JP2002029775A - 無アルカリガラス - Google Patents

無アルカリガラス

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章夫 小池
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Abstract

(57)【要約】 【課題】低比重、低膨張係数であり、かつ耐酸性に優れ
た無アルカリガラスを得る。 【解決手段】モル%表示で、SiO2:64〜74、A
23:5〜14、B2 3:5〜16、MgO:1〜1
6.5、CaO:0〜14、SrO:0〜6、BaO:
0〜2からなり、好ましくはMgO/(MgO+CaO
+SrO+BaO)が0.1以上である無アルカリガラ
ス。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶ディスプレイ
等のディスプレイ基板、フォトマスク用基板に好適な無
アルカリガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ディスプレイ基板、特にその表面
に金属または酸化物の薄膜が形成されるディスプレイ基
板に使用されるガラスには以下のような特性が求められ
ていた。 (1)アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないこと、
すなわち無アルカリガラスであること。ガラス基板中の
アルカリ金属イオンは前記薄膜中へ拡散し薄膜特性を劣
化させるので、これを防止するためである。 (2)歪点が高いこと。薄膜形成工程における加熱によ
るガラス基板の変形および/または熱収縮(ガラスの構
造安定化に伴なう収縮)を最小限に抑えるためである。
【0003】(3)ガラス基板上に形成されたSiOx
やSiNxのエッチングに用いられるバッファードフッ
酸(フッ酸とフッ化アンモニウムの混合液)に対する耐
久性(対BHF性)が高いこと。 (4)ガラス基板上に形成された金属電極またはITO
(スズがドープされたインジウム酸化物)のエッチング
に用いられる硝酸、硫酸、塩酸、等のエッチングに対す
る耐久性(耐酸性)が高いこと。 (5)アルカリ性のレジスト剥離液に対する充分な耐久
性。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年、さらに以下のよ
うな特性を満たすガラスが求められている。 (a)比重が小さいこと。ディスプレイ軽量化のためで
ある。 (b)膨張係数が小さいこと。ディスプレイ製造工程に
おける昇降温速度を大きくし、また耐熱衝撃性を向上さ
せるためである。 (c)耐酸性がより高いこと。
【0005】(d)ヤング率が高いこと。ガラス基板ま
たはガラス基板を切り出す前のガラス板の自重によるた
わみを小さくし、搬送する際等にガラス基板またはガラ
ス板を割れにくくするためである。 (e)失透しにくいこと。本発明は、(1)〜(5)、
および(a)〜(c)の特性を満たすことができる無ア
ルカリガラスの提供を第1の目的とする。本発明は、こ
れら特性に加えて(d)および(e)の特性も満たすこ
とができる無アルカリガラスの提供を第2の目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、実質的にモル
%表示で、 SiO2 64〜76%、 Al23 5〜14%、 B23 5〜16%、 MgO 1〜16.5%、 CaO 0〜14%、 SrO 0〜6%、 BaO 0〜2%、 からなる無アルカリガラスを提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の無アルカリガラス(以下
本発明のガラスという。)は実質的にアルカリ金属酸化
物を含有しない。アルカリ金属酸化物の含有量の合計は
好ましくは0.5モル%以下である。本発明のガラスの
比重は2.46以下であることが好ましい。2.46超
