JP2001505061A - バクテリア性エラスチン結合タンパク、これをコードする核酸配列およびこれを使用した診断並びに治療方法 - Google Patents

バクテリア性エラスチン結合タンパク、これをコードする核酸配列およびこれを使用した診断並びに治療方法

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Abstract

(57)【要約】 接着性マトリックス分子を識別する微生物表面成分(MSCRAMM)を開示する。これはそのエラスチンと結合する能力、SDSの存在下で抑制された活性、およびチオール還元剤の存在下で増強される活性をもつことにより特徴付けられる。より詳細には、該MSCRAMMはバクテリアを起源とし、エラスチン結合タンパク群の一員である。一態様においては、該MSCRAMMは、本明細書にSEQ ID NO:2として定義したアミノ酸配列をもつポリペプチドを含み、またその活性フラグメントにも及ぶ。バクテリア感染およびその余病並びにその関連する症状におけるMSCRAMMの役割に言及し、かつ該MSCRAMMが調製され、また診断手順および薬物探索アッセイを包含するテストにおいて、並びに対応する治療法で利用可能な薬理組成物において使用できる。該MSCRAMMのアゴニストおよびアンタゴニスト両者も提案し、かつ例示する。

Description

【発明の詳細な説明】 バクテリア性エラスチン結合タンパク、これをコードする核酸配列およびこれを 使用した診断並びに治療方法 政府による援助 本発明に至る研究は、部分的にNIHによる認可HL-26499およびHL-41926によっ て援助された。該政府は本発明の権利の幾分かを共有できる。 発明の技術的分野 本発明は、一般的には接着性マトリックス分子(MSCRAMM)を識別する微生物表 面成分およびその活性なポリペプチドフラグメント、並びに該タンパクおよび活 性ポリペプチドフラグメントをコードする、ヌクレオチド配列に関連するもので ある。より詳細には、本発明はバクテリア表面上のタンパクに関連し、該タンパ クは細胞外マトリックス(ECM)の成分と結合し、該成分はエラスチンと呼ばれ、 また本発明はこのタンパク−タンパク相互作用に関連する、診断並びに治療法に 関するものである。 発明の背景 該細胞外マトリックス(ECM)は、至る所に見られる構造であって、事実上全て の脊椎動物の組織および器官の構造、弾性および剛性に寄与している。最近の数 十年間に、該ECMの付随的な生物活性が同定された。該ECMの独特の成分が一また は数種の細胞性事象、例えば接着、増殖、および遺伝子発現の調節を媒介するこ とが分かっている(1-4)。これら細胞性ECMの相互作用は、また発生、創傷治癒、 および腫瘍細胞の転移を包含する、多くの生理的並びに病理的な過程に導く(5- 7)。ところで、細胞表面ECMレセプタが、これらの生物学的事象のキー媒介体で あることが分かっている。これらECMレセプタの多くは、インテグリンと呼ばれ るダイマー型のレセプタ複合体の組に属する(8,9)が、非−インテグリンレセプ タECMも同定されている(10)。真核細胞以外にも、種々の病原性バクテリア が、細胞表面ECM結合分子を介して、宿主ECMと特異的に相互作用している。病原 性バクテリアの細胞表面ECM結合分子は、包括的にアドヘジン(adhesins)または 微生物表面成分識別接着性マトリックス分子(MSCRAMMS)として知られる一群のタ ンパクに属し、一般的には疾患の発病のキー段階において重要な役割を演じてい るものと考えられている(11,12)。 多くの重要な病原性バクテリアの中で、抗生物質に対する多耐性を発現し、か つスタフィロコッカスオーレウス(Staphylococcus aureus(S.オーレウス))の如 く、幅広い疾患のスペクトルを生じる上で有効なものはほんの僅かである。S.オ ーレウスは、感染性の心内膜炎、骨髄炎、大動脈炎、肺炎、および火傷様皮膚症 候群等の諸疾患の原因物質の一つであることが確認されている(13-15)。更に、S .オーレウスの幾つかの菌株は、血行中に滲出する傾向があって、菌血症および それに引き続く転移性の膿瘍の形成を引き起こす。これらの特徴は、S.オーレウ スが各々のターゲット組織内で発現された宿主の種々の成分と相互作用できるこ とを示している。この仮説と一致して、S.オーレウスは、主なECM成分を包含す る多くの宿主決定因子、例えばコラーゲン(16)、フィブロネクチン(17)、ラミニ ン(18)、プロテオグリカン(19)およびエラスチン(20)と結合することが分かって いる。 S.オーレウスの多くの臨床的な単離体は、フィブロネクチンに対して特異的に 結合し、またフィブロネクチン結合性をもたない変異菌株は、心内膜炎の動物モ デルにおける、損傷を受けた心臓弁でコロニー形成する能力が減じられている(2 1)。該S.オーレウス−コラーゲン結合相互作用は、スイタルスキー(Switalski) 等(22)により、骨髄炎および敗血性関節炎に関連するものとされている。ここで 該コラーゲン接着の発現は、S.オーレウスのタイプIIコラーゲン−リッチ軟骨へ の付着にとって必要かつ十分であることが分かっている。これらは、またマウス 実験による敗血性関節炎モデルにおいて、コラーゲンアドヘジン−正の菌株を注 入した動物の70%を越えるものが敗血性関節炎を発症し、一方で該コラーゲンア ドヘジンを欠いた同質遺伝子性の変異菌株で攻撃した動物の27%未満が該疾患の 臨床的な症状を発現することも立証されている(23)。該基底膜ECMの主成分の一 つとしてのラミニンは、腫瘍細胞転移において重要な役割を演じることが提案さ れている。侵襲性のS.オーレウスは、該基底膜成分であるラミニンと相互作用す るが、非−侵襲性のS.エピデルミディス(epidermidis)は結合性を示さない(18) ことが示された。これらを一緒に考慮すると、これらの観測は、S.オーレウス-E CM相互作用が、接着、コロニー形成および侵襲に関して、ターゲット宿主組織に おいて重大な役割を演じていることを示している。 エラスチンの主な生理的役割は、組織および器官に可逆性の弾性特性を付与す ることにある(24)。エラスチンの発現は肺、皮膚および血管において最大である が、該タンパクは、S.オーレウスに対する哺乳動物宿主において広範に発現され る。エラスチン結合は、S.オーレウスが該宿主のエラスチンーリッチ組織を攻撃 するためのメカニズムであり得、この相互作用の細胞的および生化学的特徴(20) は、以前の研究において検討された。エラスチンに対するS.オーレウスの結合は 迅速で、可逆的、かつ飽和性で、高いアフィニティー(低いnM)をもち、かつリ ガンド特異的である。更に、EbpS(スタフィロコッカスオーレウスのエラスチン 結合タンパク)と呼ばれる、25kDaの細胞表面エラスチン結合タンパクが単離さ れ、またEbpSが、エラスチン−リッチ宿主ECMに対するS.オーレウスの結合を媒 介することが報告された。EbpSは、構造的に哺乳動物の細胞表面エラスチン結合 タンパクとは異なり、該2種のエラスチン結合タンパクは、エラスチン内の異な る領域を認識する。EbpSは、エラスチンのN-末端30kDaフラグメント内のある領 域に結合し、一方で該哺乳動物エラスチンレセプタは、エラスチンのC-末端の半 分におけるヘキサペプチド配列VGVAPGを認識する(25)。 上記のことから、EbpSのより一層の理解は、バクテリア感染およびその後遺症 に対する新規な診断並びに治療戦略の開発努力に寄与し、またこのような診断並 びに治療のための組成物および方法の分野において、付随する要求がある、こと は明白である。従って、本発明の意図することは、この必要性を満たすことであ る。 発明の概要 本発明によれば、ヌクレオチド配列が提供され、該配列はバクテリア性MSCRAM Mをコードし、該MSCRAMMは、バクテリアによる宿主細胞への付着、コロニー形 成および侵入に関連付けられている。 更なる態様において、本発明は、バクテリア感染の診断および治療において有 用な、該MSCRAMMタンパク、生物学的に活性なそのフラグメント、および抗体並 びにその結合パートナーを提供する。これらの試薬は、エラスチン−含有宿主組 織、例えば肺、皮膚および血管の感染を治療する上で特に有用である。本発明の MSCRAMMに関連する、対応する薬理組成物および治療法も意図され、該MSCRAMMは 、広範な諸疾患およびその他の状態、例えば非−限定的例として腫瘍細胞の転移 、創傷治癒、感染性心内膜炎、骨髄炎、大動脈炎、肺炎および火傷様皮膚症候群 等の状態に導く可能性がある。 本発明の一局面は、以下の諸特徴を有するMSCRAMMを含む。 a) これはエラスチンと結合する。 b) その活性はSDSの存在下で阻害される。 c) チオール還元剤の存在下で、高い活性をもつ。 もう一つの局面において、該MSCRAMMは約25kDaなる予想分子量および4.9なる 予想PIを有する。より詳しくは、本発明のMSCRAMMはスタフィロコッカスオーレ ウスから単離される。 本発明の他の局面は、エラスチン結合特性を維持している、MSCRAMMの活性ポ リペプチドフラグメントおよび関連するポリペプチドにも及ぶ。一態様において は、このようなポリペプチドは、MSCRAMMのエラスチン結合サイトに対応するア ミノ酸配列を含み、また8〜80個のアミノ酸を含む。このような態様の一つにお いて、該ポリペプチドは該MSCRAMMのN-末端59アミノ酸からなるアミノ酸配列を もつ。もう一つの態様において、このポリペプチドは10〜46個のアミノ酸からな る。更に別の態様において、該ポリペプチドは12〜21個のアミノ酸からなる。更 に別の態様において、該ポリペプチドは約10個のアミノ酸を含む。好ましい態様 において、該MSCRAMMはSEQ ID NO:2またはその保存性置換を含むSEQ ID NO:2に 示すアミノ酸配列を有する。 他のこのような態様において、該ポリペプチドは、MSCRAMMのエラスチン結合 サイトに対応し、これはSEQ ID NO:16またはその保存性置換を含むSEQ.ID NO:16 に示すアミノ酸配列(SEQ ID NO:2のアミノ酸(AAs)18-23;TNSHQD)を含む。一 特定の態様において、該ポリペプチドは、SEQ ID NO:10(SEQ ID NO:2のAAs 1-78 )またはその保存性置換を含むSEQ ID NO:10に示すアミノ酸配列をもつ。他の特 定の態様において、該ポリペプチドは、SEQ ID NO:12(SEQ ID NO:2のAAs 1-34) またはその保存性置換を含むSEQ ID NO:12に示すアミノ酸配列をもつ。更に他の 特定の態様において、該ポリペプチドは、SEQ ID NO:13(SEQ ID NO:2のAAs 14-3 4)またはその保存性置換を含むSEQ ID NO:13に示すアミノ酸配列をもつ。更に別 の特定の態様において、該ポリペプチドは、SEQ ID NO:14(SEQ ID NO:2のAAs 14 -24)またはその保存性置換を含むSEQ ID NO:14に示すアミノ酸配列をもつ。更に 別の特定の態様において、該ポリペプチドは、SEQ ID NO:15(SEQ ID NO:2のAAs 14-59)またはその保存性置換を含むSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列からなる。 更に別の特定の態様においては、該ポリペプチドは、SEQ ID NO:18(SEQ ID NO:2 のAAs 18-34)またはその保存性置換を含むSEQ ID NO:18に示すアミノ酸配列を含 む。好ましい一態様において、該ポリペプチドは、更にS.オーレウスのエラスチ ンに対する結合を阻害する。 本発明は、またMSCRAMMまたはその活性ポリペプチドフラグメントをコードす る、組み換えDNA分子またはクローン化遺伝子、またはその縮重変異型、好まし くは核酸分子、特に組み換えDNA分子またはクローン化遺伝子にも関連する。一 特定の態様において、該核酸は第3図(SEQ ID NO:1)に示されたDNA配列をもつMS CRAMMをコードする。 もう一つのこのような態様において、核酸はエラスチンと結合するポリペプチ ドをコードし、8〜80個のアミノ酸からなり、接着性マトリックス分子を認識す る、微生物の表面成分(MSCRAMM)の該エラスチン結合サイトに対応する、アミノ 酸配列を含む。一つの特定の態様においては、該核酸はSEQ ID NO:9の核酸配列 をもつ。他の特定の態様においては、該核酸はSEQ ID NO:11の核酸配列を有して いる。 本発明の該MSCRAMMまたはそのタンパクの該バクテリア性DNAは、相補的配列お よび同一のまたは代替種におけるゲノムクローンをスクリーニングするためのプ ローブとして調製できる。本発明は、このようにして調製したプローブにも及び 、該プローブは、該MSCRAMMに対するcDNAおよびゲノムライブラリーをスクリ ーニングするのに利用できる。特に、このようなプローブはSEQ ID NO:3に基づ く縮重プローブであり得る。また、該MSCRAMMの5'および3'配列、例えばSEQ ID NOS:3および4を指向するプローブを使用して、PCRによって関連する配列を増幅 することができる。例えば、該プローブは種々の公知のベクター、例えばファー ジλベクターを使用して調製できる。本発明は、またこのようなベクターを含む プラスミドの調製、およびアンチセンスRNAまたは第3図(それぞれ、SEQ ID NO :1)に示されたDNA配列の何れかまたは全てのmRNAを攻撃するであろうリボザイム を発現するベクターを構築するための該DNAの利用をも含む。従って、アンチセ ンスRNAおよびリボザイムの調製も、本発明に含まれる。 本発明は、また本明細書に明記される活性を有するMSCRAMMタンパクをも包含 し、これは記載された、上記のかつSEQ ID NO:2から選択されるアミノ酸配列を 示す。 本発明の更なる態様においては、かくして決定された、該組み換えDNAまたは クローン化遺伝子の完全なDNA配列を、機能可能に発現制御配列と結合して、適 当な宿主内に組み込むことができる。従って、本発明はまた、該MSCRAMM、その 活性ポリペプチドフラグメントおよび本発明のポリペプチドをコードするDNA配 列を含む、該クローン化遺伝子または組み換えDNA分子によって形質転換した、 単細胞性宿主にも及ぶ。より詳細には、単細胞宿主を、上記の配列から決定され た完全なDNA配列または該DNA配列のフラグメント、例えばSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:9もしくは11により形質転換する。 本発明の幾つかの好ましい態様のその他の好ましい特徴によれば、生物学的に 活性な動物またはヒトMSCRAMM、またはその活性なポリペプチドフラグメント、 または本発明のポリペプチドを製造するために、組み換え発現系を提供する。 該MSCRAMMの概念は、特異的なバクテリア細胞表面タンパクが、宿主組織中の 対応する特異的成分、例えば前に記載したようなエラスチン等の存在を予想して いる。従って、各MSCRAMMの正確な構造は理解可能なように変動して、この結合 および活性特異性を達成するであろう。診断並びに治療用途の広範なスペクトル をもつ可能性を与えるのは、バクテリア感染に導く一連の事象における該MSCRAM Mのこの特異性および直接的関与である。 本発明は、当然のことながら、天然源からの単離および/またはここに例示す るような公知の組み換え技術による単離を包含する、幾つかの該MSCRAMMの調製 並びに単離手段をも意図する。従って、本発明はこのような処方をもその範囲に 含むものとする。該MSCRAMM、その活性ポリペプチドフラグメントおよびここに 例示する本発明のポリペプチドの後の単離も、本発明の一部として含まれる。本 明細書に記載する該ゲノムDNAの単離およびアミノ酸配列は、このような組み換 え技術による該MSCRAMMの再生を容易にし、従って本発明は、組み換えDNA技術に より、宿主系で発現するための、記載されたDNA配列から調製された発現ベクタ ー、並びに得られた形質転換宿主にも及ぶ。 本発明は、該MSCRAMMの宿主組織に対する結合を妨害または増強することによ り、ターゲット哺乳動物細胞に対する結合活性を調節するのに有効な、有力な薬 物のスクリーニングのためのアッセイ系をも包含する。一例においては、該テス ト薬物を、該宿主組織に結合する該MSCRAMMを含有するまたは該MSCRAMMを含有す る抽出物を含有する細胞サンプルに投与して、任意の化学的サンプル(DNAを含 む)に、あるいは該テスト薬物に対する該MSCRAMMの結合活性に及ぼすその作用 を、コントロールと比較して決定する。 更に重大なことに、このアッセイ系は、該MSCRAMMに結合でき、結果として感 染性を阻害し、もしくは増強する薬物または他の実在物を同定するのに適したも のであり得る。このようなアッセイは、特定の感染症に対して特異的である薬物 の開発において有用であろう。例えば、このような薬物は感染を予防するのにあ るいは、例えば抗生物質と共に感染症を治療するのに利用できるものと考えられ る。 更に別の態様において、本発明はMSCRAMMの該活性に対するアンタゴニスト、 特にMSCRAMMのエラスチンに対する結合を阻害する、薬剤または分子をも意図す る。特別な態様において、該アンタゴニストは、MSCRAMMのエラスチン−結合ド メインの一部の配列をもつペプチドであり得る。 本発明のMSCRAMMの特徴の一つは、エラスチンの30kDaのN-末端フラグメントと 結合することである。該エラスチンは弾性を必要とする組織、例えば肺、皮膚お よび血管中に存在する。 本発明の診断的な有用性は、バクテリア感染についてのスクリーニングアッセ イにおける、本発明のMSCRAMMの利用にまで及ぶ。 同様に、本発明は該MSCRAMMに対するおよびその活性ポリペプチドフラグメン ト並びに本発明のポリペプチドに対する、天然産のおよび組み換えにより調製し たものを包含する抗体にも及ぶ。例えば、該抗体を発現ライブラリーのスクリー ニングに利用して、該MSCRAMMをコードする遺伝子または遺伝子群を得ることが 可能である。このような抗体は、公知の遺伝子技術により調製されるポリクロー ナルおよびモノクローナル抗体、並びに2−特異性(キメラ)抗体、およびその 他の機能を含み、結果としてバクテリア感染性の調節能との組み合わせで、付随 的な診断用途に適したものとされた抗体を含むことができる。 かくして、該MSCRAMM、その活性ポリペプチドフラグメント、本発明のポリペ プチド、その類似体、同族体および/または模倣体、並びにこれらに対して発生 される任意のアンタゴニストまたは抗体は、種々の診断技術、例えばイムノアッ セイ、例えばラジオイムノアッセイとの組み合わせで使用でき、該ラジオイムノ アッセイでは、例えば放射性添加剤または放射性ヨウ素化によって標識されてい る、該MSCRAMMに対する抗体を使用する。 イムノアッセイにおいて、該アンタゴニストまたはその抗体等のコントロール 量を調製し、酵素、特異的結合パートナーおよび/または放射性元素で標識し、 次いで細胞サンプル中に導入することができる。該標識された物質またはその結 合パートナーが、該サンプル中のサイトと反応する機会をもった後に、生成する 物体を公知の技術により検討することができる。該公知技術は結合した該標識の 性質に応じて変えることができる。 放射性標識、例えば同位元素3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、5 9 Fe、90Y、125I、131Iおよび186Reを使用した例においては、公知の一般的に入 手できる計数手順が利用できる。該標識が酵素である例においては、現在利用さ れている当分野で公知の比色分析法、分光光度法、蛍光分光法、電流滴定法また は気体定量法の何れかによって、検出を実施することができる。 本発明は、該MSCRAMMの存在の程度の定量分析のための、あるいは該MSCRAMMの 活性を模倣もしくは遮断できる薬物または他の薬剤を同定するための、テスト キットとして調製できるアッセイ系を包含する。この系またはテストキットは、 該MSCRAMM、そのアゴニストおよび/またはアンタゴニストに対する標識の、本 明細書で論じた放射性物質および/または酵素結合技術の一つにより調製した標 識成分、および1種以上の付随的な免疫化学的試薬を含み、該試薬の少なくとも 一つは遊離のまたは固定化されたリガンドであり、該リガンドは該標識成分、そ の結合パートナー、測定すべき該成分の1種またはその結合パートナーの何れか と結合できるものである。 更なる態様において、本発明は、幾つかの治療法に関連し、該方法は該MSCRAM M、そのサブユニット、またはその活性ポリペプチドフラグメント、または本発 明のポリペプチドに基づくか、あるいは同一の活性をもつものと決定された薬剤 または他の薬物に基づく。第一の治療法は、該MSCRAMMまたはそのサブユニット の結合活性に因果関係をもつまたはそれに伴う症状の出現の予防と関連し、該MS CRAMMまたはそのサブユニットの生産および/または活性を調節できる薬剤を、 宿主内でのこれら症状の発現を阻害するのに有効な量で、単独であるいは混合物 として投与することを含む。例えば、該MSCRAMMまたはタンパクに対する薬物ま たはこれに結合するパートナーを投与して、バクテリア感染を防止することがで きる。より具体的には、S.オーレウス感染の治療において利用する。 より詳しくは、この治療法は、一般的に本明細書においては、薬理組成物の投 与による種々の病理または他の細胞機能不全および障害の治療法を含むものとす る。該薬理組成物は該MSCRAMMまたはそのサブユニットの有効な阻害剤または増 強剤、もしくは例えば本発明の更なる局面に従って準備され利用される、薬物ス クリーニングアッセイによって開発された、同様に有効な他の薬物を含むことが できる。例えば、該MSCRAMMまたはSEQ ID NO:2によって代表されるような、タン パクに対する薬物または他の結合パートナーを投与して、バクテリア感染を防止 することができる。 特に、該MSCRAMM、その活性ポリフラグメントおよび本発明のペプチド、その 抗体、アゴニスト、アンタゴニストは、抗生物質療法が適当である場合には、投 与用の薬理処方物として調製できる。 従って、本発明の主な目的は、MSCRAMMおよびバクテリア感染に関連する幾つ かの特徴および活性を呈する、精製された状態にあるそのサブユニットを提供す ることにある。 本発明の更なる目的は、該MSCRAMMおよびそのサブユニットに対する抗体、お よび組み換え手段を包含するその調製法を提供することにある。 更に、本発明の目的は、侵襲性、自発性または原因不明の病理的状態が存在す るものと考えられる哺乳動物における、該MSCRAMMおよびそのサブユニットの存 在を検出する方法を提供することにある。 本発明の更に別の目的は、哺乳動物における、該MSCRAMMおよび/またはその サブユニットの活性を模倣するのに、あるいはその悪影響を阻止するに潜在的に 有効な、薬物、薬剤等の物質をスクリーニングするための方法並びに関連するア ッセイ系を提供することにある。 更に別の本発明の目的は、該MSCRAMMまたはそのサブユニットの量または活性 を調節して、あるいは有利な場合には該活性を増強して、その存在または活性の 不利な結果を変更するように、哺乳動物を治療する方法を提供する。 更に他の本発明の目的は、該MSCRAMM-含有バクテリアまたはそのサブユニット の量または活性を調節して、侵襲性、自発性または原因不明の病理的な状態のも たらす不利な結果を治療し、もしくは回避するための、哺乳動物を治療する方法 を提供する。 本発明の更に他の目的は、治療法で使用するための薬理組成物を提供すること にあり、該組成物は該MSCRAMM、そのサブユニット、その活性なポリペプチドフ ラグメント、該MSCRAMMに対する結合パートナーとしての本発明のポリペプチド を含むか、あるいはこれに基づくものであり、あるいは該MSCRAMMの産生を制御 する、もしくは該MSCRAMMの活性を模倣し、もしくは拮抗する薬剤または薬物に 基づくものである。 