JP2001321880A - 内歯鍛造品の製造方法 - Google Patents

内歯鍛造品の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 筒状部の口開き等の変形を抑制して歯形形状
精度を向上させることができる,冷間鍛造を用いた内歯
鍛造品の製造方法を提供すること。 【解決手段】 筒状部2を有し,筒状部2の内面に凹凸
形状を有する歯形面を設けてなる内歯鍛造品を製造する
方法において,予め形成した筒状部2に冷間鍛造を施す
ことにより,筒状部2の内面に歯形面を成形すると共に
筒状部2にしごき加工を加え,かつ,しごき加工は,軸
方向においてしごき量が変化するように行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,スプライン等の歯形面を内面に
形成した筒状部を有する内歯鍛造品の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来技術】例えば自動車部品のシーブプライマリーシ
ャフトなどにおいては,動力伝達等のために筒状部の内
面にスプライン等の歯形面が形成されている場合があ
る。筒状部の内面に歯形面を形成する方法としては,機
械加工である歯切り加工,あるいは冷間鍛造により行う
のが一般的である。
【0003】上記機械加工(歯切り加工)により上記歯
形面を設ける場合において,筒状部に底部あるいは鍔部
等がある場合などには,機械加工性の観点から,上記筒
状部を予め分離して単独で加工し,その後底部あるいは
鍔部等と接合する必要がある。これに対し,上記冷間鍛
造の場合には,筒状部に底部等を有する場合であって
も,最初から一体的に成形することができ,強度向上,
溶接工程の削除等のメリットを得ることができる。
【0004】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の冷
間鍛造を用いた製造方法においては,次の問題がある。
即ち,上記筒状部に歯形面を形成する冷間鍛造を施した
場合には,筒状部が開口部側に向かって拡径する口開き
形状に変形する傾向にあり,これにより所望の歯形形状
が得られない場合がある。
【0005】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてな
されたもので,筒状部の口開き等の変形を抑制して歯形
形状精度を向上させることができる,冷間鍛造を用いた
内歯鍛造品の製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,筒状部を有し,
該筒状部の内面に凹凸形状を有する歯形面を設けてなる
内歯鍛造品を製造する方法において,予め形成した筒状
部に冷間鍛造を施すことにより,該筒状部の内面に歯形
面を成形すると共に上記筒状部にしごき加工を加え,か
つ,該しごき加工は,軸方向においてしごき量が変化す
るように行うことを特徴とする内歯鍛造品の製造方法に
ある。
【0007】本発明において最も注目すべきことは,上
記冷間鍛造時において,筒状部の内面に歯形面を成形す
ると共に上記筒状部にしごき加工を加え,かつ,該しご
き加工は,軸方向においてしごき量が積極的に変化する
ように行うことである。
【0008】なお,冷間鍛造においては,金型からの製
品の離型性を向上すべく,抜き勾配を金型に設ける場合
があり,これにより,軸方向において若干しごき量が異
なるしごき加工がなされることがある。本発明では,こ
のような抜き勾配等による型設計上不可欠なしごき量の
変化を超えた積極的なしごき量の変化が得られるように
上記しごき加工を行う。
【0009】次に,本発明の作用効果につき説明する。
本発明においては,上記冷間鍛造時において,筒状部の
内面に歯形面を形成すると共に,筒状部にしごき加工を
加える。そして,そのしごき加工においては,筒状部の
軸方向においてしごき量が積極的に変化するように行
う。例えば後述するように,開口部側のしごき量を基端
部側のしごき量よりも多くする,或いは,部分的にしご
き量の多い部分,少ない部分を設定する。
【0010】これにより,筒状部に作用する荷重,加工
度,内部の材料流動等を軸方向において変化させること
ができる。この加工度等の変化を利用することにより,
従来の単純な冷間鍛造の場合に生じるような変形を抑制
することが可能となる。そして,このような変形の抑制
によって,歯形面の歯形形状自体も所望の形状に成形す
ることができる。
【0011】次に,請求項2の発明のように,上記しご
き加工は,上記筒状部の開口部側が基端部側よりもしご
き量が多くなるように行うことが好ましい。この場合に
