分だけ増加するため、かえって熱揺らぎ耐性が向上する。
【0049】
ここで、図8に示す記録層の飽和磁化Ms1の温度変化、図9に示す記録層の磁気異方性エネルギーKu1の温度変化、および図10に示す機能層の磁気異方性エネルギーKu2の温度変化を仮定する。飽和磁化は温度に対して0.34乗、すなわち、M(T)=M0[(Tc−T)/(Tc−300)]0.34で変化するとした。M0、Tcは室温における飽和磁化、キュリー温度を表す。また、磁気異方性エネルギーはキュリー温度に向かって直線的に減少すると仮定した。図11に、これらの仮定の下で、保磁力の温度変化を計算した一例を示す。ここで、記録層の室温における飽和磁化を500emu/cc、機能層の転移温度における飽和磁化を470emu/cc、記録層および機能層の磁気異方性エネルギーをそれぞれ1×107erg/cc、1×106erg/ccとした。また、キュリー温度Tc1、Tc2を共に750K、機能層が反強磁性から強磁性に転移する温度を375Kとした。図11において、実線は記録層単層の保磁力(=2×Ku1/Ms1)の温度変化、破線は機能層単層の保磁力(=2×Ku2/Ms2)の温度変化である。それ以外のプロットは記録層と機能層とが積層されている場合の記録層または機能層の保磁力を示す。白抜きのプロットは記録層の保磁力、黒塗りのプロットは記録層の保磁力であり、丸プロット、四角プロット、菱形プロットはそれぞれ交換結合エネルギー面密度σが1、5、10erg/cm2の場合を示している。ここで、交換結合エネルギー密度σは温度に対して一定であるとした。
【0050】
図11からわかるように、記録層単層の保磁力は温度上昇とともに連続的に減少する。これに対し、記録層と機能層とを積層した構造では、機能層が強磁性へと転移する温度において両層の間に強磁性交換結合が作用し、記録層の保磁力が不連続な減少を示す。図11の場合、減少の程度は交換結合エネルギー密度が大きいほど大きい。以上のように、室温で反強磁性または常磁性を示し温度Tfで強磁性へ変化する機能層と、磁気異方性エネルギー密度の大きい記録層とを積層することにより、図2に類似した保磁力の温度変化を示す特性を実現できることを示すことができた。
【0051】
次に、機能層として、室温近傍に補償点を有するフェリ磁性体を用いた場合について説明する。図12に、この材料の飽和磁化の温度依存性の一例を示す。飽和磁化は室温から補償点(Tcomp)まで温度上昇とともに徐々に減少し、補償点で磁化が消失する。その後、飽和磁化は温度上昇とともに再び増加し、ある温度でピークを経た後、減少し、キュリー点で磁化が失われる。室温近傍において磁化が非常に小さいときには、機能層の保磁力は非常に大きい。ところが、機能層の磁化が温度とともに増加するとその保磁力は急激に小さくなる。したがって、記録層と機能層とが強磁性交換結合していると、機能層の保磁力の急激な減少につられて、記録層の保磁力も急激に減少することが期待できる。高Ku層の保磁力の減少度合は、交換結合エネルギー面密度σ、記録層および機能層の磁気異方性エネルギー密度Ku1、Ku2、飽和磁化Ms1、Ms2、膜厚t1、t2、キュリー温度Tc1、Tc2により調整可能である。また、記録動作時以外ではKuの差から独立に磁化反転するために、記録層の磁化が機能層の影響を受けて反転することはないと予想できる。
【0052】
ここで、図8に示す記録層の飽和磁化Ms1の温度変化、図9に示す記録層の磁気異方性エネルギーKu1の温度変化、および図12に示す記録層の飽和磁化Ms2の温度変化、図13に示す機能層の磁気異方性エネルギーKu2の温度変化を仮定する。図14に、これらの仮定の下で、保磁力の温度変化を計算した一例を示す。ここで、記録層の室温における飽和磁化、磁気異方性エネルギー、それらの温度変化およびキュリー温度は図11の計算を行ったときと同様とした。機能層の室温における保磁力は、補償組成であるので理想的に0emu/ccとし、高温側では500Kで飽和磁化が最大値200emu/ccとなり、キュリー温度700Kに向かって図12のように減少していくとした。また、機能層の室温における磁気異方性エネルギーは1×106erg/ccとし、その温度変化はキュリー温度に向かって直線的に減少するとした。図14において、実線は記録層単層の保磁力(=2×Ku1/Ms1)の温度変化、破線は機能層単層の保磁力(=2×Ku2/Ms2)の温度変化である。それ以外のプロットは記録層と機能層とが積層されている場合の記録層または機能層の保磁力を示す。白抜きのプロットは記録層の保磁力、黒塗りのプロットは記録層の保磁力であり、丸プロット、四角プロット、菱形プロットはそれぞれ交換結合エネルギー面密度σが1、3、5erg/cm2の場合を示している。ここで、交換結合エネルギー密度σは温度に対して一定であるとした。
【0053】
図14からわかるように、機能層の補償点から温度が上昇するにつれて保磁力が急激に減少する。記録層と機能層との間には強磁性交換結合が作用しているので、機能層の保磁力の変化に引きずられて、機能層の保磁力は不連続な減少を示す。また、σが大きい場合には、記録層の保磁力は、機能層の保磁力の減少と同様な変化を示すことがわかる。以上のように、室温近傍に補償点を有するフェリ磁性体を含む機能層と、磁気異方性エネルギー密度の大きい記録層とを積層することにより、図2に類似した保磁力の温度変化を示す特性を実現できることを示すことができた。
【0054】
