JP2002003790A - 静電霧化塗装用メタリック塗料組成物、メタリック塗膜形成方法および塗装物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】金属感を呈する意匠を発現することができ、静
電霧化塗装の際のリーク現象発生防止および色再現性が
良好な静電霧化塗装用メタリック塗料組成物、この塗料
組成物を使用したメタリック塗膜形成方法およびその塗
装物を提供すること。 【解決手段】樹脂コートされた平均粒径５〜４０μｍの
光輝性を有する導電性顔料およびビヒクルとを含有し、
好ましくは上記光輝性を有する導電性顔料の樹脂コート
量が１〜５ｇ／導電性基体１００ｇである静電霧化塗装
用メタリック塗料組成物、この静電霧化塗装用メタリッ
ク塗料組成物を用いたメタリック塗膜形成方法およびこ
のメタリック塗膜形成方法により塗装された塗装物。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、静電霧化塗装の際
のリーク現象発生防止および色再現性が良好な静電霧化
塗装用メタリック塗料組成物、この塗料組成物を使用し
たメタリック塗膜形成方法およびその塗装物に関する。

【０００２】

【従来の技術】メタリック塗装は、金属感を呈する意匠
を発現させるため、自動車、二輪車等の乗物外板、容器
外面、コイルコーティング、家電製品、建具類等に広く
用いられている。これらの塗装には、塗装の自動化、塗
着効率の向上による資源の有効利用の点から、静電霧化
塗装が用いられている。

【０００３】この静電霧化塗装方法は、スプレーガンを
マイナス極とし、接地した被塗物をプラス極とし、この
間に所定の電圧をかけるため、塗料が非導電体であるこ
とが必須の条件となる。しかし、塗料中にアルミニウム
フレーク等の導電性顔料が配合されているメタリック塗
料を用いて静電霧化塗装を行う場合、塗料中を電気が流
れるリーク現象が発生すると、塗装ラインにおいて静電
塗装を中断せざるを得なくなり、リーク現象の発生を防
ぐ対策が必要となる。

【０００４】これらの改善方法として、塗料中の溶剤組
成の変更による塗料の電気伝導度調整や沈降防止剤、増
粘剤の使用による金属粉の沈降防止、あるいは特公平６
−１１８８０号公報に記載のように、粉状またはフレー
ク状の導電性材料を含む溶剤型塗料組成物に、特定量の
機械的に分散された微粒子状の有機アミン変性ヘクトラ
イトを含ませて導電性を低下させるなどの各種手段が用
いられてきた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、これらはいず
れも十分な効果が得られなかったり、塗料の粘性挙動や
アルミニウムフレーク等の導電性顔料の配向を変更させ
たりすることにより、ライン適性や仕上がり外観に好ま
しくない影響を与えるなどの課題が生じていた。したが
って、本発明の目的は、金属感を呈する意匠を発現する
ことができ、静電霧化塗装の際のリーク現象の発生防止
および色再現性が良好な静電霧化塗装用メタリック塗料
組成物、この塗料組成物を使用したメタリック塗膜形成
方法およびその塗装物を提供することである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
に鑑み鋭意研究の結果、本発明に至った。 １．樹脂コートされた平均粒径５〜４０μｍの光輝性を
有する導電性顔料およびビヒクルとを含有する静電霧化
塗装用メタリック塗料組成物。 ２．上記光輝性を有する導電性顔料の樹脂コート量が１
〜５ｇ／導電性基体１００ｇである上記の静電霧化塗装
用メタリック塗料組成物。 ３．上記光輝性を有する導電性顔料をＰＷＣで、１〜２
０質量％含有する上記の静電霧化塗装用メタリック塗料
組成物。 ４．上記光輝性を有する導電性顔料が、アルミニウムフ
レーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料または金属
酸化物被覆アルミナフレーク顔料である上記の静電霧化
塗装用メタリック塗料組成物。 ５．基材上に、上記の静電霧化塗装用メタリック塗料組
成物を静電霧化塗装してメタリックベース塗膜を形成
し、このメタリックベース塗膜の上に、トップクリヤー
塗膜を形成するメタリック塗膜形成方法。 ６．上記トップクリヤー塗膜が、カルボキシル基含有ポ
リマーおよびエポキシ基含有ポリマーをビヒクルの塗膜
形成用樹脂とする上記のメタリック塗膜形成方法。 ７．上記のメタリック塗膜形成方法により得られた静電
霧化塗装された塗装物。

