JP2001336447A - 内燃機関のピストン - Google Patents

内燃機関のピストン

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JP2001336447A
JP2001336447A JP2000154003A JP2000154003A JP2001336447A JP 2001336447 A JP2001336447 A JP 2001336447A JP 2000154003 A JP2000154003 A JP 2000154003A JP 2000154003 A JP2000154003 A JP 2000154003A JP 2001336447 A JP2001336447 A JP 2001336447A
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oil
thrust side
piston
piston ring
combustion engine
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JP2000154003A
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English (en)
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Hiroya Fujimoto
博也 藤本
Yukio Amemori
幸雄 雨森
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スラスト側でのオイル不足を発生させること
なく、反スラスト側で生じやすいオイル上がりを抑制す
る。 【解決手段】 ピストン20の最下方に位置するピスト
ンリング溝21は、スカート部22との間の角部に施さ
れた面取り部24を備えている。面取り部24は、ピス
トンリング溝21の全周に亘って形成されているが、そ
の面取り量は、反スラスト側で最大、スラスト側で最小
となるように設定されている。ピストンリング溝21の
下端および面取り部24にかかるようにオイル戻し孔2
3が形成されている。クランク軸の回転方向の関係でシ
リンダボア壁面には、反スラスト側に多くオイルが分布
する。掻き落とされたオイルが面取り部24に充満する
とオイル上がりが生じやすいが、反スラスト側で面取り
量を大きくすることで、オイル戻し孔23から確実に排
出され、オイル上がりが抑制される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、内燃機関のピス
トンに関し、特に、シリンダボア壁面に形成されるオイ
ル油膜の制御技術に関する。
【0002】
【従来の技術】シリンダボア壁面に付着したオイルをピ
ストンの裏面へ排出し、燃焼室側へのオイル上がりを防
止してオイル消費量を低減するようにした内燃機関のピ
ストンとして、例えば実開平6−49741号公報に開
示されたものがある。
【0003】この従来のピストンでは、シリンダボア壁
面に付着していたオイルを、ピストンリングによって掻
き落とすとともに、該ピストンリングの下方に上下方向
に設けた凹溝部によって油戻し孔へ導き、この油戻し孔
からピストンの裏面へ排出する構成となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、これまでは
シリンダボア壁面へのオイル付着がどのように発生する
かについて十分な考察が行われておらず、一般的には、
クランク軸のカウンタウエイトがオイルパンに溜まった
オイルの油面を叩く等の原因により、クランク室内には
オイル飛沫が無秩序に飛散しており、シリンダボア壁へ
のオイル付着も無秩序に発生するものと考えられてき
た。このため、上記公報に見られるように、従来のピス
トンにおいては、シリンダボア壁面の余剰のオイルを取
り除いて外部へ排出する機構が、スラスト側、反スラス
ト側でそれぞれ同様に形成されている。
【0005】しかしながら、クランク室内のオイルの挙
動を詳細に観察する発明者らの実験により、シリンダボ
ア壁面に対するオイル付着が次のような分布を示すこと
が分かった。
【0006】すなわち、シリンダボア壁面に付着するオ
イルの大部分はクランク軸のピンジャーナルを潤滑した
後のオイルであり、このオイルはコンロッド大端軸受の
外側からクランク軸の回転による遠心力で飛散するもの
であるため、クランク軸の回転方向によって規定される
スラスト側、反スラスト側でオイルの付着し易さが異な
