JP2002030446A - 成膜方法、成膜装置、磁気テープの製造方法及びその装置 - Google Patents

成膜方法、成膜装置、磁気テープの製造方法及びその装置

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JP2002030446A
JP2002030446A JP2000218020A JP2000218020A JP2002030446A JP 2002030446 A JP2002030446 A JP 2002030446A JP 2000218020 A JP2000218020 A JP 2000218020A JP 2000218020 A JP2000218020 A JP 2000218020A JP 2002030446 A JP2002030446 A JP 2002030446A
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Japan
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vacuum box
magnetic
ions
plasma
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English (en)
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Masahiko Sugiyama
正彦 杉山
Masaru Segawa
勝 瀬川
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Victor Company of Japan Ltd
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Victor Company of Japan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 連続して走行するフィルム状の基体の磁性膜
の表面に均質でSP3性が高く、膜中のH成分が少ない
DLC膜を高速に、しかも広範囲に成膜できる成膜方法
を提供する。 【解決手段】 真空ボックス22内に設置された複数の
アノード電極24によりサドルフィールド型の静電界を
発生させて、前記真空ボックス内に導入した反応ガスを
プラズマ化し、このプラズマ中のイオンを前記静電界に
より加速して、前記真空ボックスの少なくとも1面を構
成するグリット38に前記加速イオンを衝突させて電子
を発生させ、この発生した電子により前記加速イオンを
中和することにより形成された中性アトムビームMを基
体1上に放出して薄膜を成膜する。これにより、連続し
て走行するフィルム状の基体の磁性膜の表面に均質でS
P3性が高く、膜中のH成分が少ないDLC膜を高速
に、しかも広範囲に成膜できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、反応ガスをイオン
化した後に電子により中和して形成された中性アトムビ
ームにより薄膜を形成する方法及び装置に関し、特に、
高密度薄膜記録媒体の保護膜として最適なダイヤモンド
ライクカーボン膜(以下、DLC膜とも称す)を形成す
るのに適した方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】薄膜記録媒体として、例えば磁気テ−プ
の記録密度は近年急速に高密度化が図られている。この
過程で、磁気テ−プは高抗磁力、高磁束密度を有する酸
化鉄テープ、メタルテ−プ、及び薄膜テ−プへと高性能
なものに移行している。この磁気テ−プの応用として、
VTR分野では今後、デジタル化、高密度で高精細化を
達成するために、特に薄膜磁気テ−プが注目されてい
る。ここで、図6を参照して一般的な磁気テープの構造
について説明すると、この磁気テープはベースフィルム
としての非磁性材料よりなる基体(以下、非磁性基体と
も称す)1上に、磁性膜1A、保護膜としてのダイヤモ
ンドライクカーボン膜(DLC膜とも称す)1Bを順次
