JP2001290084A - 顕微鏡標本のカバーガラス貼着装置 - Google Patents

顕微鏡標本のカバーガラス貼着装置

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JP2001290084A
JP2001290084A JP2000108068A JP2000108068A JP2001290084A JP 2001290084 A JP2001290084 A JP 2001290084A JP 2000108068 A JP2000108068 A JP 2000108068A JP 2000108068 A JP2000108068 A JP 2000108068A JP 2001290084 A JP2001290084 A JP 2001290084A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 顕微鏡標本用の試料が貼着されたスライドガ
ラスが収納された容器から、スライドガラスを引き上
げ、カバーガラスを貼着する操作を行うステーションに
スライドガラスを移載する操作を簡易な構成によって可
能とする。 【解決手段】 スライドガラスを容器から取り出して処
理用のステーションにセットするスライドガラスの取り
出し手段30を備えた顕微鏡標本のカバーガラス貼着装
置において、前記スライドガラスの取り出し手段が、ス
ライドガラス10を取得する取得アーム32と、取得ア
ーム32を容器に収納されたスライドガラス10を取得
する下位置と、容器の上方に配置されたステーションA
にスライドガラスを移載する上位置との間で昇降移動さ
せるとともに、前記ステーションAにスライドガラス1
0を移載する際に前記容器からスライドガラスを取り出
す向きから前記ステーションに移載する向きに転回させ
る移動機構を備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はスライドガラスの移
送機構及び顕微鏡標本のカバーガラス貼着装置に関し、
より詳細には、スライドガラスの取り出し機構として特
徴的な構成を備えたカバーガラス貼着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】顕微鏡標本のカバーガラス貼着装置は、
たとえば患者から取り出した組織片を試料として顕微鏡
標本とする装置である。顕微鏡標本は、スライドガラス
の表面に、薄くカットした試料を貼着し、脱脂、染色処
理を施した後、試料の上に封入剤を分注し、この封入剤
の上にカバーガラスをのせ、封入剤に含まれている溶剤
が蒸発して封入剤が固化し、カバーガラスが固着するこ
とによって得られる。カバーガラス貼着装置は、試料が
貼着されているスライドガラスに封入剤を分注し、カバ
ーガラスを貼着して顕微鏡標本とするまでの処理を自動
化したものである。
【0003】顕微鏡標本に使用する試料は、図9に示す
ように、試料を貼着したスライドガラス10を互いに離
間させてバスケット12内に立てるように収納し、この
バスケット12をバスケット容器14に収納し、バスケ
ット容器14にスライドガラス10が浸漬するように透
徹剤を入れ、カバーガラス貼着装置にセットする。バス
ケット12はスライドガラス10を整列して収納するこ
とによって1枚ずつ上方に引き出せるようにするもので
あり、バスケット容器14は試料を透徹剤中に浸漬させ
ておくためのものである。透徹剤は、封入剤を溶かすた
めの溶剤で、キシレンが多く使用される。
【0004】カバーガラスの貼着装置は、上記のように
バスケット容器14内で試料が透徹剤に浸漬されている
状態から1枚ずつスライドガラス10を引き上げ、分注
工程、カバーガラス貼着工程を経て、封入剤により試料
が封入された顕微鏡標本を自動的に形成するものであ
る。これらの分注工程、カバーガラス貼着工程では、各
処理ステーションに順次スライドガラスを移送し、カバ
ーガラスによって試料を封入した後、最終的に顕微鏡標
本を収納部に収納する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このカバーガラスの貼
着装置では、上記のように、スライドガラスを順次処理
ステーションに移送して所要の処理を施すが、各処理ス
テーションではスライドガラスを水平に支持し、またス
ライドガラスを水平にして処理ステーション間を移送す
