JP2002012940A - 貨油タンク用耐食鋼およびその製造方法 - Google Patents
貨油タンク用耐食鋼およびその製造方法Info
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Abstract
び合金コストの削減が可能な貨油タンク用耐食鋼を提供
する。 【解決手段】 プライマー塗装状態で使用する貨油タン
ク用耐食鋼において、化学成分として、mass%で、C:0.
16%以下、Si:1.5%以下、Mn:3.0%以下、P:0.035%以
下、S:0.01%以下を含み、さらに、Cu:0.1%〜1.4%、C
r:0.2〜4%、Ni:0.05〜0.7%のうちの1種以上を含み、
残部が実質的にFeからなり、下記の式(1)で表される
Pcmの値が0.22以下であることを特徴とする貨油タンク
用耐食鋼を用いる。 Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cr/20+Cu/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B
≦0.22 (1) 但し、元素記号はそれぞれの元素のmass%を示す。
Description
関し、特に貸油タンク用として耐食性に優れた、プライ
マー塗装併用型の貨油タンク用高耐食鋼およびその製造
方法に関するものである。
カーのダブルハル構造が義務づけられて以降、貨油タン
ク、バラストタンク、デッキプレート等の船舶構造物に
は新たな腐食問題が投じられることとなった。海水環境
と湿潤高温環境が繰返されるバラストタンク材では、腐
食要因を解析した結果、海水腐食と飛沫帯環境での腐
食、又結露環境腐食に耐える鋼材が要求され、バラスト
タンク部に該当するデッキプレートにおいても、裏面に
おける腐食環境として、バラストタンク上部と同様のも
のが想定されている。
7-267182号公報では、Cu-P,Cu-Cr,Cu-P-Cr系鋼材が優
れた耐食性を示すとして提案されている。この技術によ
る鋼材は、C:0.15%以下、Si:0.02〜1.5%、Mn:0.2〜
5.0%、S:0.005%以下、Cu:0.1〜1.0%、P:0.01〜0.1
5%を含み、さらに、Ni:0〜1.5%、Nb:0〜0.03%、なら
びにMo:0〜1.0%、V:0〜1.0%およびW:0〜1.0%のう
ちの1種または2種以上、Al:0〜1.0%、Ti:0〜0.5%の
うちの1種または2種を含むバラストタンク用低合金鋼
である。
6048号公報では、いずれもl〜3%程度のCrを含有する耐
食鋼が、バラストタンク環境で有効に使用可能な耐食性
を示すとして提案されている。特開平7-310141号公報記
載の耐食鋼は、Cr:0.5〜3.5%を主成分とし、Ni:1.5%
以下、Mo:0.8%以下のうちの1種以上、あるいはさらに
Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.05%のうちの1種以上
を含む鋼である。特開平8-246048号公報記載の耐食鋼
は、C:0.1 %以下、Si:0.10〜0.80%、Mn:1.50%以
下、Al:0.005〜0.050 %、Cr:1.0〜3.0 %、Ti:0.005〜
0.03%、N:0.0020〜0.0120%を含む鋼である。
ー、特にVLCCと呼称される大型の貨油船で、貨油タンク
内面に著しい腐食が発見されるケースがある。この現象
は、従来問題とされなかったことから、新たな腐食課題
としてクローズアップされているというのが現状であ
る。そのため、貨油タンク、もしくは貨油タンク該当部
分のデッキプレートの腐食防止は、バラストタンクにつ
いて行われているような、腐食メカニズムの分類と推定
がなされないまま、危急の課題とされている。
を解決する手段として、組立て前に適用される錆止めプ
ライマー塗装および重塗装がある。しかし多くの場合、
塗装は使用にともない傷みを生じ、表面損傷部位より錆
が発生し、塗膜を破壊するいわゆる塗膜下腐食の進行に