上述した計算結果は、記録層と機能層のモーメントを独立に少しずつ回転させ、エネルギーが最も安定になる条件を探す、いわゆる Energy Minimum の手法により求めた。また、シミュレーションにおいて反磁界は反磁界係数を0.3として計算した。反磁界係数をNとすると、反磁界はN×4πMsで表される。面内媒体の場合、N=0である。垂直媒体の場合、連続磁性膜であればN=1であるが、実際的な多粒子媒体の場合にはNの値を決定するのは困難である。しかし、いずれにしても反磁界はKu(Hc)を低減する方向に作用するので、反磁界を含めてKu(Hc)を考慮すれば、上記の議論や図11、図14のシミュレーション結果がそのまま使える。また、一般的に媒体のKuを評価する場合、Kuは媒体固有の反磁界を含んだ形で求まる。このため、上記のシミュレーションにおけるKu(Hc)として、純粋なKu(Hc)ではなく現実的に求められる実効的なKu(Hc)を用いれば同じ効果が得られる。
【0055】
本発明の第1の態様に係る磁気記録媒体では、磁気異方性エネルギー密度KuRLが5×106erg/cc以上である記録層を用い、KuRLより小さい磁気異方性エネルギー密度KuFLを有する機能層と強磁性交換結合させる。上記のような高い磁気異方性エネルギー密度KuRLを有する記録層は熱揺らぎ耐性が十分にあるが、記録層単独の場合には現状の磁気ヘッドでは記録が困難である。しかし、記録層と機能層を強磁性交換結合させた二層膜とすることにより、全体の保磁力を低下させることができ、現行の磁気ヘッドでも記録できる磁気記録媒体を得ることができる。記録層の磁気異方性エネルギー密度が5×106erg/cc未満の場合には、現行の磁気ヘッドによる記録が可能なので、本発明を適用する必要がない。また、機能層のKuFLが記録層のKuRLよりも大きいと全体の保磁力が低下しないので、現行の磁気ヘッドによる記録はできない。
【0056】
KuFLとKuRLの差は特に限定されない。両者の差が小さいと、全体のHc低減効果は小さいが、機能層の厚さを薄くしても大きなKuVを得ることができる。一方、両者の差が大きいと、Hc低減効果は大きいが、機能層の厚さを厚くしないと同時反転の条件を得るのが困難になる。したがって、両者の差は媒体を用いるシステムに応じて決定される。一般的な使用においては、KuRL/KuFLの値は3以上であることが好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。
【0057】
記録層は微細な磁性粒子を非磁性体で分断した構造を有し、磁性粒子どうしが互いに交換結合を及ぼさないようにして高密度記録を可能にしている。一方、機能層の形態は特に限定されない。機能層が記録層と同じモフォロジーの多粒子構造を有する場合には、機能層を記録層の一部として用いて記録することもでき、大きな出力が得られる利点がある。また、下地層、機能層および記録層を成膜する際に、記録層の結晶性および微細構造の制御が容易になるという利点がある。
【0058】
機能層が多粒子構造を有するが磁性粒子の大きさが記録層より小さい場合、機能層が多粒子構造を有するが磁性粒子間の間隙が交換結合を完全に遮断するほど大きくない場合、または機能層が面内で磁気的に連続した磁性薄膜となっている場合には、機能層に磁壁が形成されるか、機能層と記録層との界面に磁気的な不連続が生じるか、または機能層と記録層との界面に磁壁が生じる。この場合、磁気的安定性(熱揺らぎ耐性)が減少する。ただし、このときの熱揺らぎ耐性の減少度合は機能層のKuに依存する。記録層のKuは機能層のKuに対して数倍〜10倍程度であるので、磁気記録媒体全体では機能層のKuの影響は小さい。逆に、機能層と記録層との構造的な連続性により、記録層の活性化体積Vを増加させる効果が大きくなる利点が得られることもある。したがって、機能層の微細構造は、その媒体を用いるシステムの要求に依存して決定される。
【0059】
第1の態様に係る磁気記録媒体において、機能層および記録層が垂直磁化膜どうしである場合、これらを交換結合相互作用が生じるように積層すると、異方性の軸が揃っているので交換結合エネルギーを大きくすることができる。交換結合エネルギーが大きいほど保磁力低減効果が大きいので、記録層としてよりKuの高い材料を用いることができる。なお、記録層および機能層ともに面内にヒステリシスが出ない完全な垂直磁化膜である必要はない。もちろん、完全な垂直磁化膜が好ましいが、実質的には残留磁化が垂直成分にもあるような条件であれば、交換結合エネルギーを大きくする効果が得られる。
【0060】
第1の態様に係る磁気記録媒体においては、記録層と機能層が交互に積層された多層膜を用いてもよい。特に、機能層/記録層/機能層の積層構造を含む領域では、二層膜の場合と比較して、記録層に作用する交換磁界が2倍になる。これは交換結合エネルギーが2倍に増加したのと等価であり、高Ku材料のHcを低減する効果を高めることができる。なお、このような領域は、磁気記録媒体中に複数存在していてもよい。
【0061】
第1の態様に係る磁気記録媒体では、記録層が磁性人工格子からなっていてもよい。磁性人工格子は、Coなどの強磁性薄膜が非磁性層(PdやPt)を介して数回〜数十回積層されたものであり、107erg/cc以上の磁気異方性エネルギーが得られ、かつ異方性の軸が膜面に垂直であることが知られている。この材料を記録層として用いることにより、上述した効果を高めることができる。107erg/cc以上の磁気異方性エネルギーが得られる条件は、非磁性層がPt、Pdまたはこれらの元素を主成分とする合金であり、かつその厚さが2nm以下の場合である。
【0062】
