JP2002080976A - 化成被膜処理システムおよび化成被膜処理方法 - Google Patents

化成被膜処理システムおよび化成被膜処理方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自動車用のコイルスプリングなどの被処理物
に燐酸亜鉛の被膜を形成する化成被膜処理工程では、浸
漬方式やスプレイ方式がある。これら方式の短所を改善
し、メインテナンスが容易で被処理物に短時間で被膜を
生成でき、化成処理液が少なくて済みスラッジが発生し
難く、被膜品質の劣化が少なく、被膜形成の効率が良い
化成被膜処理システムを提供する。 【解決手段】 化成処理室3の内底部3aから天井部3
bの裏側へ循環する化成処理液とを備え、この化成処理
室3では、天井部3bに複数個形成された吐出孔6から
化成処理液を被処理物に流水シャワー状に連続的に自然
落下させる。これにより、被処理物が化成処理液を短時
間に大量浴びることとなり、吐出孔6の目詰まりが生じ
難く、少ない化成処理液で被膜を短時間に生成でき、被
膜品質の劣化が少なくなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燐酸塩系の処理液
を用いてコイルスプリングなどの塗装の下塗りを行なう
化成被膜処理方法に係り、とりわけ被膜品質の向上およ
びライン設備管理の簡素化を図るようにした化成被膜処
理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、自動車用のコイルスプリングな
どの被処理物に塗装を施すにあたっては、水切り乾燥、
粉体塗装および焼付け乾燥に先立って、被処理物の表面
に燐酸亜鉛の被膜を形成する化成被膜処理工程がある。
この化成被膜処理工程は、被処理物を燐酸亜鉛の溶液槽
に浸漬する浸漬方式(デッピング方式)と、ノズルや枝
管(ライザー管)から霧状の燐酸亜鉛溶液を被処理物に
吹き掛けるスプレイ方式に大別される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、浸漬方式で
は、下記の不都合が生じる。 (イ)被処理物の浸漬に所定の時間が必要なため、処理
時間が長くなる不都合がある。 (ロ)被処理物を大量に処理する時には、処理ラインが
長くなり、ライン効率が悪くなる。 (ハ)また、これの大量処理には、燐酸亜鉛溶液の量を
多くする必要があり、燐酸亜鉛溶液が被処理物と反応し
てスラッジが発生し易く、品質の劣化に繋がり易い。
【0004】また、スプレイ方式では、下記の不都合が
生じる。 (イ)化成処理液を噴出するノズルが径細のため、ノズ
ルや枝管に目詰まりが生じ易く、メインテナンス工数が
増し、ラインの設備管理に手間がかかるようになる。 (ロ)ノズルの条件の変化によって被膜品質が不安定と
なる。
【0005】本発明は、これらの事情を背景になされた
もので、その目的は化成処理液を被処理物にシャワー状
に連続落下させることにより、メインテナンスが容易で
被処理物に短時間で被膜を生成でき、化成処理液が少な
くて済みスラッジが発生し難く、被膜品質の劣化が少な
く、総じて被膜形成の効率化に寄与できる化成被膜処理
方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1によれば、後続
する水切り乾燥、粉体塗装および焼付け乾燥の前工程
で、被処理物の表面に被膜を形成する化成被膜処理シス
テムにおいて、化成処理室の天井部から流下するように
設定された化成処理液と、一連の前記被処理物を前記天
井部の近傍に沿って連続的に移動させる駆動部と、前記
天井部に複数個形成され、前記化成処理液を前記被処理
物に流水シャワー状に連続的に自然落下させる吐出孔と
を備えたことを特徴とする。
【0007】請求項2によれば、前記化成処理液は、燐
酸亜鉛、燐酸鉄、あるいは燐酸マンガンといった燐酸塩
を主成分とし、前記被処理物はコイルスプリングである
ことを特徴とする。
【0008】請求項3によれば、前記被処理物はコイル
スプリングに加えてトーションバー、あるいはスタビラ
イザであることを特徴とする。
【0009】請求項4によれば、前記天井部の前記吐出
孔の直径寸法は、5〜20mmであることを特徴とす
る。
【0010】請求項5によれば、後続する水切り乾燥、
粉体塗装および焼付け乾燥の前工程で、被処理物の表面
