JP2001348649A - 溶接継手 - Google Patents

溶接継手

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JP2001348649A
JP2001348649A JP2000171525A JP2000171525A JP2001348649A JP 2001348649 A JP2001348649 A JP 2001348649A JP 2000171525 A JP2000171525 A JP 2000171525A JP 2000171525 A JP2000171525 A JP 2000171525A JP 2001348649 A JP2001348649 A JP 2001348649A
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welding
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JP2000171525A
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English (en)
Inventor
Toshinobu Nishihata
敏伸 西畑
Takahiro Kushida
隆弘 櫛田
Masahiko Hamada
昌彦 濱田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】強度確保のための合金元素の低減を必ずしも必
要とせず、継手の強度確保が容易な継手の引張強さが5
88.4MPa以上の溶接低温割れ抵抗性に優れた溶接
継手を提供する。 【解決手段】本発明の溶接継手は、溶接金属が、C:
0.01〜0.2%、Si:0.01〜1%、Mn:
0.5〜3%、P:0.03%以下、S:0.01%以
下、Mo:0.01〜1%、Ti:0.001〜0.1
%、B:0.0001〜0.04%、Al:0.001
〜0.1%、O(酸素):0.001〜0.06%、N:
0.006%以下を含み、残部が実質的にFeで、Al
含有量とO含有量との関係が式「0.3≦Al/O≦
3」を満たす。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、橋梁、建築、ペン
ストックおよび圧力容器等の溶接構造物を構成する溶接
継手に関し、継手の引張強さが588.4MPa以上の
溶接低温割れ抵抗性に優れた溶接継手に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、溶接構造物は、その大型化に伴っ
て構造物を支える柱、梁および桁等の数量削減の要求が
強まっている。このため、素材の鋼材には、従来にも増
してより高強度な高張力鋼が多く使用されるようになっ
てきている。
【0003】しかし、高張力鋼では、溶接低温割れがし
ばしば問題となる。特に、水素量が高い溶接材料を用い
て低い入熱量で溶接を行った場合には、溶接金属中に過
飽和に固溶した水素が拡散性水素となって溶接熱影響部
(以下、HAZという)へ拡散し、溶接後、しばらくし
て割れ(溶接低温割れ)が発生することがある。
【0004】また、素材の鋼材は、一般に、強度が高ま
るにつれて合金元素の量が多くなり、HAZの硬度が上
昇するため、溶接低温割れがより発生しやすい。特に、
引張強さが588.4MPa以上の高張力鋼の溶接継手
では、上記の傾向が強い。このため、溶接施工時には、
素材の鋼材を予熱してHAZの硬化を抑制したり、脱水
素を助長して溶接低温割れを防止する対策が採られてい
る。
【0005】しかし、上記の予熱は、溶接施工時間が長
くなる他、その効果には限度があり、充分な溶接低温割
れ防止手段とはなり得ない。そこで、予熱に代わる溶接
低温割れ防止手段が従来から種々検討され、下記(1) 〜
(5) のような方法が提案されている。
【0006】(1)Ca/Sが0.2〜2となるようにC
aを添加してMnSの生成を抑制し、これによって溶接
低温割れ感受性を低減させる方法(特開昭53−115