第1の態様に係る磁気記録媒体では、高Kuの記録層としてFe−Pt、Fe−Pd、Co−Pt、Co−Pdなどの規則相合金を用いてもよい。これらの規則相合金では、磁性金属と貴金属との組成比が概ね1:1である場合に最も大きなKuが得られるが、1:3〜3:1の範囲でも高Kuが得られる。これらの規則相は、スパッタリングにより成膜したまま(as-deposited)では得られず、アニールすることにより形成される。一般に、このときのアニール温度は500〜600℃に設定されるが、適切な添加元素を用いることによりアニール温度を低減できることがわかった。アニール温度の低減に最も効果的な添加元素がCuであり、AgやAlなどの添加元素ではアニール温度の低減効果は得られない。規則相合金へのCuの添加率は50at%以下とすることが好ましい。
【0063】
次に、本発明の第2の態様に係る磁気記録媒体についてより詳細に説明する。図15に、第2の態様に係る磁気記録媒体と磁界印加手段と加熱手段を模式的に示す。図15の磁気記録媒体は、基板11上に、下地層12、機能層13、中間層16、磁気記録層14、および保護層15を形成した構造を有する。図1と同様に、磁気記録媒体の基板11としてはガラスなどの透明基板が用いられており、基板11側に加熱手段としてのレーザー21が設けられ、磁気記録媒体上に磁界印加手段としての記録ヘッド22が設置されている。
【0064】
第2の態様に係る磁気記録媒体に用いられる機能層13は反強磁性、フェリ磁性または強磁性を示す材料を含み、中間層16は半導体または絶縁体を含む。室温において、機能層13と磁気記録層14とは中間層16を介して交換結合相互作用を及ぼすように積層されている。また、記録層14のキュリー温度TcRと機能層13のキュリー温度TcFとが、TcR>TcFの関係を満たすことが好ましい。
【0065】
第2の態様において、反強磁性を示す機能層としては、ネール温度が室温よりも高い反強磁性体の薄膜を用いることができる。具体的には、Mn−Ni、Mn−Pd、Mn−Pt、Cr−Pd、Cu−Mn、Au−Mn、Au−Cr、Cr−Mn、Cr−Re、Cr−Ru、Fe−Mn、Co−Mn、Fe−Ni−Mn、Co−Mn−Fe、Ir−Mnなどが挙げられる。また、規則合金、具体的には、AuMn、ZnMn、FeRh、FeRhIr、Au2Mn、Au5Mn12、Au4Cr、NiMn、PdMn、PtMn、PtCr、PtMn3、RhMn3などを用いることができる。これらのほかにも、Mn3Pt−N、CrMnPt、PdPtMn、NiO、CoOなどを用いることもできる。
【0066】
第2の態様において、フェリ磁性を示す機能層としては、フェリ磁性体の薄膜を用いることができる。具体的には、Tb−Fe、Tb−Fe−Co、Tb−Co、Gd−Tb−Fe−Co、Gd−Dy−Fe−Co、Nd−Fe−Co、Nd−Tb−Fe−Coなどのアモルファス希土類(RE)−遷移金属(TM)合金薄膜や、CrPt3のような規則合金が挙げられる。
【0067】
また、第2の態様における機能層として反強磁性またはフェリ磁性を示す多層膜を用いることもできる。例えば、磁性層(Co、Ni、Feまたはこれらの合金)と非磁性層(例えば、Ru、Re、Rh、Ir、Tc、Au、Ag、Cu、Mn、Si、Crもしくはこれらの合金、またはこれらの酸化物)との多層膜であって、非磁性層の厚さが5nmより薄く、好ましくは1nmより薄いものが挙げられる。このような多層膜は、磁性体間に反強磁性方向に交換結合相互作用が働き、全体として反強磁性体として振舞うことが知られている。また、このような多層膜は、各磁性層の厚さやモーメントが異なる場合には、フェリ磁性体として振舞うことが知られている。
【0068】
第2の態様において、強磁性を示す機能層としては、記録層に関連して説明したように、飽和磁化Isが大きくかつ磁気異方性が大きいものが適している。すなわち、Co、FeおよびNiからなる群より選択される磁性元素と、Pt、Sm、Cr、Mn、BiおよびAlからなる群より選択される金属との合金を用いることが好ましい。結晶磁気異方性の大きいCo基合金、特にCoPt、SmCo、CoCrをベースとしたものや、FePt、CoPtなどの規則合金がより好ましい。具体的には、Co−Cr、Co−Pt、Co−Cr−Ta、Co−Cr−Pt、Co−Cr−Ta−Pt、Fe50Pt50、Fe50Pd50、Co3Pt1などが挙げられる。また、Tb−Fe、Tb−Fe−Co、Tb−Co、Gd−Tb−Fe−Co、Gd−Dy−Fe−Co、Nd−Fe−Co、Nd−Tb−Fe−Coなどの希土類(RE)−遷移金属(TM)合金、磁性層と貴金属層との多層膜(Co/Pt、Co/Pdなど)、PtMnSbなどの半金属、Coフェライト、Baフェライトなどの磁性酸化物などを用いることもできる。さらに、上述した磁性材料の磁気磁性を向上させるために、例えばCr、Nb、V、Ta、Ti、W、Hf、V、In、Si、Bなど、またはこれらの元素と、酸素、窒素、炭素、水素の中から選ばれる少なくとも1種の元素との化合物を添加してもよい。
【0069】
