JP2001298223A - 磁気抵抗素子 - Google Patents

磁気抵抗素子

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JP2001298223A
JP2001298223A JP2000111187A JP2000111187A JP2001298223A JP 2001298223 A JP2001298223 A JP 2001298223A JP 2000111187 A JP2000111187 A JP 2000111187A JP 2000111187 A JP2000111187 A JP 2000111187A JP 2001298223 A JP2001298223 A JP 2001298223A
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JP2000111187A
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Toshiaki Murakami
敏明 村上
Hirosuke Matsushita
裕亮 松下
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Tokai University
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Tokai University
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 記録媒体からの微弱な磁気信号を室温でも高
感度に検出できると共に発熱を生じないようにする。 【解決手段】 多結晶性La1−xSrMnO薄膜
(但し、0.2<x<1)2から成るようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気抵抗素子に関
する。さらに詳述すると、本発明は磁気抵抗素子を構成
する材質の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気記録装置で記録媒体に記録された磁
気信号を読み出す読出部材として、磁気抵抗素子(以
下、MR素子と略称する)が利用されている。MR素子
の材質としては、通常パーマロイ(NiFe合金)が使
用されている。
【0003】近年、磁気記録装置の記録容量増大への要
求は強く、その記録密度の増大を決める要因は現在では
ほとんどMR素子の分解能に左右されている。そのた
め、現在利用されているMR素子より、さらに高感度で
小型化が可能なMR素子の開発が要請されている。
【0004】このような状況において、1988年には
M.N.Baibichらにより、FeとCoの超格子薄膜による
いわゆる巨大磁気抵抗効果が発表された(Phsy.Rev.Let
t.61(1988)2472−2475p)。この超格
子薄膜では、4.2Kの温度および約2Tの磁場という
条件で抵抗値が半減することが観測された。
【0005】また、この報告の後に、京大の新庄らによ
り、パーマロイ層とCo層を組み合わせた超格子薄膜が
研究された(J.Phys.Soc.Jpn.59(1990)306
1−3064p)。この超格子薄膜では、室温および数
10mTの磁場という条件で抵抗値に9.9%の減少が
観測された。
【0006】さらに、IBMのB.Dieny らにより、パー
マロイとFeMn合金などとの超格子が研究された(Ph
sy.Rev.B43(8)(1991)1297−1300
p)。この超格子では、室温および1mTの磁場という
条件で5%の抵抗変化が観測された。
【0007】上述したパーマロイに他の物質を組み合わ
せた超格子では、いずれの場合も単なるパーマロイの場
合より大きな磁気抵抗効果が得られている。現在では、
これらの研究結果から得られた材料が磁気記録装置にお
ける磁気信号の読み出しに用いられるようになってい
る。これにより、ハードディスクなどの磁気記録装置の
記録容量は数倍に増大している。
【0008】一方、酸化物材料でも、A.Urushibaraらに
より、マンガン酸化物La1−xSrMnOのx=
0.17前後の組成をもつ単結晶が巨大な磁気抵抗効果
を示すことを見い出した(Phys.Rev.B,vol.51,no.2
0,88〜94p)。この単結晶は300K近傍に強磁
性転移点(Tc)を持つ。そして、その転移点より低い
温度および10T以上の磁場という条件で、数10%も
の抵抗値が減少することが観測された。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たFeとCoの超格子薄膜では、室温に近付くと急速に
抵抗値が減少しなくなる上に2Tという強い磁場が必要
であるため、記録媒体からの例えば1mT程度の微弱な
磁気信号を検出する用途には適さない。
【0010】そして、パーマロイ製の磁気抵抗素子では
バイアス磁界を形成する必要が有り、この磁気バイアス
を電流により発生させると発熱を伴ってしまうので、放
熱部材等を要して磁気記録装置が大型化してしまう。
【0011】また、パーマロイ層とCo層を組み合わせ
た超格子薄膜では、数10mTの磁場が必要であるた
め、記録媒体からの微弱な磁気信号を検出する用途には
適さない。
【0012】さらに、パーマロイとFeMn合金などと
の超格子では、抵抗変化が5%程度に止まってしまうの