611号公報)。(2) C量を少なくする一方、VNを生
成させることで溶接低温割れ感受性を低減させる方法
(特開昭56−123350号公報)。(3) SとO(酸
素)の量を少なくするとともに、B量を0.0003%
以下にすることで溶接低温割れ感受性を低減させる方法
(特開昭57−51212号公報)。(4) 式「C当量=
C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+M
o/4+V/14」で求められ、HAZの硬度を表す指
標のC当量値を0.4以下、式「Pcm=C+Si/3
0+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20
+Mo/15+V/10+5B」で求められ、溶接低温
割れ感受性を表す指標のPcm値を0.24以下にする
ことで溶接低温割れ感受性を低減させる方法(特公平5
−55584号公報)。(5) Ti23酸化物を積極的に
生成させ水素をトラップし、これによってHAZの拡散
性水素量低下を図って溶接低温割れ感受性を低減させる
方法(特開平8−176724号公報)。
【0007】しかし、上記(1)〜(5)の方法は、それぞ
れ、以下に述べる欠点を有している。すなわち、(1) の
方法は、MnSが存在する方が逆にHAZの硬度が低下
して溶接低温割れ感受性が減少する場合があり、この場
合には有効な対策とはなり得ない。(2) の方法は、VN
が熱力学的に不安定で、高温に加熱されるHAZではV
Nが固溶するために効果が消失する他、N量が多すぎる
ために溶接継手部の靭性に劣る。
【0008】(3) の方法は、溶接低温割れ感受性を表す
指標のPcm値を求める式からも明らかなように、Bは
HAZの硬化を助長して溶接低温割れ感受性を上昇させ
る元素であり、B量の抑制は溶接低温割れ感受性を低減
させる観点からは有効である。しかし、Bは継手の強度
上昇を図るうえでは極めて有効な元素であり、B量の抑
制は継手の強度確保が困難になる。
【0009】(4) の方法は、継手の強度確保の観点から
は高い方が好ましいPcm値の低減を余儀なくされるた
め、(3) の方法の場合と同様に、継手の強度確保が困難
になる。(5) の方法は、Ti23酸化物を生成させるた
めに比較的多量のTi添加が必要でコスト上昇を招く
他、O(酸素)との親和力が強いAl量の低減を余儀な
くされ、製鋼上の制約がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、継手の引張
強さが588.4MPa以上の溶接低温割れ抵抗性に優
れた溶接継手を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記の
溶接継手にある。
【0012】溶接部の溶接金属が、質量%で、C:0.
01〜0.2%、Si:0.01〜1%、Mn:0.5
〜3%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、M
o:0.01〜1%、Ti:0.001〜0.1%、
B:0.0001〜0.04%、Al:0.001〜
0.1%、O(酸素):0.001〜0.06%、N:
0.006%以下を含み、残部が実質的にFeで、Al
含有量とO(酸素)含有量との関係が下記の(1) 式を満
たす溶接継手。
【0013】0.3≦Al/O≦3 ・・・ (1) 上記本発明の溶接継手を構成する溶接金属は、Feの一
部に代えて下記のイ〜ハのグループのうちから選ばれた
1グループまたは2グループ以上の元素を含んでもよ
い。 イ;Cr:0.01〜2%または/およびCu:0.0
1〜2%、 ロ;Ni:0.01〜3%、 ハ;V:0.005〜0.1%または/およびNb:
0.005〜0.1%。また、溶接金属は、少なくと、
直径1μm以下のSi−Mn−Ti−Al系の複合酸化
物を1mm2 当たり1個以上含むものであることが好ま
しい。
【0014】さらに、上記Si−Mn−Ti−Al系の
複合酸化物は、酸化物中金属元素の合計量に対するS
i、Mn、TiおよびAlの割合が、原子分率(at.