第2の態様において、中間層としては半導体または絶縁体が用いられ、バンド構造を考えたときに価電子帯と伝導帯との間にエネルギーギャップが存在すれば特に限定されない。中間層の具体的な材料としては、a−Ge、ZnSe、NiOなどが挙げられる。これらの材料を含む中間層は、室温から記録温度Tw近傍までの温度範囲で、機能層と記録層との交換結合エネルギー面密度を室温での値に保つ作用を示す。記録層と機能層の間の磁気的な交換結合は自由電子を介して結合していると考えられている。中間層に金属を用いた場合、温度が上昇していくと、フェルミエネルギー付近での電子が徐々に減少していくために交換結合エネルギー面密度は温度上昇に対して減少する。しかし、エネルギーギャップを持つ半導体や絶縁体の場合、温度上昇とともに伝導帯に励起する電子が増大し、交換エネルギー面密度が温度に対して一定値に保持、あるいは増大することが考えられる。交換エネルギー面密度が温度に対して一定に保たれれば、記録温度付近まで大きな交換結合エネルギーを維持することができる。記録温度は機能層のTc近傍にあるため、Tc付近で機能層の磁化が消失したときに保磁力の急激な減少を示す作用があると考えられる。
【0070】
また、中間層は磁性体でも非磁性体でもよい。磁性半導体であれば、機能層/中間層/記録層の積層構造で直接的な磁気相互作用が加わる可能性があり、中間層を介した機能層と記録層との交換結合がより強くなるため好ましい。中間層の厚さは特に制限されないが、交換結合力が距離に対して減少することから、10nmを超えると好ましくない。交換結合は強磁性的、反強磁性的、90°結合またはこれらの混合のいずれでもよい。
【0071】
記録層のキュリー温度TcRは、磁化Mまたは保磁力Hcの温度依存性によって調べることができる。ただし、VSMなどによって磁気特性を測定する場合には測定に時間がかかり、短くても10分程度は加熱状態を保つ必要がある。これに加えて昇温のための時間を短くすることもできないので、測定の際には概ね1時間程度は加熱状態に保持されることになる。薄膜磁性体の場合、長時間にわたる高温保持によって、不可逆な微細構造変化が起こり、磁気特性を正確に評価できない可能性がある。光磁気記録媒体として用いられているアモルファス希土類−遷移金属合金の場合には、このような変化は比較的起こりにくい。しかし、HDD媒体として用いられているCoCrPt系磁性合金では、微細構造の変化が200℃程度で起こる場合もある。ただし、この場合でも、室温またはそれ以下の温度から構造変化が起こる温度までの磁気特性の変化を高温側へ外挿すれば、TcRの推定は可能である。第2の態様に係る磁気記録媒体におけるTcRは、実質的にKuが小さくなっている温度であればよく、その温度でたとえばMやHcの値が室温の値の1/5程度以下、好ましくは1/20程度以下であればよい。
【0072】
第2の態様において、機能層がフェリ磁性または強磁性を示す場合には、機能層からの磁化をVSMにより検出できる。機能層のキュリー温度TcFよりも低い温度では、ヒステリシスループは、見かけ上単層磁性層の磁気特性のように一段のループを示すか、または多段のループを示す。多段のループを示した場合には、各段でマイナーループを調べると、マイナーループは印加磁界H=0の点からH軸の方向へシフトする。このシフトは機能層と記録層との交換結合によるものであり、シフト量は交換磁界Hexである。
【0073】
第2の態様において、機能層が反強磁性を示す場合には、多段のヒステリシスループは現れない。機能層が比較的大きな磁気異方性を有する場合には、TcFより低い温度で上記の多段の場合と同様なヒステリシスループのH軸方向へのシフトが起こり、Hexを見積もることができる。Hexを温度に対してプロットすれば、Hex=0になる温度の実測または外挿により、機能層のキュリー温度TcFを見積もることができる。これは本来的にはブロッキング温度と呼ばれ、反強磁性体のネール点と区別されるが、第2の態様においてはこれをネール点としても何ら影響はない。
【0074】
図16に第2の態様に係る磁気記録媒体の記録動作を示す。この図は、中間層16を挟む機能層13と記録層15における磁化の反転を模式的に示したものである。31は磁性粒子であり、その中の矢印は磁化の向きを表わし、矢印の大きさは磁化の大きさを模式的に表わす。32は磁性粒子間の非磁性体である。この図では、機能層13も記録層と同様に、磁性粒子とそれを分断する非磁性体を含む構造になっているが、説明の便宜上このように図示しているだけである。したがって、機能層13は、他の形態、例えば連続膜や(3次元)グラニュラー構造などの形態をとってもかまわない。また、簡単のために垂直磁気記録媒体の場合を例にとって説明するが、ここでの説明は面内媒体または垂直媒体と面内媒体との混合の場合にもそのまま適用できる。
【0075】
初期状態として記録層14に含まれるすべての磁性粒子31の磁化が下向きに設定されている。一方、機能層13の磁化は記録層14の磁化の向きと逆向きにしている。これは、機能層13のスピンのうち、中間層16を介して記録層14のスピンと反強磁性結合する部分を示したものである。例えば、記録層と機能層が強磁性結合しており、機能層がフェリ磁性を示す場合、矢印は機能層のマイナーなスピンの向き(例えば機能層がアモルファス希土類−遷移金属合金の場合には希土類原子のスピンの向き)である。また、例えば記録層と機能層が反強磁性結合しており、機能層が反強磁性を示す場合で膜厚方向に各原子レイヤー毎にスピンの向きが逆転する構造を持つ物質の場合には、記録層側に最も近い原子レイヤーのスピンの向きである。
【0076】
この媒体は図の右から左へ移動しており、この媒体に熱アシスト磁気記録を行って、矢印33で示した領域に磁化転移を形成する。図16の(a)→(e)の順に時間が進行し、記録が行われる。
【0077】
