JP2002076405A - 光電変換装置 - Google Patents

光電変換装置

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JP2002076405A
JP2002076405A JP2000263024A JP2000263024A JP2002076405A JP 2002076405 A JP2002076405 A JP 2002076405A JP 2000263024 A JP2000263024 A JP 2000263024A JP 2000263024 A JP2000263024 A JP 2000263024A JP 2002076405 A JP2002076405 A JP 2002076405A
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film
thin film
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silicon thin
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Hideki Shiroma
英樹 白間
Kouichirou Shinraku
浩一郎 新楽
Hirofumi Senda
浩文 千田
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Kyocera Corp
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Kyocera Corp
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 プラズマCVD法等で形成する光電変換層た
るシリコン薄膜におけるスピン密度と不純物原子濃度を
制御することでこれを高品質化し、光電変換装置の性能
を改善することを目的とする。 【解決手段】 電子スピン共鳴法で分析したスピン密度
が1×1018個/cm 3以下であり、且つ酸素原子の平
均濃度が1×1020個/cm3以下である結晶質を含む
シリコン薄膜を光電変換層に用いた光電変換装置であっ
て、上記シリコン薄膜中の導電型決定不純物原子の平均
濃度を1×1016個/cm3〜1×1018個/cm3とし
たシリコン薄膜を光電変換層に用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光電変換装置に関
し、特に薄膜多結晶シリコンを光電変換層に用いた太陽
電池に代表される光電変換装置に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】薄膜多結晶シリコンを用いた光
電変換装置を低コストで製造するには、多結晶シリコン
薄膜をガラス基板等の低コスト基板上に600℃程度以
下の比較的低温度下で形成する必要がある。この製膜方
法としては、従来より、プラズマCVD法や触媒CVD
法が精力的に研究されている。
【0003】これらの手法で形成されたシリコン薄膜中
のスピン密度や残留不純物原子濃度については、しばし
ば議論の対象となっている。ここでいう残留不純物原子
とは、リンやボロンといった導電型決定不純物原子では
なく、シリコン薄膜の製膜中に様々な要因からシリコン
薄膜中に取り込まれる酸素、炭素等の原子のことであ
る。一般に光電変換装置のようなデバイスに適用し得る
シリコン薄膜の場合、スピン密度及び残留不純物原子濃
度は極力少ない方がよいと考えられている。
【0004】スピン密度に関しては、例えば特開平4−
188879号に、非晶質シリコン薄膜中のスピン密度
を5×1017個/cm3以下にする内容が記載されてい
るが、結晶質を含むシリコン薄膜に関するものではな
い。
【0005】残留不純物原子に関しては、例えば特開2
000−58889号に、プラズマCVD法で堆積した
シリコン系薄膜の酸素原子濃度を1×1019個/cm3
〜1×1020個/cm3にする内容が記載されている
が、これは酸素原子が熱的に活性化してn型シリコン系
薄膜のキャリア濃度が増加する効果を狙ったものである
が、キャリア濃度は1015/cm3オーダー以下であ
