JP2001336084A - 改質パルプ繊維を用いた紙および紙容器 - Google Patents

改質パルプ繊維を用いた紙および紙容器

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JP2001336084A JP2000193590A JP2000193590A JP2001336084A JP 2001336084 A JP2001336084 A JP 2001336084A JP 2000193590 A JP2000193590 A JP 2000193590A JP 2000193590 A JP2000193590 A JP 2000193590A JP 2001336084 A JP2001336084 A JP 2001336084A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】抄紙用内添剤のパルプ繊維への定着性を改良す
べくパルプ繊維を用いた紙、およびこのパルプ繊維に有
機物による可塑性などと無機物による耐熱性、耐候性、
耐水性などの特性を同時に兼ね備えた抄紙用内添剤を使
用して、より紙の表面と端面からの浸水に強い紙を提供
することを目的とする。 【解決手段】パルプ繊維を酸化処理して、パルプ繊維の
構成単位であるセルロース分子の還元末端、またはセル
ロース骨格におけるピラノース環の第6位が選択的に酸
化され、カルボキシル基に変換された構造を含む改質パ
ルプ繊維を含むことを特徴とした紙を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐水性、撥水性、
湿潤紙力などの機能を付与する内添剤の歩留まりを向上
させる改質パルプ繊維を使用した紙および紙容器に関す
るもので、耐水性と紙力が要求される各種包装用紙、建
装用紙、また保型性が必要な冷凍食品用やテイクアウト
用食品紙トレイ、紙カップ、段ボールライナー及び中芯
原紙、インスタント食品用紙容器、化粧紙、紙製育苗ポ
ットなどの用途に使用できる。
【0002】
【従来の技術】近年、これまでの環境負荷型技術から環
境保全型への技術転換が世界中で巻き起こっている。そ
の一つとして、有限な資源である石油由来のプラスチッ
ク材料から再生可能な天然資源である木材セルロースが
注目され、例えば従来、発泡ポリスチレンなどの合成樹
脂を使用した容器に代わり、環境ホルモンの問題解決も
兼ねて、紙容器へ移行し、需要も増加してきている。
【0003】また、製紙業界では古紙の再利用が活発に
行われること、プラスチックに比べて燃焼熱が低いこと
から焼却炉を傷めずにサーマルリサイクルによってエネ
ルギーに変換が可能である等の理由からその需要はます
ます増加している。
【0004】また、このような状況で増加する紙ゴミ
は、CO2 量削減による地球温暖化防止や2000年
の紙容器を対象とした容器包装リサイクル法の施行に伴
い、紙ゴミを回収し、原料として再利用することが望ま
れている。
【0005】しかし、紙はプラスチックに比べ劣る物性
があり、中でも紙はセルロース繊維が水素結合したもの
である為、繊維間に容易に水が入り込み耐水性が低い課
題がある。
【0006】従来、耐水性等の機能を紙に付与する方法
としては、(1)紙を抄紙・抄造する際に、機能性を付
与する薬剤をパルプ原料へ添加(内添)、あるいは機能
材料(繊維)の混抄、(2)抄紙・抄造された紙へ機能
性薬剤の塗工、あるいは含浸(外添)、(3)紙表面へ
ポリエチレンやポリエチレンテレフタラート等のプラス
チックフィルムのラミネート等の方法がある。
【0007】上記(2)の外添、あるいは(3)のラミ
ネートの手法を用いた紙は端面に加工がされていない
為、その部分からの浸水が生じてしまう為に紙の各種機
能が低下するという欠点を有していた。またパルプモー
ルド等の3次元成形体には、外添やラミネートの工程が
効率的でないという欠点も有している。
