JP2002047062A - 圧電磁器および圧電素子 - Google Patents

圧電磁器および圧電素子

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Abstract

(57)【要約】 【課題】Bi層状化合物からなる圧電磁器の焼結性を改
善し、機械的強度が高く、且つ、高いP/V値を有する
圧電磁器および圧電素子を提供する。 【解決手段】少なくとも、Sr、BiおよびTiを含む
Bi層状化合物を主結晶とする圧電磁器21であって、
MnをMnO2換算で、全量中0.05〜1重量%、C
uをCuO換算で全量中0.05〜1重量%含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧電磁器および圧
電素子に関し、特に、圧電共振子および圧電発振子に好
適に用いられる圧電磁器とそれを用いた圧電素子に関す
るものである
【0002】
【従来技術】近年、無線通信や電気回路に用いられる周
波数の高周波化が進んでおり、これに伴って、これらの
電気信号に対して用いられる共振子や発振子も高周波に
対応したものが要求され、開発が行われている。
【0003】圧電磁器を利用した製品としては、例え
ば、フィルタ、共振子、発振子、超音波振動子、超音波
モータ、圧電センサ等がある。
【0004】ここで、発振子は、マイコンの基準信号発
信用として、例えば、コルピッツ型発振回路等の発振回
路に組み込まれて利用されている。図1はコルピッツ型
発振回路を示すもので、このコルピッツ型発振回路はコ
ンデンサ1、3と抵抗5とインバータ7および発振子9
により構成されている。そして、コルピッツ型発振回路
において、発振信号を発生するには、以下の発振条件を
満足する必要がある。
【0005】インバータ7と抵抗5からなる増幅回路に
おける増幅率をα、位相量をθ1とし、また、発振子9
とコンデンサ1、3からなる帰還回路における帰還率を
β、位相量をθ2としたとき、ループゲインがα×β≧
1であり、かつ、位相量がθ1+θ2=360×n(但
し、n=1,2…)であることが必要となる。
【0006】一般に抵抗5およびインバータ7からなる
増幅回路はマイコンに内蔵されている。誤発信や不発振
を起こさない安定した発振を得るためにはループゲイン
を大きくしなければならない。ループゲインを大きくす
るには、帰還率βのゲインを決定する発振子のP/V、
すなわち、共振インピーダンスR0および反共振インピ
ーダンスRaの差を大きくすることが必要となる。な
お、P/Vは20Log(Ra/R0)の値として定義
される。
【0007】最近は、特に、高周波に対応できる厚み縦
振動モードや厚み滑り振動モードを利用した共振子や発
振子用の圧電材料の開発が進められており、このような
圧電共振子および発振子用材料の中で、鉛を含有せず、
キュリー点が450℃以上と高い、Sr、Bi、Tiを
含有するBi層状化合物からなる圧電磁器が注目され、
その難焼結性の解消並びに圧電特性の向上が図られてい
る。
【0008】このような圧電磁器としては、例えば、特
開平12−34194号公報に開示されるようなものが
知られている。この公報に開示された圧電磁器では、例
えば、予めフラックス法で合成したチタン酸ビスマス
(Bi4Ti312)やニオブ酸ビスマス(Bi5Nb3
15)のような板状粉末と、これらの板状粉末と反応し、
一般式が(Bi222+(Am-1m3m+12-で表され
るBi層状化合物になるような1〜6価の金属元素を炭
酸塩や水酸化物の形で混合した後、仮焼粉末を調製し、
そのスラリーを用いて、ドクターブレード法や圧延法に
より成形した圧電磁器シートを焼成することによって、
高密度、高配向性のBi層状化合物を形成し圧電特性を
高めている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】現在、発振子や共振子
に用いられている圧電磁器は電子機器の小型、高密度化
により、さらに薄層化が進んでおり、上記特開平12−
34194号公報に開示された圧電磁器では、長手方向
の長さが5μm以上の板状粉末を配向させ、それらの配
向性を承継して成長させた結晶組織を形成しているため
に、圧電磁器を薄層化した場合、圧電磁器の機械的強度
が低いという問題があった。
【0010】また、近年、粒子形状が板状形状を有する
ビスマス層状化合物の焼結性を向上させるため、ガラス
