JP2009247459A - 複合生体材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた生体親和性及び硬組織再生能を有し、かつ高い生体安全性を有する複合生体材料を提供すること、およびかかる複合生体材料の製造方法を提供すること。
【解決手段】非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)及びカルボキシル基含有多糖(B)を含む複合生体材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、非コラーゲン性リン酸化タンパク質及びカルボキシル基含有多糖を含む複合生体材料に関する。
近年、整形外科の領域における骨欠損部の修復は、人工材料を用いた人工骨の移植が行われることが多い。こうした人工骨には生体骨類似の機械的特性に加えて、生体適合性や骨形成能が求められる。すなわち、生体適用後に徐々に生体内に吸収され、骨再生サイクルに取り込まれて自身の骨に置換していく性質が求められる。
従来の人工骨材料としては、セラミックス系材料、有機材料等の種々の材料が考案されている。骨再生を積極的に誘導する材料としては、骨形成因子(Bone Morphogenic Protein:BMP;以下、「BMP」と略記)とコラーゲンとの複合材料が有力なものとして知られている。しかしながら、BMPは強い骨形成能を有しているものの、水に溶解しにくく、かつ、適切な担体が見出されていないために生体内での適切な徐放性を確保することが困難であるという問題が残されていた。この問題を解決するために、コラーゲンを担体として用いる試みがなされてはいるものの、その徐放性は必ずしも充分ではなく、BMPに対する最適な担体はいまだに見つかっていない。この徐放性の不足のため、ラット、マウスレベルではBMPによる骨形成能は高いが、ヒトにBMPを適用する場合には極めて多量のBMPが必要となる。具体的には、ヒトでは有効な骨形成を得るのに0.4mg/ml(担体体積)程度の多量のBMPが必要と考えられており、現状では高額医療に治療が限定されると予想される。したがって、BMPに代わる、安全かつ安価な、骨形成能を有する生体吸収性の骨修復材料の開発が望まれている。
かかる骨修復材料として、フォスフォフォリンとコラーゲンを含む複合生体材料が提案されており、前記複合生体材料が優れた生体親和性及び骨形成能を有する旨の報告がなされている(特許文献1)。また、フォスフォフォリンとコラーゲンを含む複合材料を足場として歯髄細胞を培養することを特徴とする象牙質の再生方法も提案されており、優れた象牙質再生能を示す旨の報告がなされている(特許文献2)。さらに、DMP−1及びコラーゲンメンブランから構成される直接覆髄材も報告されており、歯髄の露出面が象牙質様組織に変化し、良好な治療効果を示す旨が記されている(非特許文献1)。
上述の複合材料は優れた生体活性を示す有用な材料であるが、その構成成分としてコラーゲンを含むために、以下に示す問題点を有していた。すなわち、コラーゲンは一般に、牛や豚の骨や皮、魚の鱗や皮などの動物由来の原料から製造される。このため、その利用に際しては動物由来感染症を回避し生体安全性を確保するための種々の煩雑な工程が必要であり、コスト高に繋がるという問題がある。また、複合生体材料の機械物性やフォスフォフォリンの徐放性をコントロールするためには、コラーゲンの分子量及び架橋度を適切な範囲に調整する必要があるが、コラーゲンは多種のアミノ酸によって構成されるペプチドであるため、加熱や酵素の作用によって分子鎖を切断し、分子量を制御することが必ずしも容易ではない。また、複数種の架橋点を分子内に多数有することから、架橋度の制御にも容易なものではなかった。
これらのことから、優れた生体親和性、硬組織再生能(骨誘導能及び/又は象牙質再生能)を有し、かつ高い生体安全性と、適用部位に応じた機械強度等の諸特性の制御が容易な複合生体材料の開発が求められていた。
特開2003−235953号公報 国際公開第2005/079728号パンフレット Almushayt A. et al, Gene Ther, 13, 611−620 (2006)
本発明は、優れた生体親和性及び硬組織再生能を有し、かつ高い生体安全性を有する複合生体材料を提供することを目的とする。本発明はまた、かかる複合生体材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、
〔1〕非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)及びカルボキシル基含有多糖(B)を含む複合生体材料、
〔2〕非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)及びカルボキシル基含有多糖(B)を、架橋剤を用いて共有結合的に化学架橋する工程を含む複合生体材料の製造方法、
〔3〕非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)及びカルボキシル基含有多糖(B)を、脱水縮合剤を用いて共有結合的に結合する工程を含む複合生体材料の製造方法
に関する。
本発明の複合生体材料は骨補填材、特に歯槽骨の骨補填材に好適であり、歯周組織再生材として好ましく用いられる。また、象牙質再生材として用いることも好ましく、直接覆髄材として用いることも好ましい。本発明の複合生体材料を用いた骨補填材、象牙質再生材又は直接覆髄材は、高い硬組織再生能(骨誘導能及び/又は象牙質再生能)を有し、かつ、高い生体安全性を兼ね備えている。さらに、適用部位における要求特性に応じて、機械強度等の諸特性を容易に制御することができる。
まず、本発明の複合生体材料の必須成分(非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)、カルボキシル基含有多糖(B))について説明する。
非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)
