JP2001278984A - 水膨潤性高分子ゲルおよびその製造法 - Google Patents

水膨潤性高分子ゲルおよびその製造法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】吸水性およびゲル強度の高い天然由来の成分を
構成要素とした水膨潤性高分子ゲルおよびそれからなる
水膨潤性高分子ゲル発泡体を提供すること、ならびに生
産性および人体に対する安全性が高く、水系溶媒中で容
易に製造することができる水膨潤性高分子ゲルの製造法
を提供すること。 【解決手段】エステル化されたカルボキシル基含有多糖
類と、天然アミノ酸に由来するα−アミノ基を2つ以上
有する化合物とを反応させてなる水膨潤性高分子ゲル、
該水膨潤性高分子ゲルからなる医用材料、該水膨潤性高
分子ゲル発泡体からなる医用材料、およびエステル化さ
れたカルボキシル基含有多糖類と、天然アミノ酸に由来
するα−アミノ基を2つ以上有する化合物とを反応させ
ることを特徴とする水膨潤性高分子ゲルの製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水膨潤性高分子ゲ
ルおよびその製造法に関する。さらに詳しくは、人体に
対する安全性、吸水性、透明性および機械的特性に優れ
た水膨潤性高分子ゲルに関する。
【0002】
【従来の技術】多糖類を化学的に架橋して得られる水膨
潤性のヒドロゲルは、工業、農業、食品、医療などの分
野で広範に利用されている。医療分野における用途とし
ては、例えば、創傷被覆材料、癒着防止材料、透析膜、
止血材、接着材、シーラント、コンタクトレンズ、組織
再生材料、マイクロカプセル素材、薬物伝達システム
(DDS)などが挙げられる。
【0003】多糖類の化学的な架橋は、化学反応による
架橋(多官能性試薬によるゲル化)、配位結合による架
橋(アルギン酸のカルシウムイオンによるゲル化)、疎
水結合による架橋(メチルセルロースやヒドロキシプロ
ピルセルロースなどの加熱によるゲル化)および分子間
会合による架橋(寒天やカラギーナンなどの冷却ゲル
化)などによって行われている。これらの中では、化学
反応による架橋には、得られる多糖類ゲルの吸水性、強
度などをその目的に応じて容易に調整することができる
という利点がある。
【0004】化学反応による多糖類の架橋は、多糖類溶
液に2以上の官能基を有する架橋試薬を作用させること
によって行なうことができる。しかしながら、多糖類の
多くは水にしか実質的に溶解しないため、水中で効率よ
く架橋を進行させることができない。
【0005】化学反応による多糖類の架橋方法として、
低分子量の二官能性試薬を用い、水系溶媒中で架橋を行
う方法(以下、「低分子架橋剤法」と略称する)が知ら
れている。その中で、化学反応による水溶性多糖類の架
橋方法としては、エポキシ化合物を用い、酸性またはア
ルカリ性水溶液中で架橋を行う方法(特公平6−694
90号公報、特表平11−509256号公報)、ジビ
ニルスルホンを用い、アルカリ性水溶液中で架橋を行う
方法(特開平2−138346公報)などが知られてい
る。
【0006】しかしながら、低分子架橋剤法には、得ら
れるゲルは比較的高い吸水量を示す傾向がある反面、き
わめて脆弱であるという欠点があるのみならず、製造後
には、ゲル内部に大量に残留している架橋剤や触媒を除
去するために、高分子ゲル自体を徹底的に洗浄するとい
う煩雑な操作を要するという欠点がある。
【0007】このように低分子架橋剤法は、ヒドロゲル
の物性および生産性の面で、必ずしも有用な方法である
とはいえない。
【0008】近年、多官能性の高分子架橋剤を用いる方
法(以下、「高分子架橋剤法」と略称する)が開発され
ている。
【0009】高分子架橋剤法としては、エステル化され
たカルボキシル基含有多糖類、例えば、アルギン酸プロ
ピレングリコールエステル(以下、「PGA」と略称す
る)を、ゼラチンなどのアミノ基を有する水溶性高分子
化合物で架橋し、不溶化する方法が知られている〔英国
特許第962483号明細書;特表平8−508933
号公報;S.B.モハメドら、フード・ケミストリー、
第13巻、241頁、1984年(S.B.Moham
ed,G.Stainsby,Food Chemis
try,13,241(1984));J.E.マッケ
イら、カルボハイドレート・ポリマーズ、第5巻、22
3頁、1985年(J.E.McKay,G.Stai
nsby,E.L.Wilson,Carbohyd.
Polym., 5,223(1985))など〕。
【0010】上記の方法によれば、ポリアミノ酸(タン
パク質)のリジン残基に由来するε−アミノ基とPGA
のエステル部位が、水中でアミノリシス(アミド化)反
応を起こす機構を経由してゲル化するものと考えられて
いる。
【0011】しかしながら、PGAとゼラチンなどのタ
ンパク質からなるゲルには、その製造の際に高濃度のタ
ンパク質溶液が必要なことから、必然的にタンパク質が
大量に含まれるため、吸水性が低いという欠点がある。
また、このゲルは、医用材料として好適な中性の水溶液
中で形成させることができないという欠点もある。
【0012】また、ポリエチレンイミンなどのアミノ基
を繰り返し単位に含む合成高分子化合物をPGAの架橋
剤として利用することも考えられているが(英国特許第
962483号明細書)、ゲルの形成にはアルカリ性物
質による処理が必要であるため、ゲルに小孔などの欠陥
が生じやすいという欠点があるのみならず、ゲルの吸水
性や強度がきわめて低いという実用上の問題がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技
術に鑑みてなされたものであり、吸水性およびゲル強度
の高い天然由来の成分を構成要素とした水膨潤性高分子
ゲル、およびそれからなる水膨潤性高分子ゲル発泡体を
提供することを目的とする。
【0014】さらに、本発明は、生産性および人体に対
する安全性が高く、水系溶媒中で容易に製造することが
できる水膨潤性高分子ゲルの製造法を提供することを目
的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は、鋭意検討し
た結果、エステル化されたカルボキシル基含有多糖類
と、天然アミノ酸に由来するα−アミノ基を2つ以上有
する化合物から形成された水膨潤性高分子ゲルが前記目
的を達成することを見出し、本発明に到達した。
【0016】すなわち、本発明は、エステル化されたカ
ルボキシル基含有多糖類と、天然アミノ酸に由来するα
−アミノ基を2つ以上有する化合物とを反応させてなる
水膨潤性高分子ゲルおよびそれからなる水膨潤性高分子
ゲル発泡体に関する。
【0017】また、もう1つの本発明は、エステル化さ
れたカルボキシル基含有多糖類と、天然アミノ酸に由来
するα−アミノ基を2つ以上有する化合物とを反応させ
ることを特徴とする水膨潤性高分子ゲルの製造法に関す
る。
【0018】
【発明の実施の形態】エステル化されたカルボキシル基
含有多糖類(以下、「エステル化多糖類」と略称する)