%)で、Si:1〜20%、Mn:1〜40%、Ti:
5〜30%、Al:10〜90%であるものであること
が好ましい。
【0015】上記の本発明は、以下の知見に基づいて完
成させた。すなわち、溶接低温割れの発生原因は、(a)
拡散性水素、(b) HAZの硬化組織、(c) 引張応力の3
つに大別され、これらが同時に起こった場合に低温割れ
が発生する。
【0016】しかし、溶接では、大気中または溶接材料
中の水分が分解し、その際に生成した水素が溶接金属中
に過飽和に固溶し、溶接冷却過程において過飽和に固溶
した水素の多くは大気中へ逃散するものの、多くの水素
が拡散性水素として溶接金属中に残留する。そして、こ
の溶接金属中に残留した拡散性水素が時間経過に伴って
HAZの硬化組織部へ拡散集積し、そこに熱収縮に伴う
残留応力が作用することで、硬化したHAZで割れが発
生する。
【0017】したがって、上記の特開昭57−5121
2号公報にも示されるように、溶接低温割れ感受性を高
めるBに代表される合金元素の添加量を抑制し、HAZ
の硬化抑制を図れば効果は得られる。しかし、これらの
合金元素は、溶接継手の強度確保に必要で、特に、継手
の引張強さが588.4MPa以上であることが要求さ
れる溶接継手では、溶接低温割れ防止のための合金元素
の添加量抑制には自ずと限界がある。また、残留応力
は、溶接金属の凝固時の熱収縮により不可避的に発生
し、なくすることはできない。
【0018】これに対し、溶接時に溶接金属中に固溶し
た拡散性水素は、ある種の酸化物にトラップされて拡散
が抑制されるが、これは次の理由による。
【0019】一般に、鋼中の析出相(酸化物)と母相と
の界面構造は、その整合性の違いにより、図1の(a)
に示すような整合析出の場合と、(b)に示すような非
整合析出の場合とに分類される。特に、整合析出の場合
は、格子定数が異なる母相と析出相とが整合性を保つた
めに歪場が生じる。このため、水素が拡散してくるとこ
の歪場に誘起され、トラップされやすい。すなわち、鋼
と結晶整合性が良好な酸化物は、水素をトラップして溶
接低温割れの防止に寄与する。
【0020】しかし、前述の特開平8−176724号
公報に示されるTi酸化物(Ti23 )による拡散性
水素の拡散抑制方法は、前述したように、Tiの添加量
が増加するのでコスト上昇を招く他、Al量の低減を余
儀なくされる。また、Ti酸化物(Ti23)による水
素トラップ機構は上記とは異なるため、その効果はそれ
ほど大きくはない。
【0021】そこで、本発明者等は、Al量の極端な低
減が不要で、かつTiの酸化物よりもトラップ効果が大
きい酸化物による拡散性水素のHAZへの拡散抑制手段
について種々検討した。具体的には、溶接金属の化学組
成、特にAlとO(酸素)の含有量を種々変えて種々の
酸化物を生成させ、母相との結晶整合性を詳細に調査し
た。その結果、化学組成が上記の溶接金属であれば、そ
の溶接金属中にSi−Mn−Ti−Al系の複合酸化物
が生成し、この複合酸化物が母相との結晶整合性が最も
よく、上記のTi酸化物にも増して拡散性水素を顕著に
トラップし、HAZの拡散性水素量が低下して溶接低温
割れが生じ難くなることを知見した。
【0022】上記Si−Mn−Ti−Al系の複合酸化
物の水素トラップ能力は、その量と整合総面積に依存
し、直径が微細で、かつ量が多いほど水素をトラップす
る能力が高くなり、少なくとも、直径1μm以下のもの
が1個/mm2 以上存在する場合、その水素トラップ能
力が一段と向上する。
【0023】また、Si−Mn−Ti−Al系の複合酸
化物は、酸化物中金属元素の合計量に対する各元素の割
合が、原子分率(at.%)で、Si:1〜20%、M
n:1〜40%、Ti:5〜30%、Al:10〜90
%の場合、その水素トラップ能力が一段と向上すること
も判明した。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の溶接継手を、上記
のような定めた理由について、詳細に説明する。なお、
以下において、「%」は特に断らない限り、「質量%」
を意味する。
【0025】C:0.01〜0.2% Cは、溶接金属の強度を高めるのに最も有効な元素であ
る。C含有量が0.01%未満では溶接金属の強度が不