ではディスプレイの軽量化が困難になるおそれがある。
より好ましくは2.43以下、さらに好ましくは2.4
0以下、特に好ましくは2.39以下、最も好ましくは
2.38以下である。
【0008】本発明のガラスの50〜350℃における
平均線膨張係数αは34×10-7/℃以下であることが
好ましい。34×10-7/℃超では耐熱衝撃性が低下す
るおそれがある。より好ましくは32×10-7/℃以
下、特に好ましくは30×10 -7/℃以下、最も好まし
くは29×10-7/℃以下である。また、αは24×1
-7/℃以上であることが好ましい。24×10-7/℃
未満ではガラス基板上に形成されたSiOxやSiNx
の膨張マッチングが困難になるおそれがある。この観点
からは、より好ましくは26×10-7/℃以上、さらに
好ましくは27×10-7/℃以上、特に好ましくは28
×10-7/℃以上、最も好ましくは30×10-7/℃以
上である。以下では50〜350℃における平均線膨張
係数を単に膨張係数という。
【0009】本発明のガラスの歪点は650℃以上であ
ることが好ましい。より好ましくは660℃以上、さら
に好ましくは670℃以上、特に好ましくは675℃以
上、最も好ましくは680℃以上である。本発明のガラ
スのヤング率は64GPa以上であることが好ましい。
より好ましくは68GPa以上、さらに好ましくは72
GPa以上、特に好ましくは73GPa以上、最も好ま
しくは75GPa以上である。
【0010】本発明のガラスの比弾性率、すなわちヤン
グ率を密度で除した値は27MNm/kg以上であるこ
とが好ましい。27MNm/kg未満では、ガラス基板
またはガラス基板を切り出す前のガラス板の自重による
たわみが大きくなりすぎるおそれがある。より好ましく
は28MNm/kg以上、さらに好ましくは29MNm
/kg以上、特に好ましくは30MNm/kg以上、最
も好ましくは31MNm/kg以上である。
【0011】本発明のガラスの粘度が102ポアズとな
る温度T2は、1820℃以下であることが好ましい。
1820℃超ではガラス溶解が困難になるおそれがあ
る。より好ましくは1800℃以下、さらに好ましくは
1780℃以下、特に好ましくは1760℃以下、最も
好ましくは1750℃以下である。
【0012】本発明のガラスの粘度が104ポアズとな
る温度T4は、1380℃以下であることが好ましい。
1380℃超ではガラス成形が困難になるおそれがあ
る。より好ましくは1360℃以下、特に好ましくは1
350℃以下、最も好ましくは1340℃以下である。
【0013】本発明のガラスの液相温度における粘度η
Lは103.5ポアズ以上であることが好ましい。103.5
ポアズ未満ではガラス成形が困難になるおそれがある。
より好ましくは103.8ポアズ以上、特に好ましくは1
4ポアズ以上、最も好ましくは104.1ポアズ以上であ
る。
【0014】本発明のガラスを、濃度が0.1モル/リ
ットルである塩酸水溶液中に90℃で20時間浸漬した
とき、その表面に白濁、変色、クラック等が生じないこ
とが好ましい。また、ガラスの表面積と前記浸漬による
ガラスの質量変化とから求めたガラスの単位表面積当り
の質量減少ΔWが0.6mg/cm2以下であることが
好ましい。より好ましくは0.4mg/cm2以下、特
に好ましくは0.2mg/cm2以下、最も好ましくは
0.15mg/cm2以下である。
【0015】また、本発明のガラスを、質量百分率表示
濃度が40%であるフッ化アンモニウム水溶液と同表示
濃度が50%であるフッ酸水溶液とを体積比で9:1に
混合した液(以下バッファードフッ酸液という。)中に
25℃で20分間浸漬したとき、その表面が白濁しない
ことが好ましい。以下、このバッファードフッ酸液を用
いた評価を耐BHF性評価といい、前記表面が白濁しな
い場合を耐BHF性が良好であるという。また、ガラス
の表面積と前記浸漬によるガラスの質量変化とから求め
たガラスの単位面積当りの質量減少が0.6mg/cm