【０００７】

【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について詳述
する。

【０００８】本発明の静電霧化塗装用メタリック塗料組
成物（以下、「メタリック塗料」ともいう）に含まれ
る、樹脂コートされた平均粒径５〜４０μｍの光輝性を
有する導電性顔料（以下、「樹脂コートされた導電性顔
料」ともいう）は、静電噴霧塗装の際にリーク現象を防
止し、形成する塗膜の色再現性を良好にする顔料であ
る。本明細書において、リーク現象とは塗料中に配合さ
れたアルミニウムフレーク等の導電性顔料が、ブリッジ
状に連続して回路を形成し電気を通すことをいう。また
色再現性とは、樹脂コートしていない光輝性を有する導
電性顔料を用いた塗膜の色域に近い度合いをいう。

【０００９】樹脂コートされた導電性顔料としては、平
均粒径が上記範囲であれば、どのような種類のものも使
用可能であるが、その例としては、アルミニウムフレー
ク顔料および着色アルミニウムフレーク顔料を樹脂で被
覆した顔料を挙げることができる。

【００１０】なお、上記樹脂コートされた導電性顔料の
樹脂コートは、静電噴霧塗装時のリーク現象の発生防止
を目的とするが、さらに耐候性、耐酸性および耐アルカ
リ性を付与することもできるものである。この場合に使
用される樹脂としては、絶縁性、耐候性、耐酸性および
耐アルカリ性があり、かつ顔料のメタリック感が損なわ
れない程度の透明性を有するものであればよく、例え
ば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、
フッ素樹脂あるいはこれらの変性樹脂を使用することが
でき、樹脂コート量は、１〜５ｇ／導電性基体１００ｇ
とすることにより静電噴霧塗装時のリーク現象発生防止
と、形成する塗膜の色再現性を良好にすることができ
る。樹脂コート量が、１ｇ／導電性基体１００ｇ未満で
は、静電噴霧塗装時のリーク現象を十分には防止するこ
とができず、５ｇ／導電性基体１００ｇを超えると、形
成する塗膜の色再現性が十分には得られない。より好ま
しくは、１．５〜３．５ｇ／導電性基体１００ｇであ
る。

【００１１】上記樹脂コートされた導電性顔料の平均粒
径は、平均粒径５〜４０μｍであり、平均粒径が５μｍ
未満では、メタリック感が不十分となり、４０μｍを超
えると塗膜面の凹凸が大きすぎて塗膜外観が低下する。

【００１２】このメタリック塗料組成物は、好ましくは
樹脂コートされた導電性顔料をＰＷＣ（塗料固形分１０
０質量部に対する顔料の固形分質量割合）で１〜２０質
量％、より好ましくは２〜１５質量％含有している。１
質量％未満では十分なメタリック感を発揮できず、２０
質量％を超えると塗膜性能が低下する。

【００１３】なお樹脂コートされた導電性顔料の含有量
が多い程、静電霧化塗装時が短い程および静電霧化塗装
時の印加電圧が高い程、リーク現象が発生しやすくなる
ため樹脂コートの量を増やす必要がある。

【００１４】本発明の静電霧化塗装用メタリック塗料組
成物は、色再現性の観点から樹脂コートされた導電性顔
料に、樹脂コートされていない導電性顔料を併用するこ
とができるが、この場合の樹脂コートされた導電性顔料
／樹脂コートされていない導電性顔料の質量比率は、９
９／１〜２０／８０が好ましい。