十分であるので、下限は0.01%とした。逆に0.2
%を超えると、過剰に炭化物が析出し、靭性劣化を招く
ので、上限値は0.2%とした。
【0026】Si:0.01〜1% Siは、Si−Mn−Ti−Al系の複合酸化物を生成
させるうえで必要な元素であるとともに、溶接金属の強
度向上に寄与する他、脱酸元素としても有効な元素であ
る。これらの効果を得るためには、0.01%以上が必
要である。しかし、過剰なSiは溶接金属の靭性低下お
よび溶接高温割れ感受性の上昇を招くので、その上限は
1%とする。
【0027】Mn:0.5〜3% Mnは、上記のSiと同様に、Si−Mn−Ti−Al
系の複合酸化物を生成させるうえで必要な元素であると
ともに、溶接金属の強度向上に寄与する他、脱酸剤とし
ても有効な元素である。これらの効果を得るためには、
0.5%以上が必要である。しかし、3%を超えて含有
させると、溶接金属の靭性低下および残留γ生成による
強度低下を招くので、上限は3%とする。
【0028】P:0.03%以下 Pは、多量に存在すると溶接金属の靭性劣化を招くだけ
でなく、溶接高温割れ感受性を上昇させる。しかし、
0.03%以下であれば特に問題ないので、0.03%
以下とした。なお、P含有量は少なければ少ないほどよ
い。
【0029】S:0.01%以下 Sは、多量に存在すると溶接金属の延性および耐食性等
を劣化させるだけでなく、溶接高温割れ感受性を上昇さ
せる。しかし、0.01%以下であれば特に問題ないの
で、0.01%以下とした。なお、S含有量は、上記の
Pと同様に、少なければ少ないほどよい。
【0030】Mo:0.01〜1% Moは、溶接金属の焼入性を向上させ、強度上昇に有効
な元素である。この効果を得るためには0.01%以上
が必要である。しかし、1%を超えて含有させると靭性
が劣化する。このため、Mo含有量は0.01〜1%と
した。
【0031】Ti:0.001〜0.1% Tiは、上記のSiおよびMnと同様に、Si−Mn−
Ti−Al系の複合酸化物を生成させるうえで必要な元
素であるとともに、脱酸剤としても有効な元素であり、
微量のBがNと結合するのを阻害し、Bによる焼入性向
上効果を促進する。これらの効果を得るためには、0.
001%以上が必要である。しかし、過剰なTiはTi
Cを析出し、靭性を著しく劣化させる。このため、Ti
含有量は0.01〜0.1%とした。
【0032】Al(Total Al):0.001〜
0.1% Alは、上記のSi、MnおよびTiと同様に、Si−
Mn−Ti−Al系の複合酸化物を生成させるうえで必
要な元素であるとともに、脱酸剤としても有効な元素で
ある。これらの効果を得るためには、最低でも0.00
1%が必要である。しかし、過剰なAlは、粗大なアル
ミナ主体のSi−Mn−Ti−Al系の複合酸化物の生
成を招き、溶接低温割れ感受性を上昇させる。このた
め、Al含有量は0.001〜0.1%とした。
【0033】なお、Alは、本発明においては拡散性水
素がHAZへ拡散するのをトッラプするSi−Mn−T
i−Al系の複合酸化物の生成に特に重要な役割を担う
元素であり、その含有量は、後述するように、次に述べ
るO(酸素)量との関係を満たす必要がある。
【0034】O(酸素):0.001〜0.06% Oは、本発明では必須の元素である。水素のトラップに
有効な量のSi−Mn−Ti−Al系の複合酸化物を生
成させるためには、すくなくとも0.001%以上のO
が必要である。しかし、0.06%を超えて含有させる
と、靭性の劣化が著しくなる。このため、O含有量は
0.001〜0.06%とした。なお、その含有量は、
上記のAlとの関係を満たす必要がある。
【0035】B:0.0001〜0.04% Bは、溶接金属の焼入性を向上させ、強度上昇に極めて
有効な元素である。この効果を得るためには最低でも
0.0001%が必要である。しかし、0.04%を超
えて含有させると、Bの炭化物を生成して靭性を劣化さ
せる。このため、B含有量は0.0001〜0.04%
とした。
【0036】N:0.006%以下 Nは、AlやTiとの親和力が強く、0.006%を超
えて含有させるとAlおよびTiの窒化物を形成し、水
素のトラップに寄与するSi−Mn−Ti−Al系の複
合酸化物の生成を阻害する。このため、N含有量が0.