で、MR素子の高感度化は困難であった。
【0013】また、マンガン酸化物La1−xSr
nOのx=0.17前後の組成をもつ単結晶では、1
0T以上の強い磁場が必要であるため、記録媒体からの
微弱な磁気信号を検出する用途には適さない。
【0014】そこで、本発明は、記録媒体からの微弱な
磁気信号を室温でも高感度に検出でき発熱も生じない磁
気抵抗素子を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】ところで、H.Y.Hwangら
は、マンガン酸化物において、La2/3Sr1/3
nOセラミックスの粒界にできるトンネル層を介して
流れる電流は、スピン偏向トンネルの効果で微弱な磁気
に対して急激な抵抗減少をすることを報告している(Sp
in-Polarized Intergrain Tunneling in La2/3
1/3MnO :Phys.Rev.Lett.Vol.77,No.1
0,2041−2044p)。ここでの抵抗減少は、具
体的には5Kで約20%、100Kで約10%、200
Kで約3%であった。
【0016】このLa2/3Sr1/3MnOセラミ
ックス(多結晶体)6は、図2に示すように直径数μm
〜数10μmの微結晶(粒子)3と、微結晶3の間に介
在する結晶粒界4とから成る。電流は、微結晶3から微
結晶3へ結晶粒界4を介してトンネル電流として通過し
ていく。
【0017】そして、La2/3Sr1/3MnO
ラミックスでは、図3に示すように上向きのスピンをも
つ電子に対する伝導帯(Conduction Band)7と下向き
のスピンをもつ電子に対する伝導帯8とのエネルギーレ
ベルに大きな差が生じる。強磁性体ではこのようにスピ
ンの向きによって伝導帯のエネルギーレベルに差ができ
るが、La2/3Sr1/3MnOでは通常の強磁性
金属に比べて大きく、2.5eVもあり各伝導帯7,8
にエネルギー的に重なりがなくなっている。これによ
り、上向きのスピンに対する伝導帯7には電子が存在す
るが、反対向きのスピンをもつ伝導帯8には電子が存在
せず空いている。そのため、隣接する微結晶(強磁性
体)が反対向き磁界を持つと電子が粒界を通過できる確
率が小さくなるので、抵抗値が高いものとなる。
【0018】ここで、La2/3Sr1/3MnO
ラミックスに磁界を掛けると、微結晶のスピンの方向が
同じ方向を向き始めて上向きスピンの領域が増してくる
ので、トンネル電流が流れ易くなる。この抵抗変化の割
合いは、トンネルする回数が増すとその回数だけ倍増さ
れる。ただし、このトンネル効果による抵抗の変化は、
kT(k:ボルツマン定数、T:絶対温度)に反比例し
て温度が高くなると減少する。
【0019】また、La2/3Sr1/3MnOセラ
ミックスでは、図4に示すように、磁束密度Bが0より
僅かに大きくなるとトンネル効果による磁気抵抗効果で
電気抵抗が急激に減少する(図中0〜Bの範囲)。そ
の後、さらに磁束密度がBより増加したとき、微結晶
内部の磁気抵抗効果のみとなり、電気抵抗の変化は小さ
くなる。
【0020】トンネル効果による急激な変化量は、例え
ば5Kでは磁束密度が数mTで20%を超えるが、28
0K(約7℃)では6.4mTの磁束密度で1.6%程
度と小さくなってしまう。このため、このままでは記録
媒体からの微弱な磁気信号を室温で高感度に検出するこ
とは困難である。
【0021】そこで、本願の発明者が鋭意研究を重ねた
結果、このLa2/3Sr1/3MnOセラミックス
は、粒界構造および結晶粒子の大きさなどを精密に制御
することにより、全抵抗値に占める粒界の抵抗の割合を
増加させることができることを見い出した。これによ
り、トンネル効果による変化を数10倍に増大できる可
能性を持つことが判明した。
【0022】すなわち、図2に示すようなLa1−x
MnOセラミックス6は直径10μm程度の微結
晶3の集合であり、また電流が通れない空隙を数%含ん
でいる。それに対して、La1−xSrMnO多結
晶薄膜では、微結晶の直径は薄膜の厚さ(例えば0.1
μm)と同程度になるので、粒界の密度はセラミックス
の場合に比べて数10倍となり、空隙もないことから電
気抵抗への粒界の効果が約2桁増大すると考えられる。
【0023】かかる知見に基づいて発明された請求項1
記載の磁気抵抗素子は、多結晶性La1−xSrMn
薄膜(但し、0.2<x<1)から成るようにして
いる。
【0024】したがって、導電性強磁性酸化物であるL
1−xSrMnOの全抵抗のうちで粒界による抵
抗の割合を増してトンネル効果による変化を飛躍的に増
大することができるので、1mT程度の微弱な磁気に対
して室温でも10%を超える抵抗値の減少を生ずること
ができるようになる。これにより、微弱な磁気信号を室
温でも高感度に検出できる磁気抵抗素子を得ることがで
きる。
【0025】ここで、xを0.2以下とすると、図5に
示すように、La1−xSrMnOの組成が強磁性
金属だけでなく強磁性絶縁体も含むように成ってしまい
感度が低下してしまうと共に、キューリ点(Tc)が約
300K以下になって動作温度が低くなってしまうの
で、磁気抵抗素子として好ましくない。
【0026】また、キューリ点が高い組成であるほど動
作温度が高くなる。このため、動作温度の確保および組
成の均一性の観点から、xの大きさとしては、より好ま
しくは0.2<x<0.5であり、更に好ましくは請求
項2記載のように1/3≦x≦0.4であって、最も好
ましくはx=1/3である。特に、1/3≦x≦0.