り、スラスト側よりも反スラスト側に多くのオイルが付
着する。
【0007】図1,2は、発明者らが見い出したシリン
ダボア壁面のオイル付着分布を模式的に示したものであ
り、図2は図1のA−A矢視図である。両図中の矢印B
がオイルの飛散方向を示している。この図では、クラン
ク軸40は、時計回り方向つまり矢印ω方向に回転し、
従って、図中の左側がピストン20のスラスト側、右側
が反スラスト側となる。
【0008】クランク軸40のクランクジャーナル41
へ供給されたオイルは、クランクジャーナル41の潤滑
に使用される他、一部がクランク軸40内部に設けられ
た油通路(図示略)を介してピンジャーナル42へも供
給される。このオイルは、矢印Bで示すように、コンロ
ッド50の大端軸受51の両側からクランク軸40の回
転接線方向へ飛散し、対向する反スラスト側のシリンダ
ボア壁面10へ付着する。これに対しスラスト側のシリ
ンダボア壁面60は、オイルの飛散方向と対向すること
がほとんどないので、オイル付着量が少なくなる。
【0009】このため、従来のピストンのようにオイル
排出機構をスラスト側および反スラスト側で同様に設け
た場合、反スラスト側でのオイル上がりが防止できず、
あるいはスラスト側でのオイル不足が発生することにな
る。
【0010】この発明は、このような課題に着目してな
されたもので、ピストンの構造を非対称化することによ
り上記課題を解決することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
内燃機関のシリンダボア壁面に付着したオイルをクラン
ク室側へ掻き落とすピストンリングを収装するピストン
リング溝と、このピストンリング溝に連続して形成さ
れ、上記シリンダボア壁面に摺接するスカート部と、こ
のスカート部に形成され、上記ピストンリングが掻き落
としたオイルを上記シリンダボア壁面との間で一時的に
溜めるオイル溜め構造と、このオイル溜め構造に溜めら
れたオイルをピストンの裏面へ排出するオイル排出構造
と、を有する内燃機関のピストンにおいて、上記オイル
溜め構造の反スラスト側の容量をスラスト側の容量より
も大きく設定したことを特徴としている。
【0012】ピストンの下降時に、ピストンリングが掻
き落とすオイルがスカート部とシリンダボア壁面との間
の空間に充満した状態になると、余剰のオイルがピスト
ンリングの合口隙間やピストンリングの背面から燃焼室
側へ侵入する(これをオイル上がりと呼ぶ)ことになる
が、前述したようにオイル付着量の多い反スラスト側の
オイル溜め構造の容量をオイル付着量の少ないスラスト
側の容量よりも大きくすることにより、スラスト側と反
スラスト側のオイル充満状態の格差を減少させることが
でき、オイル上がり量を低減することができる。すなわ
ち、スラスト側でのオイル不足を発生させることなく、
反スラスト側でのみオイルが充満する状態となることを
回避できる。
【0013】この請求項1の発明をより具体化した請求
項2の発明では、上記オイル溜め構造が、上記ピストン
リング溝と上記スカート部との間の角部に施される面取
りによって構成されており、反スラスト側の面取り量を
スラスト側の面取り量よりも大きく設定したことを特徴
としている。
【0014】スラスト側の面取り量と反スラスト側の面
取り量は、例えば旋削加工によって面取りを行なう場
合、旋削加工中心とピストンの中心とを偏心させて加工
するだけで容易に調整可能であり、特別な追加加工を施
す必要がない。
【0015】なお、本明細書では、面取りによって除去
される部分の容積を面取り量と表記する。
【0016】さらに請求項2に従属する請求項3の発明
は、反スラスト側の面取り角とスラスト側の面取り角と
を異ならせたことを特徴としている。
【0017】このように面取り角をスラスト側と反スラ
スト側とで変更した場合は、反スラスト側の面取り量を
スラスト側より大きくすると共に、面取り後に残される
ピストンリング溝下面の半径方向の幅をスラスト側と反
スラスト側とでほぼ同じに維持することが可能となる。
これにより、反スラスト側のピストンリング下面におけ
るシール性がスラスト側より悪化するのを回避すること
ができる。
【0018】また請求項4の発明は、請求項1のピスト
ンにおいて、スラスト側の上記オイル溜め構造が、上記
ピストンリング溝と上記スカート部との間の角部に施さ
れる面取りのみによって構成される一方、反スラスト側
の上記オイル溜め構造が、上記ピストンリング溝と上記
スカート部との間の角部に施される面取りと、この面取
りに連続するように凹設されたオイル溜め溝とから構成