り、充分なキャリア濃度とはなっておらず、またpn制
御、再現性等、キャリア濃度の制御は実質的に不可能で
あった。
【0006】また、上述の特開2000−58889号
のように、薄膜多結晶シリコンを用いた光電変換装置で
は、光電変換層に導電型決定不純物原子を導入しない真
性型シリコンを用いたpin型、もしくはnip型が主
流であり、光電変換層中の導電型決定不純物原子濃度に
ついては、前記スピン密度や残留不純物原子濃度と密接
な関係があることからも、導電型決定不純物原子濃度を
どの範囲にすれば最適なキャリア濃度が得られるかにつ
いては、経験的にも明らかにされてはいなかった。
【0007】本発明はこのような従来技術の課題に鑑み
てなされたものであり、プラズマCVD法等で形成する
光電変換層たるシリコン薄膜におけるスピン密度と不純
物原子濃度を制御することでこれを高品質化し、光電変
換装置の性能を改善することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る光電変換装置では、電子スピン共鳴
法で分析したスピン密度が1×1018個/cm3以下で
あり、且つ酸素原子の平均濃度が1×1020個/cm3
以下である結晶質を含むシリコン薄膜を光電変換層に用
いた光電変換装置において、前記シリコン薄膜中の導電
型決定不純物原子の平均濃度を1ラ1016個/cm3〜1
ラ1018個/cm3としたシリコン薄膜を光電変換層に用
いる。
【0009】上記光電変換装置では、前記導電型決定不
純物原子がボロン又はリンのうちの少なくとも1種を含
むことが望ましい。
【0010】また、上記光電変換装置では、前記シリコ
ン薄膜が体積結晶化分率60%以上の結晶質を含むこと
が望ましい。
【0011】また、上記光電変換装置では、前記シリコ
ン薄膜の膜厚が0.5〜20μmであることが望まし
い。
【0012】また、上記光電変換装置では、前記シリコ
ン薄膜中の炭素原子の平均濃度が1×1019個/cm3
以下であることが望ましい。
【0013】また、上記光電変換装置では、前記シリコ
ン薄膜中の窒素原子の平均濃度が1×1019個/cm3
以下であることが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、請求項1に係る光電変換装
置の実施形態を図1に基づいて説明する。ここでは、光
入射面側にn型層を形成した場合について説明するが、
光入射面側にp型層を形成した場合は、文中の導電型を
逆に読み替えればよい。
【0015】まず、ガラス、SUS等の低コスト基板1
上にTi、Ni、W、Mo、Cu、Ag、またはAlの
うち、少なくとも1種からなる金属、またはその窒化
膜、あるいはそのシリサイド膜で形成される薄膜層から
成る裏電極2を電子ビーム蒸着法、スパッタリング法等
の真空成膜法によりシート抵抗が1Ω/□以下となるよ
うに適当な膜厚に堆積する。具体的には、Ti膜を0.
1μm成膜し、この上にAg膜を1μm成膜し、さらに
Ti膜を0.1μm成膜するとシート抵抗0.1Ω/□
以下が実現される。なお、前記Ti及びAg膜は以下の
工程で問題のない限り他の金属等に置き換えても良い。
【0016】次に、前記裏電極2上にBSF層となるp
+型Si層3を形成する。具体的には前記裏電極2上
に、プラズマCVD法または触媒CVD法等により、ボ
ロン、アルミニウム等のp型不純物原子が1×1018
/cm3〜1×1022個/cm3程度含まれた多結晶Si
層を1μm程度以下の膜厚に成膜し、高BSF機能を有
する下地層とする。
【0017】次に、前記p+型Si層3上に、同層と同
一導電型(すなわちp型)の本発明の光電変換層となる
結晶質を含むSi層4をプラズマCVD法または触媒C
VD法等によって厚さ0.3〜30μm程度に形成す
る。具体的には、例えば40MHzの高周波電源を用い
た平行平板型プラズマCVD法により形成することがで
きる。
【0018】成膜時の反応ガスとしてはシラン系ガス、
水素ガス及びドーピングガスを用いる。シラン系ガスと
してはモノシランガス、ジシランガス等に加え、ジクロ
ロシランガス等のハロゲン化ケイ素系ガス等を用いても
良い。シラン系ガスに対する水素ガスの流量は10倍以
上であることが好ましい。ドーピングガスとしてはp型