4、あるいはx=1/3とした場合は、Tcが370K
程度の最高値に達するので、磁気抵抗素子の動作温度を
最高にできる。
【0027】さらに、本発明の磁気抵抗素子ではトンネ
ル効果を利用しているので、図4に示すように磁束密度
Bが0を僅かでも超えれば大きな抵抗変化ρ/ρを得
ることができる。このため、パーマロイ製の磁気抵抗素
子には必要であるバイアス磁界を形成する必要が無いの
で、磁気バイアスを形成するときに起きる電流による発
熱の問題を解決することができる。
【0028】ところで、La1−xSrMnO薄膜
を形成する基板としてLa1−xSrMnOと同じ
ペロブスカイト形結晶構造のもの(例えばSrTiO
やLaAlO)や岩塩形結晶構造のMgOなどを利用
すると、La1−xSrMnOと結晶構造が同じで
あると共に格子定数が近いので、La1−xSrMn
薄膜がエピタキシャル成長してしまう。このため、
薄膜が単結晶性になってしまい粒界面が形成されないの
で、トンネル障壁ができずトンネル抵抗が生じなくな
る。すなわち、図4中でのトンネル効果による磁気抵抗
効果を示す範囲(0〜B)の挙動が起きずに、電気抵
抗の変化の小さい部分(B〜)のみの挙動に成ってし
まい、高感度の磁気抵抗素子を得ることができない。
【0029】そこで、請求項3記載の発明は、請求項1
または2記載の磁気抵抗素子において、多結晶性La
1−xSrMnO薄膜は、サファイアの(110
2)面(即ち、R面)の単結晶基板に形成されたものに
している。
【0030】したがって、サファイアは6方晶系の対称
性を有するので、サファイア製の基板上では多結晶性L
1−xSrMnO薄膜はエピタキシャル成長する
ことが無く、La1−xSrMnOセラミックスを
形成する場合と同様の多結晶性に形成される。よって、
La1−xSrMnO薄膜は多結晶性であることか
ら多くの粒界面を有するので、トンネル障壁が形成され
てトンネル効果による抵抗変化を生じさせることができ
る。
【0031】また、請求項4記載の発明は、請求項1ま
たは2記載の磁気抵抗素子において、多結晶性La
1−xSrMnO薄膜は、多結晶性あるいは双晶性
の基板に形成されたものにしている。
【0032】したがって、これらの基板上でも多結晶性
La1−xSrMnO薄膜はエピタキシャル成長す
ることが無いので、La1−xSrMnOセラミッ
クスを形成する場合と同様の多結晶性に形成される。よ
って、多結晶性La1−xSrMnO薄膜でのトン
ネル効果による抵抗変化を生じさせることができる。
【0033】また、請求項5記載の発明は、請求項1ま
たは2記載の磁気抵抗素子において、SrTiO単結
晶の(110)面の基板上に中間層としてBaYCu
薄膜を形成し、該BaYCu薄膜上に多
結晶性La1−xSrMnO薄膜が形成されるよう
にしている。さらに、請求項6記載の発明は、請求項1
または2記載の磁気抵抗素子において、LaAlO
結晶の(110)面の基板上に中間層としてBaYC
薄膜を形成し、該BaYCu薄膜上に
多結晶性La1−xSrMnO薄膜が形成されるよ
うにしている。
【0034】ここで、SrTiO単結晶あるいはLa
AlO単結晶の(110)面の基板上にBaYCu
を堆積して厚さ数10nmのBaYCu
薄膜を形成すると、図6に示すように<100>に沿っ
て(即ち、<110>方向に対して垂直に)亀裂9がで
きる。このため、このBaYCu薄膜10上に
La1−xSrMnOを堆積させると亀裂9の部分
の段差によってトンネル障壁が形成されると考えられ
る。よって、多結晶性La1−xSrMnO薄膜で
のトンネル効果による抵抗変化を生じさせることができ
る。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成を図面に示す
実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。図1に本
発明の磁気抵抗素子1の実施形態を示す。この磁気抵抗
素子1は、多結晶性La1−xSrMnO薄膜(但
し、0.2<x<1)2から成るようにしている。この
ため、微結晶3の直径は薄膜2の厚さ(例えば0.1μ
m)と同程度になるので、粒界4の密度はLa1−x
MnOセラミックスの場合に比べて数10倍とな