本発明で用いられる非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)としては、フォスフォフォリン、フォスビチン、DMP−1(Dentin Matrix Protein−1)DSP(Dentin sialoprotein)、BSP(Bone sialoprotein)、OC(Osteocalcin)、ON(Osteonectin)及びOPN(Osteopontin)等が例示されるが、硬組織再生能の観点から、フォスフォフォリン、フォスビチン及びDMP−1からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
フォスフォフォリン(Phosphophoryn)は、哺乳類の歯に含まれるリン酸化タンパク質で、単独で骨形成能を有することが知られている。フォスフォフォリンは哺乳類(例えば、ウシやブタ等)の歯を抜歯し、軟組織、歯髄、エナメル質、セメント質を除去した後に得られた象牙質から単離することができる。具体的なフォスフォフォリンの調製方法については後述する。
フォスビチン(Phosvitin)はフォスフォビチン、ホスビチン又はホスホビチンとも呼ばれるリン酸化タンパク質である。フォスビチンは脊椎動物卵黄タンパク質の主成分であり、卵黄顆粒に含まれるリン酸化タンパク質である。鶏卵フォスビチンは分子量約10万、約10%のリン酸を含み、アミノ酸の約半分がセリンでそのほとんどがホスホセリン残基になっている。フォスビチンについてもフォスフォフォリン同様、単独で骨形成能を有することが知られている。フォスビチンは市販されている(シグマ−アルドリッチ社など)ため、容易に入手することができる。
DMP−1は、歯の象牙質cDNAライブラリーから同定された分泌性の非コラーゲン性酸性リン酸化蛋白質で、骨や象牙質などの細胞外マトリックスにおいてその石灰化に関与することが知られている。DMP−1は骨や歯の石灰化(特に象牙質形成)に重要な分子であると考えられており、上述の非特許文献1に記載されているように、直接覆髄材としての応用も試みられている。本発明で用いられるDMP−1は、周知の方法(George A. et al, J Biol Chem, 268, 12624−12630 (1993))に従い、遺伝子工学的に生産したり、骨や歯の象牙質から抽出、精製したりすることにより調製することができる。
カルボキシル基含有多糖(B)
本発明に用いられるカルボキシル基含有多糖(B)は特に限定されるものではないが、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、コンドロイチン硫酸K、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸等のグリコサミノグリカン、ペクチン、セロウロン酸、アルギン酸などであることが好ましい。また、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルプルラン、部分スクシニルキトサン、カルボキシメチルキトサン、カルボキシメチルキチンなどの本来カルボキシル基を含有しない多糖類にカルボキシル基を人工的に導入したものなども用いることができる。なお、カルボキシル基含有多糖(B)としては、その一部又は全部が塩を形成しているものも包含され、好ましくは水溶性塩が用いられる。かかるカルボキシル基含有多糖の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩などが好ましく用いられ、特にナトリウム塩が好ましく用いられる。これらのカルボキシル基含有多糖の中でも、入手の容易性、生体適合性及び生体吸収性の観点から、ヒアルロン酸及びアルギン酸が好ましく用いられ、アルギン酸がさらに好ましく用いられる。カルボキシル基含有多糖の水溶性塩としては、得られる複合生体材料の機械強度を確保する観点から、濃度1重量%の水溶液にしたときに、該水溶液の20℃での粘度が100mPa・S以上であるものが好ましく用いられ、300mPa・S以上であるものがより好ましく用いられる。一方、複合生体材料の製造時におけるハンドリング性の観点からは、粘度の上限は2000mPa・S以下であることが好ましく、1200mPa・S以下であることがより好ましい。なお、粘度は、BL型粘度計により測定することができる。
また、カルボキシル基含有多糖(B)はそのカルボキシル基の一部又は全部がエステルを形成したカルボキシル基含有多糖エステルを包含する。カルボキシル基をエステル化しているアルコール類としては、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、環状脂肪族アルコール、複素環式アルコールなどが好適な例として挙げられる。中でも、炭素原子数が1〜16の脂肪族1価又は多価アルコールが好ましく、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどを挙げることができる。多価アルコールである場合は、その複数の水酸基のうち、1個の水酸基のみがカルボキシル基含有酸性多糖類中のカルボキシル基とエステル結合(−COO−)しているのが好ましい。
カルボキシル基含有多糖エステルの種類は特に制限されず、上述のカルボキシル基含有多糖及びアルコール類との間で形成され得るカルボキシル基含有多糖エステルであればよい。上述の通り、カルボキシル基含有多糖の中でもヒアルロン酸及びアルギン酸が好ましく用いられるが、ヒアルロン酸エステルとしては、具体的にはヒアルロン酸のプロピレングリコールエステル、エチレングリコールエステル、トリメチレングリコールエステル、ブチレングリコールエステル、ペンチレングリコールエステルなどを挙げることができる。一方、アルギン酸エステルとしては、アルギン酸のプロピレングリコールエステル、エチレングリコールエステル、トリメチレングリコールエステル、ブチレングリコールエステル、ペンチレングリコールエステルなどを挙げることができる。これらは単独で若しくは2種以上を混合して用いることができる。中でも、アルギン酸のプロピレングリコールエステル及び/又はヒアルロン酸のプロピレングリコールエステルは生物学的安全性が高いことから好ましく用いられる。
