JP4444445B2 - 内歯鍛造品の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は,スプライン等の歯形面を内面に形成した筒状部を有する内歯鍛造品の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
例えば自動車部品のシーブプライマリーシャフトなどにおいては,動力伝達等のために筒状部の内面にスプライン等の歯形面が形成されている場合がある。筒状部の内面に歯形面を形成する方法としては,機械加工である歯切り加工,あるいは冷間鍛造により行うのが一般的である。
【0003】
上記機械加工(歯切り加工)により上記歯形面を設ける場合において,筒状部に底部あるいは鍔部等がある場合などには,機械加工性の観点から,上記筒状部を予め分離して単独で加工し,その後底部あるいは鍔部等と接合する必要がある。
これに対し,上記冷間鍛造の場合には,筒状部に底部等を有する場合であっても,最初から一体的に成形することができ,強度向上,溶接工程の削除等のメリットを得ることができる。
【0004】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来の冷間鍛造を用いた製造方法においては,次の問題がある。
即ち,上記筒状部に歯形面を形成する冷間鍛造を施した場合には,筒状部が開口部側に向かって拡径する口開き形状に変形する傾向にあり,これにより所望の歯形形状が得られない場合がある。
【0005】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,筒状部の口開き等の変形を抑制して歯形形状精度を向上させることができる,冷間鍛造を用いた内歯鍛造品の製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,筒状部を有し,該筒状部の内面に凹凸形状を有する歯形面を設けてなる内歯鍛造品を製造する方法において,
素材に予め上記筒状部を形成し,
その後,該筒状部に冷間鍛造を施すことにより,該筒状部の内面に歯形面を成形すると共に上記筒状部に、抜き勾配以上に傾斜した金型を用いてしごき加工を加え,かつ,該しごき加工は,軸方向において上記筒状部の開口部側が基端部側よりもしごき量が多くなるように行うことを特徴とする内歯鍛造品の製造方法にある。
【0007】
本発明において最も注目すべきことは,上記冷間鍛造時において,筒状部の内面に歯形面を成形すると共に上記筒状部にしごき加工を加え,かつ,該しごき加工は,軸方向においてしごき量が積極的に変化するように行うことである。
【0008】
なお,冷間鍛造においては,金型からの製品の離型性を向上すべく,抜き勾配を金型に設ける場合があり,これにより,軸方向において若干しごき量が異なるしごき加工がなされることがある。本発明では,このような抜き勾配等による型設計上不可欠なしごき量の変化を超えた積極的なしごき量の変化が得られるように上記しごき加工を行う。
【0009】
次に,本発明の作用効果につき説明する。
本発明においては,上記冷間鍛造時において,筒状部の内面に歯形面を形成すると共に,筒状部にしごき加工を加える。そして,そのしごき加工においては,筒状部の軸方向においてしごき量が積極的に変化するように行う。例えば後述するように,開口部側のしごき量を基端部側のしごき量よりも多くする,或いは,部分的にしごき量の多い部分,少ない部分を設定する。
【0010】
これにより,筒状部に作用する荷重,加工度,内部の材料流動等を軸方向において変化させることができる。この加工度等の変化を利用することにより,従来の単純な冷間鍛造の場合に生じるような変形を抑制することが可能となる。そして,このような変形の抑制によって,歯形面の歯形形状自体も所望の形状に成形することができる。
【0011】
記しごき加工は,上記筒状部の開口部側が基端部側よりもしごき量が多くなるように行う。これにより,筒状部における開口部側の加工度を高くすることができ,開口部側が口開き傾向となる現象を抑制できる。
【0012】
また,請求項2の発明のように,上記冷間鍛造を行う際に用いる金型は,上記筒状部の外周面に当接する外周加工部に,上記筒状部の開口部側に対応する奥部側から上記筒状部の基端部側に対応する先端側に向けて徐々に拡径するように抜き勾配以上に傾斜させた金型テーパ部を有することが好ましい。この場合には,上記金型に設けた金型テーパの形状を利用して,しごき加工時のしごき量を容易に変化させることができる。
【0013】
また,請求項3の発明のように,上記金型の上記外周加工部には,傾斜角度が異なる複数の上記金型テーパ部を設け,かつ,上記傾斜角度は上記奥部側に近いほど大きく設けておくことが好ましい。この場合には,特に筒状部の開口部側でのしごき量の増加を容易に図ることができる。
【0014】
また,請求項4の発明のように,上記冷間鍛造前の上記筒状部の内面には,基端部側から開口部側に向けて徐々に縮径するように傾斜した材料テーパ部を設けることが好ましい。この場合には,上記筒状部,すなわち加工する材料自体に設けた上記材料テーパ部を利用して,しごき加工時のしごき量を容易に変化させることができる。
