JP2007134046A - 磁気記録媒体 - Google Patents

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哲 喜々津
Tadashi Kai
正 甲斐
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俊彦 永瀬
Tomoyuki Maeda
知幸 前田
Junichi Akiyama
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Abstract

【課題】熱揺らぎ限界を克服し、熱揺らぎ加速による磁化消失のない磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】記録温度Twに加熱して磁界を印加することにより、情報が記録される磁気記録媒体であって、非磁性基板と、非磁性基板上に形成され、キュリー温度TcFL及び磁気異方性エネルギー密度KuFLを有する磁性体からなる機能層と、機能層上に機能層と反強磁性交換結合相互作用を及ぼすように積層されたキュリー温度TcFL及び記録温度Twのいずれよりも高いキュリー温度TcRL及び5×106erg/cc以上の磁気異方性エネルキ゛ー密度KuRLを有する磁性粒子と前記磁性粒子間に形成された非磁性体とからなる記録層とを具備し、反強磁性交換結合相互作用により反強磁性交換結合した機能層と記録層との合成された磁化を反転させる反転磁界は、TcFL以下の温度範囲ではKuRLと比例せず温度変化に対して急峻に変化し十分に大きな値を有し、TcFL以上の温度範囲ではKuRLのみにより決定される。
【選択図】図2

Description

本発明は、磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体に関する。
近年のコンピュータの処理速度向上に伴って、情報の記憶機能及び再生機能を担う磁気記憶装置(HDD)は、さらなる高速化及び高密度化が要求され続けている。しかしながら高密度化には物理的な限界があると言われており、この要求を満たし続けていけるかどうか問題視されている。
HDDのうち情報が実質的に記録される磁気記録媒体は、微細な磁性粒子の集合体からなる磁性体層を記録層として具備している。この磁気記録媒体に高密度記録を行うためには磁性体層に記録される磁区をできるだけ微小化する必要がある。
また、小さな磁区を分別できるようにするためには磁区の境界が滑らかであることが必要であり、そのためには磁性粒子をできるだけ微小化する必要がある。また、隣接する磁性粒子同士で磁化反転が連鎖すると磁区の境界の乱れとなるので、磁性粒子間には交換結合相互作用が働かないように非磁性体によって磁気的に分断する必要がある。
また、HDDのうち磁気ヘッドは、磁気記録媒体に記録された磁気情報を読み取るために、磁気記録媒体の磁性体層との間で相互作用を高くする必要がある。このためには、磁気記録媒体の磁性体層の膜厚も小さくする必要がある。
以上の要請から、磁気記録媒体の磁性体層を構成する磁性体の磁化反転の積層構造(磁性粒子とほぼ等しい)の体積はどんどん小さくしていかなければならない。
ところが、磁化反転積層構造を微小化すると、その積層構造が持つ磁気異方性エネルギー(磁気異方性エネルギー密度Ku×磁化反転のユニットの体積V)が熱揺らぎエネルギーよりも小さくなり、もはや磁区を保持することができなくなってしまう。これが熱揺らぎ現象であり、この熱揺らぎ現象が主因となる記録密度の物理限界は、熱揺らぎ限界と呼ばれている。
熱揺らぎによる磁化の反転を防ぐための一つの方法として、磁性体層の磁気異方性エネルギーを熱揺らぎエネルギーよりも大きくすることが考えられる。しかしながら、磁性体層の磁気異方性エネルギーを大きくすると、磁性体層に反転磁区を形成する(記録する)ときの保磁力は、磁気異方性エネルギーにほぼ比例するために大きくなりすぎ高々12kOe程度の磁界を発生するパーマロイ、Fe或いはFe合金で形成される現状の記録ヘッドが発生しうる磁界では記録ができなくなってしまうという問題が発生する。
以上の問題である磁性体層の磁気異方性エネルギーを大きくしても現状の記録ヘッドで記録可能とするために熱アシスト磁気記録が提案されている。
熱アシスト磁気記録は、記録時に磁性体層を局所的に加熱して、記録領域の磁気異方性エネルギーを小さくして記録を行うものである。熱アシスト記録は、室温における磁性体層の磁気異方性エネルギーが大きくても、記録領域のみ局所的に加熱してこの領域の磁気異方性エネルギーを小さくすることで現状のヘッドで記録が可能になる。
しかしながら熱アシスト磁気記録は、記録時には隣接トラック部が多少なりとも加熱されるために、そこでは熱揺らぎが加速されて記録磁区が消去される現象(クロスイレーズ)が起こる。
また、記録直後に記録ヘッドからの磁界がなくなった時点でも磁性体層はある程度加熱されていることから、同様に熱揺らぎが加速されて、一度形成した磁区が消失してしまうという問題がある。
これらの問題を解決するには、磁気異方性エネルギー密度Kuの温度に対する変化が記録温度近傍でできるだけ急峻な材料を用いる必要がある。すなわち記録時には温度上昇に伴って急激に磁気異方性エネルギー密度Kuが減少し記録できる値まで達し、記録後は熱が拡散するに伴って急激に磁気異方性エネルギー密度Kuが上昇して熱揺らぎを防ぐようにする必要がある。
しかしながら、保磁力が高い材料として現在開発が進んでいるCoCr系磁性薄膜或いはCoPt系磁性薄膜の磁気異方性エネルギー密度Kuの温度変化は概ねリニアであるので熱の拡散速度に対して磁気異方性エネルギー密度Kuがそれほど速くもとの値に戻らない。したがって現状の熱アシスト磁気記録では、記録後の記録磁化の消失或いはクロスイレーズの問題を解消することができない。
以上のように、従来の熱アシスト磁気記録では磁気記録媒体に用いる磁性材料の磁気異方性エネルギー密度Kuの温度変化が緩慢なために、記録後もすぐに磁気異方性エネルギー密度Kuがもとに戻らず熱揺らぎによる記録磁化の消失或いはクロスイレーズが発生するという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みて成されたもので、熱アシスト磁気記録を行う際に熱揺らぎ加速により発生する、記録直後の記録磁化の消失やクロスイレーズ現象を起こさない磁気記録媒体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、記録温度Twに加熱して磁界を印加することにより、情報が記録される磁気記録媒体であって、非磁性基板と、前記非磁性基板上に形成され、キュリー温度TcFL及び磁気異方性エネルギー密度KuFLを有する磁性体からなる機能層と、前記機能層上に前記機能層と反強磁性交換結合相互作用を及ぼすように積層された前記キュリー温度TcFL及び前記記録温度Twのいずれよりも高いキュリー温度TcRL及び5×10erg/cc以上の磁気異方性エネルギー密度KuRLを有する磁性粒子と前記磁性粒子間に形成された非磁性体とからなる記録層とを具備し、前記反強磁性交換結合相互作用により反強磁性交換結合した前記機能層と前記記録層との合成された磁化を反転させる反転磁界は、前記TcFL以下の温度範囲では前記KuRLと比例せず温度変化に対して急峻に変化し十分に大きな値を有し、前記TcFL以上の温度範囲では前記KuRLのみにより決定されることを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
このとき、室温における前記磁気異方性エネルギー密度KuFLが前記磁気異方性エネルギー密度KuRL以下であることが好ましい。
また、室温における前記磁気異方性エネルギー密度KuFL>前記磁気異方性エネルギー密度KuRL×0.1であることが好ましい。
また、前記記録温度Twにおける前記磁気異方性エネルギー密度KuRLが室温における前記異方性エネルギー密度KuRLの1/4よりも大きいことが好ましい。
また、前記キュリー温度TcFLにおける前記磁気異方性エネルギー密度KuRLが室温における磁気異方性エネルギー密度KuRLの1/4よりも大きいことが好ましい。
また、前記記録層と前記機能層との間に厚さ5nm以下の非磁性中間層を有することが好ましい。
また、前記非磁性中間層が少なくともRu、Re、Rh、Ir、Tc、Au、Ag、Cu、Si、Fe、Ni、Pt、Pd、Cr、Mn、Al、半導体及び磁性体がドープされた半導体から選ばれる材料からなることが好ましい。
以上説明したように、本発明によれば、磁気記録を熱揺らぎ加速による再磁化反転を起こすことなく行うことが可能となる。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態1)図1は、ロータリーアクチュエータを用いた磁気ディスク装置の概略を示したものである。