(a)は媒体温度Tが室温(Ta)である状態を示す。(b)は加熱部分の媒体温度Tが記録温度Twよりわずかに低い状態である。記録層14および機能層13のいずれでもKuの低下により磁化が減少する。(c)は媒体温度Tが記録温度Twに達し、かつ記録ヘッドによって上向きの磁界が印加された状態である記録層14の記録保磁力(Kuに概ね比例)が低下し、その結果、記録層14の磁化が上向きに反転する。この時点で矢印33の領域に磁化転移が形成される。もし機能層13がなければ、レーザー光が通り過ぎた後の徐冷過程で熱揺らぎが起こり、一度反転した磁化が再反転するか磁化転移が揺らぐことになる。ところが、(d)に示すように、記録直後で加熱部分の媒体温度Tが低くなった時点で記録層14と機能層13との交換結合相互作用が復活する。このとき、記録層14からの交換磁界により、機能層13の磁化は下向きになる。この時点で磁化反転ユニットの体積Vが記録層と機能層との合計になるので、熱揺らぎ安定指数KuV/kBTが急激に増加し、熱揺らぎ現象を低く抑えることができる。さらに冷却が進んでも、磁化転移位置はほとんど動かない。(e)は記録後の状態である。以上のように、記録層14における磁性粒子の大きさ程度の分解能で、磁化転移が形成される。
【0078】
図17に上記の記録過程における、磁気異方性エネルギー密度Kuと磁化反転ユニットの体積Vの温度に対する変化を模式的に示す。この図において、KuRは記録層の磁気異方性エネルギー密度、KuFは機能層の磁気異方性エネルギー密度、KuV|totalは媒体全体の見かけ上のKuVの大きさである。この図に示されるように、TcF前後でのVの不連続かつ急激な変化のために、KuV|totalも急激な変化を示す。
【0079】
以上の作用により、熱アシスト磁気記録における課題であったクロスイレーズと記録直後の磁区消滅の問題を解決できる。すなわち、記録トラックに隣接するトラックにおいて、例えば図17にTnextで示した程度の温度上昇があっても、KuV|totalは十分に大きいので熱揺らぎによる記録の劣化は起こらない。また、記録直後にKuV|totalが急増するため、記録後の熱揺らぎ劣化も抑えられる。
【0080】
本発明者らは、機能層/中間層/記録層の積層構造を有する媒体に対して種々の条件で記録実験を行った結果、中間層としてアモルファス半導体または絶縁体を用いた場合に上記の作用および効果が得られることを確認した。
【0081】
次に、本発明の第3の態様に係る磁気記録媒体についてより詳細に説明する。第3の態様に係る磁気記録媒体は、図15と同様に、基板11上に、下地層12、機能層13、中間層16、磁気記録層14、および保護層15を形成した構造を有する。機能層13は局所加熱による記録温度における飽和磁化が室温における飽和磁化よりも大きいという特性を有する。具体的な機能層13の材料としては、室温で反強磁性または常磁性を示し温度Tfで強磁性へ変化するFe−Rh合金や、室温近傍に補償点を有するフェリ磁性体などが用いられる。磁気記録層14および機能層13については、磁気記録層14の室温における磁気異方性エネルギー密度KuRLが機能層13の室温における磁気異方性エネルギー密度KuFLよりも大きく、かつKuRLが5×106erg/cc以上である。これらの機能層13および磁気記録層14の特性は、第1の態様に係る磁気記録媒体の場合と同様である。また、機能層13と磁気記録層14との間に、第2の態様に係る磁気記録媒体と同様に、半導体または絶縁体を含む中間層16が設けられる。
【0082】
ここで、例えば既述の図11に示したような保磁力の温度変化は、機能層13と記録層14との交換結合相互作用が温度に対して一定であることを前提として計算されたものである。一方、機能層13と記録層14との交換結合相互作用が温度に対して直線的に減少する場合、温度に対して一定であるとした場合よりも急峻化の効果が緩やかになる可能性がある。
【0083】
実際に、機能層13と記録層14との間の交換結合エネルギー密度σの変化がリニア(linear)または一定(constant)であると仮定して、保磁力の温度変化を計算した例を図18および図19に示す。ただし、交換結合エネルギー面密度の温度変化以外は各パラメーターの値、温度変化は図11を計算したときと同様であるとした。また、リニアに減少する場合は、記録層と機能層の低い方のキュリー温度に向かってリニアに減少するとした。図18は、交換結合エネルギー面密度σが1erg/cm2である場合の保磁力の温度変化を示す。図19は、交換結合エネルギー面密度σが5erg/cm2である場合の保磁力の温度変化を示す。これらの図から、機能層13と磁気記録層14との間に半導体または絶縁体を含む中間層16を設けることにより、磁気記録媒体の保磁力の温度変化がより急峻になる可能性が高いことがわかる。室温から記録温度Tw近傍までの温度範囲で、機能層13と記録層14との交換結合相互作用を一定値(室温での値)に保つには、機能層13と磁気記録層14との間に半導体または絶縁体を含む中間層16を設ければよい。この場合、磁気記録媒体の保磁力を温度に対してより急峻に変化できる可能性が高い。
【0084】
上記の各態様に係る磁気記録媒体に対して熱アシスト磁気記録を行う磁気記録装置では、磁気記録媒体と磁気記録媒体に磁界を印加する手段との距離が100nmより小さい条件で磁界が印加される。本発明による磁気記録装置が従来のHDD装置に比べて優位性を示すのは、線密度の大きな例えば100Gb/in2の記録密度を担う場合である。そのような密度の分解能を得るには、記録媒体との距離が100nmよりも小さいことが好ましい。より好ましくは、上記距離が50nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。
【0085】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0086】