る。スライドガラスの移送操作のうち、バスケット容器
からスライドガラスを引き上げてステーションにセット
する操作は、スライドガラスを起立させた状態から引き
上げて水平にセットする操作を行わなければならないた
め、移送操作上、もっとも工夫を要する操作である。
【0006】本発明に係るカバーガラスの貼着装置は、
バスケット12内に起立して収納されているスライドガ
ラスをバスケット12から取り出し、処理ステーション
に水平にセットするまでの操作を簡易な構成によって可
能としたものであり、単一の駆動源を使用するのみでス
ライドガラスの取り出し操作を可能とし、これによって
装置を簡易に構成して装置の製造コストを低減すること
を可能としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は次の構成を備える。すなわち、顕微鏡標本
用の試料が貼着されたスライドガラスを容器から取り出
して処理用のステーションにセットするスライドガラス
の取り出し手段と、スライドガラスに封入剤を分注する
手段と、試料にカバーガラスを貼着する手段と、試料が
封入されたスライドガラスを収納部に収納する手段とを
備えた顕微鏡標本のカバーガラス貼着装置において、前
記スライドガラスの取り出し手段が、前記スライドガラ
スを取得する取得アームと、該取得アームを、前記容器
に収納されたスライドガラスを取得する下位置と、前記
容器の上方に配置された前記ステーションにスライドガ
ラスを移載する上位置との間で昇降移動させるととも
に、前記ステーションにスライドガラスを移載する際に
前記容器からスライドガラスを取り出す向きから前記ス
テーションに移載する向きに転回させる移動機構とを備
えたことを特徴とする。
【0008】また、前記移動機構が、前記取得アームを
支持するとともに同軸に昇降プーリが取り付けられた支
持ロッドと、該取得アームが昇降移動する際には前記取
得アームの傾動動作を規制し、前記取得アームが上位置
に達した際に取得アームの傾動動作の規制を解除する取
得アームの規制手段と、前記支持ロッドを前記取得アー
ムの昇降方向に移動可能に前記昇降プーリに掛け渡して
配置された無端状部材と、該無端状部材に係合するプー
リを備え、無端状部材を正逆方向に循環させることによ
り、前記取得アームを前記下位置と上位置との間で移動
させる駆動モータとを備えていることを特徴とする。こ
れによって、単一の駆動源を使用し、簡易な構成によっ
てスライドガラスの引き上げ操作を行うことが可能にな
る。また、前記規制手段が、取得アームにガイドロッド
を取り付け、該ガイドロッドを前記取得アームが昇降移
動する際に移動方向を規制するガイド板に係合させて設
けたことを特徴とする。ガイド板によってガイドロッド
をガイドすることによって取得アームの移動、転回動作
が確実に行えるようになる。また、前記昇降プーリに、
前記取得アームとの重量バランスをとるバランスウェイ
トを取り付けたことを特徴とする。また、前記駆動モー
タの動作を制御して、容器からのスライドガラスの引き
上げ速度を調節する制御部が設けられていることによ
り、スライドガラスに付着する透徹剤の量を適当に調節
することが可能になる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態に
ついて添付図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明
に係るカバーガラスの貼着装置の全体構成を示す斜視図
である。20はカバーガラスの貼着装置の前面に開閉可
能に設けたフードである。フード20を開いたカバーガ
ラスの貼着装置の内部には、バスケット容器内で透徹剤
に浸漬されているスライドガラスを1枚ずつ引き上げ、
スライドガラスに封入剤を分注し、カバーガラスを貼着
して封入する各処理ステーションが配置されている。2
2はカバーガラスの貼着装置の本体の前面下部に設けた
開閉扉、24は封入剤を収納したボトルをセットするセ
ット台、26は操作パネルである。封入処理を行うスラ
イドガラスは、バスケット容器に収納した状態で開閉扉
22を開けて、本体内にセットする。
【0010】図2は、カバーガラスの貼着装置の本体内
に配置されている各処理ステーションの構成を示す斜視
図である。同図で、30はスライドガラスをバスケット
容器(不図示)内から上方に引き上げ、第1ステーショ
ンAにセットする操作を行う取り出し機構部である。こ