2以下であることが好ましい。
【0016】本発明の好ましい一態様として、実質的に
モル%表示で、 SiO2 64〜74%、 Al23 5〜14%、 B23 6〜10%、 MgO 3〜16.5%、 CaO 0〜5.4%、 SrO 0〜2%、 BaO 0〜2%、 からなり、MgO+CaO+SrO+BaOが5〜1
6.5%、MgO/(MgO+CaO)が0.4以上、
SrO+BaOが0〜2%、かつ比重が2.40以下で
ある無アルカリガラスが挙げられる。
【0017】本発明の好ましい他の態様として、実質的
にモル%表示で、 SiO2 66〜74%、 Al23 6〜13%、 B23 7〜11%、 MgO 1〜3%、 CaO 4〜8%、 SrO 0〜3%、 BaO 0〜2%、 からなり、MgO+CaO+SrO+BaOが11.5
%以下、MgO/(MgO+CaO)が0.2以上、比
重が2.40以下、かつヤング率が72GPa以上であ
る無アルカリガラスが挙げられる。
【0018】後述する切り粉の発生を抑制したい場合に
は、以下に挙げる態様A、態様Bまたは態様Cをとるこ
とが好ましい。すなわち、本発明の好ましい他の態様と
して、実質的にモル%表示で、 SiO2 68.5〜76%、 Al23 5〜12.5%、 B23 5〜16%、 MgO 1〜16.5%、 CaO 0.5〜14%、 SrO 0〜3%、 BaO 0〜1.5%、 からなり、MgO/(MgO+CaO+SrO+Ba
O)が0.15以上である無アルカリガラスが挙げられ
る(態様A)。態様Aは、切り粉をより発生しにくくし
たい場合に好適な態様である。
【0019】本発明の好ましい他の態様として、実質的
にモル%表示で、 SiO2 64〜76%、 Al23 5〜14%、 B23 5〜16%、 MgO 1〜16.5%、 CaO 0.5〜14%、 SrO 0〜6%、 BaO 0〜1.5%、 からなり、MgO/(MgO+CaO+SrO+Ba
O)が0.15以上、かつSiO2+B23が79%以
上である無アルカリガラスが挙げられる(態様B)。態
様Bは比重をより小さくし、かつ切り粉をより発生しに
くくしたい場合に好適な態様である。
【0020】本発明の好ましい他の態様として、実質的
にモル%表示で、 SiO2 64〜76%、 Al23 7.5〜14%、 B23 5〜16%、 MgO 1〜8%、 CaO 2〜10%、 SrO 0〜2.5%、 BaO 0〜0.5%、 からなり、MgO+CaO+SrO+BaOが11.5
%以下、SrO+BaOが0〜2.5モル%、かつSi
2+B23が80モル%以下である無アルカリガラス
が挙げられる(態様C)。本態様は比重をより小さく
し、かつ溶解性をより向上させたい場合に好適な態様で
ある。
【0021】ここで前記切り粉について説明する。液晶
ディスプレイ等に用いられるガラス基板はガラス板を所
望寸法に切断したものであって、該切断は通常次のよう
にして行われる。すなわち、ガラス板にホイールカッタ
等により条痕をつけ、該条痕に沿ってガラス板を折るよ
うな力を加える等の方法により前記条痕に沿って曲げ応
力を発生させてガラス板を切断する。切り粉とは、典型
的には、この切断時に発生するガラスの切り屑である
が、ガラス基板の搬送等ガラス基板取扱い時にもガラス
基板端面から発生する。
【0022】切り粉には、ガラス基板にキズをつける、
切り粉が付着したガラス基板を液晶ディスプレイ等の製
造工程に流すと不良品を発生させる、等の問題がある。
一方、ガラス基板に付着した切り粉をガラス基板の洗浄
等によって除去することは容易でなく、切り粉の発生の
抑制が望まれている。
【0023】本発明者は、アルカリ土類金属酸化物を含
有する無アルカリガラスにおいて、BaOの含有量が多
くなると切り粉が発生しやすくなり、またMgOの含有
量が多くなると切り粉が発生しにくくなることを見出し
た。これはガラスの網目構造の柔軟性に関係していると
考えられる。以上が切り粉に関する説明であるが、詳細