より、通常の使用では長くても5〜10年の使用で、裸使
用と変らないほどの腐食が認められる状況にあり、メン
テナンス費用は膨大なものとなる。
特開平8-246048号公報記載のバラストタンク用の鋼は、
その実施例を見ると添加元素の量が多く、溶接性が著し
く劣るばかりか合金コストの増分に見合う塗装併用下で
の耐食性向上効果が小さい。即ち、貨油タンク用の鋼材
として必ずしも使用しやすいとは言えない。これは特開
平7-267182号公報記載の技術でも同様で、その実施例で
はCuを添加する場合は0.5〜0.14%、Pを添加する場合
は0.045〜0.14%、Crを添加する場合は1〜5%となって
いる。
タンクにおける腐食メカニズムを解明してそれに対して
十分な耐食性を有し、かつ溶接性の向上および合金コス
トの削減が可能な貨油タンク用耐食鋼を提供することを
目的とする。
において鋼材に作用する腐食環境について、詳細に調査
する中でなされた。その結果、最近の大型タンカーにお
ける腐食要因としては、貨油タンク内に導入される原動
機排ガスの影響および原油揮発成分中の硫化水素の影響
が大きいことが明らかとなった。排ガスは原油からの揮
発成分による爆発防止のために導入されるものである
が、排ガスには、酸素、窒素のほかに、相当量の炭酸ガ
ス、SOx、場合によってはH2Sなど、腐食性ガスも含まれ
る。
度サイクルが存在して酸露点腐食が作用した場合、塗膜
に微小な損傷部位が生じただけで該箇所より緻密性の低
い錆が発達する。この錆は塗膜と鋼材の間を発達して進
行し、ついには塗膜を連続的に剥離させる。さらに揮発
成分に含まれる硫化水素は、鋼材の塗膜剥離部分に作用
して腐食を進行させる。この硫化水素による腐食は油井
管等の原油接触環境で広く経験されるものである。この
ような腐食が問題となるのは主にガスのたまる貸油タン
ク上部であり、上記のような貸油タンク内上部の腐食雰
囲気を、以下タンク環境と記載する。
おける腐食メカニズムは、解明された。酸露点腐食の場
合には、たとえ合金を添加して耐食性を高めた鋼材を用
いたとしても、塗装を施さない裸使用では実用的な耐食
性は得られないので、塗装して使用することを前提とす
る。しかし上記のような塗膜損傷部分の錆が拡大する問
題があるので、塗膜下の錆の進行を最小限とし、塗膜寿
命を長期化せしめるという観点に立ち、耐食鋼の成分設
計を繰り返し、当該雰囲気中で塗膜損傷部位も含めた十
分な耐食性を示す鋼材を開発するに至ったものが本発明
である。
食性のみならず、50kJ/cmレベルの入熱溶接、特に100kJ
/cmを超える大入熱溶接の適用を受ける際の機械的性
質、溶接性等とのバランスについても、重要な要素とし
て考慮されている。
り、本件第1の発明は、プライマー塗装状態で使用する
貨油タンク用耐食鋼において、化学成分として、mass%
で、C:0.16%以下、Si:1.5%以下、Mn:3.0%以下、P:0.
035%以下、S:0.01%以下を含み、さらに、Cu:0.1%〜
1.4%、Cr:0.2〜4%、Ni:0.05〜0.7%のうちの1種以上
を含み、残部が実質的にFeからなり、下記の式(1)で
表されるPcmの値が0.22以下であることを特徴とする貨
油タンク用耐食鋼である。
第2の発明は、プライマー塗装状態で使用する貨油タン
ク用耐食鋼において、化学成分として、mass%で、C:0.
16%以下、Si:1.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.035%以
下、S:0.01%以下、Cu:0.1%〜1.4%を含み、残部が実
質的にFeからなり、上記の式(1)で表されるPcmの値
が0.22以下であることを特徴とする貨油タンク用耐食鋼
である。本件第3の発明は、プライマー塗装状態で使用
する貨油タンク用耐食鋼において、化学成分として、ma
ss%で、C:0.15%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.2%以上3.