その他の目的並びに利点は、当業者には以下の例示的な図面を参照して進めら れる以下の説明を吟味することにより明らかとなろう。 図面の簡単な説明 第1図 :S.オーレウス由来のゲノムDNAのサザン分析に関する図である。S.オー レウス菌株12598から単離したゲノムDNAを、EcoRI(レーンA&C)またはEcoRI/Hind III/Hinc II(レーンD)により消化し、pEBPS-1をEcoRI(レーンB)で消化した。サ ンプルを、1%TAE-電気泳動およびニトロセルロースに対するサザンブロットによ り分画した。膜を縮重オリゴヌクレオチド(レーンA&B)またはpKS-2.6の2.6kbのH ind III/Hinc II挿入断片とハイブリッド化した(レーンC&D)。このハイブリッド 化フラグメントのサイズは、Hind III−消化λDNAマーカーの移動パターンから 決定した。第2図 :該pKS-2.6挿入断片の物質的マップを示す図である。種々の制限エンド ヌクレアーゼによって認識されたサイトが示されている。該ebpSの読み取り枠の 位置および方向は、それぞれ陰影を付したボックスおよび矢印により示されてい る。第3図 :ebpSの一次配列を示す。ヌクレオチドおよび予想されたアミノ酸配列は それぞれ該読み取り枠および翻訳開始コドンの第一のヌクレオチドから開始した 番号付けがされている。該推定の-35および-10ヘキサマーおよびリボソーム結合 サイトが示されている。細胞表面EbpSの実験的に決定されたN-末端配列が、太字 で示され、またEbpSの実験的に決定されたアミノ酸配列には下線が施されている 。該組み換え構築体のN-末端アミノ酸は、完全な長さのrEbpSおよびCNBr−開裂 されたrEbpSのN-末端フラグメント両者から配列決定された。インフレーム(in-f rame)終止コドンはアステリスクにより示されている。第4図 :E.コリにおけるebpS遺伝子の発現。このebpSの読み取り枠は、PCR-増幅 され、かつN-末端に結合したポリヒスチジン残基をもつ融合タンパクとして、E. コリ内で発現された。Ni++-NTAアフィニティークロマトグラフィーにより、3種 の異なる正のクローンから精製されたrEbpSを、10% SDS-PAGEにより分画し、ク ーマシーブリリアントブルーR-250(レーンB-D)により染色した。サイズ標準の移 動パターンをレーンAに示す。第5図 :rEbpSは、特異的に固定化されたエラスチンペプチドに結合する。約106 cpmの放射性標識されたrEbpSを、1mlの該エラスチンペプチドアフィニティー樹 脂と共に、2mgの未標識のエラスチンペプチドの不在下(レーンC)または存在下( レーンD)で、1.5mlの結合バッファー中で、室温にて2時間インキュベー トした。十分に洗浄した後、結合タンパクを1% SDSバッファーで溶出し、10% SD S-PAGEおよびオートラジオグラフィーにより解析した。該出発物質は、40kDaの 分解生成物以外に、元の45kDarEbpS(レーンB)を含んでいた。14C-標識したサイ ズ標準はレーンAに示されている。第6図 :rEbpSは、特異的にS.オーレウスの放射性標識したエラスチンに対する 結合を阻害する。放射性ヨウ素化エラスチン(20ng)を、2x108個の生きたS.オー レウス細胞と共に、未標識のrEbpSの不在下または1.0、2.0、5.9、9.8または19. 6μMの存在下もしくは26μMのマウスDHFRの不在下または存在下で、200μlの TSB中で、室温にて1時間インキュベートした。これら細胞を遠心処理によって ペレット化し、得られた上澄を捨てた。ペレットを1mlのTSB中に再懸濁し、新 たなチューブに移し、更に2回TSBで洗浄した。細胞と結合した放射能をガンマ カウンターを使用して測定した。3回の測定の結果を、平均%結合±標準偏差と して示す。第7図 :細胞表面標識rEbpSは、rEbpSに対する抗体と結合する。IODOGEN放射性 ヨウ素化およびその後のリゾスタフィン(lysostaphin)消化(レーンA)により調製 した細胞表面標識抽出物(107cpm)を、3mlのブタIgG-Affi-Gel10に予備吸収させ て、該出発物質からタンパクを除去した。表面標識したタンパクA(レーンB)を 含まない出発物質を、1mlの抗-rEbpS IgGアフィニティー樹脂と共に、2mgの未 標識rEbpSの不在下(レーンC)または存在下(レーンD)にて、2mlの結合バッファ ー中で、室温にて2時間インキュベートした。バッファーで流出液中の放射能が バックグラウンドレベルに達するまで洗浄した後、結合した表面タンパクを1% S DSで溶出し、15%SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーによって解析した。該 アフィニティー樹脂と結合したタンパクのバンド強度(25&35kDa)を、結合の定量 化のために走査した。第8図 :抗-rEbpS IgGのFabフラグメントは、S.オーレウスのエラスチンに対す る結合を阻害する。放射性標識したエラスチンを、生きたS.オーレウスと共に、 イムノrEbpS IgG Fabの不在下または6、10、20、50および100μgのその存在下 で、または20および100μgの予備−免疫(pre-immune)Fabフラグメントの存在下 または不在下で、2mlの結合バックグラウンド中で、室温にて1時間インキ ュベートし、結合を以前に記載したように定量化した。データを、3回の測定に ついて平均%結合±標準偏差として示す。第9図 :EbpS中のエラスチン結合サイトは、残基14-19内に含まれる。種々のEbp Sフラグメントおよび組み換え構築体(実施例2に記載)のエラスチン結合特性 を、トロポエラスチンに対する特異的結合能により評価した。該アミノ末端合成 ペプチドの不活性性は、結合阻害の不能性により決定した。残基14-59(陰影を付 した領域)はエラスチン結合活性をもつ全てのフラグメントに共通である。第10図 :組み換えEbpSタンパクの発現。組み換えEbpSタンパクを、Ni-NTAアフィ ニティークロマトグラフィーにより精製し、15% SDS-PAGEにより分画し、クーマ シーブリリアントブルーR-250で染色し(a)、あるいはニトロセルロースに転写し 、抗-rEbpS IgG(b)またはtrEbpS-2に予備吸収させた抗-rEbpS IgG(c)と反応させ た。レーンA:オボアルブミン、レーンB:rEbpS、レーンC:trEbpS-1、レーンD:trE bpS-2およびレーンE:リゾチーム。該組み換えタンパクのおおよその分子量を、 オボアルブミン、リゾチームおよび予備染色したサイズ標準の移動パターンから 予想した。第11図 :組み換えtrEbpS-1およびtrEbpS-2は、エラスチンに結合する。10% SDS- PAGEにより分画し、ニトロセルロース膜にウエスタンブロット処理した、トロポ エラスチン(3μg)を、5μMのビオチン処理したtrEbpS-1(レーンAおよびB)ま たはtrEbpS-2(レーンCおよびD)と、3mg/mlのエラスチンペプチドの不在下(レ ーンAおよびC)または存在下(レーンBおよびD)にて反応させた。切り取られたE bpSタンパクの結合を、その後のアビジン-ホースラディッシュパーオキシダーゼ および4-クロロ−ナフトールと共にインキュベートすることにより可視化した。第12図 :切り取られた、組み換えEbpSタンパクは、S.オーレウス細胞の放射性標 識したエラスチンに対する結合を阻害する。生きたS.オーレウス細胞(2x108個) を、rEbpS、trEbpS-1、またはtrEbpS-2の不在下または増大する濃度での存在下 で、200μlのTSB中で室温にて1時間、放射性標識したエラスチン(10ng)と共に インキュベートした。このアッセイを遠心処理により停止させ、細胞ペレットを 2回1mlのTSBで洗浄した。結合の程度を、該ペレットと結合した放射能を測 定することにより定量した。3回の測定の結果を、平均の相対的結合%±標準偏 差として示す。ここでは、組み換えEbpSタンパクの不在下で得た測定値を、100% として定義した。第13図 :抗-rEbpS抗体の阻害作用は、trEbpS-2による予備吸収によって中和され る。元の(コントロール)およびtrEbpS-2により予備吸収した抗-rEbpS IgG(trE bpS-2ネガティブ)由来のFabフラグメントを、パパイン消化により調製した。増 大する濃度のFabフラグメントを、上記のように、生きたS.オーレウス細胞およ び放射性標識したエラスチンと共にインキュベートした。データを、3回の測定 に基づく、平均の相対的結合%±標準偏差として示す。第14図 :エラスチン結合サイトは、ペプチド阻害研究により定義された。残基14 -36に跨がる、7種のオーバーラップ合成ペプチドを、S.オーレウスのトロポエ ラスチンに対するその結合阻害能についてテストした。定性的に+または−で評 価した阻害活性は、該ペプチド番号の次に示されている。ペプチドP2およびP7に おける幾つかのアミノ酸は、示されるように置換されていた。該陰影を付したボ ックスは、エラスチン結合に必要とされる、予想された活性配列を示す。第15図 :EbpS残基18-34に及ぶ、ペプチドP1は、S.オーレウスの放射性標識した エラスチンに対する結合を、特異的に阻害する。増大する濃度の該P1およびP2タ ンパクを、S.オーレウス細胞および放射性標識したエラスチンと共に室温にて1 時間インキュベートした。結合を上記のようにして定量した。結果は、平均の相 対的結合%±SD(n=3)として示される。第16図 :EbpS残基14-23に対応する合成ペプチドは、スタフィロコッカス−エラ スチン結合を特異的に阻害する。残基14-23(P3)、21-30(P4)および27-36(P5)に 対応するオーバーラップ合成10マーを記載のように発生させた。S.オーレウス細 胞を、標識したエラスチンと共に、P3-P5ペプチドの不在下または0.5、1.0また は2.0mg/ml濃度での存在下でインキュベートした。結合アッセイは前に記載した ように実施した。誤差バーは、3回の測定から計算されたSDを表す。 詳細な説明 S.オーレウスの結合に関連する初期の研究は、Park等,J.Biol.Chem.,1991 ,266 ,pp.23399-23406に記載されており、その全体を本発明の参考とする。微生 物の宿主組織に対するMSCRAMM-媒介接着は、Patti等,Annu.Rev.Microbiol., 1994,48,pp.585-617に概説されており、その全体も本発明の参考とする。 本発明によれば、当業者には公知の範囲内の分子生物学、微生物学および組み 換えDNA技術が利用できる。このような技術は文献に十分に説明されている。例 えば、Sambrook等の“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”(1989);“Curr ent Protocols in Molecular Biology”,Vols.I-III[Ausubel,R.M.,ed.(199 4)];“Cell Biology:A Laboratory Handbook”,Vols.I-III[J.R.Celis,ed.( 1994)];“Current Protocols in Immunology”,Vols.I-III[Coligan,J.E.,e d.(1994)];“Oligonucleotide Synthesis”(M.J.Gait ed.,1984);“Nucleic A cid Hybridization”[B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1985)];“Transcriptio n And Translation”[B.D.Hames & S.J.Higginseds.(1984)];“Animal Cell C ulture”[R.I.Freshney,ed.(1986)];“Immobilized Cells And Enzymes”[IRL Press,(1986)];B.Perbal,“A Practical Guide To Molecular Cloning”(19 84)を参照のこと。 従って、本明細書に見られる以下の用語は、以下に記載するような定義を有す る。 用語「MSCRAMM」、「バクテリア細胞表面タンパク」、「エラスチン結合タン パク(ebpS)」および具体的に掲載されないあらゆる変形は、本明細書では互換的 に使用でき、本明細書および請求の範囲全体に使用されているように、単一また は多重タンパクを包含するタンパク質性の物質を意味し、また本明細書に記載さ れ、第3図に呈示(SEQ ID NO:2)されたアミノ酸配列データおよび本明細書およ び請求の範囲に呈示した活性のプロフィールをもつタンパクに及ぶ。従って、実 質的に等価なまたは変更された活性を示すタンパクも、同様に意図される。これ らの変更、例えばサイト特異的突然変異誘発により得られる変更も考慮され、あ るいは偶然ではあろうが、複合体もしくはその指定されたサブユニットの産生体 である宿主中の突然変異を介して生成された変更等も考慮できる。また、用語「 MSCRAMM」、「バクテリア細胞表面タンパク」および「エラスチン結合タンパク( ebpS)」により、その範囲内に、本明細書に具体的に挙げるタンパク並びに全て の実質的に相同な、類似のおよび対立的な変形をも包含することを意図する。 本明細書で使用する、MSCRAMMの「活性ポリペプチドフラグメント」とは、エ ラスチンに結合する、MSCRAMMのポリペプチドフラグメントである。「本発明の ポリペプチド」とは、MSCRAMMのエラスチン結合サイトに対応するアミノ酸配列 を含むポリペプチドである。このようなポリペプチドは、8〜80個のアミノ酸か らなる。 本明細書に記載するアミノ酸残基は、“L”異性体型にあるものであることが 好ましい。しかし、該ポリペプチドが免疫グロブリン結合の所定の機能特性を維 持している限り、任意の“L”アミノ酸を、“D”異性体型の残基で代用できる。 NH2はポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を意味する。COOHはポ リペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離カルボキシ基を意味する。標準的な ポリペプチドの命名法(J.Biol.Chem.,1969,243,pp.3352-59)を維持するた め、アミノ酸残基の略号を以下の対応表に示す。 対応表 記号 アミノ酸 1- 文字 3- 文字 Y Tyr チロシン G Gly グリシン F Phe フェニルアラニン M Met メチオニン A Ala アラニン S Ser セリン I Ile イソロイシン L Leu ロイシン T Thr スレオニン V Val バリン P Pro プロリン K Lys リジン H His ヒスチジン Q Gln グルタミン E Glu グルタミン酸 W Trp トリプトファン R Arg アルギニン D Asp アスパラギン酸 N Asn アスパラギン C Cys システイン 全てのアミノ酸残基配列は、本明細書では、左右の配向が、アミノ−末端から カルボキシ−末端に向かう公知の方向にある、式によって表されていることに注 意すべきである。更に、アミノ酸残基配列の初めまたは終わりにおけるダッシュ は、1以上のアミノ酸残基をもつ更なる配列とのペプチド結合を表していること に注意すべきである。上記の表は、本明細書では交互に現れるかもしれない、3 文字および1文字表記を相関付けるために示されている。 「ポリペプチド」なる用語は、その最も広い意味で使用され、従って2以上の サブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体の化合物、または擬ペプチド(peptidomi metics)をも意味する。該サブユニットはペプチド結合により結合されている。 もう一つの態様においては、該サブユニットはその他の結合、例えばエステル、 エーテル結合等によって結合していてもよい。 「レプリコン」とは、任意の遺伝子要素(例えば、プラスミド、染色体、ウイ ルス)であって、インビボでDNA複製の自律性単位として機能する、即ちそれ自 体の制御の下で複製できるものである。 「ベクター」とは、プラスミド、ファージまたはコスミド等のレプリコンであ って、これらに他のDNAセグメントが結合して、該結合したセグメントの複製を もたらすことのできるものである。 「DNA分子」とは、一本鎖型または二本鎖型ヘリックスの何れかにある、デオ キシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミンまたはシトシン)のポリマ ー形状を意味する。この用語は該分子の一次および二次構造のみを表し、該分子 を任意の特定の三次元形状に限定するものではない。従って、この用語は、特に 線状のDNA分子(例えば、制限フラグメント)に見られる二本鎖DNA、ウイルス、 プラスミド、および染色体を包含する。特定の二本鎖DNA分子の構造を論じる場 合、本明細書では、DNAの未転写のストランド(即ち、mRNAに相同な配列をもつ ストランド)に沿った、5'から3'方向における配列のみを与えるという、通常の 約定に従って、配列を記載できる。 「複製開始点」とは、DNA合成に関係する、DNA配列を意味する。 DNA「コード配列」とは、適当な調節配列の制御下に置かれた場合に、インビ ボにてポリペプチドに翻訳され、転写される、二本鎖DNA配列である。該コード 配列の境界は、該5'(アミノ)末端における開始コドンと、該3'(カルボキシル )末端における翻訳終止コドンによって決定される。コード配列は、原核配列、 真核mRNA由来のcDNA、真核(例えば、哺乳動物)のDNA由来のゲノムDNA配列、お よび合成DNA配列をも包含するが、これらに制限されない。ポリアデニル化シグ ナルおよび転写終止配列は、通常該コード配列に対して、3'に位置しているであ ろう。 転写および翻訳制御配列は、プロモータ、エンハンサー、ポリアデニル化シグ ナル、ターミネーター等のDNA調節配列であり、宿主細胞内でのコード配列の発 現のために与えられる。 「プロモータ配列」とは、細胞内でRNAポリメラーゼを結合でき、かつ下流(3 '方向)のコード配列の転写を開始できる、DNA調節領域である。本発明を定義す る目的で、該プロモータ配列はその3'末端において、該転写開始サイトと結合さ れ、上流(5'方向)に伸びており、バックグラウンド以上の検出可能なレベルで 転写を開始するのに必要な、塩基またはエレメントの最小数を含む。該プロモー タ配列内には、転写開始サイト(便宜的にヌクレアーゼS1によるマッピングによ って定義される)並びにRNAポリメラーゼの結合の原因となるタンパク結合ドメ イン(共通配列)が見出されるであろう。真核プロモータは、常にではないが、 しばしば“TATA”ボックスおよび“CAT”ボックスを含む。原核プロモータは、 上記の-10および-35共通配列に加えて、シャイン−ダルガルノ(Shine-Dalgarno) 配列を含む。 「発現調節配列」とは、もう一つのDNA配列の転写並びに翻訳を制御し、かつ 調節するDNA配列である。コード配列は、RNAポリメラーゼが該コード配列をmRNA 内に転写する際に、細胞内の転写並びに翻訳制御配列の「制御下」にあり、次い で該mRNAは、該コード配列によりコードされる該タンパクに翻訳される。 「シグナル配列」は、該コード配列の前に含まれる可能性がある。この配列は 該ポリメラーゼペプチドに対してN-末端のシグナルペプチドをコードし、該シグ ナルペプチドは該宿主細胞と連絡して、該ポリメラーゼペプチドを該細胞表面に 導き、もしくは該ポリメラーゼペプチドを媒体中に分泌し、また該シグナルペプ チドは、該タンパクが該宿主細胞から離れる前に、該細胞により切り取られる。 シグナル配列は原核および真核細胞本来の種々のタンパクと結合することが理解 できる。 本発明のプローブに言及する際に本明細書で使用する用語「オリゴヌクレオチ ド」とは、2以上のリボヌクレオチド、好ましくは3を越えるリボヌクレオチド を含む分子として定義される。その正確なサイズは、多くのファクタに依存し、 該ファクタは更に該オリゴヌクレオチドの最終的な機能および用途に依存するで あろう。 本明細書で使用する用語「プライマー」とは、制限消化され、精製された状態 にある天然産のものであれ、合成により作成されたものであれ、オリゴヌクレオ チドを意味し、これは核酸ストランドに対して相補的であるプライマー伸張生成 物の合成を開始する条件下、即ちヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼ等の誘発 剤の存在下で、適当な温度およびpH条件下に置かれた場合に、合成の開始点とし て機能できるものである。このプライマーは、一本鎖または二本鎖の何れであっ てもよく、また十分な長さを有してて、該誘発剤の存在下での所定の伸張生成物 の合成を開始できるものでなければならない。このプライマーの正確な長さは、 温度、プライマーの源および該方法の使用等を包含する多くのファクタに依存す るであろう。例えば、診断用途に対しては、ターゲット配列の複雑さに応じて、 該オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には15-25あるいはそれ以上のヌク レオチドを含むが、より少ないヌクレオチドを含むことも可能である。 本発明において、該プライマーは、特定のターゲットDNA配列の種々のストラ ンドに対して「実質的に」相補的となるように選択される。このことは、該プラ イマーが十分に相補的であって、その各ストランドとハイブリッド化される必要 があることを意味する。従って、該プライマー配列は鋳型の正確な配列を反映す る必要はない。例えば、非−相補性ヌクレオチドフラグメントを、該プライマー の5'末端に結合して、該プライマー配列の残部が、該ストランドに対して相補的 であるようにすることができる。あるいはまた、非−相補的塩基またはより長い 配列を該プライマー内に散在させることができるが、該プライマー配列が該スト ランドの配列と十分に相補的であって、該ストランドとハイブリッド化でき、結 果として該伸張生成物の合成用の鋳型を形成できることを条件とする。 本発明で使用する用語「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」とは、 バクテリア酵素を意味し、その各々は、特定のヌクレオチド配列またはその近傍 で、二本鎖DNAを切断する。 細胞は、外性または異種DNAを該細胞の内部に導入した場合、該DNAによって「 形質転換」される。この形質転換DNAは該細胞のゲノムを構成する染色体DNA内に 組み込まれ(共有結合的に結合される)ても、組み込まれなくともよい。例えば 、原核細胞、酵母および哺乳動物細胞においては、該形質転換DNAを、プラスミ ド等のエピソームエレメント上に維持することができる。真核細胞については、 安定に形質転換された細胞は、該形質転換DNAが染色体中に組み込まれて、染色 体の複製を介して娘細胞に継承されるような細胞である。その安定性は、真核細 胞の、該形質転換DNAを含む娘細胞の集団からなる細胞系またはクローンを樹立 する能力により立証される。「クローン」は単一の細胞または有糸分裂による共 通の先祖から誘導された細胞の集団である。「細胞系」は、多くの世代に渡りイ ンビトロで安定成長可能な一次細胞である。 2つのDNA配列は、そのヌクレオチドの少なくとも約75%(好ましくは少なくと も約80%および最も好ましくは少なくとも約90または95%)が、該DNA配列の規定さ れた長さに渡り一致した場合には、「実質的に相同」である。実質的に相同な配 列は、配列データバンクで入手できる標準的なソフトウエアを使用して、あるい は例えばその特定の系に対して規定された厳密な条件下で、サザンハイブリダイ ゼーション実験で得られる情報を使用して、該配列を比較することにより同定で きる。適当なハイブリダイゼーション条件の設定は、当業者の裁量の範囲内に ある。