り、空隙もないことから電気抵抗への粒界4の効果が約
2桁増大することになる。よって、La1−xSr
nOの全抵抗のうちで粒界4による抵抗の割合を増し
てトンネル効果による変化を増大することができるの
で、1mT程度の微弱な磁気に対して室温でも10%を
超える抵抗値の減少を生ずることができるようになる。
これにより、記録媒体に記録された磁気信号を読み出す
読出装置に適した高感度のMR素子1を得ることができ
る。しかも、従来の磁気センサのような磁気バイアスを
必要としないので、磁気バイアス形成時の電熱発生が無
く、磁気記録装置の記録密度を増大させる上で大変有利
になる。
【0036】そして、この多結晶性La1−xSr
nO薄膜2では、x=1/3としている。すなわち、
薄膜2をLa2/3Sr1/3MnOの組成としてい
る。これにより、図5に示すようにTcが約370Kで
最高値に達するので、磁気抵抗素子1の動作温度を最も
高くすることができる。
【0037】また、この多結晶性La1−xSrMn
薄膜2は、サファイアの(1102)面の単結晶基
板5に形成されている。すなわち、本実施形態では、磁
気抵抗素子1は多結晶性La1−xSrMnO薄膜
2と基板5とを備えたものとしている。このため、サフ
ァイア(Al)は6方晶系の対称性を有するの
で、サファイアの(1102)面の単結晶基板5上では
多結晶性La1−xSr MnO薄膜2はエピタキシ
ャル成長することが無く、La1−xSrMnO
ラミックスを形成する場合と同様の多結晶性に形成され
る。よって、この多結晶性La1−xSrMnO
膜2は多くの粒界4面を有するので、トンネル効果によ
る抵抗変化を生じさせることができる。
【0038】なお、上述の実施形態は本発明の好適な実
施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発
明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能で
ある。例えば、本実施形態ではサファイア製の基板5を
使用しているが、これには限られず例えば24度ずれた
方位を持つ結晶の双晶のSrTiOの基板5、あるい
は多結晶性の基板5を使用するようにしても良い。いず
れの場合も、多結晶性La1−xSrMnO薄膜は
基板5上でエピタキシャル成長することが無いので、L
1−xSrMnOセラミックスを形成する場合と
同様の多結晶性に形成することができ、トンネル効果を
生じさせて高感度の磁気抵抗素子1を得ることができ
る。
【0039】また、トンネル効果を生じさせて高感度の
磁気抵抗素子1を得るためには基板5に形成されたLa
1−xSrMnO薄膜2が多結晶性になれば良いの
で、例えばSrTiO単結晶基板にダイヤモンド針等
により直線状の傷を付けることにより結晶の規則性を破
壊しておき、この傷の上にLa1−xSrMnO
堆積させて多結晶性La1−xSrMnO薄膜2を
形成するようにしても良い。さらには、単結晶基板であ
ってもLa1−xSrMnO薄膜2と格子定数が大
きく異なっていたり、あるいは結晶構造が異なっている
もの(例えば(110)MgOなど)を利用しても良
い。これらによっても、基板5に形成されたLa1−x
SrMnO薄膜2を多結晶性にすることができる。
【0040】また、SrTiO単結晶あるいはLaA
lO単結晶の(110)面の基板上に中間層としてB
YCu薄膜を形成することにより、基板5を
形成するようにしても良い。この場合、BaYCu
薄膜上に多結晶性La −xSrMnO薄膜2
を形成する。すなわち、SrTiO単結晶あるいはL
aAlO単結晶の(110)面の基板上にBaYC
を厚さ数10nm堆積してBaYCu
薄膜を形成する。これにより、BaYCu薄膜
10には、図6に示すように<100>に沿って亀裂9
ができる。この亀裂9のギャップは数nmと小さいが、
この上にLa1−xSrMnOを厚さ数100nm
堆積させるとギャップの部分の段差によってLa1−x
SrMnO薄膜2にトンネル障壁ができると考えら
れる。よって、多結晶性La1− SrMnO薄膜
2でのトンネル効果による抵抗変化を生じさせることが
できる。
【0041】さらに、本実施形態では磁気抵抗素子1は
