JP2002000214A - 細片化したアブラナ科植物のγ−アミノ酪酸の含量を高める方法 - Google Patents

細片化したアブラナ科植物のγ−アミノ酪酸の含量を高める方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アブラナ科植物の細片化物またはその搾汁の
γ−アミノ酪酸(GABA)含量を高める方法を提供す
ること。 【解決手段】 アブラナ科植物の細片化物またはその搾
汁にグルタミン酸もしくはその塩またはそれらを含有す
る他の食品素材を添加することにより、GABA含量が
高められる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アブラナ科植物の
細片化物またはその搾汁中のγ−アミノ酪酸(以下、G
ABAという)の含量を高める方法、GABA含量を高
められた細片化物あるいは搾汁またはこれらの乾燥粉末
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】GABAは、血圧降下作用を有すること
から、高血圧症の人々のためにGABAを多く含有する
食品の開発が検討されている。例えば、従来から、お茶
の製造過程で、摘採した茶葉を嫌気条件に置き、茶葉中
にGABAを多量に蓄積させたいわゆるギャバロン茶が
知られている。特開平8−173111号公報には、コ
ーヒー生葉を無酸素状態で処理後110℃以上の高温で
熱処理、乾燥処理をする方法でGABA濃度の高いコー
ヒー葉茶を得たことが記載されている。さらに、特開平
9−205989号公報には、茶葉に赤外線を照射して
GABAの含量を向上させることが記載されている。
【0003】他方、ケールをはじめとするアブラナ科植
物は、ビタミン類等の成分を多く含んでおり、健康食品
として注目を浴びている。ケールなどのアブラナ科植物
は、搾汁され、あるいは、乾燥粉末とされて、飲用、食
用に供されている。アブラナ科植物を搾汁してジュース
とする方法は、例えば、特開平10−42841号公報
に記載されている。この方法では、アブラナ科植物(例
えば、キャベツ)を細断し、ビタミンCを添加し、加熱
処理した後、搾汁してジュースとしているため、熱に弱
い栄養分が分解されてしまうという問題がある。さら
に、特許第2796227号公報には、12〜13時間
の予備乾燥と遠赤外線とを組み合わせて、比較的低温で
処理して、アブラナ科植物の乾燥粉末を得る方法を記載
している。しかしながら、従来の方法では、ケールをは
じめとするアブラナ科植物のもつ栄養分しか食用に供さ
れないという欠点がある。そこで、アブラナ科植物に更
に栄養分およびある種の薬効を有する成分(例えばGA
BA)が付加されれば、上記の抽出によるのではなく、
直接多量の有効成分(例えばGABA)が摂取できるの
で、さらなる健康食品としての効果が期待される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、GA
BAを高濃度で含有するアブラナ科植物またはそれらを
利用した食品素材を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らはアブラナ科
植物の葉に含まれる新規な有用成分について検討を行っ
た。その結果、それらの葉中に抗高血圧成分として知ら
れるGABAが含まれていることを発見した。そして、
これらのアブラナ科植物の葉を細片化し、または搾汁に
した後に、グルタミン酸もしくはその塩またはそれらを
含有する他の食品素材を添加することにより、アブラナ
科植物の細片化物またはその搾汁中のGABA含量が高
められることを見出して、本発明を完成させた。
【0006】すなわち、本発明は、アブラナ科植物の葉
の細片化物または搾汁にグルタミン酸もしくはその塩ま
たはそれらを含有する他の食品素材を添加することを特
徴とする、γ−アミノ酪酸含量が高められたアブラナ科
植物の細片化物またはその搾汁の製造方法に関する。
【0007】好ましい実施態様においては、無機塩化物
の存在下、グルタミン酸もしくはその塩またはそれらを
含有する他の食品素材によりγ−アミノ酪酸含量が高め
られる。
【0008】本発明は、また、γ−アミノ酪酸含量を高
めたアブラナ科植物の細片化物またはその搾汁を乾燥粉
末化して、アブラナ科植物の細片化物またはその搾汁の
乾燥粉末を製造する方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】本明細書においてアブラナ科の植