カルボキシル基含有多糖エステルの製造方法としては特に制限されず、例えば、特開昭52−36177号公報に記載されている方法、日本化学会編「実験化学講座22有機合成IV−酸・アミノ酸・ペプチド」第4版、第24〜83頁(1992年、丸善発行)に記載されている一般的な方法、Yalpani M., Tetrahedron, 41, 2957−3020 (1985)に記載されている方法などにより製造することができる。中でも、特開昭52−36177号公報に記載されているような、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどの1,2−エポキシド、トリメチレンオキサイドなどの1,3−エポキシド類をカルボキシル基を有する酸性多糖類に反応させる方法が好ましく採用される。
本発明の複合生体材料は、カルボキシル基含有多糖(B)を必須の構成要件とするという特徴を有する。従来の技術においては、非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)の担体としてコラーゲンが用いられていたが(特許文献1、特許文献2及び非特許文献1)、コラーゲンの替わりにカルボキシル基含有多糖(B)を用いることで、以下に示すメリットを得ることができる。
上述の通り、カルボキシル基含有多糖(B)としては好ましくはヒアルロン酸及びアルギン酸が用いられるが、ヒアルロン酸はN−アセチルグルコサミンとグルクロン酸の二糖単位が連結したポリマー構造を有しており、アルギン酸はβ−D−マンヌロン酸及びα−L−グルロン酸(G)の2種のブロックが1,4−結合した直線状のポリマー構造を有している。すなわち、ヒアルロン酸及びアルギン酸もそれぞれ二種の糖骨格単位のみからなり、多種のアミノ酸単位から形成されるコラーゲンと比較して、ポリマーを構成する単量体の種類が少なく、シンプルなポリマー構造を有している。このため、酵素などを用いたポリマー主鎖の切断による分子量の制御が簡便になり、その結果、複合生体材料の機械強度の制御が非常に容易になる。また、複合生体材料の機械強度及び複合生体材料に担持されたタンパク質の徐放性の制御に際してはしばしば架橋構造の導入が行われるが、ポリマーを構成する単量体単位の種類を少なくすることで、架橋構造を導入する位置及び量の制御が容易になるという利点がある。その結果、複合生体材料の機械強度の制御が非常に容易になる。
また、ヒアルロン酸は旧来、鶏冠及び臍帯などから単離されていたが、近年、乳酸菌や連鎖球菌を用いることで大量生産されるようになっている。そして、アルギン酸は褐藻などに含まれる多糖類であり、ジャイアントケルプなど種々の褐藻から抽出することで製造されている。このように、カルボキシル基含有多糖(B)は微生物による合成や植物からの単離により製造されるため、牛や豚の骨や皮、魚の鱗や皮などの動物由来の原料から製造されるコラーゲンと比較して、動物由来感染症を引き起こすリスクが極めて小さくなる。
以上に示すように、カルボキシル基含有多糖(B)を用いることにより、従来の技術と比較して複合生体材料の機械物性や、複合生体材料に担持されたタンパク質の徐放性をコントロールが著しく容易になり、かつ、高い生体安全性が得られるというメリットを享受することができる。
好適な実施態様では、本発明に用いられるカルボキシル基含有多糖(B)は架橋多糖である。前記架橋多糖を調製する方法は特に限定されないが、(1)カルボキシル基含有多糖をアミン系化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる架橋剤で共有結合的に架橋することで架橋多糖を製造する方法、及び(2)カルボキシル基含有多糖エステルを天然アミノ酸に由来するα−アミノ基を2個以上有するポリアミノ化合物を含む架橋剤で共有結合的に架橋することで架橋多糖を製造する方法、の二つの方法が特に好ましい製造方法として例示される。
前記製造方法(1)に用いられるアミン系化合物としては、下記の一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。
−NH−(CH−NH−R (I)
(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は式:−COCH(NH)−(CH−NHで表される基を示し、nは2〜18の整数を示す)
アミン系化合物としては、前記の一般式(I)においてnが2〜8である化合物が好ましく用いられる。
前記の一般式(I)で表されるアミン系化合物との具体例としては、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、ジアミノオクタデカンなどのジアミノアルカン類及びそれらの塩、N−(リジル)−ジアミノエタン、N,N’−ジ(リジル)−ジアミノエタン、N−(リジル)−ジアミノヘキサン、N,N’−ジ(リジル)−ジアミノヘキサンなどのモノ又はジ(リジル)ジアミノアルカン類及びそれらの塩などを挙げることができる。
前記架橋剤が前記アミン系化合物の塩からなる場合は、塩を形成する成分としては、N−ヒドロキシコハク酸イミドが好ましく用いられる。特に好適なアミン系化合物のN−ヒドロキシコハク酸イミド塩としては、ジアミノエタンの2N−ヒドロキシコハク酸イミド塩、ジアミノヘキサンの2N−ヒドロキシコハク酸イミド塩、N,N’−ジ(リジル)−ジアミノエタンの4N−ヒドロキシコハク酸イミド塩、及びN−(リジル)−ジアミノヘキサンの3N−ヒドロキシコハク酸イミド塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの化合物は安全性、生体適合性などが一層高く、かつそれらの化合物を架橋剤として用いて得られる架橋多糖は、一層優れた硬組織再生能を発揮し得る。