積層して構成される。そして、必要に応じて、上記DL
C膜1B上に潤滑膜1Cを形成し、また、非磁性基体1
の裏面側にバックコート層1Dを形成して構成されてい
る。
【0003】この薄膜磁気テ−プとしては磁性膜1Aが
斜方蒸着法により形成された、いわゆる蒸着テープが実
用化されている。これは、具体的には真空中でピアス型
電子銃を用いて、電子ビームをルツボ中のCo,CoN
iなどの磁性材料に照射して、これらの材料を溶融、蒸
発させ、酸素を導入しながら、PET(ポリエチレンテ
レフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレー
ト)、PI(ポリイミド)、PA(アラミド)、PC
(ポリカーボネート)などのベースフィルム(非磁性基
体)上にCoO、CoNiOよりなる磁性薄膜を形成す
ることにより製造される。磁性材料としては上記したも
の以外にはFe、Ni等の磁性金属やFeCo、CoN
i、FeCoNi、CoCr、FeCoCr、CoNi
Cr、FeCoNiCr、CoPt、FeCoB、Co
CrTa、CoCrTa、CoCrPt、CoCrTa
Pt等の合金、或いはこれらの酸化物等を用いることが
出来る。
【0004】次に、磁気テープの耐久性、耐蝕性を向上
させるために磁性膜1Aの上に保護膜1Bが形成され
る。この保護膜1Bとしてはダイヤモンドライクカーボ
ン膜(DLC膜)が多く利用されている。このDLC膜
1Bは硬度が大きく、摩擦係数が低いために、記録再生
時の磁気ヘッドとの摺動時における耐摩耗性に効果を発
揮する。また、上記DLC膜1Bは100オングストロ
ーム程度の薄い膜でも緻密であり、しかも磁性膜1Aの
表面にムラなく均一に成膜することができるため、磁気
記録媒体の出力低下の一原因となるスペーシングロスを
低減できる。また、この磁性膜単独では酸化しやすいた
め、上記DLC膜1Bにより磁性膜1Aの酸化を防止
し、耐蝕性を向上させることができる。更に、耐摩耗
性、耐蝕性はこのDLC膜1Bの上に形成するフッ素系
の潤滑膜1Cとの相互作用により更に向上させることが
できる。
【0005】上記DLC膜1Bを形成する方法としては
スパッタ法、CVD法などがいくつか提案されている。
例えばCVD法によりDLC膜1Bを形成する成膜法と
しては、特開昭60−147933号公報、特開昭60
−172342号公報等において開示されている。ここ
で開示されている成膜方法は、プラズマ管を用いた方法
であり、加速したイオンを含む炭化水素ガスを吹き付け
てDLC膜1Bを合成する方法である。図7にこの成膜
方法を実施する成膜装置の概略図を示す。まず、磁性膜
1Aが積層されたフィルム状の非磁性基体1は、真空引
き可能な真空槽2中の巻出しロール3より巻出され、ガ
イドロール4、冷却ロール5、ガイドロール14を経
て、巻取りロール6に巻き取られている。上記冷却ロー
ル5に対向して配置されるプラズマ管7は先端がノズル
状に絞られ、このノズル8が冷却ロール5に相対するよ
うに設置されている。このプラズマ管7の外周には励起
コイル9が巻き付けられる。上記プラズマ管7の内部に
はメッシュ状のアノード電極10が設置され、上記磁性
膜1Aとの間に電位差を生じる。上記磁性膜1Aは普通
は接地電位となっているが、シワ、カール、基板の熱損
傷を防止することを目的として冷却ロール5と磁性膜1
Aとの密着を高めるために、磁性膜1Aと冷却ロール5
との間に電位差を設定する場合がある。
【0006】上記プラズマ管7のガス導入部11より導
入された炭化水素ガス、及びこの炭化水素ガスに対して
必要に応じて添加されるアルゴンガスは、高周波電源1
2から整合器13を介して上記励起コイル9に印加され
た高周波電力によりプラズマ化される。このプラズマ中
のイオンは、アノード電極10と磁性膜1Aとの間の電
位差により磁性膜1Aの方向に加速され、この磁性膜1
Aには電流が生じる。また、上記プラズマは、プラズマ
管7と真空槽2との間の圧力差により加速されたイオン
と共に磁性膜1Aに吹き付けられ、これによって上記磁
性膜1A上に保護膜としてDLC膜1Bが合成される。
また、他のCDV法として、平板プラズマ電極を用いる
