JP4359951B2 - 抄紙用内添剤及びその内添紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種機能(耐水性、撥水性、耐油性、撥油性、耐汚染性、耐熱性、高乾燥強度、高湿潤強度等)を向上させる抄紙内添薬剤、及びその内添紙に関するもので、各種包装用紙、建装用紙、具体的には、冷凍食品用やテイクアウト用食品紙トレイ、紙カップ、耐水ダンボール、インスタント食品用紙容器、化粧紙等に使用される機能紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、これまでの環境負荷型技術から環境保全への技術転換が世界中で巻き起こっている。その一つとして、有限な資源である石油由来のプラスチック材料から、天然再生資源であり無尽蔵にある木材セルロースが注目され、例えば、従来、発泡ポリスチレン等の合成樹脂を使用した容器に代わり、紙容器の需要が増してきている。さらに、製紙業界では故紙の再利用が活発に行われること、他の可燃性のゴミと一緒になって、低い燃焼熱から炉を傷めずにサーマルリサイクルによってエネルギーに変換可能であること等の理由からその需要はますます増加する傾向にある。
【0003】
しかし、紙は、プラスチック材料に比べ劣る物性があり、中でも紙はセルロース繊維が水素結合したものである為、繊維間に容易に水が入り込み耐水性が低い課題がある。また耐油性も低い。
【0004】
従来、耐水性や耐油性等の機能を紙に付与する方法として、紙を抄紙・抄造する際に、機能性を付与する薬剤を、パルプ原料に添加(内添)する方法と、抄紙・抄造された紙に含浸(外添)する方法に分けられる。
【0005】
紙に高度の耐水性、耐油性を付与させる方法としては、ポリエチレン(PE)やポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックフィルムをラミネートしたり、前記の含浸(外添)方法では、アクリル樹脂やオレフィン樹脂等を使用するが、これらの場合、紙の端面からの浸水や浸油を生じてしまう欠点を有している。
【0006】
それに対して内添方法では、パルプの構成成分であるセルロース分子のアニオン性基(酸素原子)へイオン的吸着力によって結合する為、セルロース分子の親水基を効率的に封鎖し、且つ全層に渡って容易に改質できる為、外添法で挙げられる耐水性、耐油性の低下は起こらない。しかし、内添薬剤の必須条件として、水に可溶か、或いは分散化可能であり、また、セルロース分子へのアニオン性基にイオン的に吸着できるイオン的極性基が必要と考えられる。その極性基が、セルロース分子と同じアニオン性の場合には、硫酸アルミニウム等の金属塩や各種カチオン性分散剤、あるいは高分子量凝集剤等によってセルロース分子に吸着させている。しかし、硫酸アルミニウム等の金属塩が紙中に含まれていると、経時的に、セルロース繊維を侵食したり、その他の薬剤に関しても、条件検討や作業性の手間が係るので、カチオン性基を有した内添薬剤が、定着量の制御で容易なことからも好ましいと言える。
【0007】
また、硫酸アルミニウム等を内添する酸性抄紙では、故紙の再生利用において、紙の劣化・損傷による強度低下が起こり、また、製紙工程で生じる排水が未処理の場合、河川や橋やダムを腐食させる原因となる為、中性抄紙が環境に配慮した技術として、最近、見直されてきている。
【0008】
耐水性、耐油性、湿潤紙力増強性等を付与する内添薬剤としては、これまで、いくつかの薬剤が提案されている。しかし、耐水性(撥水性、湿潤紙力増強性)と耐油性(撥油性)を兼ね備えた内添薬剤となると数少ない。古くから使用されている内添剤としては、ロジンやアルキルケテンダイマー(AKD)等のサイズ剤、カチオンデンプンやポリアクリルアミド(PAM)等の乾燥紙力増強剤、エポキシ化ポリアミドポリアミンやジアルデヒドデンプン等の湿潤紙力増強剤等が挙げられるが、今後展開が予想される各種用途に対して十分な物性とは言えない。
【0009】
最近では、フッ素系の薬剤や、シリコーン系の薬剤を使用したものがあるが、薬剤が概ね高価で、また本来、水に溶けない薬剤を水に可溶化させる為に、親水基を導入したものがあるが、多くはノニオン性かアニオン性であり、各種歩留まり向上剤や定着剤の併用が必要で、または親水基を導入せずカチオン系界面活性剤等を使用して、水に分散化、或いは乳化したりするが、パルプへの吸着性が低く、定着量の増加に低い限界がある為、高い耐水性や耐油性が望めず、白水中へ薬剤が流出し、公害対策から排水処理における回収操作や設備が必要な場合が多い。
【0010】
例えば、シリコーン、或いはオルガノポリシロキサンを繊維処理剤として使用した従来技術としては、特開昭57−111354号公報のオルガノポリシロキサンと有機重金属(Ti、Ge、Zr)エステル類を非イオン系又はカチオン系界面活性剤によって水に分散化させて、撥水性、柔軟性、防しわ性、伸長回復性を付与させる繊維処理剤や、特開平9―16333号公報のエポキシ基を有するオルガノポリシロキサンとアミノ基を有するオルガノポリシロキサンの混合物を、自己乳化、或いは乳化剤によりエマルジョンにして、帯電防止性、吸湿性、吸汗、柔軟性を付与させる繊維処理剤があるが、紙への含浸剤、又は表面コート剤の用途性が強く、内添薬剤としては、界面活性剤(或いは乳化剤)による分散化方法なので、水に分子レベルで可溶化、又は自己乳化してないので、パルプ繊維へ有効な定着性は考慮されていない。シリコーンに親水基を導入する方法としては、特開平6−302号公報のポリオキシアルキレン変性シリコーンオイルのような泡抑制剤(消泡剤)等があるが、非イオン性の為、内添薬剤としてパルプ繊維には定着しない。