Si膜を形成する場合はジボランガス等を、n型Si膜
を形成する場合はホスフィンガス等を用いる。このとき
のシラン系ガスに対するドーピングガスの流量は、Si
膜のドーピング(導電型決定不純物)原子濃度が1×1
15個/cm3〜1×1018個/cm3程度になるよう調
節する。流量で調整しきれない場合は、水素等の希釈ガ
スで適当な濃度に希釈したドーピングガスを用いる。本
実施例においては、反応ガスとして、モノシランガス、
水素ガス、ジボランガスを用い、各ガスの流量はモノシ
ランガス1〜20sccm、水素ガス100〜1000
sccm、ジボランガス(水素により100ppmに希
釈)0.02〜1sccmとする。成膜時の圧力として
は0.5〜5torr、成膜温度は100〜400℃、
放電パワーは例えば15〜100Wなどである。
【0019】上述の条件において石英基板上に形成され
るSi膜のスピン密度を電子スピン共鳴法により求める
と1×1018個/cm3以下となる。スピン密度が1×
101 8個/cm3以上となると、膜中欠陥の増加により
キャリアの再結合が顕著になり、光電変換装置の変換効
率が低下する。一方、スピン密度を測定する場合には石
英基板もしくは高品質の単結晶Si基板上にSi膜を形
成することが好ましい。特にSi膜の膜厚が薄い場合及
びスピン密度が小さい場合は、基板の信号(バックグラ
ウンド)を極力低減して測定することが必要である。
【0020】また、このSi膜中の残留不純物原子濃度
を二次イオン質量分析法により求めると、酸素原子の平
均濃度が1×1020個/cm3以下、炭素原子の平均濃
度が1×1019個/cm3以下、窒素原子の平均濃度が
1×1019個/cm3以下となる。デバイスグレードの
膜品質を維持するためには、残留不純物原子濃度には上
限があり、酸素濃度については1×1020個/cm3
炭素濃度については1×1019個/cm3、窒素濃度に
ついては1×1019個/cm3とすることが望ましい。
【0021】さらに分光エリプソメーターによるフィッ
ティングにより算出した体積結晶化分率は60%以上と
なる。体積結晶化分率が60%以下であると、アモルフ
ァス成分の増加に伴い光電変換装置の短絡電流密度の低
下が顕著になり、また光劣化の問題も生じてくる。
【0022】導電型決定不純物原子濃度が1×1016
/cm3以下であると、前記残留不純物原子の影響によ
り、導入した導電型決定不純物原子によるキャリア生成
が有効に行われず、所望のキャリア濃度を得にくい。ま
た、導電型決定不純物原子濃度が1×1018個/cm3
以上であると、この導電型決定不純物原子による欠陥に
よりSi膜の品質が低下し、高い変換効率が得られにく
い。この導電型決定不純物原子としては、B、Pが比較
的安価なガスを用いることができ、且つ扱いやすいこと
から望ましい。
【0023】また膜厚が0.5μm以下であると、充分
な光電流が取り出せず、高い変換効率が得られにくい。
一方、デバイスグレードの膜品質が維持できる現状で得
られている最大の成膜速度は240nm/分程度であ
り、20μmの膜厚を形成するには約83分かかること
になる。さらなる高成膜速度化が進むとしても20μm
が実質的に生産可能なレベルである。
【0024】次に、前記光電変換層4上にp+型Si層
3とは反対の導電型(すなわちn型)の非晶質、多結晶
もしくは微結晶を含むSi層5を、プラズマCVD法ま
たは触媒CVD法等によって厚さ1μm以下に形成す
る。n型不純物原子としてリン等を1×1018個/cm
3〜1×1022個/cm3程度に高濃度にドープする。
【0025】次に、前記n型Si層5上に、ITO、S
nO2、ZnO等の透明導電膜6をスパッタリング法や
MOCVD法等の真空成膜法を用いて60〜100nm
程度の膜厚で形成する。
【0026】さらに、前記透明導電膜6上に、Ag、T
i、Cu等から成る櫛形状の表金属集電極7を蒸着法や
プリント及び焼成技術等によって、厚さ1μm以上に形
成する。以上によって、薄膜多結晶シリコン光電変換装
置が得られる。
【0027】
【実施例】以下において、本発明の幾つかの実施例によ
る光電変換装置である薄膜多結晶シリコン太陽電池と比
較例について説明する。 (実施例1)光電変換層であるSi層は40MHzの高