されることを特徴としている。
【0019】反スラスト側では、掻き落とされたオイル
は、面取りによる容積に加えてオイル溜め溝にも溜めら
れるようになる。
【0020】上記のオイル溜め溝はピストン鋳造時に鋳
型によって形成することも可能であり、その場合は特別
な追加加工を施すことなくスラスト側、反スラスト側の
オイル溜め構造の容量を異ならせることができる。そし
て、面取りを双方で同じにできることから、ピストンリ
ング溝下面の半径方向の幅がスラスト側と反スラスト側
とで同じとなる。
【0021】請求項5の発明は、請求項4のピストンに
おいて、上記オイル溜め溝が、反スラスト側におけるス
カート部の幅方向の中央位置で分離されていることを特
徴としている。つまり、上記オイル溜め溝は、周方向に
不連続なものとなっている。
【0022】前述したように、シリンダボア壁面に付着
するオイルは、コンロッド大端軸受の外側からクランク
軸の回転接線方向へ飛散するので、スカート部の幅方向
の中央位置に対向するシリンダボア壁面部分、すなわち
コンロッド自体に対向するシリンダボア壁面部分のオイ
ル付着量は、その両サイドと比較すると若干少なくな
る。また、この位置はシリンダボア壁面との接触面圧が
最も大きくなる位置にあたる。従って、この位置に相当
する部分には、オイル溜め溝を凹設せず、オイルによる
潤滑を確保するほうが望ましい。
【0023】請求項6に係る発明は、内燃機関のシリン
ダボア壁面に付着したオイルをクランク室側へ掻き落と
すピストンリングを収装するピストンリング溝と、この
ピストンリング溝に連続して形成され、上記シリンダボ
ア壁面に摺接するスカート部と、このスカート部に形成
され、上記ピストンリングが掻き落としたオイルを上記
シリンダボア壁面との間で一時的に溜めるオイル溜め構
造と、このオイル溜め構造に溜められたオイルをピスト
ンの裏面へ排出するオイル排出構造と、を有する内燃機
関のピストンにおいて、上記オイル排出構造の反スラス
ト側の排出能力をスラスト側の排出能力よりも大きく設
定したことを特徴としている。
【0024】このように排出能力の差を与えることによ
り、請求項1の発明と同様に、スラスト側と反スラスト
側のオイル充満状態の格差を減少させることができる。
【0025】この請求項6の発明を具体化した請求項7
の発明では、上記オイル排出構造が、ピストンの裏面へ
貫通形成されたオイル戻し孔によって構成されており、
反スラスト側のオイル戻し孔の数をスラスト側のオイル
戻し孔の数よりも多く設定されている。
【0026】また請求項8の発明では、上記オイル排出
構造が、ピストンの裏面へ貫通形成されたオイル戻し孔
によって構成されており、反スラスト側のオイル戻し孔
の断面積をスラスト側のオイル戻し孔の断面積よりも大
きく設定されている。
【0027】オイル戻し孔がオイルで満たされていると
きに燃焼室側がクランク室側よりも低圧になると、オイ
ル戻し孔内のオイルが燃焼室側へ吸い出されやすくなる
が、オイル戻し孔の断面積を大きくすると、オイル戻し
孔がオイルで満たされた状態となりにくく、従って、燃
焼室側がクランク室側よりも低圧になっても燃焼室側へ
吸い出されにくくなる。
【0028】次に、請求項9に係る内燃機関のピストン
は、反スラスト側のスカート部のシリンダボア壁面との
摺接面積をスラスト側のスカート部の摺接面積より小さ
く設定したことを特徴としている。
【0029】ピストン下降時に掻き落とされず、あるい
は、ピストン裏面へ排出されなかったオイルは、次のピ
ストン上昇時にスカート部に引きずられてシリンダボア
壁面の上方へ運ばれ、次のピストン下降時にスカート部
とシリンダボア壁面との間の空間に充満するオイルの一
部となるが、オイル付着量の多い反スラスト側のスカー
ト部の摺接面積をオイル付着量の少ないスラスト側のス
カート部の摺接面積よりも小さくすることにより、ピス
トン上昇時に上方へ運ばれるオイル量を反スラスト側で
減少させることができ、スラスト側と反スラスト側のオ
イル充満状態の格差を減少させることができる。
【0030】また請求項10に係る内燃機関のピストン
は、反スラスト側のスカート部の面積をスラスト側のス
カート部の面積より大きく設定したことを特徴としてい
る。
【0031】ピストンが比較的下方(下死点側)にある
ときのクランク軸からのオイル飛散がシリンダボア壁面
へのオイル付着の主要因になっている場合は、ピストン
のスカート部の面積をスラスト側、反スラスト側で異な
らせて飛散オイルの遮蔽効果を異ならせることによりオ
イル付着量を調整することができる。この場合は、クラ