説明は以下の各成分の説明において適宜行う。
【0024】次に本発明のガラスの組成について、モル
%を単に%と表記して説明する。SiO2はネットワー
クフォーマであり、必須である。76%超ではガラスの
溶解性が低下し、また失透しやすくなる。好ましくは7
4%以下、より好ましくは72%以下、特に好ましくは
71%以下である。64%未満では比重増加、歪点低
下、膨張係数増加、耐酸性低下、耐アルカリ性低下、ま
たは耐BHF性低下が起る。好ましくは66%以上、よ
り好ましくは68%以上、さらに好ましくは68.5%
以上、特に好ましくは69%以上、最も好ましくは6
9.5%以上である。
【0025】Al23はガラスの分相を抑制し、また歪
点を高くする成分であり、必須である。14%超では失
透しやすくなり、また耐BHF性低下および/または耐
酸性低下が起る。好ましくは13%以下、より好ましく
は12.5%以下、特に好ましくは12%以下、最も好
ましくは11.5%以下である。5%未満ではガラスが
分相しやすくなる、または歪点が低下する。好ましくは
6%以上、より好ましくは7%以上、さらに好ましくは
7.5%以上、特に好ましくは8%以上、最も好ましく
は8.5%以上である。
【0026】SiO2とAl23の含有量の合計は76
%以上であることが好ましい。76%未満では歪点が低
下するおそれがある。より好ましくは77%以上、特に
好ましくは79%以上である。
【0027】B23は比重を小さくし、耐BHF性を高
くし、ガラスの溶解性を高くし、失透しにくくし、また
膨張係数を小さくする成分であり、必須である。16%
超では歪点が低下する、耐酸性が低下する、またはガラ
ス溶融時のB23の揮散に起因するガラスの不均質性が
顕著になる。好ましくは13%以下、より好ましくは1
2%以下、特に好ましくは11%以下、最も好ましくは
10%以下である。5%未満では比重増加、耐BHF性
低下、ガラスの溶解性低下または膨張係数増加が起こ
り、また失透しやすくなる。好ましくは6%以上、より
好ましくは6.5%以上、特に好ましくは7%以上、最
も好ましくは8%以上である。
【0028】SiO2とB23の含有量の合計SiO2
23は75%以上であることが好ましい。75%未満
では比重が大きくなりすぎるおそれがある、または膨張
係数が大きくなりすぎるおそれがある。より好ましくは
77%以上、特に好ましくは78%以上、最も好ましく
は79%以上である。
【0029】比重をより小さくしたい場合は、SiO2
+B23は78%以上であることが好ましく、より好ま
しくは79%以上である。ガラスの溶解性をより高くし
たい場合、SiO2+B23は82%以下であることが
好ましい。より好ましくは81%以下、特に好ましくは
80%以下、最も好ましくは79%以下である。
【0030】Al23の含有量をB23の含有量によっ
て除したAl23/B23は1.7以下であることが好
ましい。1.7超では耐BHF性が低下するおそれがあ
る。より好ましくは1.6以下、特に好ましくは1.5
以下である。また、Al23/B23は0.8以上であ
ることが好ましい。0.8未満では歪点が低下するおそ
れれがある。より好ましくは0.9以上、特に好ましく
は1.0以上である。
【0031】Al23とB23の含有量の合計をSiO
2の含有量によって除した(Al2 3+B23)/Si
2は0.32以下であることが好ましい。0.32超
では耐酸性が低下するおそれがある。より好ましくは
0.31以下、特に好ましくは0.30以下、最も好ま
しくは0.29以下である。
【0032】MgOは比重を小さくし、ガラスの溶解性
を高くし、また切り粉の発生を抑制する成分であり、必
須である。16.5%超ではガラスが分相しやすくな
る、失透しやすくなる、耐BHF性が低下する、または
耐酸性が低下する。好ましくは12%以下、より好まし
くは8%以下、特に好ましくは6%以下、最も好ましく
は4%以下である。より失透しにくくするためには、3
%以下とすることが好ましく、2%以下とすることがよ