に被膜を形成する化成被膜処理方法において、化成処理
室内の天井部の下方を所定速度で移動する一連の前記被
処理物に、前記天井部に形成した複数の吐出孔から化成
処理液を前記被処理物に流水シャワー状に連続的に自然
落下させるようにしたことを特徴とする。
【0011】請求項6では、前記化成処理液は、燐酸亜
鉛、燐酸鉄、あるいは燐酸マンガンといった燐酸塩を主
成分とし、前記被処理物はコイルスプリングであること
を特徴とする。
【0012】請求項7では、前記被処理物はコイルスプ
リングに加えてトーションバー、あるいはスタビライザ
であることを特徴とする。
【0013】請求項8では、前記天井部の前記吐出孔の
直径寸法は、5〜20mmであることを特徴とする。
【0014】
【発明の作用および効果】請求項1では、化成処理液を
被処理物にスプレイで噴霧する程度のかけ方ではなく、
化成処理液の供給量がより多くなるシャワー状に被処理
物に連続的に垂れ流す方式である。このため、被処理物
に対して化成処理液の置換(おきかえ)量を著しく大き
く設定できる(スプレイ方式の3倍程度)。すなわち、
被処理物の表面層が絶えず新しい化成処理液の供給を受
けるため、被膜生成反応が促進され、所望の被膜を短時
間で形成することができる。しかも、生成された被膜の
結晶粒子が緻密になり、塗装粉体に対する密着性が向上
する。
【0015】これにより、化成処理液の供給と、化成処
理液の濃度管理や被処理物の温度管理といった処理条件
を最適に維持でき、被膜形成の効率化を達成することが
できる。また、化成処理液の濃度変化が少なく、安定性
が高いので、濃度管理を行い易く、安定した被膜品質が
得られる。
【0016】請求項2では、化成処理液は、燐酸亜鉛、
燐酸鉄、あるいは燐酸マンガンといった燐酸塩を主成分
としているため、被処理物の表面に燐酸塩の被膜を生成
することができる。また、コイルスプリングは、一般に
円形の断面であるため、これの表面に沿う化成処理液の
流れが短時間に生じて被処理物の昇温が素早く達成さ
れ、被膜の生成を助長する。
【0017】請求項3では、被処理物はコイルスプリン
グに加えてトーションバー、あるいはスタビライザと
し、種々の自動車関連部品に適用している。
【0018】請求項4では、天井部に形成する吐出孔の
直径寸法が比較的大きな5〜20mmであるため、吐出
孔の目詰まりが生じ難く、目視確認ができるため清掃な
どのメインテナンスが容易でコスト的にも有利である。
【0019】請求項5ないし請求項8は化成被膜処理方
法に係るが、それぞれ請求項1ないし請求項8に対応し
た作用効果を奏する。
【0020】
【発明の実施の形態】次に各図を参照して本発明の一実
施例を説明する。図1に示す化成被膜処理システムSに
おいて、1は化成被膜処理ブースで、これは表面調整室
2、化成処理室3および水洗室4の三部屋に仕切られて
いる。表面調整室2の内底部2aは、循環路C1を介し
て天井部2bへ循環するアルカリ溶液を貯留している。
そして、この天井部2bは、上下に貫通する吐出孔5を
形成し、天井部2bに供給されたアルカリ溶液を落下さ
せるようにしている。
【0021】また、化成処理室3の内底部3aは、循環
路C2を介して天井部3bへ循環する化成処理液(43
〜47℃)を貯留している。そして、この天井部3b
は、上下に貫通する吐出孔6を形成し、天井部3bに供
給された化成処理液をシャワー状に落下させるようにし
ている。この化成処理液は、本実施例では燐酸亜鉛の水
溶液からなっているが、燐酸鉄、あるいは燐酸マンガン
といった他の燐酸塩を主成分としてもよい。この場合、
内底部3aに貯留した化成処理液を循環路C2を介して
天井部3bへ循環する方式ばかりでなく、化成処理室3
の外部に所在する処理液槽、貯液槽あるいは多段階的に
液処理を行う液溜槽から化成処理液を天井部3bへ循環
するようにしてもよい。このことは、前述の表面調整室
2および後述する水洗室4についても適用できる。
【0022】また、水洗室4の内底部4aは、循環路C
3を介して天井部4bへ循環する水洗液を貯留してい
る。そして、この天井部4bは、上下に貫通する吐出孔
7を形成し、天井部4bに供給された水洗液を落下させ
るようにしている。この場合、天井部2b、3b、4b
に設けた各吐出孔5、6、7の直径寸法は、例えば10
mmといったように比較的大きく設定している。これら