【0008】(1)の内添ではセルロース分子の親水性
基を効率的に封鎖し、且つ全層に渡って容易に改質でき
る為、外添法で挙げられる紙の切断面からや摩擦破損に
よる浸水による耐水性の低下は起こらない。
【0009】しかし、古くから用いられてきた内添剤と
して、ロジンやアルキルケテンダイマー(AKD)等の
サイズ剤、カチオンデンプンやポリアクリルアミド(P
AM)等の乾燥紙力増強剤、エポキシ化ポリアミドポリ
アミンやジアルデヒドデンプン等の湿潤紙力増強剤等が
挙げられ、筆記性や軽度の耐水性の付与は可能である
が、今後展開が予想される各種用途に対して十分な物性
とは言えない。
【0010】最近では、フッ素系の薬剤や、シリコーン
系の薬剤を使用したものもあるが、薬剤が概ね高価で、
また本来、水不溶性の薬剤を水溶化させるために、親水
基を導入したものがあるが、多くはノニオン性かアニオ
ン性であり、各種歩留り向上剤や定着剤の併用が必要
で、又は親水基を導入せずカチオン系界面活性剤を使用
して水に分散化、あるいは乳化したりするが、パルプへ
の吸着が低く、定着量に限界がある為、高い耐水性が望
めず、白水中へ薬剤が流出し、公害対策から廃水処理に
おける回収操作や設備が必要な場合が多い。
【0011】このような課題を解決する技術として、特
開平9−16817号公報等で、各種有機金属アルコキ
シド、及びその重合体を内添剤として紙の全層に、且つ
有効的にシロキサン架橋構造等の金属架橋構造を形成さ
せ、各種機能性(特に耐水性)を付与させる内添剤及び
その内添紙を提案した。
【0012】一般的に抄紙用内添剤は、少量の使用量で
機能を発現することが望ましい。そのためには抄紙工程
中に内添剤が添加された時、水中に分散しているパルプ
繊維に対して選択的に定着し、機能する事が効率的であ
ると考えられる。
【0013】また、パルプ繊維は水に分散させると、カ
ルボキシル基の様な表面の官能基の解離や自らの水酸イ
オンの選択的吸着によりアニオン性に帯電するといわれ
ている。アニオン性に帯電したパルプ繊維に対して反対
の電荷であるカチオン性の内添剤を添加することによ
り、両者間で電気的作用が働き、内添剤とパルプ繊維と
が水中で選択的に結合すると考えられる。
【0014】従って、パルプ繊維表面にカルボキシル基
の様な表面の官能基を導入することが、抄紙用内添薬剤
の歩留りを向上させると考えられる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題を
鑑みてなされたものである。即ち、抄紙用内添剤のパル
プ繊維への定着性を改良すべくパルプ繊維を用いた紙、
およびこのパルプ繊維に有機物による可塑性などと無機
物による耐熱性、耐候性、耐水性などの特性を同時に兼
ね備えた抄紙用内添剤を使用して、より紙の表面と端面
からの浸水に強い紙および紙容器を提供することを目的
とするものである。
【0016】
【課題を解決する為の手段】本発明の第1の発明は、パ
ルプ繊維を酸化処理して、パルプ繊維の構成単位である
セルロース分子の還元末端、またはセルロース骨格にお
けるピラノース環の第6位が選択的に酸化され、カルボ
キシル基に変換された構造を含む改質パルプ繊維を含む
ことを特徴とした紙および紙容器を提供する。
【0017】本発明の第2の発明は、カルボキシル基に
変換された構造が表面に偏積したパルプ繊維を含むこと
を特徴とした紙および紙容器を提供する。
【0018】本発明の第3の発明は、第1の発明におい
て、TAPPI TEST METHODS T237
om−93に従って定量した紙中の全パルプ中のカル
ボキシル基量X1 が、改質処理前の木材パルプのカル
ボキシル基量をX0 とした場合、X0 <X1 ≦30
X0 の範囲、より好ましくはX0 <X1 ≦10X0
の範囲にある紙および紙容器を提供する。
【0019】具体的には、標準的な針葉樹クラフトパル
プ全体のカルボキシル基量が約0.04mmol/gと
すると紙全体のパルプのカルボキシル基量が0.04か