物としては、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、
ケール、大根、ワサビなどが挙げられるが、ケールが特
に好ましい。なお、本発明においてアブラナ科植物とい
うときは、葉、茎、花などの一部をいう場合も含む。ま
た、本発明においてアブラナ科植物の葉とは、葉部のみ
ならず茎部、花部も含む。
【0010】本発明によれば、アブラナ科植物の葉は、
水などで付着した泥などを洗浄した後、必要に応じて、
適当な大きさに細片化される。
【0011】細片化は、当業者が通常使用するスライ
ス、破砕、細断などの植物体を細片化する方法で行われ
る。細片化にはスラリー化も含まれる。スラリー化はジ
ューサー、ブレンダー、マスコロイダー等で処理して行
われる。これにより緑葉は、どろどろした粥状(液体と
固体粒子との懸濁液)になる。緑葉は、細片の80%以
上が平均径1mm以下、好ましくは0.5mm以下、よ
り好ましくは0.1mm以下、最も好ましくは0.05
mmとなるように細片化され、流動性を持たせるように
してもよい。
【0012】細片化された緑葉(以下、細片化物という
こともある)を圧搾して得られる搾汁に対してGABA
富化処理を施しても良い。
【0013】緑葉の搾汁は、緑葉を直接か、あるいは緑
葉を細片化した後に圧搾することにより、そしてさらに
それらを遠心分離またはろ過することにより得られる。
搾汁の調製は、必要に応じて水または緩衝液(等張液を
含む)などの溶液を添加した後に行っても良い。
【0014】GABA富化処理は、アブラナ科植物の葉
の細片化物または搾汁にグルタミン酸もしくはその塩、
またはそれらを含有する食品素材もしくはその抽出物を
添加することによって行われ得る。アブラナ科植物の葉
の表面や内部に存在する酵素がグルタミン酸をGABA
に変化させることにより、GABA含有量が増加するの
である。アブラナ科植物は、特にGABA富化処理に適
しており、GABA含量を高めることができる。
【0015】グルタミン酸の塩としては、例えば、グル
タミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、グルタミ
ン酸カルシウム、グルタミン酸マグネシウムなどの当業
者に公知のグルタミン酸の塩が挙げられる。グルタミン
酸またはその塩は、直接添加してもよいし、高濃度で含
有する溶液を添加してもよい。
【0016】本発明に用いられるグルタミン酸および/
またはその塩を含む他の食品素材とは、用いる葉の細片
化物または搾汁に内在している以外の、グルタミン酸ま
たはその塩を含む食品素材をいう。例えば、昆布、ワカ
メなどの海藻、シイタケ、マイタケのようなきのこ類、
かつお(かつお節を含む)、いわしなどの魚類、あさ
り、しじみなどの貝類、米、小麦、大豆(これらの胚芽
を含む)、茶葉、桑葉、野菜(例えば、トマト)、柑橘
類(中果皮、じょうのう膜)などが挙げられ、グルタミ
ン酸および/またはその塩を比較的高濃度に含む食品素
材が好ましく用いられる。これには可食性タンパク質に
酵素処理、加熱処理などを施してグルタミン酸を遊離ま
たは生成させたものなども含まれる。
【0017】これらの食品素材は、そのままの形態で、
アブラナ科植物の葉の細片化物または搾汁に添加しても
良く、必要に応じて細片化して、あるいは食品素材を搾
汁して、又は水溶液として細片化物または搾汁に添加し
てもよい。また、これらの食品素材の乾燥粉末を細片化
物または搾汁に添加しても良い。あるいはその食品素材
に含まれる成分を水、エタノールなどに、必要に応じて
加熱して溶出させた溶液を添加してもよく、あるいは、
溶出した成分の乾燥粉末を細片化物または搾汁に添加し
ても良い。例えば、グルタミン酸を含有する食品素材が
乾燥昆布である場合、乾燥昆布を細片化してアブラナ科
植物の葉の細片化物または搾汁に浸漬、攪拌することに
より、効率的にGABAが増加される。
【0018】GABA富化処理中の葉の細片化物または
搾汁の温度については、特に限定しないが、グルタミン
酸からGABAへの変換を触媒する酵素が失活されない
範囲程度で行うのが好ましく、通常10〜55℃、好ま
しくは20〜50℃、より好ましくは25〜45℃にて
行われ得る。
【0019】GABA富化処理中の細片化物または搾汁
のpHは、適宜調整してもよい。pHの調製は、GAB
A富化処理を促進させる目的と製品の色を鮮やかな緑色
にする目的のために行われる。pHの調整方法は、当業
者が通常用いるpH調整剤によって調整する方法でよ
い。GABA富化処理中の葉の細片化物または搾汁のp
Hは、通常3.5〜9.0、好ましくは4.0〜8.