【0015】
また,請求項5の発明のように,上記冷間鍛造前の上記筒状部の内面には,傾斜角度が異なる複数の上記材料テーパ部を設けることが好ましい。この場合には,複数の材料テーパ部を利用して,しごき量の変化量をさらに細かく調整することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかる内歯鍛造品の製造方法につき,図1,図2を用いて説明する。
本例において製造する内歯鍛造品1は,図2に示すごとく,筒状部2を有し,該筒状部2の内面に凹凸形状を有する歯形面20を設けてなる。筒状部2には,その基端側に延設した軸部15と円盤状の鍔部16を設けた。
【0017】
この内歯鍛造品1を製造するに当たり,素材に熱間鍛造等を施して予め筒状部2を形成し,この筒状部2に冷間鍛造を施す。このとき,筒状部2の内面に歯形面20を成形すると同時に筒状部2にしごき加工を加え,かつ,該しごき加工は,軸方向においてしごき量が変化するように行う。
【0018】
本例では,図1に示すごとく,冷間鍛造を行う際に用いる金型7は,上記筒状部2の外周面25に当接する外周加工部71に,筒状部2の開口部側に対応する奥部側から筒状部2の基端部側に対応する先端側に向けて徐々に拡径するように抜き勾配以上に傾斜させた金型テーパ部711,712を有する。2つの金型テーパ部711,712は,傾斜角度が異なり,奥部側に近いほど傾斜角度を大きく設けてある。
【0019】
また,金型7には,歯形面20を形成するための歯形加工部72を上記外周加工部71の中心部に進退可能に配設した。
一方,本例における冷間鍛造前の中間材100における筒状部2の内周面26及び外周面25は,図1に示すごとく,抜き勾配以上の傾斜を設けず,離型方向に略平行に設けた。
【0020】
そして,図1に示すごとく,冷間鍛造工程においては,まず歯形加工部72を外形加工部71内に後退させた状態で金型7の前進を開始し,次いで,上記歯形加工部72を前進させ,最終的に両者を前進させる。これにより,筒状部2に対する加工は,まず外周加工部71によって筒状部2の開口部側に外周面からしごき加工が加えられ,次いで,上記歯形加工部72によって内周面の歯形面20が形成され,さらに外周側からしごき加工が加えられる。
【0021】
このような冷間鍛造工程におけるしごき加工は,上記金型7の外周加工部71に設けた金型テーパ部711,712によって軸方向においてしごき量が積極的に変化するように行われる。即ち,傾斜角度が小さい金型テーパ面711に最終的に接する筒状部2の基端側においては,開口端に向かって徐々にしごき量が大きくなり,さらに金型テーパ面712に最終的に接する筒状部の開口側部分はさらに大きな変化率でしごき量が大きくなる。
【0022】
これにより,従来なら口開き傾向になる開口部側にいくにつれて大きなしごき加工がなされ,これにより,口開き等の変形を抑制することができる。そして,このような変形の抑制によって,歯形面20の歯形形状自体も精度よく所望の形状に成形することができる。
【0023】
実施形態例2
本例は,図3に示すごとく,実施形態例1における冷間鍛造前の中間材100筒状部2の形状を変更した例である。即ち,同図に示すごとく,冷間鍛造前の上記筒状部2の内面には,基端部側から開口部側に向けて徐々に縮径するように傾斜した材料テーパ部27を設けた。またこれにより,材料テーパ部27よりも開口部側には小径部28を形成した。その他は実施形態例1と同様である。
【0024】
この場合には,冷間鍛造前の筒状部2の内面に設けた上記材料テーパ部27と小径部28の存在により,実施形態例1の場合よりもさらに適切なしごき量の変化を得ることができる。これにより,より一層,口開き等の変形を抑制することができ,歯形面20の形状精度を向上させることができる。
その他は,実施形態例1と同様の作用効果が得られる。
【0025】
なお,本例では,実施形態例1と同様に金型テーパ部711,712を有する金型7を用いたが,これを後述する図4に示すごとき,金型テーパ部を有していない従来と同様の金型に変えることもできる。この場合においても,上記材料テーパ部27及び小径部28の存在によってしごき量の積極的な変化を実現することができ,程度の差はあれ,上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0026】
実施形態例3
本例においては,実施形態例1,2における作用効果を定量的に評価すべく,比較例と共に,冷間鍛造後の口開き量の測定を行った。
比較例としては,図4に示すごとく,金型テーパ部を有していない通常の抜き勾配だけを考慮した加工面970を有する外周加工部971と,実施形態例1と同様の歯形加工部72とを有する金型97を用い,実施形態例1と同様の材料テーパ部を設けていない筒状部2を冷間鍛造した。
【0027】
そして,実施形態例1,2により得られた内歯鍛造品(試料E1,E2とする)および比較例により得られた内歯鍛造品(試料C1とする)の冷間鍛造後の筒状部の内径寸法を軸方向に沿って数点測定した。内径寸法としては,JIS B1603のインボリュートスプラインと定義されるBBDの値を用いて評価した。