等からなる少量の添加物を添加する試みが成されてお
り、液相成分を加えることで圧電体として十分使用でき
る緻密体が得られてきている。しかしながら、焼結性を
向上させるために液相成分を添加するため、粒界部にガ
ラス成分が残存し、P/V値を著しく低下させる原因と
なっていた。また、添加量を極少量として液相成分を低
減し、P/V値を高めようとした場合、焼結性が十分改
善されないという問題があった。
【0011】従って、本発明は、Bi層状化合物からな
る圧電磁器の焼結性を改善し、機械的強度が高く、且
つ、高いP/V値を有する圧電磁器および圧電素子を提
供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の圧電磁器は、少
なくともSr、BiおよびTiを含むBi層状化合物を
主結晶相とする圧電磁器であって、MnをMnO2換算
で、全量中0.05〜1重量%、CuをCuO換算で、
全量中0.05〜1重量%含有することを特徴とするも
のである。
【0013】このような構成によれば、焼成温度を11
80℃以下に低くでき、圧電磁器の緻密化を図り、磁器
の機械的強度を高くし、高いP/V値を有する圧電磁器
を得ることができる。
【0014】本発明の圧電素子は、圧電体層の両面に電
極を有する圧電素子であって、前記圧電体層が上記圧電
磁器からなることを特徴とするものである。このような
構成によれば、圧電磁器の密度ならびに機械的強度が高
く、P/V値が高いために、小型、薄型で高特性の圧電
素子が得られる。
【0015】また、本発明の圧電素子は、厚み滑り基本
波振動モードで動作することを特徴とするものである。
高いP/V値を有する上記圧電磁器を用いて、小型で薄
型の圧電素子を形成することにより、厚み滑り基本波振
動モードにおいて安定した発振が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の圧電磁器は、少なくと
も、Sr、BiおよびTiを含むBi層状化合物を主結
晶相とする圧電磁器であって、MnをMnO2換算で、
全量中0.05〜1重量%、CuをCuO換算で、全量
中0.05〜1重量%含有することを特徴とするもので
ある。
【0017】即ち、Sr、BiおよびTiを含むBi層
状化合物を主結晶相とする圧電磁器の粒成長を抑制して
機械的強度を高め、さらに、緻密化し、圧電特性を向上
させるために、MnをMnO2換算で、全量中0.05
〜1重量%以下、CuをCuO換算で、全量中0.05
〜1重量%含有することが重要である。そして、圧電磁
器の密度、機械的強度および圧電特性を高める上で、特
に、MnをMnO2換算で0.1〜0.5重量%、Cu
をCuO換算で0.1〜0.5重量%の割合で含有する
ことが望ましい。
【0018】本発明の圧電磁器は、Mnを含有せしめる
ことにより、P/V値の向上に効果的であるが、Mnが
MnO2換算で全量中0.05重量%より少ない場合に
は、P/V値が低下し、一方、1重量%よりも多くなる
と、焼結体の体積固有抵抗が低下し、分極が困難となる
からである。
【0019】また、Cuの含有量が、CuO換算で全量
中0.05重量%未満であると、焼結性が充分改善され
ず、1重量%を超えると、焼結性が向上し、広い温度範
囲において緻密体が容易に得られるが、P/V値が低下
してしまう。
【0020】その他、P/V値の向上に対するMnの効
果は、Mnを導入することで、アクセプターとして磁器
中に酸素空孔を形成し、圧電磁器の硬度を高めるはたら
きがあること、そして、Cuは低温で液相を形成し、マ
トリクスへ固溶すると考えられる。
【0021】また、本発明の圧電磁器では、鉛を含まな
い圧電材料であるBi層状化合物SrBi4Ti415
おいて、P/V値を高めるという点から、Srサイト
に、Baなどのアルカリ土類金属元素や希土類元素を一
部置換して化合物を構成することができる。尚、希土類
元素としては、La、Ce、Sm、Dy、GdおよびP
rのうち少なくとも1種を用いることもできるが、特
に、Laが望ましい。
【0022】本発明の圧電磁器は、例えば、次のように
して製造することができる。まず、原料としてBi
23、SrCO3、MnO2、TiO2、CuOからなる
各種酸化物およびその塩を用いる。原料はこれに限定さ
れず、焼成により酸化物を生成する炭酸塩、硝酸塩等の
金属塩を用いても良い。
【0023】これらの原料を上記した組成となるように