多結晶性La1−xSrMnO薄膜2と基板5とを
備えたものとしているが、これには限られず少なくとも
多結晶性La1−xSrMnO薄膜2が有れば良
い。例えば、多結晶性La1− SrMnO薄膜2
を一旦は基板5に作成しておき、作成後に剥ぎ取って多
結晶性La1−xSrMnO薄膜2のみを磁気抵抗
素子1として使用するようにしても良い。本発明の磁気
抵抗素子1ではパーマロイ製の磁気抵抗素子1と異なり
バイアス磁界を必要としないので、少なくとも多結晶性
La1−xSrMnO薄膜2が有れば磁気抵抗素子
1として機能させることができる。よって、磁気抵抗素
子1の構成を簡素化し得る。
【0042】
【実施例】基板ホルダ上にサファイア単結晶基板を取り
付けて400℃〜600℃に加熱した。この基板を2個
のカソードの直上に交互に数秒づつ停止させて、LaM
nOおよびSrMnOの2種類のターゲットよりL
a−Sr−Mn−Oを堆積させ、これを繰り返して行っ
た。その後、この基板をO気流中において1300℃
で1時間熱処理した。なお、基板としてはガラスについ
ても検討したが、石英ガラスでも1000℃以上での熱
処理に耐えられないので使用できなかった。
【0043】スパッタによる堆積時間をLaMnO
SrMnO=10秒:9秒として、100回繰り返し
た。これにより、約0.2μmの厚さの薄膜を得た。X
線回折の結果、この薄膜はLa2/3Sr1/3MnO
の組成の多結晶薄膜であった。
【0044】そして、磁気抵抗効果を測定した結果、図
4の磁気抵抗効果の部分(図中0〜B)の変化は、3
00Kにおいては4.2mTに対して10.3%(1m
Tでは2.45%)であり、200Kでは15.4mT
に対して37.7%(1mTでは2.47%)であっ
た。
【0045】この変化率は、計算上の値(約30%)よ
り小さかった。また、この多結晶性La2/3Sr
1/3MnO薄膜2による抵抗変化率は1mTで2.
45〜2.47%であり、パーマロイの超格子薄膜の抵
抗変化率(1mTで5.5%)より小さかった。
【0046】その一方、多結晶性La2/3Sr1/3
MnO薄膜2のEPMA(電子プローブ微小部分析
法)による分析結果では、Mnが過剰であることが判明
した。このため、多結晶性La2/3Sr1/3MnO
薄膜2の実際の組成がLa /3Sr1/3MnO
からずれていることにより、この多結晶性La2/3
1/3MnO薄膜2を利用した実際の抵抗変化率が
理論値よりも低くなったと考えられる。さらに、多結晶
性La2/3Sr1/3MnO薄膜2がMn過剰の組
成になった理由は、多結晶性La2/3Sr1/3Mn
薄膜2の形成にスパッタ法を利用したためであると
考えられる。そこで、この多結晶性La /3Sr
1/3MnO薄膜2をパルスレーザによる蒸着で作成
することにより、正確にLa2/3Sr1/3MnO
の組成の多結晶性La2/3Sr1/3MnO薄膜2
を得ることができる。これにより、この多結晶性La
2/3Sr 1/3MnO薄膜2による抵抗変化率を大
きくすることができる。さらに、今後の薄膜の製作技術
の進歩により組成を完全に近付けることができるように
なれば、本発明のMR素子1の特性は改善されると考え
られる。
【0047】また、パーマロイの超格子薄膜の抵抗変化
率は、バイアス磁界を加えて変化を最大にしたときの値
である。これに対し、本発明の磁気抵抗素子1ではトン
ネル効果を利用しているので、図4に示すように磁束密
度Bが極めて小さい状態から大きな抵抗変化ρ/ρ
得ることができる。よって、本発明の磁気抵抗素子1に
よれば、バイアス磁界を形成する必要が無いので、磁界
形成時の電熱発生を防止すると共に磁気抵抗素子1の構
成を簡素化することができる。
【0048】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、請求項
1記載の磁気抵抗素子によれば、多結晶性La1−x
MnO薄膜(但し、0.2<x<1)から成るよ
うにしているので、1mT程度の微弱な磁気に対して室
温でも10%を超える抵抗値の減少を生ずることができ
るようになる。これにより、記録媒体からの微弱な磁気
信号を室温でも高感度に検出できる磁気抵抗素子を得る
ことができる。