006%以下とした。なお、N含有量は少なければ少な
いほど望ましい。
【0037】Al/O:0.3〜3 溶接金属中のAl量とO量の関係が、Al/Oで0.3
未満の場合には、Si−Mn−Ti−Al系の複合酸化
物の母相(溶接金属)との結晶整合性が悪く、水素が充
分にトラップされない。逆に、Al/Oが3を超える
と、前記と同じく、Si−Mn−Ti−Al系の複合酸
化物の母相(溶接金属)との結晶整合性が悪く、しかも
上記Si−Mn−Ti−Al系の複合酸化物が粗大にな
りすぎて水素がトラップされなくなる。このため、Al
/Oは0.3〜3とした。好ましい範囲は0.6〜1.
2であり、この場合に生成するSi−Mn−Ti−Al
系の複合酸化物が水素のトラップ能力に最も優れてい
る。
【0038】本発明の溶接継手を構成する溶接金属は、
上記の条件を満たせば充分であるが、上記の元素以外
に、必要に応じて下記の元素のうちから選ばれた1種ま
たは2種を含んでもよい。
【0039】Cr、Cu:これらの元素は、溶接金属の
焼入性を向上させ、強度を上昇させるのに有効な元素で
ある。このため、この効果を得たい場合にはいずれか一
方または両方を添加することができ、その効果はいずれ
の元素も0.01%以上で顕著になる。しかし、いずれ
の元素も2%を超えて含有させると靭性が劣化する。し
たがって、添加する場合のこれらの元素の含有量は、い
ずれの元素も0.01〜2%とするのがよい。
【0040】Ni:Niは溶接金属の靭性を高めるのに
有効な元素である。このため、この効果を得たい場合に
添加することができ、その効果は0.01%以上で顕著
になる。しかし、3%を超えて含有させると、溶接時に
おける湯流れが悪くなり、溶接欠陥を生じやすくなる。
したがって、添加する場合の含有量は、0.01〜3%
とするのがよい。
【0041】V、Nb:これらの元素は、析出硬化作用
を有し、溶接金属の強度を上昇させるのに有効な元素で
ある。このため、この効果を得たい場合にはいずれか一
方または両方を添加することができ、その効果はいずれ
の元素も0.005%以上で顕著になる。しかし、いず
れの元素も0.1%を超えて含有させると靭性が劣化す
る。したがって、添加する場合のこれらの元素の含有量
は、いずれの元素も0.005〜0.1%とするのがよ
い。なお、Nbについては、溶接金属の焼入性を向上さ
せる作用も有している。
【0042】上記複合酸化物の大きさと個数および各金
属元素の割合:Si−Mn−Ti−Al系の複合酸化物
は、溶接金属が上記の化学組成を満たせば生成するが、
前述したように、少なくとも、直径1μm以下のものが
1個/mm2 以上で、複合酸化物中の金属元素の合計量
に対する各金属元素の割合が、Si:1〜20%、M
n:1〜40%、Ti:5〜30%、Al:10〜90
%であることが好ましい。
【0043】ここで、Si−Mn−Ti−Al系の複合
酸化物の大きさと個数は、例えば、SEM観察、各元素
の割合は、例えば、EDS分析により、容易に知ること
ができる。なお、直径1μm以下のSi−Mn−Ti−
Al系の複合酸化物の個数は多ければ多いほとよく、特
にその上限を規定する必要はない。しかし、余りに多い
と上部棚エネルギーの低下を招く原因になるので、10
0個/mm2 以下、より望ましくは50個/mm2 以下
が好ましい。
【0044】以上に説明した本発明の溶接継手を構成す
る溶接金属は、C当量値やPcm値を低下させることが
困難な引張強さ588.4MPa以上の高張力鋼の溶接
継手部における溶接低温割れ防止に特に効果を発揮す
る。
【0045】なお、実際の溶接において、溶接継手を得
るためによく用いられる溶接方法としては、SAW法や
GMAW法が挙げられる。これは、入熱量を容易に高め
ることで溶接能率を高め、かつ外面からの片側溶接で内
面に良好な形状の裏波ビードを形成しやすいためであ
る。その際、溶接金属中のAl/Oを0.3〜3の範囲
とし、溶接金属中にSi−Mn−Ti−Al系の複合酸
化物を生成分散させる方法としては、例えば、下記のよ
うにすればよい。
【0046】先ず、溶接金属中のAl/Oを0.3〜3
の範囲にするには、例えば、SAW法では、入熱量を3
〜10kJ/mmとし、Al含有量が0.01〜0.3