図1に示すように、磁気記憶媒体であるディスク101は、スピンドル110に装着され、所定の回転数で回転される。ディスク101上を浮上若しくは接触した状態で情報の記録再生を行う磁気記録再生素子及び加熱手段を搭載した記録ヘッド1が設けられている。この記録ヘッド1は、薄板状のサスペンション50の先端に取り付けられている。ここで磁気記録発生素子としては、パーマロイやFe或いはFe合金からなるものを用いることができる。磁界としては5kOeから6kOe程度であれば十分である。
サスペンション50は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部等を有するアクチュエータアーム102の一端に接続されている。一方、アクチュエータアーム102の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ120が設けられている。
ボイスコイルモータ120は、アクチュエータアーム102のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟むように対向して配置された永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路とから構成されている。
アクチュエータアーム102は、固定軸130に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ120により回転揺動が自在にできるようになっている。これらの構成は筐体100中に配置されている。
図2には、図1に示した記録ヘッド1及び磁気記録媒体であるディスク101を拡大したときの断面図である。
図2に示すように、磁気記録媒体であるディスク101は、非磁性基板13と、この上に形成された機能層12と、この上に形成された記録層11と、この上に形成された保護層14とを具備している。
非磁性基板13としては、円形の硬質の基板を用いることができる。基板13の材料は、金属、ガラス或いはセラミクスなどの非磁性体を用いることができる。
記録層11中には磁性粒子とこれらの間に形成された非磁性体とを具備する。記録層11中に存在する磁性粒子の材料としては、飽和磁化Isが大きく、かつ磁気異方性が大きいものが適している。この観点から磁気粒子の磁性金属材料としては例えばCo、Pt、Sm、Fe、Ni、Cr、Mn、Bi及びAlならびにこれらの金属の合金からなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
これらのうちでは、結晶磁気異方性の大きいCo基合金、特にCoPt、SmCo、CoCrをベースとしたものやFePt、CoPt等の規則合金がより好ましい。具体的にはCoCr、CoPt、CoCrTa、CoCrPt、CoCrTaPt、Fe60Pt60、Fe60Pd60、CoPt等が挙げられる。これらの他にも、TbFe、TbFeCo、TbCo、GdTbFeCo、GdDyFeCo、NdFeCo、NdTbFeCo等の希土類と遷移金属の合金が挙げられる。
また、記録層11として、磁性層と貴金属層の多層膜(Co/Pt、Co/Pd等)が挙げられる。また、記録層11として、PtMnSb等の半金属が挙げられる。また、記録層11として、Coフェライト、Baフェライト等の磁性酸化物などから幅広く選択することができる。
記録層11に含まれる磁性微粒子の磁気特性を制御する目的で、上記の磁性体にさらにFe、Niから選ばれる少なくとも1つ以上の元素と合金化させてもよい。また、これらの金属または合金に、磁気特性を向上させるための添加物、例えばCr、Nb、V、Ta、Ti、W、Hf、Cr、In、Si或いはB等の元素或いはこれらの元素と酸素、窒素、炭素、水素の中から選ばれる少なくとも一つの元素との化合物を加えても良い。
記録層11の磁気異方性に関しては、垂直磁気異方性、面内磁気異方性或いはそれらの混合であっても構わない。
記録層11の厚さについて特に制限はないが、高密度記録を実現するためには100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、20nm以下が更に好ましい。0.5nm以下になると薄膜を構成するのが困難になるので好ましくない。
記録層11に含まれる磁性粒子間に非磁性体を形成して分断化する方法としては、CrやTaやB等の非磁性元素或いはSiOに代表される酸化物、Si等に代表される窒化物等の非磁性体を添加して粒間に析出させる方法がある。
また、半導体で使われるリソグラフィー等の技術を利用した人工的な加工によって、磁性粒子間に非磁性体を形成しても良い。また、自己組織化するPS−PMMA等のジブロックコポリマーをマスクとした自己組織化加工によって磁性粒子間に非磁性体を形成しても良い。また、粒子線照射等による加工によって磁性粒子間に非磁性体を形成しても良い。
機能層12としては磁性体であればなんでも良い。磁気異方性は垂直磁気異方性、面内磁気異方性或いはそれらの混合であっても良い。
機能層12の厚さも特に制限はないが、1000nm以上は作成に時間がかかり、また膜応力による特性劣化や剥離が発生しやすくなるので好ましくない。0.1nm以下になると実質的に薄膜を構成できないので好ましくない。磁性体として機能層が満たすべき要件は記録層と同じである。
機能層12と記録層11との間の交換結合相互作用は、スパッタ法等による一般的な媒体製造工程において、機能層12を成膜し、真空を破らずに引き続き記録層11を成膜することで実現できる。ただしこのとき機能層12と記録層11のスピンの向きが反平行である場合に最もエネルギーが低くなるようにする必要がある。これは反強磁性交換結合相互作用である。
反強磁性交換結合相互作用を発現する構成は記録層11と機能層12の界面の状態を制御することによって実現することができる。例えば部分的に磁性が変化した領域を有する、表面改質層或いは物理/化学吸着層ができている、界面の結合状態がミクロな部分によって異なる、といった例が挙げられる
いずれにしろ記録層11と機能層12との間隙は理論的には数nm程度離れていても反強磁性交換結合相互作用が及ぶので、反強磁性交換結合相互作用が作用するのであれば機能層12と記録層11の間に非磁性の層があっても構わない。
また、機能層12と記録層11の間に別の磁性膜を入れることによっても反強磁性交換結合力を制御できるので、本発明による作用を損なわない限り、機能層と記録層の間に複数の磁性層が存在しても構わない。
また、機能層12及び記録層11の積層構造で、本発明の磁気記録媒体の効果を奏することは可能であるが、必要に応じて記録層11上に保護層14を形成してもよい。保護層14としては、CやSiO等からなる薄膜を用いることができる。
また、基板13と機能層12との間に下地層を用いることができる。下地層を用いることによって機能層12や記録層11の種々の特性の制御性を向上させることが可能となる。下地層は、磁性体であっても非磁性体であってもよい。下地層の厚さは特に限定されないが、500nmよりも厚いと製造コストが増加するので好ましくない。
下地層を磁性体とし、記録層11の磁性体中の磁区や記録ヘッド1と交換相互作用或いは静磁気相互作用を介して磁気的に結合させることによって、磁性薄膜に効率的な記録及び再生を行うことができる。例えば記録層11を垂直磁化膜とする場合、軟磁性膜を下地層とし、単磁極ヘッドで記録を行うことで高密度の記録ができる。この場合記録ヘッドの磁界がより小さくても記録媒体101に記録させることができる。
また、記録層11が面内磁化膜の場合、軟磁性層を記録層11の上或いは下に設け、再生時に軟磁性層を飽和させる強度の磁界を印加することによって、高密度の記録ができ、また、熱揺らぎ耐性も向上する。
また、下地層を非磁性体とすることで、磁性部や非磁性部の結晶構造を制御することができる。また、基板13からの不純物が機能層12や記録層11へ混入することを防ぐことができる。このとき、格子間隔の小さい或いはは緻密な薄膜を下地層として用いればよい。
また、磁性部の結晶配向の格子間隔に近い格子間隔を持つ下地層を用いれば磁性部の結晶状態を制御することが可能である。
また、例えば、ある表面エネルギーを持ったアモルファス下地を用いることにより、磁性部或いは非磁性部の結晶性或いはアモルファス性を制御する場合もある。
また、下地層の下にさらに下地層を設けても構わない。その場合には、機能を分担させられるので効果が増加する。例えば、記録層11の結晶粒を小さくする目的で粒径の小さなシード層を基板13上に設け、その上に記録層11の結晶性を制御する下地層を設けることができる。
上記の磁性体、非磁性体の下地層は、その機能を共通に持っていても構わない。即ち、磁性部の結晶性を制御する磁性下地層等があっても構わない。この場合には、記録或いは再生特性上の効果と結晶性上の効果とが相乗されるので各々の場合よりも好ましい。
また、下地層は、イオンプレーティング、雰囲気ガス中でのドープ、中性子線照射等によって行う基板13の表面改質層であっても構わない。この場合、薄膜を堆積するプロセスを介さなくて済むので、磁気記録媒体を作成する上で好ましい。