とは、カルボキシル基含有多糖類のカルボキシル基のう
ち、少なくとも1つがアルコール類の水酸基とエステル
結合しているものをいい、該カルボキシル基のうち少な
くとも2つがエステル結合しているものが好ましい。エ
ステル化多糖類の中では、実質的に水溶性であるものが
好ましい。
【0019】アルコール類としては、脂肪族アルコー
ル、芳香性脂肪族アルコール、環状脂肪族アルコールお
よび複素環式アルコールが挙げられる。これらの中で
は、エステル化多糖類の水溶性を考慮すれば、例えば、
メタノール、エタノール、プロパノールなどの炭素数が
1〜16の脂肪族アルコール、およびエチレングリコー
ル、プロピレングリコール、グリセリンなどの2つ以上
の水酸基を有する炭素数が2〜16の多価アルコールが
挙げられる。なお、多価アルコールの場合には、1つの
水酸基のみがカルボキシル基含有多糖類のカルボキシル
基とエステル結合している必要がある。
【0020】カルボキシル基含有多糖類としては、アル
ギン酸、キサンタンガム、ジェランガム、ヒアルロン酸
などのカルボキシル基含有多糖類およびこれらの生理学
的に許容される人工的な誘導体、カルボキシメチルセル
ロース、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメ
チルプルランなどの通常ではカルボキシル基を含有しな
い多糖類の人工的な誘導体、部分マレイル化キトサン、
部分スクシニル化キトサン、カルボキシメチルキトサ
ン、カルボキシメチルキチンなどのカルボキシル基が導
入されたキチンまたはキトサンの誘導体などが例示され
る。これらの中では、アルギン酸およびヒアルロン酸
は、人体に対する安全性および人体内での分解性の観点
から好ましい。
【0021】エステル化多糖類を製造する方法として
は、例えば、日本化学会編「実験化学講座22 有機合
成IV −酸・アミノ酸・ペプチド−」第4版、丸善、
1992年、43〜83頁などに記載された一般的な方
法や、例えば、M.ヤルパニ、テトラヘドロン、第41
巻、2957頁、1985年〔M.Yalpani,T
etrahedron,41,2957(1985)〕
などに記載されている方法が挙げられる。特に好ましい
方法は、例えば、米国特許2494912号明細書、
A.B.スタイナー、W.H.マクニーリー、インダス
トリアル・アンド・エンジニアリング・ケミストリー、
第43巻、2073頁、1951年(A.B.Stei
ner,W.H.McNeely,Ind.Eng.C
hem.,43,2073(1951))、または特開
昭52−36177号公報に記載されているように、エ
チレンオキシドやプロピレンオキシドなどの1,2−エ
ポキシドや、トリメチレンオキシドなどの1,3−エポ
キシド類をカルボキシル基含有多糖類に作用させる方法
である。以上の方法によって製造されるエステル化多糖
類の種類には特に限定がなく、前記の概念の範疇にある
ものであれば何れも使用することができる。
【0022】カルボキシル基含有多糖類がアルギン酸で
ある場合、エステル化多糖類としては、PGA、アルギ
ン酸エチレングリコールエステル、アルギン酸トリメチ
レングリコールエステル、アルギン酸ブチレングリコー
ルエステル、アルギン酸ペンチレングリコールエステル
などが挙げられる。
【0023】カルボキシル基含有多糖類がヒアルロン酸
である場合、エステル化多糖類としては、ヒアルロン酸
プロピレングリコールエステル、ヒアルロン酸エチレン
グリコールエステル、ヒアルロン酸トリメチレングリコ
ールエステル、ヒアルロン酸ブチレングリコールエステ
ル、ヒアルロン酸ペンチレングリコールエステルなどが
挙げられる。
【0024】エステル化多糖類の中では、PGAおよび
ヒアルロン酸プロピレングリコールエステルは、人体に
対する安全性および人体内での分解性の観点から好まし
い。
【0025】本発明の水膨潤性高分子ゲルを構成するも
う1つの成分である、天然アミノ酸に由来するα−アミ
ノ基を2つ以上有する化合物(以下、「ポリアミン」と
略称する)とは、第1級または第2級アミノ基を2つ以
上有する化合物であって、該アミノ基が天然に見出され
るアミノ酸であるアラニン、グリシン、フェニルアラニ
ン、セリン、バリン、リジン、グルタミン酸などのα−
アミノ基であるものをいう。
【0026】本発明に使用しうるポリアミンの種類には
特に限定がないが、多糖類、ポリアミノ酸またはこれら
の誘導体が好ましい。ポリアミンは、最適に官能基が保
護された天然アミノ酸誘導体を多糖類、ポリアミノ酸な
どに化学修飾により導入した後、脱保護する方法により
製造することができる。
【0027】ポリアミンの中では、入手の容易さおよび
人体に対する安全性の観点から、ε−ポリリジンが好ま
しい。ε−ポリリジンは、式: H-[NH-CH2CH2CH2CH2-CH(NH2)-CO]n -OH (式中、nは2〜500の整数を示す)で表されるよう
に、リジンのε位のアミノ基とα位のカルボキシル基と
がアミド結合により縮合した水溶性高分子化合物であ
り、その高分子鎖にはリジンのα−アミノ基が存在して
いる。
【0028】本発明の水膨潤性高分子ゲルには、エステ
ル化多糖類およびポリアミン以外に、第三成分として他
の水溶性高分子化合物(以下、「他の水溶性高分子化合
物」という)の1種類以上が構成成分として含有されて
いてもよい。
【0029】他の水溶性高分子化合物の種類には特に限
定がない。他の水溶性高分子化合物としては、アガロー
ス、アルギン酸ナトリウム、寒天、カラギーナン、キサ
ンタンガム、ジェランガム、デキストラン、ヒアルロン
酸、プルラン、ヘパリンなどの水溶性多糖類およびこれ
らの生理学的に許容される人工的な誘導体、部分脱アセ
チル化キチン、キトサン、部分マレイル化キトサン、部
分スクシニル化キトサン、カルボキシメチル化キトサン
などのキチンまたはキトサンの誘導体、カルボキシメチ
ルセルロースなどのセルロース誘導体、コラーゲン、ア
テロコラーゲン、ゼラチン、カゼインなどのポリアミノ
酸(タンパク質)およびこれらの生理学的に許容される
人工的な誘導体などが例示される。
【0030】2以上の他の水溶性高分子化合物の分子間
には、エステル化多糖類とポリアミンとの間で形成され
る架橋結合以外の架橋が存在していてもよい。その架橋
方法としては、長田および梶原編、「ゲルハンドブッ
ク」(エヌ・ティー・エス、1997年)などに記載さ
れている方法、すなわちアルデヒド化合物、エポキシ化
合物、イソシアネート化合物などによる水溶性高分子化
合物の官能基同士の架橋、光二量化性基や重合性基を用
いた光架橋、多価金属イオンによる配位結合による架橋
などが例示されるが、本発明はこれらのみに限定される
ものではない。
【0031】本発明の水膨潤性高分子ゲルには、さらに
水膨潤性高分子ゲルのゲル強度の向上、エステル化多糖
類およびポリアミンを含む混合溶液の分散安定性の向上
の観点から、無機塩類、有機塩類などの塩類が含まれて
いてもよい。塩類の例としては、塩化ナトリウム、塩化
カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウムなどの無機