【００１５】また本発明の静電霧化塗装用メタリック塗
料組成物は、上記の光輝性を有する導電性顔料以外に、
その他の光輝性顔料として、従来から塗料用として常用
されているものを含有することができる。このようなも
のとして、例えば、マイカ顔料、グラファイト顔料、板
状酸化鉄顔料、フタロシアニンフレーク顔料およびホロ
グラム顔料を挙げることができる。上記その他の光輝性
顔料は、上記樹脂コートされた導電性顔料の効果を妨げ
ない範囲の任意の添加量で、含有することができる。

【００１６】本発明の静電霧化塗装用メタリック塗料組
成物は、さらに着色顔料を含有することができる。この
ようなものとして、従来から塗料用として常用されてい
るものを挙げることができ、有機顔料として、例えば、
アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジコ系
顔料、ベリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサ
ジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系
顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、また、無機顔料とし
て、例えば、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタ
ン、カーボンブラックが挙げられる。着色顔料の添加量
は、上記樹脂コートされた導電性顔料の効果を妨げない
限り、色相を発現するのに合わせて任意に設定できる。
また各種体質顔料を併用することができる。なお、上記
その他の光輝性顔料および着色顔料を用いる場合、顔料
全体としての総含有量（ＰＷＣ）は、３０％未満が好ま
しく、２０％未満がより好ましい。３０％以上であると
塗膜外観が低下する。

【００１７】本発明の静電霧化塗装用メタリック塗料組
成物に含有されるビヒクルは、上記顔料を分散するもの
であって、塗膜形成用樹脂と必要に応じて架橋剤とから
構成される。

【００１８】上記ビヒクルを構成する塗膜形成用樹脂と
しては、例えば、（ａ）アクリル樹脂、（ｂ）ポリエス
テル樹脂、（ｃ）アルキッド樹脂、（ｄ）フッ素樹脂、
（ｅ）エポキシ樹脂、（ｆ）ポリウレタン樹脂、（ｇ）
ポリエーテル樹脂が挙げられ、特に、アクリル樹脂およ
びポリエステル樹脂が、耐候性の点より好ましく用いら
れる。これらは、２種以上を組み合わせて使用すること
ができる。また、上記塗膜形成用樹脂には、硬化性を有
するタイプとラッカータイプとがあるが、通常硬化性を
有するタイプのものが使用される。硬化性を有するタイ
プの場合には、アミノ樹脂や（ブロック）ポリイソシア
ネート化合物、アミン系、ポリアミド系、多価カルボン
酸等の架橋剤と混合して使用に供され、加熱または常温
で硬化反応を進行させることができる。また、硬化性を
有しないタイプの塗膜形成用樹脂と硬化性を有するタイ
プと併用することも可能である。

【００１９】上記（ａ）アクリル樹脂としては、アクリ
ル系モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとの共重
合体を挙げることができる。上記共重合に使用し得るア
クリル系モノマーとしては、アクリル酸またはメタクリ
ル酸のメチル、エチル、プロピル、ｎ−ブチル、ｉ−ブ
チル、ｔ−ブチル、２−エチルヘキシル、ラウリル、フ
ェニル、ベンジル、２−ヒドロキシエチル、２−ヒドロ
キシプロピル等のエステル化物類、アクリル酸またはメ
タクリル酸２−ヒドロキシエチルのカプロラクトンの開
環付加物類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリ
シジル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびＮ−
メチロールアクリルアミド、多価アルコールの（メタ）
アクリル酸エステルなどがある。これらと共重合可能な
上記他のエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレ
ン、α−メチルスチレン、イタコン酸、マレイン酸、酢
酸ビニルなどがある。

【００２０】上記（ｂ）ポリエステル樹脂としては、飽
和ポリエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂が挙げら
れ、例えば、多塩基酸と多価アルコールを加熱縮合して
得られた縮合物が挙げられる。多塩基酸としては、飽和
多塩基酸、不飽和多塩基酸が挙げられ、飽和多塩基酸と
しては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク
酸が挙げられ、不飽和多塩基酸としては、例えば、マレ
イン酸、無水マレイン酸、フマル酸が挙げられる。多価
アルコールとしては、例えば、二価アルコール、三価ア
ルコールが挙げられ、二価アルコールとしては、例え
ば、エチレングリコール、ジエチレングリコールが挙げ
られ、三価アルコールとしては、例えば、グリセリン、
トリメチロールプロパンが挙げられる。