周波電源を用いた平行平板型プラズマCVD法により形
成した。この成膜室はターボ分子ポンプによって排気を
行い、圧力調整バルブにより所望の成膜圧力に制御す
る。成膜前の背圧は3×10-7torr、成膜時の圧力
は1.5torrとした。成膜時の反応ガスとしてモノ
シランガス、水素ガス及びジボランガスを用い、各々の
流量は5sccm、100sccm、0.2sccmと
した。また放電パワーは25W、成膜温度は200℃と
した。膜厚は1.5μmで、成膜速度が18nm/分で
あるため、成膜時間は約83分である。
【0028】このSi薄膜のスピン密度を電子スピン共
鳴法により求めたところ、4×10 16個/cm3であっ
た。また、不純物原子濃度を二次イオン質量分析法によ
り分析した結果を図2に示す(表面及び裏面の領域を除
く図中の両端矢印で示した範囲が光電変換層である)。
酸素原子濃度は1×1019個/cm3、炭素原子濃度は
2×1018個/cm3、窒素原子濃度は3×1017個/
cm3であった。体積結晶化分率は分光エリプソメータ
ーによるフィッティングにより算出し93.2%であっ
た。
【0029】この薄膜多結晶Si太陽電池に入射光とし
てAM1.5、100mW/cm2を用いたときの出力特
性は開放端電圧0.441V、短絡電流密度19.1mA
/cm2、曲線因子0.606、変換効率5.1%であっ
た。 (実施例2〜12)光電変換層であるSi層の成膜条件
を様々に変化させて、実施例1と同様に薄膜多結晶Si
太陽電池を形成した。このSi薄膜のスピン密度、不純
物原子濃度、体積結晶化分率、膜厚及び変換効率を表
1、2に示した。
【0030】尚、導電型決定不純物原子として、実施例
2〜8についてはボロンを、実施例9〜12については
リンを用いた。 (比較例1)成膜圧力を0.5torrとし、その他の
成膜条件は実施例1と同様である。 (比較例2)排気はターボ分子ポンプを作動させず油回
転ポンプのみによって行い、圧力調整バルブにより所望
の成膜圧力に制御する。成膜前の背圧は1.5×10-2
torrで、その他の成膜条件は実施例1と同様であ
る。 (比較例3、4)ボロンドーピング濃度を5×1015
/cm3及び2×1018個/cm3とし、その他の成膜条
件は実施例1と同様である。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】これらの実施例および比較例より、光電変
換層たるSi層のスピン密度が1×1018個/cm3
下であり、且つ酸素原子の平均濃度が1×1020個/c
3以下であって、さらに導電型決定不純物原子の平均
濃度が1ラ1016個/cm3〜1ラ1018個/cm3の範囲
内であれば、高い変換効率が得られることが明らかとな
った。また体積結晶化分率は60%以上、膜厚について
は0.5μm以上、膜中の炭素原子濃度、窒素原子濃度
についてはそれぞれ1×1019個/cm3以下が望まし
いことが分かる。
【0034】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、電子ス
ピン共鳴法で分析したスピン密度が1×1018個/cm
3以下であり、且つ酸素原子の平均濃度が1×1020
/cm3以下である結晶質を含むシリコン薄膜を光電変
換層に用いた光電変換装置において、前記シリコン薄膜
中の導電型決定不純物原子の平均濃度を1ラ1016個/
cm3〜1ラ1018個/cm3としたことから、プラズマ
CVD法等によって成膜された光電変換層たる多結晶シ
リコン薄膜を高品質化でき、薄膜多結晶シリコン光電変
換装置の高性能化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電変換装置の構造の一態様を示す図
である。
【図2】実施例1におけるシリコン膜中の不純物原子濃
度の深さ方向プロファイルを示す図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板 2 裏電極 3 p+型Si層 4 光電変換層 5 n型Si層 6 透明導電膜 7 表金属集電極
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年10月23日(2000.10.