の吐出孔5、6、7の直径寸法は、後述する被処理物の
大きさに応じて任意に設定できるが、本発明では5〜2
0mmの範囲内に設定している。
【0023】8はワイヤーで、これは天井部2b、3
b、4bの裏側に配され、駆動部(図示せず)により矢
印Aで示す方向に移動するようになっている。このワイ
ヤー8は、多数のフック部9を等間隔に接続しており、
その下端部は図2に示すように天井部2b、3b、4b
のスリット10を介して表面調整室2、化成処理室3お
よび水洗室4に垂下している。これらのフック部9は、
被処理物(ワークピース)としてコイルスプリング11
を着脱可能に吊り下げている。この被処理物としては、
コイルスプリング11の他、トーションバー、あるいは
スタビライザなど種々の自動車関連部品に適用すること
ができる。
【0024】化成被膜処理ブース1の水洗室4は、順に
水切り乾燥室12、粉体塗装室13および焼付け乾燥室
14へと連結されている。
【0025】さて、化成被膜処理システムSの運転時に
は、駆動部によりワイヤー8が矢印Aの方向に移動して
おり、天井部2b、3b、4bの吐出孔5、6、7から
アルカリ溶液、燐酸亜鉛の水溶液および水洗溶液が表面
調整室2、化成処理室3および水洗室4にそれぞれシャ
ワー状に自然落下している。
【0026】このため、表面調整室2内のコイルスプリ
ング11は、図3に示すようにアルカリ溶液のシャワー
Hsを受け(例えば、毎分V1 リットル)、その表面が
一定の状態に維持される(表面状態処理)。
【0027】そして、ワイヤー8の矢印A方向の移動に
伴い、フック部9に吊るされたコイルスプリング11が
化成処理室3に運ばれ、吐出孔6からシャワー状態に自
然落下する燐酸亜鉛の水溶液を連続的に受ける(例え
ば、毎分V2 リットル)。この燐酸亜鉛の水溶液のシャ
ワーHiは、コイルスプリング11が化成処理室3を通
過するまで行われ、この間にコイルスプリング11の表
面に燐酸亜鉛の被膜が生成する。
【0028】この燐酸亜鉛の水溶液は、内底部3aに滴
下した後に回収され、所定の成分管理値に再調整されて
循環路C2を介して天井部3bへ供給され、同様なサイ
クルで繰り返し使用される。
【0029】燐酸亜鉛の水溶液による化成処理を受けた
コイルスプリング11は、水洗室4に運ばれ、水洗シャ
ワーを受け(例えば、毎分V3 リットル)、余剰な燐酸
亜鉛の水溶液を洗い落とすべく洗浄される。
【0030】このように水洗室4で洗浄されたコイルス
プリング11は、順に水切り乾燥室12、粉体塗装室1
3および焼付け乾燥室14へと運ばれ、これらの各部屋
で所定の処理を受けて製品化される。
【0031】このように、本発明の実施例では、燐酸亜
鉛の水溶液を化成処理液としてシャワー状にコイルスプ
リング11に流下させるようにしたので、燐酸亜鉛の水
溶液をコイルスプリング11に大量かつ効果的に浴びさ
せることができる。
【0032】このため、浸漬方式(デッピング方式)に
比べ被膜生成時間を略1/2に短縮できるとともに、化
成液処理ラインを2/3程度短くすることができる。
【0033】また、短時間に大量の燐酸亜鉛の水溶液を
コイルスプリング11に浴びさせることができるので、
少ない化成処理液で済み、熱分解の影響によるスラッジ
の発生が少なく、被膜品質の劣化が最小限で済む。
【0034】燐酸亜鉛の水溶液をシャワー状に自然落下
させるために、吐出孔5、6、7の直径寸法を10mm
と比較的大きく設定したので、吐出孔5、6、7の目詰
まりが生じ難く、目視確認ができるため清掃などのメイ
ンテナンスが容易でコスト的にも有利である。
【0035】スラッジの発生が少なくて済むことに伴
い、化成処理液の濃度の変化が少なく安定性が高い。こ
のため、化成処理液の濃度管理が行い易く安定した被膜
品質が得られる。
【0036】ちなみに、表1は化成処理液について薬剤
使用量、浴液管理およびスラッジ発生量の観点から本発
明の流水シャワー方式をスプレイ方式および浸漬方式に
比較した表を示す。この表から上記の観点について本発
明の流水シャワー方式がスプレイ方式および浸漬方式に
比べて如何に優れているかが分かる。
【0037】
【表1】
【0038】また、表2は被膜品質について被膜結晶、
物性および塗装性能および総合評価の観点から本発明の
流水シャワー方式をスプレイ方式および浸漬方式に比較
した表を示す。この表から上記の観点について本発明の