ンク軸からの飛散オイルに対向する反スラスト側のスカ
ート部の面積をスラスト側のスカート部の面積より大き
くすることにより、スラスト側と反スラスト側のオイル
付着量の格差を減少させ、オイル充満状態の格差を減少
させることができる。
【0032】
【発明の効果】この発明に係る内燃機関のピストンによ
れば、スラスト側でのオイル不足を発生させることな
く、反スラスト側でオイルが充満して燃焼室側に侵入す
ることを回避できる。
【0033】特に、面取りあるいはオイル溜め溝によっ
てオイル溜め構造の容量を異ならせるようにした請求項
2〜5の発明あるいはオイル戻し孔によってオイル排出
能力を異ならせるようにした請求項7,8の発明によれ
ば、極めて簡単な構造でもって所期の作用を実現でき
る。
【0034】また、請求項3あるいは請求項4の発明に
よれば、ピストンリング下面の部分的なシール性悪化を
回避できる。
【0035】また、請求項5の発明によれば、面圧が高
い部分に対し、オイル溜め溝の形成に伴う潤滑不良を回
避できる。
【0036】請求項9の発明によれば、ピストンリング
溝部分の構成を変更せずに、スラスト側と反スラスト側
のオイル分布の状態を均等化させることができる。
【0037】また請求項10の発明によれば、スラスト
側と反スラスト側でのオイル付着量の初期の分布自体を
均等化させることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】図3および図4は、この発明に係
るピストン20の第1実施例を示したものである。
【0039】このピストン20は、例えばアルミニウム
合金等により一体に鋳造されたものであって、複数本、
例えば2本のピストンリング溝を備えているが、その最
下方に位置するピストンリング溝21が、面取り部24
を備えている。この面取り部24は、上記ピストンリン
グ溝21とスカート部22との間の角部に施されている
ものであって、ピストンリング溝21の下面にかかるよ
うに形成されている。上記ピストンリング溝21には、
ピストンリングとして図示せぬオイルコントロールリン
グが装着される。上記面取り部24は、ピストンリング
溝21の全周に亘って形成されているが、その面取り量
は、図右側の反スラスト側で最大、かつ図左側のスラス
ト側で最小となるように設定されている。また23はオ
イル戻し孔であって、ピストンリング溝21の下端およ
び面取り部24にかかり、かつピストン裏面26に連通
するように形成されている。ここで、オイル戻し孔23
の数および孔径は、スラスト側、反スラスト側で同じで
ある。具体的には、スラスト側および反スラスト側に、
それぞれ2個ずつ形成されている。
【0040】図5は、上記第1実施例における面取り部
24の面取り形状を詳細に示したものであって、この図
の例では、スラスト側の面取り角θtと反スラスト側の
面取り角θatとが同一となっている。つまり、全周に
亘って面取り角が等しく、その半径方向の切り込み量
が、反スラスト側で大となっている。従って、この場合
には、ピストンリング溝21の下面の半径方向の幅とし
ては、スラスト側での幅Ltに比較して反スラスト側の
幅Latが狭くなる。
【0041】図6は、面取り形状の変形例を示してお
り、反スラスト側の面取り角θatがスラスト側の面取
り角θtよりも大きくなっている。そして、ピストンリ
ング溝21の下面の幅としては、スラスト側の幅Ltと
反スラスト側の幅Latとが等しく形成されている。つ
まり、両者の角度設定により、面取り量が異なってい
る。
【0042】上記のように面取り部24の面取り量を、
反スラスト側で最大、かつスラスト側で最小となるよう
に設定したことにより、スカート22の上部で余剰とな
ったオイルは、オイル付着量の分布に対応した形で、一
時的にこの面取り部24に溜められ、さらにオイル戻し
孔23からピストン裏面に排出される。これにより反ス
ラスト側でピストンリング溝21を通ってオイルが燃焼
室に侵入するいわゆるオイル上がりを防止でき、オイル
消費量を低減することができる。
【0043】図5のようにスラスト側の面取り角θtと
反スラスト側の面取り角θatとが同じ場合には、加工
が容易である利点がある。しかし、上記のように、ピス
トンリング溝21の下面幅として、スラスト側の幅Lt
に対して反スラスト側の幅Latが狭くなってしまうの
で、ピストンリング溝の下面面積の低下により、オイル
が侵入し易いなどシール性能に影響を来たす場合には、
図6のように、両者の角度設定により、ピストンリング
溝21の下面幅をスラスト側と反スラスト側とで等しく
形成することが好ましい。
