JP2001279306A - 球状Ni−Pアモルファス金属粉末の製法 - Google Patents

球状Ni−Pアモルファス金属粉末の製法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水溶液中の無電解還元反応によりアモルファ
スNi−P合金粉末を製造するさいに,その収率を向上
させる。 【解決手段】 ニッケル塩の水溶液とりんを含む還元剤
の水溶液をpH調整剤の存在下で反応させてNi−P合
金の粒子を析出させるさいに,カルボン酸またはカルボ
ン酸塩の溶存下で該析出反応を進行させることを特徴と
する球状Ni−Pアモルファス金属粉末の製法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,球状アモルファス
Ni−P合金粉末の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】結晶物質では実現できない特有の物理的
性質を示すアモルファス物質は,その製法がある程度確
立され,構造や物性などの解明が進むと共に,太陽電池
や磁気ヘッド等に利用され,新しい半導体材料や磁性材
料としてその用途が拡大しつつある。最近,金属微粉末
がセラミックス化されて電子デバイスなどに利用されて
いるが,アモルファス物質も,安定した性質の微粉末と
して,大量に,経済的に得られれば,その特性を利用し
て,新たに触媒,電子デバイス材料などとしての用途の
一層の拡大が期待できる。
【0003】本発明者らは,これまで化学還元法を利用
して,金属塩,還元剤,pH調整剤の3種類の試薬の水
溶液を適切な条件で混合すると,Ni−Pアモルファス
金属粉末の作製が可能であることを示し,素材物性学雑
誌,第6巻,第2号,71〜79(1993)(刊行物
1と言う):日本金属学会誌,第59巻,第10号(1
995),1041〜1046(刊行物2と言う)等に
おいて,そのための反応条件や粒径制御法を開示してき
た。また,特開平10−317021号公報において,
球状アモルファスCo−Ni−P三元合金粉末の製法を
提案した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これまで提案された液
相での化学還元法によるアモルファスNi−P粒子の製
法では,その粒径制御とアモルファス化の条件がほぼ確
立されたと言えども,その収率については必ずしも満足
なものではなく,その収率が最大でも70%程度であっ
た。また条件によっては粒子同士の凝集の発生が見られ
る等の問題があった。このため,粒径の揃った(すなわ
ち粒度分布の小さい)真球状の粒子からなるNi−Pア
モルファス合金粉末を経済的有利に製造することは必ず
しも容易ではなかった。
【0005】したがって,本発明の課題は,前記の問題
を解決し,各種用途が期待されるNi−Pアモルファス
合金の真球状粉末を安定して且つ経済的に製造できる液
相還元法を確立することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,ニッケル
塩の水溶液とりんを含む還元剤の水溶液をpH調整剤の
存在下で反応させてNi−P合金のアモルファス粒子を
化学還元法で析出させるさいに,カルボン酸またはカル
ボン酸塩の溶存下で該析出反応を進行させると,真球状
のNi−Pアモルファス金属粉末が高い収率で得られる
ことを見い出した。ここで,カルボン酸としては各種の
モノカルボン酸,ジカルボン酸またはオキシカルボン酸
が好適に使用でき,これらカルボン酸のアルカリ金属塩
も同様に使用できる。
【0007】すなわち本発明は,前記の課題を解決する
方法として,ニッケル塩の水溶液とりんを含む還元剤の
水溶液をpH調整剤の存在下で反応させてNi−P合金
の粒子を析出させるさいに,カルボン酸またはカルボン
酸塩の溶存下で該析出反応を進行させることを特徴とす
る球状Ni−Pアモルファス金属粉末の製法を提供する
ものである。この製法によると,平均粒径が10μm以
下で粒度分布の小さい真球状のNi−P合金粒子からな
るアモルファス金属粉末が得られる。
【0008】
【発明の実施の形態】水溶液中に溶存させたNiイオン
をPを含む還元剤で無電解還元して,Ni−Pのアモル
ファス粒子を液中に析出させ且つ一様な粒径に成長させ
るには,pH調整剤,反応温度,攪拌等の諸条件を適切
に調整することが必要となり,そのような諸条件につい