【００２１】上記（ｃ）アルキッド樹脂としては、上記
多塩基酸と多価アルコールにさらに油脂・油脂脂肪酸
（大豆油、アマニ油、ヤシ油、ステアリン酸等）、天然
樹脂（ロジン、コハク等）等の変性剤を反応させて得ら
れたアルキッド樹脂を用いることができる。

【００２２】上記（ｄ）フッ素樹脂としては、フッ化ビ
ニリデン樹脂、四フッ化エチレン樹脂のいずれかまたは
これらの混合体、フルオロオレフィンとヒドロキシ基含
有の重合性化合物およびその他の共重合可能なビニル系
化合物からなるモノマーを共重合させて得られる各種フ
ッ素系共重合体からなる樹脂を挙げることができる。

【００２３】上記（ｅ）エポキシ樹脂としては、ビスフ
ェノールとエピクロルヒドリンの反応によって得られる
樹脂等を挙げることができる。ビスフェノールとして
は、例えば、ビスフェノールＡ、Ｆが挙げられる。上記
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピ
コート８２８、エピコート１００１、エピコート１００
４、エピコート１００７、エピコート１００９（いずれ
も、シェルケミカル社製）が挙げられ、またこれらを適
当な鎖延長剤を用いて鎖延長したものも用いることがで
きる。

【００２４】上記（ｆ）ポリウレタン樹脂としては、ア
クリル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネー
ト等の各種ポリオール成分とポリイソシアネート化合物
とによって得られるウレタン結合を有する樹脂を挙げる
ことができる。上記ポリイソシアネート化合物として
は、２，４−トリレンジイソシアネート（２，４−ＴＤ
Ｉ）、２，６−トリレンジイソシアネート（２，６−Ｔ
ＤＩ）、およびその混合物（ＴＤＩ）、ジフェニルメタ
ン−４，４’−ジイソシアネート（４，４’−ＭＤ
Ｉ）、ジフェニルメタン−２，４’−ジイソシアネート
（２，４’−ＭＤＩ）、およびその混合物（ＭＤＩ）、
ナフタレン−１，５−ジイソシアネート（ＮＤＩ）、
３，３’−ジメチル−４，４’−ビフェニレンジイソシ
アネート（ＴＯＤＩ）、キシリレンジイソシアネート
（ＸＤＩ）、ジシクロへキシルメタン・ジイソシアネー
ト（水素化ＨＤＩ）、イソホロンジイソシアネート（Ｉ
ＰＤＩ）、ヘキサメチレンジイソシアネート（ＨＤ
Ｉ）、水素化キシリレンジイソシアネート（ＨＸＤＩ）
等を挙げることができる。

【００２５】上記（ｇ）ポリエーテル樹脂としては、エ
ーテル結合を有する重合体または共重合体であり、ポリ
オキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン
系ポリエーテル、もしくはポリオキシブチレン系ポリエ
ーテル、またはビスフェノールＡもしくはビスフェノー
ルＦなどの芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導される
ポリエーテル等の１分子当たりに少なくとも２個の水酸
基を有するポリエーテル樹脂を挙げることができる。ま
た上記ポリエーテル樹脂とコハク酸、アジピン酸、セバ
シン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリ
メリット酸等の多価カルボン酸類、あるいは、これらの
酸無水物等の反応性誘導体とを反応させて得られるカル
ボキシル基含有ポリエーテル樹脂を挙げることができ
る。