塩類、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸
ナトリウムなどの有機塩類が挙げられる。
【0032】本発明の水膨潤性高分子ゲルは、エステル
化多糖類とポリアミンとを反応させることによって得ら
れる。この反応は、先に示したPGAとゼラチンから形
成されるゲルと同様に、エステル化多糖類のエステル化
されたカルボキシル基部位とポリアミンのα−アミノ基
とのアミノリシス反応、すなわちアミド化による架橋反
応である。
【0033】エステル化多糖類とポリアミンとを反応さ
せる際の両者の混合比は、ゲル化時間、高分子ゲルの力
学的強度および吸水性に応じて任意に設定することがで
きる。なお、本発明の水膨潤性高分子ゲルを実質的に水
不溶性とし、高い吸水性を発現させるためには、エステ
ル基とα−アミノ基のモル比〔エステル基(mol)/
α−アミノ基(mol)〕は、1〜100であることが
望ましい。このモル比は、高いほど水膨潤性高分子ゲル
の吸水性が向上する。
【0034】エステル化多糖類とポリアミンとを反応さ
せてゲル化させる方法としては、両者を溶液状態で混合
して反応させてゲル化させる方法、エステル化多糖類を
ポリアミンの溶液に浸漬、含浸させて反応させてゲル化
させる方法、ポリアミンを、エステル化多糖類の溶液に
浸漬、含浸して反応させてゲル化させる方法などが挙げ
られる。反応時の温度は、特に限定されるものではな
く、自由に設定することができる。
【0035】エステル化多糖類およびポリアミンを溶解
する溶媒としては、水が好ましい。なお、ゲル化速度の
制御などの目的のために、有機溶媒が添加された水系溶
媒を用いてもよい。有機溶媒としては、メタノール、エ
タノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プ
ロピレングリコール等のアルコール系溶媒、テトラヒド
ロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジメチル
ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロ
リドンなどのアミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケ
トンなどのケトン系溶媒、ジメチルスルホキシドなどを
例示することができる。水と有機溶媒との混合比は、特
に限定されず、任意に選択することができる。
【0036】また、エステル化多糖類およびポリアミン
の溶液のpHを適宜調整することにより、穏和な条件下
でのゲル化や、迅速なゲル化を行うことができる。かか
るpHの調整の際には、例えば、塩酸や酢酸などの酸性
物質、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性物質、リン酸
系緩衝液やホウ酸系緩衝液などの緩衝液をpH調整剤と
して用いることができる。
【0037】以上のようにしてエステル化多糖類とポリ
アミンとを反応させることにより、水膨潤性高分子ゲル
を得ることができる。
【0038】本発明の水膨潤性高分子ゲルは、その用途
に応じた形状に適宜、調整することができる。かかる形
状としては、例えば、糸状、膜状、管状(中空糸、チュ
ーブ)、粒状(マイクロカプセル)、不織布状、塊状、
ハニカム状、発泡体(スポンジ)状などが挙げられる。
なお、本発明の水膨潤性高分子ゲルは、柔軟性、空隙へ
の充填性および高い吸水性などが要求される用途に使用
する場合には、発泡体であることが好ましい。この発泡
体は、さらに糸状、膜状、管状、粒状、不織布状、塊
状、ハニカム状などに成形したり、他の基材や部位に塗
布、コーティング、含浸、付着または埋没することも可
能である。
【0039】さらに、本発明の水膨潤性高分子ゲルは、
他の基材や部位に塗布、コーティング、含浸、付着また
は埋没することによって使用することができる。他の基
材や部位としては、例えば、ガーゼ、編織布、不織布、
綿状体、糸状体、フィルム、メッシュ、多孔性スポン
ジ、ゴム、プラスチック、金属、人工臓器、生体組織の
表面、切断面、傷口などが挙げられる。なお、他の基材
や部材の大きさ、厚さ、長さ、直径などは、特に限定さ
れない。
【0040】成形された水膨潤性高分子ゲルは、例え
ば、エステル化多糖類溶液またはポリアミン溶液をノズ
ルやダイから押出したり、成形型内に注入することによ
り、前述したような形状に成形した後、得られた成形体
をそれぞれポリアミン溶液またはエステル化多糖類溶液
と接触させてゲル化を行う方法;エステル化多糖類とポ
リアミンとの混合溶液を調製し、得られた溶液をノズル
やダイから押出したり、成形型内に注入することによ
り、前述したような形状に成形すると同時に、ゲル化を
行う方法などによって製造することができる。
【0041】本発明の水膨潤性高分子ゲル発泡体は、水
で膨潤しているゲルを凍結乾燥する一般的な方法や、ゲ
ル内部に気泡を導入する方法によって製造することがで
きる。
【0042】ゲル内部に気泡を導入して発泡体を製造す
る方法としては、例えば、英国特許第574,382号
明細書、特開平5−254029号公報、特開平8−2
08868号公報、特開平8−337674号公報、特
表平6−510330号公報などに記載されている方法
などが挙げられる。かかる方法で本発明の水膨潤性高分
子ゲル発泡体を製造した場合には、これらの文献に記載
された発泡体と対比して、より高い吸水性および安定性
を有する水膨潤性高分子ゲル発泡体が得られる。
【0043】ゲル内部に気泡を導入して発泡体を製造す
る方法の具体例としては、エステル化多糖類溶液または
ポリアミン溶液に気泡を導入して発泡させた後に、それ
ぞれポリアミン溶液またはエステル化多糖類溶液と接触
させてゲル化させる方法、エステル化多糖類とポリアミ
ンとの混合溶液に気泡を導入して発泡させた後に、ゲル
化を完了する方法などが挙げられる。
【0044】溶液に気泡を導入して発泡させる方法とし
ては、加熱または反応によって水不溶性気体を発生する
発泡剤、例えば、炭酸アンモニウム、アゾジカルボンア
ミド、p−トルエンスルホニルヒドラジドなどの分解型
発泡剤、ブタン、ヘキサン、エーテルなどの蒸発型発泡
剤を添加して発泡させる方法、機械的に攪拌して供給さ
れる気体を水溶液内に拡散させて発泡させる方法などが
挙げられる。
【0045】なお、前記溶液には、発泡を安定して行う
ために、必要に応じて、気泡形成剤であるイオン性また
は非イオン性界面活性剤を含有させてもよい。
【0046】イオン性界面活性剤としては、例えば、ス
テアリン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、α−
オレフィンスルホン酸塩、スルホアルキルアミドなどの
アニオン性界面活性剤;アルキルジメチルベンジルアン
モニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アル
キルピリジニウム塩などのカチオン性界面活性剤;およ
