JP2001349855A - 変調差分走査熱量計 - Google Patents

変調差分走査熱量計

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 MDSCの操作方法において、より正確な熱
流測定値を提供し、分析能を向上させる。 【解決手段】変調差分走査熱量計(MDSC)およびサンプ
ル位置の温度と基準物位置の温度間の差およびサンプル
位置の温度とベースの温度間の差との二の温度差分信号
を用いる。このアプローチでは、サンプル保持皿および
基準物保持皿に関係した熱流、および、サンプルおよび
保持皿の加熱レートの差を計算する。また、本発明は、
熱容量校正係数の依存性を著しく現象または除去するの
で、変調時間が短くて済む。変調時間が短くて済むた
め、より高い基本加熱レートを用いることができ、これ
により、ユーザーがMDSC実験に費やす時間を短くす
ることが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【関連出願の表示】本明細書は、2000年3月23日
出願の米国特許出願番号09/533,949(”94
9出願”)、2000年8月23日出願の米国特許出願
番号09/643、870、2000年8月23日出願
の米国特許出願番号 09/643,869(”869出
願”)、および2001年1月26日出願の米国特許出
願番号09/769、313からの優先権を主張する。
【発明の背景】差分走査熱量計は、サンプル温度を制御
変化させながらサンプルに与えられる熱流を測定する。
DSCsには、主に熱流束(heat flux)およびパワー補
償という二つの型式がある。以下に、この二つの型式の
DCSに関して簡単な説明がなされる。DSCsの構成
および原理の詳細については、G.ホーン、W.ヘミン
ガーおよびH.J.フラマーシェイム著(Springer-Velag:
1996)”差分走査熱量測定:実務家のための入門”
に述べられている。
【0002】熱流束DSCは、分析対象であるサンプル
に対する熱流を測定するセンサを含んでいる。このセン
サは、サンプル位置および基準物位置を有している。ま
た、当該センサは、所定の温度プログラムに基づきその
温度が急激に変化するオーブン内に組み込まれている。
当該オーブンが加熱または冷却されるにつれ、センサの
前記サンプル位置と前記標準位置間の温度差が測定され
る。この温度差は、サンプルに対する熱流に正比例する
と仮定される。
【0003】パワー補償DSCは、恒温容器(constant
temperature enclosure)に組み込まれるサンプルホルダ
および基準物ホルダを備えている。各ホルダは、ヒータ
ーおよび温度センサーを有している。サンプルホルダお
よび基準物ホルダの平均温度は、前記所定の温度プログ
ラムに従がった温度制御用に用いられる。更に、サンプ
ルホルダと基準物ホルダ間の温度差をゼロへと減少させ
るため、前記ホルダ間の温度差に比例する差分パワー
が、前記サンプルホルダ対する平均パワーに加えられ、
前記基準物ホルダに対する平均パワーから減じられる。
差分パワーは、サンプル熱流に正比例すると仮定され、
サンプルホルダ温度と基準物ホルダ温度間の温度差を測
定することにより得られる。市販のパワー補償DSCs
において、サンプル温度と基準物温度の差は、一般にゼ
ロとはならない、なぜなら、差分パワーを制御するため
に比例制御器(proportional controller)が使用されて
いるからである。
【0004】変調DSC(MDSC)は、差分走査熱量計によ
り熱流を測定するための技術であり、このDSCは、従
来のDSCの一定加熱領域上に周期的な温度振幅が重ね
合わされるものである。MDSCは米国特許番号第5,
224,775に説明されている。好ましい実施形態に
おいて、結果として得られたサンプル熱流信号は、反転
要素と非反転要素とに分離されている。現在のMDSC
熱流測定は、正確な結果を得るため、変調周期が短くな
ればなるほど大きな熱容量の校正係数を必要とする。こ
のような周波数依存性により、比較的長い周期への適用
が制限される。本発明は、かかる周波数依存性を除去又
は著しく低減させるMDSC方法に関する。これによ
り、熱容量および反転または非反転熱流信号における不
確実性が減少する。また、かかる方法を用いると、ユー
ザは、短い時間だけ使用すればよく、基本加熱レート(u
nderlying heating rate)が上昇するので、その結果、
生産性が向上する。
【0005】DSCの測定を行なうため、被解析サンプ
ルが保持皿に載置され、DSCのサンプル位置におかれ
る。通常、基準物保持皿は空の状態であるが、保持皿に
不活性基準物(inertreference material)を載置し、D
SCの基準物位置におくようにしてもよい。従来のDS
C用の温度プログラムは、通常、直線の温度傾斜と定温
域(constant temperature segments)との組み合わせを
有している。変調DSC(modulated DSC)は、直線の温
度傾斜と定温域上に周期的な温度振幅が重ね合わされる
温度プログラムを用いる。実験結果は、サンプル熱流、
対、温度又は時間である。熱流信号は、その固有の熱で
あり、サンプル内で発生する遷移の結果であるので、サ
ンプルに対する、または、サンプルからの熱流の結果生
じるものである。
【0006】DSC実験の動的部分の実行中、DSCの
サンプル位置と基準物位置との間に温度差が生じる。熱
流束DSCsにおいて、サンプル熱流と基準物熱流間の
差分、サンプルセンサ熱流と基準物センサ熱流との差
分、およびサンプル皿熱流と基準物皿熱流との差分:の
三つの差分熱流から温度差が生じる。パワー補償DSC
sにおいては、サンプル熱流と基準物熱流間の差分、サ
ンプルホルダ熱流と基準物ホルダ熱流間の差分およびサ
ンプル皿熱流と基準物皿熱流間の差分:三つの差分熱流
の組み合わせに加え、サンプルホルダに対して供給され
る差分パワーから温度差が生じる。サンプルと基準物間
の熱流の差分は、サンプルと基準物間の熱容量差、遷移
の熱流、又はMDSC実験中に起こる加熱レートの差が
原因となり、熱流によって構成される。DSCsのサン
プル部と基準物部間の熱流差は、センサの熱抵抗および
熱容量の不均衡の結果またはホルダ間のそれら、および
サンプル遷移またはMDSC実験中にサンプル部と基準
物部間で起こる加熱レート差である。同様に、サンプル
皿と基準物皿間の熱流差は、保持皿間の質量差の積およ
びサンプル遷移またはMDSC実験の間に生じる加熱レ
ートの差の結果生じる。
【0007】従来の熱流束DSCsにおいて、センサー
不均衡および皿不均衡は、些細なものと仮定され、加熱
レートの差は無視されていた。従来のパワー補償DSC
sにおいては、ホルダの不均衡および保持皿の不均衡
は、些細なものと仮定され、サンプル遷移またはMDS
C実験の間に生じる加熱レートの差は無視されていた。
均衡であるという仮定が充足されるとともに、サンプル
加熱レートがプログラムされた加熱レートと同じであれ
ば、温度差はサンプル熱流に正比例し、かかる差分温度
によりサンプル熱流を正確に測定することが可能とな
る。サンプルと基準物の加熱レートが同じであり、セン
サが完璧に対称であり、保持皿の質量が同じである場
合、かかるサンプル熱流は、測定されたサンプルと基準
物間の温度差のみに正比例する。機器が一定の加熱レー
トで動作し、サンプル温度が機器と同じレートで変化し
ており、さらに、サンプル内で遷移が発生していない場
合に限り、均衡するセンサおよび保持皿のための温度差
に対するサンプル熱流の比例性が、実験の一部の間だけ
に発生する。変調DSC実験の間、サンプルおよび基準
物の加熱レートは、通常、同じでなく、測定されたサン
プル温度と基準物温度間の差分は、前記サンプル熱流に
比例しない。
【0008】したがって、従来のDSCからのサンプル
熱流は、実際のサンプル熱流ではないが、不均衡の効果
および加熱レートの差を含んでおり;すなわち、DSC
サンプル熱流測定は、不鮮明(smeared)である。大部分
のDSC実験では、不鮮明なサンプル熱流でも十分正確
な結果を導き出す。例えば、所望の実験結果が、融点の
融解熱量のような遷移の総エネルギーであった場合、ピ
ーク領域のエネルギー総和は、適切なベースラインに渡
って積分され、従来のDSCの結果は、十分正確であ
る。しかしながら、もし、前記ピーク領域の一部の積分
が要求されると(例えば、反応速度論の研究(in the st
udy of reaction kinetics)における)、従前のDSC
の不鮮明なサンプル熱流を用いることはできない。従前
のDSCsの結果が不十分な場合の他の例としては、短
い温度間隔内で2以上の遷移が生じる場合である。この
場合、不鮮明さの影響(smearing effects)により、従前
のDSCsでは遷移を十分に分割することができない。
本発明によって解析能を改良することにより、近傍に位
置する遷移を明確に分離することができる。いずれにし
ても、従前のDSCsからの熱流信号は、遷移中のサン
プル熱流を正確に描くことができない。
【0009】遷移中、サンプルに与えられる熱流は、そ
の遷移が発熱を伴うまたは吸熱するかにより、および、
DSCが加熱されているか冷却されているかによって、
遷移前の値から増加又は減少する。サンプル熱流の変化
により、サンプルの加熱レートとDSCのそれとが相違
するようになり、その結果、サンプル保持皿およびセン
サ加熱レートとプログラムされた加熱レートとが相違す
るようになる。
【0010】上記に説明のため取り込まれる米国特許出
願番号第09/533,949および09/643,8
70は、センサの不均衡およびセンサのサンプル部と基
準物部間の加熱レートの差に相当する四つの項の熱流式
を用いる熱流束DSCを開示している。前記’949出
願から得られる四つの項の熱流式は、以下の通りであ
る: 式(1) 第一の項は、センササンプル熱抵抗とセンサ基準物熱抵
抗間の差の影響である。第二の項は、従来のDSC熱流
に相当する。第三の項は、センササンプル熱容量とセン
サ基準物熱容量間の差の影響に相当する。第四の項は、
サンプルの加熱レートとDSCの基準物側の加熱レート
間の差の影響を反映している。
【0011】米国特許出願番号第09/643,869
は、サンプルホルダと基準物ホルダの不均衡およびサン
プルホルダと基準物ホルダ間の加熱レートの差に相当す
る五つの項の熱流式を用いるパワー補償DSCを開示し
ている。前記’869出願から得られるこの五項のパワ
ー補償DSC熱流式は、以下の通りである: 式(2) 第一の項は、サンプル位置に与えられるパワーと基準物
位置に与えられるパワーの差分である。第二の項は、サ
ンプルホルダの熱抵抗と基準物ホルダの熱抵抗との差分
に相当する。第三の項は、サンプルと基準物間の温度差
から生じる熱流に相当する。第四の項は、サンプルホル
ダと基準物ホルダ間の熱容量の不均衡に起因する熱流で
ある。第五の項は、サンプルホルダと基準物ホルダ間の
加熱レートの差分により生じる熱流を反映している。
【0012】この発明の結果得られる熱流は、その動的
応答が良くなったことを示しており、したがって、DS
Cベースライン熱流の改善と共に分析能も向上する。し
かし、本発明の実施により得られた熱流信号には、試料
保持皿の影響が含まれている。
【0013】[変調差分走査熱量計]変調差分走査熱量計
(MDSC)は、熱流束又はパワー補償DSCsのいず
れにも適用可能である。MDSCにおいて、DSCセル
の温度プログラムは、一定の加熱レート域から成る従来
のプログラムに重ね合わされる周期的な温度変動から構
成される。測定される熱流は、周期的であり、サンプル
熱流に応じて熱流信号の振幅および位相角が変化するに
も拘わらず、温度プログラムと同じ周期を有する。好ま
しい実施形態において、サンプル熱流は、反転要素およ