【００２６】上記ビヒクルが架橋剤を含む場合、塗膜形
成用樹脂と架橋剤の割合としては、固形分換算で塗膜形
成用樹脂が９０〜５０質量％、架橋剤が１０〜５０質量
％であり、好ましくは塗膜形成用樹脂が８５〜６０質量
％であり、架橋剤が１５〜４０質量％である。架橋剤が
１０質量％未満では（塗膜形成用樹脂が９０質量％を超
えると）、塗膜中の架橋が十分でないことがある。一
方、架橋剤が５０質量％を超えると（塗膜形成用樹脂が
５０質量％未満では）、塗料組成物の貯蔵安定性が低下
するとともに硬化速度が大きくなるため、塗膜外観が悪
くなることがある。

【００２７】本発明の静電霧化塗装用メタリック塗料組
成物は、上記成分の他に、脂肪族アミドの潤滑分散体で
あるポリアミドワックスや酸化ポリエチレンを主体とし
たコロイド状分散体であるポリエチレンワックス、硬化
触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、シリ
コンや有機高分子等の表面調整剤、タレ止め剤、増粘
剤、消泡剤、滑剤、架橋性重合体粒子（ミクロゲル）等
を適宜添加することができる。これらの添加剤は、通
常、上記ビヒクル１００質量部（固形分基準）に対して
１５質量部以下の割合で配合することにより、塗料や塗
膜の性能を改善することができる。

【００２８】本発明の静電霧化塗装用メタリック塗料組
成物は、上記構成成分を、通常、溶剤に溶解または分散
した態様で提供される。溶剤としては、ビヒクルを溶解
または分散するものであればよく、有機溶剤および／ま
たは水を使用し得る。有機溶剤としては、塗料分野にお
いて通常用いられるものを挙げることができる。例え
ば、トルエン、キシレンの炭化水素類、アセトン、メチ
ルエチルケトンのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、
セロソルブアセテート、ブチルセロソルブのエステル
類、アルコール類を例示できる。環境面の観点から有機
溶剤の使用が規制されている場合には、水を用いること
が好ましい。この場合、適量の親水性有機溶剤を含有さ
せてもよい。

【００２９】塗膜形成方法 本発明の塗膜形成方法は、上記静電霧化塗装用メタリッ
ク塗料組成物を基材上に塗布して、メタリックベース塗
膜を形成した後、この上にトップクリヤー塗膜として少
なくとも１層のクリヤー塗料を塗布して、トップクリヤ
ー塗膜を形成するものである。

【００３０】上記基材としては、限定されるものでな
く、鉄、アルミニウム、銅またはこれらの合金等の金属
類；ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料；ポ
リエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸
ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、
塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレ
タン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類や各種のＦＲＰ等の
プラスチック材料；木材、繊維材料（紙、布等）等の天
然または合成材料等が挙げられる。

【００３１】本発明の塗膜形成方法においては、被塗装
物が自動車車体および部品の場合は、予め化成処理、電
着塗装等による下塗り塗装、および中塗り塗装等を施し
ておくのが好ましい。ここで上記中塗り塗装は、下地の
隠蔽、耐チッピング性の付与および上塗りとの密着性確
保のために塗膜を形成するものである。

【００３２】本発明の塗膜形成方法においては、まず上
記基材に上記静電霧化塗装用メタリック塗料組成物をメ
タリックベース塗膜として静電霧化塗装する。上記基材
が下塗り、中塗り塗料等により下地塗装をした物である
場合には、下地塗膜の上にウェットオンウェット（Ｗ／
Ｗ）法、またはウェットオンドライ（Ｗ／Ｄ）法により
上記静電霧化塗装用メタリック塗料組成物を静電霧化塗
装することができる。上記Ｗ／Ｗ法とは下地塗装をした
後、風乾等により乾燥し、未硬化状態または半硬化状態
の下地塗膜に塗装する方法であり、これに対して、上記
Ｗ／Ｄ法とは下地塗膜を焼き付けて硬化させた下地塗膜
に塗装する方法である。