23)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 光電変換装置
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光電変換装置に関
し、特に薄膜多結晶シリコンを光電変換層に用いた太陽
電池に代表される光電変換装置に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】薄膜多結晶シリコンを用いた光
電変換装置を低コストで製造するには、多結晶シリコン
薄膜をガラス基板等の低コスト基板上に600℃程度以
下の比較的低温度下で形成する必要がある。この製膜方
法としては、従来より、プラズマCVD法や触媒CVD
法が精力的に研究されている。
【0003】これらの手法で形成されたシリコン薄膜中
のスピン密度や残留不純物原子濃度については、しばし
ば議論の対象となっている。ここでいう残留不純物原子
とは、リンやボロンといった導電型決定不純物原子では
なく、シリコン薄膜の製膜中に様々な要因からシリコン
薄膜中に取り込まれる酸素、炭素等の原子のことであ
る。一般に光電変換装置のようなデバイスに適用し得る
シリコン薄膜の場合、スピン密度及び残留不純物原子濃
度は極力少ない方がよいと考えられている。
【0004】スピン密度に関しては、例えば特開平4−
188879号に、非晶質シリコン薄膜中のスピン密度
を5×1017個/cm3以下にする内容が記載されてい
るが、結晶質を含むシリコン薄膜に関するものではな
い。
【0005】残留不純物原子に関しては、例えば特開2
000−58889号に、プラズマCVD法で堆積した
シリコン系薄膜の酸素原子濃度を1×1019個/cm3
〜1×1020個/cm3にする内容が記載されている
が、これは酸素原子が熱的に活性化してn型シリコン系
薄膜のキャリア濃度が増加する効果を狙ったものである
が、キャリア濃度は1015/cm3オーダー以下であ
り、充分なキャリア濃度とはなっておらず、またpn制
御、再現性等、キャリア濃度の制御は実質的に不可能で
あった。
【0006】また、上述の特開2000−58889号
のように、薄膜多結晶シリコンを用いた光電変換装置で
は、光電変換層に導電型決定不純物原子を導入しない真
性型シリコンを用いたpin型、もしくはnip型が主
流であり、光電変換層中の導電型決定不純物原子濃度に
ついては、前記スピン密度や残留不純物原子濃度と密接
な関係があることからも、導電型決定不純物原子濃度を
どの範囲にすれば最適なキャリア濃度が得られるかにつ
いては、経験的にも明らかにされてはいなかった。
【0007】本発明はこのような従来技術の課題に鑑み
てなされたものであり、プラズマCVD法等で形成する
光電変換層たるシリコン薄膜におけるスピン密度と不純
物原子濃度を制御することでこれを高品質化し、光電変
換装置の性能を改善することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る光電変換装置では、電子スピン共鳴
法で分析したスピン密度が1×1018個/cm3以下で
あり、且つ酸素原子の平均濃度が1×1020個/cm3
以下である結晶質を含むシリコン薄膜を光電変換層に用
いた光電変換装置において、前記シリコン薄膜中の導電
型決定不純物原子の平均濃度を1×1016個/cm3
1×1018個/cm3としたシリコン薄膜を光電変換層
に用いる。
【0009】上記光電変換装置では、前記導電型決定不
純物原子がボロン又はリンのうちの少なくとも1種を含
むことが望ましい。
【0010】また、上記光電変換装置では、前記シリコ
ン薄膜が体積結晶化分率60%以上の結晶質を含むこと
が望ましい。
【0011】また、上記光電変換装置では、前記シリコ
ン薄膜の膜厚が0.5〜20μmであることが望まし
い。
【0012】また、上記光電変換装置では、前記シリコ
ン薄膜中の炭素原子の平均濃度が1×1019個/cm3
以下であることが望ましい。
【0013】また、上記光電変換装置では、前記シリコ
ン薄膜中の窒素原子の平均濃度が1×1019個/cm3
以下であることが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、請求項1に係る光電変換装
置の実施形態を図1に基づいて説明する。ここでは、光
入射面側にn型層を形成した場合について説明するが、
光入射面側にp型層を形成した場合は、文中の導電型を
逆に読み替えればよい。
【0015】まず、ガラス、SUS等の低コスト基板1
上にTi、Ni、W、Mo、Cu、Ag、またはAlの
うち、少なくとも1種からなる金属、またはその窒化
膜、あるいはそのシリサイド膜で形成される薄膜層から
成る裏電極2を電子ビーム蒸着法、スパッタリング法等
の真空成膜法によりシート抵抗が1Ω/□以下となるよ
うに適当な膜厚に堆積する。具体的には、Ti膜を0.