び非反転要素から構成されている。総熱流の残りが非反
転熱流要素であるのに対して、この反転熱流要素は、サ
ンプルの比熱容量が原因で蓄えられた熱に起因するもの
である。総熱流信号を反転要素および非反転要素に分離
することは、前記総熱流から差し引かれる反転熱流を測
定するステップおよび非反転熱流をそのままにしておく
ステップを実行することにより行われる。
【0014】本体の熱容量は、質量と比熱の積であり、
以下の通り定義される: 式(3) ここで、Cは熱容量であり、qは、本体に対する又はか
らの熱流のレートである、Tは、本体の温度であり、τ
は時間を表わす。MDSC用に印加した温度変調は、ほ
ぼ正弦的であるので、サンプル温度も正弦状態となる: 式(4) Tの上にあるバーは、温度振幅を表わし;Pは、変調の
周期を示し、φは、印加したものと得られた温度変調と
の間の位相角である。温度を微分するとともに前記の熱
容量式に代入すると、以下の通りとなり: 式(5) 以下の式が成立するためには、熱流がコサインでなけれ
ばならないのは明らかである: 式(6) qの上にあるバーは、熱流振幅を表わしている。熱容量
について式を解くと: 式(7) この式は、MDSCにおける反転熱流を算出するため用
いられるサンプル熱容量を求めるために用いられる。米
国特許番号第5,224,775に説明されているMD
SCのデコンヴォルーションアルゴリズムは、温度およ
び熱流の振幅を決定する。反転熱流は、基本加熱レート
によって乗じられる熱容量である: 式(8) 〔 〕カッコは、ある期間にわたる平均値を示してお
り、その期間の中観点で評価がなされるを示している。
当該測定から正確なサンプル熱容量値を得るため、測定
された熱容量に熱容量校正係数が適用される: 式(9) この校正係数は、0.05Kおよび0.2Kの温度振幅
を用いる恒温MDSC実験のための図1に示し、A.ボラ
ー、Y.ジン、B.ウンデルリッヒ著、熱分析ジャーナ
ル42巻(1994)の307頁から330頁”一定温
度における変調DSCによる熱容量測定”で説明されて
いるように、周期に強く依存している。かかる依存性の
強い校正係数は、MDSCにおいて用いられている熱容
量式がサンプル熱流用には不適当なモデルであるという
ことを示唆している。熱容量式は、正弦振幅に対する物
に限定されないことは、この分野の当業者であれば、知
っている。かかる式は、周期的な振幅であれば、いずれ
にも適用可能である。
【0015】非反転熱流は、総平均熱流値から反転要素
を差し引いた値に等しい: 式(10) 反転熱流とひ反転熱流を正確に分離する鍵が、サンプル
熱容量の正確な算出であることは明らかである。
【0016】反転熱流を得るため、熱容量式は、従来か
らMDSCで用いられていた。これは、差分熱流、すな
わち、サンプルと不活性基準物間の熱流の差である: 式(11) 二の本体、サンプルおよびその保持皿、基準物およびそ
の保持皿用の比熱容量の式を検討すると、以下の通りに
なる: 式(12) 印加された正弦的温度振幅を用いると、DSCにより測
定された差分熱流は、以下の式によって表わされる: 式(13) サンプル熱流および基準物熱流は同相でなく、サンプル
温度振幅および基準物温度振幅が異なるので、熱流およ
び温度振幅しか使用しない簡単な式になるようなサンプ
ル熱容量については、この式を解くことができない。
【0017】全サンプル熱容量は、保持皿の熱容量を加
えたサンプル熱容量から構成される: 式(14) ssは、サンプル熱容量であり、Cspは、サンプル
保持皿の熱容量である。
【0018】同様に、全基準物熱容量は、保持皿の熱容
量を加えた基準物熱容量から構成される: 式(15) ここで、Crsは、基準物熱容量であり、Crpは、基
準物皿熱容量である。
【0019】もし、変調周期が、相対的に長く、サンプ
ルの質量が小さい場合、サンプル温度と基準物温度間の
位相および振幅の差は、小さくなり、差分熱流式は、以
下の通りとなる: 式(16) この式は、サンプル熱容量と基準物熱容量間の差を得る
ため、単一本体用の熱流式と同じ方法により解くことが
可能である。もし、基準物皿が空の場合、Crs=0と
なるとともに以下の式が成りたつ: 式(17) もし、サンプル皿と基準物皿が同じ質量である場合は、
以下の通りとなる: 式(18) また、測定されたサンプル熱容量は、正しい値に近い;
すなわち、図1に示した熱流校正係数Kcは、ほぼ1で
ある。このことから、なぜ熱容量校正係数が長い変調周
期の間、1に近いのかが判る。
【0020】
【発明の概要】本発明は、サンプル熱流および基準物熱
流を独立して測定することができ、サンプルホルダと基
準物ホルダ間の加熱レートの差分およびサンプルと基準
物間(もし、基準物が用いられていれば)の加熱レート
の差分を表わす熱流束又はパワー補償DSCsのいずれ
にも適用可能である。図1および図2は、それぞれ熱流
束DSCsおよびパワー補償DSCs用の熱ネットワー
クモデルを示す略図である。
【0021】[熱流束DSCs]熱流束DSCsの場合、
本発明は、一の絶対的温度測定値および二つの差分温度
測定値に基づきサンプルに与えられる差分熱流を測定す
る。本発明の差分走査熱量計は、従来の機器で得られる
ものよりも更にゼロに近い空のセルに対する熱流を用い
ることにより、従来の機器を超え、分解能が著しく向上
する。
【0022】[温度測定値]本発明においては、センサの
ベースの絶対的な温度の測定値、サンプル位置とセンサ
のベース間の差分温度およびサンプル位置と基準物位置
間の差分温度からサンプルに与えられるもの基準物に対
するそれとの差分熱流を算出している。かかる差分温度
は、サンプル温度測温体(例えば、サンプル領域測温
体)、基準物温度測温体(例えば、基準物領域測温体)お
よびベース温度測温体を用いて測定される。
【0023】オーブンの温度を制御するため、ベース温
度測温体(オーブンへの接続部分の近傍にある前記セン
サのベースにおける温度を測定する)が用いられる。サ
ンプル温度は、サンプル温度とベース温度間の差を測定
し、かかる差をベース温度から減じることにより測定さ
れる。すなわち、サンプル温度は、Ts=To-ΔToによって
得られる。一の絶対的温度測定値Toおよびベース位置と
サンプル位置間の差分温度測定値を測定することによ
り、温度センサの相違に起因する絶対的な温度測定値に
関連するいかなるエラーをも除去することができる。こ
のような構成により、恒温域におけるサンプル温度のず
れを最小化することもできる。結果として得られた熱流
信号は、ベースラインの性能をおよび動特性を向上させ
る。さらに、融解中には熱流信号が極めて大きくなるの
で、その間の熱量計の感度が非常に良好となる。
【0024】本発明により構成された熱量計は、サンプ
ル位置と基準物位置間での独立性を向上させる。例え
ば、従来の熱流束機器においては、インジウムのサンプ
ルが基準物位置に載置され、当該サンプルが融点にかか
るよう加熱された場合のサンプル位置の温度ずれは1
3.4%であったが、本発明を用いた代表的な実験にお
ける当該温度ずれは、1.4%に過ぎない。すなわち、
本発明は、従来の機器と比べ、約一桁違う(about an or
der of magnitude)改良を実現する。インジウムサンプ
ルを基準物位置に載置した場合のサンプル位置における
温度ずれは、インジウムサンプルをサンプル位置に載置
した場合のサンプル位置における温度ずれの約1.5%
未満の温度ずれを示すので、本発明により構成されたセ
ンサは、”実質的に独立”しているといえる。
【0025】[校正]本発明の第一の好ましい実施形態に
おいて、本発明の差分走査熱量計を校正するには、二つ
の独立した実験が必要とされる。これらの実験により、
四つのセンサ熱要素、C、(センササンプル熱容量)
(センサ基準物熱容量)R(センササンプル熱
抵抗)およびR(センサ基準部熱抵抗)が実験的に決
定され、これにより熱流センサの校正が行なわれる。
【0026】第一の実験は、空のDSCセルを用いて行
なわれる。このDSCセルは、まずセンサの均衡を確保
するのに十分な一定の時間だけ、校正温度域を下回る恒
温に保たれる。次に、DSCセルは、校正温度域を上回
るある温度にいたるまで一定の加熱レートで熱せられ、
その温度でセンサの均衡を確保するのに十分な一定の時
間だけ、さらに他の恒温域に保たれる。この第一の実験
は、校正済温度にわたる温度の関数としてのサンプルお
よび基準物の時定数を算出するために用いられる。
【0027】サンプルのサンプル側の熱流均衡式は、以
下の通りである: 式(19) ここで、τは、時間を示しており、qsは、サンプルおよ
びサンプル皿に与えられる熱流であり、Rsは、センササ
ンプル熱抵抗であり、Csは、センササンプル熱容量であ
る。同様に、サンプルの基準物側の熱均衡式は、以下の
通りである: 式(20) ここで、qは、基準物および基準物皿に与えられる熱
流であり、Rは、センサ基準物熱抵抗であり、C
は、センサ基準物熱容量である。
【0028】サンプルに与えられる熱流および基準物に
与えられる熱流はゼロとなるべきである(DSCが空な
ので)。その結果、もし、センサのサンプル側および基
準物側の熱均衡式内のqsとqがゼロに設定されれば、
サンプルおよび基準物の時定数は、以下のようにそれぞ
れ求められる: 式(21) および 式(22) ここで、ΔT= To - Ts およびΔT=Ts - Trとなる。こ
れらの結果は、温度の関数rとして記録される。
【0029】第二の実験では、二の校正用サンプルを保
持皿なしで用いる。この校正用サンプル同士は、同じ質
量でも、異なる質量であってもよい。校正用サンプル
は、サファイア試料(例えば、単結晶サファイアデイス
ク)であることが好ましく、質量が25mg以上であるこ
とが好ましい。また、前記校正温度域の範囲内で遷移せ
ず、既知の温度特性を有するものであれば、サファイア
の代わりに他の物質を用いることも出来る(この場合、
Csapph は、以下の式においてCmatに書き換えられ、こ
こで、Cmatは他の基準物の比熱である)。
【0030】熱均衡式から導かれるサンプル熱流および
基準物熱流は、以下のように設定される: 式(23) 式(24) ここで、ms およびmr は、それぞれサンプルサファイア
および基準物サファイアの質量であり、Csapph は、サ
ファイアの比熱であり、Tss およびTrsは、サンプル温
度および基準物温度である。
【0031】以下のように仮定する: 式(25) qs およびTss を、サンプル熱流式に代入し、Csについ
て、その式を解くと以下の通りである: 式(26) およびTrs を、基準物熱平衡式に代入し、Crについ
て、その式を解くと以下の通りである: 式(27) サファイア(または他の既知の校正用材料)を用い、第
一の実験において得られたDSCセルの時定数を用いて
得られた第二の実験の結果は、さらに、サンプルセンサ
熱容量および基準物センサ熱容量を算出するため、温度
の関数として用いられる。最後に、時定数およびセンサ
熱容量から、センササンプル熱抵抗および基準物熱抵抗
が算出される: 式(28) 第二の好ましい実施形態は、第一の実施形態と同様であ
るが、第一の校正実験および第二の校正実験の両方にお
いて、サファイア(または既知の熱容量を有するととも
に、当該温度範囲で遷移しない他の校正用材料)校正用
サンプルを用いる。本実施形態のための校正等式および
それらのずれを、以下に説明する。
【0032】[パワー補償DSCs]差分走査熱量計に適
用されたように、本発明は、機器をモデル化するため
に、差分温度測定値、一の温度測定値および五つの項の
熱流等式を用いるパワー補償差分走査熱量計である。ま
た、本発明は、五項の熱流等式への適用に必要とされる
熱要素を決定する方法である。本発明を用いる差分走査
熱量計は、空のDSCセルを流れる熱流がほぼゼロにな
り(したがって、ベースラインが改善される)、従来の