測定結果を図5〜図7に示す。図5が従来例を示し,図6が本発明品1の場合を示し,図7が本発明品2の場合を示す。これらの図は,横軸に筒状部の開口端からの距離を,縦軸に目的寸法に対する差を変形量として取った。
【0028】
これらの図から知られるように,金型形状を変更してしごき加工を積極的に加えた実施形態例1(試料E1)の場合は,従来の場合に比べて口開きを大幅に改善することができ,さらにそれに加えて筒状部の形状を変更してしごき量を大きくした実施形態例2(試料E2)においては,口開きが殆どない状態まで改善することができることがわかった。
【0029】
実施形態例4
本例では,実施形態例1又は2と同様の製造方法により製造できる内歯鍛造品の他の例を示す。
図8に示す内歯鍛造品は,内面に凹凸形状を有する歯形面20を設けてなる筒状部2の下方に,内周面310の径が上記筒状部2の内径より小さい小径の第2筒状部31を有し,さらに,これらの境界部分から外方に延設した鍔部32を有する鍛造品である。
【0030】
図9に示す内歯鍛造品は,内面に凹凸形状を有する歯形面20を設けてなる筒状部2の下方に,底部33を有する鍛造品である。
図10に示す内歯鍛造品は,内面に凹凸形状を有する歯形面20を設けてなる筒状部2の下方に,内周面340の径が上記筒状部2の内径より小さく,外周面341の径が筒状部2の外径よりも大きい鍔部34を有する鍛造品である。
【0031】
図11に示す内歯鍛造品は,内面に凹凸形状を有する歯形面20を設けてなる筒状部2の下方に,該筒状部2よりも小径の有底の筒部35を有する鍛造品である。筒部35には鍔部351も設けてある。
これら図9〜図11に示した内歯鍛造品の場合にも,上記実施形態例1又は2と同様の製造方法を用いることにより,筒状部2の口開き等の変形を抑制して歯形形状精度を向上させることができる。
【0032】
【発明の効果】
上述のごとく,本発明によれば,筒状部の口開き等の変形を抑制して歯形形状精度を向上させることができる,冷間鍛造を用いた内歯鍛造品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,冷間鍛造前の筒状部形状及び金型形状を示す説明図。
【図2】実施形態例1において製造する内歯鍛造品の一部切り欠き断面斜視図。
【図3】実施形態例2における,冷間鍛造前の筒状部の形状を示す説明図。
【図4】実施形態例3における,比較例に用いる金型形状を示す説明図。
【図5】実施形態例3における,試料C1(比較例)の冷間鍛造後の口開き傾向を示す説明図。
【図6】実施形態例3における,試料E1(実施形態例1)の冷間鍛造後の口開き傾向を示す説明図。
【図7】実施形態例3における,試料E2(実施形態例2)の冷間鍛造後の口開き傾向を示す説明図。
【図8】実施形態例4における,本発明において製造可能な他の形状の内歯鍛造品を示す説明図。
【図9】実施形態例4における,本発明において製造可能な他の形状の内歯鍛造品を示す説明図。
【図10】実施形態例4における,本発明において製造可能な他の形状の内歯鍛造品を示す説明図。
【図11】実施形態例4における,本発明において製造可能な他の形状の内歯鍛造品を示す説明図。
【符号の説明】
1...内歯鍛造品,
100...中間材,
2...筒状部,
20...歯形面,
27...材料テーパ部,
28...小径部,
7...金型,
71...外周加工部,
711,712...金型テーパ部
72...歯形加工部,

Claims (5)

  1. 筒状部を有し,該筒状部の内面に凹凸形状を有する歯形面を設けてなる内歯鍛造品を製造する方法において,
    素材に予め上記筒状部を形成し,
    その後,該筒状部に冷間鍛造を施すことにより,該筒状部の内面に歯形面を成形すると共に上記筒状部に、抜き勾配以上に傾斜した金型を用いてしごき加工を加え,かつ,該しごき加工は,軸方向において上記筒状部の開口部側が基端部側よりもしごき量が多くなるように行うことを特徴とする内歯鍛造品の製造方法。
  2. 請求項1において,上記冷間鍛造を行う際に用いる金型は,上記筒状部の外周面に当接する外周加工部に,上記筒状部の開口部側に対応する奥部側から上記筒状部の基端部側に対応する先端側に向けて徐々に拡径するように抜き勾配以上に傾斜させた金型テーパ部を有することを特徴とする内歯鍛造品の製造方法。
  3. 請求項2において,上記金型の上記外周加工部には,傾斜角度が異なる複数の上記金型テーパ部を設け,かつ,上記傾斜角度は上記奥部側に近いほど大きく設けておくことを特徴とする内歯鍛造品の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において,上記冷間鍛造前の上記筒状部の内面には,基端部側から開口部側に向けて徐々に縮径するように傾斜した材料テーパ部を設けることを特徴とする内歯鍛造品の製造方法。
  5. 請求項4において,上記冷間鍛造前の上記筒状部の内面には,傾斜角度が異なる複数の上記材料テーパ部を設けることを特徴とする内歯鍛造品の製造方法。
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