の取り出し機構部30には、バスケット容器内に起立し
て収納されているスライドガラスの上端縁をチャックし
て支持する取得機構としての吸着部31と、吸着部31
を支持する取得アーム32と、取得アーム32を昇降駆
動するモータが設けられている。なお、スライドガラス
の取得機構としてはエア吸着による他、チャック爪によ
ってスライドガラスをつまむように支持するように構成
することも可能である。取得アーム32には、取得アー
ム32の昇降移動とともにガイド溝33内をガイド移動
するガイドロッド34が設けられ、取得アーム32が上
位置まで上昇した際に、取得アーム32が鉛直方向から
水平方向に倒れるようになる。吸着部31は第1ステー
ションAの手前側で昇降移動し、スライドガラスを水平
方向に倒して、下降することにより第1ステーションA
にスライドガラスをセットする。
【0011】第1ステーションAは、水平に横設された
支持体上に、スライドガラスを位置決めしてセット可能
な凹部状のセット部に形成されている。第1ステーショ
ンAの横位置には、第1ステーションAと並列に第2ス
テーションBが配置され、さらに第3ステーションC、
第4ステーションDが等間隔で並列して配置されてい
る。スライドガラス10は第1ステーションAから第4
ステーションDまで順次順送りされるが、スライドガラ
ス10を順送りする搬送手段は各セット部の下側に配置
した搬送プレート36の作用によるものである。搬送プ
レート36は移動側面方向から見て、ロの字形の軌跡を
描くように移動してスライドガラスを順次移送する。す
なわち、搬送プレート36の動作は、下位置からスライ
ドガラス10の側縁をフックする位置まで上昇し、前進
方向に定寸移動して支持体上でスライドガラス10を次
のステーションまで前進移動させ、前進位置で下位置に
下降し、次に後退位置まで定寸で戻り移動して元位置に
復帰するものである。
【0012】第2ステーションBは、スライドガラス1
0に封入剤を分注するステーションである。38は分注
ノズル、40は封入剤の固化を防止する溶剤が入れられ
た容器、42は廃液トレイである。分注ノズル38はス
ライドガラス10の上方に移動して一定量の封入剤を滴
下する。分注ノズル38は分注開始前においては容器4
0に先端を挿入して封入剤が固化しないようにし、分注
後は廃液トレイ42の上方で除去部材にノズルの先端を
接触させてノズルの先端に付着している液滴を除去す
る。これらの操作は、スライドガラス10に分注する封
入剤の分量のばらつきを抑えるためのものである。
【0013】第3ステーションCは、封入剤が分注され
たスライドガラス10にカバーガラス50を貼着するス
テーションである。52はカバーガラス50を積層して
収納するホルダ、54はカバーガラス50をエア吸着す
る吸着パッドである。56は吸着パッド54とともに移
動するアームであり、ホルダ52内からカバーガラス5
0を取り出す際にカバーガラス50の上面に当接して、
吸着パッド54による吸着作用と協動してカバーガラス
50を湾曲させ傾斜した状態で取り出すとともに、カバ
ーガラス50をスライドガラス10に貼着する際には、
カバーガラス50を一端側から徐々にスライドガラス1
0に当接して空気を追い出すようにして貼着する作用を
なす。58は昇降アームであり、ホルダ52からカバー
ガラス50を取り出し、カバーガラス50を貼着する際
に第3ステーションC上のセット部まで降下する。
【0014】第4ステーションDは、カバーガラス50
が貼着されて試料が封入されたスライドガラス10を収
納部へ搬送するステーションである。本実施形態のカバ
ーガラス貼着装置では、封入処理後のスライドガラス1
0は上下に所定間隔で桟部を設けたラックに収納するよ
うに構成している。ラックは桟部のピッチに合わせて上
下方向にピッチ移動され、第4ステーションDからピッ
クアップされたスライドガラス10はラックに1枚ずつ
挿入して収納される。
【0015】以上説明したように、バスケット容器から
1枚ずつ取り出されたスライドガラス10は第1ステー
ションAから第2ステーションB、第3ステーション
C、第4ステーションDへと順送りされ、封入処理が施
されて顕微鏡標本が形成される。この処理工程では、各
ステーション上に移送されてきたスライドガラス10
は、同一のタイミングで次のステーションに移送されて
所要の処理が施される。これらのスライドガラスの搬送
操作、封入処理操作はモータ駆動による自動制御によっ