カルボキシル基含有多糖をアミン系化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる架橋剤で共有結合的に架橋した多糖類は、一般にゲル状を呈する(かかる点から共有結合的に架橋した多糖類を「架橋多糖類ゲル」という場合がある)。架橋剤によるカルボキシル基含有多糖の共有結合架橋率(カルボキシル基含有多糖に対する架橋剤の反応率)は、カルボキシル基含有多糖に対する架橋剤の使用モル比で制御することができる。架橋剤のモル比を低くすると、柔軟で含水率の高い共有結合的に架橋された架橋多糖類ゲルが得られ、架橋剤のモル比を高くすると強固で含水率の低い共有結合的に架橋された架橋多糖類ゲルが得られる。
共有結合架橋率は所望により適宜選択されるが、共有結合架橋率が低すぎると架橋多糖類ゲルの強度が低くなり、共有結合架橋率を高めるため架橋剤を多く使用すると架橋剤が未反応のまま架橋多糖類ゲル中に残る可能性があることから、架橋率としては、カルボキシル基含有多糖が有するカルボキシル基の内1〜50モル%のカルボキシル基が架橋剤と反応していることが好ましく、5〜30モル%のカルボキシル基が架橋剤と反応していることがより好ましい。架橋率は、核磁気共鳴装置を用いた分析(NMR法)により求めることができる。
カルボキシル基含有多糖とアミン系化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる架橋剤との共有結合架橋反応は、脱水縮合剤を用いて行うことができる。脱水縮合剤としては特に限定されないが、カルボジイミドを用いることが好ましい。前記カルボジイミドとしては、具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)などが好適なものとして例示される。これらの中でも、水に可溶なカルボジイミドであり、反応終了後に水洗で除去できるという利点を有することから、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩が特に好ましく用いられる。カルボキシル基含有多糖のカルボキシル基の架橋率は、架橋剤について前述した値が好ましい。
アミン系化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる架橋剤及び脱水縮合剤によるカルボキシル基含有多糖の共有結合架橋反応は、一般に以下のような手順で行うことが好ましい。まず、カルボキシル基含有多糖を水に溶解して濃度が0.1〜2重量%程度で粘度(20℃、BL型粘度計)が100〜2000mPa・S程度、より好ましくは300〜1200mPa・Sの水溶液を調製する。続いて、得られた水溶液に対し、アミン系化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる架橋剤及び脱水縮合剤を、上述の好適な共有結合架橋率が得られ得る量で均一に混合する。しかる後に、4〜50℃の温度で1〜100時間程度反応させることで共有結合的に架橋の形成を行うことが望ましい。
上記により得られる架橋多糖類ゲルは、それ自体で実用的な強度と安定性を示すが、所望により、アミン系化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる架橋剤による共有結合架橋と共に、イオン結合架橋、疎水結合架橋などの他の架橋を施してもよい。
一方、上述の製造方法(2)で架橋多糖を製造する際には、カルボキシル基含有多糖エステルとしては、上述のものを使用することができる。また、上述の製造方法(2)で用いられる「天然アミノ酸に由来するα−アミノ基を2個以上有するポリアミノ化合物」とは、天然に見出されるアミノ酸(アラニン、グリシン、フェニルアラニン、セリン、バリン、リジン、グルタミン酸など)のα−アミノ基に由来する第1級アミノ基を2個以上有する化合物をいう。ポリアミノ化合物は、前記α−アミノ基を2個以上有する水溶性高分子であることが好ましい。なお、ポリアミノ化合物の分子量は、通常、500〜10000Da程度である。また、ポリアミノ化合物中のα−アミノ基の個数の上限としては、通常、100個程度である。
ポリアミノ化合物は、天然アミノ酸に由来するα−アミノ基を2個以上有する化合物であればいずれでもよいが、中でも、天然アミノ酸の重合物であるポリアミノ酸、α−アミノ基を有するアミノ酸で変性した多糖類などが好ましく用いられ、これらのポリアミノ化合物は、最適に官能基を保護された天然アミノ酸誘導体を多糖類、ポリアミノ酸などに化学修飾により導入した後、脱保護することにより製造することができる。本発明では、ポリアミノ化合物として、特にε−ポリリジンが好ましく用いられる。ε−ポリリジンは、下記の化学式(II)に示すように、リジンのε位のアミノ基とα位のカルボキシル基とがアミド結合により縮合した水溶性高分子であり、その側鎖にはリジンのα−アミノ基が存在している。
H−(NH−CHCHCHCH−CH(NH)−CO)−OH (II)
(式中、nは重合度を示す。nとしては通常10〜40である)
架橋多糖は、上述のカルボキシル基含有多糖エステル及びポリアミノ化合物を用い、例えば、特開2001−278984号公報に記載の方法に従って製造することができる。
本発明の複合生体材料は、非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)及びカルボキシル基含有多糖(B)を含む。前記複合生体材料において、非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)及びカルボキシル基含有多糖(B)の配合比(重量比)は、(A):(B)=1:2〜1:50であることが好ましく、1:2〜1:40であることがより好ましい。また、複合生体材料の総量(合計重量)に対し、非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)は2〜10重量%配合されることが好ましく、2.5〜5.0重量%配合されることがより好ましい。非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)の量が少なすぎると硬組織再生能が不十分となり、一方、非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)の量が多すぎると複合生体材料のコストが高くなる。