機器を超え、分解能が著しく向上する。
【0033】好ましい実施形態において、二の差分温度
測定値は、熱抵抗Rにわたる差分温度ΔTo 、および
サンプルホルダと基準物ホルダ間の差分温度ΔTであ
る。サンプルホルダの温度の絶対な測定値およびサンプ
ルホルダと基準物ホルダ間のパワーの差分(すなわち、
基準物に与えられるパワーとサンプルに対するそれとの
差分)も、測定される。また、四つの熱要素、R、R
、CおよびCが既知でなければならない。この二
の差分温度測定値を使用することにより、五項の熱流等
式の五項全部を含む熱流モデルが使用できるようにな
る。結果として得られた熱流信号は、ベースラインの性
能をおよび動特性を向上させる。特に、融解中には熱流
信号が極めて大きくなるので、その間の熱量計の感度は
非常によい。
【0034】以下に説明するように、前記二の差分温度
測定値に他の値を用いるようにしてもよい。
【0035】本発明は、四つの熱要素、C、C、R
、Rを決定する方法を含んでいる。決定された熱要
素は、DSCの熱流校正(heat flow calibration)の構
成要素である。
【0036】熱流の校正には、そこから前記四つの熱要
素を算出することができる二つの実験が必要とされる。
第一の実験は、空のDSCセルを用いて行なわれる。D
SCプログラムは、所望の校正範囲の最低温度より低い
恒温域(isothermal temperature segment)で始まり、次
に、一定の加熱レートでの温度傾斜が続き、最後に、所
望の校正範囲の最高温度より高い恒温域で終了する。前
記加熱レートは、次の実験で用いられる加熱レートと同
じでなければならない。第二の校正実験は、保持皿のな
いサンプルホルダおよび基準物ホルダ内に装着したサフ
ァイアの試料を用いて行われる。第二の実験には、第一
の(空のDSC)実験で使用されたものと同じ熱プログ
ラムが用いられる。この二つの校正実験およびそれらの
実験に基づいた前記熱要素の計算について以下で詳細に
説明する。
【0037】[改良された計算方法]本発明は、差分走査
熱量計によりサンプル熱流を算出するために、熱流束D
SCsおよびパワー補償DSCsの両方において使用す
ることのできる改良された計算方法も含んでいる。
【0038】本発明の改良された計算方法を用いた差分
走査熱量計は、従来のDSCにおいて現れる不鮮明さに
よる影響(smearing effects)をほぼなくし、DSC実験
が行なわれている間のサンプル熱流を非常に正確に表わ
すサンプル熱流信号を供給する。この結果、本発明を用
いたDSCsは、分解能が著しく向上する。例えば、本
発明を用いると、ピーク領域の部分的積分を要求する力
学分析(kinetic analysis)を実行することが出来るが、
サンプル熱流信号が歪んでしまうので、部分積分を、従
来のDSCsには用いることは困難である。
【0039】この結果、サンプルに対する加熱レートと
基準物に対するそれとが異なる遷移中のサンプル熱流を
より正確に測定することが出来る。遷移完了後のベース
ラインへの復帰がさらに迅速なものとなるので、解析能
が向上する。
【0040】[変調DSCs]前記’949出願は、サン
プル熱流および基準物熱流を個別に計測することができ
るDSCを開示している。サンプルおよびその保持皿、
ならびに基準物((もし、基準物が用いられていれ
ば))およびその保持皿に与えられる熱流を求める式
は、以下の通りである: 式(29) センサのサンプル位置と基準物位置間の温度差である従
来のΔTおよび前記サンプル位置およびセンサのベース
間の温度差であるΔTo の二つの温度差が用いられる。
前記発明に開示された方法からセンサの熱抵抗および熱
容量R、R,CおよびCが決定される。独立し
た熱流信号を有することにより、以下の熱容量式を用い
てサンプル熱容量および基準物熱容量を測定することが
可能となる: 式(30) 米国特許番号第5,224,775に説明されているデ
コンヴォルーションアルゴリズムを用いることにより温
度振幅および熱流振幅が得られる。DSCセル内で測定
された温度が、サンプルプラットホームおよび基準物プ
ラットホームの温度であり、サンプル式および熱容量式
で要求されるTsmおよびTrmではない。しかし、保
持皿とセンサ間の熱流を求める式を用いてTsmおよび
rmを得ることができる: 式(31) smおよびTrm について解くと、以下の通りであ
る: 式(32) 温度TおよびTは測定され、熱流qおよびq
測定され、さらに、所定値のためのRsmおよびRrm
が用いられる。温度Trは直接測定されないが、Tsお
よびΔTを組み合わせることにより得られるので、T
を求める式は以下のようになる: 式(33) これは、サンプルおよびその保持皿の温度は同じであ
り、基準物(もし、用いられていれば)とその保持皿の
温度が同じであることを示している。保持皿の熱容量
は、皿の質量と当該皿材料の比熱容量の積で求められ
る: 式(34) サンプル皿熱容量を、測定されるサンプル熱容量を求め
る式に代入し、サンプル熱容量について解くと、以下の
ようになる: 式(35) 基準物皿の熱容量を、測定される基準物熱容量を求める
式に代入し、皿の熱容量について解くと以下のようにな
る: 式(36) これを前記のサンプル熱容量を求める式に代入すると、
以下のようになる: 式(37) 最後に、これらの式をCsmおよびCについて代入す
ると以下の通りである: 式(38) 知られていなければならない、基準物の熱容量を除き、
右辺にある値は、全ての上記のように測定される。ほと
んどのDSC実験が空の基準物皿を用いて実行される。
その場合、サンプル熱容量式は、以下のように簡潔化さ
れる: 式(39)
【詳細な説明】[熱流束DSCs] [温度測定]図1aは、本発明にかかる熱流束DSCセン
サの好ましい実施形態を示す全体図である。サンプル
は、保持皿内に載置され、サンプルプラットホーム1上
に設けられる。サンプルプラットホーム1は、ベース3
に結合されている薄壁の円筒チューブ2に取り付けられ
た薄い平坦な円盤である。基準物は、保持皿内に載置さ
れ、基準物プラットホーム4上に設けられる。基準物プ
ラットホーム4は、ベース3に結合されている薄壁の円
筒チューブ5に取り付けられた薄い平坦な円盤である。
これらのプラットホーム、複数のチューブおよびベース
(アイテム1から5)は、コンスタンタン製のセンサ本
体6と一体となっており、E型熱電対の負の素子であ
る。センサ本体の薄壁の円筒チューブ2および5は、D
SCセンサの熱抵抗RおよびRの決定のために重要
な役割を果たす。ベース7の裏面は平面に構成されてい
る。かかる面は、センサの取り付け面であり、DSCオ
ーブンにセンサを取り付けるために用いられる。
【0041】サンプル用の薄壁の円筒チューブ2および
基準物用の薄壁の円筒チューブ5の代表的なものは、
0.09インチの高さ、0.187インチの直径、およ
び0.005インチの壁の厚みを有している。したがっ
て、チューブの断面積そのもの(すなわち、チューブの
円周とその厚み)は、約0.00284平方インチであ
り、アスペクト比(その断面積に対する円筒の高さの比
率)は約31.5インチ −1となる。高い解析能および
感度を得るには、アスペクト比が、25から35の範囲
であることが好ましい。円筒の高さを、例えば0.3か
ら0.5インチまで高くすることにより、センサの感度
は、(解析能を犠牲にして)上昇する。また、円筒の高
さを、例えば0.02から0.004インチまで低くす
ることにより、センサの分解能は、(感度を犠牲にし
て)高くなる。
【0042】図1bは、サンプルプラットホームおよび
基準物プラットホームの中心に対して垂直であり、それ
を通過する面に沿って見たDSCセンサ全体の断面図で
ある。サンプル領域温度計8は、サンプルプラットホー
ム1の裏面に同心状態に溶接される。当該領域温度計
は、E型熱電対の正の素子として構成されたクロメル製
の薄い円盤状のものである。その中央は、クロメル線を
溶接するよう凹部となっている。サンプル領域温度計8
は、円パターンを形成する等間隔の16箇所においてサ
ンプルプラットホーム1の裏面に溶接され、この円パタ
ーンは、サンプル領域温度計8およびサンプルプラット
ホーム1と同心円状である。したがって、サンプルプラ
ットホーム1とサンプル領域温度計8間に、熱電接合部
が16箇所平行に形成される。
【0043】基準物領域温度計10は、基準物プラット
ホーム4の裏面に溶接される。当該基準物領域温度計1
0は、E型熱電対の正の素子として構成されたクロメル
製の薄い円盤状のものである。その中央は、クロメル線
を溶接するよう凹部となっている。基準物領域温度計1
0は、円パターンを形成する等間隔の16箇所において
基準物プラットホーム4の裏面に溶接され、この円パタ
ーンは、基準物領域温度計10および基準物プラットホ
ーム4と同心円状である。したがって、基準物プラット
ホーム4と基準物領域温度計10の間に、熱電接合部が
16箇所平行に形成される。
【0044】E型熱電対12は、ベース3の頂面中央に
溶接される。リード線13は、クロメルであり、リード
線14は、E型熱電対のコンスタンタン素子である。
【0045】図1cは、電圧ΔTo、TsおよびΔTで表わさ
れる電圧がどのようにして測定されるか、を示す熱電対
構成を表わす図である。(+)記号は、クロメルリード線
および領域温度計を示している。(−)記号は、コンスタ
ンタ製センサ本体およびコンスタンタン製リード線を示
している。図1cに示すように、サンプルと基準物間の
差分電圧ΔTを表わす電圧は、クロメルリード線9とク
ロメルリード線11間で測定される。サンプルとベース
間の差分電圧ΔTo を表わす電圧は、クロメルリード線
9と13間で測定される。本願明細書内に、説明のため
引用された米国特許番号第4,095,453に記載さ
れているように、領域温度計8と10、サンプルプラッ
トホーム1と基準物プラットホーム4との間に16個並
列接合されたそれぞれの熱電対によって、サンプルプラ
ットホームと基準物プラットホーム間の平均温度の測定
が可能となる。また、領域温度計8は、サンプルプラッ
トホームとセンサ本体での間の温度差の測定を可能にす
る。領域温度計8およびそれに関連する並列熱電対は、
保持皿の位置ずれおよび保持皿とセンサ間の接触抵抗が
異なることに起因するセンサに及ぼす影響を低減するた
め、ΔTおよびΔToの測定値の感度を低下させる。E型
熱電対12は、To 、すなわちセンサのベースにおける
温度の測定に用いられる。図1cに示すように、この温度
を示す電圧は、リード線13、14間に現れる。リード
線9と14との間に現れるTs を表わすサンプル温度
は、To およびΔTo を表わす電圧を組み合わせることに
より得られる。好ましい実施形態は、コンスタンタンと
クロメルという熱電材料の組み合わを用いた構成を開示
しているが、当業者であれば、同じ測定値を得、同じ結
果を得るために他の熱電対を用いることを理解するであ
ろう。
【0046】また、当業者であれば、同じ結果を得るた
め、四つの項の熱流等式に若干の変更を加えたものを、
単一の測定値および二の差分測定値とともに用いた他の
構成が存在することも理解するであろう。 温度測定値
としては:サンプルプラットホーム温度Ts、基準物プラ
ットホーム温度Trおよびセンサベース温度To:の三つの
選択枝がある。当該選択肢のいずれか一つと、前記差分
温度測定値の三つの選択枝のうちいずれか二つを組み合
わせても同じ結果が得られる。
【0047】したがって、好ましい実施形態において、
ベース温度To は、サンプル温度Tsは、差分温度測定値T
o-TsおよびTs-Trとともに絶対的な温度測定値として用
いることができる。当該ベース温度To は、To-Tsおよび
To-Tr又は、Ts-Trおよび To-Trとともに用いることもで
きる。基準物温度Tr は、差分温度測定値Ts-TrおよびTo