てなされている。
【0016】以下では、本実施形態のカバーガラスの貼
着装置において特徴的な構成であるスライドガラスの取
り出し機構部30について説明する。図3はスライドガ
ラスの取り出し機構部30の構成をバスケット容器14
の端面方向から見た図である。なお、図3には、スライ
ドガラス10に所要の処理を施す第1〜第4ステーショ
ンA、B、C、Dと、封入後のスライドガラス10を収
納するラック59を合わせて示している。
【0017】スライドガラスの取り出し機構部30は、
第1ステーションAの直下の位置にスライドガラス10
が位置するようにバスケット容器14を配置し、吸着部
31によってスライドガラス10の上端部を吸着してバ
スケット容器14から上方に取り出し、スライドガラス
10を水平方向に転回させて第1ステーションAにセッ
トする。吸着部31及び取得アーム32等の移動部分
は、第1ステーションAの手前側で昇降移動し、第1ス
テーションAとは干渉しないように配置されている。
【0018】図4は、スライドガラス10を収納したバ
スケット容器14の送り機構を示す。スライドガラスの
取り出し機構部30は定位置でスライドガラス10を取
り出すように設定しているから、バスケット容器の送り
機構は、スライドガラス10を取り出す操作ごとにバス
ケット容器14をピッチ移動させ、吸着部31の取り出
し位置に次のスライドガラス10が位置するように制御
される。実施形態では、スライドガラス10を収納した
バスケット12を3個直列にバスケット容器14内に収
容し、水平な支持面上を移動するベルト60の上にバス
ケット容器14をのせ、駆動モータ62によりベルト6
0を循環移動させることによりスライドガラス10の取
り出し操作ごとにバスケット容器14をピッチ送りして
いる。
【0019】図5はスライドガラスの取り出し機構部3
0の主要構成部分を示す斜視図である。70は取得アー
ム32の昇降移動と転回方向を規制するガイド板であ
る。ガイド板70は鉛直に起立して装置本体に固定さ
れ、ガイド板70には鉛直方向に延びるガイド溝33
と、ガイド溝33の上部でガイド溝33から1/4円弧
状に分岐する円形ガイド溝33aが形成されている。取
得アーム32の下端部にはガイド板70に向けてガイド
ロッド34が横設され、ガイドロッド34の先端にはガ
イド溝33及び円形ガイド溝33aに摺接して転動する
ローラ34aが取り付けられている。取得アーム32の
上端側に取り付けられる吸着部31は図2に示すように
回動可能に取得アーム32に取り付けられている。図5
で31aは吸着パッド、31bはスプリングである。ス
プリング31bは吸着部31を回動可能に支持する回動
軸に外挿し、スライドガラスを吸着支持する際に吸着パ
ッド31aを弾性的にスライドガラスに押圧させるよう
に設けたものである。吸着パッド31aにはエア吸引機
構に連絡するエアチューブ31cが連通する。
【0020】72はガイド溝33を挿通してガイドロッ
ド34と平行に取得アーム32に一端を固定した支持ロ
ッドである。74は支持ロッド72の他端側に支持ロッ
ド72と同一の軸線として固定した昇降プーリである。
本実施形態では支持ロッド72と昇降プーリ74との中
間に支持ブロック75を介在させ、支持ロッド72の両
端に取得アーム32と昇降プーリ74を固定し、昇降プ
ーリ74を支持ブロック75に対して回動可能に支持し
ている。こうして、昇降プーリ74が回動することによ
って支持ロッド72を介して取得アーム32が回動する
ことになる。
【0021】支持ロッド72は昇降プーリ74の作用に
よって上下動するが、支持ロッド72とガイドロッド3
4との離間間隔は、支持ロッド72が最上位置まで上昇
した際に、ガイドロッド34の位置がガイド溝33から
分岐する円形ガイド溝33aの分岐部の位置に一致する
よう設定する。76は支持ブロック75に取り付けたセ
ンサ板である。センサ板76は支持ロッド72の回動位
置すなわち取得アーム32の回動位置を検知するための
ものである。78は支持ロッド72の上昇位置を規制す
るストッパである。支持ロッド72はガイド溝33にガ
イドされて昇降移動するからガイド溝33を設けた範囲
で移動範囲が規制されるが本実施形態ではストッパ78
を設けて支持ロッド72がストッパ78に当接した位置
から上昇しないように規制している。
【0022】本実施形態のスライドガラスの取り出し機
構部30では、取得アーム32を昇降駆動する駆動源と