【００３３】静電霧化塗装時の印加電圧は低い程、リー
ク現象発生防止には有利であるが、３０ＫＶ以下では塗
着効果が悪くなる。また印加電圧は高すぎても、リーク
現象が発生する恐れがあるため３０〜１２０ＫＶの範囲
が好ましい。またペイントホース長は、長い程リーク現
象発生防止には有利であるが、色替え時の塗料ロスや洗
浄時間が長くなるなどの問題が発生する。また、あまり
に短すぎるとリーク現象を防止できなくなるため、好ま
しくは５〜２００ｃｍである。上記静電霧化塗装用メタ
リック塗料組成物を静電霧化塗装したメタリックベース
塗膜の乾燥膜厚は、１コートにつき５〜５０μｍが好ま
しく、１０〜３０μｍがより好ましい。

【００３４】このようにして形成されたメタリックベー
ス塗膜上に、トップクリヤー塗膜を少なくとも１層形成
する。上記メタリックベース塗膜に樹脂コートされた導
電性顔料が多い場合に、トップクリヤー塗膜を２層以上
形成すると、表面のメタリック感を向上させることがで
きる。

【００３５】本発明の塗膜形成方法で用いられるクリヤ
ー塗料としては、上塗り用として一般に使用されている
ものを用いることができ、例えば、アクリル樹脂、ポリ
エステル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタ
ン樹脂、ポリエーテル樹脂およびこれらの変性樹脂から
選ばれた少なくとも１種の熱硬化性樹脂と前述の架橋剤
とを混合したものを用いることができるが、特公平８−
１９３１５号公報に記載されたカルボシキル基含有ポリ
マーとエポキシ基含有ポリマーとを含有するクリヤー塗
料が、耐酸性雨対策およびＷ／Ｗ法でメタリックベース
塗膜との溶解性の差を大きくすると塗装した際にメタリ
ックベース塗膜における樹脂コートされた導電性顔料の
配向を乱さないという観点から好ましく用いられる。ま
た、これらのクリヤー塗料は、必要に応じて、その透明
性を損なわない範囲で、着色顔料、体質顔料、改質剤、
紫外線吸収剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤等の添加
剤を配合することが可能である。

【００３６】本発明の塗膜上へのクリヤー塗料の塗装
は、上記メタリックベース塗膜、および必要に応じて中
塗り塗料から形成された層を同時に硬化させてから行う
ことができる。また、クリヤー塗料を複数回塗装する場
合には、最終のクリヤー塗料を塗装した後で同時に焼き
付ければよく、初期にクリヤー塗料を塗装した段階では
完全に硬化させなくてもよい。このようにクリヤー塗料
を用いてＷ／Ｗ法により形成したトップクリヤー塗膜
は、メタリックベース塗膜、および必要に応じて、下地
塗膜とともに１２０〜１６０℃で所定時間焼き付けら
れ、塗膜を得ることができる。なお、トップクリヤー塗
膜の乾燥膜厚は１コートにつき１０〜８０μｍが好まし
く、２０〜５０μｍがより好ましい。

【００３７】塗装物 本発明の塗装物は、基材に、上記静電霧化塗装用メタリ
ック塗料組成物を用いてメタリックベース塗膜を形成し
た後、クリヤー塗料を用いてトップクリヤー塗膜を形成
するものである。この塗装物は、メタリック感を呈す意
匠を発現する。

【００３８】

【実施例】次に、本発明を実施例および比較例を挙げて
さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に
のみ限定されるものではない。なお、配合量は特に断り
のないかぎり質量部を表す。

【００３９】実施例１〜７、比較例１〜２基材の調製 ダル鋼板（長さ３００ｍｍ、幅１００ｍｍおよび厚さ
０．８ｍｍ）を燐酸亜鉛処理剤（「サーフダインＳＤ２
０００」、日本ペイント社製）を使用して化成処理した
後、カチオン電着塗料（「パワートップＵ−５０」、日
本ペイント社製）を乾燥膜厚が２５μｍとなるように電
着塗装した。次いで、１６０℃で３０分間焼き付けた
後、中塗り塗料（「オルガＳ−９０シーラーグレー」、
日本ペイント社製）を乾燥膜厚が４０μｍとなるように
エアースプレー塗装し、１４０℃で３０分間焼き付けて
中塗塗膜を形成し、基材とした。