-Tr、又はTo-TrおよびTo-Ts又は、Ts-Trおよび To-Ts
ともに絶対的な温度測定値として用いることができる。
サンプル温度Tsは、To-TsおよびTs-Tr、To-TsおよびTo-
Tr又は、To-Trおよび Ts-Trとともにとともに絶対的な
温度測定値として用いることができる。
【0048】したがって、四つの項の熱流等式が適宜書
き換えられるのであれば、同じ情報を導き出すことがで
きる8つの構成が加わる。これら可能性のある9つ全部
の構成は、本発明の範囲内である。
【0049】[センサの熱要素を決定する第一の好まし
い方法]センサは使用前に校正されるのが好ましい。当
該センサは、熱要素、C、C 、R、Rの値を決
定することにより校正される。
【0050】上述のように、本発明の第一の好ましい実
施形態において、センサは、空のDSCを用いた第一の
実験、およびサンプル位置に保持されたサファイア試料
および基準物位置に保持された他のサファイア試料を用
いた第二の実験、の二の連続した実験を実行することに
より校正される。前記サファイア試料は、少なくとも2
5mgであることが好ましい。
【0051】前述のように、第一の実験用には、校正範
囲の最低温度より低い恒温域(isothermal temperature
segment)で始まり、次に、一定の加熱レートでの温度傾
斜が続き、最後に、前記校正範囲の最高温度より高い恒
温域で終了する熱プログラムが、空のDSCセルに用い
られる。前記加熱レートは、次の実験で用いられる加熱
レートと同じであることが好ましい。この校正温度範囲
は、次の実験の温度範囲と同じまたはそれを超えるもの
であることが好ましい。
【0052】温度の関数であるサンプルの時定数は、次
式によって得られ: 式(40) また、基準物の時定数は、次式によって得られる: 式(41) 空のDSCセルを用いた実験から選られた結果は、時定
数をサンプル温度の関数として算出し、記録するために
用いられる。
【0053】上述のように、第二の実験用として、一対
の校正用サファイア試料がセンサのサンプル位置および
基準物位置に載置される。次に、空のDSC実験に用い
られた熱プログラムがDESCセルに適用される。
【0054】前述のように、センサのサンプル熱容量
は、次式で得られ: 式(42) また、センサの基準物熱容量は、次式によって得られ
る: 式(43) 温度の関数としてサンプルセンサ熱容量値および基準物
センサ熱容量値を算出するための空DSCセル実験が行
なわれ、その実験によって得られた時定数が上式に用い
られている。最後に、時定数およびセンサ熱容量からセ
ンサ熱抵抗値が演算される: 式(44) これらの熱容量値および熱抵抗値は、DSC熱流演算に
おいてテーブル状データまたはポイント間の補完をする
ため、又は、データを多項式(polynomial)により表現す
るために用いられる。通常、熱容量および熱抵抗データ
は、スムーズかつ所定の動きをする(well-behaved)の
で、低次な多項式に適用しても十分な精度を得ることが
できる。
【0055】[センサの熱要素を決定する第二の好まし
い方法]DSCセンサを校正する第二の好ましい方法
は、サンプルを用いた二つの連続した走査を実行するこ
とにより行われ、いずれの走査にも、例えばサファイア
試料を用いる。サンプルおよび基準物側の両試料の質量
は、二回の走査で相違していなければならない。
【0056】第一実験用について、試料の加熱レート
は、センサのサンプル側および基準物側の加熱レートと
同じであると仮定する。
【0057】サンプル側について、熱流は、次式によっ
て得られる: 式(45) 式(46) 下付きの数字は、1回目および2回目の走査であること
を表わしている。
【0058】サンプル側の1回目および2回目の走査の
熱平衡式は、以下の通りとなる: 式(47) 式(48) これらの熱平衡式を同時に解くと以下のようになる: 式(49) 式(50) 基準物側ついて、熱流は、次式によって得られる: 式(51) 式(52) 基準物側の1回目および2回目の走査の熱平衡式は、以
下の通りとなる: 式(53) 式(54) 上記のように、代入を行なうと、次式が導かれる: 式(55) 式(56) これらを同時に解くと以下のようになる: 式(57) 式(58) 従って、サンプル側および基準物側において異なる質量
の試料を用いた二回のDSC走査から得られた結果を用
いることにより、センサの熱要素を計算することができ
る。なお、二つの校正実験のうち一つを空のDSCを用
いて実行することも出来、いずれの場合もms およびm
はゼロであり、qおよびq もゼロ(これによっ
て、第一の好ましい校正方法まで下降する。すなわち、
第一の方法は、ms1=mr1=0とした場合の第二の方法の特
別な例に過ぎない)こととなる。
【0059】[DSC容器]DSCセンサは、DSCセン
サを介し、サンプルプラットホームとDSC容器との間
を流れる熱と、DSCセンサを介して基準物プラットホ
ームとDSC容器との間を流れる熱との差分熱を測定す
る。しかし、気体の熱伝導、放射線交換(radiation exc
hange)及び対流により、少量の熱が直接サンプルプラッ
トホーム、基準物プラットホームおよびDSC容器間を
流れる。
【0060】サンプルプラットホームとDSC容器間、
および基準物プラットホームとDSC容器間を流れる副
次的な熱は、測定されないので、差分熱流測定値のエラ
ーの原因とはならない。但し、これは、基準物プラット
ホームから流れる副次的な熱がサンプルプラットホーム
から流れる副次的な熱と異なる場合に限られる。このエ
ラーの大きさは、DSC容器内の温度ずれにより変化す
る。当該容器内において温度均一性が上昇すると、通
常、副次熱は全体的に減少し、サンプルプラットホーム
からの熱と基準物プラットホームからの熱との差は減少
する。
【0061】特に、DSC容器の蓋は、容器(DSCセ
ルの周囲と次々に熱を交換する)を取り巻く断熱材との
間で熱交換を行ない、また、当該容器の本体と熱接触が
悪い(簡単に取り外し可能になっている)ので、容器内
での不均一性について重要な役割を果たす。したがっ
て、蓋の温度は、容器本体の温度とは著しく異なってお
り、このような不均一性が前述した副次的な熱流の最も
大きな原因である。
【0062】図1dに示す本発明の好ましい実施形態に
おいて、DSC容器内の不均一性は、第一の蓋を内包す
るとともに、DSC容器本体に接触する第二の外蓋を追
加することにより著しく低下する。本実施形態において
は、容器を取り巻く断熱材と外蓋間で熱交換が行なわれ
る。これにより、DSC容器を介して流れる熱を根本的
に無くし、本体とDSC容器の蓋間の温度差を非常に小
さくするとともに、副次的な熱流を著しく減少させる。
【0063】図1dは、DSCセルアセンブリの上部
(下部は明確化のために省略している)にわたる断面図
である。本発明のDSCセンサ101は、DSC容器の
本体103の下表面102に取り付けられている。通
常、当該センサは、センサと容器間に熱が容易かつ均一
に伝達されるよう、容器にろう付けされている。保持皿
104内の試料は、センササンプル位置105に保持さ
れ、保持皿106内の基準物(もし、基準物が用いられ
ていれば)は、センサ基準物位置107に保持される。
サンプル皿と基準物皿は、DSCセンサに直接接触して
いるので、これらとセンサ間の熱伝導は良好であり、こ
れにより、サンプルおよび基準物に対するまたはこれら
からのほぼ全ての熱はセンサを介して流れることが保証
され、したがって、そこで測定される。DSC容器の中
空部(cavity)108は、内蓋109によって密閉され
る。中空部108は、パージガス、通常、窒素(ヘリウ
ム、またはアルゴンガス等の他のガスを用いることもで
きるが)により連続的に浄化される(purged)。
【0064】中空部の本体は、一片の熱伝導率の高い素
材(通常、銀)から構成されているので、その温度は非
常に均一である。内蓋109は、単に容器本体103の
表面112上に置かれているに過ぎないので、内蓋10
9と容器本体103間では熱交換がほとんど行なわれな
い。外蓋111は、内蓋109を完全に覆っており、表
面112上で容器本体103の上に置かれている。DS
C容器の上部全体を覆っているのは、本体113およ
び、サンプルおよび基準物を載置、その取り出しをする
ためにDSC容器の前記内蓋および外蓋の取り外しがで
きる取り外し可能な蓋114、を備えた断熱材である。
【0065】[改良された計算方法]上述で説明した本発
明および前記’949出願の熱流束DSCセンサは、図
1に示したサンプルおよび基準物部それぞれの熱抵抗お
よび熱容量を用いてモデル化することができる独立した
サンプル測定部および基準物測定部を備えている。熱抵
抗素子および熱容量素子は、センサを理想化したもので
あり、センサの熱動作を簡単な数式により表わすことを
可能にする。RsおよびRrは、熱抵抗であり、CsおよびCr
は、センサのサンプル部分および基準物部分の熱容量を
表わしている。T,Ts およびTr は、センサベースの
温度、サンプル位置の温度および基準物位置の温度であ
る。サンプル、その保持皿、基準物およびその保持皿に
与えられる熱流は、それぞれqsおよびqrである。
【0066】サンプルおよび基準物について熱平衡を実
行することにより、以下の熱平衡式が得られる: 式(59) 上述で説明した本発明および前記’949出願において
は、センサベースの温度To、センサベースの温度とサン
プル位置温度との差、およびサンプル位置温度と基準物
位置温度との差が測定される。この差分温度は次のよう
に定義される: 式(60) これを上記の熱平衡式に代入すると、次式が得られる: 式(61) サンプル温度は、ΔToの定義から得られる、 式(62) 温度の関数としてのセンサの熱抵抗および熱容量は、上
述および’949出願の校正方法を用いることにより得
られる。校正によって得られた熱抵抗および熱容量を、
DSC実験中に測定された温度および差分温度とともに
用いることにより、サンプル熱流qsおよび基準物熱流qr
を求めることが可能となる。’949出願および従来の
DSCの発明で用いられたように、サンプル熱流および
基準物熱流の差は、所望の結果となる。
【0067】式(63) 上述のように、サンプル熱流および基準物熱流は、サン
プルおよび基準物に与えられる熱流だけでなく、それら
の保持皿への熱流も含んでいる。
【0068】式(64) ここで、qssは、サンプル熱流であり、qpsは、サンプル
皿熱流であり、qrsは、基準物熱流であり、qprは、基準
物皿熱流である。保持皿および基準物は、遷移しないの
で、これらの熱流は、それら自身の比熱によって定まる
検出可能な熱(sensible heat)に過ぎない: 式(65) ここで、mpsおよびmprは、サンプル皿および基準物皿の
質量であり、cは、皿材の比熱であり、mrsは、基
準物の質量であり、crsは、基準物材の比熱である。
サンプル皿温度は、Tpsであり,基準物皿温度は、Tpr
ある。基準物材は、遷移せず、基準物皿と同じレートで
熱くなるものと仮定する。
【0069】サンプル皿熱流を代入し、サンプル熱流に
ついて、その式を解くと以下の通りである: 式(66) 基準物熱流式を皿の比熱について解き、当該比熱をサン
プル熱流式に代入すると、以下の通りである: 式(67) この式により、実際のサンプル熱流、すなわち、サンプ
ル皿熱流、基準物皿熱流および基準物に与えられる熱流
に相当する。右辺の第二項は、サンプル皿および基準物
皿の質量の割合およびサンプル皿および基準物皿の加熱
レートと基準物熱流を乗じたものと見られる。これは、
遷移熱流を考慮すると、サンプル皿は、遷移中、基準物
皿とは異なるレートで加熱されるという事実に基づく。
第三項は、基準物材に与えられる熱流に相当する。ほと
んどの場合、基準物皿は、空であり、サンプル熱流式は
次のようになる。