【0011】
また、最近、各種シランカップリング剤を繊維処理剤として使用する例が見られるが、それらの多くは、外添法(含浸法)によるものが多く、内添法によるものは非常に例が少ない。具体的には、特開平10−25692号公報の(メタ)アクリルアミドとジアリルアミン系モノマー、及びエポキシ基を有する含ケイ素化合物を反応させた含ケイ素共重合体や、特開平9−169817号公報のカチオン系水溶性高分子とエポキシ基を有する含ケイ素化合物とを反応させたケイ素含有水溶性高分子をパルプスラリーへ内添させることで、高い填料定着効果と紙力増強効果を同時に発現させるものが報告されている程度である。これらの考案の目的とする所は排水処理に対応した填料定着性と乾燥引張り強度向上であるのに対して、本発明者らは、先に、特開平10−212693号公報等で、各種有機金属アルコキシド、及びその重合体を内添剤として、紙の全層に、且つ有効的にシロキサン架橋構造等の金属酸架橋構造を形成させ各種機能性(特に耐水性、即ち撥水性や湿潤強度向上)を付与させる内添剤及びその内添紙を提案した。
【0012】
内添薬剤で使用されるポリエチレンイミン(PEI)関しては、その強カチオン性高分子の特性から、各種分野で使用されているが、繊維処理剤として使用した従来の技術としては、特開昭58−120879号公報や特開昭59−173378号公報で、直鎖状、或いは分岐状のPEIとアルキレンオキシドを付加反応させたものに、エチレン性不飽和単量体をミハエル付加反応しケン化した両性型高分子化合物を使って、帯電防止性を付与する繊維処理剤にしたり、特開昭58−162682号公報のポリエチレンイミンにモノエポキシ化合物を反応させた反応生成物からなる水分散性接着剤、特開昭60−9995号公報のアニオン性ラテックスとPEI水溶液または多価金属塩水溶液とを混合し、凝集粒子として形成させた強度向上、耐水性、耐熱性、柔軟性を付与する内添薬剤、特開昭63−42997号公報のPEIと澱粉の混合物により高乾燥強度を付与する内添薬剤、特開昭63−282395号公報のPEIとアルキレンオキシドを付加反応させた製紙用サイズ剤等がある。
【0013】
また、特許公開平9−169817号公報では、1級、2級または3級アミノ基又はアンモニウム基を有する水溶性高分子化合物とエポキシ基を有する含ケイ素化合物が結合しているケイ素含有水溶性高分子化合物の特許が公開されているが、本発明の内添薬剤は、2種類の親水基、即ち、第一に各種アミノ基と第二に加水分解し水酸基に変化し得るアルコキシ基の2種類を有したアミノ基含有有機金属アルコキシドを必須成分とした発明であり、それに、エポキシ基含有有機金属アルコキシドやアミノ基とは反応しない機能性の側鎖を有した有機金属アルコキシド、或いは分岐状ポリエチレンイミンや片末端変性シリコーン高分子をハイブリッド化したものである。
【0014】
従来、耐水性、耐油性、湿潤紙力増強性等を付与する内添薬剤としては、これまで、いくつかの薬剤が提案されているが、耐水性(撥水性、湿潤紙力増強性)と耐油性(撥油性)を兼ね備えた内添薬剤となると数が少なく、耐水性と耐油性などに優れた内添薬剤が求められていた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、内添薬剤としてアミノ基含有有機金属アルコキシドとエポキシ基含有金属アルコキシドの反応生成物、及び重合体を水に溶解し加水分解、或いはさらに重合させて、それを内添薬剤をすることで紙中にシロキサン架橋構造等の金属酸架橋構造を形成させた内添紙を基本とし、加えて、各種機能性の側鎖を有した有機金属アルコキシドとハイブリッド化させて耐水性などを向上させたり、強カチオン性基を有した水溶性高分子とのハイブリッド化によってパルプ繊維とイオン的に吸着力が高く湿潤紙力増強化を向上させたり、シリコーン分子をグラフト化させることで、非常に優れた耐水性を付与する内添薬剤を提供することを目的とする。また、抄紙工程中の内添により、外添(含浸)処理では不可能な紙の全層にわたる機能化から、紙の表面と端面からの強い耐水性、耐油性を有した機能紙(内添紙)を提供することを目的とする。さらに、本発明の内添薬剤による抄紙・抄造方法は、塩基性内添薬剤中に触媒として酸水溶液を添加し中性条件下で抄紙・抄造することが可能なことから、中性抄紙に属するもので、環境に負荷がなく、且つ本発明の内添紙中に形成された金属酸架橋構造、特にシロキサン架橋構造は、故紙再生におけるアルカリ加水分解が容易に起こるのでリサイクル可能な内添紙である。