【００４０】静電霧化塗装用メタリック塗料組成物の調
製 アクリル樹脂（スチレン／メチルメタクリレート／エチ
ルメタクリレート／ヒドロキシエチルメタクリレート／
メタクリル酸の共重合体、数平均分子量約２００００、
水酸基価４５、酸価１５、固形分５０質量％）と、メラ
ミン樹脂（「ユーバン２０ＳＥ」、三井化学社製、固形
分６０質量％）とを８０：２０の固形分質量比で配合し
て得たビヒクルに対し、下記種類の樹脂コートされた導
電性顔料を表１に示す量で、また必要によりその他の光
輝性顔料および着色顔料を表１に示す量で配合した。次
いで、有機溶剤（トルエン／キシレン／酢酸エチル／酢
酸ブチルの質量比＝７０／１５／１０／５）とともに攪
拌機により静電霧化塗装適正粘度になるように攪拌混合
し、静電霧化塗装用メタリック塗料組成物を調製した。 樹脂コートをしていない導電性顔料（比較例用）： （Ｎ１）「アルペースト７６４０ＮＳ」（アルミニウム
フレーク顔料 、東洋アルミニウム社製）、 樹脂コートされた導電性顔料： （Ｒ１）上記Ｎ１に樹脂コート量が、２．５ｇ／アルミ
基体１００ｇとなるように樹脂コートしたアルミニウム
フレーク顔料、 （Ｒ２）上記Ｎ１に樹脂コート量が、５ｇ／アルミ基体
１００ｇとなるように樹脂コートしたアルミニウムフレ
ーク顔料、 （Ｒ３）上記Ｎ１に樹脂コート量が、１０ｇ／アルミ基
体１００ｇとなるように樹脂コートしたアルミニウムフ
レーク顔料、

【００４１】メタリックベース塗膜の形成 基材の被塗面に、先に得た静電霧化塗装用メタリック塗
料組成物を乾燥膜厚が１５μｍになるように静電霧化塗
装した。塗装は静電霧化塗装機（「ＡｕｔｏＲＥＡ」、
ＡＢＢインダストリー社製）を用い、ペイントホース長
２０ｃｍ、表１に示す印加電圧、霧化圧３．５ｋｇ／ｃ
ｍ²で行った。静電霧化塗装中のブースの雰囲気は温度
２５℃、湿度７５％に保持した。静電噴霧塗装時のリー
ク現象発生防止を下記の基準で評価した。静電霧化塗装
後３分間セッティングし、クリヤー塗料を乾燥膜厚が３
５μｍになるように塗装し、室温で１０分間セッティン
グし、１４０℃の温度で３０分間焼き付けた。得られた
塗膜の色再現性を下記評価方法で評価した。結果を表１
に示す。使用したクリヤー塗料は、アクリル／メラミン
樹脂系クリヤー塗料１（「スーパーラックＯ−１３０ク
リヤー」、日本ペイント社製）または、カルボキシル基
含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーとを含有するク
リヤー塗料２（「マックフローＯ−５２０クリヤー」、
日本ペイント社製）の２種類である。評価結果を表１に
示す。

【００４２】評価方法 リーク現象発生防止：静電塗装時の電流値が１００μＡ
以上をリーク発生とした。 ○…静電噴霧によるリーク現象発生しなかった ×…静電噴霧によるリーク現象発生した 色再現性：樹脂コートしていない光輝性を有する導電性
顔料を用いた塗膜を基準として、得られた各塗膜の色差
ΔＥを色差計（ＣＲ−２００、ミノルタ社製）を用いて
測定し、以下の基準で評価した。 ４…０≦ΔＥ＜１ ３…１≦ΔＥ＜１．５ ２…１．５≦ΔＥ＜２ １…２≦ΔＥ