は,筒状部における開口部側の加工度を高くすることが
でき,開口部側が口開き傾向となる現象を抑制できる。
【0012】また,請求項3の発明のように,上記冷間
鍛造を行う際に用いる金型は,上記筒状部の外周面に当
接する外周加工部に,上記筒状部の開口部側に対応する
奥部側から上記筒状部の基端部側に対応する先端側に向
けて徐々に拡径するように抜き勾配以上に傾斜させた金
型テーパ部を有することが好ましい。この場合には,上
記金型に設けた金型テーパの形状を利用して,しごき加
工時のしごき量を容易に変化させることができる。
【0013】また,請求項4の発明のように,上記金型
の上記外周加工部には,傾斜角度が異なる複数の上記金
型テーパ部を設け,かつ,上記傾斜角度は上記奥部側に
近いほど大きく設けておくことが好ましい。この場合に
は,特に筒状部の開口部側でのしごき量の増加を容易に
図ることができる。
【0014】また,請求項5の発明のように,上記冷間
鍛造前の上記筒状部の内面には,基端部側から開口部側
に向けて徐々に縮径するように傾斜した材料テーパ部を
設けることが好ましい。この場合には,上記筒状部,す
なわち加工する材料自体に設けた上記材料テーパ部を利
用して,しごき加工時のしごき量を容易に変化させるこ
とができる。
【0015】また,請求項6の発明のように,上記冷間
鍛造前の上記筒状部の内面には,傾斜角度が異なる複数
の上記材料テーパ部を設けることが好ましい。この場合
には,複数の材料テーパ部を利用して,しごき量の変化
量をさらに細かく調整することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】実施形態例1 本発明の実施形態例にかかる内歯鍛造品の製造方法につ
き,図1,図2を用いて説明する。本例において製造す
る内歯鍛造品1は,図2に示すごとく,筒状部2を有
し,該筒状部2の内面に凹凸形状を有する歯形面20を
設けてなる。筒状部2には,その基端側に延設した軸部
15と円盤状の鍔部16を設けた。
【0017】この内歯鍛造品1を製造するに当たり,素
材に熱間鍛造等を施して予め筒状部2を形成し,この筒
状部2に冷間鍛造を施す。このとき,筒状部2の内面に
歯形面20を成形すると同時に筒状部2にしごき加工を
加え,かつ,該しごき加工は,軸方向においてしごき量
が変化するように行う。
【0018】本例では,図1に示すごとく,冷間鍛造を
行う際に用いる金型7は,上記筒状部2の外周面25に
当接する外周加工部71に,筒状部2の開口部側に対応
する奥部側から筒状部2の基端部側に対応する先端側に
向けて徐々に拡径するように抜き勾配以上に傾斜させた
金型テーパ部711,712を有する。2つの金型テー
パ部711,712は,傾斜角度が異なり,奥部側に近
いほど傾斜角度を大きく設けてある。
【0019】また,金型7には,歯形面20を形成する
ための歯形加工部72を上記外周加工部71の中心部に
進退可能に配設した。一方,本例における冷間鍛造前の
中間材100における筒状部2の内周面26及び外周面
25は,図1に示すごとく,抜き勾配以上の傾斜を設け
ず,離型方向に略平行に設けた。
【0020】そして,図1に示すごとく,冷間鍛造工程
においては,まず歯形加工部72を外形加工部71内に
後退させた状態で金型7の前進を開始し,次いで,上記
歯形加工部72を前進させ,最終的に両者を前進させ
る。これにより,筒状部2に対する加工は,まず外周加
工部71によって筒状部2の開口部側に外周面からしご
き加工が加えられ,次いで,上記歯形加工部72によっ
て内周面の歯形面20が形成され,さらに外周側からし
ごき加工が加えられる。
【0021】このような冷間鍛造工程におけるしごき加
工は,上記金型7の外周加工部71に設けた金型テーパ
部711,712によって軸方向においてしごき量が積
極的に変化するように行われる。即ち,傾斜角度が小さ
い金型テーパ面711に最終的に接する筒状部2の基端
側においては,開口端に向かって徐々にしごき量が大き
くなり,さらに金型テーパ面712に最終的に接する筒
状部の開口側部分はさらに大きな変化率でしごき量が大
きくなる。
【0022】これにより,従来なら口開き傾向になる開
口部側にいくにつれて大きなしごき加工がなされ,これ
により,口開き等の変形を抑制することができる。そし
て,このような変形の抑制によって,歯形面20の歯形
形状自体も精度よく所望の形状に成形することができ
る。
【0023】実施形態例2 本例は,図3に示すごとく,実施形態例1における冷間
鍛造前の中間材100筒状部2の形状を変更した例であ
る。即ち,同図に示すごとく,冷間鍛造前の上記筒状部
2の内面には,基端部側から開口部側に向けて徐々に縮