びイミダゾリン型活性剤などの両性界面活性剤が挙げら
れる。
【0047】非イオン性界面活性剤としては、例えば、
ポリエチレンオキシドアルキルエーテル類、ポリエチレ
ンオキシドアルキルフェニルエーテル類、グリセリン脂
肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖
脂肪酸エステル類などが挙げられる。
【0048】前述した界面活性剤のうち、低分子量のも
のには、生体組織や生理活性物質(酵素など)に対して
刺激性や変性作用を呈するものがある。したがって、本
発明の水膨潤性高分子ゲル発泡体を医用材料に用いる場
合には、かかる界面活性剤の使用を回避することが好ま
しい。
【0049】なお、エステル化多糖類は、それ自体が両
親媒性を示し、気−液界面を安定化させる気泡形成剤と
して機能する。したがって、発泡させる際に、エステル
化多糖類は、安定して気泡を導入(発泡)させる性質を
有するため、界面活性剤をあえて使用しなくてもよい。
また、このエステル化多糖類は、両親媒性に加えて反応
性を有することから、「反応性界面活性多糖類」と称す
ることができる。
【0050】なお、界面活性剤には、必要に応じて、卵
白、ゼラチン、アルブミンなどのタンパク質、レシチン
などを使用してもよい。
【0051】ところで、前記溶液を発泡させた際には、
泡の安定性が十分でない場合がある。例えば、架橋が完
了する前に泡が消失する場合には、泡の安定化剤とし
て、ドデシルアルコール、テトラデカノール、ヘキサデ
カノールなどの高級アルコール、エタノールアミンなど
のアミノアルコール、カルボキシメチルセルロースなど
の水溶性高分子化合物をこの溶液に添加することができ
る。
【0052】また、エステル化多糖類の水溶液にゲル化
多糖類を添加し、溶液全体を一旦ゲル化させることによ
り、泡を安定化させることもできる。ゲル化多糖類とし
ては、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アミ
ロペクチン、アラビナン、イソリケナン、カードラン、
寒天、カラゲナン、ジェランガム、ニゲラン、ラミナラ
ンなどの加熱すると水に溶解し、冷却するとゲル化する
天然多糖類が例示される。
【0053】以上のようにして本発明の水膨潤性高分子
ゲルは発泡体へと成形されるが、成形の方法は、前述の
方法に限定されるものではない。
【0054】ところで、本発明の水膨潤性高分子ゲルに
は、アミド結合に関与しなかったエステル化多糖類に由
来する未反応のエステル基およびポリアミンに由来する
未反応のα−アミノ基が含まれている。従って、水膨潤
性高分子ゲルの機能化および吸水性の向上の観点から、
エステル化多糖類とポリアミンとを反応させて水膨潤性
高分子ゲルを形成させた後には、エステル基またはα−
アミノ基と反応する化合物を該水膨潤性高分子ゲルに含
浸させ、該化合物と未反応のエステル基またはα−アミ
ノ基を有する水膨潤性高分子ゲルとを反応させてもよ
い。
【0055】水膨潤性高分子ゲルは、そのα−アミノ基
が各種化合物に対する反応性に富むので、例えば、アシ
ル化、アルキル化、イミノ(シッフ塩基)化、還元アル
キル化反応などを行うことができる。α−アミノ基と反
応させることができる化合物としては、無水酢酸、無水
コハク酸などの酸無水物、アセトアルデヒド、グリオキ
シル酸などのアルデヒド類、ハロゲン化アルキル、ジメ
チル硫酸などのアルキル化剤などが例示されるが、本発
明はかかる例示のみに限定されるものではない。
【0056】また、水膨潤性高分子ゲルのエステル基
と、アミノ基を有する化合物とを反応させて、アミド結
合を形成することができる。アミノ基を有する化合物と
しては、例えば、エタノールアミン、ホスホリルエタノ
ールアミン、タウリン、アミノ酸、タンパク質、オリゴ
ペプチドなどを挙げることができる。水膨潤性高分子ゲ
ルとアミノ基を有する化合物との反応は、pHが7以上
のアルカリ性条件下で行うことが好ましい。
【0057】本発明の水膨潤性高分子ゲルは、そのまま
の状態で使用することができるが、水系溶媒に浸漬する
などして洗浄した後に使用することもできる。また、本
発明の水膨潤性高分子ゲルを加熱乾燥、減圧乾燥または
凍結乾燥によって一部分ないし全部の水系溶媒が除去さ
れた状態で使用してもよい。
【0058】水膨潤性高分子ゲルを洗浄することは、そ
の内部に有毒な添加物や副生成物が存在しているとき
に、これらを除去するのに有効な手段である。
【0059】本発明の水膨潤性高分子ゲルを乾燥させる
方法は、特に限定がなく、水膨潤性高分子ゲルの用途な
どに応じて適宜選択すればよい。水膨潤性高分子ゲル
は、水混和性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノー
ル、プロパノールなどのアルコール系溶媒やアセトン溶
媒中に水膨潤性高分子ゲルを浸漬し、水膨潤性高分子ゲ
ルに含まれている水系溶媒の少なくとも一部分を該水混
和性有機溶媒と置換した後に乾燥させてもよい。なお、
水膨潤性高分子ゲルを乾燥させる際の温度は、特に限定
されず、本発明の目的が阻害されない範囲内で適宜選択
することができる。
【0060】なお、乾燥された本発明の水膨潤性高分子
ゲルの柔軟性を高めるために、軟化剤を使用することが
できる。軟化剤としては、例えば、グリセリン、エチレ
ングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトー
ル、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール
などの多価アルコール、ジメチルスルホキシド、水など
が挙げられる。軟化剤は、ゲル化する前の溶液に添加す
るか、ゲル化後の水膨潤性高分子ゲル内部に含浸させる
か、あるいは水膨潤性高分子ゲルを乾燥させた後に付与
することにより、水膨潤性高分子ゲル中に含有させるこ
とができる。
【0061】また、前記軟化剤を使用する方法に加え
て、本発明の水膨潤性高分子ゲル発泡体を柔軟化させる
方法として、水膨潤性高分子ゲル発泡体を圧縮して比較
的薄いシート状にする方法も挙げられる。このように水
膨潤性高分子ゲル発泡体を圧縮した場合には、水膨潤性
高分子ゲル発泡体の三次元的な支持構造が部分的に崩壊
するため、柔軟性が得られるものと考えられる。圧縮
は、プレス機、ローラーなどを用いて行うことができ
る。また、そのスペーサーやギャップなどを調整するこ
とにより、水膨潤性高分子ゲル発泡体の厚さを制御する
こともできる。圧縮後の水膨潤性高分子ゲル発泡体の厚
さには特に限定がなく、本発明の水膨潤性高分子ゲルの
用途などに応じて適宜選択すればよい。
【0062】本発明の水膨潤性高分子ゲルは、高いゲル
強度と吸水性を兼ね備えたヒドロゲル材料である。した
がって、本発明の水膨潤性高分子ゲルは、例えば、工
業、農業、食品、医療など広範囲の分野で応用すること
ができる。その中でも、吸水性、安全性および機械的特
性の観点から、本発明の水膨潤性高分子ゲルは、特に医
用材料に好適に応用することができる。