0%以下、P:0.035%以下、S:0.005%以下を含み、さら
に、Cr:0.2〜4%、Cu:0.2%〜1.0%、Ni:0.1〜0.7%の
うち1種以上を含み、残部が実質的にFeからなり、上記
の式(1)で表されるPcmの値が0.22以下であることを
特徴とする貨油タンク用耐食鋼である。本件第4の発明
は、本件第1ないし本件第3の発明のいずれか1つに記
載の化学成分に加えて、さらにAl:0.8 mass%以下を含
むことを特徴する貨油タンク用耐食鋼である。本件第5
の説明は、本件第1ないし本件第4の発明のいずれか1
つに記載の化学成分に加えて、さらにMo:0.5 mass%以
下を含むことを特徴する貨油タンク用耐食鋼である。本
件第6の発明は、本件第1ないし本件第5の発明のいず
れか1つに記載の化学成分に加えて、さらにmass%でNb:
0.05%以下、V:0.12%以下、Ti:0.1%以下のうち、いず
れか1種または2種以上を含むことを特徴する貨油タン
ク用耐食鋼である。本件第7の発明は、本件第1ないし
本件第6の発明のいずれか1つに記載の化学成分に加え
て、さらにB:0.01mass%以下を含むことを特徴する貨油
タンク用耐食鋼である。本件第8の発明は、仕上げ温度
を800℃以上で圧延を行い、その後冷却速度2℃/sec以上
で600℃以下まで冷却を行うことを特徴とする本件第1
ないし本件第7の発明のいずれか1つに記載の貨油タン
ク用耐食鋼の製造方法である。
鋼およびその製造方法について詳しく説明する。
単位はすべてmass%である。
性と耐食性に悪影響を及ぼすため、添加量の上限を0.16
%とする。より好ましくは、添加量の上限を0.15%とす
る。
作業性に悪影響を及ぼすため、添加量の上限を1.5%と
する。
添加は溶接性を阻害するため、添加量の上限を3.0%と
する。より好ましくは、添加量の上限を2.0%とする。
鋼の強度を確保するためには0.2%以上の添加が好まし
い。
ど望ましい。0.035%までは許容できる範囲であり、含
有量を0.035%以下とする。
であり、含有量は低いほど望ましい0.01%までは許容で
きる範囲であり、含有量の上限を0.01%とする。より好
ましくは、添加量の上限を0.005%とする。
か1種の添加が必要である。それぞれの添加量の範囲に
ついては次のようになる。
せる。0.1%以上添加しないとその効果は明瞭ではない
が、1.4%を超える添加は溶接高温割れの傾向が顕著に
なるため、添加量を:0.1〜1.4%とする。好ましくは0.2
〜1.0%が適当である。Cr、Cu、Niのうちいずれか1種を
添加する場合はCuが最も効果的である。
かつCuによる溶接性への害を抑制する効果を持つ。0.05
%以上添加しないとその効果は明瞭ではないが、添加量
が0.7%を超えると、効果が飽和し、かえって鋼の経済
性を損ない、溶接割れ性も低下するようになるため、添
加量を0.7%以下とする。より好ましくは添加量の下限
を0.1%とする。Cr、Cu、Niのうちいずれか2種を添加す
る場合はCuおよびNiの添加が効果的である。
れているが、タンク環境でも一定の防食効果および耐塗
膜下腐食性が得られる元素である。0.2%以上添加しな
いとその効果は明瞭ではないが、添加量が4%を超える
と、低温割れ抑止のために予熱や後熱が必要になり、ま
た溶接作業性も低下するため、添加量を0.2%以上、4%
以下とする。
宜添加できる。0.8%を超える添加を行うと溶接時にス
ラグを多発し、作業性を顕著に低下させるため、添加す
る場合は0.8%以下とする。
が、鋼の強度特性を向上させるため、制限して使用する
ことが出来る。0.5%を超える添加は耐塗膜下腐食性の
低下の傾向を著しくするため、添加量を0.5%以下とす
る。
以下 Nb、V、Tiは鋼中の炭素と結合して炭化物を形成し、溶
接性に及ぼす炭素の影響を減じることが出来るため、一
定量の添加を選択できる。ただし、Nbは0.05%、Vは0.1
2%、Tiは0.1%を超えて添加すると、炭化物が多量に析
出し、溶接時にクラックを生じやすくなるため、添加量
としてはNbは0.05%以下、Vは0.12%以下、Tiは0.1%以