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく研究した結果、物理的に非常に強固で耐水性、耐油性のあるシロキサン架橋構造等の有機金属酸架橋構造を紙全層中で有効的に持たせるアミノ系有機金属アルコキシドとエポキシ系有機金属アルコキシドとの反応生成物、及びそれらの重合体を水に溶かして内添薬剤として、さらには、アミノ基やエポキシ基とは反応しない機能性の側鎖を有した各種有機金属アルコキシド、そして、海外では、湿潤紙力増強剤として使用され、国内では、主に排水の凝集処理剤として使用さている分岐状ポリエチレンイミン(BPEI)や撥水性の高いシリコーンでエポキシ基を片末端に有したものを前記有機金属アルコキシドのハイブリッド化体と、水中で、触媒存在下(又は、無触媒でも良い)、加水分解重合させた水溶性内添薬剤を発明し、その内添紙に非常に高い耐水性を与えることが出来た。分岐状ポリエチレンイミンのハイブリッド化体では、その高いカチオン性から、抄紙、或いは抄造の際にパルプ繊維へ定着量の制御が容易であり、高湿潤紙力増強性等の高い耐水性を与えることが出来た。また、片末端エポキシ基含有シリコーンのハイブリッド化体では、シリコーンの特性である撥水性、滑り性、柔軟性、帯電防止性等が付与できる。
【0017】
上記の目的は、以下の発明により達成される。
すなわち、請求項1記載の発明は、少なくとも、
下記一般式1に示される第1級又は第2級、或いは第1級及び第2級の両方のアミノ基を有する有機金属化合物とのアミノ基に、
下記一般式2に示されるエポキシ基を有する有機金属化合物と、
下記一般式3に示される分岐状ポリエチレンイミンと、
下記一般式4に示される片末端エポキシ変性シリコーンとからなり、且つ、
前記一般式1に示される有機金属化合物と前記一般式3に示される分岐状ポリエチレンイミンのアミノ基と、前記一般式2に示されるエポキシ基を有する有機金属化合物と前記一般式4に示される片末端エポキシ変性シリコーンのエポキシ基を付加反応させた
ことを特徴とする抄紙用内添薬剤である。
一般式1
R´mM(OR1)n−m
(但し、式中、R´は少なくとも1個以上の第1級又は第2級、或いは第1級及び第2級の両方のアミノ基を有する置換基、Mはケイ素(Si)、R1は炭素数1〜4の低級アルキル基、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<nである)
一般式2
R´´mM(OR2)n−m
(但し、式中、金属元素Mはケイ素(Si)、R´´はエポキシ基、或いはエポキシシクロヘキシル基を一個有する置換基、Mはケイ素(Si)、R2は炭素数1〜4の低級アルキル基、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<nである)
一般式3
【化3】
(但し、式中、x、y、zは1以上の整数)
一般式4
【化4】
(但し、式中、pは1以上の整数、R4は水素、又はアルキル基を示し、R5は炭素数1以上のアルキル基を示し、R5中の炭素原子とR4が結合して飽和炭素環を形成しても良い。R6、R7は同一、又は相異なって炭素数1以上のアルキル基を示し、Yは直接結合又は酸素原子を示す。)
【0018】
請求項2記載の発明は、前記一般式1で示されるアミノ基を有した有機金属化合物と前記一般式2で示される1個のエポキシ基を有した有機金属化合物と一般式3で示される分岐状ポリエチレンイミン及び/又は一般式4で示される片末端エポキシ変性シリコーンの全アミノ基のモル数と全エポキシ基のモル数の比率が、0.65:1〜2.0:1の範囲であること特徴とする請求項1記載の抄紙用内添薬剤である。
【0019】
請求項3記載の発明は、前記抄紙用内添薬剤が水溶性のアルコール類相溶剤を含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の抄紙用内添薬剤である。
【0020】
請求項4基材の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の抄紙用内添薬剤を内添したことを特徴とする内添紙である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0022】
パルプ繊維は、水に分散化しパルプスラリーとした場合、一般的にアニオン性に帯電していると言われている。それは、晒し過程での水酸基の酸化によって生成したカルボキシシル基や、セルロース骨格に多く含まれる酸素原子の非共有電子対によるものである。その為、内添薬剤がカチオン性を帯びていれば、容易にセルロース繊維へ定着すると考えられる。
【0023】
本発明の内添薬剤は、アミノ系有機金属アルコキシドを必須成分とするものであるが、その理由は2つある。一つは、側鎖に有したカチオン性のアミノ基が、パルプ繊維のアニオン性基に吸着部位として働き、且つ第1の親水基として働く為と、もう一つは、触媒存在下で加水分解させた場合、アルコキシ基部位が水酸基となり、第2の親水基となる為である。従って、アミノ系有機金属アルコキシドには2種類の親水基が存在する。
【0024】