本発明の複合生体材料において、非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)がカルボキシル基含有多糖(B)に化学架橋されていてもよい。化学架橋は、好ましくは後述の架橋剤、脱水縮合剤などを用いることによって行われる。化学架橋されている場合、典型的には前記(A)及び(B)がアミド結合によって結合することとなる。化学架橋された複合生体材料を生体内に埋入した場合、前記アミド結合が生体内において徐々に加水分解されることで、前記(A)を適切な速度で徐放する事が可能となる。硬組織の再生においては前記(A)を適切な速度で徐放する事が極めて重要である観点から、前記(A)が前記(B)に化学架橋されていることが好ましい。
続いて、本発明の複合生体材料の製造方法について説明する。
前記複合生体材料において、非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)は、カルボキシル基含有多糖(B)に共有結合で結合していることが好ましい。かかる複合生体材料を製造する方法としては、特に限定されないが、以下の二つの方法が好ましく例示される。第一の製造方法は、非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)及びカルボキシル基含有多糖(B)を、架橋剤を用いて共有結合的に化学架橋する工程を含む製造方法である。前記架橋剤としては、ジビニルスルフォンが好ましく用いられる。一方、第二の製造方法は、非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)及びカルボキシル基含有多糖(B)を、脱水縮合剤を用いて共有結合的に結合する工程を含む製造方法である。前記脱水縮合剤としてはカルボジイミドが好ましく用いられ、特に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドが好ましく用いられる。
複合生体材料の製造方法の一例を以下に示す。まず、カルボキシル基含有多糖(B)に水を添加して膨潤させる。前記(B)としては、上述の架橋多糖を用いることが好ましい。また、(B)を溶解させる水としては特に限定されず、純水などを用いることもできるが、所定のpHを示す緩衝溶液であることが好ましい。前記緩衝溶液のpHは6〜8であることがより好ましい。また、用いる水の量は、(B)100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
膨潤が完了した後、水に溶解させた非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)を添加する。(A)を溶解させる水も、やはり所定のpHを示す緩衝溶液であることが好ましく、前記緩衝溶液のpHは6〜8であることがより好ましい。また、用いる水の量は、(A)100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
続いて、上述の架橋剤及び/又は脱水縮合剤を添加することで、(A)と(B)との間に共有結合による結合を形成する。架橋剤を用いる場合は、前記(A)と(B)の配合比において、(A)+(B)を100重量部とした場合、1〜20重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましく、5〜8重量部が特に好ましい。一方、脱水縮合剤を用いる場合は、前記(A)と(B)の配合比において、(A)+(B)を100重量部とした場合、0.1〜2重量部が好ましく、0.3〜1重量部がより好ましく、0.5〜0.8重量部が特に好ましい。反応温度は10〜30℃であることが好ましく、20〜25℃であることがより好ましい。また、反応時間は1〜4時間であることが好ましく、2〜3時間であることがより好ましい。
架橋反応終了後、得られた複合生体材料を水洗した後、水に対する透析を行うことで余剰の(A)、架橋剤及び/又は脱水縮合剤を除去する。透析を行う時間は12〜24時間であることが好ましく、15〜18時間であることがより好ましい。また、透析を行う際には一定時間ごとに水を交換することが好ましく、交換のインターバルは3〜6時間であることが好ましく、4〜5時間であることがより好ましい。
架橋後の複合生体材料は、そのまま加熱してゲル化させゲル状構造物として用いてもよいし、凍結乾燥してスポンジ状構造物として用いてもよい。タンパク質への加熱が過剰になった場合、タンパク質が変性するなどしてその生体活性が低下する虞があることから、凍結乾燥してスポンジ状構造物を製造する製造方法がより好ましい。このゲル状あるいはスポンジ状の構造は、後述する歯又は歯槽骨の欠損部への補填に適した特性を与える。
スポンジ状構造物を得る場合、凍結乾燥の条件(例えば、温度、凍結時間、水中での凍結乾燥等)は、所望の複合生体材料の構造、すなわち比表面積、空隙率、孔(空隙)の大きさ等に応じて、適宜調整することができる。また、得られた凍結乾燥物は、必要に応じて成形し、例えば後述する歯科用インプラント等として利用することができる。なお、「スポンジ状構造」とは、柔軟性を有する微小多孔質構造(数μm〜数10μm程度の無数の孔(空隙)が存在する構造)を意味するものとする。本発明のスポンジ状構造を有する複合生体材料においては、その空隙率は好ましくは40〜90体積%、より好ましくは60〜90体積%である。この範囲を超えると、細胞の侵入が不十分となり硬組織再生能が低下する虞があり、さらに複合生体材料自体の強度が低下する虞がある。
次に、本発明の複合生体材料の任意成分について説明する。本発明の複合生体材料は、その用途に応じて非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)及びカルボキシル基含有多糖(B)以外の成分を含んでいてもよい。例えば、本発明の複合生体材料は、前記(A)及び(B)以外の成分として、増殖因子(C)を含んでいてもよい。さらに、ハイドロキシアパタイト、α−TCP、β−TCP、ポリグリコール酸及びポリ乳酸並びにそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