径するように傾斜した材料テーパ部27を設けた。また
これにより,材料テーパ部27よりも開口部側には小径
部28を形成した。その他は実施形態例1と同様であ
る。
【0024】この場合には,冷間鍛造前の筒状部2の内
面に設けた上記材料テーパ部27と小径部28の存在に
より,実施形態例1の場合よりもさらに適切なしごき量
の変化を得ることができる。これにより,より一層,口
開き等の変形を抑制することができ,歯形面20の形状
精度を向上させることができる。その他は,実施形態例
1と同様の作用効果が得られる。
【0025】なお,本例では,実施形態例1と同様に金
型テーパ部711,712を有する金型7を用いたが,
これを後述する図4に示すごとき,金型テーパ部を有し
ていない従来と同様の金型に変えることもできる。この
場合においても,上記材料テーパ部27及び小径部28
の存在によってしごき量の積極的な変化を実現すること
ができ,程度の差はあれ,上記と同様の作用効果を得る
ことができる。
【0026】実施形態例3 本例においては,実施形態例1,2における作用効果を
定量的に評価すべく,比較例と共に,冷間鍛造後の口開
き量の測定を行った。比較例としては,図4に示すごと
く,金型テーパ部を有していない通常の抜き勾配だけを
考慮した加工面970を有する外周加工部971と,実
施形態例1と同様の歯形加工部72とを有する金型97
を用い,実施形態例1と同様の材料テーパ部を設けてい
ない筒状部2を冷間鍛造した。
【0027】そして,実施形態例1,2により得られた
内歯鍛造品(試料E1,E2とする)および比較例によ
り得られた内歯鍛造品(試料C1とする)の冷間鍛造後
の筒状部の内径寸法を軸方向に沿って数点測定した。内
径寸法としては,JIS B1603のインボリュート
スプラインと定義されるBBDの値を用いて評価した。
測定結果を図5〜図7に示す。図5が従来例を示し,図
6が本発明品1の場合を示し,図7が本発明品2の場合
を示す。これらの図は,横軸に筒状部の開口端からの距
離を,縦軸に目的寸法に対する差を変形量として取っ
た。
【0028】これらの図から知られるように,金型形状
を変更してしごき加工を積極的に加えた実施形態例1
(試料E1)の場合は,従来の場合に比べて口開きを大
幅に改善することができ,さらにそれに加えて筒状部の
形状を変更してしごき量を大きくした実施形態例2(試
料E2)においては,口開きが殆どない状態まで改善す
ることができることがわかった。
【0029】実施形態例4 本例では,実施形態例1又は2と同様の製造方法により
製造できる内歯鍛造品の他の例を示す。図8に示す内歯
鍛造品は,内面に凹凸形状を有する歯形面20を設けて
なる筒状部2の下方に,内周面310の径が上記筒状部
2の内径より小さい小径の第2筒状部31を有し,さら
に,これらの境界部分から外方に延設した鍔部32を有
する鍛造品である。
【0030】図9に示す内歯鍛造品は,内面に凹凸形状
を有する歯形面20を設けてなる筒状部2の下方に,底
部33を有する鍛造品である。図10に示す内歯鍛造品
は,内面に凹凸形状を有する歯形面20を設けてなる筒
状部2の下方に,内周面340の径が上記筒状部2の内
径より小さく,外周面341の径が筒状部2の外径より
も大きい鍔部34を有する鍛造品である。
【0031】図11に示す内歯鍛造品は,内面に凹凸形
状を有する歯形面20を設けてなる筒状部2の下方に,
該筒状部2よりも小径の有底の筒部35を有する鍛造品
である。筒部35には鍔部351も設けてある。これら
図9〜図11に示した内歯鍛造品の場合にも,上記実施
形態例1又は2と同様の製造方法を用いることにより,
筒状部2の口開き等の変形を抑制して歯形形状精度を向
上させることができる。
【0032】
【発明の効果】上述のごとく,本発明によれば,筒状部
の口開き等の変形を抑制して歯形形状精度を向上させる
ことができる,冷間鍛造を用いた内歯鍛造品の製造方法
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,冷間鍛造前の筒状部形
状及び金型形状を示す説明図。
【図2】実施形態例1において製造する内歯鍛造品の一
部切り欠き断面斜視図。
【図3】実施形態例2における,冷間鍛造前の筒状部の
形状を示す説明図。
【図4】実施形態例3における,比較例に用いる金型形
状を示す説明図。
【図5】実施形態例3における,試料C1(比較例)の
冷間鍛造後の口開き傾向を示す説明図。
【図6】実施形態例3における,試料E1(実施形態例
1)の冷間鍛造後の口開き傾向を示す説明図。
【図7】実施形態例3における,試料E2(実施形態例
2)の冷間鍛造後の口開き傾向を示す説明図。