【0044】なお、本実施例ではスラスト−反スラスト
方向で面取り量が最小/最大となるように連続的に変化
させているが、これは旋削による形成が最も容易である
ためであり、基本的にはオイルの付着分布に対応して面
取り量の分布を決定することが望ましい。
【0045】図7、図8は、第2実施例を示したもので
あり、第1実施例のオイル戻し孔23を変更したもので
ある。
【0046】この実施例においては、オイル戻し孔23
は、それぞれ等しい孔径を有しているが、本数は、反ス
ラスト側の方がスラスト側に比べて多い。例えば、スラ
スト側には2本のオイル戻し孔23が設けられ、反スラ
スト側には4本のオイル戻し孔23が設けられている。
【0047】スカート22の上部のうち反スラスト側で
より余剰となったオイルは、本数が多い反スラスト側の
オイル戻し孔23からピストン裏面に確実に排出され
る。これにより、オイルが燃焼室に侵入することによる
オイル消費量を低減できる。特に、前述したように面取
り部24の面取り量が反スラスト側で拡大されているこ
とと相俟って、反スラスト側の余剰オイルを速やかに排
出できる。
【0048】なお、図示例では、ピストン周方向のオイ
ル戻し孔23の設置位置を、各スカート22の幅の両側
寄りに置いているが、基本的にはオイルの付着分布に対
応して設置位置を決定することが望ましい。
【0049】図9、図10は、第3実施例を示したもの
で、第1実施例のオイル戻し孔23を変更したものであ
る。
【0050】この実施例においては、スラスト側および
反スラスト側にそれぞれ同数のオイル戻し孔23が設け
られているが、反スラスト側のオイル戻し孔23の孔径
が、スラスト側のオイル戻し孔23の孔径よりも大きく
設定されている。
【0051】このようにオイル戻し孔23の一個所当り
の断面積をスラスト側よりも反スラスト側で大きく設定
したことにより、第2実施例と同様に反スラスト側での
余剰のオイルがピストン裏面に速やかに排出されること
は勿論であるが、特に、筒内の負圧が発達した運転状態
において、オイル戻し孔23から逆流してオイルが燃焼
室側へ吸い上げられる現象を抑制でき、これによるオイ
ル消費量を低減することができる。これは、オイル戻し
孔23の断面積が大きい方が単位時間当たりの吸出し量
が小さいことに加えて、断面積が大きいと、孔内でオイ
ルとクランクケース内のガスとが混在し、オイルのみが
充満する確率が低減することに起因する。
【0052】次に、図11および図12は、第4実施例
を示している。これは、前述した第3実施例と同様の基
本構成を有し、かつこれにオイル溜め溝25を付加した
ものである。
【0053】上記オイル溜め溝25は、スカート部22
上部に周方向に沿って凹設されているものであって、反
スラスト側にのみ部分的に形成されており、かつ面取り
部24の下端にかかるように設けられている。なお、こ
のオイル溜め溝25は、ピストンリング溝21とは重な
っていない。
【0054】従って、スカート22の上部で余剰となっ
たオイルは、一時的にこの面取り部24およびオイル溜
め溝25に溜められ、さらにオイル戻し孔23からピス
トン裏面に排出される。これにより反スラスト側でピス
トンリング溝21を通って燃焼室に侵入するオイル量を
低減できる。また、面取り部24を大きく形成しようと
するとピストンリング溝21の下面の幅が減少し、ピス
トンリングのシール性能が劣化する怖れがあるが、本実
施例のようにオイル溜め溝25を付加するのであれば、
ピストンリング溝21下面の面積を確保しつつ、オイル
溜め構造の容量を十分に増加させることができる。
【0055】図13および図14は、第5実施例を示し
ている。これは、上記の第4実施例を部分的に変更した
ものであって、オイル溜め溝25が、周方向に2つに分
割され、反スラスト側のスカート部22の幅中心付近に
は、オイル溜め溝25が設けられていない。なお、2つ
に分割されたオイル溜め溝25のそれぞれはオイル戻し
孔23に連通している。
【0056】図2に示したように、シリンダボア壁面に
付着するオイル分布は、クランク軸40のピンジャーナ
ル42とコンロッド50の大端部51の両側の隙間から
の飛沫に大きく影響される。そして、コンロッド50が
位置する中央部分のオイル付着は相対的に少ない。従っ
て、オイル溜め溝25を本実施例のように2カ所に形成
することにより、必要最低限のオイル溜め容量で効率良
くオイル消費量低減を実現できる。
【0057】また、図15に一般的なスカート部22の
摩耗形態を示すように、スカート部22の上部は剛性が
高くシリンダボア壁面との接触面圧も大きいため、摩耗