【0063】医用材料としては、例えば、創傷被覆材
料、癒着防止材料、透析膜、止血材、接着材、シーラン
ト、コンタクトレンズ、組織再生材料、細胞外マトリク
ス、マイクロカプセル素材、薬物伝達システム(DD
S)などが挙げられる。かかる医用材料は、生理活性物
質(例えば、ヘパリン、デルマタン硫酸、ヘパラン硫
酸、サイトカイン、抗炎症剤、成長因子類、酵素類な
ど)、抗菌剤、生体細胞などを包含していてもよい。
【0064】創傷被覆材を外傷、熱傷、潰瘍などの創傷
の治療に用いる場合には、本発明の水膨潤性高分子ゲル
を創傷部位に貼付することにより、創傷部位からの滲出
液中の治癒促進因子を良好に保持して治癒することがで
きる。創傷部位からの滲出液量が比較的多い場合には、
皮膚欠損部への充填、余剰滲出液の吸収、保持およびド
レナージを行うために、水膨潤性高分子ゲル発泡体を用
いることが好ましい。
【0065】本発明の水膨潤性高分子ゲルには、創傷治
癒の促進、細菌感染の防止などの目的で、消毒剤、抗生
剤、抗菌剤、増殖因子〔例えば、繊維芽細胞増殖因子
(FGF)、上皮細胞成長因子(EGF)など〕、構造
タンパク質(例えばフィブリン、コラーゲンなど)、各
種アミノ酸、ビタミン類の1種以上が含有されていても
よく、あるいは結合していてもよい。
【0066】以上の用途に本発明の水膨潤性高分子ゲル
発泡体を用いる場合には、少なくとも一部分の水分が除
かれた状態で使用することが望ましい。乾燥された発泡
体を圧縮処理によって柔軟化させた場合には、該発泡体
を容易に創傷に沿わせることができるので、軟化剤など
の溶出性のある低分子化合物を必ずしも該発泡体に含有
させる必要がない。従って、生体本来の状態に近い創傷
の湿潤環境を保つことができるので、治癒を阻害するお
それが小さい。
【0067】また、滲出液量が比較的少ない創傷に対し
ては、含水した水膨潤性高分子ゲルまたは乾燥された膜
状の水膨潤性高分子ゲルをその患部に貼付してもよく、
あるいはその患部で本発明の水膨潤性高分子ゲルまたは
その発泡体を形成させてもよい。
【0068】癒着防止材は、外科手術の際に手術痕の癒
着を防止し、回復を早める材料である。本発明の水膨潤
性高分子ゲルは、このような癒着防止材として使用する
こともできる。この場合、水膨潤性高分子ゲルを癒着を
防止させるべき場所(腹壁または腹腔内臓器)に貼付す
るか、あるいはその場所(インサイツ)で形成させ、そ
の箇所を被覆、保護することにより、癒着を防止するこ
とができる。水膨潤性高分子ゲルは、例えば、フィル
ム、被膜、発泡体などの形態で使用することができる。
その場所(インサイツ)で水膨潤性高分子ゲルを形成さ
せる場合には、水膨潤性高分子ゲルを液状で供給するこ
とにより、その被膜を容易に形成させることができる。
従って、かかる方法は、内視鏡下での手術などにおいて
特に有用である。
【0069】本発明の水膨潤性高分子ゲルは、また組織
再生材料、つまり皮膚、粘膜、骨、軟骨、血管、弁、神
経や角膜などを再生するための細胞外マトリクスとして
使用してもよい。この場合、水膨潤性高分子ゲルには、
細胞増殖因子(例えばFGF、BMPなど)、構造タン
パク質(例えばフィブリン、コラーゲンなど)、細胞接
着性リガンド(例えばRGDペプチドなど)、生体細胞
(例えば肝細胞、繊維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、肝
細胞など)が含有されているか、あるいは結合されてい
てもよい。水膨潤性高分子ゲルを組織再生材料として使
用する場合には、水膨潤性高分子ゲルは、組織を再生す
る場所に貼付するか、あるいはその場(インサイツ)で
形成することもできる。また、欠損した生体組織は、欠
損部位への線維性組織の侵入を防ぐことができれば、自
然に治癒することもあるので、本発明の水膨潤性高分子
ゲルを、繊維性組織の侵入を防ぐバリアーとして使用す
ることもできる。
【0070】本発明の水膨潤性高分子ゲルを癒着防止材
料、止血材、接着材、シーラント、組織再生材料などの
体内に埋め込まれる用途に使用する場合には、該水膨潤
性高分子ゲルは、各機能を発揮した後に速やかに生分解
し、吸収されることが望ましい。従って、本発明の水膨
潤性高分子ゲルに使用されているエステル化多糖類は、
生体内で低分子量化するものが好ましい。この用途に好
適に使用しうるエステル化多糖類としては、例えば、エ
ステル化アルギン酸、エステル化ヒアルロン酸などが挙
げられる。
【0071】なお、本発明の水膨潤性高分子ゲルからな
る医用材料は、滅菌して使用することが好ましい。かか
る滅菌方法には、特に限定がなく、その医用材料の種類
などに応じて適宜選択すればよい。かかる滅菌として
は、例えば、オートクレーブ滅菌(例えば121℃、2
0分間)、エチレンオキサイドガス滅菌、γ線滅菌、電
子線滅菌などが挙げられる。
【0072】以上説明したように、本発明の水膨潤性高
分子ゲルは、エステル化多糖類とポリアミンとを反応さ
せることによって得られるものであるので、中性付近の
水系溶媒中でも効率よく形成することができる。また、
その原料化合物として、天然由来の成分が用いられてい
るので、生分解性や安全性に優れ、さらにゲル化時間、
吸水性およびゲル強度などの特性の調整が容易である。
これは、ポリアミンのα−アミノ基の塩基性が、従来技
術におけるリジンのε−アミノ基やアルキルアミンと比
べてかなり低いことに起因しているものと考えられる。
すなわち、低いpH条件下でも、α−アミノ基の場合で
は架橋に関与しうる遊離のアミノ基濃度が、ε−アミノ
基やアルキルアミンと比べて高いことに起因するものと
推察される。
【0073】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細
に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定される
ものではない。
【0074】なお、各実施例および比較例において、膨
潤度、粘度およびゲル強度は、以下の方法に従って測定
した。
【0075】A.膨潤度 水膨潤性高分子ゲルの膨潤度は、式: 〔膨潤度〕=〔Wg1(水膨潤ゲル)−Wg2(乾燥ゲ
ル)〕/Wg2(乾燥ゲル) (式中、Wg1(水膨潤ゲル)は乾燥高分子ゲルまたは
水系溶媒を含む高分子ゲルを4時間以上水または生理的
食塩水に浸漬した後の重量、Wg2(乾燥ゲル)は乾燥
した高分子ゲルの重量を示す)に従って求めた。
【0076】B.粘度 粘度は、ブルックフィールド型粘度計を用いて測定し
た。粘度の単位はmPa・sであり、粘度は1重量%水
溶液、20℃の条件下における値である。
【0077】C.ゲル強度 幅1cm、長さ2cmのメッシュ〔アドバンテック、メ
ッシュシート(MESH SHEETS、76mm)〕
2枚を1cm×1cmのフッ素樹脂製プレート上に約1
mmの間隙を設けて置いた。ゲルの原料溶液0.3mL
をプレート全体に広くのばし、以下の実施例または比較
例の方法によりゲルを生成させた。フッ素樹脂製プレー
トを外し、オートグラフ〔(株)(島津製作所製、商品