記録ヘッド1は、その直下に局所的な磁界を印加するとともに局所的に加熱ができるようになっている。そして局所的な磁界を印加することにより微細な磁化反転部分を記録層11に作成することができる。
加熱する手段は、記録温度に達する部分が局所的であれば、磁気記録媒体であるディスク101全面を加熱するもの或いは局部のみ加熱するものどちらでもよい。一般に、記録保持特性(アーカイブ特性)や使用電力を考えると局所的に加熱して、媒体の大部分は室温、或いは室温以下の温度に保つ方が好ましい。
高速かつ局所的な加熱を行うためには、光ディスクに用いられているようなレーザを用いるもの或いは誘導加熱を行うもの或いは電熱線等で加熱されたプローブを近づけたり遠ざけたりするもの或いは電子線を放出するもの等が考えられる。
また、より局所的な加熱を行うためには、レーザ光をレンズ等を用いて媒体面上で絞りこむような方式或いはレーザ光を微小開口やソリッドイマルジョンレンズを用いて近接場光とする方式或いはプローブ先端に微細なアンテナを作製してそこから誘導加熱を行う方式或いは加熱プローブの媒体対向部の形状をできる限り先鋭化したり近づける距離をより短くしたりする方法或いは電子線放出プローブの媒体対向部の形状をできる限り先鋭化する方法等が挙げられる。これらの手法を用いた加熱装置は媒体の記録面側にあってもいいし、その反対面側にあっても構わない。
記録ヘッド1中に存在する磁界を印加する手段は、通常のHDDで用いられているような浮上スライダーの端面に誘導コイルと磁極からなる磁気回路を有するものを用いることができる。また、永久磁石を設置してもよいし、磁気記録媒体に磁性体層をさらに追加し、温度分布或いは光照射による磁化分布で瞬間的かつ局所的な磁界を発生させてもよい。また、情報の記録を行う磁性体層自身から発生する漏洩磁界を利用してもよい。
永久磁石を記録ヘッドとして用いる場合には、それと媒体との距離を可変にし、磁石を近づければ記録でき、遠ざけると記録されない。一度記録したものをオーバーライトするときは磁石を逆向きにして同様にすればよい。また、磁石を微細化することによって高密度記録が可能となる。また、圧電素子等で高速に動かすことによって高速化できる。
本発明において、保持された磁気記録情報の読み取りは従来の磁気記録装置と同様の方式を用いることができる。すなわち磁気記録媒体101からの漏洩磁界を、巨大磁気抵抗効果を用いた磁気再生ヘッド1などで検知して行う。すなわち、記録情報の読み取り時には、光照射することなしに行えることから、従来どおりの読み取りシステムとの互換性が確保される。
記録層11及び機能層12の磁性体のキュリー温度Tcは磁化M或いは保磁力Hcの温度依存性によって調べることができる。VSM等によって磁気特性を測定する場合には10分ほどは加熱状態を保つ必要があり、また昇温速度も短くはできないので、試料は概ね1時間程度その温度に保持されることになる。
磁性体薄膜の場合、この長時間にわたる高温保持によって非可逆な微細構造変化が起こり、正確な磁気特性評価ができない可能性がある。光磁気記録媒体として使われているアモルファス希土類及び遷移金属合金の場合には、そのような変化は比較的起こりにくいが、HDD媒体として用いられているCoCrPt系媒体などは、微細構造の変化が200℃程度で起こる場合もある。
そのような場合でもキュリー温度Tcの推定は可能である。すなわち、室温或いはそれ以下の温度から構造変化が起こる温度までの磁気特性の変化を高温側に外挿すれば良い。
また、本発明による磁気記録装置におけるキュリー温度Tcの要請は、実質的に磁気異方性エネルギー密度Kuが小さくなっている温度であれば良く、その温度で例えば磁化Mや保磁力Hcの値が室温の値の1/20程度が推定できれば充分である。
また、記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLは5×10erg/cc以上である必要がある。これよりも小さい場合には、熱アシスト磁気記録のメリットが出せないからである。
図3に、記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRL、機能層12の磁気異方性エネルギー密度KuFL、磁気記録媒体全体の反転磁界Hctotal、記録ヘッド1から印加される記録磁界Hwの温度に対する変化を模式的に示す。
図3に示すように、機能層12のキュリー温度TcFLは、記録層11のキュリー温度TcRLよりも低い。また、機能層12の磁気異方性エネルギー密度KuFLは、記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLよりも小さく、温度変化に対してより急峻に変化している。
機能層12と記録層11とは反強磁性交換結合している。したがってその合成された磁化を反転させる反転磁界Hctotalは、機能層12のキュリー温度TcFL以下の温度範囲では、記録層11の磁気異方性密度KuRLと比例せず、温度変化に対して急峻に変化し十分に大きな値を持つ。この温度範囲では、熱揺らぎ現象による反転の問題はない。
機能層12のキュリー温度TcFLよりも媒体温度が上昇すると機能層12の磁気異方性密度KuFLは0となり、記録層11の磁気異方性密度KuRLによってのみ反転磁界Hctotalが決定される。したがって記録温度Twを機能層12のキュリー温度TcFLよりも大きくすることで記録ヘッド1の記録磁界Hwによっても反転可能となる。
こうすることで、熱拡散が緩やかでも磁気異方性エネルギー密度Kuの温度変化を急峻にすることなく、記録直後の記録磁化消失やクロスイレーズの問題を解決することができる。
この特性を利用した熱アシスト磁気記録について詳しく説明する。
図4は、磁気記録媒体の断面構造で、記録層11と機能層12における磁化の反転の様子を模式的に示したものである。符号31は磁性粒子でその中の矢印は磁化の向きを表す。矢印の長さは磁化或いは反転磁界の大きさを表わす。符号32は磁性粒子31間の非磁性体である。機能層12も記録層11と同様な磁性粒子とそれを分断する非磁性体からなる構造になっている。この構造の他に、例えば連続膜や(3次元)グラニュラー構造等の形態をとっても構わない。ここでは、簡単のため、垂直磁気記録媒体の場合を例にとって説明するが、ここで行う説明は面内媒体或いは両者の混合の場合にもそのまま適用できる。
機能層12は記録層11と反強磁性交換結合しているのでその磁化は記録層11の磁化と逆向きである。このため、記録媒体の合計の磁化量は記録層11単独の場合の磁化量よりも減り、そのために反転磁界は大きくなる。ある磁気異方性エネルギー密度Kuに対して、反転磁界すなわち異方性磁界Hkは、Hk=2Ku/Msで表される。Msは飽和磁化である。
先ず、図4(a)に示すように、初期状態として記録層11の全ての磁化を下向きに設定する。この状態は熱印加及び磁界印加前の室温Taの状態である。記録層11との反強磁性交換結合相互作用により機能層12は上向きの磁化が発現され、記録層11の磁化と反強磁性交換結合しており、その保磁力は大きい。
この状態では加熱していないので熱揺らぎによる磁化の消失はない。この状態は図3中室温Taの状態である。このときの反転磁界Hctotalは機能層12の磁気異方性エネルギー密度KuFLと記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLとを合成したときの値に比例する。
次に、図4(b)に示すように、記録ヘッド(図2中、符号1)に内蔵された熱印加手段により矢印34で図示された範囲のみが加熱される。図3に示すように、熱が印加されることによって室温Taから記録温度Twに基板温度が上昇するにつれて急激に反転磁界Hctotalが低下する。これは機能層12のキュリー温度TcFLが記録層12より低く磁気異方性エネルギー密度KuFLが急激に下るためである。こうして記録が行われる直前の状態になる。
次に、図4(c)に示すように、記録ヘッド(図2中、符号1)より下向きの磁界を印加して、下向きスピンを持つ記録磁区を形成する。記録層11と機能層12のスピンの関係はそのままにまわりとは逆向きに反転する。図3に示すように記録温度Twでは、反転磁界Hctotalは記録ヘッド1の記録磁界Hwよりも低くなるため容易にスピンを反転させることができる。ここで記録温度Twが機能層12のキュリー温度TcFLより高くなって機能層12の磁化が消失していてもかまわない。
次に、図4(d)に示すように、下向きスピンの記録磁区形成後、熱印加をやめる。こうすることで図3に示すように温度が室温Taに戻ると、急激に機能層12の磁化が大きくなる。これによって反転磁界Hctotalは急激に大きくなる。
以上のように、本発明によれば、室温では記録が行えないような大きい磁気異方性エネルギー密度Kuを持つ記録層に磁気記録できる。