【0070】式(68) これらのいずれの式も、異なる学術用語(nomenclatur
e)、異なる単位、又は形式的には異なるが熱力学的に均
等の数学的表現によって表わすことができる。例えば、
前記二つの式は、加熱レートによって除すことにより、
以下のように熱容量単位に書き直すことができる: 式(69) 式(70) サンプル加熱レートが基準物加熱レートと異なっている
場合、サンプル熱流から減じられた基準物熱流の割合
は、サンプル皿加熱レートが基準物皿加熱レートよりも
大きいか小さいかによって、大きくもなり小さくもな
る。基準物熱流は、基準物皿熱流にすぎないので、本式
は、サンプル皿加熱レートと基準物皿加熱レート間の差
に相当する。例えば、DSCにおける融解中、基準物皿
がプログラムされたレートで加熱されているにも拘わら
ず、サンプル皿加熱レートは、プログラムされたレート
を下回る。従来のDSCにおいては、サンプル熱流から
減じられる基準物熱流は、プログラムされたレートで皿
を加熱するためのものであった。したがって、融解中、
サンプル熱流から過度の熱が減じられてしまうととも
に、熱流信号は微少である。ベースラインへの回帰中、
サンプル皿は、基準物皿よりも早く熱せられてしまい、
サンプル熱流から不十分な熱流が減じられる。この結
果、熱流信号は、過大となる。
【0071】本来のサンプル熱流式を用いるには、サン
プル皿温度および基準物皿温度が知られることが必要で
あり、これにより、これらの微分値(derivatives)が決
定される。残念ながら、皿の温度を直接する術はない。
しかし、以下の温度および熱流信号から皿の温度を算出
することができる。
【0072】センサからサンプル皿および基準物皿へ流
れる熱を求める式は、次の通りである: 式(71) 保持皿の温度を求める式を解く。
【0073】式(72) これらの式を用いると、測定した信号から皿の温度およ
びサンプル熱流を算出することが可能となる。
【0074】皿の熱抵抗RpsおよびRprは、皿の構造、D
SC内で用いられるパージガスおよびDSCの温度によ
って決まる。従来、Rps およびRpr を決定するため
に、いくつかの技術が開発されており、当業者によく知
られている。例えば、良くしられているものの一つに、
金属融解の開始点(onset)の傾斜を測定する方法があ
る。
【0075】Rps およびRprを決定する好ましい半経験
的(semi-empirical)な方法に、サンプル皿とDSCセン
サ間、および基準物皿とDSCセンサ間の熱交換をモデ
ル化するモデル式を用いるものがある。二の名目的に平
らな表面同士が接触するようになった場合、突出した部
分の一部分だけが接触する(当該表面は完全に平らでは
ない)ので、熱は、主に以下の三つのメカニズムによっ
て起こる:接触する二の表面の隆起を介した固体間の直
接熱伝導(solid heat conduction)によるもの、表面間
の隙間にある気体(interstitial gas)を介した対流また
は熱伝導によるもの、二の表面間の放熱によるもの。但
し、熱流束が非常に高い場合および二の表面間に大きな
温度差がある場合、すなわち、放熱が著しく大きい場合
を除く。気体を介する熱交換は、主に熱伝導によって行
われる。この場合、前記表面間の接触熱抵抗は、二の直
列接続された固体の伝導体(各表面を表わす)との間に
気体を介し、それらと並列方向に行われる熱伝導によっ
てモデル化することができる。DSCの保持皿/センサの
熱交換をモデル化するという仮定を用いることにより、
DSC皿の接触抵抗を求めるモデル式は、次のようにな
る: 式(73) ここで、R(T)は、温度の関数である接触抵抗であり;K
p(T)、Ks(t)、Kg(T)は、皿、センサおよび気体の熱伝導
率であり;αp、αs、αg は、皿、センサおよび気体の
形態係数(geometric factor)である。かかる形態係数
は、熱流に対して垂直な面積に対する熱伝導路長の比と
して考えることができる。なお、皿、センサおよび気体
の熱伝導率は、既知のものである。
【0076】前記形態係数は、以下のように、経験的に
決定される。皿とサンプル間の接触抵抗は、ゼロに等し
い平均加熱レートを用い、MDSCを使用することによって
測定することが出来る。既知の熱容量のサンプルが皿内
に載置され、DSCのサンプル位置におかれ、温度は、所
定温度近傍において、固定振幅で正弦的(sinusoidally)
に調節される。サンプル温度および皿の温度が同じであ
ると仮定すると、皿およびサンプルの時定数を検出する
ために、DSCの二つの温度モデルを解くことが出来る。
【0077】式(74) ここで: 式(75) 式(76) 式(77) 式(78) であり、ここで、その上にバーが付いている温度部分
は、MDSC温度の簡略化(deconvolution)アルゴリズム
(米国特許番号第5,224,775に記載されている
ように)により得られた変調温度振幅を意味し、Csは、
サンプルおよび皿の熱容量を組み合わせたものであり、
ωは、前記変調の角周波数(circular frequency)であ
る。変調周期が充分長い(通常60秒以上である)場
合、サンプル温度および基準物温度は同じであるみなし
てもよい。DSCの基準物側に関して、同様の式をたてる
ことができ、一の実験において二の接触抵抗を決定する
ことができる。
【0078】さまざまな不連続的な温度における接触抵
抗を決定するこの方法を用いることにより、上述のモデ
ル式を、形態係数αp、αs、αg を決定するためのデー
タに合わせることができる。異なるサンプルおよび保持
皿を沢山用いることにより、かかる実験を繰り返すこと
ができ、接触抵抗の統計上の平均値を算出することがで
きる。
【0079】本発明の方法は、熱流束DSCには適用でき
ないことに注意すべきであり、通常、サンプル熱流と基
準物熱流を別個独立に測定するDSCのみに適用可能であ
る。ここで開示される装置の物理的な構成により、サン
プル熱流と基準物熱流を別個独立に測定することが可能
となり、本発明を適用するには、このような特徴(ここ
で開示されたものと全く同じ実施形態である必要はない
が)を備えていることが条件とされる。
【0080】[パワー補償DSCs]図2aは、本発明のパワ
ー補償を説明する実施形態におけるパワー補償DSCセル
の断面図である。このDSCセルは、サンプルホルダアセ
ンブリ201sおよび恒温容器203に内蔵された基準
物ホルダアセンブリ201rを備えている。当該サンプ
ルホルダアセンブリおよび基準物ホルダアセンブリは、
全体として出来るだけ同じになるように作られている。
サンプルホルダ201sは、測温体(temperature detec
tor)202sおよび加熱素子(図2aにおいては図示せ
ず)を内蔵する本体204sを有している。サンプル皿
205s内のサンプルは、蓋207sによって密閉され
るサンプルホルダの中空部(cavity)206s内に挿入さ
れる。サンプルホルダ204sの本体は、フランジ20
9sに接続する熱抵抗器208sによって支持されてい
る。この熱抵抗器は、サンプルホルダと恒温容器間での
熱交換のための主要な通路であり、これによりサンプル
ホルダは、適度なヒーター出力を与えるだけで、恒温容
器よりも高い温度に熱せられる。当該熱抵抗器208s
は、熱流の流れる方向に比べ、当該熱流に垂直な(norma
l)方向に小さい断面部を有する管状部材(tubular membe
r)である。
【0081】同様に、基準物ホルダ201rは、測温体
(temperature detector)202rおよび加熱素子(図2
においては図示せず)を内蔵する本体204rを有して
いる。基準物皿205rは、蓋207rによって密閉さ
れる基準物ホルダ201rの中空部(cavity)206r内
に挿入される。基準物ホルダ204rの本体は、フラン
ジ209rに接続する熱抵抗器8rによって支持されて
いる。この熱抵抗器は、基準物ホルダ201rと恒温容
器間での熱交換のための主要な通路であり、これにより
基準物ホルダは、適度なヒーター出力を与えるだけで、
恒温容器よりも高い温度に熱せられる。当該熱抵抗器
は、熱流の流れる方向に比べ、当該熱流に垂直な(norma
l)方向に小さい断面部を有する管状部材(tubular membe
r)である。基準物は、基準物ホルダ201rの中空部(c
avity)206r内に挿入される基準物皿205r内に置
くことも出来るが、通常は、基準物の載置を省略し、基
準物ホルダ201r内に空の基準物皿205rを載置す
る。
【0082】恒温容器203は、本体211および、サ
ンプルおよび基準物を載置するためにサンプルホルダお
よび基準物ホルダへのアクセスを可能にする取り外し可
能な蓋212を備えている。サンプルホルダのフランジ
209sは、恒温容器の本体211に接続されており、
サンプルホルダおよびサンプルからの熱が熱抵抗器20
8sを介して、恒温容器へと流れる。恒温容器203の
本体211には、恒温温度(isothermal temperture)を
測定する恒温容器測温体210が組み込まれている。こ
の温度とサンプルホルダの温度との差分が、ΔToであ
る。この恒温容器本体は、例えば、液体冷却材(liquid
cryogen)、機械的冷却(mechanical refrigeration)、水
冷または空冷といった、様々な方法で冷却される。恒温
容器は、容器内の温度変化を最小化するために高熱伝導
率物質から構成されており、通常は、アルミニウムであ
る。
【0083】本発明のこの実施形態では、サンプル温度
測定値を唯一の絶対的な温度測定値として用いる。ま
た、サンプルホルダと基準物ホルダ間の差分温度、サン
プルホルダと恒温容器間の差分温度、およびサンプルに
与えられるパワーと基準物に対するそれとの差分パワー
も測定している。サンプルへのパワーと基準物に対する
パワーとの差分パワーは、例えば、サンプルホルダに与
えられるパワーと基準物ホルダへのパワーを別々に測定
し、個々の測定値の差を得ることにより測定される。サ
ンプルへのパワーおよび基準物に対するパワーは、様々
な異なる方法、例えば、サンプルヒーターおよび基準物
ヒーターに与えられる電圧および電流を測定する計器、
により測定することができる。したがって、本実施形態
は、パワー補償DSC熱流等式(power compensation DSC h
eat flow equation)(便宜上 、式6を再度示す)に基
づき、サンプルに与えられる差分熱流の計算に必要な数
値を得るため、一の絶対的な温度測定値(サンプル温
度)、二の差分温度測定値(サンプル/基準物 および
サンプル/容器)および差分パワー測定値(サンプル/
基準物)の組み合わせを用いている: 式(79) 一の絶対的な温度測定値および二の差分温度測定値の別
の組み合わせを、五つの項の熱流等式に用いることもで
きる、ということが理解されよう。また、他の構成を用
いることにより、本発明を改良することも可能である。
一の絶対的な温度測定値としては:サンプルホルダ温
度、基準物ホルダ温度、および恒温容器温度:の三つの
選択枝がある。当該選択肢のいずれか一つと、前記差分
温度測定値の三つの選択枝のうちいずれか二つを組み合
わせても同じ結果が得られる。したがって、好ましい実
施形態において、サンプル温度Tsは、差分温度測定値To
-TsおよびTs-Tr、To-TsおよびTo-Tr又は、Ts-Trおよび
To-Trとともに絶対的な温度測定値として用いることが
できる。基準物温度Tr は、差分温度測定値Ts-Trおよび
To-Tr、To-TrおよびTo-Ts又は、Ts-Trおよび To-Tsとと
もに絶対的な温度測定値として用いることができる。ま
た、ベース温度To は、差分温度測定値To-TsおよびTs-T
r、To-TsおよびTo-Tr又は、To-Trおよび Ts-Trとともに
絶対的な温度測定値として用いることができる。したが
って、5項の熱流等式が適宜書き換えられるのであれ