り好ましい。1%未満では比重が大きくなりすぎる、ガ
ラスの溶解性が低下する、または切り粉が発生しやすく
なる。比重をより小さくしたい場合、ガラスの溶解性を
より向上させたい場合、切り粉の発生をより抑制したい
場合等においては、好ましくは1.5%以上、より好ま
しくは2%以上、特に好ましくは3%以上、最も好まし
くは3.2%以上である。
【0033】MgOの切り粉発生抑制効果については次
のように考えられる。すなわち、MgO等のアルカリ土
類金属酸化物はガラスの網目構造中に入り込み網目構造
中の空間を埋めるものと考えられるが、この空間がある
限度より少なくなってくると網目構造の柔軟性が低下し
網目が切れやすくなるものと考えられる。Mgはアルカ
リ土類金属の中で最もイオン半径が小さく(0.065
nm)、そのためにMgOの前記空間を埋める効果はア
ルカリ土類金属酸化物の中で最も小さい。その結果Mg
Oが切り粉発生抑制効果に優れるものと考えられる。ち
なみに、CaO、SrO、BaOのイオン半径はそれぞ
れ、0.099nm、0.113nm、0.135nm
である。
【0034】失透しにくくするためには、Al23の含
有量を13%以下、かつMgOの含有量を6%以下とす
ることが好ましい。Al23の含有量を13%以下、か
つMgOの含有量を3%以下とする、または、Al23
の含有量を12%以下、かつMgOの含有量を3%以下
とすることがより好ましい。
【0035】CaOは必須ではないが、比重を小さくす
るため、ガラスの溶解性を高くするため、または失透し
にくくするために14%まで含有してもよい。14%超
では、比重増加または膨張係数増加が起るおそれがあ
る、かえって失透しやすくなるおそれがある、または切
り粉が発生しやすくなるおそれがある。CaOは、好ま
しくは12%以下、より好ましくは10%以下、特に好
ましくは8%以下、最も好ましくは5.4%以下であ
る。CaOを含有する場合、その含有量は0.5%以上
であることが好ましい。より好ましくは1%以上、特に
好ましくは2%以上である。
【0036】MgOの含有量をMgOとCaOの含有量
の合計によって除したMgO/(MgO+CaO)は
0.2以上であることが好ましい。0.2未満では比重
増加または膨張係数増加が起るおそれがある。より好ま
しくは0.25以上、特に好ましくは0.4以上であ
る。
【0037】SrOは必須ではないが、ガラスの分相を
抑制し、また失透しにくくするために6%まで含有して
もよい。6%超では比重が大きくなりすぎる。好ましく
は3%以下、より好ましくは2.5%以下、特に好まし
くは2%以下である。SrOを含有する場合、その含有
量は0.5%以上であることが好ましい。より好ましく
は1%以上、特に好ましくは1.2%以上である。比重
をより小さくしたい場合はSrOを含有しないことが好
ましい。
【0038】切り粉発生抑制のためには、MgOの他に
CaOおよび/またはSrOを含有することが好まし
い。このようにイオン半径の異なるアルカリ土類金属の
酸化物を混在させることにより、ガラスの網目構造がよ
り柔軟になることが期待される。この場合、CaO/
(MgO+CaO+SrO)が0.3〜0.85である
こと、またはSrO/(MgO+CaO+SrO)が
0.55以下であることが好ましい。
【0039】BaOは必須ではないが、ガラスの分相を
抑制し、また失透しにくくするために2%まで含有して
もよい。2%超では比重が大きくなりすぎる、または切
り粉が発生しやすくなる。好ましくは1.5%以下、よ
り好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下で
ある。比重をより小さくしたい場合、または切り粉発生
を抑制したい場合はBaOを含有しないことが好まし
い。
【0040】SrOとBaOの含有量の合計SrO+B
aOは6%以下であることが好ましい。6%超では比重
が大きくなりすぎるおそれがある。より好ましくは2.