触媒としては酸性触媒が好ましく、無機酸では、硫酸、亜硫酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、塩素酸、次亜塩素酸、過塩素酸、クロム酸、重クロム酸、炭酸、ホウ酸、有機酸としては、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸類、ギ酸、酢酸、酪酸などのカルボン酸類、が例示できる。その中でも、塩酸が好ましい。これらの酸触媒の添加に際しては、本発明の内添薬剤が塩基性を帯びているので、SiO2濃度換算で1.0wt%に調整する際にp.H.が6.5〜7.5位に調整できる添加量が最適である。その際には、酸触媒を予め、水で希釈し水素イオン濃度を下げておくと調整しやすい。しかし、塩酸等の無機酸をカチオン性化合物と混合した場合には、塩を形成し易く、水との混和系では白濁化、或いは沈殿する傾向がある。しかし、本発明の内添薬剤の必須成分であるアミノ系有機金属アルコキシドは、アミノ基が塩になったとしても、第二の親水基であるアルコキシド基の加水分解した水酸基がある為、水溶性が維持され塩析しない効果がある。
【0025】
請求項1記載のアミノ基含有有機金属アルコキシドとしては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、N−トリメトキシプロピル−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルプロピル−N、N、N−トリ−n−ブチルアンモニウムクロライド、又はオクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドなどが例示できる。この中でも、特に高カチオン性でエポキシと反応性の高い2級アミノ基を含み、且つ1級アミノ基も有するN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0026】
また、請求項1記載のエポキシ基含有有機金属アルコキシドとしては、3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランなどが例示できる。この中でも、特にエポキシ基開環反応が起こりやすいエポキシシクロヘキシル基を有する2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好ましい。
【0027】
また、請求項1記載のポリエチレンイミン(PEI)は分岐状ポリエチレンイミン(BPEI)に特定しているが、その理由として、線状PEI(LPEI)は結晶性が高い為、有機溶媒や水に溶け難く、BPEIに比べて合成法が複雑でコストが高いことが挙げられる。また、エポキシ基と付加反応が可能な他のポリアミン類として、ポリ(アリルアミン)(PAAm)やその誘導体、ポリ(ビニルアミン)(PVAm)やその誘導体があるが、1級アミノ基のみ有した構造である為、カチオン性が劣り、エポキシ基との反応性が低く、付加反応させる場合には、塩基性の触媒や加熱時間を必要とするからである。即ち、本発明の内添薬剤の原料であるBPEIは、1級アミノ基の他に2級、3級アミノ基も有している為、カチオン性の高い2級アミノ基とエポキシ基が容易に反応し、さらに、3級アミノ基の触媒効果もあって1級アミノ基もエポキシ基との付加反応が起こり易いと考えられる。
【0028】
また、本発明の内添薬剤の原料となる分岐状ポリエチレンイミン(BPEI)は、エポキシ基と反応させる為、反応性を考慮に入れると水を含まないBPEIが望ましい。BPEIは、現在、工業的に、モノエタノールアミンを触媒存在下、脱水閉環して得られるエチレンイミンを開環重合させている。その為、合成されたBPEIの分子量が大きくなると、BPEIの高カチオン性による水和作用と相加して、脱水が困難になってくる。市販のBPEIで、水をほとんど含まないものは分子量約300〜10,000のものであり、本発明の内添薬剤の合成は、この分子量範囲のもので主に行ったが、外資系企業からは、分子量500万位のものも市販されており、水を含んだ反応系でも、BPEIとエポキシ基の反応は可能であることから、本発明の内添薬剤に関してBPEIの分子量に特に制限はしないが、内添薬剤の製造の簡便性から言うと、水をほとんど含まないものが適していると言える。
【0029】
BPEIをハイブリッド化させる目的としては、その高カチオン性を有するポリマー構造の導入によるパルプ繊維への定着性の向上とBPEI自体の湿潤紙力増強の付与である。さらに、内添薬剤作製の際は、BPEIの高粘性を低下させて反応試剤と混合させやすくする為に、有機溶媒に溶解させると良い。用いる有機溶媒としては、BPEIと片末端エポキシ変性シリコーンを溶解させるものあれば良く特に限定はされないが、内添剤に利用する場合、排水処理を考慮したものが良い。但し、BPEIは高カチオン性の為、溶解可能な溶剤は水やアルコール類、アセトン類が一般的と言える。本発明の内添薬剤の作製に際しては、エポキシ基と反応し難い第3アルコールであるイソプロパノールにBPEIを溶解させて片末端エポキシ変性シリコーンと反応させた。
【0030】
また、請求項1記載の一般式4の片末端エポキシ変性シリコーンは、その分子構造の末端にエポキシ基を一つ有している為、請求項1記載のアミノ系有機金属アルコキシドと請求項4記載のBPEIの1級、或いは2級アミノ基に開環付加反応してグラフト化を起こすことによって、その内添薬剤による内添紙に、シリコーンの特性である撥水性を主に、滑り性や柔軟性、帯電防止性等を付与させることが可能である。本発明の内添薬剤の原料となる片末端エポキシ変性シリコーンの平均分子量は、通常500〜10,000位で、標準としては1,000〜5,000が好適である。それは、片末端エポキシ変性シリコーンの平均分子量が大き過ぎると、シリコーン特性が十分に発現せず、また平均分子量が大き過ぎると、水に対する溶解性が低くなって、パルプ繊維への定着性が下がる為である。