例えば、Maniais等の上記文献;上記の“DNA Cloning”,Vols.I&II;上記 の“Nucleic Acid Hybridization”を参照のこと。 SEQ ID NO:2と同様であるが、SEQ ID NO:2に対して縮重である配列をもつ、MS CRAMMをコードする、MSCRAMMコードDNA配列も、本発明の範囲内にあるものと理 解すべきである。「縮重」なる用語は、特定のアミノ酸を指定するのに、異なる 3文字コドンを使用することを意味する。以下のコドンが、各特定のアミノ酸を コードするのに、互換的に使用できることは、当分野では周知である。 フェニルアラニン(PheまたはF) UUUまたはUUC ロイシン(LeuまたはL) UUA またはUUG またはCUU またはCUC またはCUA またはCUG イソロイシン(IleまたはI) AUU またはAUC またはAUA メチオニン(MetまたはM) AUG バリン(ValまたはV) GUU またはGUC またはGUA またはGUG セリン(SerまたはS) UCU またはUCC またはUCA またはUCG またはAGU またはAGC プロリン(ProまたはP) CCU またはCCC またはCCA またはCCG スレオニン(ThrまたはT) ACU またはACC またはACA またはACG アラニン(AlaまたはA) GCU またはGCG またはGCA またはGCG チロシン(TyrまたはY) UAU またはUAC ヒスチジン(HisまたはH) CAU またはCAC グルタミン(GlnまたはQ) CAA またはCAG アスパラギン(AsnまたはN) AAU またはAAC リジン(LysまたはK) AAA またはAAG アスパラギン酸(AspまたはD) GAU またはGAC グルタミン酸(GluまたはE) GAA またはGAG システイン(CysまたはC) UGU またはUGC アルギニン(ArgまたはR) CGU またはCGC またはCGA またはCGG またはAGA またはAGG グリシン(GlyまたはG) GGU またはGGC またはGGA またはGGG トリプトフアン(TrpまたはW) UGG 終止コドン UAA(オーカー) またはUAG(アンバー) またはUGA(オパール) 上に規定したコドンはRNA配列に対するものであることを理解すべきである。 DNA に対する対応するコドンはUの代わりにTを有する。 SEQ ID NO:1において、特定のコドンを異なるアミノ酸をコードするコドンに 変更するように変異を行うこきができる。このような変異は、一般的に可能な最 小のヌクレオチドを変更することにより行う。この種の置換変異を行って、非− 保存性の様式で(即ち、コドンを、特定のサイズまたは特徴を有する一群のアミ ノ酸に属するアミノ酸から、別の群に属するアミノ酸に変更することにより)あ るいは保存性の様式で(即ち、コドンを、特定のサイズまたは特徴を有する一群 のアミノ酸に属するアミノ酸から、同一の群に属するアミノ酸に変更することに より)得られるタンパク中のアミノ酸を変更することができる。このような保存 性の変更は、一般的にほんの僅かな、得られるタンパクの構造および機能の変更 に導くに過ぎない。非−保存性の変更は、得られるタンパクの構造、活性または 機能をより一層変動する傾向がある。本発明は、該生成するポリメラーゼペプチ ドの活性または結合特性を大幅に変更しない、保存性の変化を含む配列を包含す る。従って、このような保存性の変更は、本明細書では「保存性置換」として定 義する。 以下に示すものは、種々のアミノ酸群の一例である。非−極性R基をもつアミノ酸 :アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プ ロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン帯電していない極性R基をもつアミノ酸 :グリシン、セリン、スレオニン、シス テイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン帯電した(pH6.0で負に帯電)極性R基をもつアミノ酸 :アスパラギン酸、グル タミン酸塩基性アミノ酸(pH6.0でに帯電):リジン、アルギニン、(pH6.0における) ヒスチジンその他のアミノ酸群はフェニル基をもつアミノ酸であり得る :フェニルアラニン 、トリプトファン、チロシンもう一つの群は分子量による(即ち、R基のサイズ)によるものである : グリシン 75 アスパラギン酸 133 アラニン 89 グルタミン 146 セリン 105 リジン 146 プロリン 115 グルタミン酸 147 バリン 117 メチオニン 149 スレオニン 119 ヒスチジン(pH6.0) 155 システイン 121 フェニルアラニン 165 ロイシン 131 アルギニン 174 イソロイシン 131 チロシン 181 アスパラギン 132 トリプトファン 204 特に好ましい置換は以下に挙げるものである。 −正電荷を維持するような、LysのArgへの置換およびその逆の置換。 −負電荷を維持するような、GluのAspへの置換およびその逆の置換。 −遊離の-OHが維持されるような、ThrのSerへの置換。 −遊離のNH2を維持するような、AsnのGlnへの置換。 アミノ酸置換は、また特に好ましい特性をもつアミノ酸と変えるために導入す ることもできる。例えば、Cysを、他のCysとのジスルフィドブリッジ可能なサイ トに導入することができる。Hisを、特に「触媒的な」サイト(即ち、Hisは酸ま たは塩基として作用でき、また生物学的触媒作用における最も一般的なアミノ酸 である)として導入することができる。Proは、特にその平面的な構造のために 、導入することができ、これは該タンパク構造にβ−ターンを誘発する。 2種のアミノ酸配列は、該アミノ酸残基の少なくとも約70%(好ましくは少なく とも約80%および最も好ましくは少なくとも約90または95%)が同一であるか、あ るいは保存性置換を表す場合には、「実質的に相同」である。 該DNA構築物の「非−相同」領域は、より大きなDNA分子内の、自然界には該よ り大きな分子と結合した状態では見出せない、同定可能なDNAのセグメントであ る。従って、該非−相同領域が咄乳動物の遺伝子をコードする場合、該遺伝子は 、通常DNAによるフランキング状態にあり、該DNAは、その起源の生物のゲノム中 で、該哺乳動物ゲノムDNAをフランキングしていない。非−相同性コード配列の もう一つの例は、該コード配列自体が自然界には見られない、構築体(例えば、 該ゲノムコード配列がイントロンを含むcDNA、または天然の遺伝子とは異なるコ ドンをもつ合成配列)である。対立変異または自然に発生する突然変異事象は、 ここに定義したようなDNAの非−相同領域では起こらない。 「抗体」とは、特異的なエピトープと結合する、抗体およびそのフラグメント を包含する任意の免疫グロブリンである。この用語は、ポリクローナル、モノク ローナルおよびキメラ抗体を含み、最後の例は米国特許第4,816,397号および同 第4,816,567号に更に詳しく説明されている。 「抗体結合サイト」とは、特異的に抗原と結合する、重鎖および軽鎖、可変並 びに超可変領域を含む抗体分子の構造低部分である。 本明細書で使用する、種々の文法的形態にある用語「抗体分子」とは、完全な 免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分両者を意 図する。 抗体分子の例は、完全な免疫グロブリン分子、実質上完全な免疫グロブリン分 子および当分野で公知の部分、例えばFab、Fab'、F(ab')2およびF(v)を包含する 、パラトープを含む免疫グロブリン分子の部分であり、これら部分は本明細書に 記載する治療法で使用するのに好ましいものである。 抗体分子のFabおよびF(ab')2部分は、周知の方法により、実質的に完全な抗体 分子の、それぞれパパインおよびペプシンによるタンパク分解反応によって調製 される。これについては、例えばTheofilopolous等の米国特許第4,342,566号を 参照のこと。Fab'抗体分子部分も、周知であり、F(ab')2部分から、メルカプト エタノール等による2つの重鎖部分を繋ぐジスルフィド結合を還元し、次いでヨ ウ素化アセタミド等の試薬により、得られたタンパクメルカプタンをアルキル化 することにより調製される。本発明においては、完全な抗体分子を含む抗体が 好ましい。 種々の文法的形態にある用語「モノクローナル抗体」とは、特定の抗原と免疫 反応できる、1種のみの抗体結合サイトを有する抗体を意味する。従って、モノ クローナル抗体は、典型的には免疫反応する任意の抗原に対して単一の結合アフ ィニティーを示す。モノクローナル抗体は、従ってそれぞれ異なる抗原に対して 免疫特異性の、複数の抗体結合サイトを有する抗体分子、例えば二特異的(キメ ラ)モノクローナル抗体を含むことができる。 用語「製薬上許容される」とは、生理的に許容され、かつヒトに投与した場合 に、典型的にはアレルギーまたは同様な不都合な反応、例えば胃の不調、目眩等 を生じない、分子的な実在物および組成物を意味する。 本明細書で使用する「治療上有効な量」とは、ターゲット細胞集団のS段階(S phase)活性における、あるいは他の病理的特徴、例えば該細胞集団の存在および 活性に付随すると考えられる白血球数増加、高血圧、または発熱を予防し、好ま しくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%および最も好ましくは少 なくとも90%の、臨床的に有意なこれらの変化をもたらすのに十分な量を意味す る。 DNA配列は、発現調節配列が該DNA配列の転写および翻訳を制御並びに調節する 場合には、該発現調節配列に「機能可能に結合」している。この用語「機能可能 に結合」とは、発現すべき該DNA配列の前部に適当な開始シグナル(例えば、ATG) を有し、かつ該発現調節配列の制御下での該DNA配列の発現および該DNA配列によ りコードされる所定の生成物の生産を可能とする正確な読み取り枠を維持するこ とをも意味する。組み換えDNA分子に挿入したいと考える遺伝子が適当な開始シ グナルを含まない場合、このような開始シグナルを、該遺伝子の前に挿入できる 。 用語「標準的なハイブリダイゼーション条件」とは、ハイブリダイゼーション および洗浄両者に対して、実質的に5xSSCおよび65℃に等価な塩および温度条件 を意味する。しかしながら、当業者は、このような「標準的なハイブリダイゼー ション条件」が、バックグラウンド中のナトリウムおよびマグネシウムの濃度、 ヌクレオチド配列の長さおよび濃度、不適合の割合、ホルムアミドの割合等を包 含する特定の条件に依存することを理解するであろう。同様に、「標準的なハイ ブリダイゼーション条件」を決定する上で重要なことは、該2つの配列のハイブ リッド化がRNA-RNA、DNA-DNAまたはRNA-DNAの何れであるかにある。このような 標準的なハイブリダイゼーション条件は、当業者は公知の方式に従って容易に決 定でき、ここでハイブリダイゼーションは、典型的には予測されたまたは測定さ れたTmよりも10-20℃低く、必要ならばより厳密性の高い洗浄を行う。 主な局面において、本発明はバクテリア性MSCRAMMの同定に関わり、該MSCRAMM は、該バクテリアの宿主組織への付着、その中でのコロニー形成および/または その内部への侵入を媒介する、細胞外マトリックスの成分と結合する。 特定の態様において、本発明は本明細書に記載するエラスチン結合タンパクの 全てに関連する。 上記のように、本発明は、また組み換えDNA分子またはクローン化遺伝子、ま たはその縮重変異体にも関連し、これは予想された分子量約25kDおよび第3図に 示された染みの酸配列(SEQ ID NO:2)をもつMSCRAMM、またはそのフラグメントを コードし、好ましくは該25kDをもつのものをコードする、核酸分子、特に組み換 えDNA分子またはクローン化遺伝子は、第2図(SEQ ID NO:1)に示されたヌクレオ チド配列を有し、あるいは該DNA配列に対して相補的である。 本発明のMSCRAMMまたはその活性ポリペプチドフラグメントを精製するための 初期段階は、塩溶または塩析、例えば硫酸アンモニウム分画、溶媒排除分画、例 えばエタノール沈殿、TRITON X-100、TWEEN-20等の界面活性剤を使用した遊離膜 結合タンパクの界面活性剤抽出、または高濃度塩抽出等を包含する。タンパクま たはポリペプチドの可溶化も、ジメチルスルホキシドおよびヘキサメチルホスホ ラミド等の非プロトン系溶媒を使用して達成できる。更に、高速限外濾過を、単 独で、もしくは他の抽出技術との組み合わせで使用することができる。 一般的に良好な第二の単離または精製段階は、燐酸カルシウムゲルまたはヒド ロキシアパタイトを使用した、固相吸収法、あるいは固相結合法を含む。固相結 合法は、ジエチルアミノエチル(DEAE)、またはジエチル[2-ヒドロキシプロピル] アミノエチル(QAE)セファデックスまたはセルロース等のアニオン交換体、ある いはカルボキシメチル(CM)またはスルホプロピル(SP)セファデックスまたはセル ロース等のカチオン交換体を使用した、イオン結合を介して達成される。固相結 合法の他の方法は、疎水性相互作用の利用、例えばフェニルセファロース等の固 体担体および高塩濃度バッファーの使用、例えば活性化担体上にエラスチンを使 用したアフィニティー−結合、例えば活性化された担体に結合した、MSCRAMMま たはその活性ポリペプチドフラグメントに対する抗体を使用した免疫結合、並び に特定の染料またはレクチン等を含有するもの等を包含するその他の固相担体の 使用等を包含する。該精製手順の最後においてしばしば利用される、これら以外 の固相担体技術は、例えばセファデックスおよびセファロースゲル等のサイズ排 除、あるいはサイズ排除膜フィルタを使用した加圧または遠心分離膜技術による ものである。 固相担体分離は、一般的に低速の遠心処理を伴うバッチ式またはカラムクロマ トグラフィーにより達成される。関連するFPLC等の技術を包含する、高速液体ク ロマトグラフィー(HPLC)が、現時点において最も一般的な、液体クロマトグラフ ィーを実施するための手段である。サイズ排除技術も、低速の遠心処理の助けに より、所定の精製を達成できる。 更に、ゲル電気泳動技術等のサイズ浸透技術も利用できる。これらの技術は、 一般的にチューブ、スラブで実施でき、あるいは毛管電気泳動によって実施され る。 タンパク質精製を含む殆ど全ての段階は、緩衝溶液を使用する。特に断らない 限り、一般的に25-100μMの塩濃度の緩衝塩溶液を使用する。低濃度バッファー は、一般的に濃度0.1-2Mの範囲の緩衝剤を含む。典型的なバッファーは多くの生 化学的カタログから購入でき、古典的なバッファー、例えばTris、ピロ燐酸塩、 一燐酸塩および二燐酸塩並びにGoodバッファー(Good,N.E.等,Biochemistry,196 6,5:467;Good,N.E.&Izawa,S.,Meth.Enzymol.,1972,24B:53;Fergunson,W. J.&Good,N.E.,Anal.Biochem.,1980,104:300)、例えばMes、Hepes、Mops、ト リシン(tricine)およびChesを包含する。 これら技術全てを実施するための物質は様々な源、例えばミズーリー州セント ルイスのSigma Chemical Companyから入手できる。 MSCRAMMの存在により生ずる諸疾患の診断並びに治療の可能性は、該ファクタ が直接的にまたは原因として、該MSCRAMM間のタンパク−タンパク相互作用に関 与していると考えられ、またこれらファクタが、該MSCRAMMに結合している細胞 外マトリックス中にあるという事実から導かれる。以前に示唆され、また本明細 書で更に詳細に述べるように、本発明は、該MSCRAMMが関与する反応のカスケー ドに薬理的に介入して、該MSCRAMMにより開始される活性を低下することをも意 図する。 かくして、該MSCRAMMと特定の刺激体またはファクタとの相互作用に起因する 有害な作用を軽減または抑制した場合には、該MSCRAMMの適当な阻害剤を導入し て、結果として該MSCRAMMとバクテリアの接着に関連するこれらの原因的なファ クタとの相互作用を遮断することができた。 前に論じたように、該MSCRAMMまたはその結合パートナー、もしくは該MSCRAMM に対する模倣性または拮抗作用を呈するあるいはその生産を制御する他のリガン ドまたは薬剤を、適当な担体と共に薬理組成物として調製できる。その濃度は特 定のバクテリア感染と関連する有害な医学的状態を被った患者に、その治療のた めに、種々の手段によって投与するのに有効なものである。種々の投与法を利用 することができ、中でも特に非経口投与技術、例えば皮下、静脈内および腹腔内 注射、カテーテル化等が利用できる。該MSCRAMMまたはそのサブユニットの平均 的な量は、変えることができ、また特に資格のある医師または獣医の推奨および 指示に基づくべきであろう。 また、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体両者を包含する抗体、並びに 該MSCRAMMおよび/またはそのサブユニットの生産または活性を調節する薬物は 、幾つかの診断上の用途をもち、例えばバクテリア感染等の状態を検出しおよび /または測定する目的で使用することができる。例えば、該MSCRAMMまたはその サブユニットを使用して、これらに対するポリクローナルおよびモノクローナル 抗体両者を、公知の技術、例えば融合されたマウス脾臓リンパ細胞とミエローマ 細胞との融合を使用した、ハイブリドーマ技術等によって、種々の細胞媒体中で 生産することができる。同様に、本発明のMSCRAMMの活性を模倣または拮抗する 小分子を見出し、もしくは合成することができ、またこれらを診断および/また は治療プロトコールにおいて使用することができる。 ハイブリドーマによりモノクローナル抗体を製造するための一般的な方法は、 周知である。不死化抗体−産生細胞系は、融合以外の方法、例えばBリンパ細胞 の発癌性DNAによる直接的形質転換、またはエプシュタイン−バールウイルスに よるトランスフェクションによっても形成できる。これらについては、例えばM .Schreiter等,“Hybridoma Techniques”,1980;Hammerling等,“Monoclonal Antibodies And T-cellHybridomas”(1981);Kennett等,“Monoclonal Antibod ies”(1980)を参照のこと。また、米国特許第4,341,761号、同第4,399,121号、 同第4,427,783号、同第4,444,887号、同第4,451,570号、同第4,466,917号、同第 4,472,500号、同第4,491,632号、同第4,493,890号をも参照のこと。 MSCRAMMペプチドに対して製造されたモノクローナル抗体のパネルを、種々の 特性、例えばイソタイプ、エピトープ、アフィニティー等についてスクリーニン グすることができる。特に興味深いのは、該MSCRAMMまたはそのサブユニットの 結合活性、特に該分子の初めの59アミノ酸の、エラスチンのアミノ末端部分に対 する結合活性を中和する、モノクローナル抗体である。このようなモノクローナ ル抗体は、例えばELISAまたはWESTERN BLOT等の結合活性アッセイにおいて容易 に同定できる。高アフィニティー抗体も、天然のまたは組み合わせMSCRAMMの免 疫アフィニティー精製が可能である場合には、有用である。 好ましくは、本発明の診断法において使用する該抗-MSCRAMM抗体は、アフィニ ティー精製されたポリクローナル抗体である。より好ましくは、該抗体はモノク ローナル抗体(mAb)である。更に、本発明で使用する該抗-MSCRAMM抗体分子は、 全抗体分子のFab、Fab'、F(ab')2またはF(v)部分であることが好ましい。 前に示唆したように、本発明の診断法は、MSCRAMM/タンパクに対するアンタゴ ニスト、例えば抗-MSCRAMM抗体、好ましくはアフィニティー−精製されたポリク ローナル抗体およびより好ましくはmAb等の有効量を含む、アッセイ手段によっ て、細胞サンプルまたは培地を検査する工程を含む。また、本発明で使用する該 抗-MSCRAMM抗体分子は、全抗体分子のFab、Fab'、F(ab')2またはF(v)部分の状態 にあることが好ましい。前に論じたように、本発明の方法の利益を享受できる患 者は、癌に関連するバクテリア感染、前癌性病変、ウイルス感染またはその他の 病理的な障害を被ったものを包含する。該MSCRAMMを単離し、かつ抗-MSCRAMM 抗体を誘発し、かつ抗-MSCRAMM抗体の活性を測定かつ最適化して、該ターゲット 細胞の検査を支援する方法は、全て当分野で周知である。 ポリクローナル抗−ポリペプチド抗体の製造方法も、当分野で周知である。こ れについては、Nestol等の米国特許第4,493,795号を参照のこと。有用な抗体分 子の、典型的にはFabおよび/またはF(ab')2部分を含むモノクローナル抗体は、 “Antibodies-A Laboratory Manual”Harlow & Lane編,コールドスプリングハ ーバーラボラトリー,N.Y.(1988)(これを本発明の参考文献とする)に記載され ているハイブリドーマ法を利用して調製できる。簡単に説明すれば、該モノクロ ーナル抗体組成物を製造する該ハイブリドーマを形成するためには、ミエローマ または他の自己−永続性細胞系を、エラスチン−結合部分で超免疫化した哺乳動 物の脾臓から得たリンパ細胞と融合する。 牌細胞は、典型的にはポリエチレングリコール(PEG)6000を使用して、ミエロ ーマ細胞と融合する。融合されたハイブリッドは、そのHATに対する感受性によ り選別する。本発明を実施する上で有用なモノクローナル抗体を生産するハイブ リドーマは、存在するMSCRAMMと免疫反応する能力およびターゲット細胞中で、 特異化されたMSCRAMM活性を阻害するその能力により同定される。 本発明を実施するのに有用なモノクローナル抗体は、適当な抗原特異性をもつ 抗体分子を分泌するハイブリドーマを含む、栄養培地を含有する培地内で、モノ クローナルハイブリドーマの培養を開始することにより製造できる。該培養物を 、該ハイブリドーマが該抗体分子を該培地内に分泌するのに十分な条件下で、そ のために十分な時間維持する。次いで、抗体−含有培地を回収する。次に、該抗 体分子を公知の方法によって、更に単離する。 これら組成物の調製にとって有用な培地は、当分野で周知であり、しかも市販 品として入手可能であり、合成培地、近交系マウス等を含む。合成培地の例は、 4.5g/lのグルコース、20mmのグルタミンおよび20%の子牛血清を補充した、ドゥ ルベコ最小必須培地(DMEM;Dulbecco等,Virol.,1959,8:396)である。近交系マ ウスの例は、Balb/c系マウスである。 モノクローナル抗-MSCRAMM抗体の製造法も、当分野では周知である。これにつ いてはNiman等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1983,80:4949-4953を参照 のこと。典型的には、本発明のMSCRAMMまたはペプチド類似体を、単独でまたは 前に記載した抗-MSCRAMMモノクローナル抗体の製造手順における免疫原と同様に 、免疫原性担体との複合体として使用する。該ハイブリドーマを、該MSCRAMMペ プチド類似体および本発明のMSCRAMMと免疫反応する抗体の生産能力についてス クリーニングする。 本発明は、更に本発明の治療法を実施する上で有用な、治療組成物をも意図す る。目的の治療組成物は、混合物として、製薬上許容される賦形剤(担体)およ び活性成分として、本明細書に上記したような、1種以上のMSCRAMM、そのポリ メラーゼペプチド類似体またはそのフラグメントを含む。好ましい一態様におい て、該組成物は本発明のMSCRAMMのターゲット細胞に対する特異的結合性を調節 することのできる抗原を含む。 ポリペプチド、類似体または活性フラグメントを活性成分として含有する治療 用組成物の調製は、当分野では十分に理解されている。