%のワイヤと塩基度が1〜3の範囲のフラックスを用い
れば容易に所望の溶接金属が得れられる。ここで、上記
の塩基度(BI:Basic Index)はBI=(CaO+MgO
+CaF2+0.5MnO)/(SiO2 +0.5(A
23+TiO2))で定義される値である。フラック
スの塩基度を1以下にすることは、Oを0.06%以下
にするためにも望ましい。また、Al/Oを安定して
0.6〜1.2の範囲にするためには、Al含有量を
0.02〜0.1%のワイヤと塩基度が1.5〜2.5
のフラックスを用いるのが望ましい。
【0047】一方、GMAW法の場合は、入熱量をSA
W法より低くしてやるのがよく、例えば、7kJ/mm
以下とするのが望ましい。また、Al/Oを所定の範囲
にするためには、Al含有量が0.01〜0.3%のワ
イヤを用い、シールドガス雰囲気を、CO2 :5〜50
体積%、残:ArまたはHeの雰囲気とすることが望ま
しい。
【0048】次に、本発明の溶接継手を構成する母材に
ついて説明する。
【0049】母材は、特に制限されず、引張強さが58
8.4MPa未満の高張力鋼や軟鋼の他、低温割れが問
題となる、例えばマルテンサイト系ステンレス鋼等であ
ってもよいが、張強さ588.4MPa以上の高張力鋼
であることが望ましい。その理由は、継手の引張強さが
588.4MPa以上の溶接継手を得るためには、通
常、母材も同程度の強度を有する高張力鋼を用いるため
である。
【0050】ここで、母材としての上記の高張力鋼は、
588.4MPa以上の引張強さを有するものでありさ
えすればよく、その化学組成は特に制限されないが、下
記の化学組成を有する鋼であることが好ましい。
【0051】すなわち、質量%で、C:0.01〜0.
2%、Si:0.02〜2%、Mn:0.5〜3%、
P:0.03%以下、S:0.01%以下、Mo:0.
02〜1%、Ti:0.005〜1%、B:0.000
1〜0.005%、Al:0.004〜0.2%、O
(酸素):0.001〜0.06%、N:0.006%
以下を含み、さらに、必要に応じて、Cr:0.01〜
2%、Cu:0.01〜2%、Ni:0.01〜2%、
V:0.005〜0.5%およびNb:0.005〜
0.5%のうちのいずれか1種または2種以上を含み、
残部:実質的にFe。
【0052】なお、上記必要に応じて含んでよい元素の
うち、CrとCuは焼入性を向上させて母材の強度上昇
に寄与し、Niは母材の靭性向上に寄与し、VとNbは
析出硬化より母材の強度上昇に寄与する。
【0053】
【実施例】表1と2に示す化学組成と引張強さを有する
5種類の母材を準備した。
【0054】
【表1】
【表2】 そして、これらを母材とし、表3と表4に示す化学組成
の溶接金属を有する13種類の溶接継手を製作した。な
お、溶接は入熱量1.7kJ/mmで行い、ワイヤには
所望の化学組成を有する溶接金属を得るために低水素系
の被覆溶接棒を使用した。
【0055】
【表3】
【表4】 その際、JIS Z 3158に規定される方法に従っ
て溶接低温割れ試験を行い、HAZに割れが生じなくな
る母材の予熱温度を調べる一方、得られた溶接金属中に
存在するSi−Mn−Ti−Al系の複合酸化物の個数
とそのうち最も大きなもの直径をSEM観察して調べ、
これらの結果を、表4に併せて示すとともに、溶接金属
のPcm値とHAZに割れが生じなくなる母材の予熱温
度との関係を図2にまとめて示した。
【0056】また、一部の試番の溶接継手を構成する溶
接金属については、Si−Mn−Ti−Al系の複合酸
化物中金属元素の合計量に対する各金属元素Si、M
n、TiおよびAlの割合(原子分率:at.%)をE
DS分析により調べ、その結果を表5に示した。
【0057】
【表5】 図2に示す結果から明らかなように、同一のPcm値で
比較すると、本発明で規定する条件のうちのいずれか1
つ以上を満たさない試番7〜13の溶接継手に比べ、本
発明で規定する条件を満たす試番1〜6の溶接継手の方
が予熱温度が低く、溶接低温割れ感受性が低いことがわ
かる。
【0058】
【発明の効果】本発明の溶接継手を構成する溶接金属
は、引張強さが588.4MPa以上という高強度であ
るにもかかわらず溶接低温割れ感受性が低い。したがっ