名:EZ−test〕の治具にメッシュ部分を挟み、破
断するまでの最大応力(破断強度)を測定し、これをゲ
ル強度とした。
【0078】実施例1〔PGA−ε−ポリリジンゲルの
調製〕 2重量%PGA〔和光純薬工業(株)製、粘度:100
mPa・s〕水溶液30gに、10重量%のε−ポリリ
ジン水溶液〔チッソ(株)製〕2.4mLを添加してよ
く混合した。
【0079】得られた混合溶液を試料ビンに入れたまま
室温で静置し、徐々に溶液全体をゲル化させた。このと
き、ゲル化時間(PGA水溶液とε−ポリリジン水溶液
とを混合したときから混合溶液が試料ビンを傾けても流
れ出さなくなったときまでの時間)を調べたところ、約
9分間であった。
【0080】次に、生成したゲルを16時間室温で放置
した後、イオン交換水300mLに24時間浸漬したと
ころ、膨潤度が5.2の透明な高分子ゲルが得られた。
【0081】実施例2〜4〔吸水性が制御されたPGA
−ε−ポリリジンゲルの調製〕 実施例1と同様にして、2重量%PGA〔和光純薬工業
(株)製、粘度100mPa・s〕水溶液30gに、1
0重量%のε−ポリリジン水溶液〔チッソ(株)製〕
4.8mL、0.8mLまたは0.4mLを添加してよ
く混合した。
【0082】得られた混合溶液を試料ビンに入れたまま
室温で静置し、徐々に溶液全体をゲル化させた。このと
きにゲル化時間を実施例1と同様にして測定した。その
結果を表1に示す。
【0083】次に、生成したゲルを16時間室温で放置
した後、イオン交換水300mLに24時間浸漬したと
ころ、水で膨潤した高分子ゲルが得られた。得られた高
分子ゲルの膨潤度を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】表1に示された結果から、ε−ポリリジン
の添加量を調整することにより、ゲル化時間および膨潤
度を精密に制御することができることがわかる。
【0086】実施例5〜8〔PGA−ε−ポリリジンゲ
ルの調製〕 酢酸でpHを7.5、8.0、8.5または9.0に調
整した10重量%のε−ポリリジン水溶液を調製した。
【0087】次に、2重量%PGA〔フナコシ(株)
製、粘度:100〜150mPa・s〕水溶液10g
に、先に予め調製しておいた各pHのε−ポリリジン水
溶液をそれぞれ1mLずつ添加してよく混合した。
【0088】得られた混合溶液を試料ビンに入れたまま
室温で静置し、徐々に溶液全体をゲル化させた。このと
きにゲル化時間を実施例1と同様にして測定した。その
結果を表2に示す。
【0089】次に、生成したゲルを5時間室温で放置し
た後、イオン交換水300mLに24時間浸漬したとこ
ろ、水で膨潤した透明性の高い高分子ゲルが得られた。
得られた高分子ゲルの膨潤度を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】表2に示された結果から、ε−ポリリジン
水溶液のpHを調整することにより、ゲル化時間および
膨潤度を精密に制御することができることがわかる。
【0092】実施例9〔PGA−ε−ポリリジンゲルの
調製〕 2重量%PGA〔紀文フードケミファ(株)製、粘度:
約200mPa・s〕水溶液50gに、酢酸でpHを
7.5に調整した24重量%のε−ポリリジン水溶液
〔チッソ(株)製〕0.22mLを加えた(α−アミノ
基の量は0.5mmol)。
【0093】得られた混合溶液を5時間室温で放置した
後、ゲル強度を測定したところ、13.7mNであっ
た。また生成したゲルをイオン交換水300mLに24
時間浸漬したところ、膨潤度142.9の形状が保持さ
れたヒドロゲルが得られた。
【0094】比較例1〔アルギン酸−ブタンジオールジ
グリシジルエーテルゲルの調製〕 アルギン酸〔君津化学工業(株)製、粘度:約500m
Pa・s〕2.5gを0.5%水酸化ナトリウム水溶液
19mL中に16時間かけて溶解させた。これに、1,
4−ブタンジオールジグリシジルエーテル0.95mL
を添加して混合し、その混合溶液を50℃で2時間保持
して硬化させた。その後、2時間イオン交換水中で洗浄
し、得られたゲルのゲル強度を測定したところ、0mN
であった。得られたゲルをイオン交換水に浸漬したとこ
ろ、その形状を全く保持することができなかった。
【0095】比較例2〔PGA−ゼラチンゲルの調製〕 0.1Mリン酸バッファーでpHを7.5に調整した6
重量%ゼラチン〔和光純薬工業(株)製、牛骨由来〕水
溶液を調製した。
【0096】次に、3重量%PGA〔紀文フードケミフ
ァ(株)製、粘度:約80mPa・s〕水溶液10g
に、先に予め調製しておいたゼラチン水溶液10mLを
添加してよく混合した。その混合溶液を5時間硬化させ
た後、得られたゲルのゲル強度を測定したところ、0m
Nであった。このゲルをイオン交換水に浸漬したとこ
ろ、その形状を全く保持することができなかった。
【0097】比較例3〔PGA−ポリエチレンイミンゲ
ルの調製〕 酢酸でpHを7.5に調整した18重量%のポリエチレ
ンイミン水溶液(アルドリッチ社製、分子量:約750
00)水溶液を調製した。
【0098】次に、2重量%PGA〔紀文フードケミフ
ァ(株)製、粘度:約200mPa・s〕水溶液50g
に、先に予め調製しておいたポリエチレンイミン水溶液
0.1mL(アミノ基の量は0.5mmol)を添加し
たところ白濁した。その混合溶液を5時間室温で放置し
た後に生成したゲルのゲル強度を測定したところ、6.
9mNであった。このゲルをイオン交換水に浸漬したと
ころ、その形状を全く保持することができなかった。
【0099】実施例9および比較例1〜3におけるゲル
強度(5時間硬化後のゲル強度)および膨潤度(5時間
硬化後、室温で24時間イオン交換水に浸漬した後の膨
潤度)の測定結果を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】表3に示された結果から、実施例9で得ら
れた水膨潤性高分子ゲルは、含水状態でも従来技術であ
る比較例1〜3で得られたゲルと対比して、高いゲル強
度を有するものであることがわかる。
【0102】実施例10〔PGA−ε−ポリリジンゲル
フィルムの調製〕 2重量%PGA〔紀文フードケミファ(株)製、粘度:
約200mPa・s〕水溶液50gに、酢酸でpHを
9.5に調整した24重量%のε−ポリリジン水溶液
〔チッソ(株)製〕を添加してよく混合した。得られた
混合溶液30gを10cm×10cmのフッ素樹脂製ト
レーに流延し、5時間硬化させた。その後、更にこのト
レーを70℃に設定した乾燥機で4時間乾燥し、フィル
ムを得た。
【0103】得られた乾燥ゲルフィルムを生理食塩水
〔大塚製薬(株)製〕に4時間浸漬したところ、膨潤度
は34.6、ゲル強度は186.3mNであった。
【0104】比較例4〔PGA−ゼラチンゲルフィルム
の調製〕 リン酸緩衝液でpHを9.5とした6重量%ゼラチン
〔和光純薬工業(株)製、牛骨由来〕水溶液を調製し
た。
【0105】次に、3重量%PGA〔紀文フードケミフ
ァ(株)製、粘度:約80mPa・s〕水溶液10g