また、本発明によれば、記録が行えるようになる状況を、キュリー温度が低い機能層の磁気特性の変化によってもたらすために、記録層自体の磁性は室温から記録温度まであまり変化せず、従って従来の熱アシスト磁気記録の課題である熱揺らぎの加速が起こりにくくなる。
本発明において、記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLと機能層12の磁気異方性エネルギー密度KuFLの室温における大小関係は基本的には任意である。しかしより高密度の磁気記録装置を実現するには、室温における機能層12の磁気異方性エネルギーKuFLは、記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRL以下であった方がよい。また、記録層11と機能層12とが同じ磁気異方性エネルギー密度であっても構わない
また、本発明において、機能層12の磁気異方性エネルギー密度KuFL>記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRL×0.1という関係であることが好ましい。前述したように機能層12の磁気異方性エネルギー密度KuFLは記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRL以下であった方がよい。しかしながら機能層12の磁気異方性エネルギー密度KuFLはいくら小さくても良いというわけではない。
本発明者らは、強磁性交換結合及び反強磁性交換結合した多層膜の実効的な磁気異方性エネルギー密度Kuがどのような特性を示すか調べた結果、下記の知見を見出した。
すなわち、第1の層と第2の層とが交換結合エネルギー面密度σで結合している場合、全体の熱揺らぎ耐性としての磁気異方性エネルギー密度は、 σ/(2tKu)<1の場合、tKu+σ−σ/(4tKu) σ/(2tKu)>1の場合、tKu+tKuとなる。
ここでt、tはそれぞれ第1の層及び第2の層の膜厚、Ku、Kuはそれぞれ第1の層及び第2の層の磁気異方性エネルギー密度である。
いずれの場合にも全体としての熱揺らぎ耐性tKuは増加している。しかし、膜全体の平均は、(t+t)で割ってみると分かるように、KuだけKuよりは小さくなり、実効的な磁気異方性エネルギー密度としては減少してしまうことになる。
高密度化のためには、媒体を薄膜化しなければならないので、単純にKuの材料を同じ厚さにした場合と比べてこのことは不利となる。
従って機能層12の磁気異方性エネルギー密度KuFLは記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLよりも小さい範囲でできるだけ大きい方が好ましい。詳細な実験及び検討の結果、具体的には機能層12の磁気異方性エネルギー密度KuFL>記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRL×0.1という関係であればよいことが分かった。
また、本発明において、記録温度Twにおける記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLが室温における記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLの1/4よりも大きければよい。
本発明による磁気記録装置の最大の特徴は、熱揺らぎ加速現象の抑制にある。具体的には機能層12の磁気特性の変化による全体の反転磁界の変化を利用して記録層11の熱揺らぎが加速される前に記録を行う。すなわち、記録層11のキュリー温度よりも十分低い温度で記録するところにある。
発明者らは独自に研究を進めた結果、通常の単層膜に熱アシスト磁気記録を行う場合、熱揺らぎ加速現象を避け得るのは、室温における磁気異方性エネルギー密度が概ね半分になる温度までであるという知見を得た。しかしながら、この結論には簡単のための仮定が入っており、熱揺らぎ加速の過大評価を与えることがわかっている。実際には、媒体上のナノメータ領域での温度の変化とそれに伴う磁気特性の空間分布が絡む複雑な現象が起こっているので、第一原理シミュレーションを用いない限りは精度の良い解析はできない。これらのことを勘案して詳細な実験を行った結果、発明者らは、室温における記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLの1/4に磁気異方性エネルギー密度の値になるまで加熱する場合であれば、温度レスポンスを良くする等の施策により、熱揺らぎ加速現象の影響を抑えることができることを発見した。
すなわち記録温度Twにおける記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLが室温における値の1/4よりも大きい場合には熱揺らぎ加速を抑えた熱アシスト磁気記録ができる。このときには記録直後の劣化がなく、また、隣接トラックでは熱揺らぎ加速が起こらない条件であるのでクロスイレーズも起こらない。さらに、記録ヘッドの磁界印加領域(概ね記録磁極のABS面の領域)よりも広い領域の反転磁界を記録磁界以下にすることができるので、記録した磁区は等温線の影響を受けない矩形にすることができるという利点をも有する。
この条件はあくまでも熱揺らぎ加速を抑えるための条件であり、ある程度の劣化が許容されるシステム或いは記録直後の補助磁界印加を採用しているシステム、超急冷媒体構造により温度レスポンスが極端に早いシステム等には用いる必要はない。
また、より低温で記録ができるようにするには、記録層11自体が高い磁気異方性エネルギー密度KuRLを持ちかつ低い保磁力を持つ材料であると良い。そうするには記録層11の飽和磁化Msが大きいと良い。しかし、基本的に磁気異方性エネルギー密度KuRLや飽和磁化Msは材料固有の値であり、それほど制御できるものではない。
そこで別の層を記録層11に強磁性交換結合させることにより実現することができる。すなわち、別の高い磁気異方性エネルギー密度を有する材料からなる第2の記録層を記録層11に交換結合させることで、記録層11と第2の記録層を一体と見なした場合の飽和磁化Msを大きくすることができ、結果として高い磁気異方性エネルギー密度KuRL及び低い保磁力を実現できる。この場合第2の記録層の磁気異方性エネルギー密度は記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLほど高くある必要はない。
このような材料系としては、例えば、垂直磁気記録媒体の場合、厚さ1nm前後のCo層とPt層やPd層とを交互に積層したいわゆる人工格子媒体を用いることができる。この媒体は、Co層が薄いほど磁気異方性エネルギー密度が大きくできるので、例えばCo層を厚さ0.25nm、Pt層を0.5nmとした構成で10erg/ccの磁気異方性エネルギー密度で500emu/cc程度のMsを得ることができる。
また、本発明において、機能層11のキュリー温度TcFLにおける記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLが、室温における記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLの1/4よりも大きいことが好ましい。
記録層11が本来持っているのよりも大きな保磁力Hcの温度変化(低下)が得られるのは機能層12が磁性を持っている温度領域においてである。すなわち、最も大きな室温からの保磁力Hcの低下(飽和磁化Msの相対的な増加)が得られるのは、機能層11のキュリー温度TcFL以下の温度においてである。
室温の保磁力の大きさは、室温における磁化の少なさを意味し、反磁界を少なくする効果が大きいことを意味する。従って、記録動作を機能層12のキュリー温度TcFL近傍で行うと、反磁界低減効果を大きくすることができて好ましい。上述の議論より、熱揺らぎ加速現象を抑えるには、記録温度を記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLが室温の値の1/4になるところにすればよいので、両者の効果を併せ持つシステムを得るには、記録層12のキュリー温度TcFLにおける記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLが室温における記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRLの1/4よりも大きいことが好ましい。
この条件はあくまでも熱揺らぎ加速を抑えかつ反磁界の影響を小さくするための条件であり、それを必要とはしないシステム等には用いる必要はない。この条件を採用するかどうかは用いるシステムの設計によって異なる。
また、本発明による磁気記録装置は、記録層11と機能層12との間に5nm以下の非磁性中間層を形成してもよい。