5%以下、特に好ましくは2%以下である。比重をより
小さくしたい場合、またはSiO2+B23が79%以
下の場合、SrO+BaOは好ましくは1.5%以下、
より好ましくは1%以下であり、SrOおよびBaOの
いずれも含有しないことが特に好ましい。なお、より失
透しにくくしたい場合には、SrO+BaOは0.5%
以上であることが好ましく、より好ましくは1%以上で
ある。
【0041】MgO、CaO、SrOおよびBaOの含
有量の合計MgO+CaO+SrO+BaOは16.5
%以下であることが好ましい。16.5%超では、比重
が大きくなりすぎるおそれがある、または膨張係数が大
きくなりすぎるおそれがある。より好ましくは14%以
下、さらに好ましくは13%以下、特に好ましくは1
1.5%以下、最も好ましくは10.5%以下である。
比重をより小さくしたい場合は、MgO+CaO+Sr
O+BaOは11.5%以下であることが好ましく、よ
り好ましくは10.5%以下である。
【0042】また、MgO+CaO+SrO+BaOは
5%以上であることが好ましい。5%未満では、ガラス
の溶解性が低下するおそれがある。より好ましくは6%
以上、特に好ましくは7%以上である。
【0043】Al23、MgO、CaO、SrOおよび
BaOの含有量の合計Al23+MgO+CaO+Sr
O+BaOは15%以上であることが好ましい。15%
未満ではヤング率が小さくなりすぎるおそれがある。よ
り好ましくは16%以上、特に好ましくは18%以上で
ある。
【0044】MgOの含有量をMgO、CaO、SrO
およびBaOの含有量の合計によって除したMgO/
(MgO+CaO+SrO+BaO)は0.1以上であ
ることが好ましい。0.1未満では比重が大きくなりす
ぎるおそれがある、または切り粉が発生しやすくなるお
それがある。より好ましくは0.15以上、さらに好ま
しくは0.2以上、特に好ましくは0.25以上、最も
好ましくは0.4以上である。
【0045】CaOの含有量をMgO、CaO、SrO
およびBaOの含有量の合計によって除したCaO/
(MgO+CaO+SrO+BaO)は0.85以下で
あることが好ましい。0.85超では切り粉が発生しや
すくなるおそれがある。より好ましくは0.8以下、特
に好ましくは0.65以下、最も好ましくは0.6以下
である。
【0046】本発明のガラスは実質的に上記成分からな
るが、その他の成分を本発明の目的を損なわない範囲で
含有してもよい。前記その他の成分の含有量の合計は1
0モル%以下であることが好ましい。より好ましくは5
%以下である。
【0047】前記その他成分として次のようなものが挙
げられる。すなわち、SO3、F、Cl、SnO2等を、
溶解性、清澄性、成形性を向上させるためにそれらの含
有量の合計が2モル%までの範囲で適宜含有してもよ
い。また、Fe23、ZrO 2、TiO2、Y23等を適
宜含有してもよい。
【0048】なお、As23、Sb23、PbO、Zn
OおよびP25は実質的に含有しないことが好ましい。
すなわち、これら5成分の含有量はそれぞれ0.1%以
下であることが好ましい。これら5成分の含有量の合計
は0.1%以下であることがより好ましい。
【0049】なお、ZnOについては、特にフロート法
による成形を行う場合は実質的に含有しないことが好ま
しいが、その他の成形法、たとえばダウンドロー法によ
る成形を行う場合には0.1%を超えて適宜含有しても
よい。特に、ヤング率を大きくしたい場合、または失透
しにくくしたい場合には、2%までの範囲で含有するこ
とが好ましい。2%超では比重が大きくなりすぎるおそ
れがある。
【0050】また、As23、Sb23、特にSb23
については、より清澄性を向上させたい場合には0.1
%を超えて適宜含有してもよい。
【0051】TiO2はフロート法による成形を行う場
合は実質的に含有しないことが好ましいが、その他の成
形法、たとえばダウンドロー法による成形を行う場合に
は0.1%を超えて適宜含有してもよい。特に、ヤング
率を大きくしたい場合、または失透しにくくしたい場合
には、2%までの範囲で含有することが好ましい。2%
超では比重が大きくなりすぎるおそれがある。
【0052】本発明のガラスを製造する方法は特に限定
されず、各種製造方法を採用できる。たとえば、目標組
成となるように通常使用される原料を調合し、これを溶
解炉中で1500〜1600℃または1600〜170