に、先に調製しておいたゼラチン水溶液2.5mL添加
してよく混合した。得られた混合溶液を室温で静置した
ところ、透明で柔らかいゲルが得られた。この溶液30
gを10cm×10cmのフッ素樹脂製トレーに流延
し、70℃に設定した乾燥機により4時間乾燥した。得
られたフィルム0.3gを5重量%水酸化カリウム水溶
液100mLに15秒間浸漬して、その後イオン交換水
で洗浄した。その後、このフィルムを70℃で2時間乾
燥し、PGA−ゼラチンゲルフィルムを得た。得られた
乾燥ゲルフィルムを生理食塩水に4時間浸漬したとこ
ろ、膨潤度は6.0、ゲル強度は120.6mNであっ
た。
【0106】比較例5〔PGA−ポリエチレンイミンゲ
ルフィルムの調製〕 酢酸でpHを7.5に調整した19重量%のポリエチレ
ンイミン(アルドリッチ社製、分子量:約75000)
水溶液を調製した。
【0107】次に、2重量%PGA〔紀文フードケミフ
ァ(株)製、粘度:約200mPa・s〕水溶液50g
に、先に調製しておいたポリエチレンイミン水溶液(ア
ミノ基の量は0.5mmol)0.09mLを添加した
ところ白濁した。この溶液30gを10cm×10cm
のフッ素樹脂製トレーに流延し、70℃に設定した乾燥
機で2時間乾燥した。得られたフィルム0.3gを5重
量%水酸化カリウム水溶液100mLに15秒間浸漬
し、次いでイオン交換水で洗浄した。その後、70℃で
2時間乾燥してPGA−ポリエチレンイミンゲルフィル
ムを得た。得られた乾燥ゲルフィルムを生理的食塩水
〔大塚製薬(株)製〕に4時間浸漬したところ、膨潤度
は5.7、ゲル強度は36.3mNであった。
【0108】実施例10および比較例4〜5で得られた
ゲルのゲル強度(生理食塩水に37℃で4時間浸漬した
後のゲル強度)および膨潤度(生理食塩水に37℃で4
時間浸漬した後の膨潤度)の測定結果を表4に示す。
【0109】
【表4】
【0110】表4に示された結果から、実施例10で得
られた水膨潤性高分子ゲルは、比較例4〜5で得られた
従来のゲルフィルムと対比して、著しく高い膨潤度を有
しながら、高いゲル強度を有するものであることがわか
る。
【0111】実施例11〔κ−カラゲナンを混合したP
GA−ε−ポリリジンゲルフィルムの調製〕 κ−カラゲナン〔和光純薬工業(株)製〕2gをイオン
交換水98gに60℃で溶解し、2重量%のκ−カラゲ
ナン水溶液を調製した。
【0112】次に、2重量%PGA〔フナコシ(株)
製、粘度:100〜150mPa・s〕水溶液20g
を、先に予め調製しておいたκ−カラゲナン水溶液と6
0℃で混合した。その後、得られた混合溶液に26.9
重量%のε−ポリリジン水溶液〔チッソ(株)製〕0.
1mLを添加し、得られた混合溶液25gを10cm×
10cmのフッ素樹脂製トレーに流延し、2時間室温で
硬化させた。次に、70℃に温度調節した乾燥機で2時
間乾燥し、乾燥ゲルフィルムを得た。得られた乾燥ゲル
フィルムを生理食塩水に24時間浸漬したところ、吸水
し、膨潤度は21.3となった。
【0113】実施例12〔PGA−ε−ポリリジンゲル
フィルムの調製〕 2重量%PGA〔フナコシ(株)製、粘度:100〜1
50mPa・s〕水溶液30gに26.9重量%のε−
ポリリジン水溶液〔チッソ(株)製〕0.3mLを添加
し、得られた混合溶液25gを10cm×10cmのフ
ッ素樹脂製トレーに流延し、2時間室温で硬化させた。
得られたゲルを、無水酢酸〔関東化学(株)製〕1.5
mLを含有する50%エタノール水溶液50mLに2時
間浸漬した。このゲルをイオン交換水で徹底的に洗浄
し、70℃に温度調節された乾燥機で2時間乾燥し、乾
燥ゲルフィルムを得た。得られた乾燥ゲルフィルムを生
理食塩水に24時間浸漬したところ、吸水し、膨潤度は
16.3となった。
【0114】実施例13〔PGA−ε−ポリリジンゲル
発泡体の調製〕 1.5重量%PGA〔和光純薬工業(株)製、粘度:8
0〜120mPa・s〕水溶液100gをビーター(キ
ッチンエイドミキサー)により、10分間程度空気を混
入させながら攪拌して発泡させた。得られた発泡溶液に
26.9重量%のε−ポリリジン水溶液〔チッソ(株)
製〕1mLを添加し、さらにビーターで5分間程度攪拌
した。この時点での溶液の密度は0.29g/cm3
あった。
【0115】次に、得られた発泡溶液30gを10cm
×10cmのフッ素樹脂被覆トレーに入れ、2時間室温
で放置した。生成した発泡含水ゲルを70℃で3時間乾
燥して、10cm×10cm×0.7cmのスポンジ状
の柔軟な発泡体を得た。
【0116】吸水性を評価するために、得られた乾燥発
泡体を生理的食塩水を十分に含ませたポリウレタンスポ
ンジ上に置き、37℃の恒温槽中に静置して吸水させた
ところ、24時間後の膨潤度は約38となった。また、
25kGyのγ線照射により滅菌された乾燥発泡体の吸
水性を評価したところ、24時間後の膨潤度は約25と
なった。γ線照射された発泡体は、吸水してもその形状
を十分に保持しており、崩壊または溶解などは観測され
なかった。
【0117】実施例14〔PGA−ε−ポリリジンゲル
発泡体の調製〕 2重量%PGA〔和光純薬工業(株)製、粘度:80〜
120mPa・s〕水溶液100gをビーターにより1
0分程度空気を混入させながら攪拌して発泡させた。こ
の発泡溶液に26.9重量%のε−ポリリジン水溶液
〔チッソ(株)製〕0.5mLを添加し、さらにビータ
ーで5分間程度攪拌した。この時点での溶液の密度は
0.31g/cm3 であった。
【0118】次に、得られた発泡溶液30gを10cm
×10cmのフッ素樹脂被覆トレーに入れ、2時間室温
で放置した。生成した発泡含水ゲルを70℃で3時間乾
燥し、10cm×10cm×0.7cmのスポンジ状の
柔軟な発泡体を得た。
【0119】吸水性を評価するために、実施例13と同
様にして37℃で生理的食塩水を吸水させたところ、2
4時間後の膨潤度は約45となった。また、25kGy
のγ線照射により滅菌された乾燥発泡体の吸水性を評価
したところ、24時間後の膨潤度は38となった。スポ
ンジは吸水してもその形状を十分に保持しており、崩壊
や溶解などは観測されなかった。
【0120】比較例6〔PGA−ポリエチレンイミンゲ
ル発泡体の調製〕 酢酸でpHを7.5に調整した19重量%のポリエチレ
ンイミン(アルドリッチ社製、分子量:約75000)
水溶液を調製した。
【0121】他方、2重量%PGA〔紀文フードケミフ
ァ(株)製、粘度:約200mPa・s〕水溶液500
gをビーターにより10分間程度空気を混入させながら
攪拌して発泡させた。この発泡溶液に、先に予め調製し
ておいたポリエチレンイミン水溶液0.9mLを添加し
たところ、発泡溶液が急激に収縮し、溶液の密度は0.
67g/cm3 となった。この溶液30gを10cm×
10cmのフッ素樹脂製トレーに流延し、70℃に設定
した乾燥機で2時間乾燥した。
【0122】得られた乾燥ゲル0.5gを5重量%水酸
化カリウム水溶液100mLに15秒間浸漬し、その
後、イオン交換水で洗浄した。このゲルを70℃で2時
間乾燥したが、得られたのは10cm×10cm×0.