また、本発明において、反強磁性交換結合は記録層11と機能層12の界面を制御することにより実現できるが、別の方法として、記録層11と機能層12の間に5nm以下の非磁性中間層を形成することでも実現できることが、発明者らの実験によって明らかになった。記録層11と機能層12との交換結合は5nmを越えない範囲の距離で作用をおよぼし、その距離で交換結合力を制御できることを見出した。この距離は、用いる材料、界面の磁気的・機械的・化学的状態、成膜方法、成膜条件等で変化し、ここで一意に規定できない。
また、本発明において、記録層11と機能層12との距離を制御良く保つにはその間に非磁性体からなる中間層を挿入すればよい。
また、発明者らは、この非磁性中間層が少なくともRu、Re、Rh、Ir、Tc、Au、Ag、Cu、Si、Fe、Ni、Pt、Pd、Cr、Mn、Alから選ばれる材料からなる場合、大きな交換結合エネルギーが得られることを見出した。
本発明による磁気記録装置の場合、必要な条件は記録温度において熱揺らぎ加速が小さく、反転磁界が小さくなっていることである。それを実現する条件は種々あるが、そのうちの一つに交換結合エネルギーが大きいということが挙げられる。これは、機能層12の磁気異方性エネルギー密度を大きくできる、より大きな磁気異方性エネルギー密度を有する記録層が使える利点を有している。ただし、交換結合エネルギーが大きいことは必須の条件ではなく、別のパラメータでも制御できるし、システムによっては小さいものでも良い。その場合には、中間層材料の選択の幅が増えて好ましい。
また、発明者らは、上記の非磁性中間層が、半導体、および半導体中に磁性体をドープした材料から選ばれることにより、大きな交換結合エネルギーと急峻な反転磁界の温度変化が得られることを見出した。大きな交換結合エネルギーが得られる理由は良くわからない。急峻な反転磁界の温度変化に関しては、中間層が半導体である場合、電子(キャリア)の数が記録層11と機能層12との交換結合相互作用を担うと考えられるが、その数が温度ともに増加したことによって温度に対する交換結合エネルギーの減少が小さくなったためと思われる。半導体中に磁性体がドープされると、交換結合エネルギーが大きくなる効果もさらに得られる。もちろん、反磁界の影響がそもそも小さいシステムに対しては、これらの半導体中間層を用いる必要性は必ずしもない。
次に、図2に模式的に示した断面構造の磁気記録装置を作製した例を示す。
先ず、2.5インチのガラス基板13上に、Tiシード層(図示せず)を厚さ10nm、Pt下地層(図示せず)を厚さ20nmスパッタ法にて形成する。次に、この上に厚さ0.32nmのCo層及び厚さ0.78nmのPt層からなる積層構造を5層形成した機能層12をスパッタ法にて積層する。
次に、この機能層12上に磁性体として(Co80Pt20)Ta及びこの間に非磁性体としてSiOを具備する記録層11を厚さ10nmスパッタ法にて形成する。次に、この記録層12上にCからなる保護層14を厚さ3nmスパッタ法にて積層し、その後潤滑剤を塗布する。
機能層12は厚さ0.32nmのCo層及び厚さ0.78nmのPt層からなる積層構造として、この積層構造が5回繰り返された、いわゆる人工格子である。機能層12と記録層11の間には、0.5PaのAr及びN雰囲気中でRF100Wのスパッタエッチング処理を施してある。
次に、記録層11の微細構造を、TEMを用いて分析したところ、主にCoPtからなる柱状の磁性結晶粒子(直径約9nm)がアモルファスSiOからなる非磁性体で分断されている構造となっていた。この分析ではTaの分析はできなかった。
また、記録層11単独の磁気特性は、垂直方向に主たる磁化容易軸を有し、VSM測定及び磁気トルク測定より磁気異方性エネルギー密度KuRL=8×10erg/ccであると推定された。また、そのキュリー温度TcRLは約800Kと推定された。
同様に機能層12単独の磁気特性は磁気異方性エネルギー密度KuFL=3×10erg/cc、キュリー温度TcFL=500Kと推定された。
図5に、機能層12と記録層11が積層された状態でのヒステリシスループを模式的に示す。
図5に示すように、マイナス側の飽和状態から磁界強度の絶対値を小さくして行くと、HとHの二回、磁化の急激な変化が現れた。これは機能層12と記録層11が反強磁性交換結合相互作用を及ぼしあっていることを意味する。
マイナス側から磁界強度の絶対値を小さくしていくと、先ず、Hにおいて機能層12が反転し、記録層11と機能層12のスピンの向きが反平行になる状態になる。この状態はエネルギー的に安定であるのでゼロ磁界下でもそのまま保たれる。
次に、プラス側に磁界強度が大きくなると外部磁界の力によって強制的に記録層11の磁化が反転させられる。これがHにおける変化となる。
このヒステリシスループ測定を、温度を変えて行い、Hの温度変化を調べたところ、図3に模式的に示したHctotalのような特性をもつことが分かった。この特性は、機能層12と記録層11の反強磁性交換結合相互作用によってもたらされるものである。
上記の磁気記録媒体の動特性をHDDの記録/再生評価装置にて評価した。回転数は4500rpmで、記録ギャップは200nm、GMR素子を用いた再生ヘッドはギャップが110nmであった。浮上量と潤滑剤の厚さから磁気スペーシングは30nmと推定された。局所加熱には波長633nmのレーザを用いた。レーザは基板裏面より外部低浮上レンズを介して機能層12及び記録層11の界面部分へ照射された。外部低浮上レンズと基板の両方でSILレンズとなるように設計を行い、焦点が機能層12及び記録層11の界面部分で結ぶようにした。レーザスポットの直径はFWHMで約500nmである。精密なピエゾ素子によるヘッドの駆動で、光の照射位置と記録ヘッドのギャップ位置とを一致させた。
先ず、レーザを照射しないで磁気記録を試みた。再生信号はノイズがほとんどであり、十分な記録ができていないことが分かった。このことは記録層11の保磁力と記録ヘッドの記録能力から勘案して当然の結果である。
次に、レーザを照射しながら記録を行った。別の実験とシミュレーションにより、あらかじめレーザの照射パワーと磁気記録媒体の温度上昇の関係をつかんでおき、照射するレーザパワーを変化させて、記録温度Twと再生信号のCN比(CNR)の関係を調べた。400kfciの単一周波数記録をおこなった結果、記録温度Tw=350K以上の領域で再生信号が得られるようになり、記録温度Tw=450K〜550Kあたりで最大の信号強度となり、記録温度Tw=800Kあたりで再び信号が得られなくなった。
このような再生信号強度の媒体温度依存性は、上述の熱アシスト磁気記録方式の作用から考えて妥当である。
次に、機能層12を成膜後、RFスパッタエッチングを行う代わりに1PaのAr及びO雰囲気中に1分間暴露する処理を行い、その後上述したものと同じ方法で記録層11と保護層14を成膜した試料を作成した。
断面TEM観察の結果、機能層12と記録層11との間に厚さ1nmのCoO層ができていることがわかった。
この試料のヒステリシスカーブを測定したところ、図5に示したものと同様のものが得られた。この結果を元に、機能層12と記録層11との間に中間層として厚さ0.8nmのSiO層、厚さ1nmのTi層、3nmのTi層及び厚さ5nmのTiPt層を挿入した試料を作成した。
いずれの場合も図6と同様の特性が得られ、反強磁性結合が得られていることがわかった。中でも厚さ1nmのTi層を中間層として挿入した場合にHとHとの差がもっとも大きくなり、交換結合エネルギーが最も大きくなっていることが推定された。中間層の厚さが5nmを越える場合には交換結合は得られなかった。
次に、実施形態1にかかる別の実施例について説明する。
先ず、2.5インチのガラス基板13上に、NiAlシード層(図示せず)を厚さ5nm、V下地層(図示せず)を厚さ10nmスパッタ法にて形成する。次に、この上に(Co16Pt24)Cr−O機能層12を厚さ10nm、Ru中間層(図示せず)を厚さ0.8nm、(Fe63Pt41)Cu12−SiO記録層11を厚さ12nm、C保護層14を厚さ3nm順次スパッタ法にて積層し、その後潤滑剤を塗布した。
次に、こうして形成された磁気記録媒体の記録層11の微細構造を、TEMを用いて調べたところ、主にFePtからなる柱状の磁性結晶粒子(直径約5nm)がアモルファスSiOからなる非磁性体で分断されている構造となっていた。Cuは膜中に概ね均一に分布していた。
記録層11単独の磁気特性は、面内方向に主たる磁化容易軸を有し、VSM測定及び磁気トルク測定より磁気異方性エネルギー密度KuRLが8×10erg/ccであると推定された。記録層11のキュリー温度TcRLは約700Kと推定された。
機能層12単独の磁気特性は磁気異方性エネルギー密度KuFL=1×10erg/cc、キュリー温度TcFL=450Kと推定された。
機能層12及び記録層11が積層された状態でのヒステリシスループは図5に模式的に示すようなものになり、反強磁性結合が得られた。