方法がある。図8に平板プラズマ電極を用いた成膜装置
の概略図を示す。まず、真空引き可能な真空槽2内に、
巻出しロール3、巻取りロール6、ガイドロール4、1
4及び冷却ロール5が配置されており、これらのロール
間に磁性膜1Aが形成されたフィルム状の非磁性基体1
が巻き回され、巻出しロール3から巻取りロール6に至
るまで図中矢印15の方向に走行する。上記冷却ロール
5の内部には、図示しない冷却装置が配置され、上記非
磁性基体1の磁性膜1A上へDLC膜1Bを形成する時
の温度上昇に起因するフィルム状の非磁性基体1の熱変
形等を防止している。
【0007】上記冷却ロール5に対向させて配置した平
板状のプラズマ発生用電極16はプラズマ用電源17に
接続されている。このプラズマ用電源17はDC、A
C、RF或いはそれらの重畳である。AC、RF電源を
プラズマ発生用電源17として用いる場合はこの電源1
7とプラズマ発生用電極16との間に整合器18を設置
する。そして、ガス導入口19より、メタン、アセチレ
ン、エチレン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭
化水素系(CH系)のガスを導入し、上記プラズマ発生
用電極16にDC又はACもしくはRF電圧を印加して
プラズマを形成し、導入ガスをプラズマのエネルギーに
より一度分解し、カーボンを非磁性基体1上の磁性膜1
A上で再結合させることによりDLC膜1Bを形成す
る。この際に、N2、H2などの添加ガスを導入して、D
LC膜1Bの膜質を改善する方法も考案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たように連続走行するフィルム状の非磁性基体1の磁性
膜1Aの表面にDLC膜1Bを形成する場合には、成膜
領域、成膜速度を高めて量産性を向上させようとすると
次のような問題点が発生した。まず、第1に、図7に示
すようにプラズマ管7を用いた方法では、プラズマ中の
イオン、中性アトムを効率よく磁性膜1Aに吹きつける
ためにプラズマ吹出部をノズル状に絞り、プラズマ管7
内と真空槽2内との間に圧力差を設けなければならな
い。このため、ノズル8の口径を大きくして成膜領域を
広げることにより量産に対応させることは極めて困難で
あった。また、成膜速度を高める(プラズマ密度を高め
る)と磁性膜付きの非磁性基体1のプラズマの熱が蓄積
されて熱損傷・熱変形を受けやすくなる。また、高速成
膜を行うためにプラズマ管7内のガス圧を高めると、ア
ノード電極10に印加したバイアス電圧により、いたる
ところで火花放電が発生しやすくなり、高速成膜を行な
うことが困難となる。また、図8に示す平板プラズマ発
生用電極16を用いた方法でも高速成膜を行なうために
平板プラズマ発生用電極16と磁性膜1Aとの間に高電
圧を印加すると火花放電が発生し、磁性膜1Aや非磁性
基体1が損傷してしまうので高速成膜を行なうことが困
難となる。
【0009】また、第2に、図7に示すプラズマ管7を
用いた方法、及び図8に示す平板プラズマ発生用電極1
6を用いた方法では、イオンを利用しているため、DL
C膜1Bの成膜時には磁性膜1Aに電流が生ずるが、量
産化に対応させるために成膜速度を高めようとすると
(DLC膜1Bを合成する場合において、成膜速度を高
めるにはプラズマ管7内の圧力及びアノード電極10と
磁性膜1Aとの間の電位差を大きくする)、磁性膜1A
に流れる電流が大きくなる。このように、大きな電流が
流れると抵抗に応じて発生するジュール熱が非常に大き
くなって、磁性膜1Aは発熱する。そして、成膜速度を
高めると磁性膜1Aの発熱量が過度に多くなり、磁性膜
1Aが変質、DLC膜1Bの剥がれ、時には非磁性基体
1や磁性膜1Aが熱損傷を受ける、といった問題点が生
じる。
【0010】更に、第3に、記録媒体の高密度化による
再生信号の出力低下を防ぐために、スペーシングロスと
なる保護膜の厚みは100オングストローム以下に薄く
する必要があるが、保護膜であるDLC膜1Bの厚みが
100オングストローム以下で良好な耐久性、耐蝕性を
得るには、より硬度の高い、ダイヤモンドに近いDLC
膜1Bを形成する必要がある。このためには、DLC膜