ては,既に本発明者らは前述の刊行物1および刊行物2
等において開示した。このような諸条件を,そのまま,
Ni−Pのアモルファス粒子を得るための本発明の実施
の形態として採用することができる。しかし,それだけ
では収率が十分ではない。
【0009】例えば,ニッケル塩として塩化ニッケル,
リンを含む還元剤として次亜リン酸ナトリウム,pH調
整剤として水酸化ナトリウムを使用し,これら3種の試
薬の水溶液を混合したときのpHが7〜8となるよう
に,各液の濃度と各液の混合量比を調整したうえ,反応
容器に所定の量の還元剤とpH調整剤の混合水溶液を入
れ,これを一定温度(例えば330〜370Kの或る
値)に加熱した後,同じ温度に加熱したニッケル塩水溶
液を加えて攪拌すると,還元反応が進行し,アモルファ
スNi−P合金粉末が生成する。反応終了後は生成物を
水洗・吸引ろ過し,固液分離後,温風で乾燥することに
より該粉末製品が得られるが,該粉末製品の収率は最大
でも70%程度である。また,条件によっては粒子同士
の凝縮が見られるときもある。
【0010】そこで,本発明者らは,これらの欠点を改
善するためには,還元反応時のpH変化をゆるやかに
し,還元剤の自己分解を防げば良いのではないかと考
え,反応をこのように制御するための添加剤を検討して
きたが,前記刊行物1および刊行物2等に記載した金属
塩,還元剤,pH調整剤の3種類の試薬に加えて,カル
ボン酸(アルカリ金属塩を含む)を添加すると,上記の
欠点が解消できることがわかった。すなわち,各種のカ
ルボン酸(塩)を添加した条件で得られた生成物を種々
の方法で観察し,カルボン酸(塩)が反応に及ぼす影響
を調べた結果,次の結論を得た。
【0011】A)カルボン酸(塩)にはpHの変化をゆ
るやかにする作用があり,適切な量を添加することによ
り反応終了後のpHを高い状態に保つことが可能とな
る。 B)カルボン酸(塩)を添加することにより,Ni−P
アモルファス金属粒子の収率は向上し,また分散性も良
好となる。 C)ほとんどのカルボン酸(塩)が収率と分散性を向上
させると考えられるが,くえん酸ナトリウムのように金
属の錯体を作る性質を持っているものは,そのような効
果を示さない。 D)カルボン酸(塩)を添加した条件でも,得られた生
成物はニッケルとりんを主成分とするアモルファス物質
であり,いずれも分散性の良好な球形粒子となる。
【0012】実際に使用できるカルボン酸(塩)として
は,例えば酢酸(塩),ぎ酸(塩),プロピオン酸
(塩),こはく酸(塩),マレイン酸(塩),乳酸
(塩),酒石酸(塩)等が好ましいものとして挙げられ
る。これら有機酸の塩を使用する場合には,ナトリウム
塩であるのが好ましい。
【0013】これらカルボン酸(塩)の添加量について
は,金属塩として塩化ニッケル六水和物 (NiCl2・6H
2O),りん源となる還元剤として次亜りん酸ナトリウム
水和物(NaPH2O2・H2O),反応系のpH調整のために水
酸化ナトリウム(NaOH)を使用する場合, カルボン酸
(塩) /(NiCl2・6H2O) のモル比が 0.6〜2.0 の範囲,
好ましくは 0.8〜1.7 の範囲となるように調整するのが
よい。
【0014】このようにして,本発明によれば,平均粒
径が10μm以下,好ましくは5μm以下,さらに好ま
しくは0.5〜5μmの分散性のよい球状アモルファス
Ni−P合金粉末が高い収率で得られる。その組成はP
含有量が15mass%以下,好ましくは12mass%以下で
残部が実質的にNiである。
【0015】以下に,本発明らが行った試験例により,
本発明をより詳しく説明する。
【0016】
【実施例】〔供試薬〕試験に使用した試薬は,表1に示
すように,ニッケル源の金属塩として塩化ニッケル六水
和物,反応系のpH調整剤として水酸化ナトリウム,リ
ン源となる還元剤として次亜リン酸ナトリウム水和物
と,各種のカルボン酸(アルカリ金属塩を含む)であ
る。これらはいずれも市販の試薬で,蒸留水で所定の濃
度に調整し,水溶液として使用した。
【0017】
【表1】
【0018】〔反応装置〕試験に使用した反応装置を図
1に示した。図示のように,ガラス製容器1(容量 1.0
×10-3m3)に,温度計2,撹拌棒3の他,反応に係わる
コバルト塩とニッケル塩の混合水溶液を蓄える分液漏斗
4を取付け,このものをウォーターバス5に入れて所定
の反応温度を維持するようにした。反応にあたっては,
容器1内を窒素雰囲気に保つためにガス導入管6より窒