(実施例1)
図1に示す構造を有する第1の態様に係る磁気記録媒体(実施例1)を作製した。3.5インチ径のガラス基板上に、厚さ約50nmのMgOシード層、厚さ約10nmのPt下地層、厚さ約10nmのFeRh機能層、厚さ約10nmの(Fe55Pt45)Cu10記録層、厚さ約1nmのカーボン保護層を順次スパッタ法にて積層し、その後潤滑剤を塗布した。スパッタ成膜時には基板を300℃に加熱した。FeRh機能層は400〜450Kの範囲で反強磁性−強磁性転移を示す。
【0087】
比較例1として、FeRh機能層を設けない磁気記録媒体を作製した。すなわち、3.5インチ径のガラス基板上に、厚さ約50nmのMgOシード層、厚さ約10nmのPt下地層、厚さ約10nmのFeRh機能層、厚さ約10nmの(Fe55Pt45)Cu10記録層、厚さ約1nmのカーボン保護層を順次スパッタ法にて積層し、その後潤滑剤を塗布した。スパッタ成膜時には基板を300℃に加熱した。
【0088】
比較例2として、従来の磁気記録媒体を作製した。すなわち、3.5インチ径のガラス基板上に、厚さ約50nmのNiAlシード層、厚さ約20nmのTi下地層、厚さ約10nmのCoCr20Pt10記録層、厚さ約1nmのカーボン保護層を順次スパッタ法にて積層し、その後潤滑剤を塗布した。
【0089】
実施例1の磁気記録媒体における(Fe55Pt45)Cu10記録層は垂直成分にも残留磁化があるが、3次元的にランダムな方向に磁気異方性の分布を持つ磁気特性を示した。記録層の磁性粒子の直径は約6nmであった。記録層のKuRLは3×107erg/ccであった。これは、スパッタリング時の基板加熱により記録層中にFe50Pt50規則相が形成されたためである。
【0090】
比較例1の磁気記録媒体の場合、FeRh機能層を設けずにFePtCu記録層を単層で用いており保磁力が15kOeを超えるため、記録を行うことは困難である。また、比較例2の磁気記録媒体は垂直磁気異方性を示し、300Kにおける保磁力は3kOeであった。
【0091】
図20に、実施例1、比較例1および比較例2の磁気記録媒体について保磁力の温度変化を示す。図20において、実線が実施例1、破線が比較例1、一点鎖線が比較例2である。比較例1および2の媒体では、保磁力の急激な変化は見られず、温度とともに徐々に保磁力が減少している。一方、実施例1の媒体では、300Kで保磁力が15kOeであり通常の磁気ヘッドでは記録できないが、400〜450K程度で保磁力が急激に減少し始め、機能層が強磁性へと転移した後には保磁力が2kOeまで減少して500K以降は温度とともに徐々に保磁力が減少しており、十分に記録が可能になる。実施例1の媒体は、図6のような1段のヒステリシスループを示した。
【0092】
上記の保磁力の値は、計算から求められた値よりも小さかった。この理由として、反磁界の影響、磁気異方性のランダムな分布、初期層の形成、粒間相互作用、膜中の不純物の影響などが考えられる。しかし、計算に基づき、高Kuを有する記録層材料を用いて、保磁力の小さい磁気記録媒体を得ることができた。
【0093】
実施例1、比較例1および比較例2の磁気記録媒体の動特性をHDDの記録/再生評価装置により評価した。媒体の回転数は4500rpmとした。記録ヘッドとして記録ギャップが220nmのものを用い、再生ヘッドとしてGMR素子を備え再生ギャップが130nmのものを用いた。浮上量と潤滑剤の厚さから磁気スペーシングは30nmと推定された。一方、基板の裏面に波長660nmのレーザーを配置し、基板を通してレーザービームを照射した。レーザースポットの直径はe-2で約1μmである。この際、精密なピエゾ素子によりヘッドを駆動させ、レーザービームの照射位置と記録ヘッドのギャップ位置とを一致させた。
【0094】
まず、実施例1、比較例1および比較例2の磁気記録媒体についてレーザービームを照射しないで磁気記録を試みた。記録電流は50mAまで変化させた。実施例1および比較例1の媒体では、再生信号はノイズがほとんどであり、十分な記録ができていないことがわかった。このことは記録層の保磁力と記録ヘッドの記録能力から判断して当然の結果である。比較例2の媒体は、記録電流30mA以上でキャリア−ノイズ比(CNR)が40dB以上の記録が可能であった。
【0095】
次に、実施例1、比較例1および比較例2の磁気記録媒体についてレーザービームを照射しながら記録を行った。照射するレーザーパワーをDCで30mWまで変化させて、照射パワーと再生信号のキャリア−ノイズ比(CNR)の関係を調べた。
【0096】
記録電流40mAで200kfciの単一周波数記録を行った結果を図21に示す。図21において、実線が実施例1、破線が比較例1、一点鎖線が比較例2である。実施例1の媒体ではレーザーの照射パワーが15mW前後から急激にCNRが向上している。これに対して、比較例1の媒体では約25mW以上の照射パワーでCNRがわずかに増加する傾向が認められる程度であった。これは、実施例1の媒体では機能層の反強磁性−強磁性転移に伴い、急激に保磁力が減少して記録が可能になるのに対し、比較例1の媒体では温度とともに保磁力が徐々に減少し、約25mW以上の照射パワーで不十分ながらようやく記録できるようになるためである。実施例1の媒体では照射パワーが大きすぎると、わずかであるがCNRが減少している。一方、比較例2の媒体は照射パワーが増加するにしたがってCNRが減少する傾向を示した。これは、比較例2は実施例1および比較例1に比べて磁気異方性エネルギー(保磁力)が小さいため、レーザーの照射により媒体の温度が上昇し、記録磁化が熱揺らぎのために一部反転してしまうためである。