ら1.2mmol/g、より好ましくは0.04から
0.4mmol/gの範囲にある紙および紙容器を提供
する。
【0020】本発明の第4の発明は、第1から3の発明
のいずれかの改質パルプ繊維を含む紙において、抄紙用
内添剤が添加されていることを特徴とする紙および紙容
器を提供する。
【0021】本発明の第5の発明は、第4の発明におけ
る抄紙用内添剤として、Am M(OR)n−m (A
はアミノ基を少なくとも1つ有する置換基、Mは金属原
子)で示される有機金属化合物と、Bm M(OR)n
−m (Bはビニル基、エポキシ基、アルキル基を少な
くとも1つ有する置換基、Mは金属原子)で示される有
機金属化合物との混合物、又は該有機金属化合物の共重
合体からなるものを含むことを特徴とする紙および紙容
器を提供する。
【0022】本発明の第6の発明は、前記金属元素M
が、ケイ素(Si)であることを特徴とする紙および紙
容器を提供する。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細について説明
する。
【0024】本発明に関わるパルプ繊維は、木材などの
通常のパルプ原料から選ばれる。1種類又は2種類以上
を混ぜたものでも良い。特に限定されるものではない。
【0025】本発明の紙および紙容器に含まれる改質パ
ルプ繊維は、N−オキシル化合物(オキソアンモニウム
塩)の存在下、酸化剤を用いて、パルプ繊維を酸化する
ことにより得ることができる。N−オキシル化合物に
は、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンN
−オキシル(以下TEMPOと称する)などが含まれ
る。
【0026】この酸化方法では、酸化の程度に応じて、
カルボキシル基を均一かつ効率よく導入できる。本酸化
反応は、前記N−オキシル化合物と、臭化物又はヨウ化
物との共存下で行うのが有利である。
【0027】臭化物又はヨウ化物としては、水中で解離
してイオン化可能な化合物、例えば、臭化アルカリ金属
やヨウ化アルカリ金属などが使用できる。酸化剤として
は、ハロゲン、次亜ハロゲン酸,亜ハロゲン酸や過ハロ
ゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、
過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であ
れば、いずれの酸化剤も使用できる。
【0028】本発明の酸化では、パルプ繊維中のセルロ
ース骨格中の水酸基を選択的に酸化するものである。N
−オキシル化合物は触媒量で済み、例えば、パルプ重量
に対して2%から10ppmあれば充分である。
【0029】本発明の酸化反応条件などは特に限定され
ず、セルロースの性状、使用する設備などによって最適
化されるべきであるが、臭化物やヨウ化物との共存下で
酸化反応を行うと、温和な条件下でも酸化反応を円滑に
進行させることができ、カルボキシル基の導入効率を大
きく改善できる。
【0030】臭化物及び/又はヨウ化物の使用量は、酸
化反応を促進できる範囲で選択でき、例えば、パルプ繊
維重量に対し20%から100ppmである。
【0031】本発明におけるパルプ繊維の酸化反応系
は、N−オキシル化合物にはTEMPOを用い、臭化ナ
トリウムの存在下、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム
を用いるのが好ましい。
【0032】本発明におけるパルプの酸化反応では、セ
ルロースの1級水酸基への酸化の選択性を上げ、副反応
を抑える目的で、反応温度は室温以下で反応させること
が望ましい。
【0033】また、本発明におけるパルプの酸化反応に
おける反応系のpHは、反応の効率の面から、pH9か
ら12の間で反応を行うことが望ましい。
【0034】本発明の紙および紙容器は、上記の改質パ
ルプを用い抄紙、プレス、乾燥を行い作製したもの、ま