下とする。
て添加が可能であるが、0.01%を超える添加は溶接高温
割れの傾向を著しくするため、添加量を0.01%以下とす
る。
0+Cu/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B (1)) 以上の各元素に対する制限を設けたうえで、上記式
(1)に相当するPcm値について規定する。これは溶接
割れ感受性を示す特性値であり、この値が0.22を超える
と溶接時の低温割れ発生率が著しく高くなるため、Pcm
値を0.22以下に保持することが必要である。
分以外の残部は実質的にFeである。「残部が実質的にF
eである」とは、本発明の作用効果を無くさない限り、
不可避不純物をはじめ、他の微量元素を含有するものが
本発明の範囲に含まれ得ることを意味する。
分については、以下のようにすることもできる。
添加することが好ましい。
るために、脱硫処理を行うことが好ましい。
が、添加量が0.6%を超えると防食効果の向上が鈍化す
る傾向が見られ、また鋼の溶接性は次第に劣化するの
で、添加する場合は0.6%以下とすることが好ましい。
り鋼の溶接性が次第に劣化する傾向が見られるので、添
加する場合は0.4%以下とすることが好ましい。
が飽和し始めるため、費用対効果の観点からは添加量を
0.5%以下とすることが好ましい。
時のスラグ発生により作業性に影響が出てくるので、添
加する場合は0.4%以下とすることが好ましい。
方法で製造できる。例えば、鋼の溶製では、転炉等で主
要5元素C、Si、Mn、P、Sを発明の範囲に調節するとと
もに、必要に応じてその他の合金元素を添加する。
そのままあるいは冷却後、圧延を行う。圧延条件につい
ては、耐食鋼としては特に条件を問わないが、機械的特
性の観点からは適切な圧下比を確保する必要がある。
ると、引張強度490N/mm2級以上の高強度鋼材とすること
ができる。その方法は、熱間圧延の仕上げ温度を800℃
以上とし、その後2℃/s以上の冷却速度で600℃以下まで
冷却するものである。仕上げ温度が800℃未満では靭性
が劣り、冷却速度が2℃/s未満もしくは冷却停止温度が6
00℃超えの場合には、490MPa級以上の強度が得られな
い。冷却は一度冷却した後再加熱して冷却しても、直接
冷却しても良い。
ように製造した鋼に、有機もしくは無機の塗装、あるい
は錆止めプライマーによる塗膜を施して使用する必要が
ある。塗装およびプライマーの種類は問わないが、無機
系ジンクプライマーによる塗膜を用いると最も効果的で
ある。
VLCCタンカーの貨油タンク上部の構造体ないしデッキプ
レートに、プライマー塗装ままで用いることが最も通常
である。さらに、タンク内部もしくは天井部の梁、柱等
の構造体として用いても好適な耐食性と機械的性質を発
揮しうる。
て1470N(150kgw)真空誘導溶解炉により、鋳造も真空
中で実施した。245N(25kgw)鋳塊となしたのち、1200
℃に加熱して熱間圧延し、厚さ25mmの板材とした。この
25mmの板材を溶接割れ性の評価に用いた。さらに、1180
℃に再加熱して熱間圧延して厚さ6mmの板材とし、耐食
性評価試験に供した。
材に深さ15mmのV溝を切り、溶接ビードを置いて、冷却
後の溶着金属部の割れの有無を比較評価する方法を用い
た。溶接方法はサブマージアーク溶接とし、溶接材料は
市販の強度50キロ級(490N/mm2級)ワイヤとした。溶接
条件は、電圧38〜45V、電流1000〜1250A、溶接速度40cm
/分、入熱139kJ/cmとした。割れの検出にはX線透過法
を用いた。また、同時にスラグの発生等によるビードの
乱れ、作業性の悪化についても評価した。
は、日本工業規格JIS Z3158で規定されるy型溶接割れ試
験を実施し、鋼板冷却後の割れの有無で評価した。溶接
は市販の490N/mm2級被覆アーク溶接用ワイヤを使用し、
溶接条件は、電圧24V、電流170A、溶接速度15cm/min、
入熱16kJ/cmとした。割れの検出には断面切断法を用い
た。
材から寸法6mm×55mm×45mmの腐食試験片を切り出し、