1Bのカーボン構造のSP3性を高くし、かつポリマー
化を防ぐためにDLC膜1B中のH(水素)成分を少な
くする必要がある。しかしながら、従来の成膜方法及び
成膜装置ではSP3性を高くしかつ、DLC膜1B中の
H成分を少なくすることが難しかった。尚、上記したS
P3性とは、ダイヤモンドのカーボン元素の結合状態で
あるSP3混成軌道の割合を表すものである。本発明
は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決す
べく創案されたものであり、その目的は連続して走行す
るフィルム状の非磁性基体の磁性膜の表面に均質でSP
3性が高く、膜中のH成分が少ないDLC膜を高速に、
しかも広範囲に成膜できる成膜方法、成膜装置、磁気テ
ープの製造方法及びその装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
真空ボックス内に設置された複数のアノード電極により
サドルフィールド型の静電界を発生させて、前記真空ボ
ックス内に導入した反応ガスをプラズマ化し、このプラ
ズマ中のイオンを前記静電界により加速して、前記真空
ボックスの少なくとも1面を構成するグリットに前記加
速イオンを衝突させて電子を発生させ、この発生した電
子により前記加速イオンを中和することにより形成され
た中性アトムビームを基体上に放出して薄膜を成膜する
ようにしたものである。
【0012】この場合、例えば請求項2に規定するよう
に、前記反応ガスは炭化水素ガスであり、前記薄膜はダ
イヤモンドライクカーボン膜である。請求項3は、上記
請求項1の発明において非磁性基体としてベースフィル
ムを用いたものであり、すなわち、ベースフィルム上に
磁性膜を膜付けし、前記磁性膜上にダイヤモンドライク
カーボン膜を成膜してなる磁気テープの製造方法におい
て、真空ボックス内に設置された複数のアノード電極に
よりサドルフィールド型の静電界を発生させて、前記真
空ボックス内に導入した反応ガスをプラズマ化し、この
プラズマ中のイオンを前記静電界により加速して、前記
真空ボックスの少なくとも1面を構成するグリットに前
記加速イオンを衝突させて電子を発生させ、この発生し
た電子により前記加速イオンを中和することにより形成
された中性アトムビームを前記ベースフィルム上に形成
された磁性膜上に放出してダイヤモンドライクカーボン
を成膜することを特徴とする磁気テープの製造方法であ
る。
【0013】請求項4に係る発明は、上記方法発明を実
施する装置発明であり、真空ボックスと、前記真空ボッ
クス内に反応ガスを導入する反応ガス導入手段と、前記
反応ガスをイオン化させるサドルフィールド型の静電界
を発生する複数のアノード電極と、前記イオンを加速す
る加速用電源と、前記加速されたイオンを中和させて中
性アトムビームを基体上に放出して薄膜を成膜するグリ
ットとよりなることを特徴とする成膜装置である。
【0014】この場合、例えば請求項5に規定するよう
に、前記反応ガスは炭化水素ガスであり、前記薄膜はダ
イヤモンドライクカーボン膜である。請求項6に係る発
明は、上記方法発明を実施する装置発明であり、ベース
フィルム上に形成されている磁性膜に、ダイヤモンドラ
イクカーボン膜を成膜してなる磁気テープの製造装置に
おいて、真空ボックス内に設置された複数のアノード電
極によりサドルフィールド型の静電界を発生させて、前
記真空ボックス内に導入した反応ガスをプラズマ化し、
このプラズマ中のイオンを前記静電界により加速して、
前記真空ボックスの少なくとも1面を構成するグリット
に前記加速イオンを衝突させて電子を発生させ、この発
生した電子により前記加速イオンを中和することにより
形成された中性アトムビームを前記ベースフィルム上に
形成された磁性膜上に放出してダイヤモンドライクカー
ボンを成膜することを特徴とする磁気テープの製造装置
である。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る成膜方法、
成膜装置、磁気テープの製造方法及びその装置の一実施
例を添付図面に基づいて詳述する。図1は本発明に係る
成膜装置を収容した真空槽を示す図、図2は本発明の成