0℃に加熱して溶融する。バブリングや清澄剤の添加や
撹拌などによってガラスの均質化を行う。液晶ディスプ
レイ等のディスプレイ基板やフォトマスク用基板として
使用する場合は、周知のプレス法、ダウンドロー法、フ
ロート法などの方法により所定の板厚に成形し、徐冷
後、研削、研磨などの加工を行い、所定のサイズ、形状
の基板とする。
【0053】
【実施例】表1〜5のSiO2〜BaOの欄にモル%表
示で示した組成のガラス1〜45の比重d、膨張係数α
(単位:10-7/℃)および歪点(単位:℃)を計算に
よって求めた。また、ガラス1〜33については、粘度
が102ポアズとなる温度T2(単位:℃)および粘度が
104ポアズとなる温度T4(単位:℃)も計算によって
求めた。結果を同表に示す。なお、表のMgO/ROは
MgOの含有量をMgO、CaO、SrO、BaOの含
有量の合計で除した値を、ROはMgO、CaO、Sr
O、BaOの含有量の合計を、MgO/R’OはMgO
の含有量をMgOとCaOの含有量の合計で除した値
を、SrO+BaOはSrOとBaOの含有量の合計
を、SiO2+B23はSiO2とB23の含有量の合計
を、それぞれ示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】また、表6、7のSiO2〜BaOの欄に
モル%表示で示した組成となるように原料を調合し、白
金るつぼを用いて、ガラス46〜49については160
0℃で、ガラス50〜64については1650℃で溶解
した。この際白金スターラを用いて撹拌しガラスの均質
化を図った。次に溶融ガラスを流し出し板状に成形し、
徐冷した。ガラス64は比較例である。
【0060】得られたガラス46〜64について、比重
dをアルキメデス法により、膨張係数αを示差熱膨張計
(TMA)により、歪点をJIS R3103に規定さ
れている方法により、ヤング率E(単位:GPa)を超
音波パルス法により、それぞれ測定した。なお、表のE
/dは比弾性率(単位:MNm/kg)であり、比重d
がg/cm3を単位として表した密度の値に等しいとし
てヤング率Eと比重dから算出した。
【0061】また、ガラス48〜64については、粘度
が102ポアズとなる温度T2(単位:℃)および粘度が
104ポアズとなる温度T4(単位:℃)を回転粘度計を
用いて測定した。また、回転粘度計によって得られた温
度−粘度曲線と液相温度から、液相温度における粘度η
L(単位:ポアズ)を求めた。さらに耐BHF性評価も
行った。また、ガラス49、50、53〜64について
は前記ΔW(単位:mg/cm 2)を、ガラス46〜6
4について耐BHF性を測定した。
【0062】ガラス46〜50、53、54、56〜6
4については、次に述べる切り粉発生評価試験を行っ
た。すなわち、50mm×50mm×0.7mmの研磨
されたガラス板に刃先角度が125°、130°、13
5°の3種類のダイヤモンド製カッターホイール(三星
ダイヤモンド工業(株)製、商品名:ダイヤコンパクト
ホイールチップ)を用いて長さ50mmの条痕をつけた
(スクライブ)。該スクライブは、ガラススクライバ
(三星ダイヤモンド工業(株)製、型式:AMUM−1
−EE)を用いて、押込み量:100μm、荷重:2
3.5N、スクライブ速度:200mm/秒の条件で行
った。
【0063】前記各ガラスについて前記スクライブを各
カッタホイール毎に2回行った。そのうち1回について
はガラス板を折ることなく条痕を光学顕微鏡(倍率:5
0倍)で観察し、20μm以上のクラックまたは20μ
m以上の欠け落ちの有無を調べた。他の1回については
スクライブ後直ちにガラス板を折り、切断面を光学顕微
鏡(倍率:50倍)で観察し、20μm以上のクラック
または20μm以上の欠け落ちの有無を調べた。
【0064】表6、7に結果を示す。なお、耐BHF性
の欄における○は耐BHF性が良好であることを、切り
粉の欄における○は前記クラックまたは欠け落ちが認め
られなかったことを、×は少なくとも1ヶ所で前記クラ
ックまたは欠け落ちが認められたことをそれぞれ示す。
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
【発明の効果】本発明のガラスを用いることにより、低
比重のゆえに液晶ディスプレイ等のディスプレイを軽量
化でき、また低膨張係数のゆえにその製造効率を上げる
ことができる。さらに、ITO等のエッチングに用いら