0、より好ましくは4.5〜7.0である。また、pH
をアルカリ性側に調整すれば、葉を酸性で処理したもの
および未処理のものと比較して鮮やかな緑色を呈するよ
うになる。pH−3以下で処理を行うことは、GABA
富化効率が低下する場合があるのに加え、葉が褐変する
ためあまり好ましくない。
【0020】GABAの富化処理の時間は、10分〜2
4時間行うのがよい。30分以上行えば、GABA含有
量は飛躍的に増加する。
【0021】GABAの富化処理に用いるグルタミン酸
の量は、富化させたいGABAの量に応じて適宜調整す
ればよいが、通常は、葉の細片化物または搾汁の重量に
対して0.01〜40%(単位は、重量%、以下、特に
ことわらない限り同じ)、好ましくは0.2〜20%、
より好ましくは0.5〜20%のグルタミン酸もしくは
その塩を添加するのがよい。
【0022】GABAの富化処理は、嫌気処理の条件下
で行うことにより効果を得られやすい。嫌気処理は、例
えば、窒素をバブリングなどにより浸漬溶液に直接通す
か、周辺の気体を置換するか、脱気することにより行わ
れ得る。また、GABA富化処理は、適度な温度で保持
することにより、GABAの富化が促進される。
【0023】保温処理や嫌気処理の時間は10分から2
4時間が好ましく、1〜6時間がより好ましい。保温処
理や嫌気処理の温度は、約20〜50℃が好ましく、約
30〜45℃がより好ましい。
【0024】さらに、浸漬溶液にピリドキサールリン
酸、食塩などの無機塩化物などを添加することにより、
または有機酸もしくはATPなどの阻害剤が反応系から
取り除かれることによって、GABA富化効率を高める
こともできる。無機塩化物としては、例えば、塩化ナト
リウム(食塩)、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化
マグネシウムなどの当業者に公知の無機塩化物が挙げら
れる。にがり、粗塩などを用いても良い。これらは、任
意の濃度で添加され得るが、通常、終濃度が0.01〜
20%、好ましくは0.02〜10%となるように添加
される。例えば、100g(湿重量)のケールに対して
3%のグルタミン酸ナトリウムを添加して(pH−6.
0)に30℃にて5時間保持した場合、塩化ナトリウム
を終濃度で0.5重量%となるように添加すれば、添加
しない場合と比較してGABAは3割程度増加される。
【0025】上記のGABA富化処理によって得られた
アブラナ科植物の細片化物または搾汁は、GABA富化
処理を行わないそれと比較して、GABA含有量が増加
する。
【0026】GABA富化処理されたアブラナ科植物の
細片化物または搾汁は、そのまま製品としてもよいし、
蒸煮処理、マイクロウエーブ照射処理、赤外線処理、嫌
気処理等を単独または複数の工程を組み合わせることに
よって加熱保温した後に、必要に応じて冷却処理を施
し、乾燥粉末化するなどして、食品素材、医薬品原料、
または飼料とすることができる。
【0027】特に、マイクロウエーブ照射処理を施すこ
とにより、GABA含有量、ビタミン類(特に水溶性ビ
タミン)、ミネラル類、葉緑素などの有効成分の経時的
な減少が抑制され、かつ緑葉の鮮やかな緑色が褪色する
ことおよび風味が変化することが抑制される。
【0028】マイクロウエーブ照射処理は、褪色に関与
する酵素を失活させて緑色を保持でき、かつ過剰の照射
により有効成分の消失が生じない範囲に留めるのが望ま
しい。マイクロウエーブ照射処理は、照射装置の出力、
マイクロウエーブの波長、照射時間、アブラナ科植物の
種類や量により、適宜調節すればよい。例えば、アブラ
ナ科植物であるケール100g(湿重量)あたり、24
50MHz、500Wのマイクロウエーブを当てる場合
は、0.5〜10分、好ましくは0.5〜5分、より好
ましくは、0.5〜1分処理する。0.5分に満たない
と酵素の失活が不十分で、褪色しやすくなる。また、1
0分以上処理すると有効成分が減少する虞がある。
【0029】また、赤外線処理、嫌気処理、または加熱
保温処理することにより、グルタミン酸をGABAに換
える酵素の活性を促し、GABAの含有量を増加させる
効果がある。
【0030】赤外線処理は、例えば、400W程度の赤
外線照射装置を用いて、被処理物の水分が蒸発しない様
に密閉し、20〜50℃、好ましくは25〜45℃で、
5分〜24時間、好ましくは30分〜6時間保持するこ
とにより行われる。
【0031】嫌気処理は、例えば、ほとんど酸素を含ま
ないか、無酸素の気体で処理することを意味し、真空状