たは、前述の抄紙用内添剤をパルプスラリー中に内添
し、抄紙、プレス、乾燥を行い作製したもの、および同
様に湿式のパルプモールド成形手法によりモールド成形
した紙容器である。
【0035】本発明に係る内添紙の抄紙用内添剤は、A
m M(OR)n−m (Aはアミノ基を少なくとも1
つ有する置換基、Mは金属原子)、若しくはそれからな
る重合体、あるいは共重合体であるために、有機物によ
る可塑性などと、無機物による耐熱性、耐候性、耐水性
などの特性を同時に兼ね備えることが可能となる。
【0036】また、本発明に係る内添紙の抄紙用内添剤
は、Am M(OR)n−m (Aはアミノ基を少なく
とも1つ有する置換基、Mは金属原子)の置換基が官能
基であるアミノ基を有しているために、その極性がカチ
オン性となり、アニオン性基であるカルボキシル基を導
入したパルプ繊維へ選択的に結合が生じ、高い定着性を
示す。
【0037】また、本発明に係る抄紙用内添剤は、Am
M(OR)n−m (Aはアミノ基を少なくとも1つ
有する置換基、Mは金属原子)又は該有機金属化合物の
重合体と、Bm M(OR)n−m (Bはビニル基、
エポキシ基、アルキル基を少なくとも1つ有する置換
基、Mは金属原子)又は該有機金属化合物からなる重合
体との共重合体であるために、それらを高定着させた紙
は有機物による可塑性などと、無機物による耐熱性、耐
候性、耐水性などの特性を同時に兼ね備えることが可能
となる。
【0038】本発明に係る内添紙の抄紙用内添剤とし
て、Am M(OR)n−m (Aはアミノ基を少なく
とも1つ有する置換基、Mは金属原子)を使用すると、
その極性がカチオン性となり、アニオン性基であるカル
ボキシル基を導入したパルプ繊維へ選択的に結合が生
じ、高い定着性を示すと考えられる。
【0039】さらに併用されるBm M(OR)n−m
(Bはビニル基、エポキシ基、アルキル基を少なくと
も1つ有する置換基、Mは金属原子)で、それらを高定
着させた紙は、各種機能、特に高度の耐水性を保持する
ことが可能となる。
【0040】本発明に係る内添紙および紙容器は、これ
らの抄紙用内添剤を抄紙工程中に内添し作製しているこ
とから、紙全層からの機能化が生じ紙の表面と端面から
の浸水に強い耐水性および容器としての保形性を有す
る。
【0041】
【実施例】以下、本発明の実施例について詳細に説明す
るが本発明は実施例に記載の材料に限定されるものでは
ない。
【0042】原料は針葉樹漂白クラフトパルプ(以下N
BKPとする。)をカナダ標準濾水度試験方法で350
csfの叩解度のものを使用した。
【0043】抄紙用内添剤としてはN−(2−アミノエ
チル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(チッ
ソ(株)製、商品名;S320)2.77g(12.2
4mmol)と2−(3,4−エポキシシクロヘキシ
ル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品
名;S530)4.525g(18.36mmol)、
及び0.1N−塩酸10molを混合し約15分間攪拌
した後、イソプロパノールを適量添加し、約15分間攪
拌した。
【0044】<製造例1> 叩解したパルプの水分散ス
ラリー(絶乾パルプ量=50g相当)にTEMPO0.
125g、臭化ナトリウム1.25gを溶解させた水溶
液を加え、パルプの全体に対する濃度が約1.3wt%
になるよう調製した。
【0045】パルプスラリーを冷却し、次亜塩素酸ナト
リウム水溶液(Cl=5%)10mlを添加し、酸化反
応を開始する。反応温度は常に5℃に維持した。反応中
はスラリーのpHが低下するが、0.5N−NaOH水
溶液を逐次添加し、pH10.8付近に調整した。15
分後反応を停止し、十分に水洗後、約1.0wt%の酸
化改質パルプスラリーを得た。
【0046】<製造例2> 叩解したパルプの水分散ス
ラリー(絶乾パルプ量=50g相当)にTEMPO0.