が促進される。また一般的に、ピストン20の外形は完
全な真円形ではなく、ピストンピンに直交するスカート
部中心付近の方が直径が大きいプロファイルを持ってい
るため、さらにスカート部22幅方向中心付近の摩耗は
大きい。
【0058】このような摩耗の傾向に対し、上記第5実
施例の構成によれば、スカート部22の幅方向中心部の
上部にオイル溜め溝25を具備していないので、この部
分で相対的に多量のオイルが残存するようになり、部分
的に潤滑性能が高まり、摩耗が抑制される。
【0059】次に、図16および図17は、第6実施例
を示している。これは、第4実施例と同様の基本構成を
有し、かつスカート部22の構成を変更したものであ
る。
【0060】図示するように、スカート部22として
は、ピストンピン軸方向部分が切り欠かれていることに
より、スラスト側のスカート部22aと反スラスト側の
スカート部22bとが下方へ延びているが、本実施例で
は、反スラスト側のスカート部22bの周方向の幅が、
スラスト側のスカート部22aの周方向の幅よりも狭く
形成されている。
【0061】本実施例は、シリンダボア壁面に付着した
オイルがスカート部22の摺動によって上方まで搬送さ
れ、結果としてピストンリング直下に余剰オイルが発生
する状態が顕著な場合に好適である。上記のように反ス
ラスト側のスカート部22bの幅をスラスト側のスカー
ト部22aの幅よりも狭くしたことにより、シリンダ下
部から上方へ搬送されるオイル量が低減するため、反ス
ラスト側の余剰オイルが抑制される。
【0062】図18および図19は、第7実施例を示し
ている。これは、やはり第4実施例と同様の基本構成を
有し、かつスカート部22の構成を変更したものであ
る。
【0063】この実施例では、反スラスト側のスカート
部22bの周方向の幅が、スラスト側のスカート部22
aの周方向の幅よりも広く形成されている。
【0064】本実施例は、ピストン20が下死点付近に
あるときのシリンダボア壁面へのオイル付着量が、ピス
トン20のスカート形状による飛沫オイル遮蔽効果によ
って変化し、結果としてピストンリング直下の余剰オイ
ル状態に影響を与える場合に好適なものである。上記の
ように反スラスト側のスカート部22bの幅をスラスト
側のスカート部22aの幅よりも広くしたことにより、
オイル飛沫が遮蔽されてシリンダボア壁面に付着するオ
イル量が低減するため、反スラスト側の余剰オイルが減
少する。なお、反スラスト側のスカート部22bの幅を
広くしつつ実際の摺接面積が小さくなるようにすれば、
一層好ましいものとなる。
【0065】図20および図21は、第6実施例の変形
例となる第8実施例を示している。
【0066】これは、スカート部22の幅に代えてピス
トン軸方向の長さを異ならせるようにしたものであっ
て、反スラスト側のスカート部22bの長さが、スラス
ト側のスカート部22aの長さよりも短く形成されてい
る。
【0067】これにより、第6実施例と同様に、シリン
ダ下部から上方へ搬送されるオイル量が反スラスト側で
低減するため、反スラスト側の余剰オイルが抑制され
る。
【0068】図22および図23は、第7実施例の変形
例となる第9実施例を示している。
【0069】これは、スカート部22の幅に代えてピス
トン軸方向の長さを異ならせるようにしたものであっ
て、反スラスト側のスカート部22bの長さが、スラス
ト側のスカート部22aの長さよりも長く形成されてい
る。
【0070】これにより、第7実施例と同様に、反スラ
スト側でオイル飛沫がより多く遮蔽されてシリンダボア
壁面に付着するオイル量が低減し、反スラスト側の余剰
オイルが減少する。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリンダボア壁面におけるオイル付着分布の説
明図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】この発明に係るピストンの第1実施例を示す正
面図。
【図4】同じく平面図。
【図5】面取り部の詳細を示す説明図。
【図6】面取り部の変形例を示す説明図。
【図7】この発明の第2実施例を示す正面図。
【図8】同じく平面図。
【図9】この発明の第3実施例を示す正面図。
【図10】同じく平面図。
【図11】この発明の第4実施例を示す正面図。
【図12】同じく反スラスト側からの側面図。
【図13】この発明の第5実施例を示す正面図。
【図14】同じく反スラスト側からの側面図。
【図15】スカート部における一般的な摩耗領域を示す
説明図。
【図16】この発明の第6実施例を示す正面図。