1μm成膜し、この上にAg膜を1μm成膜し、さらに
Ti膜を0.1μm成膜するとシート抵抗0.1Ω/□
以下が実現される。なお、前記Ti及びAg膜は以下の
工程で問題のない限り他の金属等に置き換えても良い。
【0016】次に、前記裏電極2上にBSF層となるp
+型Si層3を形成する。具体的には前記裏電極2上
に、プラズマCVD法または触媒CVD法等により、ボ
ロン、アルミニウム等のp型不純物原子が1×1018
/cm3〜1×1022個/cm3程度含まれた多結晶Si
層を1μm程度以下の膜厚に成膜し、高BSF機能を有
する下地層とする。
【0017】次に、前記p+型Si層3上に、同層と同
一導電型(すなわちp型)の本発明の光電変換層となる
結晶質を含むSi層4をプラズマCVD法または触媒C
VD法等によって厚さ0.3〜30μm程度に形成す
る。具体的には、例えば40MHzの高周波電源を用い
た平行平板型プラズマCVD法により形成することがで
きる。
【0018】成膜時の反応ガスとしてはシラン系ガス、
水素ガス及びドーピングガスを用いる。シラン系ガスと
してはモノシランガス、ジシランガス等に加え、ジクロ
ロシランガス等のハロゲン化ケイ素系ガス等を用いても
良い。シラン系ガスに対する水素ガスの流量は10倍以
上であることが好ましい。ドーピングガスとしてはp型
Si膜を形成する場合はジボランガス等を、n型Si膜
を形成する場合はホスフィンガス等を用いる。このとき
のシラン系ガスに対するドーピングガスの流量は、Si
膜のドーピング(導電型決定不純物)原子濃度が1×1
15個/cm3〜1×1018個/cm3程度になるよう調
節する。流量で調整しきれない場合は、水素等の希釈ガ
スで適当な濃度に希釈したドーピングガスを用いる。本
実施例においては、反応ガスとして、モノシランガス、
水素ガス、ジボランガスを用い、各ガスの流量はモノシ
ランガス1〜20sccm、水素ガス100〜1000
sccm、ジボランガス(水素により100ppmに希
釈)0.02〜1sccmとする。成膜時の圧力として
は0.5〜5torr、成膜温度は100〜400℃、
放電パワーは例えば15〜100Wなどである。
【0019】上述の条件において石英基板上に形成され
るSi膜のスピン密度を電子スピン共鳴法により求める
と1×1018個/cm3以下となる。スピン密度が1×
101 8個/cm3以上となると、膜中欠陥の増加により
キャリアの再結合が顕著になり、光電変換装置の変換効
率が低下する。一方、スピン密度を測定する場合には石
英基板もしくは高品質の単結晶Si基板上にSi膜を形
成することが好ましい。特にSi膜の膜厚が薄い場合及
びスピン密度が小さい場合は、基板の信号(バックグラ
ウンド)を極力低減して測定することが必要である。
【0020】また、このSi膜中の残留不純物原子濃度
を二次イオン質量分析法により求めると、酸素原子の平
均濃度が1×1020個/cm3以下、炭素原子の平均濃
度が1×1019個/cm3以下、窒素原子の平均濃度が
1×1019個/cm3以下となる。デバイスグレードの
膜品質を維持するためには、残留不純物原子濃度には上
限があり、酸素濃度については1×1020個/cm3
炭素濃度については1×1019個/cm3、窒素濃度に
ついては1×1019個/cm3とすることが望ましい。
【0021】さらに分光エリプソメーターによるフィッ
ティングにより算出した体積結晶化分率は60%以上と
なる。体積結晶化分率が60%以下であると、アモルフ
ァス成分の増加に伴い光電変換装置の短絡電流密度の低
下が顕著になり、また光劣化の問題も生じてくる。
【0022】導電型決定不純物原子濃度が1×1016
/cm3以下であると、前記残留不純物原子の影響によ
り、導入した導電型決定不純物原子によるキャリア生成
が有効に行われず、所望のキャリア濃度を得にくい。ま
た、導電型決定不純物原子濃度が1×1018個/cm3
以上であると、この導電型決定不純物原子による欠陥に