ば、同じ情報を導き出すことができる8つの構成が加わ
る。これら可能性のある9つ全部の構成は、本発明の範
囲内である。
【0084】[熱要素の決定方法]前記5項のパワー補償
DSC熱流等式を用いるためには、四つの熱要素、C
、R、Rを決定しなければならない。これらの
要素を決定すれば、DSCの熱流校正を行なうことができ
る。
【0085】熱流の校正には、そこから前記四つの熱要
素を算出することができる二つの実験が必要とされる。
第一の実験は、空のDSCセルを用いて行なわれる。D
SCプログラムは、所望の校正範囲の最低温度より低い
恒温域(isothermal temperature segment)で始まり、次
に、一定の加熱レートでの温度傾斜が続き、最後に、所
望の校正範囲の最高温度より高い恒温域で終了する。前
記加熱レートは、次の実験で用いられる加熱レートと同
じでなければならない。第二の校正実験は、例えば、サ
ンプルおよび基準物ホルダ内に装着したサファイアの試
料を用いて行われる。当該温度範囲内で遷移せず、既知
の温度特性を有するものであれば、サファイアの代わり
に他の物質を用いることも出来る。第二実験には、第一
の(空のDSC)実験で使用されたものと同じ熱プログ
ラムが用いられる。
【0086】パワー補償差分走査熱量計のサンプル側の
熱平衡式は、以下の通りである: 式(80) 基準物側において、熱平衡式は、以下の通りである: 式(81) まず、サンプル側の熱平衡式について、空の状態でのDS
C実験中の熱流を0に設定すると、熱平衡式は、以下の
通りとなる: 式(82) 下付きの数字の1は、第一の校正実験であることを表わ
し、サファイア試料を用いる第二の校正実験において、
サンプル熱流は、以下と同じに設定される: 式(83) ここで、ms2は、サファイア試料の質量であり、C
sapph は、サファイアの既知の熱容であり、下付きの数
字の2は、第二の校正実験であることを表わしている。
第二の校正実験用の熱平衡式は、以下のようになる: 式(84) CsおよびRsについて、これらの式を解くと、以下の通り
である: 式(85) 式(86) 同様に、空の状態における校正用および基準物側で行わ
れるサファイアを用いた校正用の熱平衡式は、以下の通
りである: 式(87) 式(88) 基準物温度Trは、直接測定されたものではない。次式で
求められるTrおよびΔToを代入する: 式(89) 式(90) その結果、熱平衡式は、以下の通りとなる: 式(91) 式(92) 上式を同時に解くと以下のようになる: 式(93) 式(94) 他の実施形態においては、いずれの校正実験にも試料を
含めるようにしてもよい。当該二つの校正実験における
試料は、その質量が互いに著しく異なっているものでな
ければならない。例えば、もし、第一の実験用のサンプ
ル(基準物)試料の質量が、第二の実験用のサンプル
(基準物)試料の質量の二倍であったなら、これらのサ
ンプル(基準物)試料の質量は、著しく異なるとされる
が、5%の違いしかない場合には、著しく異なるとはさ
れない。本実施形態において、サンプル側における第一
の実験用の熱平衡式は、以下のようになる: 式(95) また、基準物側における第一の実験用の熱平衡式は、以
下のようになる: 式(96) この式を上記のように同時に解くと、以下のようにな
る: 式(97) 式(98) 式(99) 式(100) 熱容量および熱抵抗は、DSC実験中のサンプル熱流を算
出するために用いられる。これらは、中間値用の適切な
補完(suitable interpolation)を伴ったテーブル形式の
データとして用いられるか、数式、すなわち、多項式(p
olynomial)が適用される。いずれの場合も、熱容量およ
び熱抵抗は、温度関数として用いなければならない。な
お、サファイア試料の質量は、25mgから125mgの範
囲であり、通常の質量は、75mgから100mgの範
囲である。
【0087】サンプルに与えられるパワーPsおよび基準
物に与えられるパワーPrは、校正ステップ中、別々に測
定される。パワーPsからパワーPrを差し引くことにより
差分パワーが求められる。
【0088】[改良された計算方法]上述のパワー補償D
SCは、図2に示すサンプルホルダおよび基準物ホルダ
のそれぞれの熱抵抗および熱容量を用いることによりモ
デル化することのできる独立したサンプルホルダおよび
基準物ホルダを備えている。熱抵抗素子および熱容量素
子は、センサを理想化したものであり、センサの熱動作
を簡単な数式により表わすことを可能にする。Rsおよび
Rrは、熱抵抗であり、CsおよびCrは、サンプルホルダお
よび基準物ホルダの熱容量を表わしている。T,Ts
およびTr は、恒温容器の温度、サンプルホルダの温度
および基準物ホルダの温度である。サンプルホルダに与
えられる加熱パワーはPであり、平均加熱パワーに差
分パワーを加えたものから構成される。基準物ホルダに
与えられる加熱パワーはPであり、平均加熱パワーか
ら差分パワーを減じたものから構成される。サンプルお
よびその保持皿に与えられる熱流はqおよびqとし
て表わされる。
【0089】サンプルおよび基準物について熱平衡を実
行することにより、以下の熱流差分式が得られる、 式(101) 上述で説明した本発明および前記’949出願において
は、センサベースの温度To、恒温容器の温度とサンプル
ホルダ温度との差、およびサンプルホルダ温度と基準物
ホルダ温度の差が測定される。これらの差分温度は次の
ように定義される: 式(102) これを上記の熱平衡式に代入すると、次式が得られる、 式(103) サンプル温度は、ΔToの定義から得られる、 式(104) 温度の関数としてのセンサの熱抵抗および熱容量は、上
記で開示された校正方法および’949出願の校正方法
を用いることにより得られる。校正から得られた熱抵抗
および熱容量を、サンプルホルダパワーおよび基準物オ
ルダパワー、DSC実験中に測定された温度および差分
温度とともに用いることにより、サンプル熱流qsおよび
基準物熱流qrを求めることが可能となる。サンプル熱流
および基準物熱流の差は、所望の結果となる: 式(105) 上述のように、サンプル熱流および基準物熱流は、サン
プルおよび基準物に与えられる熱流だけでなく、それら
の保持皿への熱流も含んでいる。
【0090】式(106) ここで、qssは、サンプル熱流であり、qpsは、サンプル
皿熱流であり、qrsは、基準物熱流であり、qprは、基準
物皿熱流である。保持皿および基準物は、遷移しないの
で、これらの熱流は、それら自身の比熱によって定まる
検出可能な熱(sensible heat)に過ぎない: 式(107) ここで、mpsおよびmprは、サンプル皿および基準物皿の
質量であり、cは、皿材の比熱であり、mrsは、基
準物の質量であり、crsは、基準物材の比熱である。
サンプル皿温度は、Tpsであり,基準物皿温度は、Tpr
ある。基準物材は、遷移せず、基準物皿と同じレートで
熱くなるものと仮定する。
【0091】サンプル皿熱流を代入し、サンプル熱流に
ついて、その式を解くと以下の通りである: 式(108) 基準物熱流式を皿の比熱について解き、当該比熱をサン
プル熱流式に代入すると、以下の通りである: 式(109) この式により、実際のサンプル熱流、すなわち、サンプ
ル皿熱流、基準物皿熱流および基準物に与えられる熱流
に相当する。右辺の第二項は、サンプル皿および基準物
皿の質量の割合およびサンプル皿および基準物皿の加熱
レートと基準物熱流を乗じたものと見られる。これは、
遷移熱流を考慮すると、サンプル皿は、遷移中、基準物
皿とは異なるレートで加熱されるという事実に基づく。
第三項は、基準物材に与えられる熱流に相当する。ほと
んどの場合、基準物皿は、空であり、サンプル熱流式は
次のようになる: 式(110) これらのいずれの式も、異なる学術用語(nomenclatur
e)、異なる単位、又は形式的には異なるが熱力学的に均
等の数学的表現によって表わすことができる。
【0092】サンプル加熱レートが基準物加熱レートと
異なっている場合、サンプル熱流から減じられた基準物
熱流の割合は、サンプル皿加熱レートが基準物皿加熱レ
ートよりも大きいか小さいかによって、大きくもなり小
さくもなる。基準物熱流は、基準物皿熱流にすぎないの
で、本式は、サンプル皿加熱レートと基準物皿加熱レー
ト間の差に相当する。例えば、DSCにおける融解中、
基準物皿がプログラムされたレートで加熱されているに
も拘わらず、サンプル皿加熱レートは、プログラムされ
たレートを下回る。従来のDSCにおいては、サンプル
熱流から減じられる基準物熱流は、プログラムされたレ
ートで皿を加熱するためのものであった。したがって、
融解中、サンプル熱流から過度の熱が減じられてしまう
とともに、熱流信号は微少である。ベースラインへの回
帰中、サンプル皿は、基準物皿よりも早く熱せられてし
まい、サンプル熱流から不十分な熱流が減じられ、この
結果、熱流信号は、過大となる。
【0093】本来のサンプル熱流式を用いるには、サン
プル皿温度および基準物皿温度が知られることが必要で
あり、これにより、これらの微分値(derivatives)が決
定される。残念ながら、皿の温度を直接する術はない。
以下の温度および熱流信号から皿の温度を算出すること
ができる。
【0094】サンプルホルダおよび基準物ホルダからサ
ンプル皿および基準物皿へ流れる熱を求める式は、次の
通りである: 式(111) 皿の温度を求める式を解く: 式(112) これらの式を用いると、測定した信号から皿の温度およ
びサンプル熱流を得られる。熱流束熱量計に関し、これ
らの要素を求めるための上述した半経験的(semi-empiri
cal)な方法を用いると、Rps およびRprを決定すること
が可能となる。[実験結果]図3は、本発明の改良された
計算方法を、熱流束DSC内に流れるDSC熱流の計算
に適用した場合であって、4.92mgのインジウム試料
が毎分10℃の割合で溶解される状態を横軸に時間を取
って示した図である。従来のDSCによる結果を示す曲
線を301と、改良された計算方法を用いていない本発
明の結果を曲線302とし、改良された計算方法を用い
た本発明の方法による結果を曲線303とする。改良さ
れた計算方法を用いて算出された融解インジウムの開始
点304は、グラフの左側から始まって他のものよりも
早めに起こり、しかも改良された計算方法を用いていな
い本発明の点305または従来のDCSを用いた場合の
点306より変化が急である。融解中、改良された計算
方法を用いた熱流信号307は、改良された計算方法を
用いていない本発明により得られた熱流信号308より
もかなり大きく、また、従来のDSCを用いて得られた
熱流信号309よりも明らかに大きい。融解は、融解の
ための潜熱が試料によって吸収されていた場合、熱流信
号がピークになった時点で完了する。
【0095】改良された計算方法310を用いて算出さ
れた熱流は、他より高い位置にあり、そのピークは、改
良された計算方法を用いていない本発明による熱流31
1よりも高く、かつ、若干早く、従来のDSCを用いて
得られた熱流312よりもかなり高く、しかも、さらに
早い。サンプル熱流は、ピークの直後に急激に減少し
て、サンプルの比熱に対応する遷移直前の値に戻る。改
良された計算方法を用いていない本発明を用いた融解後
の熱流信号314は、ゆっくりとしており、従来のDS
Cの融解後の熱流信号315はさらにゆっくりとしてい
るが、本発明の改良された計算方法を用いて算出された
融解後の熱流信号313の減衰速度は、非常に早い。開
始点304、融解307、ピーク熱流310および融解
後減衰313を備える改良された計算方法を用いて算出
された完全に融解したインジウムの熱流信号303は、
改良された計算方法を用いていない本発明を用いた測定
値(曲線302として示した)又は従来のDSCによる
測定値(曲線301として示した)よりも精度の高い測