【0031】
また、請求項1記載のアミノ系有機金属アルコキシドおよび分岐状ポリエチレンイミンとエポキシ系有機金属アルコキシドおよび片末端エポキシ変性シリコーンの配合比は、アミノ基のモル数とエポキシ基のモル数がほぼ等しい混合比率の範囲が理想的である。なぜなら、アミノ系有機金属アルコキシドやBPEIの第1級、第2級アミノ基は、親水性が高く、そのままだと内添紙の耐水性の発現効果を低減させてしまう為、エポキシ基との付加反応させた方が好ましいからであり、この場合、アミノ基でも1級アミノ基は、2つの活性水素を有しているが、2級アミノ基よりも反応性が低く、1つの活性水素とエポキシ基が反応すると、立体的にもう一つの活性水素は反応し難くなる為、アミノ基のモル数として総括した。但し、アミノ基やエポキシ基と反応しない機能性の各種側鎖を有する有機金属化合物を添加する場合には、無関係であるが、内添薬剤として物性を考慮した組成比であることが望ましい。
【0032】
以上のように、本発明の内添薬剤は、アミノ系有機金属アルコキシドとエポキシ系有機金属アルコキシドのアミノ基とエポキシ基の開環付加反応によるハイブリッド化とアルコキシド基の加水分解−縮合によるハイブリッド化を基本にして、アミノ系有機金属アルコキシドのアミノ基を、パルプ繊維への吸着サイトとしている。また、金属アルコキシド構造を含まないものとのハイブリッド化としては、分岐状ポリエチレンイミン(BPEI)が反応性の高い2級アミノ基を有している為、エポキシ系金属アルコキシドのエポキシ基と開環付加反応によるハイブリッド化が可能であり、それによって、本発明の内添薬剤は、パルプ繊維のさらに高い定着性と湿潤紙力効果を追加することが出来る。また、片末端エポキシ変性シリコーンも、含有するエポキシ基と、アミノ系金属アルコキシドや分岐状ポリエチレンイミン(BPEI)等のアミノ基と開環付加反応によりハイブリッド化が可能で、本発明の内添薬剤に、シリコーンの優れた特性である撥水性、滑り性、柔軟性、帯電防止性を追加することが出来る。
【0033】
請求項3記載の事項として、本発明の請求項1及び請求項2記載の内添薬剤の調整の際、触媒存在下(又は、無触媒でも良い)、アルコキシ基の部分で加水分解重合させる際に、ゲル化抑制安定剤、或いは相溶剤として添加する水溶性のアルコール類としては、水と各種有機金属アルコキシド、及びBPEI、片末端エポキシ変性シリコーンを溶解するものであってアミノ基やエポキシ基と反応しないものが良い。特に、i−プロパノールは、第3アルコールで反応性は低く、溶解性も優れているので好適である。
【0034】
このように、本発明の内添薬剤、及びその内添紙は、アミノ基含有有機金属アルコキシドとエポキシ基含有有機金属アルコキシドを主体とした反応生成物、或いは加水分解重合体であることを特徴とする水溶性の内添薬剤、及び内添紙であり、このような有機金属アルコキシドの各種ハイブリッド体を内添薬剤とした技術、及び内添紙は、従来、存在しなかった部類のものであり画期的な内添薬剤、及びその内添紙と言える。
【0035】
本発明の内添薬剤は、ケイ素(Si)系の有機金属アルコキシドを用いており、本発明の内添薬剤の主体となる組成であるが、内添紙中のシロキサン架橋構造は、故紙としての再生利用において、アルカリ加水分解によって容易に切断できる為、リサイクル可能である利点も有している。
【0036】
本発明で使用するパルプは、針葉樹、又は広葉樹、さらにはワラのような植物性パルプでも良く、漂白又は未漂白状態の亜硫酸パルプ又はクラフトパルプ、砕木パルプ、故紙、熱機械パルプ(TMP)又は化学熱機械パルプ(CTMP)等を単独に、或いは2種類以上併せて用いる。
【0037】
本発明の機能紙は、前記の同じく本発明の内添薬剤をパルプスラリー中に内添し、抄紙・抄造、プレス工程、ヤンキードライヤー乾燥を経て作製したものである。紙の坪量は、特に制限はないが、30〜200g/m2位の紙から、600g/m2位の厚紙でも可能と考えられる。
【0038】
【実施例】
次に本発明の実施例に基づき、さらに具体的に説明する。
【0039】
<製造例1>(参考例)
N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名;S320)2.77g(12.24mmol)と2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名;S530)4.525g(18.36mmol)、及び0.1N−塩酸10molを混合し約15分間攪拌した後、イソプロパノールを適量添加し、約15分間攪拌した。これに、0.1N−塩酸を用いてSiO2濃度に換算した場合に1.0wt%溶液になるように希釈し、抄紙用内添薬剤とした。
【0040】
<製造例2>(参考例)