全面にプライマー処理を施して腐食試験に供した。プラ
イマー処理は、事前によくショット錆落としを実施した
試験片に、亜鉛末入り顔料を一定の割合で含有する、ア
ルキルシリケート樹脂ワニス溶剤使用のジンク系プライ
マーの吹付塗装を行い、室温で24時間乾燥させた。亜鉛
末入り顔料の重量割合については、43%のものと48%の
ものを使用して比較した。
鋼材表面に達するX字型のカッティングを施し、これを
模擬損傷箇所として腐食試験後の表面錆、塗膜下の錆の
進行を表面積率で評価した。なお、試験前の損傷面積率
は1.0%であった。
擬した雰囲気と温度サイクル中に、試験片を曝して、腐
食箇所拡大率の評価を実施した。貨油タンク内模擬環境
は、ガス組成10%CO2,8%O2,0.02%SOx,残部N2の混
合ガスを過飽和水蒸気圧の下に充満させて、試験用の雰
囲気とした。この雰囲気中に挿入した試験片には、ヒー
タと冷却装置によって30℃/60℃の繰返し温度サイクル
を、1サイクル1日として90日間付与し、結露水による腐
食を模擬できるようにした。
比較鋼の成分分析結果、および(1)式によるPcmと、
上記の評価方法を用いた溶接性と耐食性の評価結果、即
ちV溝試験における高温割れの有無(割れなしを◎で示
している)、作業性評価の結果(作業性の劣るものに*
を付している)、低温割れ感受性(割れの無いものを◎
で示している)、プライマー種類(43:亜鉛末顔料の重
量割合43%、48:同48%)模擬環境における錆(腐食)
面積率(単位%)をまとめて示している。
材(No.1〜35)は、すべて耐溶接割れ性と溶接時の作業
性を兼ね備え、かつ耐塗膜下腐食性が良好で、好適に使
用可能であることがわかる。一方、表3にまとめた比較
鋼(No.36〜64)は、成分の限定理由の項で述べたよう
な背景から、耐溶接割れ性、溶接作業性、模擬環境下で
の耐塗膜下腐食性の何れかが十分ではない。これより、
これらを満足するためには本発明による成分設計が好適
であることが理解できる。
係を示す図である。この図より、Pcmの値が、0.22以下
である場合は溶接割れが発生せず(図中no crack)、そ
れより大きい場合は溶接割れが発生すること(図中 cra
ck)が分かる。よって、Pcmの値が0.22を超えると溶接
時の低温割れ発生率が著しく高くなるため、Pcm値を0.2
2以下に保持することが必要である。
験結果の関係を示す図である。この図より、添加Cr、Cu
量の増加により、結露腐食試験による錆面積率(図中S
で示す)が縮小されることが分かる。錆面積率の許容限
度を15%以下とするには、Cr量を0.2%以上Cu量を0.1%
以上とすればよいことが分かる。
て5t真空誘導溶解炉によって行い、鋳造も真空中で実施
した。9800Nの鋳塊となしたのち、1200℃に加熱して各
種の製造条件で熱間圧延し、厚さ25mmの板材とした。こ
の25mmの板材を溶接割れ性の評価、引張り試験、シャル
ピー衝撃試験に供した。さらに、この25mmの板材を1180
℃に再加熱して熱間圧延して厚さ6mmの板材とし、耐食
性評価試験に供した。
取し、常温での引張り強度で評価した。引張り強度が49
0N/mm2以上の場合を良好とした。シャルピー衝撃試験
は、板厚中央部よりVノッチシャルピー試験片を採取
し、試験温度-40℃における3本平均の吸収エネルギーで
評価した。試験温度-40℃以上で50J以上の吸収エネルギ
ーを示す場合を良好と判定した。
材に深さ15mmのV溝を切り、溶接ビードを置いて、冷却
後の溶着金属部の割れの有無を比較評価する方法を用い
た。溶接方法はサブマージアーク溶接とし、溶接材料は
市販の490N/mm2級ワイヤとした。溶接条件は、電圧38〜
45V、電流1000〜1250A、溶接速度40cm/分、入熱139kJ/c
mとした。割れの検出にはX線透過法を用いた。また、
同時にスラグの発生等によるビードの乱れ、作業性の悪
化についても評価した。
は、日本工業規格JIS Z3158で規定されるy型溶接割れ試
験を実施し、鋼板冷却後の割れの有無で評価した。溶接
は市販の490N/mm2級被覆アーク溶接用ワイヤを使用し、