素ガスを導入し,余剰の窒素ガスはコンデンサ7を介し
て系外に放出させた。試験過程を図2のフローに示し
た。
【0019】〔操作〕図2のフローチャートに示したよ
うに,あらかじめ濃度を調整した還元剤水溶液と,pH
調整剤及びカルボン酸(アルカリ金属塩を含む)の混合
水溶液を,それぞれ 2.5×10-4m3づつフラスコに取り,
ウオーターバス中で加熱,撹拌しながら,窒素ガスを流
してバブリングを行った。フラスコ内の溶液の温度が所
定の反応温度(誤差±2K)に達した後,同じ温度に加
熱した金属塩水溶液 2.5×10-4m3を一気にフラスコ内に
投入した。投入後,ガス発生による気泡が無くなり,反
応が終了したと認められるまで約1時間撹拌を続け,溶
液を所定の反応温度に保った。この操作を,表2に示し
たように,カルボン酸(またはその塩)の種類を変えて
行ったが,いずれの場合も,濃度,反応温度および攪拌
速度は同一条件とした。
【0020】表2の各例とも,反応によってフラスコ内
に生じた黒色の粉末生成物は,水洗して残留溶液を除い
た後,吸引濾過して固液を分離し,取り出した固形物を
約15時間323Kの温風で乾燥し,各種試験に供し
た。すなわち,各種カルボン酸(またはそのアルカリ金
属塩)を設定して還元反応を進行させた本例の試験で
は,それぞれの条件で得られた生成物について,走査型
電顕を用いて粒子の形状と状態を観察した。また,アモ
ルファス物質かどうかの確認は,熱分析曲線のアモルフ
ァス状態から結晶への転移の際の発熱ピークの確認と,
X線回折パターンから判定を行った。また,生成物の組
成は電子プローブマイクロアナライザによる定性分析と
発光分光分析装置による定量分析で決定した。
【0021】より具体的には,粉末生成物の形状と状態
の観察には,日本電子製JSM-5300型の走査型電顕を用
い,試料を観察用ホルダー上の導電性両面テープに散布
後,金をスパッタリングし,加速電圧15kVで観察した。
また,粉末生成物の熱分析には,マックサイエンス製TG
-DTA2020型を用い,試料約10mgをホルダーに取り,窒
素雰囲気下で,昇温速度16.7×10-2K ・ s -1として,
室温から873Kまで加熱した。粉末生成物のX線回折
は,理学電機製RINT2020型を用いて行ない,ガラス板上
にアルコールで分散させた試料を塗布し,乾燥させた
後,Cu管球,管電圧30kV,管電流30mAの条件下でX線回
折試験を行った。粉末生成物の定性分析には,日本電子
製電子プローブマイクロアナライザJXA-8600型を用い,
試料を観察用ホルダー上の導電性両面テープに散布後,
炭素を蒸着し,加速電圧15kV,電流5×10-8A で定性分
析を行った。粉末生成物の定量分析には,日本ジャーレ
ル・アッシュ製発光分光分析装置ICAP-88 型を用い,試
料を硝酸で溶解し蒸留水で希釈した後,定量分析を行っ
た。試験結果を表3および図3〜図9に示した。
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】これらの試験結果から次のことがわかる。 (1) カルボン酸塩の添加効果〔Y105,111〜11
4の生成物〕 .図3は,カルボン酸塩無添加(Y105)と,酢酸
ナトリウム量を添加した生成物Y111〜Y114(酢
酸ナトリウムの添加量を変えた以外はY105と同一の
生成条件)で得られた生成物のSEM写真であるが,い
ずれも真球状粒子が得られているものの(粒径0.5〜
3μm程度),酢酸ナトリウム無添加または添加量が
0.1 kmol ・ m-3のものではやや凝集が見られるのに対
し, 添加量が 0.5 kmol ・ m-3以上添加されたもの
(Y111〜113)では,凝集が無くなって分散性が
良好になっていることがわかる。
【0025】.図4は,Y105,111〜114の
生成物の収率と酢酸ナトリウム量の関係を示したもので
あるが,酢酸ナトリウムが 0.5〜1.0 kmol・ m-3の範
囲であれば収率90%以上となり,無添加の68%に比
べて著しい収率向上が見られる。すなわち, 酢酸ナトリ
ウムの添加が収率の向上に役立っていると判断される。
【0026】.図5は当該生成物の示差熱曲線を,ま
た図6は当該生成物のX線回折パターンを示したもので
あるが,図5に見られるように,いずれも616K付近
で,際だった発熱ピークを示しており,また,図6に見
られるように,いずれの回折パターンも2θ=44.5