して一つの駆動モータ80のみを使用し、駆動モータ8
0と昇降プーリ74とをワイヤ82によって連携するこ
とによって所要の操作がなされるようにしている。すな
わち、駆動モータ80の出力軸に固定したプーリ84に
ワイヤ82を卷回して装着するとともに、プーリ84と
昇降プーリ74とを固定プーリ86を経由して連携さ
せ、昇降プーリ74にワイヤ82を卷回して装着する。
とくに、昇降プーリ74が中間に配置される固定プーリ
86aと固定プーリ86bについては、昇降プーリ74
の昇降移動方向がガイド板70に設けたガイド溝33の
長手方向と平行になるように鉛直配置となるようにし、
昇降プーリ74がガイド溝33の全長にわたって移動で
きるようにその配置間隔を設定する。このようにワイヤ
82を介して駆動モータ80と昇降プーリ74とを連携
することにより、昇降プーリ74は支持ロッド72の移
動位置に応じて昇降動作と転回動作を行うようになる。
なお、本実施形態では駆動モータ80と昇降プーリ74
とを連携するためワイヤ82を使用しているが、連携部
材はワイヤの他にベルト等の無端状部材を使用すること
ができる。
【0023】88は取得アーム32、支持ロッド72、
昇降プーリ74、支持ブロック75と重量のバランスを
とるために設けたバランスウェイトである。バランスウ
ェイト88はワイヤ90を介して昇降プーリ74に連携
し、昇降プーリ74が回転した際に昇降プーリ74に卷
回されるように配置する。バランスウェイト88は昇降
プーリ74を持ち上げるように作用して駆動モータ80
に過度の負荷が作用しないようにすることと、昇降プー
リ74が回転してワイヤに巻き付くことにより、昇降プ
ーリ74を巻き上げ方向と逆方向に回転させる回転力を
作用させるという効果を有する。
【0024】上記のスライドガラスの取り出し機構部3
0による昇降動作は以下のとおりである。まず、スライ
ドガラス10をバスケット容器14内で吸着支持するた
め、駆動モータ80を制御して、取得アーム32をガイ
ド溝33の下方位置に移動させる。ガイドロッド34と
支持ロッド72とがともにガイド溝33に係合している
状態は、取得アーム32が鉛直向きに支持され、昇降プ
ーリ74及び取得アーム32は回動(傾動)しない状態
にある。この状態で駆動モータ80によりワイヤ82を
循環移動させると、昇降プーリ74は回動せず昇降プー
リ74自体が上下動する。すなわち、ガイドロッド34
と支持ロッド72がともにガイド溝33に係合して取得
アーム32が傾動できない状態で取得アーム32は上下
移動し、駆動モータ80の駆動を制御することにより上
下方向の任意の位置に取得アーム32を移動させること
ができる。
【0025】図3は、取得アーム32が最下位置に降下
した状態で、吸着パッド31aがスライドガラス10の
上部側面を吸着した状態を示す。吸着パッド31aによ
りスライドガラス10をエア吸引することによりスライ
ドガラス10が吸着部31に吸着支持される。スライド
ガラス10を吸着支持した状態から駆動モータ80を駆
動することにより昇降プーリ74は回動せず上昇開始す
る。スライドガラス10は取得アーム32と平行に鉛直
方向に吊り下げられた状態で上昇を開始し、最終的にス
トッパ78によって昇降プーリ74による上昇動作が規
制されるまで上昇する。
【0026】図5は、ストッパ78によって昇降プーリ
74による上昇移動が規制された状態である。この状態
でさらに昇降プーリ74を回動させる力を作用させる
と、このときは、ガイドロッド34がガイド溝33から
分岐する円形ガイド溝33aの分岐部に一致する位置に
移動してきているから、取得アーム32を傾動させない
ようにする規制力が解除され、ガイドロッド34の先端
に取り付けたローラ34aが円形ガイド溝33a方向に
入り込んで取得アーム32が鉛直方向から水平方向に回
転する。円形ガイド溝33aは、1/4円弧状に形成さ
れているから、ガイドロッド34が円形ガイド溝33a
の上端に当接したところで取得アーム32、すなわちス
ライドガラス10が水平向きとなる。スライドガラス1
0が水平に支持されたところで吸着パッド31aによる
エア吸着を解除することによって第1ステーションAに
スライドガラス10をセットすることができる。
【0027】第1ステーションAにスライドガラス10
をのせた後は駆動モータ80を逆回転させることによっ
て取得アーム32を水平向きから鉛直向きに戻すことが