前記増殖因子としては特に限定されないが、具体的には、TGF−β、BMP、IGF、PDGF、b−FGF、血小板由来成長因子(PDNF−AA)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)及びヘレグリン(Heregulin)などが挙げられる。これらの中でも、硬組織再生能の観点からはTGF−β、BMP、IGF、PDGF及びb−FGFが好ましく、BMP、IGF、PDGF及びb−FGFがより好ましく、BMPがさらに好ましい。
本発明の複合生体材料は、水を吸うとスポンジのような弾性を有し、優れた生体親和性及び硬組織再生能を有する。このような優れた特性を有することから、前記複合生体材料は骨補填材として好ましく用いられる。また、前記複合生体材料は成形が容易で、しなやかな力学的特性を有するため、小さくかつ複雑な形状をした隙間にも適切に充填することができる。このため、前記複合生体材料は歯科用途に好ましく用いられる。前記複合生体材料を歯牙又は歯槽骨などの歯周組織の欠損部に埋入すると、速やかに周囲組織と結合し、ドナー側組織と複合生体材料との界面は完全に一体化しうる。したがって、本発明の複合生体材料は、特に以下のような用途に好ましく用いられる。すなわち、(1)歯槽骨を初めとする歯周組織の欠損部の修復・再生を目的として充填される歯周組織再生材、(2)歯牙象牙質の欠損部の修復・再生を目的として充填される象牙質再生材、及び(3)露髄部に充填し、歯髄の露出面を象牙質様組織に変化させることで歯髄の保護及び保存を目的として充填される直接覆髄材などに好ましく用いられる。上述の骨補填材、歯周組織再生材、象牙質再生材及び直接覆髄材として利用する場合、前記複合生体材料は、スポンジ状構造物であっても、ゲル状構造物であってもよい。スポンジの形状やゲルの硬度は補填すべき欠損部や操作性に合わせて自由に調整できる。さらに、複合生体材料には他の生理活性物質や薬剤等を含浸させて使用することもできる。例えば、直接伏在として用いた場合に、前記複合生体材料に抗炎症剤を含浸させて徐放させれば、歯髄欠損部の術後炎症を効果的に防止することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。
〔調製例1〕
フォスフォフォリンの精製方法(非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)の調製)
ウシ顎骨から永久歯を抜歯し、前記永久歯から軟組織、歯髄、エナメル質及びセメント質を除去した。続いて、残った象牙質を、タンパク質分解酵素阻害剤(100mM 6−アミノカプロン酸(Sigma社製)、5mM 塩酸ベンズアミジン(Sigma社製)及び1mM フェニルメチルスルフォニルフルオライド(Sigma社製))、0.5M NaCl及び50mM Tris−HClを含有するpH 7.4の緩衝溶液を用いて、4℃で洗浄を行った。次いで、洗浄後の象牙質を液体窒素下にて200メッシュ以下の細粒子に粉砕した。得られた象牙質粉体を、前記タンパク質分解酵素阻害剤、0.5M EDTA及び0.05M Tris−HClを含有するpH 7.4の脱灰溶液を用いて4℃にて脱灰処理を行った。前記脱灰処理後の溶液を、4℃にて脱イオン蒸留水に対し、透析膜(SPECTRUM MWCO 3500,132725)を用いて透析を行った。透析後、得られた溶液を凍結乾燥機(東京理科機械製:EYELA FREEZ DRYER 90500042)を用いて凍結乾燥した。
得られた凍結乾燥物を、前記タンパク質分解酵素阻害剤及び20mM Tris−HClを含むpH7.4の緩衝溶液に再溶解し、最終濃度が1MになるようにCaClを添加した。CaClの添加により精製した沈殿物を遠心分離機(日立工機製:HIMAC CENTRIFUGE345043)を用いて回収した。回収した沈殿物を、再び前記タンパク質分解酵素阻害剤、0.5M EDTA及び0.05M Tris−HClを含有するpH7.4の脱灰溶液を用いて4℃にて脱灰処理を行った。上述の手法にしたがって、得られた脱灰処理後の溶液を脱イオン蒸留水に対して透析した後に凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物を4M Urea及び0.01M Tris−HClを含むpH8.0の緩衝溶液に溶解した後、DEAE−Sepharose(Sigma Chem. Co.製)カラムクロマトグラフィーにて、0−1M NaCl直線勾配により溶出させた。最後に、溶出ピークのリン酸分析(Marachite green法)およびアミノ酸分析によりフォスフォフォリンを同定した。
〔調製例2〕
アルギン酸架橋ゲルの調製方法(カルボキシル基含有多糖(B)の調製)
2.3g(20mmol)のN−ヒドロキシコハク酸イミド(株式会社ペプチド研究所製)を酢酸エチル150mlに溶解し、この溶液に、酢酸エチル10mlに溶解した0.6g(10mmol)のエチレンジアミン(ジアミノエタン:和光純薬株式会社製)を撹拌しながら室温下に滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌を続けた。析出した結晶を濾取し、減圧下に乾燥してエチレンジアミン2N−ヒドロキシコハク酸イミド塩2.9g(収率100%)を得た。
アルギン酸ナトリウム(和光純薬株式会社製)の1重量%水溶液(粘度500〜600cp、20℃、BL型粘度計)550ml(カルボキシル基;275mmol)に、上記作製した得られたエチレンジアミン2N−ヒドロキシコハク酸イミド塩2.42g(8.5mmol)と、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(株式会社ペプチド研究所製)17.6g(92mmol)を添加して溶解し、それにより得られた溶液をテフロン(登録商標)被覆アルミ製トレイ(15cm×25cm)に流延し、室温下に静置した。約51時間後に含水ゲル(架橋率:15モル%)が得られた。