これを上記と同様の磁気記録実験に供した。その結果、最大の再生信号強度が記録温度Tw=430K〜560Kで得られた点以外はほぼ同様の結果が得られた。この記録層12は磁性体の結晶粒径が5nmと小さいため、1200kfciという非常に高い周波数でも再生信号の存在が確認された。このことは、この媒体は超高密度磁気記録ができることを意味している。
同様の試料を、中間層材料及びその厚さを変えて作成した。試みた中間層材料はRu、Re、Rh、Ir、Tc、Au、Ag、Cu、Si、Fe、Ni、Pt、Pd、Cr、Mn、Alである。これら全てにおいて反強磁性結合を示す膜厚が5nm以下の膜厚領域で確認された。
また、いずれの場合も酸化物層、SiO、Ti合金層の場合に比べて大きな交換結合エネルギーを示唆するヒステリシスループが得られた。特にRu、Re、Rh、Irについて詳細に検討したところ、交換結合エネルギー面密度が1erg/cm〜5erg/cmと推定されることがわかった。
また、同様に半導体、及び半導体中に磁性体をドープした材料を中間層とした場合にも反強磁性交換結合となることを見出した。ここで試みたのは、半導体がSi、Ge、Sn、Te、AlP、GaN、GaP、GaAs、InSb、ZnO、ZnS、ZnTeで、磁性体がCo、Fe、Ni、Mn、Crである。
反強磁性結合が誘起される理由はよくわからないが、おそらく半導体中の少数キャリアとドープした磁性材料との超交換相互作用によるものと想定される。従って、ドープする母材は少数キャリを生成できる半導体であれば何でも良く、また、磁性体の材料も上記のものに限定されない。
次に、実施形態1にかかる別の実施例について説明する。
先ず、2.5インチのガラス基板13上に、FeTaC軟磁性からなる下地層(図示せず)を厚さ30nm、Ti遮断層(図示せず)を厚さ5nm、Pt下地層(図示せず)を厚さ10nm、[Co層(厚さ0.23nm)/Pt層(厚さ0.87nm)]10機能層12、Rh中間層(図示せず)を厚さ0.8nm、[Co層(厚さ0.35nm)/Pt層(厚さ0.43nm)]記録層11、C保護層14を厚さ3nm順次スパッタ法にて積層し、その後潤滑剤を塗布した。
機能層12は、厚さ0.23nmのCo層及び厚さ0.87nmのPt層からなる積層構造を10回積層したものである。また、記録層11は、厚さ0.35nmのCo層及び厚さ0.43nmのPt層からなる積層構造を6回積層したものである。
このようにして形成された磁気記録媒体の記録層11の微細構造を、TEMを用いて調べたところ、主にCoとPtの多層膜からなる柱状の磁性結晶粒子(直径約7nm)が物理的に分断された微細構造が観察された。粒間物質は同定できなかったが、構成材料からアモルファスCo−Oであることが想定される。
また、記録層11及び機能層12単独の磁気特性は、垂直方向に主たる磁化容易軸を有し、VSM測定及び磁気トルク測定より磁気異方性エネルギー密度Kuはともに1×10erg/ccであると推定された。キュリー温度Tcは記録層11が約900K、機能層12が約520Kと推定された。
機能層12及び記録層11が積層された状態でのヒステリシスループは図5に模式的に示すようなものになり、反強磁性結合が得られた。
これを上記と同様の磁気記録実験に供した。その結果、最大の再生信号強度が記録温度Tw=400K〜600Kと広い範囲で得られた点以外はほぼ同様の結果が得られた。この磁気記録媒体は記録層11及び機能層12の磁気異方性エネルギー密度Kuの差が小さいために、加熱部の熱揺らぎ加速現象が抑えられ、結果として広い温度マージンをもたらしたものと想像される。
次に、この磁気記録媒体の中間層をアモルファスZnSeとした試料を作成した。反強磁性交換結合が得られた。
図6に、このようにして形成された磁気記録媒体の反転磁界Hctotalの温度依存性を示す。
図6に示すように、反転磁界Hctotalは室温Taから機能層12のキュリー温度TcFLまで上に凸の曲線を描くように急激に減少している。
これは、交換結合エネルギーの温度依存性が機能層11のキュリー温度TcFLに向かってほぼリニアに減少していく図3に示す例と異なり、機能層11のキュリー温度TcFLまでほぼ一定であることによるもので、半導体を中間層としたことによって得られた効果である。
同じような効果は、中間層として用いる半導体をSi、Te、Ge、ZnO、ZnTeとした場合にも起こることが確認された。また、この中間層にCoをドープすると交換結合エネルギーが増加する傾向が得られた。
このうち中間層としてZnSe層を用いた磁気記録媒体を上述と同様の磁気記録実験に供した。その結果、温度マージンが高温側に50K広がり、記録層11のキュリー温度TcRLになるレベルのレーザを照射した場合においてもクロスイレーズがほとんど起こらないことがわかった。
次に、上記と同様の構造の磁気記録媒体を作製した。ただし、機能層12を[Co層(厚さxnm)/Pt層(厚さ0.9nm)]とし、[Co層(厚さ0.28nm)/Pt層(厚さ0.43nm)]10記録層11に対し、種々のx(機能層12の磁気異方性エネルギー密度KuFLが異なることに対応する)での熱アシスト磁気記録の成否について調べた。
この磁気記録媒体の記録層11の微細構造は上記と同様であった。また、記録層11と機能層12とが反強磁性結合をしている試料のみを選んで記録再生試験に供した。媒体加熱温度Twは機能層12のキュリー温度TcFL近傍となるように設定した。
図7に、この記録再生試験の結果を示す。
図7は600kfciで記録した単一周波数信号を再生した場合のキャリア−ノイズ比(CNR)である。CNRは最大で50dBm程度しかないが、これは記録/再生系、特に加熱タイミングと記録磁界印加時間との関係が最適化されていないためであると思われる。しかしながら、このレベルにおいても熱アシスト磁気記録の適否の判定は充分に行える。
図7より明らかなように、KuFL/KuRLが0.1以上で充分に大きな信号が得られた。このような特性が得られた理由は機能層11の磁気異方性エネルギー密度KuFLが小さすぎると磁気記録媒体全体の磁気異方性エネルギー密度Kuが低下するために、熱揺らぎ耐性が低下し、記録温度程度の加熱でも致命的な熱揺らぎ劣化が起こるためと考えられる。もちろん記録温度をTwよりも小さく設定すれば熱揺らぎ劣化が抑えられるので、KuFL/KuRLが0.1未満でも熱アシスト記録はでき、実際にこの系においても30dBmを越えるCNRが得られることを確認した。
次に、上記と同様の構造の磁気記録媒体を作製した。ただし、機能層12を[Co層(厚さxnm)/Pt層(厚さ0.9nm)]、記録層11を[Co層(厚さ0.28nm)/Pt層(厚さynm)]10においてx、yを変化させた(それぞれ機能層12の磁気異方性エネルギー密度KuFLと記録層11のキュリー温度TcRLが異なることに対応する)磁気記録媒体を作成した。記録層11の微細構造は上記と同様であり、記録層11と機能層12とが反強磁性結合をしている試料のみを選んで記録再生試験に供した。
このようにして作成された磁気記録媒体に対し、上記と同様の熱アシスト磁気記録を、照射レーザパワーを変化させて行った。各パワーに対する媒体温度は、熱伝導解析シミュレーションで推定した。
その結果を図8に示す。横軸は媒体加熱温度、縦軸はCNRである。
図8に示すように、横軸を温度でプロットすると相関が見られなかったが、記録層11のキュリー温度TcRLで規格化した値としたところ、強い相関が見られた。この結果から、記録温度はTw/TcRLが0.75よりも小さい領域で充分な再生信号が得られることがわかった。この領域での信号強度にばらつきがあるのは、記録パワーが必ずしも最適値でないことに対応するが、Tw/TcRLが0.75よりも大きい領域の信号強度はあきらかに低温領域のそれと比べて小さい値である。
記録層11単独の磁気異方性エネルギー密度KuRLは、そのキュリー温度TcRLに向かってリニアに減少するので、Tw/TcRLが0.75よりも大きい領域は磁気異方性エネルギー密度KuRLが室温の値の1/4未満になっている領域である。
この領域で信号強度が極端に小さくなった理由は、前述のように、記録層11単独の磁気異方性エネルギー密度KuRLが下がったことによる熱揺らぎ加速のためであると思われる。
図8で得られた結果について、最も大きなCNRが得られた記録温度のものを試料ごとに選び、それをTcFL/TcRLに対してプロットしてみた。その結果を図9にしめす。
図9に示すように、TcFL/TcRLが0.75よりも小さい場合に充分な再生信号が得られることがわかった。前述のように、記録層11の熱揺らぎ劣化がないとした場合、最大のCNRが得られる条件は記録温度が機能層12のキュリー温度TcFL近傍になっている場合である。
記録層11単独の磁気異方性エネルギー密度KuRLは、そのキュリー温度TcRLに向かってリニアに減少するので、TcFL/TcRLが0.75よりも大きい領域は機能層12のキュリー温度TcFLにおける磁気異方性エネルギー密度KuRLが室温の値の1/4未満になっている場合である。このとき、大きな信号強度が期待される機能層12のキュリー温度TcFL近傍の加熱では記録層11の熱揺らぎ劣化が起こるためにかえって信号が小さくなってしまい、結果として、もっと低温における加熱による記録しかできなかったためと思われる。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2にかかる磁気記録装置について説明する。