膜装置を示す概略斜視図、図3は図2に示す装置の断面
図である。図中、図7に示す装置と同一構成部分につい
ては同一符号を付して説明する。また、ここでは非磁性
基体として、テープ状のベースフィルムを用いる場合を
例にとって説明するが、これに限定されることはなく、
非磁性基体としてディスク状の非磁性基体を用いる場合
にも適用できる。
【0016】図1に示すように、2は図示しない真空ポ
ンプにより真空引き可能になされた箱状の真空槽であ
る。この真空槽2内には、巻出しロール3と、ガイドロ
ール4と、冷却ロール5と、ガイドロール14と、巻取
りロール6とが設けられており、予め磁性膜1Aがその
表面に形成されているフィルム状の非磁性基体(ベース
フィルム)1(図6参照)が上記巻出しロール3に巻回
されて、上記したロールの順に連続して流れて行くよう
になっている。そして、図示しない冷却装置を内蔵する
上記冷却ロール5の下方に、本発明の成膜装置20が設
けられている。具体的には、図2及び図3にも示すよう
に、上記成膜装置20は、例えば直方体形状になされた
真空ボックス22を有しており、この真空ボックス22
内にはその長手方向に沿って2本のアノード電極24が
所定の間隔を隔てて設置されており、この2本のアノー
ド電極24は上記真空ボックス22の内壁に対して対称
に設置されている。また、真空ボックス22の内面に
は、全面に亘って内壁層26が形成されている。上記ア
ノード電極24の材料及び真空ボックス22の内壁層2
6の材料はプラズマによるスパッタを防止するために、
スパッタ効率が低い材料、例えばカーボンが用いられ
る。上記2本のアノード電極24にはリード30により
接続されたDC(直流)電源28(加速用電源)により
共に+電位が印加されており、これに対して真空ボック
ス22の内壁面及び内壁層26はグランド電位になされ
て、カソードとなる。従って、上記2本のアノード電極
24間には静電界32が発生することになる。この静電
界32は2本のアノード電極24の中間点にサドルポイ
ントP1が存在するサドルフィールド型である。
【0017】また、真空ボックス22の底部には、反応
ガスをこの真空ボックス22内に導入する反応ガス導入
手段としてのガス導入口34が設けられており、流量制
御された反応ガスを導入するようになっている。更に、
この真空ボックス22の天井部には、多数の断面円形の
通過孔36を有するグリット38が設けられており、後
述するようにこの通過孔36より中性アトムビームを放
出できるようになっている。このグリット38も内壁層
26と同様に−電圧(接地)が印加されている。このグ
リット38の材料は、スパッタ効率の低い材料、例えば
カーボンやタングステン等よりなり、また、通過孔36
の直径は例えば3〜10mm程度である。この通過孔3
6の形状は断面円形でなく、細長いスリット形状等に形
成してもよい。この真空ボックス22には、特に真空ポ
ンプ等は接続されておらず、上記真空槽2内を真空引き
することにより、この真空ボックス22内の雰囲気が上
記通過孔36を介して真空ボックス22内側へ排出され
て、従って、真空槽2内と真空ボックス22内とは上記
通過孔36を介して連通状態となっている。
【0018】次に、以上のように構成された成膜装置を
用いて行なわれる成膜方法について説明する。まず、真
空槽2内及び真空ボックス22内は、真空引きによりガ
ス導入口34より所定のガスを導入した際には共に、例
えば10-2〜1.0Pa程度の真空圧力に維持されてお
り、2本のアノード電極24には、加速用電源であるD
C電源28から+電圧が印加されている。これにより、
両アノード電極24間にサドルポイントP1が存在する
サドルフィールド型の静電界32が発生することにな
る。そして、カーボン製のカソードである内壁層26か
ら放出された電子e1は上記サドルポイントP1を通っ
て振動し、アノード電極24に捕獲されるまで長い軌道
を運動する。この時の軌道は2本のアノード電極24を
含む平面に垂直な面内にあり、電子密度が高い。
【0019】一方、ガス導入口34より真空ボックス2
2内に導入された反応ガスが電子e1と衝突するとイオ