上記作製した含水ゲルを、カルシウムイオンとナトリウムイオンの濃度が細胞間質液におけるのと同じ濃度(カルシウムイオン5meq、ナトリウムイオン143meq)になるようにして塩化カルシウムと塩化ナトリウムを溶解した水溶液で十分に洗浄した後、純水で十分に洗浄し、次いで凍結乾燥して、共有結合架橋したアルギン酸ゲルよりなるアルギン酸架橋ゲルスポンジ約5gを得た。
〔調製例3−a〕
フォスフォフォリン及びアルギン酸架橋ゲルを含む複合生体材料の調製方法((A)及び(B)を含む複合生体材料の調製)
10mgの上記作製したアルギン酸架橋ゲルスポンジを、0.2mLの0.1M MES〔2−(N−Morpholino)ethanesulfonic Acid、ナカライテスク株式会社製〕を含むpH 4.7の緩衝溶液に浸漬させ、膨潤させた。前記緩衝溶液に膨潤させた前記ゲルに対して、50mg/mLのフォスフォフォリン水溶液を0.2mL添加した後、10mg/mLの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩水溶液を0.1mL添加し、2時間室温で放置した。上述の手法にしたがって、得られた縮合反応後の溶液を脱イオン蒸留水に対して透析した後に、凍結乾燥することで、フォスフォフォリン−アルギン酸架橋ゲルからなる複合生体材料(スポンジ状シート)を得た。なお、得られた複合生体材料の(A)と(B)の比率は(A):(B)=1:3(重量比)であった。
〔調製例3−b〕
フォスビチン及びアルギン酸架橋ゲルを含む複合生体材料の調製方法((A)及び(B)を含む複合生体材料の調製)
上述の複合生体材料の調製方法(調製例3−a)において、50mg/mLのフォスフォフォリン水溶液の替わりに50mg/mLのフォスビチン水溶液を0.2mL用いた以外は、前記調製方法(調製例3−a)と同様の手法にしたがって、複合生体材料を調製した。なお、得られた複合生体材料の(A)と(B)の比率は(A):(B)=1:3(重量比)であった。
〔調製例3−c〕
フォスフォフォリン、アルギン酸架橋ゲル及びBMPを含む複合生体材料の調製方法((A)、(B)及び(C)を含む複合生体材料の調製)
上述の複合生体材料の調製方法(調製例3−a)において、50mg/mLのフォスフォフォリン水溶液を0.2mL添加して得られたものを1×1×1mmに細断し、これに0.5μg/μLのrhBMP−2(ヒトリコンビナントBMP−2;Wurtzburg大学製)を1μL添加した以外は、前記調製方法(調製例3−a)と同様の手法にしたがって、複合生体材料を調製した。なお、得られた複合生体材料の(A)と(B)の比率は(A):(B)=1:3(重量比)であった。
〔試験例1〕
ラットによる象牙質再生試験
(1−1)試料覆髄
以下のプロトコールにて実験的に作製したラット(各々N=3)の露髄面に、上記作製した複合生体材料を充填し、象牙質再生効果を確認した。
8週齢オスWistarラット(体重:約250g)に対し、pentobarbital sodium(ネンブタール;大日本製薬社製)腹腔内全身麻酔下(1.6ml/kg)で開口器にて開口状態を保持した。
オキシドールにて口腔内の消毒を行い、滅菌ダイヤモンドポイント(40SS-S,松風社製)、滅菌ラウンドバー(014,Dentsply社製)にて上顎第一臼歯近心咬頭より人工露髄面を形成した。
露髄面の止血と窩洞の消毒を目的に、10%NaOClと3%H2O2による交互洗浄を行い、上記作製複合生体材料を露髄面において直接覆髄した。
GIC(HY-BOND GLASIONOMER CX,松風社製)、トライエスボンド(クラレメディカル社製),CR(ユニフィル(登録商標)ローフロー,GC社製)を用いて二重仮封した。
対合歯を抜歯してオペを終了した。
(1−2)試料摘出
以下のプロトコールに従い、移植後の試料をラットより摘出した。
試料覆髄の三週間後に、ジエチルエーテルによる麻酔死の後、メス、歯肉鋏を用いて歯を上顎骨ごと摘出した。その後、直ちに中性ホルマリン溶液にて固定した。
(1−3)評価
摘出した試料(フォスフォフォリン−コラーゲン複合体及びコラーゲンスポンジ)をヘマトキシリンエオジン染色(HE染色)し、光学顕微鏡にて組織学的観察を行った。
〔試験例2〕
修復象牙質の形態計測
試験例1において取得した試料の修復象牙質の形態計測を光学顕微鏡(ECLIPSE E400, Nikon社製)に接続したNikon DSカメラコントロールユニット DS-L2 にて行った。
なお、(石灰化物面積/髄腔面積)×100から修復象牙質面積(%)を求め、{(石灰化物面積-トンネル状欠損部面積)/石灰化物面積}×100 から修復象牙質の密度(%)を求めた。さらに、修復象牙質による封鎖性、歯髄の炎症の程度を下記に示すとおり評価した。評価結果を表1に示す。
封鎖性
A 完全封鎖
B ほぼ封鎖
C 部分的封鎖
D なし

炎症
A なし、あるいは充血程度
B 軽度炎症
C 中等度炎症
D 強度炎症
〔実施例1〕
試料覆髄に用いる複合生体材料として、上述の調製例3−aの製造方法で調製したフォスフォフォリン−アルギン酸架橋ゲルからなる複合生体材料(スポンジ状シート)を用い、試験例1及び2の評価を行った。
〔実施例2〕
試料覆髄に用いる複合生体材料として、上述の調製例3−bの製造方法で調製したフォスビチン−アルギン酸架橋ゲルからなる複合生体材料(スポンジ状シート)を用い、試験例1の評価を行った。
〔実施例3〕
試料覆髄に用いる複合生体材料として、上述の調製例3−cの製造方法で調製したフォスビチン−アルギン酸架橋ゲル及びBMPからなる複合生体材料(スポンジ状シート)を用い、試験例1及び2の評価を行った。
〔比較例1〕
試料覆髄に用いる複合生体材料として、上述の「調製例2 アルギン酸架橋ゲルの調製方法」で調製したアルギン酸架橋ゲル(スポンジ状シート;非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)を含有していない)を用い、試験例1及び2の評価を行った。