れる塩酸等に対する耐久性に優れ、また、SiOxやS
iNxのエッチングに用いられるバッファードフッ酸に
対する耐久性に優れるディスプレイ基板を提供できる。
加えて、搬送時のガラス基板またはガラス板の割れの発
生頻度を減少させることができ、また失透しにくいガラ
スまたは切り粉が発生しにくいガラスが得られ、製造効
率を上げることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加瀬 準一郎 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社内 Fターム(参考) 4G062 AA18 BB01 CC10 DA06 DA07 DB03 DB04 DC03 DC04 DD01 DE01 DF01 EA01 EB01 EC01 ED03 ED04 EE01 EE02 EE03 EE04 EF01 EF02 EF03 EG01 EG02 EG03 FA01 FA10 FB01 FC01 FD01 FE01 FF01 FG01 FH01 FJ01 FK01 FL01 GA01 GA10 GB01 GC01 GD01 GE01 HH01 HH03 HH05 HH07 HH09 HH11 HH13 HH15 HH17 HH20 JJ01 JJ03 JJ05 JJ07 JJ10 KK01 KK03 KK05 KK07 KK10 MM12 MM27 NN29 NN33 NN34

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】実質的にモル%表示で、 SiO2 64〜76%、 Al23 5〜14%、 B23 5〜16%、 MgO 1〜16.5%、 CaO 0〜14%、 SrO 0〜6%、 BaO 0〜2%、 からなる無アルカリガラス。
  2. 【請求項2】MgO/(MgO+CaO+SrO+Ba
    O)が0.1以上である請求項1に記載の無アルカリガ
    ラス。
  3. 【請求項3】MgO+CaO+SrO+BaOが5〜1
    6.5モル%である請求項1または2に記載の無アルカ
    リガラス。
  4. 【請求項4】MgO/(MgO+CaO)が0.2以上
    である請求項1、2または3に記載の無アルカリガラ
    ス。
  5. 【請求項5】SrO+BaOが0〜6モル%である請求
    項1、2、3または4に記載の無アルカリガラス。
  6. 【請求項6】SiO2+B23が75モル%以上である
    請求項1〜5のいずれかに記載の無アルカリガラス。
  7. 【請求項7】SiO2が68.5モル%以上、Al23
    が12.5モル%以下、CaOが0.5モル%以上、S
    rOが3モル%以下、BaOが1.5モル%以下、かつ
    MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)が0.1
    5以上である請求項1、4または6に記載の無アルカリ
    ガラス。
  8. 【請求項8】CaOが0.5モル%以上、BaOが0〜
    1.5モル%、MgO/(MgO+CaO+SrO+B
    aO)が0.15以上、かつSiO2+B23が79モ
    ル%以上である請求項1または5に記載の無アルカリガ
    ラス。
  9. 【請求項9】Al23が7.5モル%以上、CaOが2
    モル%以上、SrOが0〜2.5モル%、BaOが0〜
    0.5モル%、MgO+CaO+SrO+BaOが1
    1.5モル%以下、SrO+BaOが0〜2.5モル
    %、かつSiO2+B23が80モル%以下である請求
    項1または6に記載の無アルカリガラス。
  10. 【請求項10】比重が2.46以下である請求項1〜9
    のいずれかに記載の無アルカリガラス。
  11. 【請求項11】50〜350℃における平均線膨張係数
    が34×10-7/℃以下である請求項1〜10のいずれ
    かに記載の無アルカリガラス。
  12. 【請求項12】ヤング率が64GPa以上である請求項
    1〜11のいずれかに記載の無アルカリガラス。
  13. 【請求項13】歪点が650℃以上である請求項1〜1
    2のいずれかに記載の無アルカリガラス。
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