度を中心としたややプロードな盛り上がりを示すだけ
で,明確な結晶ピークは認められない。したがって,生
成物はいずれもアモルファス物質であると判断される。
発熱ピークの616KはNi−Pアモルファス物質が結
晶化するときの発熱ピークとほぼ同じ温度である。
【0027】.当該生成物の化学組成は,表3に見ら
れるように,酢酸ナトリウム量が増えるにしたがってニ
ッケル量は90.8%から92.3%に増加し,逆に,り
んは9.2%から7.7%に減少する傾向が認められた。
一般に,Ni−Pアモルファスの組成は,りんが11w
t.%の共晶組成が最適とされるが,その前後でもアモル
ファス化することが知られている。したがって,今回の
生成物の組成も妥当なものであると考えられる。なお,
生成物の化学組成はEPMAによる定性分析で主にニッ
ケルとりんが検出され,更にごく微量の酸素で構成され
ていることがわかったので,ICPによる定量分析では
ニッケルとりんのみの分析を行った。
【0028】(2) 酢酸の形態の違いによる影響〔Y12
8,112および137の生成物〕 .図7に,酢酸〔Y128〕,酢酸ナトリウム〔Y1
12〕または酢酸カリウム〔Y137〕を添加した場合
について,生成物がどのような形態になるかをSEMで
調べた結果(SEM像)を示したが,やや粒径に差があ
るけれども,いずれも球形のよく分散した粒子が得られ
ていたことがわかる。 .表3の収率からわかるように,これらはいずれも無
添加の例よりも収率が向上している。このことから,酢
酸だけを添加したものでも,水酸化ナトリウムによって
中和され,最終的には塩の酢酸ナトリウムとなっている
ことから説明されると考えられる。なお,いずれの生成
物もアモルファス物質となっており,化学組成もほぼ同
じであった。
【0029】(3) 各種カルボン酸(塩)を添加した場合
の比較 前記のように酢酸ナトリウムを添加した場合には,生成
物の収率及び分散性が向上することが判明したが,他の
カルボン酸(塩)を添加したらどうなるかを調べた。す
なわち,表2に表示のように,ぎ酸,プロピオン酸,こ
はく酸,マレイン酸,乳酸,サリチル酸,酒石酸,くえ
ん酸の各ナトリウム塩(マレイン酸は酸状態)を1.0 km
ol・ m-3相当添加した以外はY112と同様の条件で
得た生成物をSEM観察した。その結果を図8のSEM
像にに示した。
【0030】.図8に見られるように,ぎ酸塩(Y1
38)やプロピオン酸塩(Y139)のモノカルボン酸
塩と,こはく酸塩(Y121)やマレイン酸(Y13
6)のジカルボン酸を添加した場合の生成物はほとんど
が球形のよく分散した粒子となっている。これに対して
乳酸塩(Y135),サリチル酸塩(Y140),酒石
酸塩(Y122)およびクエン酸塩(Y120)のよう
にオキシ酸塩に属するものは,サリチル酸塩を除いて一
般に凝集が見られる。
【0031】.他方,収率を見ると,表3に見られる
ように,サリチル酸塩(Y140)添加のものが32
%,くえん酸塩(Y120)添加のものが41%であ
り,いずれも収率が低下している。
【0032】したがって,カルボン酸(塩)としては,
酢酸(塩),ぎ酸(塩),プロピオン酸(塩),こはく
酸(塩),マレイン酸(塩)等は生成物の分散性および
収率を向上させる作用があり,乳酸(塩)や酒石酸
(塩)も収率の向上には寄与するものと考えられる。
【0033】しかし,サリチル酸(塩)では収率が悪く
なり,くえん酸(塩)では分散性と収率の両者が悪くな
る結果となった。このうち,サリチル酸塩を添加した条
件では,還元反応中に容器内にかなりの泡を生じてお
り,この泡が還元反応を阻害し収率を下げる原因であっ
たと考えられる。また,くえん酸塩を添加した場合は,
今回試験を行ったカルボン酸(塩)の中で唯一ニッケル
の錯体を形成するものであるから,錯体の形成によって
遊離のNi2+イオンが減るためにNiが析出しにくくな
り,収率が下がると共に粒子の分散性も悪くなったもの
と考えられる。
【0034】(4) カルボン酸(塩)添加がpHに及ぼす
影響 前記のように,カルボン酸(塩)を添加した場合には,
生成物の収率及び分散性が向上することが判明したが,
これはカルボン酸(塩)が還元反応時のpH変化をゆる
やかにし,還元剤の自己分解を防いでいることによると
考えられる。そこで,酢酸ナトリウム1.0 kmol・ m -3
を添加した場合と,無添加の場合(従来条件)の反応時
のpH変化を調べ,図9に示す結果を得た。
【0035】図9は,試薬を混合した直後から反応が完