典型的には、かかる組成 物は溶液または懸濁液等の注射剤として調製されるが、注射前に液体中に溶解ま たは懸濁するのに適した、固体形状として調製することも可能である。該処方物 は乳化することもできる。該活性な治療成分は、しばしば製薬上許容され、かつ 該活性成分と相容性の賦形剤と混合される。適当な賦形剤は、例えば水、塩水、 デキストロース、グリセロール、エタノール等およびその組み合わせである。更 に、必要ならば、該組成物は少量の補助的物質、例えば該活性成分の有効性を高 めるpH緩衝剤、湿潤剤または乳化剤等を含むことができる。 ポリペプチド、類似体または活性フラグメントは、中和された製薬上許容され る塩の形状として、該治療組成物に配合できる。製薬上許容される塩は、(該ポ リペプチドまたは抗体分子の遊離アミノ基により形成される)酸付加塩および無 機酸、例えば塩酸または燐酸または有機酸、例えば酢酸、蓚酸、酒石酸、マンデ ル酸等と共に形成される塩を含む。遊離カルボキシル基から形成される塩も、無 機塩基、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸 化第二鉄等および有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2- エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から誘導されるものであり 得る。 治療用ポリペプチド、類似体または活性フラグメント−含有組成物は、有利に は例えば単位用量の注射により静脈内投与する。「単位用量」なる用語は、本発 明の治療用組成物に関連して使用した場合には、ヒトに対する単一の服用量とし て適した物理的に別個の単位を意味し、各単位は、必要な希釈剤、即ち担体また はビヒクルとの組み合わせで、所定の治療効果を生み出すように計算された、活 性物質の所定量を含有する。 本発明の組成物は、薬用量処方と一致する様式で、また治療上有効な量で投与 される。投与すべき該組成物の量は、治療すべき対象、該対象の免疫系の、該活 性成分を利用する容量、および望まれるMSCRAMM結合能の阻害もしくは中和の程 度に依存する。投与すべき活性成分の正確な量は、開業医の判断に依存し、各個 体に固有のものである。しかしながら、適当な用量は1日当たり、個体の体重1 kg当たり約0.1〜約20、好ましくは約0.5〜約10、およびより好ましくは1〜数mg の活性成分なる範囲であり得、投与経路に依存する。初期投与および追加投与に 対して適当な養生法も変更できるが、典型的には初期投与に引き続き、後の注射 または他の投与法により、1時間以上の間隔で反復的用量で投与する。また、血 中に10nM〜10μMの範囲の濃度を維持するのに十分な、連続的な静脈内注入も意 図している。 本発明の治療用組成物は、更に有効量のMSCRAMM/MSCRAMMアンタゴニストまた はその類似体、および1種以上の以下に挙げる活性成分、即ち抗生物質、ステロ イドをも含むことができる。処方の例を以下に与える。 処方 静脈内投与用処方I 成分 mg/ml セホタキシム 250.0 MSCRAMM 10.0 デキストロースUSP 45.0 重亜硫酸ナトリウムUSP 3.2 エデト酸ナトリウムUSP 0.1 注射用水(適量) 1.0ml 静脈内投与用処方II 成分 mg/ml アンピシリン 250.0 MSCRAMM 10.0 重亜硫酸ナトリウムUSP 3.2 エデト酸ナトリウムUSP 0.1 注射用水(適量) 1.0ml静脈内投与用処方III 成分 mg/ml ゲンタマイシン(硫酸塩として投入) 40.0 MSCRAMM 10.0 重亜硫酸ナトリウムUSP 3.2 エデト酸ナトリウムUSP 0.1 注射用水(適量) 1.0ml静脈内投与用処方IV 成分 mg/ml MSCRAMM 10.0 デキストロースUSP 45.0 重亜硫酸ナトリウムUSP 3.2 エデト酸ナトリウムUSP 0.1 注射用水(適量) 1.0ml 静脈内投与用処方V 成分 mg/ml MSCRAMMアンタゴニスト 5.0 重亜硫酸ナトリウムUSP 3.2 エデト酸ナトリウムUSP 0.1 注射用水(適量) 1.0ml ここで使用する“pg”はピコグラムであり、“ng”はナノグラムであり、“ug ”または“μg”はマイクログラムであり、“mg”はミリグラムであり、“ul” または“μl”はマイクロリットルであり、“mI”はミリリットルであり、また “l”はリットルである。 本発明のポリペプチドは、化学的に合成することができる。該合成ポリペプチ ドは、固相、液相、またはペプチド縮合技術、あるいはその任意の組み合わせ等 の周知の技術を利用して調製され、また天然および非天然のアミノ酸を含むこと ができる。ペプチド合成のために使用するアミノ酸は、Merrifield(J.Am.Chem .Soc.,1963,85:2149-2154)の最初の固相手順の、標準的な脱保護、中和、カ ップリングおよび洗浄プロトコールを伴う、標準的なBoc(Na-アミノ保護Na-t-ブ チルオキシカルボニル)アミノ酸樹脂、またはCarpino & Han(J.Org.Chem.,1 972,37:3403-3409)により最初に記載された、塩基−不安定Na-アミノ保護9-フ ルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸であり得る。FmocおよびBoc Na- アミノ保護アミノ酸両者はFluka,Bachem,Advanced Chemtech,Sigma,Cambrid ge Research Biochemical,Bachem,またはPeninsula Labsもしくは当業者には馴 染みの化学会社から入手できる。更に、本発明の方法では、当業者には馴染みの 他のNa-保護基を使用することも可能である。固相ペプチド合成は、当業者には 馴染みの技術によって達成でき、例えばStewart & Young,1984,“Solid Phase Synthesis”,Second Edition,Pierce Chemical Co.,Rockford,IL;Fields & Noble,1990,Int.J.Pept.Protein Res.,35:161-214に与えられており、あ るいはABSにより市販されている自動化合成装置を使用して達成できる。かくし て、本発明のポリペプチドは、D-アミノ酸、D-アミノ酸とL-アミノ 酸との組み合わせ、および種々の「デザイナー(designer)」アミノ酸(例えば、 β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、およびNα−メチルアミノ酸等) を含み、特別な特性をもつことができる。合成アミノ酸は、リジンの代わりにオ ルニチンを、フェニルアラニンの代わりにフルオロフェニルアラニンを、またロ イシンまたはイソロイシンの代わりにノルロイシンを含む。更に、特別なカップ リング段階にて、特別のアミノ酸を付与することにより、α−ヘリックス、β− ターン、β−シート、γ−ターン、および環状ペプチドを生成できる。 もう一つの態様においては、有用な化学的および構造的性質が付与された、ペ プチドのサブユニットを選択する。例えば、D-アミノ酸を含むペプチドは、イン ビボでL-アミノ酸−特異的プロテアーゼに対して抵抗性である。更に、本発明は より一層十分に規定された構造的特徴を有するペプチドの調製、および擬ペプチ ドの利用、並びに新規な特性をもつペプチドを調製するための擬ペプチド結合、 例えばエステル結合をももくろむ。もう一つの態様においては、還元されたペプ チド結合、即ちR1-CH2-NH-R2(ここで、R1およびR2はアミノ酸残基または配列で ある)を組み込んだペプチドを生成することができる。還元されたペプチド結合 はジペプチドサブユニットとして導入できる。このような分子は、ペプチド結合 の加水分解、例えばプロテアーゼ活性に対して耐性である。このようなペプチド は、固有の機能および活性、例えば代謝分解、またはプロテアーゼ活性に対する 耐性の故に、インビボで延長された半減期をもつリガンドを与える。更に、幾つ かの系において、歪のある(constrained)ペプチドが高い機能活性を示すことは 周知であり(Hruby,Life Sciences,1982,31:189-199;Hruby等,Biochem.J., 1990,268:249-262)、本発明は、あらゆる他の位置にランダムな配列を組み込ん だ、歪のあるペプチドの製造方法をも提供する。配座的歪を誘発する非−古典的アミノ酸 以下の非−古典的アミノ酸をペプチドに組み込んで、特別な配座モチーフを導 入する:1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボキシレート(Kazmierski等 ,J.Am.Chem.Soc.,1991,113:2275-2283);(2S,3S)-メチルフェニルアラニン 、(2S,3R)-メチルフェニルアラニン、(2R,3S)-メチルフェニルアラニン、(2R, 3R)-メチルフェニルアラニン(Kazmierski & Hruby,Tetrahedron Lett.,1991); 2-アミノテトラヒドロナフタレン-2−カルボン酸(Landis,PhD.Thesis,Univer sity of Arizona,1989);ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カ ルボキシレート(Miyake等,J.Takeda Res.Labs.,1989,43:53-76);β-カルボ リン(DおよびL)(Kazmierski,PhD.Thesis,University of Arizona,1988);HIC (ヒスチジン−イソキノリンカルボン酸)(Zechel等,Int.J.Pep.Protein Res. ,1991,43);およびHIC(ヒスチジン環状ウレア)(Dharanipragada)。 以下のアミノ酸類似体および擬ペプチドを、ペプチドに組み込んで、特異的な 二次構造を誘発または好ましいものとすることができる。LL-Acp(LL-3-アミノ-2 -プロペニドン-6-カルボン酸)、β−ターン誘発ジペプチド類似体(Kemp等,J.O rg.Chem.,1985,50:5834-5838)、β−シート誘発類似体(Kemp等,Tetrahedron Lett.,1988,29:5081-5082)β−ターン誘発類似体(Kemp等,Tetrahedron Lett .,1988,29:5057-5060)、α−ヘリックス誘発類似体(Kemp等,Tetrahedron Let t.,1988,29:4935-4938)、γ−ターン誘発類似体(Kemp等,J.Org.Chem.,198 9,54:109-115)および以下の文献:Nagai & Sato,Tetrahedron Lett.,1985,2 6:647-650;Dimaio等,J.Chem.Soc.Perkin Trans.,1989,p.1687に与えられ た類似体;並びにGly-Alaターン類似体(Kahn等,Tetrahedron Lett.,1989,30: 2317)、アミノ結合イソスター(Jones等,Tetrahedron Lett.,1988,29:3853-38 56)、テトラゾール(Zabrocki等,J.Am.Chem.Soc.,1988,110:5875-5880)、D TC(Samanen等,Int.J.ProteinPep.Res.,1990,35:501-509)、およびOlson等 ,J.Am.Chem.Soc.,1990,112:323-333およびGarvey等,J.Org.Chem.,199 0,56:436において教示された類似体。β−ターンおよびβ−バルジ(bulges)の 配座的に制限された模倣体およびこれらを含むペプチドは、Kahnに対して1995年 8月8日付けで発行された米国特許第5,440,013号に記載されている。 本発明のもう一つの特徴は、本明細書に記載した該DNA配列の発現である。当 分野で公知であるように、適当な発現ベクター内で、これらを発現調節配列に機 能可能に結合し、該発現ベクターを使用して、適当な単細胞宿主を形質転換する ことにより、DNA配列を発現できる。 本発明のDNA配列の発現調節配列とのこのような機能可能な結合は、未だ該DNA 配列の一部となっていない場合には、勿論該DNA配列の正確な読み取り枠上流に おいて、開始コドンATGの準備を含む。 広範囲の宿主/発現ベクターの組み合わせが、本発明のDNA配列を発現する際 に使用できる。有用な発現ベクターは、例えば染色体、非−染色体および合成DN A配列のセグメントからなるものであり得る。適当なベクターは、SV40の派生体 および公知のバクテリアプラスミド、例えばE.コリプラスミドcol E1、pCR1、pB R322、pMB9およびその派生体、プラスミド例えばRP4、ファージDNAS、例えば多 数のファージλの派生体、例えばNM989、および他のファージDNA、例えばM13お よび繊維状一本鎖ファージDNA、酵母プラスミド、例えば2μプラスミドまたは その派生体、真核細胞において有用なベクター、例えば昆虫または哺乳動物にお いて有用なベクター、プラスミドおよびファージDNAの組み合わせ由来のベクタ ー、例えばファージDNAまたは他の発現調節配列を使用するように改良されたプ ラスミド等を包含する。 機能可能に結合したDNA配列の発現を調節する、広範囲に渡る発現調節配列の 何れかを、これらベクター内で使用して、本発明の該DNA配列を発現することが できる。このような有用な発現調節配列は、例えばSV40、CMV、ワクシニア、ポ リオーマまたはアデノウイルスの初期および後期プロモータ、lac系、trp系、TA C系、TRC系、LTR系、ファージλのオペレータおよびプロモータ領域、fdコート タンパクの調節領域、3-ホスホグリセレートキナーゼまたは他の解糖酵素に対す るプロモータ、酸性ホスファターゼのプロモータ(例えば、Pho5)、酵母α−接 合ファクタのプロモータ、および原核または真核細胞またはそのウイルスの遺伝 子の発現を調節することが知られている他の配列、およびこれらの種々の組み合 わせを含む。 広範囲の単細胞型宿主細胞も、本発明のDNA配列の発現において有用である。 これらの宿主は、周知の真核および原核細胞宿主、例えばE.コリ、シュードモナ ス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)菌 株、酵母等の真菌および動物細胞、例えばCHO、R1.1、B-WおよびL-M細胞、アフ リカミドリザルの腎細胞(例えば、COS1、COS7、BSC1、BSC40および BMT10)、昆虫細胞(例えば、Sf9)および組織培養液中のヒト細胞並びに植物細胞 を包含する。 全てのベクター、発現調節配列および宿主が、本発明のDNA配列を発現するよ うに、同様に首尾よく機能する訳ではないことが理解されよう。また、全ての宿 主が同一の発現系によって同様に首尾よく機能する訳ではない。しかしながら、 当業者は適当なベクター、発現調節配列および宿主を、不当な実験をすることな しに選択して、本発明の範囲を逸脱することなく、所定の発現を達成できるであ ろう。例えば、ベクターを選択する場合には、宿主を考慮する必要がある。とい うのは、該ベクターは該宿主内で機能するはずであるからである。ベクターの複 製数この複製数を調節する能力、および該ベクターによってコードされる任意の 他のタンパクの発現、例えば抗生物質マーカーも、考慮される。 発現調節配列の選択においては、通常様々なファクタを考慮する。該ファクタ は、例えば該系の相対的な強度、その制御性、および発現すべき特定のDNA配列 または遺伝子との適合性、特に潜在的な二次構造を包含する。適当な単細胞宿主 は、例えばその選択されたベクターとの適合性、その分泌特性、タンパクを正確 に折り畳む能力、およびその醗酵上の要求並びに発現すべき該DNA配列によりコ ードされる生成物の該宿主に対する有害性、および該発現生成物の精製の容易性 等を考慮することにより選択されるであろう。 これらのおよびその他のファクタを考察することにより、当業者は、醗酵また は大規模の動物培養で、本発明のDNA配列を発現するであろう、種々のベクター /発現調節配列/宿主の組み合わせを構築できるであろう。 更に、本発明では、MSCRAMM類似体を、本発明の範囲内で誘導されたタンパク 複合体/サブユニットを含むヌクレオチド配列から調製することも意図されてい る。類似体、例えばフラグメントは、例えばバクテリア材料のペプシン消化によ り製造できる。他の類似体、例えば突然変異タンパクは、MSCRAMMコード配列の サイト−特異的変異誘発により生成し得る。プロモータまたは阻害剤の何れとし て機能しようとも、小分子等の「エラスチン結合活性」を呈する類似体は、公知 のインビボおよび/またはインビトロアッセイによって同定できる。 上記のように、MSCRAMMをコードするDNA配列は、クローニングよりも寧ろ合 成によって調製できる。このDNA配列は、該MSCRAMMのアミノ酸配列に対する適当 なコドンをもつように設計できる。一般的に、該配列を発現のために使用する場 合には、意図した宿主に対して好ましいコドンを選択するであろう。完全な配列 は、標準的方法により調製されたオーバーラップオリゴヌクレオチドから組み立 てられ、また完全なコード配列に組み立てられる。これについては、例えばEdge ,Nature,1981,292:756;Nambair等,Science,1984,223:1299;Jay等,J.Bio l.Chem.,1984,259:6311を参照のこと。 合成DNA配列は、MSCRAMM類似体または「突然変異タンパク」を発現する遺伝子 の有利な構築を可能とする。また、DNAコード突然変異タンパクは、天然のMSCRA MM遺伝子またはcDNAのサイト−特異的変異誘発により作成でき、また突然変異タ ンパクは公知のペプチド合成を利用して直接作成することができる。 非−天然産のアミノ酸をタンパク内に、サイト特異的に組み込むための一般的 な方法は、Christopher J.Noren,Spencer J.Anthony-Cahill,Michael C.Gr iffith,Peter G.Schultz,Science,1989(4月),244:182-188に記載されてい る。この方法を使用して、非天然型のアミノ酸をもつ類似体を生成できる。 本発明は、翻訳レベルにおいて、該MSCRAMMの発現を阻止するために利用でき る、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムの調製にも及ぶ。この方 法は、アンチセンス核酸およびリボザイムを使用して、特定のmRNAの翻訳を、ア ンチセンス核酸により該mRNAをマスキングするか、あるいはリボザイムでこれを 開裂することにより遮断する。 アンチセンス核酸は、特異的mRNA分子の少なくとも一部に対して相補的である DNAまたはRNA分子である(例えば、Weintraub,1990;Marcus-Sekura,1988を参 照のこと)。細胞において、これらは該mRNAとハイブリッド化し、二本鎖分子を 形成する。該細胞は、mRNAをこの二本鎖型に翻訳することはない。従って、アン チセンス核酸は、mRNAのタンパクへの発現を妨害する。約15ヌクレオチドをもつ オリゴマーおよびAUG開始コドンとハイブリッド化する分子が、特に有効である 。というのは、これらは合成が容易であり、かつこれらをMSCRAMM-産生細胞内に 導入する際に、大きな分子よりも問題が少ない傾向があるからである。アンチセ ンス法はインビトロでの多くの遺伝子の発現を阻止するのに利用されている(M arcus-Sekura,1988;Hambor等,1988)。 リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼと幾分類似する様式で、他の一本 鎖RNAを特異的に開裂する能力をもつRNA分子である。リボザイムは、幾つかのmR NAがそれ自体のイントロンを切断する能力をもつという観測から発見された。こ れらRNAのヌクレオチド配列を変更することにより、研究者等は、RNA分子中の特 異的なヌクレオチド配列を識別しかつこれを開裂する分子を樹立できた(Cech,J .Am.Med.Assoc.,1988,260:3030)。これらは配列特異的であるから、特定の 配列をもつmRNAのみが不活性化される。 研究者等は2種の型のリボザイム、即ちテトラヒメナ−型および「ハンマーヘ ッド」−型を同定した(Hasselhoff & Gerlach,1988)。テトラヒメナ−型リボザ イムは4−塩基配列を識別し、一方で「ハンマーヘッド」−型リボザイムは11− 〜18−塩基配列を識別する。該識別配列が長い程、該ターゲットmRNA種内での排 他的な識別が起こり易い。従って、ハンマーヘッド型のリボザイムは、特異的な mRNA種を不活性化する上で、該テトラヒメナ−型リボザイムよりも好ましく、18 塩基識別配列が、より短い識別配列よりも好ましい。 本明細書に記載する該DNA配列は、従ってアンチセンス分子、およびMSCRAMMお よびそのリガンドに対するmRNAを開裂するリボザイムを調製するのに使用できる 。 本発明は、また刺激剤、例えば前に参照したポリペプチドリガンドの存在を、 本発明のMSCRAMMにより媒介される活性を引き出す能力に関して検出する方法を 包含する、種々の診断用途にも関連する。前に述べたように、該MSCRAMMを使用 して、種々の公知技術により、それ自身に対する抗体を製造でき、このような抗 体を、次に単離し、かつ特定のMSCRAMMが存在すると思われるターゲット組織中 の該MSCRAMMの活性の存在に関するテスト等において利用することができる。 上で詳細に説明したように、MSCRAMMに対する抗体は周知のハイブリドーマ技 術を包含する標準的な方法によって、製造し、かつ単離できる。便宜的に、該MS CRAMMに対する抗体を、ここではAb1とし、また他の種において得られた抗体をAb2 とする。 細胞におけるMSCRAMMの存在は、このような測定に適用できる通常の免疫学的 手順によって確認できる。多数の有用な手順が知られている。特に有用な3種の このような手順は、検出可能なラベルで標識した該MSCRAMM、検出可能なラベル で標識した抗体Ab1、または検出可能なラベルで標識した抗体Ab2の何れかを使用 する。これらの手順は、以下の式でまとめることができ、該式においてアステリ スクは該当粒子が標識されていることを意味し、また“M”は該MSCRAMMを表して いる。 A. M*+Ab1=M*Ab1 B. M+Ab*=M Ab1 * C. M+Ab1+Ab2 *=M Ab1Ab2 * 上記の手順およびその適用は、全て当業者には馴染みの深いものであり、従っ て本発明の範囲内で利用できる。「競合的」手順、即ち手順Aは、米国特許第3, 654,090号および同第3,850,752号に記載されている。手順C、即ち「サンドイッ チ」手順は、米国特許第RE 31,006号および同第4,016,043号に記載されている。 更に別の手順、例えば「二重抗体」または“DASP”手順も公知である。 各例において、該MSCRAMMは、1種以上の抗体または結合パートナーと複合体 を形成し、また該複合体の一構成員は検出可能なラベルで標識されている。複合 体が形成されたという事実および必要ならばその量は、ラベルの検出に適用でき る公知の方法により測定できる。 上記説明から明らかな如く、Ab2の一特徴は、これがAb1と反応するであろうこ とにある。これは、ある一種の哺乳動物に生成したAb1を、他の種における抗原 として使用して、該抗体Ab2を生成したことによる。例えば、Ab2は、ウサギの抗 体を抗原として使用して、山羊に生成させることができる。従って、Ab2は山羊 中で生成される、抗−ウサギ抗体である。本発明の説明および請求の範囲の目的 にとって、Ab1は一次または抗-MSCRAMM抗体と呼ばれ、またAb2は二次または抗-A b1抗体と呼ばれる。 これらの研究において最も一般的に使用されるラベルは、放射性元素、酵素、 紫外光に暴露された場合に蛍光を発する化学物質およびその他のものである。 