この磁気記録装置は、非磁性基板と、非磁性基板上に形成され、室温における磁化量が室温よりも高温下における磁化量よりも小さいフェリ磁性体からなる機能層と、機能層上に機能層と室温で反強磁性交換結合相互作用を及ぼすように積層された磁性粒子と磁性粒子間に形成された非磁性体とからなる記録層と、機能層及び前記記録層を加熱する加熱手段と、記録層に磁界を印加することによって信号磁化を記録する磁気記録手段とを具備する。
図2に示す実施形態1にかかる磁気記録装置とは、機能層12がフェリ磁性体であるところと、機能層12と記録層11が強磁性交換結合している点が異なり、その他の構成は同様である。
本発明において、記録層11から見た機能層12の磁化が温度と共に増加することが特徴である。一般に磁性体の磁化は温度と共に減少するので、この効果を得るのに実施形態1では反強磁性結合を利用した。
これに対して実施形態2では、機能層12自身が温度と共に磁化が増加する特性を有するフェリ磁性体を用い、機能層12と記録層11を強磁性結合によって結合させる点を特徴としている。
フェリ磁性は一般に、二つの実効的な大きさの異なるスピンが反強磁性結合している系において見られる。その状態を模式的に図10に示す。
図10に示すように、フェリ磁性体はスピンUとLとが逆向きに結合していて、それぞれのキュリー温度が異なっているので、磁化の温度変化は一様ではない。特に高い飽和磁化Ms及び低いキュリー温度Tcを持つスピンLと低い飽和磁化Ms及び高いキュリー温度Tcを持つスピンUとの組み合わせの場合、温度と共に磁化が増加する特性をもつ。
従って、このような温度が上昇すると磁化が増加する特性を有するフェリ磁性体を機能層12とし、これと強磁性交換結合する記録層11を用いることによって、図3に示す特性と同様な効果を示す。
図11に、このときの機能層12の飽和磁化MsFLと記録層11の磁気異方性エネルギー密度KuRL、トータルの反転磁界Hctotalの温度変化を示す。
機能層12の飽和磁化MsFLの増加と共に反転磁界Hctotalは温度に対して記録層11が本来持っているものよりも急峻に減少する。このことにより実施形態1と同様に熱揺らぎ加速劣化が小さく、また、反磁界の影響の小さな磁気記録媒体が得られる。
図11に示した作用が得られる必須の条件は機能層12の磁化量(net moment)が室温よりも高温下で大きいことのみである。機能層12のキュリー温度と記録層11のキュリー温度や記録温度との大小関係は任意である。
また、本発明による磁気記録装置は、前記機能層12が希土類及び遷移金属合金からなる。フェリ磁性を示すものは、例えば、TbFe、TbFeCo、TbCo、GdTbFeCo、GdDyFeCo、NdFeCo、NdTbFeCo等のアモルファス希土類及び遷移金属合金薄膜や、CrPtのような規則合金などがあるが、特にアモルファス希土類(RE)及び遷移金属(TM)合金薄膜は光磁気(MO)記録媒体として実用化されており、希土類リッチ組成或いは補償組成或いは遷移金属リッチ組成でも補償組成近傍とすることで、容易に図10のような温度と共に磁化が増加する特性が得られて好ましい。
また、本発明による磁気記録装置は、前記機能層12が磁性体である第1機能層と磁性体である第2機能層とが反強磁性交換結合するように積層された積層構造からなり、かつ、第1機能層と第2機能層とでキュリー温度が異なり、かつ前記積層構造が1回以上繰り返されているものである。こうすることで人工的にもフェリ磁性を示す材料を得ることができる。
磁性体である第1機能層と(典型的にはCo、Ni、Fe或いはこれらの合金)ともう一層の磁性体である第2機能層とがこの順に積層された積層構造からなり、前記積層構造が1回以上繰り返されている多層膜において、第一機能層と第二機能層との間に反強磁性交換結合相互作用がはたらき、第1機能層と第2機能層の磁気特性が図11に示すような関係がある場合、これは上記と同じフェリ磁性機能層として用いることができる。反強磁性交換結合相互作用が働くようにするには、例えば5nm以下の非磁性体層(例えばRu、Re、Rh、Ir、Tc、Au、Ag、Cu、Mn、Si、Cr或いはこれらの合金或いは酸化物)を第一機能層と第二機能層との間に挿入すればよい。
また、反強磁性体と言われているものも、温度条件や結晶方位面などの条件によってはフェリ磁性を示す場合があり、そのような場合にはこれも機能層として用いることができる。
反強磁性を示すものとしては、ネール温度が室温よりも高い反強磁性材料を薄膜化したものがある。例えばFe、Cr、Coの合金で、具体的にはMnNi、MnPd、MnPt、CrPd、CuMn、AuMn、AuCr、CrMn、CrRe、CrRu、FeMn、CoMn、FeNiMn、CoMnFe、IrMnなどがあり、また、規則合金、具体的には、AuMn、ZnMn、FeRh、FeRhIr、AuMn、AuMn12、AuCr、NiMn、PdMn、PtMn、PtCr、PtMn、RhMnなどがあり、この他にもMnPtN、CrMnPt、PdPtMn、NiO、CoOなどが知られている。
本発明による磁気記録装置は、前記機能層12及び記録層11の積層構造が一回以上繰り返して積層されていることを特徴とする。これまでに述べてきた機能層12及び記録層11の対は一対である必要はない。例えば基板/下地/機能層/記録層/機能層/記録層という構成でも構わない。
このような場合には、記録層あたり、あるいは機能層あたりの界面が倍になるので、交換結合エネルギーが実質倍になると言う利点がある。交換結合エネルギーが大きくなることがもたらす利点については既に述べたとおりである。
この場合には総膜厚が大きくなりがちであるので、積層構造を構成する機能層あるいは記録層は薄いほうが好ましい。
次に、実施形態2にかかる磁気記録媒体について具体的に作成する。
先ず、2.5インチのガラス基板13上に、SiN下地層(図示せず)を厚さ50nm、Tb22(Fe85Co15)機能層12を厚さ15nm、[Co層(厚さ0.28nm)/Pt層(厚さ0.43nm)]10記録層11、C保護層14を厚さ3nm順次スパッタ法にて積層し、その後潤滑剤を塗布した。このとき機能層12と記録層11は真空を破らずに連続して堆積した。また、記録層11は、厚さ0.28nmのCo層及び厚さ0.43nmのPt層からなる積層構造を10層積層したものである。
このようにして形成した磁気記録媒体の記録層11の微細構造を、TEMを用いて調べたところ、主にCoとPtの多層膜からなる柱状の磁性結晶粒子(直径約7nm)が物理的に分断された微細構造が観察された。粒間物質は同定できなかったが、構成材料からアモルファスCo−Oであることが想定される。
記録層11及び機能層12単独の磁気特性は、垂直方向に主たる磁化容易軸を有し、VSM測定および磁気トルク測定より磁気異方性エネルギー密度は記録層11がKuRL=1×10erg/ccと推定された。機能層12は補償組成に近いので磁気異方性エネルギー密度の評価は困難であるが、過去のデータよりKuFL=6×10erg/ccであると推定された。また、キュリー温度は記録層11がTcRL=約900K、機能層12がTcFL=約600Kと推定された。
図12に、機能層12及び記録層11が積層された状態でのヒステリシスループを示す。
図12に示すように、このヒステリシスループは、一段でプラス磁界側にシフトしたものであった。これは機能層12及び記録層11が強磁性交換結合しており、かつ、機能層11が補償組成で磁化反転しないことによるものである。
図12中に機能層12と記録層11のスピンの向きを模式的に示した。上が記録層11、下が機能層12である。
機能層12のスピンの向きは成膜時の条件或いはその他の理由で設定されていて、補償組成であるために測定磁界範囲(例えば20kOe)において磁化反転しない(向きが変わらない)。磁界がマイナスに大きい場合、機能層12及び記録層11のスピンは外部磁界にならって下を向く。プラス方向の磁界強度が増してくると記録層11のスピンは上に向く力が増えてくるが、機能層12からの強磁性交換結合力で下方向に大きな力を受けるのでなかなか反転しない。それでも大きな磁界H1下で磁化反転を起こす。
その状態を図12中右上部に示してある。ここから外部磁界を減じてマイナス側にもっていくと、記録層11のスピンを向けている外場はなくなっていくが、記録層11の異方性エネルギーのためにゼロ磁界下でも反転は起こらない。しかし、強磁性交換結合力によって常に下を向けるような力を受けているので、Hよりは小さい磁界Hにおいて反転を起こす。従って、このようなヒステリシスが得られたことによりこの媒体は強磁性交換結合していることがわかる。