本発明の複合生体材料を用いた実施例1〜3では、良好な象牙質の再生が観察され、さらに覆髄に用いられた本発明の複合生体材料が再生された象牙質によって置換されていた。一方、非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)を含有していない比較例1では、象牙質の再生は観察されなかった。また、覆髄に用いたアルギン酸架橋ゲルが標本作成時に脱落した。表1に示されるように、実施例1及び3では、封鎖性、炎症ともに良好であったが、比較例1ではともに不良であった。
本発明の複合生体材料は、優れた生体親和性及び硬組織再生能を有し、かつ高い生体安全性を有する。さらに、前記複合生体材料は成形が容易で、しなやかな力学的特性を有する。このため、前記複合生体材料は歯科用途に好ましく用いられ、中でも歯周組織再生材、象牙質再生材及び直接覆髄材などとして用いることもできる。
図1は、実施例1の試料の光学顕微鏡写真である。 図2は、実施例2の試料の光学顕微鏡写真である。 図3は、実施例3の試料の光学顕微鏡写真である。 図4は、比較例1の試料の光学顕微鏡写真である。

Claims (21)

  1. 非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)及びカルボキシル基含有多糖(B)を含む複合生体材料。
  2. 前記非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)が、フォスフォフォリン、フォスビチン及びDMP−1からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の複合生体材料。
  3. 前記非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)が前記カルボキシル基含有多糖(B)に化学架橋されている請求項1又は2記載の複合生体材料。
  4. 前記カルボキシル基含有多糖(B)が、アルギン酸及びその塩並びにヒアルロン酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の複合生体材料。
  5. 前記カルボキシル基含有多糖(B)が、カルボキシル基含有多糖エステルである請求項1又は2記載の複合生体材料。
  6. 前記カルボキシル基含有多糖エステルが、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びヒアルロン酸プロピレングリコールエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項5記載の複合生体材料。
  7. 前記カルボキシル基含有多糖(B)が、架橋多糖である請求項1〜6のいずれかに記載の複合生体材料。
  8. 前記架橋多糖が、カルボキシル基含有多糖を以下の一般式(I):
    −NH−(CH−NH−R (I)
    (式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は式:−COCH(NH)−(CH−NHで表される基を示し、nは2〜18の整数を示す)
    で表されるアミン系化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる架橋剤で架橋してなるものである、請求項7記載の複合生体材料。
  9. 前記架橋剤が前記一般式(I)で表される化合物のN−ヒドロキシコハク酸イミド塩である請求項8記載の複合生体材料。
  10. 前記一般式(I)で表される化合物のN−ヒドロキシコハク酸イミド塩が、ジアミノエタンの2N−ヒドロキシコハク酸イミド塩、ジアミノヘキサンの2N−ヒドロキシコハク酸イミド塩、N,N’−ジ(リジル)−ジアミノエタンの4N−ヒドロキシコハク酸イミド塩、及びN−(リジル)−ジアミノヘキサンの3N−ヒドロキシコハク酸イミド塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項9記載の複合生体材料。
  11. 前記架橋多糖が、前記カルボキシル基含有多糖エステルを、天然アミノ酸に由来するα−アミノ基を2個以上有するポリアミノ化合物を含む架橋剤で架橋してなる、請求項7記載の複合生体材料。
  12. ポリアミノ化合物がε−ポリリジンである請求項11記載の複合生体材料。
  13. 前記複合生体材料がスポンジ状又はゲル状構造を有している、請求項1〜12のいずれかに記載の複合生体材料。
  14. さらに増殖因子(C)を含有している請求項1〜13のいずれかに記載の複合生体材料。
  15. 前記増殖因子(C)が、骨形成因子(BMP)である請求項14記載の複合生体材料。
  16. さらにハイドロキシアパタイト、α−TCP、β−TCP、ポリグリコール酸及びポリ乳酸並びにそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の複合生体材料。
  17. 非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)及びカルボキシル基含有多糖(B)を、架橋剤を用いて共有結合的に化学架橋する工程を含む複合生体材料の製造方法。
  18. 前記架橋剤がジビニルスルフォンである請求項17記載の製造方法。
  19. 非コラーゲン性リン酸化タンパク質(A)及びカルボキシル基含有多糖(B)を、脱水縮合剤を用いて共有結合的に結合する工程を含む複合生体材料の製造方法。
  20. 前記脱水縮合剤が1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである請求項19記載の製造方法。
  21. 架橋又は結合後に凍結乾燥又は加熱ゲル化する工程を含む請求項17〜20のいずれかに記載の製造方法。
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