多数の蛍光性物質が知られており、ラベルとして使用できる。これらは、例え ばフルオレセイン、ローダミン、オーラミン、テキサスレッド(Texas Red)、AM CAブルーおよびルシフェルイエロー(Lucifer Yellow)を包含する。特別な検出物 質は山羊中で生成され、イソチオシアネートを介してフルオレセインと結合した 抗−ウサギ抗体である。 該MSCRAMMまたはその結合パートナーも、放射性元素または酵素で標識するこ とができる。該放射性標識は、任意の一般的に利用できる計数法で検出できる。 好ましい同位元素は3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125 I、131Iおよび186Reから選択することができる。 同様に、酵素ラベルも有用であり、任意の現時点で利用されている比色法、分 光光度法、蛍光分光光度法、電流滴定法または気体定量法により検出できる。該 酵素は、架橋分子、例えばカルボジイミド、ジイソシアネート、グルタルアルデ ヒド等との反応により、選択された粒子と結合される。これら手順において使用 可能な多くの酵素が知られており、これらを使用することができる。その好まし い例は、パーオキシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、 ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ+パーオキシダーゼおよびアルカリンホス ファターゼである。例えば、米国特許第3,654,090号、同第3,850,752号および同 第4,016,043号は、その他の標識物質および方法を記載している。 本発明において開発されかつ利用された特別なアッセイ系はレセプタアッセイ として知られる。レセプタアッセイにおいては、アッセイすべき物質を、適当に 標識し、次いで幾つかの細胞テスト用コロニーを、一定量の標識されたおよび未 標識の物質両者に接種し、その後結合に関する研究を行い、該標識された物質が 該細胞レセプタに結合した程度を測定する。このようにして、物質間のアフィニ ティーの差異を確認することができる。 従って、精製された一定量の該MSCRAMMを放射性標識し、かつ例えば抗体また は他のこれに対する阻害物質と結合し、その後結合に関する研究を実施する。次 いで、種々の量で、標識されたおよび未標識の未結合MSCRAMMを含む溶液を調製 し、次に細胞サンプルを接種し、その後インキュベートする。次いで、得られた 細胞の単層を、洗浄し、可溶化し、ガンマカウンターで<5%の標準誤差を生ずる のに十分な時間に渡り計数を行う。次いで、これらのデータをスキャッチャード (Scatchard)分析にかけ、その後物質の活性に関する観測および結論を導くこ と ができる。上記のことは単なる例示であり、これは、該アッセイした物質の細胞 結合能を、識別的特徴として利用できる例において、レセプタアッセイを行い、 かつ利用する方法を説明したものである。 本発明において有用であり、かつ意図しているアッセイは「シス/トランス」 アッセイとして知られる。簡単に説明すれば、このアッセイは2種の遺伝子構築 体を使用し、その一つは典型的には適当な細胞系にトランスフェクションされた 場合に、興味ある特定のレセプタを連続的に発現するプラスミドであり、またそ の第二は、レセプタ/リガンド複合体の制御下で、ルシフェラーゼ等のリポータ を発現するプラスミドである。かくして、例えば特定のレセプタに対するリガン ドとしてある化合物を評価したい場合には、該プラスミドの一方は、該選択され た細胞系において該レセプタの発現をもたらす構築体であり、一方で該第二のプ ラスミドは、該ルシフェラーゼ遺伝子と結合したプロモータを有し、該遺伝子に は、該特定のレセプタに対する応答エレメントが挿入されている。テスト中の該 化合物が該レセプタに対するアゴニストである場合、該リガンドは該レセプタと 複合体を生成し、得られた複合体は、該応答エレメントと結合し、かつ該ルシフ ェラーゼ遺伝子の転写を開始するであろう。次いで、得られる化学発光を分光学 的に測定し、ドーズ応答曲線を得、公知のリガンドのものと比較する。上記プロ トコールは、米国特許第4,981,784号PCT国際公開No.WO 88/03168に詳細に説明 されており、技術者はこれを参照できる。 本発明の更なる態様において、医療専門家が使用するのに適した市販のテスト キットを調製し、疑わしいターゲット細胞中の、所定のMSCRAMM活性または所定 のエラスチン結合活性の有無を測定することができる。上で論じたテスト技術に よれば、このようなキットのある組のものは、少なくとも標識されたMSCRAMMま たはその結合パートナー、例えばこれに対して特異的な抗体および勿論選択され た方法、例えば「競合的」、「サンドイッチ」、“DASP”等に応じた指示を含む であろう。これらのキットは、また周辺試薬、例えばバッファー、安定剤等をも 含むことができる。 従って、テストキットは、所定のエラスチン結合活性の存在または細胞の該結 合能を立証するために準備することができ、該キットは以下の成分を含む。 (a) 所定量の、本発明のMSCRAMMファクタまたはそれに対する特異的結合パー トナーの、検出可能なラベルとの直接的または間接的付着により得られる、少な くとも1種の標識された免疫化学的に反応性の成分と、 (b) 他の試薬と、 (c) 該キットを使用するための指示。 より具体的には、該診断用のテストキットは以下の成分を含むことができる。 (a) 既知量の、一般的に固相と結合して、免疫吸着剤を形成している、あるい は適当なタッグと結合している上記のMSCRAMM(または結合パートナー)、もし くは複数のかかる最終生成物(またはその結合パートナー)等、 (b) 必要により、他の試薬、および (c) 該キットを使用するための指示。 更なる変法において、該テストキットは、上記の目的のために調製し、使用で き、これは所定のプロトコール(例えば、「競合的」、「サンドイッチ」、「二 重抗体」等)に従って機能し、該キットは以下の成分を含む。 (a) 該MSCRAMMと検出可能なラベルとをカップリングすることにより得られた 標識された成分と、 (b) 1またはそれ以上の付加的な免疫化学的試薬と、ここで該試薬の少なくと も一つはリガンドまたは固定化されたリガンドであり、該リガンドは (i) 該標識された成分(a)と結合できるリガンド、 (ii)該標識された成分(a)の結合パートナーと結合できるリガンド、 (iii) 測定すべき該成分の少なくとも一つと結合できるリガンド、および (iv) 測定すべき該成分の少なくとも一つの、該結合パートナーの少なくと も一つと結合できるリガンド、 からなる群から選ばれ、 (c) 該MSCRAMMとこれに対する特異的結合パートナーとの間の免疫反応の1以 上の成分を検出しおよび/または測定するためのプロトコールを実行するための 指示。 上記のキットによれば、該MSCRAMMの活性を調節するのに効果的な、有力な薬 物をスクリーニングするためのアッセイ系を調製できる。該MSCRAMMは、テスト 系に組み込むことができ、また見込みのある薬物も、得られる細胞培養物に導入 でき、またその後該培養物を検査して、該見込みのある薬物単独の添加、あるい は既知の量で添加した該MSCRAMMの効果による、該細胞のMSCRAMM活性におけるあ らゆる変化を観測することができる。 予備的考察 スタフィロコッカス菌株と、該細胞外マトリックスの成分との相互作用は、宿 主組織と器官との接着を媒介し、コロニー形成、侵入および転移性膿瘍の形成に 導く重要なメカニズムである。特異的結合相互作用が、スタフィロコッカスオー レウスと、該細胞外マトリックスの主なタンパク成分の一つであるエラスチンと の間に存在することが立証された。利用可能な証拠は、この結合が、細胞表面の 25kDaのスタフィロコッカスエラスチン結合タンパク(EbpS)により媒介されるこ とを示唆している。EbpSの分子構造と機能とを研究するために、EbpSをコードす る遺伝子をクローン化し、配列決定し、かつE.コリ中で発現させた。DNA配列デ ータは、このebpSの読み取り枠が606bpからなり、新規な202アミノ酸を含むポリ ペプチドをコードすることを示している。EbpSタンパクは23,345ダルトンなる予 想された分子量およびpI4.9を有する。EbpSは、N-末端に結合したポリヒスチジ ン残基をもつ融合タンパクとして、E.コリ中で発現された。組み換えEbpSに対し て生成されたポリクローナル抗体は、特異的に該25kDa細胞表面EbpSと特異的に 相互作用し、かつスタフィロコッカスエラスチン結合を阻害した。更に、組み換 えEbpSは固定化エラスチンと特異的に結合し、かつスタフィロコッカスオーレウ スとエラスチンとの結合を阻害した。しかしながら、該分子の初めの59個のアミ ノ酸およびCNBr−開裂組み換えEbpSのC-末端フラグメントを欠いた、組み換えEb pSの分解生成物は、エラスチンと相互作用しなかった。これらの結果は、EbpSが 、スタフィロコッカスオーレウスとエラスチンとの結合を媒介する、細胞表面分 子であることを強く示唆している。組み換えEbpSの幾つかの構築物がエラスチン と相互作用しないという発見は、EbpS中の該エラスチン結合サイトが、該分子の 最初の59個のアミノ酸中に含まれていることを示唆している。 以下の実施例を、本発明の好ましい態様をより一層十分に示すために与える。 しかしながら、これら実施例は、本発明の広い範囲を何等限定するものではない と理解すべきである。 実施例1:物質および方法物質 制限エンドヌクレアーゼ、ウシ腸ホスファターゼ、T4DNAリガーゼ、T4ポリヌ クレオチドキナーゼ、イソプロピル−β-D-ガラクトシド(X-gal)、ウイザードミ ニプレプ(Wizard Miniprep)プラスミド精製キット、およびHindIII-消化λDNAマ ーカーは、Promega(マジソン,WI)から購入した。DNase-フリーのRNaseはBoehri nger Mannheim(インジアナポリス,IN)から得た。ルリア−ベルタニ(Luria-Bert ani:LB)培地およびLB寒天培地カプセルは、BIO 101(ラジョラ,CA)から得た。ト リプシン大豆ブロス(TSB)はRemel(レネクサ,KS)から入手した。高融点アガロー スはFisher(セントルイス,MO)から購入し、またシープラーク(SeaPlaque)GTG アガロース(低融点)はFMCBioProducts(ロックランド,ME)から入手した。Na12 5 I、γ-32P-ATP、およびα-32P-CTPはICN(コスタメサ,CA)から入手した。架橋 したアガロースに固定化したパパインおよびプロテインA、並びにIODOGENはPie rce(ロックフォード,IL)から入手した。ラピッド−ハイブ(Rapid-hyb)バッ ファーおよびレディプラィム(rediprime)DNA標識系はAmersham(アーリントンハ イツ,IL)から得た。クローマスピン(Chroma Spin)-10カラムはClontech(パロ アルト,CA)から購入した。QIAexpressベクターキットタイプIVおよびミディー プレプ(midi-prep)プラスミド精製キットはQiagen(チャッツワース,CA)から 入手した。ニトロセルロース膜およびブロット紙はSchleicher & Schuell(キー ン,NH)から入手した。アフィーゲル(Affi-Gel)-10アフィニティー担体はBio-R ad(メルビル,NY)から得た。全ての他の物質はSigma Chemical(セントルイス, MO)から購入した。バクテリア、プラスミドおよび培養条件 S.オーレウス菌株12598(Cowan)はATCC(American Type Culture Collection;ロ ックビル,MD)から購入した。E.コリ菌株DH5α能力細胞(MAX Efficiency)およ びM15(pREP4)は、それぞれGibcoBRL(ガイザースバーグ,MD)およびQiagenから 得た。M15細胞は該プラスミドpREP4を含み、これは本質的に該lacI遺伝子からの lacレセプタを発現する。S.オーレウス細胞はTSB中で成育させ、またE.コリ菌株 は、以下に記載するように、適当な抗生物質を補充したLB培地内で成育させた。 低複製数クローニングプラスミド,pHSG575(26)は、親切にもDr.Michael Cap aron(Department of Molecular Microbiology,Washington University School of Medicine)により提供された。プラスミドpBluescript KS+はStratagene(ラ ジヨラ,CA)から購入し、またサブクローニングおよび配列決定の目的で使用し た。該発現プラスミドpQE-30はQiagenから得た。これらプラスミドの全ては、DH 5α細胞内で増殖させ、後の使用のために、キアゲンプラスミドミディ−プレプ キット(QiagenPlasmid Midi-Prep Kit)を使用して精製した。S. オーレウスゲノムDNAの単離、プローブの調製およびサザンブロット 高分子量ゲノムDNAを、400mlのS.オーレウス菌株12598細胞の一夜培養液から 、リゾスタフィン(lysostaphin)溶解、これに引き続くDNase-フリーのRNaseによ る処理およびその後のフェノール/クロロホルムによる精製、およびクロロホル ム抽出により単離した。最後のクロロホルム抽出後に、該水性相中のDNAをエタ ノールで析出させ、凍結乾燥した。 アミノ酸配列NNFKDDFEKNに対応する、縮重30マーオリゴヌクレオチドプローブ を、化学合成により生成した。このオリゴヌクレオチドは、T4ポリヌクレオチド キナーゼおよびγ-32P-ATPで末端標識し、この放射性標識されたオリゴヌクレオ チドを取り込まれなかった32Pから、クローマスピン(Chroma Spin)-10スピンク ロマトグラフィーによって分離した。その特異的活性は、約5x108cpm/μgオリ ゴヌクレオチドであった。該2.6kb HindIII/HincIIプローブは以下に説明するよ うに生成し、該レジプライムDNA標識系を使用して、α-32P-CTPにより放射性標 識した。 ゲノムおよびプローブDNAを、制限エンドヌクレアーゼによって完全に消化し た。制限エンドヌクレアーゼで開裂したDNAをTAE-アガロース電気泳動により分 離し、かつサザンブロットによりニトロセルロース膜に転写した。この膜を80℃ にて2時間真空下でベーキングし、かつ該膜の予備ハイブリッド化、ハイブリダ イゼーションおよび洗浄を、ラピッド-hybバッファーと共に与えられた指示に従 って実施した。洗浄したブロットを風乾し、増感板を用いて、コダック(Kodak)X AR-5フィルムに、-70℃にて0.5-2日間焼付けた。ebpS のクローニングおよび配列決定 該30マーのオリゴペプチドプローブを、4.2kbのEcoRI-ゲノムDNAフラグメント にハイブリッド化した際の観測(第1図のレーンA)に基づいて、該4.2kbの領域に おけるサイズ選択ゲノムライブラリーを作成した。S.オーレウス菌株12598由来 のゲノムDNAをEcoR Iで消化し、1%低融点アガロース電気泳動により分画した。 この4.2kb領域を、該ゲルから切取り、68℃にて15分間溶融させた。該溶融アガ ロース中のDNAを、その場で、EcoR IおよびアルカリンホスファターゼによりFMC Productsにより与えられた指示に従って処理したpHSG575に連結した。能力DH5 α細胞を、該連結物質で形質転換し、種々の希釈物を、抗生物質およびブルー/ ホワイト選別のために、クロラムフェニコール(20μg/ml)、IPTG(0.5nM)およびX -Gal(40μg/ml)を補充したLB寒天−培地プレート上に展開した。ホワイトコロニ ーを集め、一夜増殖させ、ウイザードプラスミドミニ−プレプを使用して、細胞 からプラスミドDNAを単離した。精製したプラスミドをEcoRIで消化し、放射性標 識したオリゴヌクレオチドプローブを使用して、サザンブロットによりスクリー ニングした。 該クローン化した4.2kbのフラグメントをHindIIIおよびHincIIで消化して、2. 6kbのフラグメントを形成し、これをpBleuscript KS+およびpUC19内にサブクロ ーニングした。この2.6kbのフラグメントも、S.オーレウスゲノムDNAを使用した サザン解析におけるプローブとして使用した。この挿入断片をExo III/ヤエナリ ヌクレアーゼ系(Stratagene,ラジヨラ,CA)を使用して消化して、2組のネステ ッド(nested)欠失体を生成した。全体において両ストランドに及ぶ多重クローン を、ABI373A自動化DNA配列決定装置を使用して、TAQポリメラーゼサイクル配列 決定のために改良した、サンガー(Sanger)のジデオキシヌクレオチド鎖 終止法により配列決定した。配列データを集め、矛盾をウイスコンシンパッケー ジ(Wisconsin Package)(Genetics Computer Group,,WI)を使用して解析した。 第3図に示すebpSの一次配列には、GenBank承認番号が与えられた。E. コリ中でのebpSの発現および組み換えEbpSのCNBr開裂 pBleuscript KS+(30ng)2.6kbのHindIII/HincIIフラグメントを鋳型として使用 し、標準的な試薬を使用して、PerkinElmerサーモサイクラーによってPCR反応を 実施した。ebpSの読み取り枠を、該センスオリゴヌクレオチド,5'-TGTGGATCCATA GAAAGGAAGGTGGCTGTG-3'およびアンチセンスオリゴヌクレオチド5'-GCAAAGCTTGCT GTACCAGGACCAATT-3'を使用して、PCR増幅した。該センスオリゴヌクレオチドはB amH Iサイト(下線部)を含み、またQiagenにより推奨されたように、内部にお ける翻訳開始を回避するために、2つのATGコドンのAはG(太字)に変えられ た。該アンチセンスオリゴヌクレオチドはHind III開裂サイト(下線部)を含ん でいた。増幅の正確な条件としては、90℃にて1分間、次いで94℃にて30秒、53 ℃にて30秒および72℃にて60秒のサイクルを30サイクル実施した。このPCR生成 物を、BamHIおよびHind IIIで消化し、ゲル精製した。この物質を、BamHIおよ びHind IIIで消化したpQE-30に連結し、ウシ腸アルカリンホスファターゼで処理 した。能力M15細胞をこの連結生成物で形質転換し、アンピシリン(100μg/ml)お よびカナマイシン(20μg/ml)により選別し、抗生物質耐性の細胞を、組み換え体 タンパク発現についてスクリーニングした。 幾つかの正のクローンを得た際に、最大発現にとって理想的な条件を調べた。 これら研究の結果に基づいて、以下のプロトコールを、組み換えEbpS(rEbpS)の 中規模精製のために日常的に使用した。該クローンの貯蔵培養液を、アンピシリ ンおよびカナマイシンを補充した10mlのLB培地内で一夜育成した。翌日に、この 培養液を、抗生物質を含有する100mlの新鮮なLB培地に添加した。細胞を、OD600 nm の値が0.8(〜3h)に達するまで、再度成育させた。次いで、37℃にて4時間、 1mMのIPTGにより誘発させた。この細胞を遠心処理(5000xg)によってペレット化 し、15mlのバッファーA(8Mの尿素、100mMのNaH2PO4、10mMのTris-HCl,pH8)中 に再懸濁し、穏やかに15分間攪拌した。この溶解した細胞を15,000xgに て20分間、4℃にて遠心処理し、得られた上澄を、バッファーAで予備平衡化し た、4mlのニッケルニトリロ酢酸(Ni++-NTA)樹脂を含むチューブに移した。この 混合物を、穏やかに攪拌しつつ室温にて30分間インキュベートした。次いで、こ の混合物を使い捨て可能なポリプロピレンカラムに移し、100mlのバッファーA および100mlのバッファーB(バッファーAと同様であるが、pH=6)で連続的に 洗浄した。この密に結合した組み換えタンパクを、10mlのバッファーc(バッフ ァーAと同様であるが、pH=4)で溶出した。この溶出された物質を、41の10mM T ris-HCl,pH7.5に対して2回透析し、該透析液の濃度を、rEbpS中のTyrおよびTr p残基数に基づいて、UV分光光度法によって測定した(1A(280nm)=2.68mg/ml)。こ れらの条件下で精製したrEbpSの収量は、該培養物100ml当たり約5mgであった。 CNBr-開裂フラグメントを生成するために、500μgのrEbpSを、暗所で室温に て24時間、1mgのCNBrを200μlの70%蟻酸に分散した液と共にインキュベートし た。このインキュベーションの後、該サンプルを14mlの脱−イオンH2Oで希釈し 、スピード−バック(speed-vac)乾燥した。この乾燥物質を10mlの脱−イオンH2O 中に再懸濁し、100μgのアリコート内で再度乾燥した。ウサギ抗-rEbpSポリクローナル抗体の生成 予備免疫血清を集め、ニューイングランドホワイト種(New England White)の ウサギに、高度に精製したrEbpS(20μg)と、完全フロインドアジュバントとの1: 1混合物を注射した。不完全フロインドアジュバントとの1:1混合物(20μg)によ る追加注射を、5、7、10、14および19週目に行った。血清を、rEbpSを使用し て、ウエスタン免疫ブロット法によりテストした。 IgG画分を、免疫処理および予備免疫処理血清から、カプリル酸沈殿法(27)ま たはプロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。抗体アフ ィニティー樹脂を得るために、約100mgの抗-rEbpS IgGを、製造業者の指示に従 って、5mlのアフィーゲル-10に共有結合的にカップリングした。抗-rEbpS Fab フラグメントを生成するために、50mgの凍結乾燥したIgGを、一夜37℃にて、5m lのパパイン消化バッファー(20mMのNaH2PO4、20mMのシステイン-HCl、10mMの EDTA,pH6.5)中の固定化したパパイン2mlと反応させた。Fabフラグメントを未 消化のIgGおよびフリー(Free)Fcフラグメントから、プロテインAアフィニティ ークロマトグラフィーにより分離した。放射性標識したrEbpS構築物と固定化したエラスチンペプチドとの結合 エラスチンペプチドの調製、およびこれとアフィーゲル-10とのカップリング は、前に記載(20)されたように実施した。rEbpS(20g)およびCNBr-開裂rEbpS(80 μg)両者を、300μCiのNa125Iで、IODOGEN法によりヨウ素化した。比活性は、そ れぞれrSEBPおよびCNBr-開裂rEbpSフラグメントに対して約2.3x104および1.2x104 cpm/ngタンパクであった。1.5mlの結合バッファー(50mMのTris,500mMのNaCl, 2nMのCaCl2,0.1mg/mlのBSA,pH7.5)中の放射性標識したrEbpS(45ng)を、1mlの 該エラスチンペプチドアフィニティー樹脂と共に、2mgの未標識エラスチンペプ チドの存在下または不在下で、室温にて2時間インキュベートした。この混合物 を使い捨てポリプロピレンカラムに移し、自然流動により、結合バッファーを使 用して、該流れの放射能がバックグラウンドに達するまで洗浄した。結合rEbpS を3mlの1% SDSバッファーで溶出し、遠心濃縮し、10% SDS-PAGEおよびオートラ ジオグラフィーにより分析した。放射性標識したCNBr-開裂rEbpSの、固定化した エラスチンとの結合を同様にしてアッセイした。但し、出発物質80ngを使用し、 結合物質を12% SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーにより可視化した。抗-rEbpS抗体による、本来の25kDa細胞表面標識EbpSの検出 S.オーレウス細胞由来の表面標識した抽出物を、以前(20)に記載されたように して、リゾタフィン消化により調製した。表面標識抽出物約107cpmを、まず3ml のブタIgG-アフィーゲル10樹脂に、室温にて2時間吸収させた。