このヒステリシスループ測定を、温度を変えて行い、Hの温度変化を調べたところ、図11に模式的に示した反転磁界Hctotalのような特性をもつことがわかった。
また、機能層12の飽和磁化も図11に模式的に示したようになった。これらの特性は、機能層12と記録層11とが強磁性交換結合していることおよび、機能層12の磁化が室温から高温領域に向かって増えていくことによってもたらされるものである。
上記の磁気記録媒体の動特性をHDDの記録/再生評価装置にて評価した。回転数は4500rpmで、記録ギャップは200nm、GMR素子を用いた再生ヘッドはギャップが110nmであった。浮上量と潤滑剤の厚さから磁気スペーシングは30nmと推定された。局所加熱には波長633nmのレーザを用いた。レーザは基板裏面より外部低浮上レンズを介して機能層/スイッチング層/記録層部分へ照射された。外部低浮上レンズと基板の両方でSILレンズとなるように設計を行い、焦点が機能層/スイッチング層/記録層部分で結ぶようにした。レーザスポットの直径はFWHMで約500nmである。精密なピエゾ素子によるヘッドの駆動で、光の照射位置と記録ヘッドのギャップ位置とを一致させた。
先ず、レーザを照射しないで磁気記録を試みた。再生信号はノイズがほとんどであり、十分な記録ができていないことがわかった。このことは記録層11の保磁力と記録ヘッド1の記録能力から勘案して当然の結果である。
次に、レーザを照射しながら記録を行った。400kfciの単一周波数記録をおこなった結果、記録温度TwがTpeakに近いところで最大のCHRが得られた。
また、上記のTb組成を変化させて同様な磁気特性評価および記録再生実験を行なった。FeCoに比べてTb組成の多い、いわゆるREリッチ組成においては、磁気特性の温度変化は図11と同様であり、調べた全ての組成において熱アシスト磁気記録ができることを確認した。
一方、Tb組成が少ない、いわゆるTMリッチ組成では、図13と図14に示したような2つの場合があることがわかった。
図13はTMリッチではあるが補償組成に近く、図14は補償組成から遠いものである。記録再生試験の結果、作成した試料が図13のような特性を示すもののみが熱アシスト磁気記録が可能であった。このことは、磁化の温度変化が室温から高温領域に向かって増加する場合のみが熱アシスト磁気記録が可能であることを示している。
その理由は、温度の上昇と共に機能層12の磁化が増えるために、交換結合した機能層12及び記録層11の見かけの磁化も増え、結果として保磁力が下がり記録できるようになったためである。磁化が増えない機能層12を用いると、機能層12及び記録層11の二層膜の磁化も温度と共に下がるので保磁力を記録層単層の場合よりも急峻に減少させることはできない。
また機能層12をCrPtとした試料も作成した。磁気特性の温度依存性は図11と同様であり、熱アシスト磁気記録も可能であることがわかった。このことより、本発明による熱アシスト磁気記録が可能となるのは、機能層12が強磁性交換結合しており、かつその飽和磁化が温度と共に増加するという点に帰着され、用いる材料系には本質的には寄らないことがわかった。
上記と同様の磁気記録媒体を作成した。ただし機能層12は、第1機能層としてCo90Cr10層(厚さ0.6nm)とRu層(厚さ0.75nm)及び第2機能層としてCo層(厚さ0.25nm)とRu層(厚さ0.75nm)を積層構造としてこれを4回積層したものを用いた。
この機能層12はCoCr磁性層とCo磁性層とが反強磁性結合している磁気構造を持っていることがヒステリシスループから確認された。
また、CoCr磁性層単独ではキュリー温度が約500K、Co磁性層単独ではキュリー温度が1200Kである。従って、機能層12単独の磁気特性の温度依存性は、このキュリー温度の差のために、室温ではCoCrドミナントであるのが高温域ではCoドミナントとなって、図11に示すようなフェリ磁性を示す。従って、上記とまったく同様に熱アシスト磁気記録媒体に用いることができる。
第1機能層の厚さと第2機能層の厚さを変えた試料をいくつか作成し、上記と同様の記録再生実験を行った。その結果、キュリー温度の小さい第一機能層の室温における飽和磁化の値が第2機能層よりも大きい試料のみ熱アシスト磁気記録が可能であることがわかった。この理由は、熱アシスト磁気記録の成否が機能層12の磁化が温度と共に増加することに本質的に起因することにある。
本発明による磁気記録装置の斜視図。 本発明による磁気記録装置の断面図。 本発明の実施形態1における磁気記録装置の記録層と機能層の磁気異方性と反転磁界の媒体温度に対する変化を模式的に示す図。 本発明の実施形態1における磁気記録装置の記録層と機能層の磁化の熱印加に対する変化を模式的に示す図であり、(a)は熱印加前、(b)及び(c)は熱印加中、(d)は熱印加後である。 本発明の実施形態1における磁気記録装置のヒステリシスループを模式的に示す図。 本発明の実施形態1における磁気記録装置の別の例における記録層と機能層の磁気異方性と反転磁界の媒体温度に対する変化を模式的に示す図。 本発明の実施形態1における磁気記録装置の別の例におけるCNRのKuFL/KuRLに対する変化を示す図。 本発明の実施形態1における磁気記録装置の別の例におけるCNRのTw/TcRLに対する変化を示す図。 本発明の実施形態1における磁気記録装置の別の例におけるCNRのTcFL/TcRLに対する変化を示す図。 本発明の実施形態2における磁気記録装置の機能層の磁化と温度の関係を示す図。 本発明の実施形態2における磁気記録装置の記録層と機能層の磁気異方性と反転磁界の媒体温度に対する変化を模式的に示す図。 本発明の実施形態2における磁気記録媒体のヒステリシスループを模式的に示す図。 本発明の実施形態2における磁気記録装置の別の例における記録層と機能層の磁気異方性と反転磁界と磁化の媒体温度に対する変化を模式的に示す図。 本発明の実施形態2における磁気記録装置の比較例における記録層と機能層の磁気異方性と反転磁界と磁化の媒体温度に対する変化を模式的に示す図。
符号の説明
1・・・記録ヘッド及び加熱源、11・・・記録層、12・・・機能層、13・・・基板、14・・・保護層、31・・・磁性粒子、32・・・非磁性粒間物質、33・・・転移形成位置、34・・・加熱領域

Claims (7)

  1. 記録温度Twに加熱して磁界を印加することにより、情報が記録される磁気記録媒体であって、
    非磁性基板と、前記非磁性基板上に形成され、キュリー温度TcFL及び磁気異方性エネルギー密度KuFLを有する磁性体からなる機能層と、
    前記機能層上に前記機能層と反強磁性交換結合相互作用を及ぼすように積層された前記キュリー温度TcFL及び前記記録温度Twのいずれよりも高いキュリー温度TcRL及び5×10erg/cc以上の磁気異方性エネルギー密度KuRLを有する磁性粒子と前記磁性粒子間に形成された非磁性体とからなる記録層とを具備し、
    前記反強磁性交換結合相互作用により反強磁性交換結合した前記機能層と前記記録層との合成された磁化を反転させる反転磁界は、前記TcFL以下の温度範囲では前記KuRLと比例せず温度変化に対して急峻に変化し十分に大きな値を有し、前記TcFL以上の温度範囲では前記KuRLのみにより決定されることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 室温における前記磁気異方性エネルギー密度KuFLが前記磁気異方性エネルギー密度KuRL以下であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
  3. 室温における前記磁気異方性エネルギー密度KuFL>前記磁気異方性エネルギー密度KuRL×0.1であることを特徴とする請求項2記載の磁気記録媒体。
  4. 前記記録温度Twにおける前記磁気異方性エネルギー密度KuRLが室温における前記異方性エネルギー密度KuRLの1/4よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の磁気記録媒体。
  5. 前記キュリー温度TcFLにおける前記磁気異方性エネルギー密度KuRLが室温における磁気異方性エネルギー密度KuRLの1/4よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
  6. 前記記録層と前記機能層との間に厚さ5nm以下の非磁性中間層を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の磁気記録媒体。
  7. 前記非磁性中間層が少なくともRu、Re、Rh、Ir、Tc、Au、Ag、Cu、Si、Fe、Ni、Pt、Pd、Cr、Mn、Al、半導体及び磁性体がドープされた半導体から選ばれる材料からなることを特徴とする請求項6記載の磁気記録媒体。
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