よりSi膜の品質が低下し、高い変換効率が得られにく
い。この導電型決定不純物原子としては、B、Pが比較
的安価なガスを用いることができ、且つ扱いやすいこと
から望ましい。
【0023】また膜厚が0.5μm以下であると、充分
な光電流が取り出せず、高い変換効率が得られにくい。
一方、デバイスグレードの膜品質が維持できる現状で得
られている最大の成膜速度は240nm/分程度であ
り、20μmの膜厚を形成するには約83分かかること
になる。さらなる高成膜速度化が進むとしても20μm
が実質的に生産可能なレベルである。
【0024】次に、前記光電変換層4上にp+型Si層
3とは反対の導電型(すなわちn型)の非晶質、多結晶
もしくは微結晶を含むSi層5を、プラズマCVD法ま
たは触媒CVD法等によって厚さ1μm以下に形成す
る。n型不純物原子としてリン等を1×1018個/cm
3〜1×1022個/cm3程度に高濃度にドープする。
【0025】次に、前記n型Si層5上に、ITO、S
nO2、ZnO等の透明導電膜6をスパッタリング法や
MOCVD法等の真空成膜法を用いて60〜100nm
程度の膜厚で形成する。
【0026】さらに、前記透明導電膜6上に、Ag、T
i、Cu等から成る櫛形状の表金属集電極7を蒸着法や
プリント及び焼成技術等によって、厚さ1μm以上に形
成する。以上によって、薄膜多結晶シリコン光電変換装
置が得られる。
【0027】
【実施例】以下において、本発明の幾つかの実施例によ
る光電変換装置である薄膜多結晶シリコン太陽電池と比
較例について説明する。 (実施例1)光電変換層であるSi層は40MHzの高
周波電源を用いた平行平板型プラズマCVD法により形
成した。この成膜室はターボ分子ポンプによって排気を
行い、圧力調整バルブにより所望の成膜圧力に制御す
る。成膜前の背圧は3×10-7torr、成膜時の圧力
は1.5torrとした。成膜時の反応ガスとしてモノ
シランガス、水素ガス及びジボランガスを用い、各々の
流量は5sccm、100sccm、0.2sccmと
した。また放電パワーは25W、成膜温度は200℃と
した。膜厚は1.5μmで、成膜速度が18nm/分で
あるため、成膜時間は約83分である。
【0028】このSi薄膜のスピン密度を電子スピン共
鳴法により求めたところ、4×10 16個/cm3であっ
た。また、不純物原子濃度を二次イオン質量分析法によ
り分析した結果を図2に示す(表面及び裏面の領域を除
く図中の両端矢印で示した範囲が光電変換層である)。
酸素原子濃度は1×1019個/cm3、炭素原子濃度は
2×1018個/cm3、窒素原子濃度は3×1017個/
cm3であった。体積結晶化分率は分光エリプソメータ
ーによるフィッティングにより算出し93.2%であっ
た。
【0029】この薄膜多結晶Si太陽電池に入射光とし
てAM1.5、100mW/cm2を用いたときの出力特
性は開放端電圧0.441V、短絡電流密度19.1mA
/cm2、曲線因子0.606、変換効率5.1%であっ
た。 (実施例2〜12)光電変換層であるSi層の成膜条件
を様々に変化させて、実施例1と同様に薄膜多結晶Si
太陽電池を形成した。このSi薄膜のスピン密度、不純
物原子濃度、体積結晶化分率、膜厚及び変換効率を表
1、2に示した。
【0030】尚、導電型決定不純物原子として、実施例
2〜8についてはボロンを、実施例9〜12については
リンを用いた。 (比較例1)成膜圧力を0.5torrとし、その他の
成膜条件は実施例1と同様である。 (比較例2)排気はターボ分子ポンプを作動させず油回
転ポンプのみによって行い、圧力調整バルブにより所望
の成膜圧力に制御する。成膜前の背圧は1.5×10-2
torrで、その他の成膜条件は実施例1と同様であ
る。 (比較例3、4)ボロンドーピング濃度を5×1015
/cm3及び2×1018個/cm3とし、その他の成膜条