N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名;S320)2.77g(12.24mmol)と2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名;S530)2.26g(9.18mmol)、及びヘキシルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名;HTS−M)2.88g(9.18mmol)と0.1N−塩酸10molを混合し約15分間攪拌した後、イソプロパノールを適量添加し、約15分間攪拌した。以下の手順は、製造例1と同様に作製した。
【0041】
<製造例3>(参考例)
N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名;S320)1.38g(6.12mmol)と2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名;S530)4.525g(9.18mmol)、及びBPEI(日本触媒(株)(株)製、商品名;エポミンSP−200、分子量;約10,000)のN.V.=20wt%のイソプロパノール溶液を1.876g[正味0.375g](1級と2級のアミノ基のモル数=0.085mmol)を混合し、約80℃の油浴で10分間攪拌した。次に、0.1N−塩酸10molを混合し約15分間攪拌した後、イソプロパノールを適量添加し、約15分間攪拌した。以下の手順は、製造例1と同様に作製した。
【0042】
<製造例4>(参考例)
N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名;S320)2.77g(12.24mmol)と2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名;S530)2.26g(9.18mmol)、及び片末端エポキシ変性シリコーン(チッソ(株)製、商品名;FM−0511、平均分子量;約1,000)を1g(1.0mmol)を混合し、約80℃の油浴で10分間攪拌した。次に、0.1N−塩酸10molを混合し約15分間攪拌した後、イソプロパノールを適量添加し、約15分間攪拌した。以下の手順は、製造例1と同様に作製した。
【0043】
<製造例5>
N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名;S320)2.77g(12.24mmol)と2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名;S530)4.525g(18.36mmol)、及び片末端エポキシ変性シリコーン(チッソ(株)製、商品名;FM−0511、平均分子量;約1,000)を1g(1.0mmol)、さらにBPEI(日本触媒(株)製、商品名;エポミンSP−200、分子量;約10,000)のN.V.=20wt%のイソプロパノール溶液を1.876g[正味0.375g](1級と2級のアミノ基のモル数=0.085mmol)を混合し、約80℃の油浴で10分間攪拌した。次に、0.1N−塩酸10molを混合し約15分間攪拌した後、イソプロパノールを適量添加し、約15分間攪拌した。以下の手順は、製造例1と同様に作製した。
【0044】
次に、本発明の内添薬剤による内添紙の実施例を示す。
【0045】
原料パルプは、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)抄紙用原料を、JIS−P8209『パルプ試験用手漉き紙調整方法』に準拠して離解し、JIS−P8121『パルプのろ水度試験方法』に準拠したカナダ標準ろ水度試験方法で350ccの叩解度のものを水で希釈して、0.4wt%濃度のパルプスラリーを調整した。これを使用して、以下に示す実施例、比較例で各内添紙を作製した。
【0046】
<実施例1>(参考例)
製造例1で調整した本発明の内添薬剤1wt%水溶液を、適用例で調整した0.4wt%のパルプスラリーに、SiO2濃度換算で対絶乾パルプ重量比で1wt%(固形分換算では約4wt%)混合し5分間攪拌後、標準型手漉き角型抄紙機で、坪量約60g/m2の内添紙を抄紙し、脱水プレス(3.5kgf/cm2)を5分間行い、ヤンキードライヤー(表面温度=約120℃)で乾燥させ内添紙を得た。
【0047】
<実施例2>(参考例)
製造例2で調整した本発明の内添薬剤1wt%水溶液を、適用例で調整した0.4wt%のパルプスラリーに、SiO2濃度換算で対絶乾パルプ重量比で1wt%(固形分換算では約4wt%)混合し5分間攪拌後、実施例1と同様の手順により内添紙を作製した。
【0048】
<実施例3>(参考例)
製造例3で調整した本発明の内添薬剤1wt%水溶液を、適用例で調整した0.4wt%のパルプスラリーに、SiO2濃度換算で対絶乾パルプ重量比で1wt%(固形分換算では約4wt%)混合し5分間攪拌後、実施例1と同様の手順により内添紙を作製した。
【0049】
<実施例4>(参考例)
製造例4で調整した本発明の内添薬剤1wt%水溶液を、適用例で調整した0.4wt%のパルプスラリーに、SiO2濃度換算で対絶乾パルプ重量比で1wt%(固形分換算では約4wt%)混合し5分間攪拌後、実施例1と同様の手順により内添紙を作製した。
【0050】
<実施例5>