未結合上澄を遠 心処理により集め、1mlの該抗-rEbpS IgGアフィニティー樹脂と共に、2mgの末 標識のrEbpSの存在下または不在下で、2時間、2mlの結合バッファー中で、室 温にてインキュベートした。この混合物を使い捨てカラムに移し、結合バッファ ーで、流出液がバックグラウンド放射能レベルに達するまで洗浄した。結合した 細胞表面−標識分子を、3mlの1% SDSバッファーによって該カラムから溶出し、 遠心処理により濃縮し、15% SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーによって分 析した。その他の手順 完全な長さの組み換えヒトエラスチンの精製および放射性標識並びに細胞性エ ラスチンの結合アッセイを、前に記載(20)されたように実施した。自動化アミノ 酸配列および組成分析は、我々の研究室で、それぞれアプライドバイオシステム ズ(Applied Biosystems)473Aタンパク配列決定装置およびベックマンシステム( Beckman System)6300ハイパーフォーマンスアナライザー(High Performance An alyzer)を使用して実施した。エレクトロンスプレイマススペクトル法は、セン トルイス、MO州のワシントンユニバーシティースクールオブメディスン(Washing ton University School of Medicine)におけるプロテインケミストリーラボラト リー(Protein Chemistry Laboratory)により実施した。 結果ebpS のクローニング S.オーレウスの細胞表面で発現される本来のEbpSのN-末端配列は、予めANNFKD DFEKNRQ(20)であることが決定された。この決定されたN-末端配列の残基2-11に 相当する、縮重オリゴヌクレオチドを生成し、プローブとして使用した。まず、 サザンブロット解析を、制限エンドヌクレアーゼで消化した、S.オーレウス菌株 12598ゲノムDNAについて実施して、該ハイブリッド化ゲノムフラグメントを同定 した。第1図に示したように、このオリゴヌクレオチドプローブを、4.2kbのEco RIフラグメント(レーンA)とハイブリッド化した。この観測を基に、該4.2kb領域 におけるサイズ−選別したプラスミドライブラリーを、EcoRI-消化したS.オーレ ウスゲノムDNAから構築し、サザンブロット法により該オリゴヌクレオチドプロ ーブについてスクリーニングした。スクリーニングした120個のコロニーのうち 、同一の制限酵素消化パターンをもつ2つの正のクローンを単離した。これらク ローンの一方、pEBPS-1を、更なる分析のために使用した。 正確な該4.2kbのフラグメントがクローニングされたことを確認するために、 該放射性標識したオリゴヌクレオチドを、該pEBPS-1挿入断片とハイブリッド化 し、該クローニングした挿入断片自体を、EcoRI-およびEcoRI/HindIII/HindII消 化ゲノムDNAについてサザンブロット解析するためのプローブとして使用した。 このオリゴヌクレオチドプローブを、該4.2kbp EBPS-1挿入断片(第1図:レーン B)とハイブリッド化し、また該挿入断片は4.2kb EcoRIゲノムフラグメントを識 別した(第1図:レーンC)。EcoRI/HindIII/HincII−消化したゲノムDNAを使用し て、該放射性標識したpEBPS-1挿入断片を、2.6kbのフラグメントとハイブリッド 化した(第1図:レーンD)。これらオリゴヌクレオチドおよびクローニングした 挿入断片プローブは、種々の制限エンドヌクレアーゼによって消化したゲノムDN Aを使用したサザンブロット解析において、矛盾なく同一のサイズの単一のフラ グメントを検出したが、このことはebpSが単一の複製遺伝子として存在すること を示している。ebpS の一次配列の解析 pEBPS-1をHindIIIおよびHincIIで消化して、2.6kbのフラグメントを得た。こ のフラグメントを、pBluescript II KS+にサブクローニングして、pKS-2.6を得 、配列決定して、細胞表面EbpSの該N-末端配列を含む読み取り枠の位置を決定し た。ATGコドンで開始する606bpの読み取り枠は、該Hind IIIサイトの約0.9kb3' であると同定された。pKS-2.6の物理的マップおよび上流および下流側配列を含 む該読み取り枠の一次配列を、それぞれ第2および3図に示した。推定-10およ び-35ヘキサマーを、17bpの間隔の、位置-31および-54に同定した。第3のAT− に富むプロモータ配列が、E.コリ中の該-35ヘキサマーの約20bp上流側に存在す ることが最近提案され(28)、このebpSに対する領域は75% ATであった。バチルス ズブチリス16S RNAの端部3'領域(UCUUUCCUCC)(29)と完全に相補性を有する、有 力なリボソーム結合配列が位置-7に見出された。全体としてebpSは、64% ATおよ び36% CGであった。2つのATGコドンがebpSの該正確な読み取り枠中に見出され たが、該推定リボソーム結合サイトの位置に基づいて、開始コドンとして第二の ATGを選定した。ペプチド配列から決定された細胞表面EbpSの該N-末端配 列が、該予想された配列の該第二の残基から開始することを見出したが、このこ とは最初のMet残基が開裂されていることを示唆している。該推定配列は、該第 一のアミノ酸(本来はAla、推定ではSer)を除き、細胞表面EbpSの該決定された配 列と完全に一致した。Ser残基は、ペプチド配列決定クロマトグラムにおけるピ ークが小さいことから、しばしば読み間違われるので、細胞表面EbpSの元の配列 決定クロマトグラムを再検討し、問題とする該残基がSerであり、Alaではないこ とを示す、明らかなSerおよびSer'ピークを同定した。 この成熟タンパクは予想分子量23,344.7ダルトンおよび酸性pI 4.9を有する。 従って、このタンパクは酸性アミノ酸Asp(10.9%)およびGlu(11.9%)において勝っ ているが、Cys残基を含まない。ガーニアー(Garnier)分析は、58.4%のαヘリッ クスおよび23.8%の螺旋状コイルからなる二次構造を予測している。この対象と するNIHのBLASTネットワークサービスを、配列相同性の研究で使用した。1995年 5月1日に、Brookhaven Protein Data Bank,GenBank,EMBL Data Library,SW ISS-PROTタンパク配列データベースが解放され、GenBankの翻訳されたコード配 列を比較のために使用した。有意な相同性は、これらデータベースにおいて報告 された配列とebpSの該一次配列との間には見出されなかった。E. コリ内でのebpSの発現 我々は、このクローン化した遺伝子が、E.コリ内でのebpSの発現によって、エ ラスチン結合タンパクをコードするかを研究する。該PCR-増幅したebpSの読み取 り枠は、N-末端に結合した6個のHis残基を含む融合タンパクとして、E.コリ内 で発現された。組み換えEbpS(rEbpS)を、E.コリ抽出物から、Ni++とHis残基との 間の高いアフィニティー結合相互作用に基づく、Ni++-NTAクロマトグラフィーに より精製した。第4図から理解されるように、3種の正のクローンが大量の均一 なrEbpSを発現した。しかしながら、3種全てのクローンから精製されたrEbpSは SDS-PAGEによって分画した場合に、45kDaのタンパクとして移動した。これはそ の予想された分子量26kDaから大幅にずれていた。このサイズの差およびrEbpSが 還元SDS-PAGEにより分画されたという事実に基づけば、この観測された異常な移 動度がrEbpSの二量化によるものであるとは思えなかった。 rEbpSの忠実度を調べるために、完全な長さのrEbpS(7)N-末端配列並びに分解 生成物由来の内部配列およびCNBr開裂により生成する2つのフラグメントをタン パク微量配列決定によって決定した。全体として、明確な配列を58残基について 得たが、これらは第2図の予測された配列(下線を施した配列)と完全に一致し た。更に、アミノ酸および質量スペクトル分析は、rEbpSの組成およびrEbpSの実 際の分子量が、それぞれ該予測データと一致していることを示した。これらの結 果は、該正確なタンパクが発現され、また該分子量の過大評価がSDS-PAGEにおけ る異常な移動度によるものであることを示している。rEbpS 構築体のエラスチン結合活性 rEbpSがエラスチンと特異的に相互作用するか否かを検討するために、エラス チンペプチドアフィニティークロマトグラフィーを、放射性標識したrEbpSにつ いて実施した。ヨウ素化rEbpSを、該エラスチンペプチドアフィニティー樹脂と 共に、室温にて2時間、未標識のエラスチンペプチドの存在下または不在下でイ ンキュベートした。次いで、この混合物を、流下液の放射能がバックグラウンド に達するまで、バッファーで十分に洗浄した。結合物質を1%SDSバッファーで溶 出し、SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーで分析した。この実験のための出 発物質を、Ni++-NTAクロマトグラフィーにより精製した後、4℃にて一週間保存 した。第5図から理解されるように、この実験のための出発物質は、部分的に分 解された(レーンB)。該40kDaの主な分解生成物の配列は、Arg残基後に開始(第 2図、残基#60において開始)し、トリプシン−様の酵素が、分解を生ずるもの と思われる。最初の59アミノ酸を欠いているこの部分的に分解された物質は、該 アフィニティー樹脂と結合しなかった。これとは対照的に、標識した完全な長さ のものは、過剰な未標識のエラスチンペプチド(第5図:レーンD)の不在下(存 在下においても)で(第5図:レーンC)、該エラスチンペプチドアフィニティー 樹脂と効率よく相互作用した。これらの結果は、該59個のアミノ酸領域がエラス チンの識別において重要な役割を演じていることを示唆している。 EbpSのN-末端が該リガンド結合サイトを含むという仮説を、更に検討するため に、CNBr−開裂rEbpSフラグメントのエラスチン結合特性を検討した。というの は、単一の内部Met残基の存在がDNA配列データから予測されたからである。予測 された配列との一致において、2つの支配的なバンドを、CNBr−開裂rEbpSの該 放射性標識した出発物質に検出した。ペプチドの微量配列決定を使用して、正確 な開裂を明らかにし、かつN-末端およびC-末端フラグメント(第3図:下線部分 )を同定した。これらフラグメントのエラスチン結合活性を、エラスチンペプチ ドアフィニティークロマトグラフィーでアッセイした際に、該N-末端フラグメン トのみが、該エラスチンペプチドアフィニティー樹脂と強固に結合した。これら の発見は、EbpSの最初の59アミノ酸に含まれる該エラスチン結合サイトと一致す る。S. オーレウスのエラスチンに対する結合に及ぼすrEbpSの効果 EbpSが、該細胞レベルでのエラスチン結合を司る該細胞表面分子である場合に は、可溶性EbpSの活性型は、S.オーレウスのエラスチンに対する結合を妨害する はずである。我々は、この仮説を、S.オーレウスのエラスチンに対する結合に及 ぼすrEbpSの効果を検討することによりテストした。125Iで標識したエラスチン を、変動する濃度の未標識rEbpSの存在下または不在下で、室温にて1時間、200 μlのTSB中で、S.オーレウス細胞と共にインキュベートした。TSBで3回洗浄し た後、該細胞ペレットと結合した放射能を、ガンマカウンタで測定した。第6図 から理解されるように、rEbpSは、濃度に依存した様式で、標識したエラスチン の結合を阻害した。更に、放射性標識したエラスチンに対するS.オーレウスの結 合は、テストした最大のrEbpS濃度(19μM)において阻害された。コントロールポ リヒスチジン融合タンパクである、マウスジヒドロフォレートリダクターゼ(DHF R)は26μMにおける結合に影響を与えなかった。これらの結果は、細胞エラスチ ン結合のrEbpSによる阻害が特異的であり、またrEbpSの該ポリヒスチジンドメイ ンが結合に影響を与えないことを立証している。S. オーレウスの細胞表面でのEbpSの発現 エラスチンと直接相互作用し、かつ強力に細胞エラスチン結合を阻害するrEbp Sの能力は、EbpSが、エラスチンに対するS.オーレウスの結合を媒介する細胞表 面タンパクであることを示唆している。EbpSが細胞表面タンパクであるという更 なる証拠を与えるために、表面標識したS.オーレウス抽出物および固定化した抗 -rEbpS IgGについて、アフィニティークロマトグラフィーを実施した。S.オーレ ウス細胞を、該IODOGEN法により表面標識し、リゾスタフィン消化により抽出物 を調製した。約107cpmのこの物質をブタIgGアフィニティー樹脂に予め吸収させ て、表面−標識タンパクAを除去し、流出液を抗-rEbpS IgGアフィニティー樹脂 と共に25℃にて2時間インキュベートした。結合バッファーで十分に洗浄した後 に、結合した細胞表面分子を、1% SDSバッファーにより溶出し、SDS-PAGEおよび オートラジオグラフィーにより分析した。第7図に示したように、該ブタのIgG 樹脂への予備吸収は、該出発物質から、表面標識したタンパクAを除去した(レ ーンAおよびBにおける50kDaのバンドと比較)。残りの多数の表面標識タンパ クの中で、35および25kDaのタンパクは、該抗-rEbpS IgGアフィニティー樹脂と 結合した(レーンC)。この結合の特異性を立証するために、同様な実験を、過剰 の未標識rEbpSの存在下で実施した。レーンDから理解されるように、固定化抗- rEbpSIgGに対する、35kDaのタンパクではなく、該表面25kDaのタンパクの結合が 、未標識rEbpSにより阻害された。該バンドのデンシトメーターによる走査は、 固定化抗-rEbpS IgGに対する、該25および35kDaタンパク(しかしながら、35kDa タンパクではない)のバンド強度が、未標識rEbpSにより阻害されたことを明ら かにした。該バンドのデンシトメーターによる走査は、該25および35kDaタンパ クに関するバンド強度が、過剰の未標識rEbpSの存在下で、それぞれ64%および7% だけ低下することを示した。これらの結果は、該25kDaのタンパクが細胞表面Ebp Sであり、また該35kDaのタンパクが、該エラスチンペプチドアフィニティー樹脂 のアガロースアフィニティー担体と相互作用することを示す。 該抗-rEbpS抗体はポリクローナル抗体であるので、該抗体の幾つかが、エラス チン結合にとって重要な、細胞表面rEbpS中のある領域を識別できると、結論付 けた。この考えをテストするために、放射性標識したエラスチンに対するS.オー レウスの結合に及ぼす抗-rEbpS IgG Fabフラグメントの効果を検討した。S.オー レウス細胞を、免疫または予備免疫Fabフラグメントの不在下または存在下で、 標識したエラスチンと共にインキュベートした。第8図に示すように、免疫IgG 由来のFabフラグメントは、濃度に依存する様式で、放射性標識したエラスチン に対するS.オーレウスの結合を阻害した。これとは対照的に、予備免疫抗体由来 のFabフラグメントは、テストした該2種の濃度において、結合に影響を与えな かった。 議論 病原性バクテリアの細胞表面成分は、宿主にとってマイナス環境を生き抜く上 で重要な役割を演じている。グラム陽性バクテリアにとって、これらの表面分子 は、宿主の免疫応答を回避し(30)、宿主の炭水化物を消化して、宿主の付着サイ トを暴露する(31,32)、宿主酵素を捕獲して、宿主の組織を消化する(33)、およ び宿主組織の決定基に結合して、コロニー形成の確固とした基礎を確立する(34) 等の病原的過程において利用される。細胞表面アドヘジンおよびMSCRAMMSは宿主 ECM成分と相互作用し、かつ組織および器官を介するコロニー形成および溢出に 関与する。以前に、S.オーレウスが特異的にエラスチンと結合することが立証さ れていた。細胞レベルでの結合アッセイの結果は、該S.オーレウス−エラスチン 結合の相互作用を媒介する、単一の型の細胞表面エラスチン結合タンパクの存在 を示唆した。従って、S.オーレウスのエラスチンに対する結合特性と同様な結合 特性をもつ、細胞表面EbpSが単離された。これらの発見を基にして、EbpSが該エ ラスチンMSCRAMMであることが報告されている。この研究の焦点は、EbpSの分子 構造および機能を研究することにより、この仮説を検証することであった。 この結果は、該606bpのebpSが、該S.オーレウスゲノム中の単一の複製遺伝子 として存在し、またebpSの一次配列が新規であることを立証している。成熟EbpS は、23kDaなる予想された分子量を有し、かつ著しい帯電状態にある。更に、E. コリ中で発現される可溶性EbpSはエラスチンと直接相互作用する。EbpSの配列、 組成およびサイズの忠実度を、ペプチド微量配列決定、アミノ酸分析、およびマ ススペクトル分析により解析し、かつ正確であることを明らかにした。しかしな がら、実際のサイズ26kDaをもつ該組み換えタンパクは、SDS-PAGEにおいて45kDa のタンパクとして異常な移動度を示す。SDS-PAGEにおける異常な移動は、ポリヒ スチジン融合タンパクとして発現されるタンパクおよび多数のグラム陽性細胞 表面タンパクについて、しばしば観測されている(35-39)。幾つかの場合におい て、グラム陽性細胞表面タンパクの異常な移動は、これらタンパクの多数の繰り 返しドメインの存在(35,36)および高いPro含有率(37,38)に起因するものとされ ている。EbpSのこの異常な移動は、これらのファクタによるものではあり得ない 。というのは、rEbpSが多数の繰り返しドメインを持たず、かつ高いPro含有率を もたない(全体の3.6%)からである。酸性アミノ酸は、EbpS中で全体的に豊富で ある(pI=4.9)から、可能な説明としては、EbpS表面の負の電荷が、アニオン性の SDSの均一な付着を妨害し、SDS-PAGEにおける該観測された異常な移動を生ずる ものと考えられる。 幾つかの独立した基準は、EbpSが細胞性エラスチン結合を媒介する表面タンパ クであることを示す。第一に、rEbpSは特異的に固定化されたエラスチンと結合 し、かつドーズに依存した様式で、エラスチンに対するS.オーレウスの結合を阻 害する。これらの結果は、EbpSが、可溶性形状において機能的に活性な、エラス チン結合タンパクであるという事実を確立している。第二に、rEbpSに対して生 成した抗体は、S.オーレウス細胞の細胞表面上で発現される25kDaのタンパクを 識別する。該サイズの類似性および抗体反応性に加えて、この25kDaのタンパク が細胞表面EbpSであることのもう一つの証拠は、該25kDaのタンパクの固定化さ れた抗-rEbpS IgGに対する結合が、過剰の朱標識のrEbpSの存在下で阻害される ことを示す実験により与えられる。最後に、該抗体の予備免疫コントロールでは なく、該抗-rEbpS抗体から調製されたFabフラグメントは、S.オーレウスのエラ スチンに対する結合を阻害する。この結果は、表面EbpSの形態が、該エラスチン 結合サイトがリガンド(即ち、エラスチンおよび該抗-rEbpS Fabフラグメント) との相互作用に利用できるようなものであり、かつ該細胞壁または膜ドメインに 包埋されていないことを示唆している。これらの組み合わせたデータは、EbpSが エラスチンに対するS.オーレウスの結合を司る該細胞表面タンパクであることを 立証している。 これらの結果は、EbpSが該細胞表面上で発現されることを示しているが、この タンパクの表面発現に関与するメカニズムについては殆ど知られていない。グラ ム陽性バクテリアの幾つかの表面タンパクが、細胞の選別、輸送およびこれらタ ンパクの該細胞表面への係留において重要な共通のモチーフを与えられているこ とが見出された(40)。この共通の特徴は、リガンド結合細胞外N-末端ドメインを 伴う、開裂された1個のシグナルペプチド、該細胞壁に跨がるProに富む領域、 保存されるLPXTGXヘキサペプチド配列、疎水性膜に跨がるドメイン、および帯電 したC-末端テイルからなる。Schneewind等(41)の最近の研究は、少なくともS.オ ーレウスのタンパクAに対する、該共通の構造が、該ヘキサペプチド配列のThr 残基および該タンパクが、Thrのカルボキシル基および該スタフィロコッカスの ペプチドグリカンのペンタグリシン部分の遊離アミノ基のアミド結合を介して、 細胞壁に係留された後に、開裂されることを示した。該細胞外N-末端ドメインに 対する該エラスチン結合サイトの推定位置および帯電したC-末端テイルの同定以 外に、我々の結果は、EbpSが他の共通のモチーフを含まないことを示している。 しかし、この観測は、幾つかの他のグラム陽性表面タンパクが、この保存された 構造とは異なっていることが見出されている点で、EbpSについて固有のものでは ない。我々は如何なる配列または構造上の類似性も確認していないが、この共通 の構造と一致しないEbpSおよび他のタンパクは、一般的に該与えられたモチーフ を発現するタンパクの大多数よりも小さい。そのリストはストレプトコッカスタ ンパク、例えばフィブロネクチン/フィブロゲン結合タンパク(54kDa)(42)、ア ルブミン結合タンパク(36kDa)(38)、およびプラスミドレセプタ(36kDa)(43)を含 む。更に、EbpSと同様に、該ストレプトコッカスプラスミドレセプタの最初のMe t残基は、該成熟タンパクでは開裂されている(43)。これらの相関関係が、表面 発現に対する別のメカニズムにおいてある役割を演じているか否かは知られてい ない。 このおよび以前の発見は、表面発現前に該C-末端における処理を必要とする、 EbpSの機能的に活性な40kDaの細胞内プリカーサ形の存在を示唆している。この 表記は、以下の観測に基づくものである。即ち、i)細胞表面標識実験中には決し て検出されない、細胞内40kDaエラスチン結合タンパクが存在し、ii)該25kDaの EbpSおよび該40kDaのエラスチン結合タンパクは、同一のN-末端配列をもち、ま たiii)単一の遺伝子がEbpSについて存在する。該ebpS読み取り枠のサイズは、40 kDaのタンパクをコードするには不十分であるから、まず我々はこの仮説を無 視した。しかしながら、我々のrEbpSを使用した研究は、該組み換えタンパクの 実際のサイズは26kDaであるが、SDS-PAGEでは45kDaのタンパクとして、異常な移 動を示すことを立証した。この発見は、予想されたサイズ23kDaを有する完全な 長さの本来のEbpSは、SDS-PAGEにおいては40kDaの細胞内プリカーサとして移動 し、かつEbpSの該25kDaの表面形が、該C-末端において処理された該分子のより 小さい型のものであることを示唆している。EbpSはN-末端シグナルペプチドおよ び他の既知の選別および係留シグナルを欠いているが、この提案された細胞内処 理事象は、EbpSが如何にして該細胞表面を攻撃するかに関する幾つかの問題を説 明できる。事実、C-末端シグナルペプチドは、幾つかのバクテリアタンパクにお いて同定され(44)、またタンパクを該細胞表面に係留する他の手段が、グラム陽 性バクテリアにおいて報告されている(45)。EbpSの該C-末端は細胞内で処理され る可能性があるが、この開裂が何処でまたどの様にして起こるか、およびこの処 理事象が、EbpSの表面発現に必要とされる該シグナルの一つであるか否かは、依 然として明らかにされていない。 病原性のバクテリアと宿主ECM成分との間の相互作用が、疾患の発病において 重要な役割を演じていることが、今や明らかとなっている。多くのECMアドヘジ ンに関する分子構造:機能分析は、これらの研究から導かれる情報に基づいて、 効果的な予防並びに治療薬剤の開発の明らかな可能性があるにも拘らず、まだな されていない。検討を行った場合において、該主なリガンド結合サイトは、細胞 外N-末端ドメインのC-末端中に含まれることが見出されている(36,46,47)。