ン化され、イオン化したプラスのガスM+はカソードで
ある内壁層26やグリット38に向かって加速度運動
し、出口があるとそこから放出される。ここで前述のよ
うに、真空ボックス22の天井部にはカーボン製のグリ
ット38が設置されており、イオン化ガスM+の一部は
カーボン製のグリット38に衝突し、2次電子e2が放
出する。この2次電子e2がイオン化ガスM+と結合
し、グリット38の通過孔36から放出されるガスは中
性アトムビームMとなる。そして、この中性アトムビー
ムMがフィルム状の非磁性基体1の磁性膜1Aの表面に
到達してここに薄膜、すなわちDLC膜1Bが形成され
ることになる。これにより磁気テープ等が製造される。
この場合、この中性アトムビームMは電気的に中性であ
るため、磁性膜1Aに電流が流れることはなく、ジュー
ル熱により磁性膜1Aが発熱することもなく、磁性膜1
Aの変質、DLC膜1Bの剥がれ、非磁性基体(ベース
フィルム)1及び磁性膜1Aの熱損傷が発生する、とい
った問題点もない。このため、成膜速度を高めることが
できる。ここで、DLC膜1Bを形成するには、反応ガ
スとしては、炭化水素系ガス(CH系ガス)として、メ
タン、エタン等の飽和炭化水素、アセチレン、エチレ
ン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不飽和炭化水
素、芳香族炭化水素などを用いることができる。
【0020】次に、本発明の評価を行なうために、実施
例1から3、及び比較例1、2として具体的にDLC膜
1Bを成膜したので、その評価結果について説明する。 <実施例1>図1に示す装置を用いて、反応ガスとして
エチレンガスを真空ボックス22内に導入し、6.4μ
m厚のPETフィルムの非磁性基体1上に、予め0.2
μm厚のCoO磁性膜1Aを形成したフイルムを走行さ
せて、DLC膜1Bを磁性膜1A上に形成した。この時
の真空槽2内の圧力は5.3×10-4Torr(7.1
×10-2Pa)、加速用電源28の放電電圧は2KV、
放電電流は1Aである。 <実施例2>図1に示す装置を用いて、反応ガスとして
エチレンガスを真空ボックス22内に導入し、6.4μ
m厚のPETフィルムの非磁性基体1上に、予め0.2
μm厚のCoO磁性膜1Aを形成したフイルムを走行さ
せて、DLC膜1Bを磁性膜1A上に形成した。この時
の真空槽2内の圧力は3.1×10-3Torr(4.1
×10-1Pa)、加速用電源28の放電電圧は0.8K
V、放電電流は1Aである。 <実施例3>図1に示す装置を用いて、反応ガスとして
エチレンガスとArガスを真空ボックス22内に導入し
て、実施例1で用いたフィルムと同じフィルムの磁性膜
1A上にDLC膜1Bを形成した。ここで、エチレンガ
スとArガスの比は10:1である。この時の真空槽2
内の圧力は4.8×10-3Torr(6.4×10-1
a)、加速用電源28の放電電圧は0.7KV、放電電
流は1Aである。
【0021】<比較例1>図7に示すCVD装置によ
り、反応ガスとしてエチレンガスを導入しDLC膜1B
の形成のために、予め非磁性基体の表面に0.2μm厚
さのCoO磁性膜を形成した上に、DLC膜1Bを形成
した。 <比較例2>図8に示すCVD装置により、反応ガスを
加えてDLC膜1Bを形成した。プラズマ発生用電極1
6にAC(交流)電源を接続し、反応ガスとしてエチレ
ンガスを真空槽2内に導入し、ガス圧を5.0×10-3
Torr(6.7×10-1Pa)としてDLC膜1Bの
形成のために、予め6.4μm厚のPETフィルム上
に、0.2μm厚のCoO磁性膜1Aを形成した上にD
LC膜1Bを形成した。以上のように作成した各DLC
膜1Bをラマン分析により評価した結果を表1にしめ
す。
【0022】
【表1】
【0023】ここでDLC膜1BはSP3構造とSP2
構造から成る。この際、SP3構造とは前述したよう
に、ダイヤモンドのカーボン元素の結合状態であるSP
3混成軌道により結合した構造であり、一方、SP2構
造とはグラファイトのカーボン元素の結合状態であるS
P2混成軌道により結合した構造である。図4にDLC
膜1Bのバックグラウンド補正後のラマンスペクトルを