製造例5で調整した本発明の内添薬剤1wt%水溶液を、適用例で調整した0.4wt%のパルプスラリーに、SiO2濃度換算で対絶乾パルプ重量比で1wt%(固形分換算では約4wt%)混合し5分間攪拌後、実施例1と同様の手順により内添紙を作製した。
【0051】
<比較例1>
比較例1としては、何も内添してない無添加紙を、同じ坪量で作製した。
【0052】
<比較例2>(市販薬剤による酸性サイズ紙)
適用例で調整した0.4wt%のパルプスラリーに、市販酸性サイズ剤(ハリマ化成(株)製、商品名;ハーサイズL−750)のN.V.=1.0wt%水溶液を対絶乾パルプ重量比で1wt%混合し、次いで市販乾燥紙力増強剤(ハリマ化成(株)製、商品名;ハーマイドC−10)のN.V.=1.0wt%水溶液を対絶乾パルプ重量比で同じく1wt%混合し、さらに硫酸アルミニウムのN.V.=1.0wt%水溶液を対絶乾パルプ重量比で4wt%混合しの5分間攪拌後、標準型手漉き角型抄紙機で、坪量約60g/m2の内添紙を抄紙し、脱水プレス(3.5kgf/cm2)を5分間行い、ヤンキードライヤー(表面温度=約120℃)で乾燥させ内添紙を得た。
【0053】
<比較例3>(市販薬剤による湿潤強化紙)
適用例で調整した0.4wt%のパルプスラリーに、市販紙力増強剤(ハリマ化成(株)製、商品名;ハーマイドPY−410)のN.V.=1.0wt%水溶液を対絶乾パルプ重量比で1wt%混合し、適用例で調整した0.4wt%のパルプスラリーに、固形分換算で対絶乾パルプ重量比で1wt%混合し5分間攪拌後、比較例1と同様の手順により内添紙を作製した。
【0054】
各内添紙は、各物性評価を行う前に、JIS‐P8111に基づいて、20℃−65%RH環境下で24時間以上調湿を行った。
【0055】
<試験例−1>
各内添紙の耐水性を評価する目的として、吸水率を測定した。測定方法は、各内添紙を50×50mmの形状に裁断し、蒸留水へ1時間浸水させ、浸水前の重量と浸水後の重量差により、吸水率(含水重量率)を算出した。その結果を表−1に示す。
吸水率(%)=(浸水前と後の重量差(g)/浸水前の重量(g))×100
【0056】
【表1】
【0057】
前記表1の結果より、本発明の内添薬剤による内添紙は、比較例1の何も内添されていない原紙や比較例3の市販湿潤強化薬剤による内添紙に比べて非常に低い吸水率であることが判った。また、比較例2の市販酸性サイズ薬剤による内添紙は、サイズ剤の撥水性効果により、低吸水率であったが、後述で示すように湿潤紙力性が低くwet/dryが低い欠点を有し、且つ実施例4、5の本発明の内添薬剤による内添紙の方が低い吸水率であり、本発明の内添薬剤の低吸水性の効果、及びその内添紙の高耐水性を確認した。
【0058】
<試験例−2>
次に、各内添紙を、JIS−P8113に基づいて、オートグラフ(島津製作所(株)製、島津オートグラフAG−500A)を使用して、乾燥状態(20℃−65%RH)と湿潤状態(試験片を蒸留水中へ1時間浸水)における各々の破断強度を測定して、湿潤破断強度/乾燥破断強度(wet/dry)を算出し、耐水性を評価した。評価結果を表2に示す。
wet/dry(%)
=(湿潤破断強度(kgf)/乾燥破断強度(kgf))×100
【0059】
【表2】
【0060】
上記、表2の結果から、本発明の内添薬剤による内添紙は、比較例1の何も内添されていない原紙や比較例2の市販酸性サイズ剤による内添紙に比べて非常に高い湿潤強度とwet/dryであることが判った。また、比較例3の市販湿潤紙力剤による内添紙は、やはり、高い湿潤強度とwet/dryであったが、前述のように吸水性が高い欠点を有し、且つ実施例2,5の本発明の内添薬剤による内添紙の方が高い湿潤強度とwet/dryであり、本発明の内添薬剤の効果、及びその内添紙の高耐水性を確認した。
【0061】
<試験例−3>
次に、本発明の各種内添薬剤の紙への定着性を測定する為に、各内添紙中のSiO2の定量分析を行った。詳細な測定方法を以下に示す。
【0062】
各内添紙サンプルを、凍結粉砕機(サンプルミルSK−500型、協立理工(株)製)で粉末化した。粉砕時間は10分間とした。
【0063】
次に、ペレット成形機(MAEKAWA.TESTING.MACHINE.MFG.CO.,LTD)中に粉末化した各内添紙サンプルを1.0g入れ、圧縮(20tf−5分間)し、ペレット(Φ=40mm)を作製した。
成形後、ペレット中の水分を除去する為に、デシケータ中に24時間以上静置し、蛍光X線分析用試料を作製した。
【0064】
前記作製した各内添紙のペレットで、蛍光X線装置(リガク製システム3270)を使用してSiO2の定量分析を行った。測定波長はSi‐Kαである。測定結果を表3に示す。
【0065】
前記作製した各内添紙ペレットの蛍光X線測定の前に、無内添紙のペレットへ各SiO2濃度の内添薬剤を染み込ませた試料のX線強度から検量線を作製し、それに基づき、SiO2定着量を算出した。
【0066】
【表3】
【0067】
上記、表3の結果から、本発明の内添薬剤に内添紙中には、ほぼ内添量と同重量%濃度のSiO2が含まれていることを確認し、パルプ繊維への高い定着性を確認した。
【0068】