【0049】しかも、本発明の磁気抵抗素子ではトンネ
ル効果を利用しており磁束密度がほぼ0の極めて小さい
状態から大きな抵抗変化を得ることができるので、パー
マロイ等の従来の磁気センサと異なって磁気バイアスを
不要にすることができる。このため、本発明の磁気抵抗
素子を磁気記録装置の信号読み出しセンサに用いると
き、磁気バイアスを形成するときに起きる電流による発
熱の問題が解決されるため、磁気記録装置の記録密度を
増大させる上で大変有利となる。
【0050】また、請求項2記載の磁気抵抗素子によれ
ば、1/3≦x≦0.4であるので、図5に示すように
キューリ点(Tc)が370K程度の最高値に達する。
このため、磁気抵抗素子の動作温度を最高にでき、室温
でも高感度に動作可能にすることができる。
【0051】一方、請求項3および請求項4記載の磁気
抵抗素子によれば、La1−xSr MnO薄膜を多
結晶性にできるので、トンネル効果による抵抗変化を生
じさせることができる。
【0052】また、請求項5記載および請求項6記載の
磁気抵抗素子によれば、BaYCu薄膜の亀裂
の部分の段差によってトンネル障壁が形成されるので、
トンネル効果による抵抗変化を生じさせることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気抵抗素子を示す縦断面側面図であ
る。
【図2】La1−xSrMnOセラミックスの組成
を示す模式図である。
【図3】スピン偏向トンネル効果の原理を示すグラフで
ある。
【図4】1300℃で焼結したLa2/3Sr1/3
nOセラミックスの磁気抵抗効果について、磁束密度
Bと(磁界を掛けた時の抵抗率ρ)/(磁界を掛けない
時の抵抗率ρ)との関係を示す図である。
【図5】多結晶性La1−xSrMnO薄膜の組成
について、xと温度との関係を示す図である。
【図6】SrTiO単結晶あるいはLaAlO単結
晶の(110)面上にBaYCu薄膜を堆積し
て成る基板を示す平面図である。
【符号の説明】
1 磁気抵抗素子 2 多結晶性La2/3Sr1/3MnO薄膜 3 微結晶 4 粒界 5 基板

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多結晶性La1−xSrMnO薄膜
    (但し、0.2<x<1)から成ることを特徴とする磁
    気抵抗素子。
  2. 【請求項2】 前記多結晶性La1−xSrMnO
    薄膜は、1/3≦x≦0.4を満たす組成であることを
    特徴とする請求項1記載の磁気抵抗素子。
  3. 【請求項3】 前記多結晶性La1−xSrMnO
    薄膜は、サファイアの(1102)面の単結晶基板に形
    成されたものであることを特徴とする請求項1または2
    記載の磁気抵抗素子。
  4. 【請求項4】 前記多結晶性La1−xSrMnO
    薄膜は、多結晶性あるいは双晶性の基板に形成されたも
    のであることを特徴とする請求項1または2記載の磁気
    抵抗素子。
  5. 【請求項5】 SrTiO単結晶の(110)面の基
    板上に中間層としてBaYCu薄膜を形成し、
    該BaYCu薄膜上に前記多結晶性La1−x
    SrMnO薄膜が形成されていることを特徴とする
    請求項1または2記載の磁気抵抗素子。
  6. 【請求項6】 LaAlO単結晶の(110)面の基
    板上に中間層としてBaYCu薄膜を形成し、
    該BaYCu薄膜上に前記多結晶性La1−x
    SrMnO薄膜が形成されていることを特徴とする
    請求項1または2記載の磁気抵抗素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013037855A (ja) * 2011-08-05 2013-02-21 Tokyo Institute Of Technology 電子放出源および薄膜成長用基板
CN110212084A (zh) * 2019-05-24 2019-09-06 北京大学 一种测量弱磁性La1-xSrxMnO3外延薄膜层状磁结构的方法

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