できる。取得アーム32が転回動作する際には昇降プー
リ74は高さ位置を変えずに、支持ロッド72が最上位
置に支持された状態で回転し、その際、昇降プーリ74
からワイヤ90が引き出される。駆動モータ80を逆回
転して取得アーム32を水平向きから鉛直向きに戻す際
には、バランスウェイト88によって昇降プーリ74を
逆回転させる(ワイヤ90を巻き戻す)力が作用して取
得アーム32を確実に鉛直向きに戻すことができる。逆
回転のままさらに駆動モータ80を駆動すれば、取得ア
ーム32は上位置から下位置に向け、ガイド溝33によ
りガイドされて下降する。
【0028】こうして、駆動モータ80の正逆回転、回
転量及び動作タイミングを制御することにより、取得ア
ーム32によるスライドガラス10の取得操作を順次繰
り返して行うことができる。実際には、この取得アーム
32によるスライドガラス10の取得操作は、分注処
理、カバーガラスの貼着処理等の他の処理工程とタイミ
ングを合わせて行われるものである。
【0029】以上説明したスライドガラスの取り出し機
構部30は、単一の駆動モータ80を駆動制御するだけ
で取得アーム32の昇降動作、転回動作を行うことがで
き、複雑な構成を採用することなく、きわめて操作性が
良く、効率的な取り出し操作を行うことができるという
特徴を有する。本実施形態のスライドガラスの取り出し
機構部30は、ガイド板70にガイド溝33と円形ガイ
ド溝33aを形成することにより、ガイドロッド34の
移動位置によって支持ロッド72を支持軸として取得ア
ーム32を傾動可能とし、これによって取得アーム32
の直線移動と回転移動を一連の動作として可能にしたこ
とを特徴とするものである。なお、このような動作を可
能とする構成は上記実施形態の構成に限るものではな
い。
【0030】図6は円形ガイド溝33aを設けた場合と
設けない場合とを示す。図6(a)は、本実施形態の構成
を示すもので円形ガイド溝33aを設けた場合を示す
が、取得アーム32が上位置で回動する際には、ストッ
パ78により取得アーム32の位置が規制され、その位
置で取得アーム32が回動するから必ずしも円形ガイド
溝33aを設けなくてもよい。図6(b)は、円形ガイド
溝33aを設けない例を示す。なお、図では、ガイド溝
33及び円形ガイド溝33aと取得アーム32との位置
関係をわかりやすく示すため、ワイヤ82の循環範囲の
外側に取得アーム32が回動した状態を示している。図
7、8についても同様である。
【0031】図7は円形ガイド溝33aとガイドロッド
34の他の配置例を示す。図7(a)は、ガイド溝33と
同一位置で支持ロッド72が昇降移動する場合でガイド
溝33の上部に円形ガイド溝33aを内向きに連通させ
た配置、図7(b)はガイド溝33とは偏位した位置で支
持ロッド72が昇降移動する場合で、ガイド溝33の上
部から外向きに円形ガイド溝33aを連通させた例であ
る。いずれの場合も、支持ロッド72は垂直方向に移動
可能でかつ軸線の回りで回動可能である。図7(a)、(b)
に示すように、ガイド溝33、円形ガイド溝33a、ガ
イドロッド34は適宜配置とすることが可能である。
【0032】図8は、バランスウェイト88についての
他の実施形態とガイド溝33及びガイドロッド34を設
けない実施形態を示す。バランスウェイト88は取得ア
ーム32及び昇降プーリ74を含む昇降部全体とウェイ
トバランスを取ることにより、通電が停止したといった
場合に昇降部が落下することを防止する作用と、取得ア
ーム32が回転する際の回転バランスをとることを目的
としている。上記実施形態では昇降プーリ74の径寸法
を適当に設定することによりウェイトバランスと回転バ
ランスをとっている。図8(b)は、取得アーム32の反
対側にバランスウェイト88aを取り付けた例で、この
場合は、取得アーム32の回転バランスがとりやすくな
るという利点がある。
【0033】また、上記実施形態ではガイド溝33とガ
イドロッド34を設けたが、ガイド溝33とガイドロッ
ド34を設けない構成とすることも可能である。すなわ
ち、取得アーム32とともに上下動する支持ブロック7
4から取得アーム32に向けてストッパアーム92を延
設し、取得アーム32の側面にストッパアーム92を当
接させることにより取得アーム32が回動することを規
制することができる。ストッパアーム92により取得ア
ーム32が回動することを規制することにより取得アー
ム32は昇降移動し、取得アーム32が上位置に達して