以上のように、本発明の内添薬剤により、パルプ繊維への高い定着性を付与し、且つその内添紙は、従来の酸性サイズ剤や湿潤紙力増強剤による内添紙に比べて、総括的な耐水性(低吸水性、高湿潤紙力性)を有している。
【0069】
【発明の効果】
本発明の水溶性の内添薬剤は、内添紙全層中で、非常に結合力が強いシロキサン三次元架橋構造に代表される金属酸架橋構造を形成し、耐水性や耐油性等に優れた本発明の内添紙を提供する。また、本発明の内添薬剤は、アミノ系有機金属アルコキシドとエポキシ系有機金属アルコキシドのアミノ基とエポキシ基の開環付加反応による生成物、或いは重合体を基本として、その内添紙の耐水性や耐油性をさらに向上させることが可能である。これらの本発明の内添薬剤の場合には、パルプ繊維の吸着サイトとして、アミノ系有機金属アルコキシド中のアミノ基が機能を示し、高い定着性を示す。金属アルコキシド構造を含まないものとのハイブリッド化として、分岐状ポリエチレンイミン(BPEI)が反応性の高い2級アミノ基を有している為、エポキシ系有機金属アルコキシドのエポキシ基と開環付加反応によるハイブリッド化が可能であり、それによって、本発明の内添薬剤は、パルプ繊維へさらに高い定着性と湿潤紙力効果を追加することが出来る。また、片末端エポキシ変性シリコーンも、含有するエポキシ基と、アミノ系有機金属アルコキシドや分岐状ポリエチレンイミン(BPEI)等のアミノ基と開環付加反応によりハイブリッド化が可能で、本発明の内添薬剤に、シリコーンの優れた特性である撥水性、滑り性、柔軟性、帯電防止性を追加することが出来る。
【0070】
このように、本発明の内添薬剤による内添紙は、従来の内添薬剤による内添紙には見受けられない総括的な耐水性(低吸水性、高湿潤強度)や耐油性を有し、作業も簡便であり、紙全層からの機能化から、紙表面と端面からの浸水や浸油に非常に強い。本発明の内添薬剤、及びその内添紙は、アミノ基含有有機金属アルコキシドとエポキシ基含有有機金属アルコキシドの反応生成物、及び重合体を主体とした水溶性の内添薬剤、及び内添紙であり、有機金属アルコキシドを内添薬剤とした技術、及び内添紙は、従来、存在しなかった部類のものであり画期的な内添薬剤、及びその内添紙と言える。
【0071】
また、本発明の内添薬剤の原料に代表されるシランカップリング剤による本発明の内添紙は、紙全層中にシロキサン三次元架橋構造を有しているが、故紙再生においてはアルカリ加水分解処理によって容易に切断できるので、リサイクル可能な機能紙であり、本発明の内添薬剤は、塩基性内添薬剤中に希酸触媒を添加し中性条件下で抄紙・抄造することが可能であることから中性抄紙に属するもので、環境に負荷を与えない。
【0072】
さらに、本発明の内添薬剤は、パルプへの高い定着性から、製紙生産で生じる白水中への薬剤流出が非常に少なく、排水処理が容易である。
【0073】
従って、本発明の内添薬剤、及びその内添紙は、高い耐水性や耐油性等が要求される包装用紙、建装用紙、具体的には、冷凍食品用やテイクアウト用食品トレイ、紙カップ、耐水ダンボール、インスタント食品用容器、化粧紙等に使用が可能である。
Claims (4)
- 少なくとも、
下記一般式1に示される第1級又は第2級、或いは第1級及び第2級の両方のアミノ基を有する有機金属化合物とのアミノ基に、
下記一般式2に示されるエポキシ基を有する有機金属化合物と、
下記一般式3に示される分岐状ポリエチレンイミンと、
下記一般式4に示される片末端エポキシ変性シリコーンとからなり、且つ、
前記一般式1に示される有機金属化合物と前記一般式3に示される分岐状ポリエチレンイミンのアミノ基と、前記一般式2に示されるエポキシ基を有する有機金属化合物と前記一般式4に示される片末端エポキシ変性シリコーンのエポキシ基を付加反応させた
ことを特徴とする抄紙用内添薬剤。
一般式1
R´mM(OR1)n−m
(但し、式中、R´は少なくとも1個以上の第1級又は第2級、或いは第1級及び第2級の両方のアミノ基を有する置換基、Mはケイ素(Si)、R1は炭素数1〜4の低級アルキル基、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<nである)
一般式2
R´´mM(OR2)n−m
(但し、式中、金属元素Mはケイ素(Si)、R´´はエポキシ基、或いはエポキシシクロヘキシル基を一個有する置換基、Mはケイ素(Si)、R2は炭素数1〜4の低級アルキル基、nは金属元素の酸化数、置換数mは0<m<nである)
一般式3
一般式4
- 前記一般式1で示されるアミノ基を有した有機金属化合物と前記一般式2で示される1個のエポキシ基を有した有機金属化合物と一般式3で示される分岐状ポリエチレンイミン及び/又は一般式4で示される片末端エポキシ変性シリコーンの全アミノ基のモル数と全エポキシ基のモル数の比率が、0.65:1〜2.0:1の範囲であること特徴とする請求項1記載の抄紙用内添薬剤。
- 前記抄紙用内添薬剤が水溶性のアルコール類相溶剤を含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の抄紙用内添薬剤。
- 請求項1乃至3の何れかに記載の抄紙用内添薬剤を内添したことを特徴とする内添紙。
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