【００４３】

【表１】

【００４４】表１の結果から明らかのように、本実施例
１〜７は、本発明の樹脂コートされた導電性顔料を含有
した静電霧化塗装用メタリック塗料組成物を用いた塗膜
形成方法により塗膜を形成したもので、メタリックのメ
タリック感を呈し、静電噴霧によるリーク現象発生せ
ず、色再現性良好であった。特に、樹脂コート量が、
２．５ｇ／導電性基体１００ｇの範囲の実施例１、４お
よび７は、色再現性が特に良好であった。一方、比較例
１〜２は、樹脂コートされた導電性顔料を含有しない静
電霧化塗装用メタリック塗料組成物を用いた塗膜形成方
法により塗膜を形成したもので、メタリックのメタリッ
ク感を呈し、静電噴霧によるリーク現象が発生し、静電
霧化塗装を行えなかった。

【００４５】

【発明の効果】本発明静電霧化塗装用メタリック塗料組
成物は、樹脂コートされた光輝性を有する導電性顔料に
よりメタリック感を発現するとともに、静電霧化塗装時
のリーク現象を起こさず、色再現性良好なメタリックベ
ース塗膜を得ることができる。このリーク現象の防止
は、樹脂コートによって導電性顔料のブリッジ形成が物
理的に遮断されているためと考えられる。

【００４６】本発明により得られる塗装物は、上記メタ
リック感の意匠を呈し、かつ色再現性が良好なため、自
動車、二輪車等の乗物外板、容器外面、コイルコーティ
ング、家電製品、建具類等のメタリック感が要求される
分野において好ましく使用される。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｃ０９Ｃ 1/64 Ｃ０９Ｃ 1/64 3/10 3/10 Ｃ０９Ｄ 5/24 Ｃ０９Ｄ 5/24 5/29 5/29 5/46 5/46 7/12 7/12 201/06 201/06 Ｆターム(参考） 4D075 AA09 AE03 CA23 CA32 CA44 CA47 CB06 CB13 DB02 DB06 DB07 DB12 DB13 DB18 DB20 DB21 DB36 DB38 DB40 DB43 DB47 DB48 DB50 DB53 DB61 DC10 DC11 DC18 DC38 DC41 EA07 EA10 EA43 EB14 EB16 EB20 EB22 EB32 EB33 EB35 EB36 EB38 EB39 EB45 EC23 4J037 AA05 AA25 CC14 CC16 CC23 CC24 DD05 DD10 DD13 FF09 FF11 4J038 CD091 CG001 DB001 DD001 DD121 DF001 DG001 GA06 GA07 HA066 HA216 KA08 KA12 KA15 NA01 NA20 NA23 PA03 PA06 PA12 PB04 PB05 PB07 PB09

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】樹脂コートされた平均粒径５〜４０μｍの
   光輝性を有する導電性顔料およびビヒクルとを含有する
   静電霧化塗装用メタリック塗料組成物。
2. 【請求項２】前記光輝性を有する導電性顔料の樹脂コー
   ト量が１〜５ｇ／導電性基体１００ｇである請求項１記
   載の静電霧化塗装用メタリック塗料組成物。
3. 【請求項３】前記光輝性を有する導電性顔料をＰＷＣ
   で、１〜２０質量％含有する請求項１または２記載の静
   電霧化塗装用メタリック塗料組成物。
4. 【請求項４】前記光輝性を有する導電性顔料が、アルミ
   ニウムフレーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料ま
   たは金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料である請求項
   １ないし３いずれか１項記載の静電霧化塗装用メタリッ
   ク塗料組成物。
5. 【請求項５】基材上に、請求項１ないし４いずれか１項
   記載の静電霧化塗装用メタリック塗料組成物を静電霧化
   塗装してメタリックベース塗膜を形成し、このメタリッ
   クベース塗膜の上に、トップクリヤー塗膜を形成するメ
   タリック塗膜形成方法。
6. 【請求項６】前記トップクリヤー塗膜が、カルボキシル
   基含有ポリマーおよびエポキシ基含有ポリマーをビヒク
   ルの塗膜形成用樹脂とする請求項５記載のメタリック塗
   膜形成方法。
7. 【請求項７】請求項５または６記載のメタリック塗膜形
   成方法により得られた塗装物。