秤量し、混合し、この混合物を850〜1000℃で仮
焼し、所定の有機バインダを加え乾式混合し造粒する。
このようにして得られた粉体を、公知のプレス成形等に
より所定形状に成形し、大気中等の酸化性雰囲気におい
て1050〜1180℃の温度範囲で2〜5時間焼成
し、本発明の圧電磁器を得ることができる。
【0024】上記の合成粉末の平均粒径は磁器の焼成温
度を低下し、粒子配向を抑制して、焼結性を高めるとい
う観点から、0.4〜1μmの範囲であることが望まし
い。なお、MnO2とCuOの各粉末は、所望の組成に
なるように予め合成した仮焼粉体に対して混合するだけ
でなく、炭酸塩、酢酸塩、または有機金属などの化合物
のいずれであっても、焼成などの熱処理プロセスによっ
て酸化物になるものであればよい。
【0025】また、Cu、Mnは主結晶相であるBi層
状化合物SrBi4Ti415に固溶するが、上記の含有
量が増加すると、それらの一部が、第2相を形成し、結
晶粒子の粒界部などに存在する場合があるものの、含有
量が本発明の範囲内であれば差し支えない。
【0026】また、その他の結晶相として、パイロクロ
ア相、ペロブスカイト相が存在することもあるが、微量
であれば特性上問題ない。
【0027】また、本発明の圧電磁器においては、原料
粉末などに微量含まれるRbやHfなどの不可避不純物
や混合粉砕に用いるZrO2ボールからの摩耗混入物、
および成形金型からの摩耗した金属粉が混入する場合が
あるが、特性に影響のない範囲であれば何ら差し支えな
い。
【0028】本発明の圧電磁器では、このようにBi層
状化合物SrBi4Ti415に対し、MnO2とCuO
を複合して添加することにより、焼成温度を、添加物を
添加しない場合の約1200℃から1050℃に低下で
き、粒子配向と粒成長を抑制し、圧電磁器の相対密度を
90%以上、特には、96%以上、機械的強度を230
MPa以上に高くできるとともに、P/V値を60dB
以上に向上できる圧電素子を形成することができる。
【0029】本発明の圧電素子は、圧電体層の両面に電
極を有する圧電素子であって、前記圧電体層が上記圧電
磁器からなることを特徴とするものである。
【0030】例えば、図2に示すように、圧電磁器21
の両主面に、電極23および電極25が形成されてお
り、電極23、25は圧電磁器21の主面に部分的に形
成されている。これにより、例えば、厚み滑り基本波振
動モードの場合において、優れたP/V特性を示す圧電
共振子を得ることができる。
【0031】このような構成によれば、圧電磁器の密度
ならびに機械的強度が高いために、小型で薄型の圧電素
子が形成でき、厚み滑り基本波振動モードで高いP/V
値が得られ安定な発振が得られる。
【0032】また、厚み滑り基本波振動モードの圧電素
子を形成するための圧電磁器の厚みは800μm以下が
望ましい。特に、2〜20MHzまでの高周波に対応す
る圧電素子として圧電磁器の厚みは100〜600μm
であることが好適である。
【0033】そして、圧電共振子の振動モードは厚み縦
振動モード、高調波モードなど採用できるが、特に、こ
のように薄層化した単板の圧電磁器の両面に電極を塗布
して圧電素子を形成することにより、振動モードが厚み
滑り基本波振動モードで動作する圧電共振子を形成する
ことができ、P/V値が大きく、小型で、周波数が例え
ば、2〜20MHzの高周波対応可能な圧電素子を形成
することができる。
【0034】本発明の圧電磁器は、コルピッツ型発振回
路の発振子の圧電磁器として最適であるが、それ以外の
発振子、超音波振動子、超音波モータ及び加速度セン
サ、ノッキングセンサ、AEセンサ等の圧電センサなど
に用いることができ、特に厚み滑り振動の基本波振動を
利用する高周波用として最適な圧電磁器である。
【0035】
【実施例】出発原料として、SrCO3、Bi23、T
iO2、MnO2およびCuO粉末をMnO2、CuOが
表1の量で、残部がSrBi4Ti415になるように混
合した後、この混合粉末を950℃、3時間仮焼し、仮
焼粉体を作製した。次に、この仮焼粉体をZrO2ボー
ルとイソプロピルアルコール(IPA)を用いて、20
時間粉砕して粉末を得た。
【0036】次に、この粉末に適量の有機バインダを添
加して造粒し、金型プレスを用いて150MPaで長さ
25mm、幅38mm、厚みl.0mmの板状に成形
し、大気中において温度1050〜1180℃で3時間