溶接条件は電圧24V、電流170A、溶接速度15cm/min、入
熱16kJ/cmとした。割れの検出には断面切断法を用い
た。また、同時にスラグの発生等によるビードの乱れな
どの、溶接欠陥や作業性についても評価した。
法6mm×55mm×45mmの腐食試験片を切り出し、全面にプ
ライマー処理を施して腐食試験に供した。プライマー処
理は、事前によくショットによる錆落としを実施した試
験片に、亜鉛末入り顔料を一定の割合で含有するアルキ
ルシリケート樹脂ワニス溶剤使用のジンク系プライマー
の吹付塗装を行い、室温で24時間乾燥させた。亜鉛末入
り顔料の亜鉛の重量割合については、43%のものと48%
のものを使用して比較した。
鋼材表面に達するX字型のカッティングを施し、これを
模擬損傷箇所として腐食試験後の表面錆、塗膜下の錆の
進行を損傷部の表面積率である錆面積率で評価した。な
お、試験前の損傷部の面積率は1.0%であった。
擬した雰囲気と温度サイクル中に試験片を曝して、腐食
箇所拡大率の評価を実施した。貨油タンク内模擬環境
は、ガス組成10%CO2、8%O2、0.02%SOx、0.1%H2S、残
部N2の混合ガスを過飽和水蒸気圧の下に充満させて、試
験用の雰囲気とした。この雰囲気中に挿入した試験片に
は、ヒータと冷却装置によって30℃/60℃の繰返し温度
サイクルを、1サイクル1日として90日間付与し、結露水
による腐食を模擬できるようにした。
よび比較鋼(No.136〜151)の成分分析結果、(1)式
によるPcm値を示す。本発明鋼であるNo.101、107、11
3、128については圧延条件を変化させて各種の試料を作
製した。表6に各鋼材に対する圧延仕上げ温度、圧延後
の冷却速度(冷速)、および冷却速度2℃/s以上に相当
する水冷した場合の冷却停止温度を示す。さらに、引張
試験より得られた強度、シャルピー衝撃試験より得られ
た-40℃における吸収エネルギーvE-40、上記の評価方法
を用いた溶接性(溶接時の高温割れ性、低温割れ性につ
いては、各試験において割れが発生した場合には高温割
れ・低温割れと記載し、割れなしの場合は◎を記載し、
作業性不良のものや溶接欠陥が存在する場合にはその旨
を記載して示す)、表面に適用したプライマー種類(4
3:亜鉛末顔料の重量割合43%、48:同48%、一部につい
てはプライマーの塗布を行わなかった)、模擬環境にお
ける錆(腐食)面積率(単位%)を併せて示す。
o.101〜135)は、すべて耐溶接割れ性と溶接時の作業性
を兼ね備え、かつ耐塗膜下腐食性が良好で、貸油タンク
に好適に使用可能であることがわかる。一方、化学成分
が本発明の範囲外の比較鋼(No.136〜151)は、成分の
限定理由の項で述べたような背景から、耐溶接割れ性、
溶接作業性に問題がある、または錆面積率が8%以上で模
擬環境下での耐塗膜下腐食性が十分でない。また鋼材N
o.101のプライマー塗布を行わなかったものについて
は、鋼材全面に渡って非常に大きな減肉が生じることが
確認された。これより、耐溶接割れ性、溶接作業性、模
擬環境下での耐塗膜下腐食性を満足するためには本発明
による成分設計の鋼材を用いれば良いことが分かった。
また本発明の範囲の製造条件を用いると、JIS規定の490
MPa級鋼以上の強度が得られる事が分かった。
錆面積率の関係を示す図である。この図より、Cu添加量
が0.1%未満の場合は耐塗膜下腐食性に対するCu添加の
効果が十分発揮されないことがわかった。一方、1.4%
を超える添加は溶接高温割れが発生した。
することにより、貨油タンクにおける腐食メカニズムに
対して十分な耐食性を有し、溶接性の向上および合金コ
ストの削減が可能な貨油タンク用耐食鋼を得ることがで
きる。その結果、VLCCタンカーの貨油タンク上部の構造
体乃至デッキプレート用に、重塗装して、または重塗装
することなくプライマー適用ままで用い得るばかりでな
く、タンク内部もしくは天井部の梁、柱等の構造体とし
て長期間好適に用い得る鋼材が提供され、船舶の製造コ
スト、維持管理コストの低減などの経済効果を得ること
ができる。
ある。
を示す図である。
係を示す図である。