125g、臭化ナトリウム1.25gを溶解させた水溶
液を加え、パルプの全体に対する濃度が約1.3wt%
になるよう調製した。
【0047】パルプスラリーを冷却し、次亜塩素酸ナト
リウム水溶液(Cl=5%)50mlを添加し、酸化反
応を開始する。反応温度は常に5℃に維持した。反応中
はスラリーのpHが低下するが、0.5N−NaOH水
溶液を逐次添加し、pH10.8付近に調整した。60
分後反応を停止し、十分に水洗後、約1.0wt%の酸
化改質パルプスラリーを得た。
【0048】<比較製造例> 同様に、叩解したパルプ
の水分散スラリー(絶乾パルプ量=50g相当)にTE
MPO1.25g、臭化ナトリウム2.5gを溶解させ
た水溶液を加え、パルプの全体に対する濃度が約1.3
wt%になるよう調製した。
【0049】パルプスラリーを冷却し、次亜塩素酸ナト
リウム水溶液(Cl=5%)300mlを添加し、酸化
反応を開始する。室温で反応させ、0.5N−NaOH
水溶液を逐次添加し、pH10.8付近に調整した。こ
の反応をpHの低下が起こらなくなるまで続け、十分に
水洗後、約1.0wt%の酸化改質パルプスラリーを得
た。
【0050】次に、前記製造した本発明に関わる酸化改
質パルプと、前記した抄紙用内添剤を利用した本発明の
紙の実施例を示すが、これらは本発明を限定するもので
はない。
【0051】<実施例1、2> 製造例1から2で調整
した酸化改質パルプスラリーをそのまま、標準型手すき
角型抄紙機で、坪量約80g/m2 の紙を抄紙し、脱
水プレス(35N/cm2 )を5分間行い、ドラム式
乾燥機(表面温度約120℃)で乾燥させ、紙を得た。
【0052】<実施例3、4> 製造例1から2で調整
した酸化改質パルプスラリーに、前記の抄紙用内添剤1
wt%水溶液をSiO2 濃度換算で対絶乾パルプ重量
比10wt%混合し5分間攪拌後、標準型手すき角型抄
紙機で、坪量約80g/m2の内添紙を抄紙し、脱水プ
レス(35N/cm2 )を5分間行い、ドラム式乾燥
機(表面温度約120℃)で乾燥させ、内添紙を得た。
【0053】<比較例1、2> 非改質のNBKP
(N.V.=1.0wt%、叩解度=350csf)水
分散スラリー(比較例1)、比較製造例のパルプスラリ
ー(比較例2)をそのまま、標準型手すき角型抄紙機
で、坪量約80g/m2 の紙を抄紙し、脱水プレス
(35N/cm2 )を5分間行い、ドラム式乾燥機
(表面温度約120℃)で乾燥させ、紙を得た。
【0054】<比較例3、4> 非改質のNBKP
(N.V.=1.0wt%、叩解度=350csf)水
分散スラリー(比較例1)、比較製造例のパルプスラリ
ー(比較例2)に、それぞれ前記の抄紙用内添剤1wt
%水溶液をSiO2 濃度換算で対絶乾パルプ重量比1
0wt%混合し5分間攪拌後、標準型手すき角型抄紙機
で、坪量約80g/m2の内添紙を抄紙し、脱水プレス
(35N/cm2 )を5分間行い、ドラム式乾燥機
(表面温度約120℃)で乾燥させ、内添紙を得た。
【0055】<分析例> 製造法1、2および、比較製
造例、改質前のNBKPにおいて、パルプ中のカルボキ
シル基量をTAPPI TEST METHODS T
237om−93に従い定量した。その結果を表1に示
す。
【0056】
【表1】
【0057】この表から、酸化処理を行うことにより、
パルプ中のカルボキシル基量が増加したことがわかっ
た。
【0058】実施例3、4、及び比較例2の合計4種類
の作製した用紙のSiO2 定着量、及び実施例1から
4、及び比較例1、2の合計8種類の作製した用紙の耐
水性(wet/dry値)、吸水率を測定した。それぞ
れの試験方法とその結果について詳述する。
【0059】各用紙は、各物性評価を行う前に、JIS
−P8111に基づいて20℃−65%RH環境下で2
4時間以上の調湿を行った。
【0060】<試験1>SiO2 定着量 抄紙用内添
剤の紙への定着性を測定するために、実施例2および比