【図8】実施形態例4における,本発明において製造可
能な他の形状の内歯鍛造品を示す説明図。
【図9】実施形態例4における,本発明において製造可
能な他の形状の内歯鍛造品を示す説明図。
【図10】実施形態例4における,本発明において製造
可能な他の形状の内歯鍛造品を示す説明図。
【図11】実施形態例4における,本発明において製造
可能な他の形状の内歯鍛造品を示す説明図。
【符号の説明】
1...内歯鍛造品, 100...中間材, 2...筒状部, 20...歯形面, 27...材料テーパ部, 28...小径部, 7...金型, 71...外周加工部, 711,712...金型テーパ部 72...歯形加工部,
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 有馬 達男 千葉県佐倉市大作2−11−2 株式会社ヤ マナカゴーキン内 (72)発明者 角南 不二夫 千葉県佐倉市大作2−11−2 株式会社ヤ マナカゴーキン内 (72)発明者 孫 暁輝 千葉県佐倉市大作2−11−2 株式会社ヤ マナカゴーキン内 Fターム(参考) 4E087 CA14 CB03 EC13 HA08 HA36

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 筒状部を有し,該筒状部の内面に凹凸形
    状を有する歯形面を設けてなる内歯鍛造品を製造する方
    法において,予め形成した筒状部に冷間鍛造を施すこと
    により,該筒状部の内面に歯形面を成形すると共に上記
    筒状部にしごき加工を加え,かつ,該しごき加工は,軸
    方向においてしごき量が変化するように行うことを特徴
    とする内歯鍛造品の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において,上記しごき加工は,
    上記筒状部の開口部側が基端部側よりもしごき量が多く
    なるように行うことを特徴とする内歯鍛造品の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において,上記冷間鍛造
    を行う際に用いる金型は,上記筒状部の外周面に当接す
    る外周加工部に,上記筒状部の開口部側に対応する奥部
    側から上記筒状部の基端部側に対応する先端側に向けて
    徐々に拡径するように抜き勾配以上に傾斜させた金型テ
    ーパ部を有することを特徴とする内歯鍛造品の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 請求項3において,上記金型の上記外周
    加工部には,傾斜角度が異なる複数の上記金型テーパ部
    を設け,かつ,上記傾斜角度は上記奥部側に近いほど大
    きく設けておくことを特徴とする内歯鍛造品の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項において,
    上記冷間鍛造前の上記筒状部の内面には,基端部側から
    開口部側に向けて徐々に縮径するように傾斜した材料テ
    ーパ部を設けることを特徴とする内歯鍛造品の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 請求項5において,上記冷間鍛造前の上
    記筒状部の内面には,傾斜角度が異なる複数の上記材料
    テーパ部を設けることを特徴とする内歯鍛造品の製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008518431A (ja) * 2004-10-25 2008-05-29 オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 電磁放射を放出する半導体構成素子および構成素子ケーシング
JP2008126271A (ja) * 2006-11-21 2008-06-05 Aichi Steel Works Ltd 内歯鍛造品の製造方法
JP2009285690A (ja) * 2008-05-29 2009-12-10 Aisin Aw Co Ltd スプライン鍛造装置及びスプライン鍛造方法

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JP2009285690A (ja) * 2008-05-29 2009-12-10 Aisin Aw Co Ltd スプライン鍛造装置及びスプライン鍛造方法

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