流水シャワー方式がスプレイ方式および浸漬方式に比べ
て如何に優れているかが分かる。
【0039】
【表2】
【0040】なお、フック部9に吊るされたコイルスプ
リング11の配列間隔や移動速度は、被処理物の大きさ
や物性により任意に設定できる。被処理物としては、コ
イルスプリング11の他、ステアーリングホイール、ホ
イールシャフトやシフトレバーなど適宜の部品に適用で
きる。
【0041】また、表面調整室2を流下するアルカリ溶
液の流量(毎分V1 リットル)、化成処理室3内を流れ
る燐酸亜鉛の水溶液量(毎分V2 リットル)、ならびに
水洗室4内を落下する水洗シャワーの流水量(毎分V3
リットル)は所望に応じてそれぞれ適宜に設定できる。
【0042】また、本発明の具体的な実施にあたっては
発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る化成被膜処理システムの概略部分
断面図でる。
【図2】図1のII−II線に沿って切断した概略拡大
断面図である。
【図3】化成被膜処理システムの入口を示す斜視図であ
る。
【符号の説明】
2b 天井部 3 化成処理室 3a 内底部 4 水洗室 5、6、7 吐出孔 11 コイルスプリング(被処理物) 12 水切り乾燥室 13 粉体塗装室 14 焼付け乾燥室 S 化成被膜処理システム
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // F16F 1/12 F16F 1/12 C Fターム(参考) 3J059 AD05 BA01 BA36 EA08 GA01 4D075 AC13 AC72 AC84 BB75X BB75Y CA47 DA23 DB02 DC13 4K026 AA02 AA24 AA25 BA03 BA04 BA05 BB06 DA06 DA08 DA12

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 後続する水切り乾燥、粉体塗装および焼
    付け乾燥の前工程で、被処理物の表面に被膜を形成する
    化成被膜処理システムにおいて、 化成処理室の天井部から流下するように設定された化成
    処理液と、 一連の前記被処理物を前記天井部の近傍に沿って連続的
    に移動させる駆動部と、 前記天井部に複数個形成され、前記化成処理液を前記被
    処理物に流水シャワー状に連続的に自然落下させる吐出
    孔とを備えたことを特徴とする化成被膜処理システム。
  2. 【請求項2】 前記化成処理液は、燐酸亜鉛、燐酸鉄、
    あるいは燐酸マンガンといった燐酸塩を主成分とし、前
    記被処理物はコイルスプリングであることを特徴とする
    請求項1に記載の化成被膜処理システム。
  3. 【請求項3】 前記被処理物はコイルスプリングに加え
    てトーションバー、あるいはスタビライザであることを
    特徴とする請求項1に記載の化成被膜処理システム。
  4. 【請求項4】 前記天井部の前記吐出孔の直径寸法は、
    5〜20mmであることを特徴とする請求項1に記載の
    化成被膜処理システム。
  5. 【請求項5】 後続する水切り乾燥、粉体塗装および焼
    付け乾燥の前工程で、被処理物の表面に被膜を形成する
    化成被膜処理方法において、 化成処理室内の天井部の下方を所定速度で移動する一連
    の前記被処理物に、前記天井部に形成した複数の吐出孔
    から化成処理液を前記被処理物に流水シャワー状に連続
    的に自然落下させるようにしたことを特徴とする化成被
    膜処理方法。
  6. 【請求項6】 前記化成処理液は、燐酸亜鉛、燐酸鉄、
    あるいは燐酸マンガンといった燐酸塩を主成分とし、前
    記被処理物はコイルスプリングであることを特徴とする
    請求項5に記載の化成被膜処理方法。
  7. 【請求項7】 前記被処理物はコイルスプリングに加え
    てトーションバー、あるいはスタビライザであることを
    特徴とする請求項5に記載の化成被膜処理方法。
  8. 【請求項8】 前記天井部の前記吐出孔の直径寸法は、
    5〜20mmであることを特徴とする請求項5に記載の
    化成被膜処理方法。
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