較例2の合計4種類の用紙中のSiO2 の定量分析を
行った。測定は蛍光X線分析法を用いた。詳しい測定方
法を以下に示す。
【0061】各試料を凍結粉砕機(SPEX 6700
Freezer/Mill)を用いて、粉末化した。
粉砕時間は10分間とした。
【0062】次に、ペレット成型機中に粉末化した試料
を1.0g入れ、圧縮(20tf−5min.)し、ペ
レット(φ=40mm)を作製した。成型後、ペレット
中の水分を除去するため、デシケータ中に24時間以上
静置し、蛍光X線分析用試料を作製した。
【0063】前記調製した各種用紙のペレットで、蛍光
X線(リガク製システムス3270)を使用してSiの
定量分析を行った、測定波長はSi−Kaである。結果
を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】表2からも明らかなように、本発明の表面
にカルボキシル基を増加させた酸化改質パルプ繊維は、
ブランクのNBKP(比較例2)と比較し、非常に高い
SiO2 定着量を示した(実施例2)。これは、これ
らの内添剤の定着がパルプ表面のカルボキシル基の量に
影響していることが示唆された。
【0066】また、特にパルプ中のカルボキシル基量が
0.04から0.45mmol/gのところでは、定着
量が急激に増加しており、このあたりで最も効率が良い
ことが示唆された。それ以上のカルボキシル基量になる
と定着量の増加率が低くなった。
【0067】<試験2>耐水性(wet/dry値)
実施例1、2および比較例1、2の合計8種類の用紙の
耐水性を求めるため以下に記す試験を実施した。すなわ
ち、先ず、JIS P8113に基づいてオートグラフ
(島津製作所社製 島津オートグラフAG−500A)
を用いて、乾燥状態(20°C−65%RH)と湿潤状
態(試料片を蒸留水中に1時間浸水)における破断強度
を測定した。
【0068】また、上記より算出した破断応力を用い
て、wet/dry(%)=湿潤紙力/乾燥紙力×10
0で、湿潤破断応力/乾燥破断応力比(wet/dr
y)を算出し、耐水性を評価した。 以上の結果を表3
に示す。
【0069】
【表3】
【0070】<試験3>吸水率 吸水率(%)=浸水前
と浸水後の重量差(g)/浸水前の重量(g)×100
より、各試料の浸水前と浸水後の重量差から、吸水率
(重量増加率)を算出した。各試料片は蒸留水中に1時
間浸水した。 その結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】上記、表3、表4から明らかなように、表
面にカルボキシル基を増加させた酸化改質パルプから作
成した紙は、比較例1と比べて、wet/dry値が高
く、吸水率も低いことから、高い耐水性を示した(実施
例1)。
【0073】また、内添紙においては、定着量の増加に
より比較例1、2のどちらと比べてもwet/dry値
が高く、吸水率も低いことから、高い耐水性を示した
(実施。
【0074】パルプ繊維表面にカルボキシル基を導入す
る事はパルプ繊維自体の結合を強め、紙としての耐水
性、強度が高まる。また、内添剤を添加した際にも非常
に高い定着性を示し、耐水性、強度もさらに向上する。
しかし、過剰に酸化すると、内添剤を添加した際の定着
量は高く、吸水率も低いが、パルプ繊維自体の強度が弱
まり、紙の強度は上がらない。
【0075】次に、前記製造した本発明に関わる酸化改
質パルプと、前記した抄紙用内添剤を利用した本発明の
紙容器の実施例としてパルプモールドを示すが、これら
は本発明を限定するものではなく、前記した本発明の紙
を用いて容器成形したものであっても構わない。
【0076】<実施例5、6> 製造例1から2で調整
した酸化改質パルプスラリーに、前記の抄紙用内添剤1
wt%水溶液をSiO2 濃度換算で対絶乾パルプ重量
比10wt%混合し5分間攪拌後、湿式のパルプモール
ド成形機により、重量15gの紙容器を作成した。
【0077】<比較例5> 非改質のNBKP(N.