【0097】
実施例1の結果から、通常では記録不可能な大きな磁気異方性エネルギー(保磁力)を持つ記録層に対して記録が可能となり、しかも記録直後の熱揺らぎ耐性が向上することが確認できた。
【0098】
(実施例2)
図1に示す構造を有する第1の態様に係る磁気記録媒体(実施例2)を作製した。3.5インチ径のガラス基板上に、厚さ約50nmのSi−N下地層、厚さ約50nmのTb22(Fe0.7Co0.3)機能層、Co/Pd人工格子の記録層、厚さ約1nmのカーボン保護層を順次スパッタ法にて積層し、その後潤滑剤を塗布した。Co/Pd人工格子は0.8nmPd上に0.25nmCo/0.8nmPdを20周期積層した構造を有する。これを0.8nmPd/(0.25nmCo/0.8nmPd)20と表す。機能層はフェリ磁性体であり、300Kに補償点を持つように各元素の組成を調整している。記録層、機能層ともに大きな垂直成分の残留磁化を持つ垂直磁化膜となった。300Kでの保磁力は約13kOeである。
【0099】
比較例3として、Tb22(Fe0.7Co0.3)機能層を設けない以外は実施例2と同じ構造を有する磁気記録媒体を作製した。
【0100】
図22に、実施例2および比較例3の磁気記録媒体について保磁力の温度変化を示す。実施例2の媒体では、機能層の保磁力が急激に減少する影響を受けて、保磁力が急激に減少している。一方、比較例3の媒体では保磁力は温度とともに単調に減少している。
【0101】
実施例2および比較例3の磁気記録媒体の動特性をHDDの記録/再生評価装置により評価した。実施例2の媒体でも、レーザーの照射パワーが約10mW以上で、急激にCNRが向上する効果が得られた。CNRが向上する照射パワーの閾値が実施例2と実施例1とで異なるのは、記録媒体のレーザービームに対する吸収率、および熱伝導率、比熱などの熱物性が異なるためである。
【0102】
(実施例3)
図15に示す構造を有する第2の態様に係る磁気記録媒体を作製した。2.5インチ径のガラス基板上に、厚さ約50nmのCr下地層、反強磁性を示す厚さ約25nmのIrMn機能層、厚さ約2nmのa−Ge中間層、厚さ約20nmのCoPtCr−O記録層、厚さ約3nmのカーボン保護層を順次スパッタ法にて積層し、その後潤滑剤を塗布した。
【0103】
記録層の微細構造をTEMにより調べたところ、CoPtCrの柱状磁性結晶粒子(直径約7nm)が、アモルファスCo−Oと微量のCrを含む非磁性体によって分断された構造となっていた。記録層単独の磁気特性は、面内方向に磁化容易軸を有し、VSMで測定した室温での保磁力Hcは約5kOeと推定された。膜構造の塑性変化のため、キュリー温度の正確な同定はできなかったが、200℃までの温度依存性から外挿すると、概ね300℃と推定された。磁性粒子の粒径が小さいため、熱揺らぎの影響が大きくなっているものと思われる。
【0104】
試料のMHループをVSMにより測定し、機能層と記録層との交換結合エネルギー面密度σの温度変化を求めた結果を図23に示す。この図の横軸は温度、縦軸は交換結合エネルギー面密度σを室温での値σ0で規格化して示している。この図に示されるように、中間層の存在により、機能層と記録層との交換結合相互作用は高温まで室温と同等の値に維持され、機能層のTN(Tc)付近で急激に減少している。
【0105】
上記の磁気記録媒体の動特性をHDDの記録/再生評価装置により評価した。記録媒体の回転数は4500rpmとした。記録ヘッドとして記録ギャップが200nmのものを用い、再生ヘッドとしてGMR素子を備え再生ギャップが110nmのものを用いた。浮上量と潤滑剤の厚さから磁気スペーシングは30nmと推定された。一方、基板の裏面に波長633nmのレーザーおよび外部低浮上レンズを配置した。外部低浮上レンズと基板の両方でSILレンズとなるように設計して、機能層/中間層/記録層の部分でレーザービームが焦点を結ぶようにした。レーザースポットの直径がFWHMで約500nmとなるように調節して局所加熱した。この際、精密なピエゾ素子によりヘッドを駆動させ、光の照射位置と記録ヘッドのギャップ位置とを一致させた。
【0106】
まずレーザービームを照射しないで磁気記録を試みた。再生信号はノイズがほとんどであり、十分な記録ができていないことがわかった。このことは記録層の保磁力と記録ヘッドの記録能力から判断して当然の結果である。
【0107】
次に、レーザービームを照射しながら記録を行った。別の実験とシミュレーションにより、あらかじめ照射パワーと媒体の温度上昇との関係を求めておき、照射するレーザーパワーから再生信号のCN比(CNR)の媒体温度依存性を調べた。
【0108】
400kfciの単一周波数記録をおこなった結果を図24に模式的に示す。Tw=100〜300℃の範囲で信号の記録が可能であることがわかった。記録可能限界条件でのCNRはほぼ10dBであり、実際のHDDシステムに用いるにはあまりにも低い値である。しかし、本発明による記録方式の原理を確認するには十分である。記録周波数をもっと低くするか、または媒体の磁気特性を調整することによってCNRの改善を図ることは十分に可能である。
【0109】
次に、中間層としてa−Geの代わりに、ZnSeまたはNiOを用い、図15と同様な磁気記録媒体を作製した。上記と同様に、試料のMHループをVSMにより測定し、機能層と記録層との交換結合相互作用の温度変化を求めた結果を図25に示す。この図に示されるように、a−Geの場合(図23)と同様に、中間層としてZnSeまたはNiOを用いた場合にも、機能層と記録層との交換結合相互作用は高温まで室温と同等の値に維持され、機能層のTN(Tc)付近で急激に減少している。