態も含む。気体としては、二酸化炭素ガス、窒素ガスが
好ましく用いられる。保持する温度は、20〜50℃、
好ましくは25〜45℃、保持する時間は、10分〜7
2時間、好ましくは3〜24時間である。
【0032】加熱保温処理は、例えば、密封条件下、2
0〜50℃、好ましくは30〜45℃の温風を当て、3
0分〜24時間、好ましくは、30分〜6時間保持する
ことにより行われる。また、20〜50℃、好ましくは
30〜45℃の温水で、30分〜24時間、好ましく
は、30分〜6時間保持することにより行われる。
【0033】マイクロウェーブ処理によって、得られた
アブラナ科植物の葉中の変質に関する酵素は失活してい
るので、含有している成分を長期間安定して保持するこ
とが可能である。しかも鮮やかな緑色が保持されるた
め、例えば、健康食品あるいはその原料として用いられ
たときの商品価値も高い。
【0034】上記のようにして得られたアブラナ科植物
の加工品は、必要に応じて乾燥し粉末化され得る。
【0035】上記乾燥工程は、水分含量が10%以下、
好ましくは5%以下になるように行われる。例えば、処
理後の葉の細片化物や搾汁を熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、
電磁波乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥などの通常の当業者に
公知の任意の方法を用いて乾燥することにより行われ得
る。加熱による乾燥は、好ましくは50℃〜80℃、よ
り好ましくは55℃〜60℃にて加温により葉の緑色が
変色しない温度および時間内で行われ得る。また、必要
に応じて、デキストリン、シクロデキストリン、デンプ
ン、マルトース等の賦形剤等を添加して噴霧乾燥するこ
ともできる。
【0036】得られた乾燥物をさらに粉末化することに
より乾燥粉末が得られる。粉砕は既知の方法に従い、例
えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などを用
いて行われ得る。乾燥粉末は、必要に応じて篩にかけら
れ、例えば、30〜250メッシュの篩を通過するもの
が用いられ得る。粒径が250メッシュより小さいと食
品素材や医薬品原料としたときに、さらなる加工が行な
われにくいことがある。粒径が30メッシュより大きい
と、例えば、他の食品素材との均一な混合が妨げられ
る。
【0037】乾燥後の粉末は、通常の気流殺菌、高圧殺
菌、加熱殺菌などの方法により、殺菌してもよい。
【0038】本来、アブラナ科植物の生葉には、約30
mg/100g(乾燥重量で約170mg/100g)
のGABAが含まれているが、本発明のGABA富化処
理を行うことにより、たとえば、少なくとも180mg
/100g以上(本発明においては特にことわらない限
り単位は乾燥重量である)、好ましくは、200mg/
100g以上、より好ましくは、300mg/100g
以上、さらに好ましくは、500mg/100g以上、
さらにより好ましくは、1000mg/100g以上に
GABAを増加させることができる。GABA量の上限
については、規定しないが、GABA富化処理に添加す
るグルタミン酸等の濃度、処理時間、溶液の温度、溶液
のpH、前述したマイクロウエーブ照射処理、赤外線処
理、嫌気処理等の工程を単独または複数に組み合わせる
ことによって3000mg/100g程度は富化するこ
とができる。
【0039】上記のようにしてGABA含量の増加され
たアブラナ科植物の葉の細片化物、搾汁、エキスまたは
それらの乾燥粉末は、そのままか、賦形剤、増量剤、結
合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調
味料等と混合されて食品、飲料およびそれらの素材、な
らびに医薬品用の原料として、あるいは家畜、ペットの
ような動物の飼料としても供することができる。例え
ば、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、カルシウ
ム、キトサン、レシチンなどが配合され、さらに糖液や
調味料を加えて味を整えることもできる。あるいは、過
剰のグルタミン酸もしくはその塩を除去することもでき
る。そしてこれらは、必要に応じてハードカプセル、ソ
フトカプセルなどのカプセル剤、錠剤もしくは丸剤とし
てか、または粉末状、顆粒状、茶状、ティーバック状も
しくは、飴状などの形状に成形され得る。これらは、そ
の形状または好みに応じて、そのまま食されても良い