V.=1.0wt%、叩解度=350csf)水分散ス
ラリーをそのまま、湿式のパルプモールド成形機によ
り、重量15gの紙容器を作成した。
【0078】<比較例6> 非改質のNBKP(N.
V.=1.0wt%、叩解度=350csf)水分散ス
ラリーに、前記の抄紙用内添剤1wt%水溶液をSiO
2 濃度換算で対絶乾パルプ重量比10wt%混合し5
分間攪拌後、湿式のパルプモールド成形機により、重量
15gの紙容器を作成した。
【0079】<試験4>容器としての耐水強度 実施例
5、6および比較例5、6の紙容器の容器としての耐水
強度を求めるため以下に記す試験を実施した。すなわ
ち、先ず、オートグラフ(島津製作所社製 島津オート
グラフAG−500A)を用いて、乾燥状態(20°C
−65%RH)における定速圧縮試験による座屈時の荷
重を測定した。さらに80℃熱水を紙容器に満たし、3
0分経過後、熱水を捨てて、直ちに同様の定速圧縮試験
を行い、湿潤状態での座屈時の荷重を測定した。結果を
表5に示す。
【0080】
【表5】
【0081】上記、表5から明らかなように、本発明の
紙容器は、比較例6と比べて、湿潤時の強度が高く、湿
潤条件下においても容器としての保形性が維持されてい
る。
【0082】
【発明の効果】本発明の酸化改質パルプ繊維は、パルプ
繊維の形状は殆ど損傷させることなく、パルプ繊維の構
成単位であるセルロース分子の還元末端、またはセルロ
ース骨格におけるピラノース環の第6位が選択的に酸化
され、カルボキシル基に変換された構造を含み、変換さ
れたカルボキシル基が特にパルプ繊維表面に偏在するパ
ルプ繊維である。そのため、効率よく抄紙用内添剤を歩
留まらせることができ、酸化改質されていない標準のパ
ルプと比較し、非常に高い定着量の紙および紙容器を提
供することができる。さらに、この酸化方法では、反応
中のpHが9から12、反応温度が0℃から室温までの
温和な条件で、効率よく改質パルプ繊維を調製すること
が可能である。
【0083】本発明の紙では、パルプ繊維表面にカルボ
キシル基を導入したことによる高い電荷極性から、強固
な水素結合を形成し、通常の紙よりも高い繊維間結合が
生じ、内添剤を使用しなくても従来の湿潤強化紙並みの
強度をもつ、しなやかな紙が作成できた。
【0084】さらに、内添紙および紙容器では、添加し
た抄紙用内添剤のアミノ系有機金属アルコキシドとエポ
キシ系有機金族アルコキシドの混合物、あるいは重合体
を基本として、触媒存在下、水中の加水分解重合反応に
よってその内添紙の耐水性をさらに向上させることが可
能であり、容器としての耐水強度も向上し、液体容器
や、湿潤雰囲気下での使用に耐える耐水容器としても高
い保形性が得られる。
【0085】これらの内添剤は、一般の抄紙用内添剤特
にカチオン性高分子のように、パルプ繊維への吸着サイ
トとしてアミノ系有機金属アルコキシド中のアミノ基が
機能を有し、パルプ中のアニオン性基となるカルボキシ
ル基へ、高い定着性を示す。
【0086】そのため、表面にカルボキシル基を導入し
たパルプ繊維から作成した紙および紙容器では非常に高
い定着性を示し、それにより、さらに耐水性や紙力を向
上させることが可能になり、プラスチック容器代替の可
能性も高まった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西野 敦子 東京都台東区台東1丁目5番1号 凸版印 刷株式会社内 (72)発明者 神永 純一 東京都台東区台東1丁目5番1号 凸版印 刷株式会社内 Fターム(参考) 3E033 AA08 AA10 BA10 4L055 AF09 AF10 AF44 AG38 AH23 AH25 AH50 BD10 FA11 FA19 FA20 GA05 GA47