定値である。
【0096】[変調差分走査熱量法]上述のように、本発
明の装置は、ΔT(センサのサンプル位置の温度と基準
物位置の温度間の差)およびΔTo (センサのサンプル
位置の温度とベースの温度間の差)、の二の温度差分信
号を測定する。MDSC実験を実行するには、差分走査
熱量計内のDESセルの温度を、直線傾斜(一定の加熱
レート又は一定の冷却レートであることを特徴とする)
に重ね合わせられる周期的変調機能(periodic modulati
on function)(例えば、正弦波、三角波、鋸歯、矩形
波、またはこれらいずれかの組み合わせ)を有すること
を特徴とする温度プログラムに基づいて変化させる。
【0097】差分走査熱量計実験のほとんどは、サンプ
ル皿内にサンプルを置くとともに、基準物皿が空の状態
で実行されるが、いくつかの場合、基準物皿に実際に基
準物を置いて実行しても良い。以下の式は、基準物皿に
基準物が置かれている場合および基準物皿が空の場合の
両方をカバーするものとして理解しなければならない。
【0098】サンプル熱流信号および基準物熱流信号
は、以下の式によって得られる: 式(113) ここで、センサの熱抵抗および熱容量R、R、C
およびCは、上記のように決定される。
【0099】サンプル皿温度Tpsおよび基準物皿T
prは、以下の通りである: 式(114) サンプル熱流および基準物熱流ならびにサンプル温度お
よび基準物温度、サンプル皿の温度および基準物皿は、
米国特許番号第5,224,775(”775特許”)
に説明されたアルゴリズムを用い、それぞれ独立して簡
略化される。
【0100】サンプルおよび基準物の見かけ上の(appar
ent)熱容量(これらの項は、サンプル及び/または基準
物の熱容量と同様に保持皿の熱容量を含むので、見かけ
上である)は、以下を用いて算出される: 式(115) 前記 〜は、’775特許に開示されたMDSC簡略化
アルゴリズムを用いて算出された熱流の振幅または温度
振幅であり、ωは、変調(変調周期で割った2π)の周
期周波数(cyclic frequency)である。
【0101】測定された非反転サンプル熱流および非暗
転基準物熱流は、以下の式により算出される: 式(116) ここで、バーが付いた値は、’775特許に説明されて
いるように、一周期にわたり平均化される。
【0102】差分反転熱容量は、以下の式から算出され
る: 式(117) 差分反転熱流、差分非反転熱流および差分総熱流は、以
下の式から算出される: 式(118) 式(119) 式(120) また、差分非反転熱容量は、以下の式から算出される: 式(121) さらに、差分総熱容量は、以下の式から算出される: 式(122) 図5aは、0.005ジュール/℃の熱容量を有するサ
ンプルを’949出願のDSCを用いて、MDSC法に
よって測定した場合の熱容量の数値上のシュミレーショ
ン結果を示す。真の熱容量を、本発明を使わないMDS
C法、および本発明の方法、を用いたモデル温度の振幅
および熱流振幅から算出された値で割ることによって熱
容量の校正係数が求められる。本発明を用いずに得られ
た結果は、現在のMDSCと表示され、本発明の方法を
用いたものは、新たなMDSCと表示される。この二つ
を比較すると、現在のMDSCの結果は、図4の曲線と
同様に、周期が短くなると非常に大きくなるCpの校正
係数を示しているが、本発明を用いて得られた新たなM
DSC曲線は、ほぼ1.0の校正係数をもたらし、当該
校正係数は、変調周期が変わってもほぼ一定である。
【0103】数値上のシュミレーション結果は、実際の
実験によって確認される。図5bは、’775特許の装置
用の周期の間測定された熱容量校正係数の依存性(丸の
ついた曲線であって、2920MDSCと表示されてい
る)と、本発明にかかる測定された校正係数の依存性
(三角の付いた曲線であって、TzeroMDSCと表示さ
れている)との比較を示している。
【0104】中村等に対する米国特許番号第5、59
9、104(’104特許)は、別々のサンプル熱流信
号および基準物熱流信号をも用いるMDSC実験による
熱流算出方法を開示している。熱容量を求める式は。以
下の通りである: 式(123) ここで、サンプル熱流信号および基準物熱流信号は、D
SCのサンプル側および基準物側のそれぞれにおける二
の差分温度を測定することにより得られる。以下の式に
より熱流が算出される: 式(124) DSCセンサは、完全に平衡し、センサ内での熱の蓄積
は無視されるものと考えられる。
【0105】’104特許の発明者は、これらが異なる
振幅および位相を有することに気付いていたので、サン
プル熱流と基準物熱流を分離する必要があることをはっ
きりと認識していた。しかし、彼らは、サンプル温度お
よび基準物温度が異なる振幅および位相を有することを
明らかに見落としていた。また、用いられる温度Ts
は、DSCサンプルセンサの温度である。この結果、こ
の方法を用いて求められるサンプル熱容量は、米国特許
番号第5,224,775に開示された方法のように、
変調周期に強く依存する大きな値の熱容量校正係数も必
要とする。
【0106】本発明の実施形態の前述の開示は、説明の
目的で行われているに過ぎず、発明内容を網羅するもの
でも、開示と同様の形式に発明を限定するものではな
い。上記説明に基づいて、開示された実施形態の変更お
よび改良を行い得ることは当業者にとって自明のことで
ある。本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲およ
び、その均等物のみによって定められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、熱流束差分走査熱量計の熱ネットワー
クモデルである。
【図1a】図1aは、本発明の一実施形態の熱流束DS
Cセンサの略図である。
【図1b】図1bは、図1aに示すセンサの実施形態の
断面図である。
【図1c】図1cは、図1aおよび図1bに示す熱電対
が、本発明においてどのように絶対的温度および差分温
度を測定するために用いられているかを示す接続図であ
る。
【図1d】図1dは、本発明の好ましい実施形態のため
のDSCセルアセンブリの断面図である
【図2】図2は、パワー補償差分奏さん熱量計の熱ネッ
トワークモデルである。
【図2a】図2aは、本発明の一実施形態のパワー補償D
SCの略図である。
【図3】図3は、以下で説明する本発明にかかる改良さ
れた計算を用いて得られた熱流(曲線3)と、従来のD
SCsを用いて得られた熱流(曲線1)と、および前記
改良された計算を用いずに本発明を用いて得られた熱流
(曲線2)との比較を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明を用いない場合の校正係数の周
期依存性を示す数値上のシュミレーションである。
【図5a】
【図5b】図5aおよび図5bは、数値上のシュミレー
ションおよび実際の実験結果をそれぞれ示しており、本
発明を用いずにMDSC法を実行するため要求される校
正係数(丸)と本発明を用いた校正係数(三角)を比較
するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 09/769313 (32)優先日 平成13年1月26日(2001.1.26) (33)優先権主張国 米国(US) (71)出願人 501106791 109 Lukens Drive, Ne w Castle, Delaware 19720 United States o f America Fターム(参考) 2G040 AA05 AA08 AB12 BA02 BA26 CA02 CB03 DA02 EA02 EB02 EB05 EC09 HA06 HA15 HA16 HA18 ZA05

Claims (38)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】センサのベース位置の温度を測定する絶対
    的な温度計、サンプル位置と前記ベース位置間の差分温
    度を測定する第一差分温度計、および、基準物位置(ref
    erence poistion)と前記サンプル位置間の第二差分温度
    計を備えたセンサ、を有する変調差分走査熱量計を用い
    てサンプルに与えられるものと基準物に対するものの総
    差分熱流を算出する方法であって、 (a) 前記差分走査熱量計を動作させるステップと、 (b) サンプル信号および基準物信号を得るステップと、 (c) 前記サンプル信号を簡略化(deconvoluting)するス
    テップと、 (d) 前記基準物信号を簡略化(deconvoluting)するステ
    ップと、および (e) サンプルに与えられる総差分熱流を算出するステッ
    プ、を備えたこと、 を特徴とするもの。
  2. 【請求項2】請求項1の方法において、前記サンプルに
    与えられる差分反転熱流(differential reversing heat
    flow)を算出するステップを備えたことを特徴とするも
    の。
  3. 【請求項3】請求項1の方法において、前記サンプルに
    与えられる差分非反転熱流(differential nonreversing
    heat flow)を算出するステップを備えたことを特徴と
    するもの。
  4. 【請求項4】請求項1の方法において、前記サンプルの
    差分反転熱容量(differential reversing heat capacit
    y)を算出するステップを備えたことを特徴とするもの。
  5. 【請求項5】請求項1の方法において、さらに、前記サ
    ンプルの差分非反転熱容量(differential nonrevising
    heat capacity)を算出するステップを備えたことを特徴
    とするもの。
  6. 【請求項6】請求項1の方法において、さらに、前記サ
    ンプルの差分熱容量を算出するステップを備えたことを
    特徴とするもの。
  7. 【請求項7】請求項1の方法において、前記サンプルの
    見かけ上の熱容量を算出するステップを備えたことを特
    徴とするもの。
  8. 【請求項8】請求項1の方法において、一の周期にわた
    って前記サンプル保持皿に与えられる熱流を表わす項(t
    erm)を平均化するステップを備えたこと、 を特徴とするもの。
  9. 【請求項9】請求項1の方法において、熱流振幅を算出
    するために簡略化アルゴリズム(deconvolution algorit
    hm)を用いるステップを備えたこと、 を特徴とするもの。
  10. 【請求項10】請求項1の方法において、温度振幅を算
    出するために簡略化アルゴリズム(deconvolution algor
    ithm)を用いるステップを備えたこと、 を特徴とするもの。
  11. 【請求項11】請求項1の方法において、さらに、以下
    の式から前記差分熱容量を算出するステップを備えてお
    り、 式(125) ここで、 式(126) であり、 また、 式(127) であること、 を特徴とするもの。
  12. 【請求項12】請求項1の方法において、前記総差分熱
    流を算出する前記ステップは、以下を算出するステップ
    を備えており、 式(128) ここで、 式(129) 式(130) 式(131) であり、 また、 式(132) であること、 を特徴とするもの。
  13. 【請求項13】請求項1の方法において、以下の式から
    差分反転熱流を算出するステップを備えたこと、 式(133) を特徴とするもの。
  14. 【請求項14】請求項1の方法において、以下の式から
    差分非反転熱流を算出するステップを備えており、 式(134) ここで、 式(135) であり、 また、 式(136) であること、 を特徴とするもの。