CNBr −開裂rEbpSの該C-末端フラグメントによるエラスチン結合活性、および該抗-rE bpS Fabフラグメントによる細胞エラスチン結合の阻害がないことを示すこの結 果は、EbpS中の該エラスチン結合サイトも、該細胞外N-末端ドメイン中に含まれ ることを示唆している。EbpSの該初めの59アミノ酸に対する、この領域内の推定 エラスチン結合サイトの更なるマッピングは、これら残基をもたないEbpSの分解 生成物が、エラスチンと相互作用しないという発見に基づいている。EbpS中の他 のドメインと同様に、EbpS中の該推定エラスチン結合領域は、種々のデータベー スに対して報告された配列との相同性に欠けている。この59アミノ酸ドメインを 含む、EbpSの切り取られた組み換え構築体は、エラスチンに対するS.オーレウス の結合を阻害する。これらの観測は、該59個のアミノ酸の領域が、EbpSの該エラ スチン結合サイトを含むことを示している。 実施例2 細胞−細胞外マトリックス(ECM)相互作用は、胚の発生、炎症、腫瘍細胞の転 移、ホメオスターシス、および微生物の感染を包含する種々の生物学的過程にお ける必要な事象である(Bernfield等,Annu.Rev.Cell Biol.,1992,8:365-393 ;Liotta等,Annu.Rev.Biochem.,1986,55:1037-1057;Patti等,Annu.Rev.M icrobiol.,1994,48:585-617)。ECM成分と対応する細胞表面レセプタとの間の 相互作用が、分裂、移動、接着、または増殖する細胞に、これらの生物学的過程 をとるように指示する。例外はあるが、哺乳動物細胞は、典型的にはインテグリ ン、即ちα/βヘテロダイマー型レセプタ複合体を利用して、該ECMと相互作用 する(Hynes,Cell,1992,69:11-25;Albelda等,FASEB J.,1990,4:2868-2880) 。 バクテリアの病原体も、包括的にアドヘジンまたはMSCRAMMSとして分類される 特異的な細胞表面ECM結合分子を介して、該宿主マトリックスと相互作用する(Pa tti等の1994年の上記文献;Hook等,Cell Differ.Dev.,1990,23:433-438)。該 グラム陽性バクテリア病原体S.オーレウスは多くのECM分子、例えばコラーゲン( Holderbaum等,Infect.Immun.,1986,54:359-364;Speziale等,J.Bacteriol. ,1986,167:77-81)、フィブロネクチン(Kuusela,Nature,1978,276:718-720) 、ラミニン(Lopes等,Science,1985,229:275-277)、プロテオグリカン(Liang 等,Infect.Immun.,1992,60:899-906)フィブリノーゲン(McDevitt等,Mol. Microbiol.,1994,11:237-248)およびエラスチン(Park等,J.Biol.Chem.,19 91,266:23399-23406)と相互作用することが分かっている。S.オーレウスアドヘ ジンは宿主ECMと結合するが、これらの相互作用は、哺乳動物ECMレセプタとは異 なる生物学的目的および結合プロフィールを有する。一般的に、スタフィロコッ カスのECMアドヘジンは、病理的目的、例えば宿主組織のコロニー化のために利 用される。例えば、コラーゲン(Patti等,Infect.Immun.,1994,62:152-161) およびフィブロネクチン(Baddour,Infect.Immun.,1994,62:2143- 2148)アドヘジン突然変異体はインビボモデルにおいて低い疾患発生能力を示す が、それ以外の表現型は正常である。 分子レベルにおいて、モノマーとしての全ての特徴付けされたスタフィロコッ カスのアドヘジンおよび内在性のバクテリアリガンドは、同定されていない。利 用可能な証拠は、スタフィロコッカスECMアドヘジンにおけるリガンド結合サイ トは該細胞外ドメインの小領域に含まれる。該スタフィロコッカスフィブロネク チン結合タンパク中の該リガンド結合サイトは、例えば繰り返し38アミノ酸モチ ーフに対してマッピングされており、また対応する合成ペプチドは、直接的結合 活性をもち、かつフィブロネクチンに対するバクテリアの結合を阻害することが 見出されている(Signas等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1989,86:699-703 ;Raja等,Infect.Immun.,1990,58:2593-2598)。同様に、コラーゲンアドヘジ ンのAsp209とTyr233との間の領域に対応する、合成の25アミノ酸のペプチドは、 S.オーレウスに対するタイプIIコラーゲンの結合を阻害することが示された(Pat ti等,J.Biol.Chem.,1996,270:12005-12011)。このことは、この短いペプチ ド配列のみが、コラーゲンに対するスタフィロコッカスの結合を媒介できること を示唆している。 S.オーレウスとエラスチンとの間の特異的結合は、S.オーレウスの表面上の、 25kDaのエラスチン結合タンパク(EbpS)により媒介される(Park等の1991年の上記 文献)。エラスチン結合活性は、初めの59個のアミノ酸の内の、EbpSの細胞外ア ミノ末端に局在化されている(Park等の1991年の上記文献;Park等,J.Biol.Che m.,1996,271:15803-15809)。該エラスチン結合活性を司るEbpS内のアミノ酸を より十分に定義するために、オーバーラップ合成ペプチドおよび切り取られた組 み換えEbpS構築体を、エラスチン結合アッセイで使用した。我々の結果は、該N- 末端ドメイン内の該重要なエラスチン認識配列が、Gln14とGlu34との間に存在( SEQ ID NO:13)することを立証している。配列の比較は、全ての活性なEbpS構築 体により授けられた最小の配列が、残基18-23に及ふヘキサマー:Thr-Asn-Ser-H is-Gln-Asp(SEQ ID NO:16)であることを示している。 物質および方法物質 制限エンドヌクレアーゼ、ウシ腸ホスファターゼ、T4DNAリガーゼ、イソプロ ピル−β−チオガラクトシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル−β-D-ガラク トシド、およびHindIII-消化λDNAマーカーは、Promega(マジソン,WI)から購入 した。Luria-Bertani(LB)培地およびLB寒天培地カプセルは、BIO 101(ラジョラ ,CA)から得た。トリプシン大豆ブロス(TSB)はRemel(レネクサ,KS)から入手し た。Na125IはICN(コスタメサ,CA)から入手した。架橋したアガロースに固定化 したパパインおよびプロテインA、イムノピュアスルホ-NHS-ビオチニレーショ ン(Immunopure Sulfo-NHS-Biotinylation)キット並びにIODOGENはPierce(ロッ クフオード,IL)から入手した。QIAexpressベクターキットタイプIVおよびミデ ィープレプ(midi-prep)プラスミド精製キットはQiagen(チャッツワース,CA) から入手した。ニトロセルロース膜およびブロット紙はSchleicher & SchueII( キーン,NH)から入手した。アフィーゲル(Affi-Gel)-10アフィニティー担体はB io-Rad(メルビル,NY)から得た。全ての他の物質はSigma Chemical(セントルイ ス,MO)から購入した。合成ペプチド EbpSの推定された一次配列を含有する合成ペプチドは、ファーストモック(Fas tMoc)化学を利用した、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)モデ ル431Aでの、公知の固相合成により調製した。ペプチドを逆相高速液体クロマト グラフィー(Beckman C18,0.05%のトリフルオロ酢酸を含有する、0-80%の線形水 −アセトニトリル勾配)により精製した。該ペプチドの純度は、アミノ末端配列 決定または電子スプレイマススペクトル分析法の何れかにより確認した。全ての 合成ペプチドは、テストした濃度において、アッセイバッファーに可溶性であっ た。組み換えEbpSタンパクの発現 N-末端にポリヒスチジン標識をもつ融合タンパクとしての、完全な長さの組み 換えEbpS(rEbpS)の発現は上記の通りであった(Park等の1996年の上記文献)。本 質的に同一のプロトコールに従って、切り取った組み換えEbpS-1および2(trEbp S-1およびtrEbpS-2)を作成した。但し、異なるPCRプライマーを使用した。EbpS 残基1-78を含有するtrEbpS-1を生成するために、完全な長さのebpSを含有するpB luescript KS+中の2.6kbのHindIII/HincIIフラグメントを、正(forward)プライ マーとしてオリゴヌクレオチド:5'-TGTGGATCCATAGAAAGGAAGGTGGCTGTG-3'を、ま た逆(reverse)プライマーとしてオリゴヌクレオチド:5'-CATT GAGCTCAGATGTTTG TGATTC-3'を使用して、PCR増幅した。EbpSのアミノ酸残基1-34に対応するtrEbpS -2を作成するために、同一の鋳型および正プライマーを使用し、一方で逆プライ マーとしてオリゴヌクレオチド:5'-GTTC GAGCTCTGATTGGTCTTTTTC-3'を使用した 。この正プライマーはBamHIサイト(下線部)を含み、またQiagenにより推奨さ れているように、2つのATGコドンのAをG(太字)に変えて、翻訳の内部にお ける開始を防止した。該逆プライマーはSacI開裂サイト(下線部)を含んでいた 。PCR増幅は、標準的な試薬を使用して、パーキンエルマー(Perkin Elmer)サー モサイクラーを使用して実施した。PCR増幅に対する条件および引き続く制限酵 素消化、連結、形質転換、発現および組み換えタンパクの精製は、以前に記載さ れたように(Park等の1996年の上記文献)行った。エラスチンに対するtrEbpSタンパクの直接的結合 trEbpS-1およびtrEbpS-2を、市販されているキット(Pierce)を使用して、ビオ チン処理した。組み換えタンパク(1mg)をスルホ-NHS-ビオチン試薬(2mg)を1ml のPBSに分散させた液と共に4℃にて2時間インキュベートした。次いで、ビオ チン処理したタンパクを、PD-10ゲル濾過クロマトグラフィーにより、遊離のビ オチン化試薬から分離した。 3μgの組み換えヒトトロポエラスチン、血清アルブミン(BSA)、およびオボ アルブミンを10% SDS-PAGEにより分画し、ウエスタンブロット法によりニトロセ ルロースに転写した。転写されたブロットを一夜4℃にて、遮断バッファーによ り遮断した。該遮断バッファーは、Tris−緩衝塩水(TBS:50mMのTris、150mMのNa Cl、pH7.5)中に、0.5%(w/v)のBSAおよび0.05%(v/v)のTween-20を含んでい た。これらのブロットを2回遮断バッファーで洗浄し、2時間室温にて、5μM のビオチン処理したtrEbpS-1またはtrEbpS-2と共に、3mg/mlのエラスチンペプ チドの存在下または不在下で、遮断バッファー中でインキュベートした。遮断バ ッファーで2回洗浄した後、該ブロットを、ホースラディッシュパーオキシダー ゼと複合化したアビジンの1:1000希釈液と共にインキュベートした。EbpS ポリクローナル抗体 抗−EbpSポリクローナル抗体の免疫化プロトコールおよび特徴付けを、前に記 載されたように(Park等の1996年の上記文献)行った。一群の抗体識別EbpS残基1- 34を取り去るために、カプリル酸沈殿法(McKinney等,J.Immunol.Methods,19 87,96:271-278)により精製した抗−EbpSIgG(25mg)を、3mlのアフィ−ゲル−10 (Affi-Gel-10)と組み合わせたtrEbpS-2(8mg)とともに4℃にて一夜インキュベ ートした。翌日、この混合物を使い捨て可能なポリプロピレンカラムに移し未結 合のIgGを自然流動により集めた。この吸収の効率は、完全な長さのおよび2つ の組み換えEbpSの切取られた構築体に対する、ウエスタンイムノブロット法によ りテストした(第2c図)。元のおよびtrEbpS-2-吸収IgG画分両者由来のFabフラグ メントを、上記のように(Park等の1996年の上記文献)固定化されたパパインによ る消化によって調製した。その他の手順 完全な長さの組み換えヒト可溶性トロポエラスチンの精製および放射性標識、 エラスチンペプチドの生成、細胞エラスチン結合アッセイ、SDS-PAGEおよびウエ スタンブロット法は、前に記載したように(Park等の1996年の上記文献)実施した 。自動化したアミノ酸配列決定を、アプライドバイオシステムズ473Aタンパク配 列決定装置を使用して実施した。電子スプレイマススペクトル分析法は、ワシン トンユニバーシティースクールオブメディスン(セントルイス,MO)のプロテイ ンケミストリーラボラトリーにより実施した。PROTEANプログラム(DNAstar,マ ジソン,WI)を使用して、EbpS構築体の二次構造を予測した。 結果切り取られた組み換えEbpS構築体はエラスチンと結合し、かつエラスチンに対す るS.オーレウスの結合を阻害する 種々のEbpSフラグメント(Park等の1996年の上記文献)および組み換え構築体の エラスチン結合特性の研究から得られた結果を、第9図にまとめた。EbpSの初め の125アミノ酸を含有するシアノゲンブロミドフラグメントは、結合活性を示し たが、初めの59アミノ酸を欠いたEbpS分解生成物、該タンパクのC-末端の1/3を 含有するシアノゲンブロミドフラグメントおよび残基1-13に相当する合成ペプチ ドは、エラスチンと相互作用しなかった。これらの結果は、EbpS中の該エラスチ ン結合サィトが、アミノ酸残基14-59(SEQ ID NO:15)(第1図の陰影を付した領域 )中に含まれることを示唆した。 結合にとって決定的なアミノ酸を同定するために、2種の切り取ったEbpSの組 み換え構築体(核酸配列SEQ ID NO:9を有するtrEbpS-1および核酸配列SEQ ID NO :11を有するtrEbpS-2)を生成し、対応するポリペプチドを、直接エラスチンと 結合する能力およびエラスチンに対するS.オーレウスの結合を阻害する能力両者 についてテストした。予測された分子量12.8kDaを有するtrEbpS-1はEbpSの残基1 -78(SEQ ID NO:10)を含み、一方trEbpS-2は残基1-34(SEQ ID NO:12)に及び、か つ予想された分子量7.5kDaを有する。該切り取られた構築体の、マススペクトル 分析、ペプチド微量配列決定、および該抗-rEbpS抗体にらるイムノブロット法( 第10B図のレーンCおよびD)による特徴付けは、正確な切り取られたタンパクが 発現されたことを明らかにした。両タンパクは、SDS-PAGE(第10図)により分画 した場合に、予想された分子量よりも大きな位置に移動した。この挙動は、完全 な長さの組み換えEbpS(rEbpS)(SEQ ID NO:2)についても観測された。SDS-PAGEに おける異常な移動は、グラム陽性細胞表面タンパクの共通の特徴であると思われ る(MCDeVitt等の1994年の上記文献;Signas等の1989年の上記文献;Murphy等,Bio chem.J.,1991,277:277-279;Sela等,Mol.Microbiol.,1993,10:1049-1055; Sjobring,Infect.Immun.,1992,60:3601-3608;Talay等,Mol.Microbiol.,1 994,13:531-539)。 trEbpS-1およびtrEbpS-2が、エラスチンと直接結合するか否かを検討するため に、その切り取ったタンパクをビオチン処理し、ニトロセルロース膜に転写され たトロポエラスチンと反応させた。第11図に示したように、これら両切取り構築 体は、競合する可溶性エラスチンペプチドの存在下(レーンBおよびD)ではなく その不在下(レーンAおよびC)において67kDaと結合した。これらのビオチン処理 したタンパクは、同様な条件下で、オボアルブミンまたはBSAと結合しなかった が、このことはこれら2つのポリペプチド、即ちtrEbpS-1およびtrEbpS-2とトロ ポエラスチンとの間の結合相互作用が特異的であることを立証している。 trEbpS構築体の、細胞レベルにおける、エラスチン結合に及ぼす効果を、増大 する量の可溶性の完全な長さのrEbpSまたは該レセプタの切り取った型の何れか の存在下または不在下で、放射性標識したエラスチンとS.オーレウス細胞とをイ ンキュベートすることによりテストした。3種全てのポリペプチドが、濃度に依 存する様式で、エラスチンに対するS.オーレウスの結合を阻害した(第12図)。 rEbpSおよびtrEbpS-1はテストした最大濃度にてエラスチンの結合を完全に阻害 した。trEbpS-2は、阻害剤としては幾分効果が劣っており、該最大の阻害剤濃度 にて約20%の残留エラスチン結合活性を示した。trEbpS-2 による該抗-rEbpS抗体の予備吸収は、その阻害作用を中和する rEbpSに対して生成したポリクローナル抗体のFabフラグメントはエラスチンに 対するS.オーレウスの結合を阻害する(Park等の1996年の上記文献)。このことは 、免疫血清中の抗体の一群が、エラスチン結合にとって決定的なEbpS内の領域を 識別することを示唆している。この可能性をテストするために、抗-rEbpSIgGを 、アフィーゲル10と結合したtrEbpS-2構築体に吸収させ、未結合のIgGを集めた 。イムノブロット法は、該trEbpS-2に吸収された免疫グロブリンが、廿trbpSお よび完全な長さのrEbpS-1両者と相互作用する能力を維持していること(第10C図 、レーンBおよびC)を明らかにしたが、活性は低かった。該trEbpS-2構築体に吸 収させなかった該免疫グロブリンの画分は、ウエスタンブロットにおいてtrEbpS -2と反応しなかった(第10C図、レーンD)。 trEbpS-2に吸収されなかったおよびtrEbpS-2に吸収させた免疫グロブリン両者 由来のFabフラグメントを、パパイン消化により生成し、スタフィロコッカスエ ラスチン結合に及ぼす効果についてテストした。以前の発見と一致して、元の抗 -rEbpSIgG由来のFabは、エラスチンに対するS.オーレウスの結合を阻害した(第 13図)。これとは対照的に、trEbpS-2に予備吸収させた血清は、テストした最大 濃度(300μg/ml)において僅かに30%だけ、エラスチンに対するS.オーレウスの結 合を阻害した。連続する合成EbpSペプチドは、エラスチンに対するS.オーレウスの結合を阻害す 上記の発見は、EbpSにおけるエラスチン識別ドメインは、残基14-34内に含ま れる。このエラスチン結合サイトをより一層正確に定義するために、この領域の オーバーラップ合成ペプチドを生成し(第14図)スタフィロコッカスエラスチン に対する結合を阻害するその能力についてテストした。EbpSにおける反復配列を 探索して、候補エラスチン結合サイトを見出した。というのは、幾つかのスタフ ィロコッカスおよびストレプトコッカスECMアドヘジンが、リガンドの識別のた めに反復ドメインを利用することが示されているからである(Signas等の1989年 の上記文献;Sela等の1993年の上記文献)。同一の反復配列は同定されていない が、2つの関連する配列、即ち21HQDHTEDVE29(SEQ ID NO:20)および37HQDTIENTE45 (SEQ ID NO:23)が、該分子のアミノ末端部分に存在する。該配列21HQDHTEDVE2 9 は、該推定アミノ末端エラスチン結合サイト内にあり、全ての活性なEbpS構築 体中に含まれている。該第二の配列37HQDTIENTE45は、完全な長さのEbpSおよびt rEbpS-1中にのみ存在し、活発にトロポエラスチンと結合することはない。 該HQDHTEDVE配列がエラスチン結合に関与しているか否かを決定するために、 我々は2種の合成17アミノ酸を含むペプチド、即ちP1(SEQ ID NO:18)およびP2(S EQ ID NO:19)を生成したが、これは残基18-34(第14図)に対応する。該P1ペプチ ドは、EbpSの該推定配列に従って作成した。該P2ペプチドにおいて、Asp23、Glu26 およびGlu29はそれぞれAsn、ProおよびGlnにより置換した。該帯電したアミノ 酸を、置換のためのターゲットとしたが、その理由はスタフィロコッカスエラス チン結合が静電相互作用を含むことが示されたからである(Park,Cell Biology ,1993,1-161)。第15図に示すように、該P1ペプチドは、濃度に依存した 様式で、エラスチンに対するS.オーレウスの結合を阻害した。エラスチンの結合 はP1の最大濃度にて阻害されたが、該P2ペプチドについては、最小の阻害(〜15% )が観測された。 より完全にエラスチン結合活性を定義するために、アミノ酸残基14-36に及ぶ 3種のオーバーラップ10マーを生成し(第14図)、エラスチンに対するスタフィ ロコッカスの結合を阻害する能力についてテストした。ペプチドP4(SEQ ID NO:2 1;該HQDHTEDVEを含む残基27-36)およびペプチドP5(SEQ ID NO:21;残基27-36)は テストした最大濃度にて約35%だけエラスチンの結合を減じ、一方ペプチドP3(SE Q ID NO:14;残基14-23)は、濃度に依存した様式で、95%を越えるまで、放射性標 識したエラスチンに対するS.オーレウスの結合を阻害した(第15図)。P3と他の 活性EbpS構築体の配列の比較は、ヘキサペプチド18TNSHQD23(SEQ ID NO:16)が全 ての構成成分を与えられた唯一の配列である。しかしながら、このヘキサペプチ ドTNSHQD(P6)およびそのコントロールTNSHQS(SEQ ID NO:17;P7)は、テストした 如何なる濃度においても(0.075-2.00mg/ml)、スタフィロコッカスのエラスチン 結合を阻害しなかった。これらの発見は、該HQDHTEDVE配列近傍の領域がエラス チンの識別に関与していることを示している。 議論 ECMアドヘジンは宿主組織のバクテリアコロニー形成および該組織を介する散 在にとって重要である。EbpSのエラスチン結合サイトの同定は、エラスチンに対 するS.オーレウスの接着のメカニズムを理解する上で必要とされる。オーバーラ ップEbpSフラグメントおよび組み換え構築体を使用して、EbpS内の該エラスチン 結合サイトを、該分子のアミノ末端ドメインに対してマッピングした。アミノ酸 14-34に及ぶ、オーバーラップ合成ペプチドを、次に該結合ドメインをより良く 定義するために使用した。これらの中で、残基14-23および18-34に相当するペプ チドのみが、95%を越える割合で、エラスチン結合を特異的に阻害した。全ての 活性な合成ペプチドおよびEbpSのタンパク分解および組み換えフラグメントに共 通するものは、ヘキサマー配列:18Thr-Asn-Ser-His-Gln-Asp23である。この配 列がエラスチン結合にとって重要であることの更なる証拠は、残基18-34に対 応する合成ペプチド内で、Asp23をAsnで置換した場合に、活性が失われることで あった。しかしながら、合成ヘキサマ−TNSHQD自体は、エラスチンに対するスタ フィロコッカスの結合を阻害しなかった。これらの発見は、該TNSHQD配列の存在 はEbpS活性にとって必須であるが、そのN-末端またはC-末端方向におけるフラン キングアミノ酸およびAsp23のカルボキシル側鎖が、エラスチンの認識のために 必要とされる。 EbpSによるエラスチン識別のための最低要件は、予想外にも、S.オーレウスと フィブロネクチンとの間に観測された要件と類似している。S.オーレウスに結合 するフィブロネクチンは、表面フィブロネクチン結合タンパクにより媒介され、 またこのアドヘジンにおける該フィブロネクチン結合サイトは3回、部分的には 4回反復される、細胞外38アミノ酸モチーフに対してマッピングされている(Sig nas等の1989年の上記文献)。