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】パルプ繊維を酸化処理して、パルプ繊維の
    構成単位であるセルロース分子の還元末端、またはセル
    ロース骨格におけるピラノース環の第6位を選択的に酸
    化し、カルボキシル基に変換された構造を含む改質パル
    プ繊維を含むことを特徴とした紙。
  2. 【請求項2】カルボキシル基に変換された構造が表面に
    偏積したパルプ繊維を含むことを特徴とした請求項1記
    載の紙。
  3. 【請求項3】紙全体のパルプ中のカルボキシル基量X1
    が、改質処理前の木材パルプのカルボキシル基量をX
    0 とした場合、X0 <X1 ≦30X0 の範囲にある
    請求項1または2記載の紙。
  4. 【請求項4】紙全体のパルプ中のカルボキシル基量X1
    が、改質処理前の木材パルプのカルボキシル基量をX
    0 とした場合、X0 <X1 ≦10X0 の範囲にある
    請求項1または2記載の紙。
  5. 【請求項5】改質パルプ繊維に、抄紙用内添剤を添加
    し、抄紙したことを特徴とする請求項1から4何れか記
    載の紙。
  6. 【請求項6】請求項5記載の抄紙用内添剤としてAm
    M(OR)n−m (Aはアミノ基を少なくとも1つ有
    する置換基、Mは金属原子)で示される有機金属化合物
    と、Bm M(OR)n−m (Bはビニル基、エポキ
    シ基、アルキル基を少なくとも1つ有する置換基、Mは
    金属元素)で示される有機金属化合物との混合物、又は
    該有機金属化合物の共重合体からなるものを含むことを
    特徴とする紙。
  7. 【請求項7】請求項6中の金属元素Mが、ケイ素(S
    i)であることを特徴とする請求項6の紙。
  8. 【請求項8】パルプ繊維を酸化処理して、パルプ繊維の
    構成単位であるセルロース分子の還元末端、またはセル
    ロース骨格におけるピラノース環の第6位を選択的に酸
    化し、カルボキシル基に変換された構造を含む改質パル
    プ繊維を含むことを特徴とした紙容器。
  9. 【請求項9】カルボキシル基に変換された構造が表面に
    偏積したパルプ繊維を含むことを特徴とした請求項8記
    載の紙容器。
  10. 【請求項10】紙全体のパルプ中のカルボキシル基量X
    1 が、改質処理前の木材パルプのカルボキシル基量を
    X0 とした場合、X0 <X1 ≦30X0 の範囲にあ
    る請求項7または9記載の紙容器。
  11. 【請求項11】紙全体のパルプ中のカルボキシル基量X
    1 が、改質処理前の木材パルプのカルボキシル基量を
    X0 とした場合、X0 <X1 ≦10X0 の範囲にあ
    る請求項7または9記載の紙容器。
  12. 【請求項12】改質パルプ繊維に、抄紙用内添剤を添加
    し、抄紙したことを特徴とする請求項8から11何れか
    に記載の紙容器。
  13. 【請求項13】請求項12記載の抄紙用内添剤としてA
    m M(OR)n−m (Aはアミノ基を少なくとも1
    つ有する置換基、Mは金属原子)で示される有機金属化
    合物と、Bm M(OR)n−m (Bはビニル基、エ
    ポキシ基、アルキル基を少なくとも1つ有する置換基、
    Mは金属元素)で示される有機金属化合物との混合物、
    又は該有機金属化合物の共重合体からなるものを含むこ
    とを特徴とする紙容器。
  14. 【請求項14】請求項13中の金属元素Mが、ケイ素
    (Si)であることを特徴とする請求項6の紙容器。
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