示す。ここで横軸は波数を示し、縦軸はラマン分光強度
に相当した任意の数値を示している。このスペクトル5
0は1540cm-1付近に主ピークを持ち、1390c
-1付近にショルダーバンドを有する非対称なラマンバ
ンドが観測される。これらのラマンバンドはSP2カー
ボンによるラマンバンドであるが、これらのラマンバン
ドの相対強度はDLC膜のSP3性と密接な関係があ
る。そこで、構造比較のためスペクトルをベースライン
補正し、2成分のガウス関数を用いてフィッティングを
行い、高波数バンド50Aと低波数バンド50Bに分離
し、高波数バンドの面積Gに対する低波数バンドの面積
Dの相対強度:D/Gにより評価した。D/Gが小さい
ほど、膜中のSP3性は高く、硬度が高くなり、ダイヤ
モンドに近い。
【0024】図5にバックグラウンド補正前のDLCラ
マンスペクトルを示す。DLC膜1B中にH(水素)が
多く含まれると、ポリマー成分が多くなる。ポリマー成
分が多いDLC膜1Bは蛍光がバックグラウンドに現れ
る。膜中に含まれるポリマー成分を比較するために高波
数側のバンド強度Aに対する0点からの高さBの比B/
Aを用いた。このバンド強度Aは図5に示すように80
0cm-1と1900cm-1を直線で結んだ時の、この直
線からピークまでの高さである。この比B/Aが大きい
ほどDLC膜1B中に含まれるポリマー成分の割合が多
くなる。上記表1から明らかなように、本発明の実施例
1から3のDLC膜1Bは、比較例1及び2と比較して
D/G、B/A共に小さく、SP3性が強く、ポリマー
成分が少ない。これから、本発明方法で作られたDLC
膜は、硬度が高く、薄膜化した場合に、耐摩耗性、化学
的安定性に優れていることが判明した。
【0025】上記した実施例では、本発明に係る成膜装
置を用いて、フィルム状の非磁性基体1の磁性膜1A上
に保護膜としてDLC膜1Bを成膜した場合について説
明したが、これに限ることなく以下に述べるような成膜
も可能である。即ち、本発明に係る成膜装置を適用し
て、反応ガスとしてAlCl3 、O2 を用いることによ
り基体上にAl23 保護膜を成膜でき、また、反応ガ
スとしてB、N2 、H2 を用いることにより基体上にB
N保護膜を成膜でき、また、反応ガスとしてTiCl
4 、C22 、H2 、Arを用いることにより、基体上
にTiC保護膜を成膜でき、上記した各保護膜は硬度が
高く、耐摩耗性、化学的安定性、熱的安定性にも優れて
いる。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の成膜方
法、成膜装置によれば、各種の反応ガスを用いることに
より、 基体上に各種の反応ガスに対応した各種の保護
膜を成膜でき、ここで成膜した各種の保護膜は硬度が高
く、耐摩耗性、化学的安定性、熱的安定性にも優れてい
る。また、本発明の磁気テープの製造方法及びその装置
によれば、非磁性基体及びこの表面に形成されている磁
性膜に熱損傷等を発生させることなく、SP3性が高
く、ダイヤモンドライクカーボン膜中のH成分が少な
く、しかも硬度が高い薄膜を高速且つ広範囲に形成する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る成膜装置を収容した真空槽を示す
図である。
【図2】本発明の成膜装置を示す概略斜視図である。
【図3】図2に示す装置の断面図である。
【図4】DLC膜のバックグラウンド補正後のラマンス
ペクトルを示す図である。
【図5】バックグラウンド補正前のDLCラマンスペク
トルを示す図である。
【図6】一般的な磁気テープの構造を示す図である。
【図7】成膜方法を実施する成膜装置を示す概略図であ
る。
【図8】平板プラズマ電極を用いた成膜装置を示す概略
図である。
【符号の説明】
1…非磁性基体(ベースフィルム)、1A…磁性膜、1
B…ダイヤモンドライクカーボン膜(薄膜)、2…真空
槽、3…巻出しロール、6…巻取りロール、20…成膜
装置、22…真空ボックス、24…アノード電極、28
…DC電源(加速用電源)、34…ガス導入口(反応ガ
ス導入手段)、36…通過孔、38…グリット、M…中