て、強度確保の観点からC当量値やPcm値の低下が困
難な引張強さ588.4MPa以上の高張力鋼の溶接継
手として適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼中の析出相(酸化物)と母相との界面構造を
示す模式図で、同図(a)は整合析出の場合、同図
(b)は非整合析出の場合を示す図である。
【図2】実施例の結果を示す図で、溶接金属のPcm値
とHAZに割れが生じなくなる母材の予熱温度との関係
(図中、●印は本発明で規定する条件を満たす溶接継
手、○印は本発明で規定する条件を満たさない溶接継
手)を示す図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】溶接部の溶接金属が、質量%で、C:0.
    01〜0.2%、Si:0.01〜1%、Mn:0.5
    〜3%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、M
    o:0.01〜1%、Ti:0.001〜0.1%、
    B:0.0001〜0.04%、Al:0.001〜
    0.1%、O(酸素):0.001〜0.06%、N:
    0.006%以下を含み、残部が実質的にFeで、Al
    含有量とO(酸素)含有量との関係が下記の(1) 式を満
    たす溶接継手。 0.3≦Al/O≦3 ・・・ (1)
  2. 【請求項2】溶接部の溶接金属が、質量%で、C:0.
    01〜0.2%、Si:0.01〜1%、Mn:0.5
    〜3%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、M
    o:0.01〜1%、Ti:0.001〜0.1%、
    B:0.0001〜0.04%、Al:0.001〜
    0.1%、O(酸素):0.001〜0.06%、N:
    0.006%以下を含み、さらに、下記のイ〜ハのグル
    ープのうちから選ばれた1グループまたは2グループ以
    上の元素を含み、残部が実質的にFeで、Al含有量と
    O(酸素)含有量との関係が下記の(1) 式を満たす溶接
    継手。 イ;Cr:0.01〜2%または/およびCu:0.0
    1〜2%、 ロ;Ni:0.01〜3%、 ハ;V:0.005〜0.1%または/およびNb:
    0.005〜0.1%、 0.3≦Al/O≦3 ・・・ (1)
  3. 【請求項3】 溶接金属
    が、少なくとも、直径1μm以下のSi−Mn−Ti−
    Al系の複合酸化物を1mm2 当たり1個以上含む請求
    項1または2に記載の溶接継手。
  4. 【請求項4】上記Si−Mn−Ti−Al系複合酸化物
    中の金属元素の合計量に対するSi、Mn、Tiおよび
    Alの割合が、原子分率(at.%)で、Si:1〜2
    0%、Mn:1〜40%、Ti:5〜30%、Al:1
    0〜90%である請求項1〜3のいずれかに記載の溶接
    継手。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008000808A (ja) * 2006-06-26 2008-01-10 Kobe Steel Ltd 低温靭性、耐低温割れ性、および全姿勢溶接時のビード形状が良好な高強度溶接金属
JP2008068274A (ja) * 2006-09-12 2008-03-27 Kobe Steel Ltd 低温靭性に優れた高強度溶接金属
WO2012137957A1 (ja) 2011-04-08 2012-10-11 株式会社神戸製鋼所 耐水素脆化感受性に優れた溶接金属

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US9592575B2 (en) 2011-04-08 2017-03-14 Kobe Steel, Ltd. Weld metal having excellent resistance to hydrogen embrittlement susceptibility

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