件は実施例1と同様である。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】これらの実施例および比較例より、光電変
換層たるSi層のスピン密度が1×1018個/cm3
下であり、且つ酸素原子の平均濃度が1×1020個/c
3以下であって、さらに導電型決定不純物原子の平均
濃度が1×1016個/cm3〜1×1018個/cm3の範
囲内であれば、高い変換効率が得られることが明らかと
なった。また体積結晶化分率は60%以上、膜厚につい
ては0.5μm以上、膜中の炭素原子濃度、窒素原子濃
度についてはそれぞれ1×1019個/cm3以下が望ま
しいことが分かる。
【0034】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、電子ス
ピン共鳴法で分析したスピン密度が1×1018個/cm
3以下であり、且つ酸素原子の平均濃度が1×1020
/cm3以下である結晶質を含むシリコン薄膜を光電変
換層に用いた光電変換装置において、前記シリコン薄膜
中の導電型決定不純物原子の平均濃度を1×1016個/
cm3〜1×1018個/cm3としたことから、プラズマ
CVD法等によって成膜された光電変換層たる多結晶シ
リコン薄膜を高品質化でき、薄膜多結晶シリコン光電変
換装置の高性能化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電変換装置の構造の一態様を示す図
である。
【図2】実施例1におけるシリコン膜中の不純物原子濃
度の深さ方向プロファイルを示す図である。
【符号の説明】 1 ガラス基板 2 裏電極 3 p+型Si層 4 光電変換層 5 n型Si層 6 透明導電膜 7 表金属集電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 千田 浩文 滋賀県八日市市蛇溝町長谷野1166番地の6 京セラ株式会社滋賀工場八日市ブロック 内 Fターム(参考) 4K030 AA06 AA17 AA20 BA29 BB03 JA01 LA16 5F045 AA08 AB03 AC01 AC05 AC19 AD05 AD06 AD07 AE19 AE21 AF07 BB12 BB16 CA13 DA59 EH13 5F051 AA03 AA04 AA16 CA16 CB12

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子スピン共鳴法で分析したスピン密度
    が1×1018個/cm 3以下であり、且つ酸素原子の平
    均濃度が1×1020個/cm3以下である結晶質を含む
    シリコン薄膜を光電変換層に用いた光電変換装置におい
    て、前記シリコン薄膜中の導電型決定不純物原子の平均
    濃度を1ラ1016個/cm3〜1ラ1018個/cm3とした
    ことを特徴とする光電変換装置。
  2. 【請求項2】 前記導電型決定不純物原子がボロン又は
    リンのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請
    求項1に記載の光電変換装置。
  3. 【請求項3】 前記シリコン薄膜が体積結晶化分率60
    %以上の結晶質を含むシリコン薄膜であることを特徴と
    する請求項1に記載の光電変換装置。
  4. 【請求項4】 前記シリコン薄膜の膜厚が0.5〜20
    μmであることを特徴とする請求項1に記載の光電変換
    装置。
  5. 【請求項5】 前記シリコン薄膜中の炭素原子の平均濃
    度が1×1019個/cm3以下であることを特徴とする
    請求項1に記載の光電変換装置。
  6. 【請求項6】 前記シリコン薄膜中の窒素原子の平均濃
    度が1×1019個/cm3以下であることを特徴とする
    請求項1に記載の光電変換装置。
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