3cmの嵩高さのない堅いフィルム状のものであった。
得られた乾燥ゲルに実施例13と同様にして37℃で生
理的食塩水を吸収させたところ、膨潤度は4.3とな
り、ほとんど吸収しなかった。
【0123】比較例7〔カルシウムイオンにより架橋さ
れたアルギン酸ゲル発泡体の調製〕 2重量%アルギン酸ナトリウム水溶液〔和光純薬工業
(株)製、粘度:500〜600mPa・s〕100g
に、界面活性剤〔ナカライ(株)製、商品名:トリトン
X−100〕0.1mLを加え、ビーターで攪拌した。
攪拌後の密度は0.29g/cm3 であった。
【0124】次に、発泡溶液30gを10cm×10c
mのフッ素樹脂製トレーに入れ、5重量%塩化カルシウ
ム水溶液100mLに12時間浸漬し、硬化させた。得
られたスポンジ状のゲルを70℃に温度調節した乾燥器
で2時間乾燥させたところ、6cm×6cm×0.5c
m程度に収縮し、堅くなったスポンジが得られた。この
スポンジに実施例13と同様にして37℃で生理的食塩
水を吸収させたところ、膨潤度は0.7であった。ま
た、25kGyのγ線照射により滅菌された乾燥発泡体
の吸水性を評価したところ、24時間後の膨潤度は1.
5であった。
【0125】比較例8〔カルシウムイオンにより架橋さ
れたアルギン酸ゲル発泡体の調製〕 アルギン酸ナトリウム〔和光純薬工業(株)製、粘度:
100〜150mPa・s〕3.8gおよび炭酸ナトリ
ウム1.9gをイオン交換水84gに完全に溶解し、こ
の溶液に炭酸カルシウム0.5gを添加して十分に攪拌
した。
【0126】一方、アルギン酸ナトリウム〔和光純薬工
業(株)製、粘度:100〜150mPa・s〕3.8
gをイオン交換水80gに完全に溶解させた後、酢酸
3.6gを添加して十分に攪拌した溶液を調製した。
【0127】このように調製した2つのアルギン酸ナト
リウム溶液を20gずつ混合したところ、急激に発泡し
た。次に、この発泡溶液を10cm×10cmのフッ素
樹脂製トレーに入れ、室温で0.5時間硬化させた後、
70℃に温度調節した乾燥器で2時間乾燥した。その結
果、10cm×10cm×0.2cmの、嵩高さがな
く、堅いフィルムが得られた。得られたフィルムに実施
例13と同様にして37℃で生理的食塩水を吸収させた
ところ、3時間後にはフィルムが溶解し、その形状が保
持されなかった。
【0128】実施例15〔PGA−ε−ポリリジンゲル
発泡体の調製〕 2.5重量%PGA〔紀文フードケミファ(株)製、粘
度:約200mPa・s〕水溶液500gに塩化ナトリ
ウム2.5gを添加して溶解させた後、得られた溶液を
40℃まで昇温した。ビーター(キッチンエイドミキサ
ー)で5分間程度空気を混入させながら攪拌して発泡さ
せた。
【0129】得られた発泡溶液に、25重量%のε−ポ
リリジン水溶液〔チッソ(株)製〕1.95mLを添加
し、さらにビーターで1分間程度攪拌した。この時点で
の溶液の密度は0.35g/cm3 であった。次に、こ
の発泡溶液30gを10cm×10cmのフッ素樹脂被
覆トレーに入れ、1時間室温で放置した。生成した発泡
含水ゲルを70℃で4時間乾燥し、10cm×10cm
×0.8cmのスポンジ状の発泡体を得た。得られた発
泡体を0.5mmのスペーサーを挟んだプレス機で圧縮
し、柔軟な圧縮発泡シートを得た。
【0130】得られた圧縮発泡シートの吸水性を評価す
るために、この圧縮発泡シートに実施例13と同様にし
て37℃で生理的食塩水を吸収させたところ、膨潤度は
約38であった。また、エチレンオキサイドガスにより
滅菌された乾燥発泡体の吸水性を評価したところ、24
時間後の膨潤度は約35であった。発泡体は、吸水して
もその形状を十分に保持しており、崩壊または溶解など
は観測されなかった。
【0131】試験例1 日本白色家兎( 約3.5kg) の耳に直径6mmの皮膚
欠損創をそれぞれ2個つくった。この際、軟骨膜までの
組織は完全に除去した。前記欠損創に、一辺が約2cm
の実施例14で得られた発泡体、対照として比較例7の
発泡体を貼付し、両者ともポリウレタンフィルム(ジョ
ンソン・アンド・ジョンソン製、商品名:バイオクルー
シブ)で全体をカバーしてフィルムを縫合固定した。恒
温下、十分な量の水と餌を与えて飼育後、貼付7日目に
兎を犠牲死させ、創部を採取した。
【0132】創部の組織を固定染色後に顕微鏡で観察し
たところ、実施例14で得られた発泡体を貼付した箇所
では、上皮間距離が1.8mmであった。これに対し
て、比較例7で得られた発泡体の上皮間距離は3mm程
度であった。
【0133】また、実施例14で得られた発泡体を貼付
した創では、組織内部に異物の残存、異物反応は顕著で
はなかった。
【0134】
【発明の効果】本発明の水膨潤性高分子ゲルの製造法に
よれば、高分子ゲルを安価に、しかも効率的に製造する
ことができる。
【0135】本発明の水膨潤性高分子ゲルは、中性付近
の水系溶媒中でも効率よく形成され、天然由来の成分が
構成要素であるため、人体に対する安全性が高いもので
ある。更に、本発明の水膨潤性高分子ゲルは、吸水性、
機械的強度などの物性にも優れているので、工業、農
業、食品、医療などの広範囲の分野で好適に使用するこ
とができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08J 9/00 CEZ C08L 5/00 C08L 5/00 101:00 // C08L 101:00 A61L 15/01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エステル化されたカルボキシル基含有多
    糖類と、天然アミノ酸に由来するα−アミノ基を2つ以
    上有する化合物とを反応させてなる水膨潤性高分子ゲ
    ル。
  2. 【請求項2】 カルボキシル基含有多糖類が、アルギン
    酸またはヒアルロン酸である請求項1記載の水膨潤性高
    分子ゲル。
  3. 【請求項3】 エステル化されたカルボキシル基含有多
    糖類が、アルギン酸プロピレングリコールエステルまた
    はヒアルロン酸プロピレングリコールエステルである請
    求項1記載の水膨潤性高分子ゲル。
  4. 【請求項4】 天然アミノ酸に由来するα−アミノ基を
    2つ以上有する化合物が、ε−ポリリジンである請求項
    1〜3のいずれか1項記載の水膨潤性高分子ゲル。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項記載の水膨
    潤性高分子ゲルからなる医用材料。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれか1項記載の水膨
    潤性高分子ゲルを発泡させてなる水膨潤性高分子ゲル発
    泡体。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の水膨潤性高分子ゲル発泡
    体からなる医用材料。
  8. 【請求項8】 創傷被覆材、癒着防止材または組織再生
    材料である請求項5または7記載の医用材料。
  9. 【請求項9】 エステル化されたカルボキシル基含有多
    糖類と、天然アミノ酸に由来するα−アミノ基を2つ以
    上有する化合物とを反応させることを特徴とする水膨潤
    性高分子ゲルの製造法。
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