し、あるいは水、お湯もしくは牛乳などに溶いて飲んで
も良いし、または成分を浸出させてから飲んでも良い。
【0040】また、本発明の方法によりGABA富化処
理された素材を原料として、GABAの純品を精製する
ことも可能である。
【0041】
【実施例】(実施例1)原料としてケールを用いた。こ
れを水洗いして付着した泥などを洗い流し、5cm角程
度に切断し、さらに湿式粉砕機を用いて平均径が0.5
mm程度に細片化した。細片化処理により、ほとんどが
平均径1mm以下の細片となっていた。この後、細片を
圧搾し、さらに濾過して繊維成分を除き、搾汁を得た。
ついでこの搾汁(100ml)に30%のグルタミン酸
ナトリウム溶液を、最終濃度が3%となるように添加
し、表1に記載の種々の温度にて4時間攪拌した。これ
を凍結乾燥した後、200メッシュを90%程度が通過
する程度に粉砕して乾燥粉末とした。これらの乾燥粉末
のGABA含量を、アミノ酸自動分析機を用いて以下の
条件にて測定した。結果を表1に示す。なお、表中に未
処理とあるのは、ケールの生葉を細片化し、グルタミン
酸ナトリウム溶液を添加することなく、圧搾して得られ
た搾汁を直ちに凍結し、乾燥し、粉末としたもののGA
BAの含有量であり、GABA富化率とあるのは、前述
した未処理のケールにおけるGABA含量を1としたと
きのGABA含量を倍率で示したものである。
【0042】<アミノ酸自動分析計操作条件> 機 種:JLC−500/V(日本電子株式会社) カラム:LCR−6,4mm×90mm(日本電子株式
会社) 移動相:クエン酸リチウム緩衝液(日本電子株式会社) P−21(pH 2.98, Li 0.105 mol/l) 0→16.3 min P−12(pH 3.28, Li 0.26 mol/l) 16.3→36.1 min P−13(pH 3.46, Li 0.80 mol/l) 36.1→56.0 min P−14(pH 2.83, Li 1.54 mol/l) 56.0→63.4 min P−15(pH 3.65, Li 1.54 mol/l) 63.4→80.0 min 反応液:ニンヒドリン・ヒドリダンチン試液(和光純薬
工業株式会社) 温 度:カラム 35℃(0→16.3 min), 64℃(15.3→31.0
min)44℃(31.0→44.4 min), 72℃(63.4→80.0min) 反応槽 135℃ 流 量:移動相 0.50 ml/min 反応液 0.30 ml/min 測定波長: 570 nm
【0043】
【表1】
【0044】表1から、浸漬溶液の温度を種々変えても
GABAが富化されることがわかる。特に3%のグルタ
ミン酸ナトリウム溶液濃度においては、溶液の温度を3
0℃程度にすることで、もっともGABA含量が増加し
ている。
【0045】(実施例2)実施例1と同様にして作成し
たケールの搾汁に(100ml)に30重量%のグルタ
ミン酸ナトリウム溶液を終濃度が3%となるように添加
した後、クエン酸または炭酸ナトリウムを用いて表2に
記載の種々のpHに調整した。これを30℃に保持しな
がら4時間攪拌した後、凍結乾燥し、200メッシュを
90%程度が通過するように粉砕した乾燥粉末のGAB
A含量を測定した。結果を表2に示した。なお、比較の
ためにケール搾汁にグルタミン酸ナトリウムを添加して
処理することもなく、粉末状の乾燥物としたものを表2
中に未処理として示した。
【0046】
【表2】
【0047】表2からグルタミン酸ナトリウム溶液のp
Hはいずれでもよいが、好ましいpHは5.0程度とい
うことがわかった。
【0048】(実施例3)実施例1と同様にして得た搾
汁に、終濃度が表3に記載の種々の濃度となるようにグ
ルタミン酸ナトリウムを添加した後、クエン酸を用いて
pH5.0に調整した。次いで、これらを30℃に保持
しながら4時間攪拌した後、凍結乾燥し、200メッシ
ュを90%程度が通過するように粉砕した乾燥粉末のG
ABAの含有量を測定した。結果を表3に示した。な
お、比較のためにケール搾汁にグルタミン酸ナトリウム
を添加して処理することもなく、粉末状の乾燥物とした
ものを表3中に未処理として示した。
【0049】
【表3】
【0050】表3より、グルタミン酸ナトリウムの溶液
をケールの搾汁に添加することにより、GABAが増加
することがわかる。また、溶液の濃度によってGABA
の含有量が変化することがわかった。
【0051】(実施例4)実施例1と同様にして得た搾
汁に、終濃度が3%となるように30重量%グルタミン
酸ナトリウムを添加した後、クエン酸を用いてpH5.