Claims (8)
- 【請求項1】 プライマー塗装状態で使用する貨油タン
ク用耐食鋼において、化学成分として、mass%で、C:0.
16%以下、Si:1.5%以下、Mn:3.0%以下、P:0.035%以
下、S:0.01%以下を含み、さらに、Cu:0.1%〜1.4%、C
r:0.2〜4%、Ni:0.05〜0.7%のうちの1種以上を含み、
残部が実質的にFeからなり、下記の式(1)で表される
Pcmの値が0.22以下であることを特徴とする貨油タンク
用耐食鋼。 Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cr/20+Cu/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B≦0.22 (1) 但し、元素記号はそれぞれの元素のmass%を示す。 - 【請求項2】 プライマー塗装状態で使用する貨油タン
ク用耐食鋼において、化学成分として、mass%で、C:0.
16%以下、Si:1.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.035%以
下、S:0.01%以下、Cu:0.1%〜1.4%を含み、残部が実
質的にFeからなり、下記の式(1)で表されるPcmの値
が0.22以下であることを特徴とする貨油タンク用耐食
鋼。 Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cr/20+Cu/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B≦0.22 (1) 但し、元素記号はそれぞれの元素のmass%を示す。 - 【請求項3】 プライマー塗装状態で使用する貨油タン
ク用耐食鋼において、化学成分として、mass%で、C:0.
15%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.2%以上3.0%以下、P:
0.035%以下、S:0.005%以下を含み、さらに、Cr:0.2〜
4%、Cu:0.2%〜1.0%、Ni:0.1〜0.7%のうち1種以上
を含み、残部が実質的にFeからなり、下記の式(1)で
表されるPcmの値が0.22以下であることを特徴とする貨
油タンク用耐食鋼。 Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cr/20+Cu/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B≦0.22 (1) 但し、元素記号はそれぞれの元素のmass%を示す。 - 【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれか1つ
に記載の化学成分に加えて、さらにAl:0.8 mass%以下
を含むことを特徴する貨油タンク用耐食鋼。 - 【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれか1つ
に記載の化学成分に加えて、さらにMo:0.5 mass%以下
を含むことを特徴する貨油タンク用耐食鋼。 - 【請求項6】 請求項1ないし請求項5のいずれか1つ
に記載の化学成分に加えて、さらにNb:0.05mass%以
下、V:0.12mass%以下、Ti:0.1mass%以下のうち、いず
れか1種または2種以上を含むことを特徴する貨油タン
ク用耐食鋼。 - 【請求項7】 請求項1ないし請求項6のいずれか1つ
に記載の化学成分に加えて、さらにB:0.01mass%以下を
含むことを特徴する貨油タンク用耐食鋼。 - 【請求項8】 仕上げ温度を800℃以上で圧延を行い、
その後冷却速度2℃/sec以上で600℃以下まで冷却を行う
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1
つに記載の貨油タンク用耐食鋼の製造方法。
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