  15. 【請求項15】独立したサンプル測定部および独立した
    基準物測定部を含む差分走査熱量セルを備えた変調差分
    走査熱量計を用いて得られたデータからサンプルの反転
    熱容量を算出する方法であって、 (a) 直線傾斜(linear ramp)に重ね合わせられる周期的
    成分(periodic component)を特徴とする温度プログラム
    に基づき前記差分走査熱量セルの温度を変動させるステ
    ップと、 (b) 前記サンプル測定部におけるサンプル保持皿および
    前記基準物測定部における基準物保持皿の温度を測定す
    るステップと、 (c) 前記サンプルおよび前記サンプル保持皿に与えられ
    る熱流ならびに、それが用いられている場合には前記基
    準物に与えられる熱流および前記基準物保持皿に与えら
    れる熱流を測定するステップと、 (d) 前記サンプル保持皿の温度振幅および前記基準物保
    持皿の温度振幅を得るため、前記サンプル保持皿の温度
    および前記基準物保持皿の温度を簡略化(deconvolutin
    g)するステップと、 (e) 前記サンプルおよび前記サンプル保持皿に与えられ
    る前記熱流の振幅、ならびに、それが用いられている場
    合には前記基準物に与えられる前記熱流、および前記基
    準物保持皿に与えられる前記熱流の振幅を得るために、
    前記サンプルおよび前記サンプル保持皿ならびに、それ
    が用いられている場合には基準物に与えられる熱流、お
    よび前記基準物保持皿に与えられる前記熱流を簡略化す
    るステップと、 (f) 前記サンプルおよび基準物の見せかけ上の熱容量を
    算出するステップと、 (g) 前記サンプルおよび前記サンプル保持皿に与えられ
    る非反転熱流ならびに、それが用いられている場合には
    前記基準物に与えられる非反転熱流、および前記基準物
    保持皿に与えられる非反転熱流熱流を算出するステップ
    と、および (h) 前記サンプルの前記見せかけ上の熱容量および前記
    基準物の前記見せかけ上の熱容量から前記サンプルの差
    分反転熱容量を算出するステップと、を備えたこと、 を特徴とするもの。
  16. 【請求項16】請求項15の方法において、さらに、前
    記サンプルに与えられる差分反転熱流を算出するステッ
    プを備えたこと、 を特徴とするもの。
  17. 【請求項17】請求項15の方法において、さらに、前
    記サンプルに与えられる差分非反転熱流を算出するステ
    ップを備えたこと、 を特徴とするもの。
  18. 【請求項18】請求項15の方法において、さらに、前
    記サンプルに与えられる総差分熱流(total differentia
    l heat flow)を算出するステップを備えたこと、 を特徴とするもの。
  19. 【請求項19】請求項15の方法において、さらに、前
    記サンプルの差分非反転熱容量を算出するステップを備
    えたこと、 を特徴とするもの。
  20. 【請求項20】請求項15の方法において、さらに、前
    記サンプルの差分総熱容量(differential total heat f
    low)を算出するステップを備えたこと、 を特徴とするもの。
  21. 【請求項21】請求項15の方法において、前記サンプ
    ルおよび前記基準物の前記見せかけ上の熱容量は、以下
    の式を用いて算出されること、 式(137) を特徴とするもの。
  22. 【請求項22】請求項21の方法において、前記サンプ
    ル保持皿に与えられる前記非反転熱流および前記基準物
    保持皿に与えられる前記非反転熱流は、それぞれ以下の
    式を用いて算出されること、 式(138) を特徴とするもの。
  23. 【請求項23】請求項21の方法において、前記サンプ
    ルの前記差分非反転熱容量は、以下の式から算出される
    こと、 式(139) を特徴とするもの。
  24. 【請求項24】請求項23の方法において、さらに、以
    下の式を用いて差分反転熱流、差分非反転熱流および総
    熱流を算出するステップを備えたこと、 式(140) 式(141) 式(142) を特徴とするもの。
  25. 【請求項25】請求項24の方法において、さらに、以
    下の式から差分非反転熱容量および差分総熱容量を算出
    するステップを備えたこと、 式(143) また、前記差分総熱容量は、以下の式から算出されるこ
    と、 式(144) を特徴とするもの。
  26. 【請求項26】DSCセルを有する差分走査熱量計であ
    って、 (a) センサのベース位置の温度を測定する絶対的な温度
    計と、 (b) その上にサンプルおよびサンプル保持皿を有するサ
    ンプル位置と前記ベース位置間の温度差を測定する第一
    差分温度計と、 (c) 基準物が用いられる場合、その上に前記基準物およ
    び基準物保持皿を有する基準物位置と前記サンプル位置
    間の温度差を測定する第二差分温度計と、 (d) 直線傾斜に重ね合わせられる周期的変調(periodic
    modulation)を特徴とする温度プログラムに基づき前記
    DSCセルの温度を変動させる手段と、 (e) 前記温度プログラムに基づいて前記DSCセルの前
    記温度が変動すると、前記サンプル測定部におけるサン
    プル保持皿に与えられる熱流を表わす信号を測定すると
    ともに、それが用いられている場合には前記基準物に与
    えられる熱流、および前記基準物保持皿に与えられる熱
    流を表わす信号を測定する手段と、 (f) 前記サンプルおよび前記サンプル保持皿に与えられ
    る熱流を表わす前記信号、それが用いられている場合に
    は前記基準物に与えられる熱流、および前記基準物保持
    皿に与えられる熱流を表わす前記信号、前記サンプル保
    持皿の前記温度を表わす信号、ならびに、前記基準物保
    持皿の前記温度を表わす信号、を簡略化する手段、およ
    び (g) 差分反転熱容量を算出する手段と、を備えたこと、 を特徴とするもの。
  27. 【請求項27】請求項26の差分走査熱量計において、
    前記差分反転熱容量を算出する手段は、前記サンプルお
    よび前記基準物用に見かけ上の熱容量を算出すること、 を特徴とするもの。
  28. 【請求項28】請求項27の差分走査熱量計において、
    非反転サンプル熱流を算出する手段を備えたこと、 を特徴とするもの。
  29. 【請求項29】請求項26の差分走査熱量計において、
    さらに、差分非反転熱流、差分反転熱流、および差分総
    熱流を算出する手段を備えたこと、 を特徴とするもの。
  30. 【請求項30】請求項26の差分走査熱量計において、
    さらに、差分非反転熱容量を算出する手段を備えたこ
    と、 を特徴とするもの。
  31. 【請求項31】請求項26の差分走査熱量計において、
    さらに、総熱容量を算出する手段を備えたこと、 を特徴とするもの。
  32. 【請求項32】請求項26の差分走査熱量計において、
    以下の式を用いて前記サンプルおよび前記基準物用に見
    かけ上の熱容量を算出する手段を備えたこと、 式(145) を特徴とするもの。
  33. 【請求項33】請求項26の差分走査熱量計において、
    以下の式を用いて前記サンプル保持皿に与えられる非反
    転熱流および前記基準物保持皿に与えられる非反転熱流
    を算出する手段を備えたこと、 式(146) を特徴とするもの。
  34. 【請求項34】請求項26の差分走査熱量計において、
    以下の式から前記サンプルの前記差分反転熱容量を算出
    する手段を備えたこと、 式(147) を特徴とするもの。
  35. 【請求項35】請求項26の差分走査熱量計において、
    さらに、以下の式を用いて差分反転熱流、差分非反転熱
    流および総熱流を算出する手段を備えたこと、 式(148) 式(149) 式(150) を特徴とするもの。
  36. 【請求項36】請求項26の差分走査熱量計において、
    さらに、以下の式から差分非反転熱容量を算出する手段
    と、 式(151) 以下の式から差分非反転熱容量を算出する手段とを備え
    たこと、 式(152) を特徴とするもの。
  37. 【請求項37】独立したサンプル測定部および独立した
    基準物測定部を含む差分走査熱量セルを備えた変調差分
    走査熱量計を用いて得られたデータからサンプルの反転
    熱容量を算出する方法であって、 (a) 直線傾斜(linear ramp)に重ね合わせられる周期的
    成分(periodic component)を有することを特徴とする温
    度プログラムに基づき前記差分走査熱量セルの温度を変
    動させるステップと、 (b) 前記サンプル測定部におけるサンプル保持皿および
    前記基準物測定部における基準物保持皿の温度を測定す
    るステップと、 (c) 前記サンプルおよび前記サンプル保持皿に与えられ
    る熱流および前記基準物保持皿に与えられる熱流を測定
    するステップと、 (d) 前記サンプル保持皿の温度振幅および前記基準物保
    持皿の温度振幅を得るため、前記サンプル保持皿の温度
    および前記基準物保持皿の温度を簡略化(deconvolutin
    g)するステップと、 (e) 前記サンプルおよび前記サンプル保持皿に与えられ
    る前記熱流の振幅、ならびに、前記基準物保持皿に与え
    られる前記熱流の振幅を得るために、前記サンプルおよ
    び前記サンプル保持皿ならびに、前記基準物保持皿に与
    えられる前記熱流を簡略化するステップと、 (f) 前記サンプル用に見せかけ上の熱容量を算出するス
    テップと、 (g) 前記サンプルおよび前記サンプル保持皿に与えられ
    る非反転熱流ならびに、前記基準物保持皿に与えられる
    非反転熱流熱流を算出するステップと、および (h) 前記サンプルの差分反転熱容量を算出するステップ
    と、を備えたこと、を特徴とするもの。
  38. 【請求項38】DSCセルを有する差分走査熱量計であ
    って、 (a) センサのベース位置の温度を測定する絶対的な温度
    計と、 (b) その上にサンプルおよびサンプル保持皿を有するサ
    ンプル位置と前記ベース位置間の温度差を測定する第一
    差分温度計と、 (c) その上に基準物保持皿を有する基準物位置と前記サ
    ンプル位置間の温度差を測定する第二差分温度計と、 (d) 直線傾斜に重ね合わせられる周期的変調(periodic
    modulation)を特徴とする温度プログラムに基づき前記
    DSCセルの温度を変動させる手段と、 (e) 前記温度プログラムに基づいて前記DSCセルの前
    記温度が変動すると、前記サンプル測定部におけるサン
    プル保持皿に与えられる熱流を表わす信号を測定すると
    ともに、前記基準物保持皿に与えられる熱流を表わす信
    号を測定する手段と、 (f) 前記サンプルおよび前記サンプル保持皿に与えられ
    る熱流を表わす前記信号、前記基準物保持皿に与えられ
    る熱流に与えられる熱流を表わす前記信号、前記サンプ
    ル保持皿の前記温度を表わす信号、および、前記基準物
    保持皿の前記温度を表わす信号、を簡略化する手段、お
    よび (g) 差分反転熱容量を算出する手段と、を備えたこと、 を特徴とするもの。
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