0に調整した。これを30℃に保持しながら表4に記載
の種々の時間攪拌した後、凍結乾燥し、200メッシュ
を90%程度が通過するように粉砕し、乾燥粉末を製造
した。その後、GABAの含有量を測定した。結果を表
4に示した。なお、比較のためにケール搾汁にグルタミ
ン酸ナトリウムを添加して処理することもなく、粉末状
の乾燥物としたものを表4中に未処理として示した。
【0052】
【表4】
【0053】表4より、30分以上インキュベートする
ことにより、十分にGABAが富化されることがわかっ
た。
【0054】(実施例5)実施例1と同様にして得た搾
汁に、200メッシュを90%程度が通過する程度に粉
砕した市販の乾燥昆布を50g添加した後、水によって
溶液を希釈し、終濃度0.1%のグルタミン酸溶液と
し、さらに、クエン酸を用いてpH6.0に調整した。
これを30℃に保持しながら4時間攪拌した後、凍結乾
燥し、200メッシュを90%程度が通過するように粉
砕し乾燥粉末を製造した。その後、GABAの含有量を
測定した。結果を表5に示した。なお、比較のためにケ
ール搾汁に乾燥昆布を添加して処理することもなく、粉
末状の乾燥物としたものを表5中に未処理として示し
た。
【0055】
【表5】
【0056】表5より、本発明のGABA富化処理が、
グルタミン酸を含有する食品素材を用いても行われ得る
ことがわかった。
【0057】(実施例6)アブラナ科植物であるケー
ル、キャベツ、ブロッコリーの葉から実施例1と同様に
して搾汁を作成した。これらの搾汁にクエン酸を適量添
加してpH−5.0に調整した。次いで、30重量%の
グルタミン酸ナトリウム溶液を終濃度が3%となるよう
に添加した後、30℃にて5時間攪拌した。これを凍結
乾燥し、200メッシュを90%が通過する程度に粉砕
し乾燥粉末を製造した。これらのGABAの含有量を測
定した。結果を表6にした。なお、比較のためにケー
ル、キャベツ、およびブロッコリーの搾汁にグルタミン
酸ナトリウムを添加することなく、粉末状の乾燥物とし
たものを表6中に未処理として示した。
【0058】
【表6】
【0059】表6より、本発明のGABA富化処理が、
ケールのみならずアブラナ科植物であるキャベツおよび
ブロッコリーにおいても有効であることがわかった。
【0060】
【発明の効果】アブラナ科植物の細片化物またはその搾
汁にグルタミン酸もしくはその塩またはそれらを含有す
る他の食品素材を添加することにより、アブラナ科植物
の細片化物またはその搾汁のGABA含有量が高められ
る。また、この細片化物または搾汁を原料として、ある
いはこれらの乾燥粉末を原料としてGABAを高濃度で
含有するアブラナ科植物の食品素材、医薬品原料、飼料
を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2B150 AE08 AE13 BA02 BC01 BC06 CA10 4B016 LC07 LE03 LE05 LG16 LK10 LP01 LP08 4B018 MD19 MD61 ME04 MF06 MF07 MF12

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アブラナ科植物の細片化物またはその搾
    汁にグルタミン酸もしくはその塩またはそれらを含有す
    る他の食品素材を添加することを特徴とする、γ−アミ
    ノ酪酸含量が高められたアブラナ科植物の細片化物また
    はその搾汁の製造方法。
  2. 【請求項2】 無機塩化物の存在下、グルタミン酸もし
    くはその塩またはそれらを含有する他の食品素材により
    γ−アミノ酪酸含量が高められる、請求項1に記載の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の方法によりγ
    −アミノ酪酸含量が高められたアブラナ科植物の細片化
    物またはその搾汁を乾燥する工程、および粉末化する工
    程を含む、アブラナ科植物の細片化物またはその搾汁の
    乾燥粉末を製造する方法。
  4. 【請求項4】 前記アブラナ科植物がケールである、請
    求項1から3のいずれかの項に記載の方法。
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