上方に移動できなくなると、取得アーム32がストッパ
アーム92から離間して回動することになる。図8(b)
に示す実施形態も、取得アーム32にストッパアーム9
2を当接させることによりガイド溝33及びガイドロッ
ド34を設けずに取得アーム32を昇降移動させる構成
を示す。取得アーム32等の昇降部とバランスウェイト
とを適当に設定すれば、ガイド溝33及びガイドロッド
34を設けない場合でも十分に取得アーム32の昇降移
動と転回動作を行うことが可能であるが、高速で操作す
るような場合にはガイド溝33とガイドロッド34を設
けた方が安定した動作が可能となる。
【0034】上述したカバーガラスの貼着装置に用いる
スライドガラスの取り出し機構部30は、単一の駆動源
を利用するだけでスライドガラス10をバスケット12
から引き上げ、スライドガラス10を第1ステーション
Aに水平にセットする操作を行うことを可能にしたもの
である。ところで、スライドガラス10がバスケット容
器14に収納されている際には、試料は透徹剤に浸漬さ
れ乾かないように保持されている。上述したスライドガ
ラスの取り出し機構部30によってスライドガラス10
をバスケット容器14から引き上げる操作ではスライド
ガラス10に透徹剤が付着して引き上げられるから、ス
ライドガラス10の引き上げ速度によりスライドガラス
10に付着する透徹剤の量が変化する。
【0035】透徹剤には封入剤を溶かす溶剤が含まれて
いるから、スライドガラス10に付着する透徹剤の量が
適当でない場合は、封入操作が適切にできなくなる場合
がある。すなわち、スライドガラス10に透徹剤が多く
付着し過ぎると、封入する際に透徹剤に含まれる溶剤が
余分に流れ出てスライドガラス10を汚し、逆に、透徹
剤の付着量が少ないと気泡を巻き込みやすくなったり、
試料が乾いてしまったりして確実に封入できなくなる。
このため、手作業で封入作業をするような場合には、余
分な透徹剤をふき取ったりすることが行われている。
【0036】スライドガラス10に付着する透徹剤の量
はスライドガラス10を引き上げる速度を速くすると多
くなり、スライドガラス10を引き上げる速度を遅くす
ると透徹剤が切れやすくなって少なくなる。したがっ
て、スライドガラス10の引き上げ速度を適当に調節す
ることによってスライドガラス10に付着する透徹剤の
量を調節することができる。スライドガラス10の引き
上げ速度は、上述した取り出し機構部30による場合
は、駆動モータ80の動作を制御するだけで簡単に調節
することができる。
【0037】スライドガラス10に付着する透徹剤の量
は、透徹剤の種類によっても変動する。たとえば、リモ
ネン系の透徹剤は通常使用されているキシレンよりもス
ライドガラス10に付着しやすい性質がある。したがっ
て、使用する透徹剤の種類に応じてスライドガラス10
の引き上げ速度を制御する必要がある。透徹剤にキシレ
ンを使用した場合のスライドガラス10の引き上げ速度
が45mm/secであったとすると、リモネン系の透徹
剤を使用した場合は引き上げ速度を20mm/sec程度
とする必要がある。もちろん、スライドガラス10の引
き上げ速度は使用するスライドガラス10の大きさや試
料とのかねあいで適宜設定する必要がある。
【0038】カバーガラスの貼着装置では、スライドガ
ラス10をバスケット容器14から取り出す操作から、
封入して完成した顕微鏡標本を収納するまでの工程を自
動化しており、これらの自動制御部の一部としてスライ
ドガラス10の引き上げ速度を調節する制御部が設けら
れる。スライドガラス10の引き上げ速度を適宜調節す
ることによって透徹剤がスライドガラス10に付着する
量を的確に調節することができ、これによって確実な封
入作業を行うことができ、良品の顕微鏡標本を得ること
が可能になる。
【0039】
【発明の効果】本発明に係る顕微鏡標本のカバーガラス
貼着装置によれば、上述したように、スライドガラスの
取り出し操作を複雑な構成とすることなく、能率的に行
うことが可能になる。また、無端状部材を利用して取得
アームを昇降移動させることによって、単一の駆動源を
利用して、簡易な構成によってスライドガラスの取り出
し、移載操作を行うことが可能になる。また、駆動モー
タの制御部を設けることによって、スライドガラスに付
着する透徹剤の量を調節することが可能になり、的確な
カバーガラスの貼着操作を行うことが可能になる等の著