性アトムビーム。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K030 AA09 BA28 CA07 CA12 FA01 JA14 KA15 KA30 KA32 LA20 5D112 AA07 AA22 BC05 FA03 FB08 FB18

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空ボックス内に設置された複数のアノ
    ード電極によりサドルフィールド型の静電界を発生させ
    て、前記真空ボックス内に導入した反応ガスをプラズマ
    化し、このプラズマ中のイオンを前記静電界により加速
    して、前記真空ボックスの少なくとも1面を構成するグ
    リットに前記加速イオンを衝突させて電子を発生させ、
    この発生した電子により前記加速イオンを中和すること
    により形成された中性アトムビームを基体上に放出して
    薄膜を成膜することを特徴とする成膜方法。
  2. 【請求項2】 前記反応ガスは炭化水素ガスであり、前
    記薄膜はダイヤモンドライクカーボン膜であることを特
    徴とする請求項1記載の成膜方法。
  3. 【請求項3】 ベースフィルム上に磁性膜を膜付けし、
    前記磁性膜上にダイヤモンドライクカーボン膜を成膜し
    てなる磁気テープの製造方法において、真空ボックス内
    に設置された複数のアノード電極によりサドルフィール
    ド型の静電界を発生させて、前記真空ボックス内に導入
    した反応ガスをプラズマ化し、このプラズマ中のイオン
    を前記静電界により加速して、前記真空ボックスの少な
    くとも1面を構成するグリットに前記加速イオンを衝突
    させて電子を発生させ、この発生した電子により前記加
    速イオンを中和することにより形成された中性アトムビ
    ームを前記ベースフィルム上に形成された磁性膜上に放
    出してダイヤモンドライクカーボンを成膜することを特
    徴とする磁気テープの製造方法。
  4. 【請求項4】 真空ボックスと、前記真空ボックス内に
    反応ガスを導入する反応ガス導入手段と、前記反応ガス
    をイオン化させるサドルフィールド型の静電界を発生す
    る複数のアノード電極と、前記イオンを加速する加速用
    電源と、前記加速されたイオンを中和させて中性アトム
    ビームを基体上に放出して薄膜を成膜するグリットとよ
    りなることを特徴とする成膜装置。
  5. 【請求項5】 前記反応ガスは炭化水素ガスであり、前
    記薄膜はダイヤモンドライクカーボン膜であることを特
    徴とする請求項3記載の成膜装置。
  6. 【請求項6】 ベースフィルム上に形成されている磁性
    膜に、ダイヤモンドライクカーボン膜を成膜してなる磁
    気テープの製造装置において、真空ボックス内に設置さ
    れた複数のアノード電極によりサドルフィールド型の静
    電界を発生させて、前記真空ボックス内に導入した反応
    ガスをプラズマ化し、このプラズマ中のイオンを前記静
    電界により加速して、前記真空ボックスの少なくとも1
    面を構成するグリットに前記加速イオンを衝突させて電
    子を発生させ、この発生した電子により前記加速イオン
    を中和することにより形成された中性アトムビームを前
    記ベースフィルム上に形成された磁性膜上に放出してダ
    イヤモンドライクカーボンを成膜することを特徴とする
    磁気テープの製造装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008051867A (ja) * 2006-08-22 2008-03-06 Fuji Xerox Co Ltd クリーニング方法、クリーニング装置及び画像形成装置
US10512149B2 (en) 2016-07-20 2019-12-17 Gigaphoton Inc. Extreme UV light generation device

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