全に終了したと考えられる60分後までのpHを測定し
た結果であるが,酢酸ナトリウムを添加した条件の方が
無添加に比べてpHの変化がゆるやかであり,最終的な
pHも 4.1と無添加の 2.1より高くなっている。また,
他のカルボン酸(塩)を加えた場合でも,最終のpHが
4〜5と無添加のpH2前後より高くなっていることを
確認した。したがってカルボン酸(塩)が還元反応時の
pH変化をゆるやかにしていると判断される。なお,次
亜りん酸ナトリウムを用いた還元反応では,pHが4 以下
では自己分解によって還元力が無くなるとされているの
で,この反応終了後のpHの違いが収率の差を生じている
と考えられる。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように,従来の化学還元法
でNi−Pアモルファス金属粒子を製造する場合には収
率が最大でも70%程度であるのに対し,本発明による
と収率を90%もしくはそれ以上にまで向上させること
ができるようになった。また従来法では,条件によって
は粒子同士の凝集が見られるという欠点があったが,本
発明法によると粒子同士の凝集も防止できるようになっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う球状アモルファスNi−P合金粉
末を製造する装置例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に従う球状アモルファスNi−P合金粉
末の製造手順の例を示すフロー図である。
【図3】本発明に従うアモルファスNi−P合金粉末の
形状例を示す走査型電子顕微鏡写真であり,酢酸ナトリ
ウムの添加量を変えた場合の形状に及ぼす影響を示して
いる。
【図4】本発明法に従うアモルファスNi−P合金粉末
の収率に及ぼす酢酸ナトリウム濃度の影響を示す図であ
る。
【図5】本発明法に従うアモルファスNi−P合金粉末
の製造法において,酢酸ナトリウムの添加量を変えた場
合の生成粉末の示差熱曲線を示す図である。
【図6】本発明法に従うアモルファスNi−P合金粉末
の製造法において,酢酸ナトリウムの添加量を変えた場
合の生成粉末のX線回折パターンを示す図である。
【図7】本発明に従うアモルファスNi−P合金粉末の
他の例を示す走査型電子顕微鏡写真であり,添加する酢
酸の形態を変えた場合の形状に及ぼす影響を示す図であ
る。
【図8】本発明に従うアモルファスNi−P合金粉末の
他の例を示す走査型電子顕微鏡写真であり,添加するカ
ルボン酸(塩)の種類を変えた場合の形状に及ぼす影響
を示す図である。
【図9】本発明に従うアモルファスNi−P合金粉末の
製造法において,酢酸ナトリウムを添加した場合と無添
加の場合の反応系のpHの変化を示す図である。
【符号の説明】
1 反応容器 2 温度計 3 攪拌棒 4 分液漏斗 5 ウォーターバス 6 ガス導入管 7 コンデンサ

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ニッケル塩の水溶液とりんを含む還元剤
    の水溶液をpH調整剤の存在下で反応させてNi−P合
    金の粒子を析出させるさいに,カルボン酸またはカルボ
    ン酸塩の溶存下で該析出反応を進行させることを特徴と
    する球状Ni−Pアモルファス金属粉末の製法。
  2. 【請求項2】 ニッケル塩が塩化ニッケル,リンを含む
    還元剤が次亜リン酸ナトリウム,pH調整剤が水酸化ナ
    トリウムである請求項1に記載の球状Ni−Pアモルフ
    ァス金属粉末の製法。
  3. 【請求項3】 カルボン酸またはカルボン酸塩は,酢酸
    (塩),ぎ酸(塩),プロピオン酸(塩),こはく酸
    (塩),マレイン酸(塩),乳酸(塩),酒石酸(塩)
    の群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または
    2に記載の球状Ni−Pアモルファス金属粉末の製法。
  4. 【請求項4】 請求項1の製法で得た平均粒径10μm
    以下の真球状粒子からなるNi−Pアモルファス金属粉
    末。
  5. 【請求項5】 P含有量が15mass%以下である請求項
    4に記載のNi−Pアモルファス金属粉末。
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