焼成し圧電磁器を得た。
【0037】その後、長さ6mm、幅30mm、厚み
0.17mmに加工し、長さ方向に分極するための端面
電極を形成し分極処理を施した。その後、分極用電極を
除去し、圧電磁器の両主面にAg−Crを蒸着し、25
0℃で12時間のアニール処理を施した。
【0038】その後、図2に示す電極構造となるよう
に、無電極に相当する部位の電極をエッチングで除去
し、長さ4.5mm(L)、幅0.9mm(W)、厚み
0.17mm(H)形状に加工し、8MHz発振に相当
する厚み滑り基本波振動用発振子を得た。
【0039】発振子の特性は、インピーダンスアナライ
ザによリインピーダンス波形を測定し、厚み滑り振動の
基本波振動でのP/Vを以下の式により算出した.ま
た、焼結体の相対密度は焼結体を粉砕してピクノメータ
法で理論密度を求め、各焼結体の嵩密度をアルキメデス
法で求め、以下の式にて相対密度を求めた。
【0040】 相対密度(%) = 焼結体嵩密度/理論密度×100 また、圧電磁器の結晶配向度は、同組成の多結晶粉末成
形体を基準として、X線回折パターンのC軸に対してロ
ットゲリング法を用いて求め、C軸配向度が25%以下
を望ましい状態とした。
【0041】また、圧電磁器の機械的強度はJIS規格
R1601の方法により、各組成の圧電磁器に対して、
n=10とし、室温にて3点曲げ強度を測定した。
【0042】これらの結果を表1に示す。8MHzでの
発振子特性において、安定した発振を保証するために
は、P/Vは基本波振動で60dB以上であることが望
まれる。
【0043】
【表1】
【0044】表1から明らかなように、本発明の範囲内
の試料No.3〜8、11〜16は、焼成温度1050
℃において、相対密度90%以上、機械的強度230P
a以上、厚み滑り振動の基本波振動のP/V値が60d
B以上と大きくできた。
【0045】一方、比較例であるMnO2添加量が0.
05重量%未満の場合の試料No.10では、P/V値
が40以下となり、あるいは、MnO2添加量が1.0
重量%より多い場合の試料No.17では分極できなか
った。
【0046】また、CuO添加量が0.05重量%未満
の試料No.1、2では、1050℃における焼結体の
相対密度が80%以下となり、著しい機械的強度の低下
が見られた。一方、CuO添加量が1.00重量%より
多い試料No.9では、相対密度は高いものの、過剰な
粒界析出相のため、P/V値が50dBまで低下した。
尚、本製法で作製した試料No.4のX線回折パターン
を図3に示す。SrBi4Ti415を主結晶相とする磁
器が形成されていることがわかる。また、磁器の配向度
はいずれも25%以下を示し、粒成長ならびにC軸配向
が抑制されていた。
【0047】
【発明の効果】上述した通り、本発明によれば、少なく
とも、Sr、BiおよびTiを含むBi層状化合物を主
結晶とする圧電磁器であって、MnをMnO2換算で、
全量中0.05〜1重量%、CuをCuO換算で、全量
中0.05〜1重量%含有することにより、低温焼成が
可能となり圧電磁器の緻密化を図ることができ、機械的
強度が高く、しかも高いP/V値を有する圧電磁器を得
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コルピッツ型発振回路を示した概略図である。
【図2】8MHz用発振子の概略図である。
【図3】本発明の圧電磁器のX線回折パターンである。
【符号の説明】
1、3 コンデンサ 5 抵抗 7 インバータ 9 発振子 21 圧電磁器 23、25 電極

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくともSr、BiおよびTiを含むB
    i層状化合物を主結晶相とする圧電磁器であって、Mn
    をMnO2換算で全量中0.05〜1重量%、CuをC
    uO換算で全量中0.05〜1重量%含有することを特
    徴とする圧電磁器。
  2. 【請求項2】圧電体層の両面に電極を有する圧電素子で
    あって、前記圧電体層が、請求項1記載の圧電磁器から
    なることを特徴とする圧電素子。
  3. 【請求項3】厚み滑り基本波振動モードで動作すること
    を特徴とする請求項2記載の圧電素子。
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