効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】顕微鏡標本のカバーガラス貼着装置の全体構成
を示す斜視図である。
【図2】カバーガラス貼着装置の各処理ステーションの
構成を示す斜視図である。
【図3】スライドガラスの取り出し機構部の側面図であ
る。
【図4】バスケット容器の送り機構部を示す説明図であ
る。
【図5】スライドガラスの取り出し機構部の構成を示す
斜視図である。
【図6】円形ガイド溝の配置例について示す説明図であ
る。
【図7】支持ロッドの配置例を示す説明図である。
【図8】ガイド溝及びガイドロッドを設けない配置例を
示す説明図である。
【図9】バスケット容器にスライドガラスを収納する方
法を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 スライドガラス 12 バスケット 14 バスケット容器 20 フード 30 取り出し機構部 31 吸着部 31a 吸着パッド 31b プリング 31c エアチューブ 32 取得アーム 33 ガイド溝 33a 円形ガイド溝 34 ガイドロッド 34a ローラ 36 搬送プレート 38 分注ノズル 50 カバーガラス 52 ホルダ 59 ラック 60 ベルト 62 駆動モータ 70 ガイド板 72 支持ロッド 74 昇降プーリ 75 支持ブロック 76 センサ板 78 ストッパ 80 駆動モータ 82 ワイヤ 84 プーリ 86、86a、86b 固定プーリ 88、88a バランスウェイト 90 ワイヤ

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 顕微鏡標本用の試料が貼着されたスライ
    ドガラスを容器から取り出して処理用のステーションに
    セットするスライドガラスの取り出し手段と、スライド
    ガラスに封入剤を分注する手段と、試料にカバーガラス
    を貼着する手段と、試料が封入されたスライドガラスを
    収納部に収納する手段とを備えた顕微鏡標本のカバーガ
    ラス貼着装置において、 前記スライドガラスの取り出し手段が、 前記スライドガラスを取得する取得アームと、 該取得アームを、前記容器に収納されたスライドガラス
    を取得する下位置と、前記容器の上方に配置された前記
    ステーションにスライドガラスを移載する上位置との間
    で昇降移動させるとともに、前記ステーションにスライ
    ドガラスを移載する際に前記容器からスライドガラスを
    取り出す向きから前記ステーションに移載する向きに転
    回させる移動機構とを備えたことを特徴とする顕微鏡標
    本のカバーガラス貼着装置。
  2. 【請求項2】 前記移動機構が、 前記取得アームを支持するとともに同軸に昇降プーリが
    取り付けられた支持ロッドと、 該取得アームが昇降移動する際には前記取得アームの傾
    動動作を規制し、前記取得アームが上位置に達した際に
    取得アームの傾動動作の規制を解除する取得アームの規
    制手段と、 前記支持ロッドを前記取得アームの昇降方向に移動可能
    に前記昇降プーリに掛け渡して配置された無端状部材
    と、 該無端状部材に係合するプーリを備え、無端状部材を正
    逆方向に循環させることにより、前記取得アームを前記
    下位置と上位置との間で移動させる駆動モータとを備え
    ていることを特徴とする顕微鏡標本のカバーガラス貼着
    装置。
  3. 【請求項3】 前記規制手段が、 取得アームにガイドロッドを取り付け、該ガイドロッド
    を前記取得アームが昇降移動する際に移動方向を規制す
    るガイド板に係合させて設けたことを特徴とする請求項
    2記載の顕微鏡標本のカバーガラス貼着装置。
  4. 【請求項4】 前記昇降プーリに、前記取得アームとの
    重量バランスをとるバランスウェイトを取り付けたこと
    を特徴とする請求項2記載の顕微鏡標本のカバーガラス
    貼着装置。
  5. 【請求項5】 前記駆動モータの動作を制御して、容器
    からのスライドガラスの引き上げ速度を調節する制御部
    が設けられていることを特徴とする請求項1、2、3ま
    たは4記載の顕微鏡標本のカバーガラス貼着装置。
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