【図17】同じく反スラスト側からの側面図。
【図18】この発明の第7実施例を示す正面図。
【図19】同じくスラスト側からの側面図。
【図20】この発明の第8実施例を示す正面図。
【図21】同じく反スラスト側からの側面図。
【図22】この発明の第9実施例を示す正面図。
【図23】同じくスラスト側からの側面図。
【符号の説明】
20…ピストン 21…ピストンリング溝 22…スカート部 23…オイル戻し孔 24…面取り部 25…オイル溜め溝

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関のシリンダボア壁面に付着した
    オイルをクランク室側へ掻き落とすピストンリングを収
    装するピストンリング溝と、 このピストンリング溝に連続して形成され、上記シリン
    ダボア壁面に摺接するスカート部と、 このスカート部に形成され、上記ピストンリングが掻き
    落としたオイルを上記シリンダボア壁面との間で一時的
    に溜めるオイル溜め構造と、 このオイル溜め構造に溜められたオイルをピストンの裏
    面へ排出するオイル排出構造と、 を有する内燃機関のピストンにおいて、 上記オイル溜め構造の反スラスト側の容量をスラスト側
    の容量よりも大きく設定したことを特徴とする内燃機関
    のピストン。
  2. 【請求項2】 上記オイル溜め構造が、上記ピストンリ
    ング溝と上記スカート部との間の角部に施される面取り
    によって構成されており、反スラスト側の面取り量をス
    ラスト側の面取り量よりも大きく設定したことを特徴と
    する請求項1に記載の内燃機関のピストン。
  3. 【請求項3】 反スラスト側の面取り角とスラスト側の
    面取り角とを異ならせたことを特徴とする請求項2に記
    載の内燃機関のピストン。
  4. 【請求項4】 スラスト側の上記オイル溜め構造が、上
    記ピストンリング溝と上記スカート部との間の角部に施
    される面取りのみによって構成される一方、反スラスト
    側の上記オイル溜め構造が、上記ピストンリング溝と上
    記スカート部との間の角部に施される面取りと、この面
    取りに連続するように凹設されたオイル溜め溝とから構
    成されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の
    ピストン。
  5. 【請求項5】 上記オイル溜め溝が、反スラスト側にお
    けるスカート部の幅方向の中央位置で分離されているこ
    とを特徴とする請求項4に記載の内燃機関のピストン。
  6. 【請求項6】 内燃機関のシリンダボア壁面に付着した
    オイルをクランク室側へ掻き落とすピストンリングを収
    装するピストンリング溝と、 このピストンリング溝に連続して形成され、上記シリン
    ダボア壁面に摺接するスカート部と、 このスカート部に形成され、上記ピストンリングが掻き
    落としたオイルを上記シリンダボア壁面との間で一時的
    に溜めるオイル溜め構造と、 このオイル溜め構造に溜められたオイルをピストンの裏
    面へ排出するオイル排出構造と、 を有する内燃機関のピストンにおいて、 上記オイル排出構造の反スラスト側の排出能力をスラス
    ト側の排出能力よりも大きく設定したことを特徴とする
    内燃機関のピストン。
  7. 【請求項7】 上記オイル排出構造が、ピストンの裏面
    へ貫通形成されたオイル戻し孔によって構成されてお
    り、反スラスト側のオイル戻し孔の数をスラスト側のオ
    イル戻し孔の数よりも多く設定したことを特徴とする請
    求項6に記載の内燃機関のピストン。
  8. 【請求項8】 上記オイル排出構造が、ピストンの裏面
    へ貫通形成されたオイル戻し孔によって構成されてお
    り、反スラスト側のオイル戻し孔の断面積をスラスト側
    のオイル戻し孔の断面積よりも大きく設定したことを特
    徴とする請求項6に記載の内燃機関のピストン。
  9. 【請求項9】 反スラスト側のスカート部のシリンダボ
    ア壁面との摺接面積をスラスト側のスカート部の摺接面
    積より小さく設定したことを特徴とする内燃機関のピス
    トン。
  10. 【請求項10】 反スラスト側のスカート部の面積をス
    ラスト側のスカート部の面積より大きく設定したことを
    特徴とする内燃機関のピストン。
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