その後のMcGavin等による検討(J.Biol.Chem.,19 91,266:8343-8347)は、必須アミノ酸が、該38アミノ酸モチーフの残基21-33に 含まれており、またフランキングN-末端およびC-末端アミノ酸が活性に必要とさ れることを示した。酸性アミノ酸のカルボキシル側鎖も、必須である。該フラン キング残基は、フィブロネクチン結合にとって好ましい配座を獲得する必要があ る。 該スタフィロコッカス−フィブロネクチン結合タンパクに関する該提案された リガンド識別メカニズムと同様に、該TNSHQD合成ペプチド自体は、これが不適当 に折り畳まれることから、不活性である可能性があり、またフランキング残基が 活性に必要とされる二次構造を形成するのに必要とされるからである。完全な長 さのEbpSのN-末端領域は、該TNSHQD配列が存在する、14-23残基を含む領域を除 き、両親媒性のα−ヘリックスとして折り畳まれるものと予想されている。これ らの予測は、該TNSHQD配列がエラスチン接触サイトを規定するが、活性な様式で のこの領域の提示は、フランキング二次配列を必要とし、該二次配列はEbpS中の 該エラスチン結合サイトの構造を安定化するであろう。これが、エラスチンに対 する、活性EbpS合成ポリペプチドの結合アフィニティーが、何故より大きなエラ スチン結合EbpSポリペプチドのアフィニティーよりもかなり低いかに対する一つ の解釈である。 スタフィロコッカスエラスチンおよびフィブロネクチン識別メカニズムの特性 は、対応する哺乳動物レセプタのものとは逆である。哺乳動物レセプタは、該レ セプタ中の構造性ドメインと各リガンドの短い連続したペプチド配列との間の相 互作用を介して、該各リガンドに結合する。例えば、αおよびβインテグリンサ ブユニットにより形成される構造性ドメインは、短いペプチド配列、例えばRGD( Pierschbacher等,Nature(Lond.),1984,309:30-33);LDV(Mould等,J.Biol.C hem.,1990,265:4020-4024);REDV(Mould等,J.Biol.Chem.,1991,266:3579- 3585);IDAPS(Mould等,EMBO J.,1991,10:4089-4095)と相互作用する。同様に 、67kDaの哺乳動物エラスチン結合タンパクは、疎水性のVGVAPGヘキサペプチド 配列を識別する(Hinek等,Science,1988,239:1539-1541)。これとは対照的に 、スタフィロコッカスエラスチンとフィブロネクチンアドヘジンとは、該アドヘ ジンの小領域を、該リガンドにより形成される構造的結合ポケットと嵌合するこ とにより、そのリガンドと相互作用する。リガンド識別メカニズムにおけるこれ らの差異は、スタフィロコッカスおよび哺乳動物エラスチンとフィブロネクチン 結合系との間の結合的競合の欠損を保証し、かつコロニー形成および播種の目的 で、宿主組織成分に対するスタフィロコッカスの効率的な結合を促進する2つの 目的にとって、重要である可能性がある。 バクテリアによって利用されているレセプターリガンド認識におけるこの戦略 の差は、他のエラスチン結合タンパクが、エラスチンとの相互作用のために類似 する方法を利用している可能性があることを示している。しかしながら、配列の 比較は、幾つかの公知のエラスチン−結合タンパクにおける該TNSHQD配列を検出 することはできなかった。該エラスチン−結合タンパクは、例えば膵臓および好 中球エラスターゼ(Fletcher等,Biochemistry,1987,26:7256-7261;Shotton等 ,Nature,1970,225:811-816);Steffensen等,J.Biol.Chem.,1995,270:1155 5-11566);リソスタフィン(Park等,Int.J.Biochem.Cell Biol.,1995,27:13 9-146);微細線維−関連糖タンパク(Brown-Augsburger等,J.Biol.Chem.,1994 ,269:28443-28449);またはリソザイム(Park等,J.Invest.Dermatol.,1996, 106:1075-1080)を包含する。また、これらタンパクの何れも、残基14-34に相当 する伸張されたEbpS配列に対する有意な相同性をもたなかった。 該エラスチンのアミノ末端から3番目は、EbpS結合のサイトである。エラスチ ンのエキソン9および10によってコードされるペプチドに対して生成された抗体 は、スタフィロコッカスエラスチン結合を特異的に阻害し、このことは該EbpS結 合サイトがこの特定の領域に局在化していることを示す。ここで使用する略号 EbpS:スタフィロコッカスオーレウスのエラスチン結合タンパク;ECM:細胞外 マトリックス;MSCRAMMS:接着性マトリックス分子を認識する徴生物表面成分;r EbpS:完全な長さの組み換えEbpS;trEbpS:切り取られた組み換えEbpS;TBS:Tris -緩衝塩水;およびTSB:トリプシン大豆ブロス。まとめ スタフィロコッカスオーレウスの細胞表面の25kDaエラスチン結合タンパク(Eb pS)は、この病原体のエラスチンに対する結合を媒介する。EbpSのフランキング の活性を調べる結合アッセイから得た結果は、残基1-59が該エラスチン識別サイ トを含むことを示唆した。EbpSの組み換え切取り型および合成ペプチドの機能解 析を、該エラスチン結合サイトの、該結合タンパクの残基14-34内に含まれる、 該21アミノ酸領域内での位置決定のために使用した。このサイトの重要性に関す る証拠は、スタフィロコッカスエラスチン結合に及ぼす抗−EbpS抗体の阻害活性 が、これら抗体が残基1-34を含有する切り取られた組み換えEbpS構築体により予 備吸収された場合に、中和されることを立証することにより得た。オーバーラッ プ合成ペプチドの効果をテストする研究は、アミノ酸Gln14-Asp23およびThr18-G lu34に跨がる配列が、エラスチンに対するスタフィロコッカスオーレウスの結合 を阻害することを示した。Asp23のAsnによる置換が、該ペプチドの遮断活性を阻 害したが、このことは、この位置における帯電したアミノ酸の必要性を立証して いる。組み合わせたデータは、スタフィロコッカスエラスチン結合が、EbpSのN- 末端細胞外領域内の、短いペプチド配列により規定される別個のドメインにより 媒介されることを示す。 以上本発明を、種々の特別な物質、手順および実施例を参照して説明し、かつ 例示してきたが、本発明は、これら特定の物質の組み合わせ、およびその目的の ために選択された手順に限定されるものではないことを理解すべきである。当業 者には理解されるであろうように、このような細部の多数の変更を含むことがで きる。 以下に、上記説明、特に実験手順および議論のために言及した文献のリストを 与える。これらの文献は、その全体が本発明の参考として、本明細書に組み込ま れるものと考えるべきである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07K 7/06 C07K 7/06 16/12 16/12 16/18 16/18 C12N 1/21 C12N 1/21 5/10 C12P 21/02 C C12P 21/02 C12Q 1/68 A C12Q 1/68 G01N 33/15 Z G01N 33/15 33/50 Z 33/50 33/569 B 33/569 C12P 21/08 // C12P 21/08 C12N 5/00 A (C12N 1/21 C12R 1:38) (C12N 1/21 C12R 1:07) (C12N 1/21 C12R 1:465) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S D,SZ,UG),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ ,MD,RU,TJ,TM),AL,AU,BA,BB ,BG,BR,CA,CN,CU,CZ,EE,GE, GH,HU,IL,IS,JP,KP,KR,LC,L K,LR,LT,LV,MG,MK,MN,MX,NO ,NZ,PL,RO,SG,SI,SK,TR,TT, UA,UZ,VN,YU

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 接着性マトリックス分子を識別する微生物表面成分(MSCRAMM)であって、タ ンパク、その活性成分、そのアゴニスト、その模倣体およびこれらの組み合わせ からなる群から選ばれる物質を含み、該MSCRAMMが以下の特徴: a) エラスチンとの結合性、 b) SDSの存在下で抑制された活性、および c) チオール還元剤の存在下で増強される活性、 を有することを特徴とする、上記MSCRAMM。 2. エラスチン結合タンパク群の一員である、請求の範囲第1項に記載のMSCRAM M。 3. バクテリアを起源とする、請求の範囲第1項に記載のMSCRAMM。 4. SEQ ID NO:2およびその活性フラグメントからなる群から選ばれるアミノ酸 配列を有するポリペプチドである、請求の範囲第1項に記載のMSCRAMM。 5. 哺乳動物細胞由来のものである、請求の範囲第1項に記載のMSCRAMM。 6. 検出可能なラベルにより標識されている、請求の範囲第1項に記載のMSCRAM M。 7. 該ラベルが、酵素、蛍光を発する化学物質または放射性元素から選択される 請求の範囲第6項に記載のMSCRAMM。 8. MSCRAMMに対する抗体であって、該抗体を生成させる該MSCRAMMが以下の特徴 : a) エラスチンとの結合性、 b) SDSの存在下で抑制された活性、および c) チオール還元剤の存在下で増強される活性、 を有することを特徴とする、上記抗体。 9. ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体およびキメラ抗体からなる群から 選ばれる、請求の範囲第8項に記載の抗体。 10.モノクローナル抗体である、請求の範囲第8項に記載の抗体。 11.請求の範囲第10項記載のモノクローナル抗体を生成する、不死化細胞系。 12.検出可能なラベルで標識した、請求の範囲第8項に記載の抗体。 13.該ラベルが酵素、蛍光を発する化学物質または放射性元素から選択される、 請求の範囲第12項に記載の抗体。 14.(A) SEQ ID NO:1のDNA配列、 (B) 標準的なハイブリダイゼーション条件下で、上記DNA配列とハイブリッド 化するDNA配列、および (C) 上記DNA配列によりコードされるアミノ酸配列の発現をコードするDNA配列 、 からなる群から選ばれる、MSCRAMMをコードするDNA配列またはその縮重変異体ま たはそのフラグメント。 15.(A) SEQ ID NO:1のDNA配列、 (B) 標準的なハイブリダイゼーション条件下で、上記DNA配列とハイブリッド 化するDNA配列、および (C) 上記DNA配列によりコードされるアミノ酸配列の発現をコードするDNA配列 、 からなる群から選ばれる、MSCRAMMをコードするDNA配列またはその縮重変異体ま たはそのフラグメントを含む組み換えDNA分子。 16.該DNA配列が発現制御配列と、機能可能に結合している、請求の範囲第14ま たは15項に記載の組み換えDNA分子。 17.該発現制御配列がSV40またはアデノウイルスの初期または後期プロモータ、 lac系、trp系、TAC系、TRC系、ファージλの主オペレータおよびプロモータ領域 、fdコートタンパクの制御領域、3-ホスホグリセレートキナーゼに対するプロモ ータ、酸性ホスファターゼのプロモータおよび酵母α−接合ファクタからなる群 から選ばれる、請求の範囲第16項に記載の組み換えDNA分子。 18.請求の範囲第14項に記載のDNAまたはSEQ ID NO:3から調製される交互種にお けるMSCRAMMについてスクリーニングすることができることを特徴とする、プロ ーブ。 19.(A) SEQ ID NO:1のDNA配列、 (B) 標準的なハイブリダイゼーション条件下で、上記DNA配列とハイブリッド 化するDNA配列、および (C) 上記DNA配列によりコードされるアミノ酸配列の発現をコードするDNA配列 、 からなる群から選ばれる、MSCRAMMをコードするDNA配列またはその縮重変異体も しくはそのフラグメントを含有する組み換えDNA分子によって形質転換され、該D NA配列が発現制御配列と機能可能に結合している、ことを特徴とする、単細胞宿 主。 20.該単細胞宿主がE.コリ、シュードモナス、バチルス、ストレプトマイセス、 酵母、CHO、R1.1、B-W、L-M、COS1、COS7、BSCl、BSC40およびBMT10細胞、植 物細胞、昆虫細胞、および組織培養液中のヒト細胞からなる群から選ばれる、請 求の範囲第19項に記載の単細胞宿主。 21.MSCRAMMの存在またはその活性を検出する方法であって、該MSCRAMMが以下の 諸特徴、即ちエラスチンとの結合性、SDSの存在下で抑制された活性、およびチ オール還元剤の存在下で増強される活性を有し、該MSCRAMMが A. 該MSCRAMMの存在またはその活性があると考えられる哺乳動物からの生物 学的サンプルと、該MSCRAMMの結合パートナーとを、該MSCRAMMと該結合パートナ ーとの結合を可能とする条件下で、接触させ、 B. 該サンプル由来の該MSCRAMMと該結合パートナーとの結合が生じたか否か を検出する、 ことにより測定し、該結合の検出が、該サンプル中における該MSCRAMMの存在ま たはその活性を示す、ことを特徴とする上記方法。 22.哺乳動物中の所定の侵入性刺激体と関連したポリペプチドリガンドの存在ま たはその活性を検出する方法であって、請求の範囲第21項記載の方法によって、 MSCRAMMの存在またはその活性を検出し、該MSCRAMMの存在またはその活性の検出 が、該哺乳動物中における所定の侵入性刺激体と関連したポリペプチドの存在ま たはその活性を示す、ことを特徴とする上記方法。 23.該侵入性刺激体が感染である、請求の範囲第22項に記載の方法。 24.該感染が、バクテリアを起源とする、請求の範囲第23項に記載の方法。 25.MSCRAMMに対する結合サイトを検出する方法であって、該MSCRAMMが以下の 諸特徴、即ち A) エラスチンとの結合性、 B) SDSの存在下で抑制された活性、および C) チオール還元剤の存在下で増強される活性、 を有し、該方法が i. 標識したMSCRAMMサンプルを、該MSCRAMMに対する結合サイトが存在すると 考えられる、哺乳動物からの生物学的サンプルとの接触状態に置き、 ii.該標識したMSCRAMMの存在について、結合研究における該生物学的サンプ ルを検査する工程を含み、 該標識したMSCRAMMの存在がMSCRAMMに対する結合サイトを示す、ことを特徴とす る、上記方法。 26.薬物または他の実在物の、MSCRAMMの活性を調節する能力をテストする方法 であって、 A. 該MSCRAMMに対するレセプタを有するテスト細胞のコロニーを、該MSCRAMM を含有する育成培地中で培養し、 B. テストすべき薬物を添加し、 C. 該MSCRAMMと、テスト細胞の該コロニー上の該レセプタとの反応性を測定 する工程を含み、 該MSCRAMMが以下の諸特徴: i) エラスチンとの結合性、 ii) SDSの存在下で抑制された活性、および iii)チオール還元剤の存在下で増強される活性、 を有することを特徴とする、上記方法。 27.薬物および他の薬剤を、MSCRAMMの産生を調節する能力についてスクリーニ ングするためのアッセイ系であって、 A. インキュベートした、観測可能な細胞テストコロニーを、薬物または薬剤 と共に培養し、 B. 該細胞テストコロニーから上澄を収穫し、 C. 該上澄を、該MSCRAMMの存在について検査する工程を含み、 該MSCRAMMの濃度における増加または減少が、薬物の、該MSCRAMMの活性を調節す る能力を示し、該MSCRAMMが以下の諸特徴: i) エラスチンとの結合性、 ii) SDSの存在下で抑制された活性、および iii)チオール還元剤の存在下で増強される活性、 を有することを特徴とする、上記方法。 28.真核細胞サンプル中のMSCRAMMの存在を立証するためのテストキットであっ て、 A. 所定量の、検出できるように標識した、MSCRAMMの特異的結合パートナー と、ここで該MSCRAMMは以下の諸特徴:エラスチンとの結合性、SDSの存在下で抑 制された活性、およびチオール還元剤の存在下で増強される活性を有する、 B. 他の試薬と、 C. 該キットを使用するための指示と、 を含むことを特徴とする、上記テストキット。 29.真核細胞サンプル中のMSCRAMMの存在を立証するためのテストキットであっ て、 A. 所定量のMSCRAMMと、ここで該MSCRAMMは以下の諸特徴:エラスチンとの結 合性、SDSの存在下で抑制された活性、およびチオール還元剤の存在下で増強さ れる活性を有する、 B. 所定量の該MSCRAMMの特異的結合パートナーと、 C. 他の試薬と、 D. 該キットを使用するための指示と、 を含み、該MSCRAMMまたは該特異的結合パートナーの何れかが、検出できるよう に標識されていることを特徴とする、上記テストキット。 30.該標識された免疫化学的に反応性の成分が、該MSCRAMMに対するポリクロー ナル抗体、該MSCRAMMに対するモノクローナル抗体、そのフラグメント、および これらの混合物からなる群から選ばれる、請求の範囲第28または29項に記載のテ ストキット。 31.哺乳動物における細胞の虚弱、障害、および/または機能不全および/また は他の疾患状態を予防および/または治療する方法であって、哺乳動物に、治療 上有効な量の、MSCRAMM、該MSCRAMMの産生および/または活性を増進できる薬剤 、該MSCRAMMの活性を模倣できる薬剤、該MSCRAMMの産生を阻害できる薬剤、およ びこれらの混合物、またはこれらに対する結合パートナーからなる群から選ばれ る物質を投与する工程を含み、該MSCRAMMが以下の諸特徴: a) エラスチンとの結合性、 b) SDSの存在下で抑制される活性、および c)チオール還元剤の存在下で増強される活性、 を有することを特徴とする、上記方法。 32.該疾患状態が、少なくとも部分的にバクテリア感染によって生ずる、請求の 範囲第31項に記載の方法。 33.MSCRAMMを主な治療薬として投与している場合に、該MSCRAMMを投与して、治 療の経過を和らげる、請求の範囲第31項に記載の方法。 34.MSCRAMMを、1種以上の付随的な治療薬剤と同時に投与する場合に、該MSCRA MMを投与して、治療の経過を和らげる、請求の範囲第31項に記載の方法。 35.哺乳動物における、細胞の虚弱、障害、および/または機能不全の治療用の 薬理組成物であって、 A. 治療上有効な量の、MSCRAMM、該MSCRAMMの産生および/または活性を増進 できる薬剤、該MSCRAMMの活性を模倣できる薬剤、該MSCRAMMの産生を阻害できる 薬剤、およびこれらの混合物、またはこれらに対する結合パートナーからなる群 から選ばれる物質と、ここで該MSCRAMMは以下の諸特徴:エラスチンとの結合性 、SDSの存在下で抑制される活性、およびチオール還元剤の存在下で増強される 活性、 を有する、および B. 製薬上許容される担体と、 を含むことを特徴とする、上記薬理組成物。 36.該MSCRAMMが予想された分子量約25KDおよび予想されたPI約4.9を有する、請 求の範囲第1項に記載のMSCRAMM。 37.該MSCRAMMがスタフィロコッカスオーレウスから単離されたものである、請 求の範囲第3項に記載のMSCRAMM。 38.接着性マトリックス分子を識別する微生物表面成分(MSCRAMM)のエラスチン 結合サイトに対応するアミノ酸配列を含み、8〜80個のアミノ酸からなり、かつ エラスチンと結合する、ことを特徴とするポリペプチド。 39.該MSCRAMMが、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列または保存性置換を含むSEQ ID N O:2のアミノ酸配列を有する、請求の範囲第38項に記載のポリペプチド。 40.該MSCRAMMのN-末端59アミノ酸からなるアミノ酸配列を有する、請求の範囲 第38項に記載のポリペプチド。 41.更にエラスチンに対するS.オーレウスの結合を阻害する、請求の範囲第38項 に記載のポリペプチド。 42.請求の範囲第41項に記載のポリペプチドと、製薬上許容される担体とを含む ことを特徴とする、薬理組成物。 43.治療上有効な量の、請求の範囲第42項に記載の薬理組成物を投与することを 特徴とする、スタフィロコッカスオーレウス感染症の治療方法。 44.該エラスチン結合サイトが、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列または保存性置換 を含むSEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む、請求の範囲第38項に記載のポリペプ チド。 45.SEQ ID NO:10のアミノ酸配列または保存性置換を含むSEQ ID NO:10のアミノ 酸配列を含む、請求の範囲第44項に記載のポリペプチド。 46.10〜46個のアミノ酸を含む、請求の範囲第44項に記載のポリペプチド。 47.SEQ ID NO:14のアミノ酸配列または保存性置換を含むSEQ ID NO:14のアミノ 酸配列を含む、請求の範囲第46項に記載のポリペプチド。 48.約10個のアミノ酸を含む、請求の範囲第46項に記載のポリペプチド。 49.SEQ ID NO:18のアミノ酸配列または保存性置換を含むSEQ ID NO:18のアミノ 酸配列を含む、請求の範囲第46項に記載のポリペプチド。 50.SEQ ID NO:12のアミノ酸配列または保存性置換を含むSEQ ID NO:12のアミノ 酸配列を含む、請求の範囲第49項に記載のポリペプチド。 51.アジュバントとの混合物として、請求の範囲第38項に記載のポリペプチドを 含有することを特徴とする、免疫原組成物。 52.該ポリペプチドが、担体物質と複合化されている、請求の範囲第51項に記載 の免疫原組成物。 53.請求の範囲第51項に記載の組成物で、動物を免疫化する工程を含むことを特 徴とする、MSCRAMMのエラスチン結合ドメインに対する抗体を生成する方法。 54.ポリ抗体およびモノクローナル抗体からなる群から選ばれる、請求の範囲第 53項に記載の抗体。 55.8〜80個のアミノ酸からなるポリペプチドをコードする核酸であって、該ポ リペプチドがエラスチンと結合し、接着性マトリックス分子を識別する微生物表 面成分(MSCRAMM)のエラスチン結合サイトに対応する、アミノ酸配列を含むこと を特徴とする、上記核酸。 56.SEQ ID NO:9の核酸配列を有する、請求の範囲第55項に記載の核酸。 57.DNAである、請求の範囲第55項に記載の核酸。 58.請求の範囲第57項に記載のDNAを含むことを特徴とする、クローニングベク ター。 59.発現制御配列と機能可能に結合した、請求の範囲第57項に記載のDNAを含む ことを特徴とする、発現ベクター。 60.請求の範囲第59項に記載の発現ベクターによりトランスフェクションまたは 形質転換された単細胞宿主。 61.バクテリアである、請求の範囲第60項に記載の単細胞宿主。 62.請求の範囲第59項に記載の発現ベクターによりトランスフェクションまたは 形質転換された哺乳動物細胞。 63.請求の範囲第38項に記載のポリペプチドを発現する方法であって、該ポリペ プチドをコードする核酸を含む発現ベクターを含有する細胞を、該ポリペプチド の発現を可能とする条件下で培養する工程を含む、ことを特徴とする、上記発現 方法。 64.更に該発現されたポリペプチドを精製する工程をも含む、請求の範囲第63項 に記載の方法。
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