【0110】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、熱揺らぎ限界を超える高密度記録を実現でき、しかも熱揺らぎによる磁化再反転を防止できる磁気記録媒体および磁気記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の態様に係る磁気記録媒体と磁界印加手段と加熱手段を示す模式図。
【図2】本発明の第1の態様において想定している、理想的な保磁力の温度変化を示す模式図。
【図3】図1の機能層と記録層の部分のみを取り出しモーメント(スピン)Sの向きを示した模式図。
【図4】典型的な交換結合二層膜の模式図。
【図5】交換結合二層膜のヒステリシスループの一例を示す図。
【図6】交換結合二層膜のヒステリシスループの他の例を示す図。
【図7】機能層の飽和磁化の温度変化を示す図。
【図8】記録層の飽和磁化の温度変化を示す図。
【図9】記録層の磁気異方性エネルギーの温度変化を示す図。
【図10】機能層の磁気異方性エネルギーの温度変化を示す図。
【図11】交換結合二層膜の保磁力の温度変化についての計算結果を示す図。
【図12】機能層の飽和磁化の温度変化を示す図。
【図13】機能層の磁気異方性エネルギーの温度変化を示す図。
【図14】交換結合二層膜の保磁力の温度変化についての計算結果を示す図。
【図15】本発明の第2の態様に係る磁気記録媒体と磁界印加手段と加熱手段を示す模式図。
【図16】本発明の第2の態様に係る磁気記録媒体の記録動作を説明する図。
【図17】本発明の第2の態様に係る磁気記録媒体の磁気異方性エネルギー密度Kuと磁化反転ユニットの体積Vの温度に対する変化を示す模式図。
【図18】交換結合相互作用定数Jの変化がリニアまたは一定である場合の、保磁力の温度変化を計算した一例を示す図。
【図19】交換結合相互作用定数Jの変化がリニアまたは一定である場合の、保磁力の温度変化を計算した他の例を示す図。
【図20】実施例1、比較例1および比較例2の磁気記録媒体について保磁力の温度変化を示す図。
【図21】実施例1、比較例1および比較例2の磁気記録媒体について単一周波数記録を行ったときのCNRを示す図。
【図22】実施例2および比較例3の磁気記録媒体について保磁力の温度変化を示す図。
【図23】実施例3の磁気記録媒体について機能層と記録層との交換結合相互作用の温度変化を示す図。
【図24】実施例3の磁気記録媒体について単一周波数記録を行ったときのCNRを示す図。
【図25】実施例3の他の磁気記録媒体について機能層と記録層との交換結合相互作用の温度変化を示す図。
【符号の説明】
11…基板
12…下地層
13…機能層
14…磁気記録層
15…保護層
16…中間層
21…レーザー
22…磁気ヘッド
31…磁性粒子
32…非磁性体

Claims (7)

  1. 基板と、室温で反強磁性もしくは常磁性を示し温度T f で強磁性へ変化する材料、または室温近傍に補償点を有するフェリ磁性体を含み、局所加熱による記録温度における飽和磁化が室温における飽和磁化よりも大きい機能層と、室温における磁気異方性エネルギー密度KuRLが、前記機能層の室温における磁気異方性エネルギー密度KuFLよりも大きく、かつ5×106erg/cc以上である磁気記録層とを具備し、前記機能層と前記磁気記録層とが交換結合することを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 前記機能層が、FeおよびRhを含有する合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 前記機能層が、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選択される少なくとも1種の希土類元素と、Fe、CoおよびNiからなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属元素とを含有する非晶質合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  4. さらに、前記機能層と前記磁気記録層との間に、半導体または絶縁体を含む中間層を具備したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  5. 前記記録層のキュリー温度TcRと前記機能層のキュリー温度TcFとが、TcR>TcFの関係を満たすことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  6. 前記記録層が、Fe−Pt合金、Fe−Pd合金、Co−Pt合金およびCo−Pd合金からなる群より選択される合金を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気記録媒体。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載の磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体を加熱する手段と、前記磁気記録媒体に磁界を印加する手段とを具備したことを特徴とする磁気記録装置。
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