JP4493826B2 - 多糖類スポンジの製造法及び多糖類スポンジ - Google Patents
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Description
本発明は、共有結合架橋されたカルボキシル基含有多糖類よりなるスポンジの製造法及び多糖類スポンジに関する。本発明の製造法に従って製造された多糖類スポンジは吸水性能に優れるとともに、架橋結合の安定性が高いため、医療用途、特に創傷用ドレッシング、組織再生用基材、組織癒着防止用バリアー剤などの水膨潤または吸収性材料として好適に利用される。本発明のカルボキシル基含有多糖類スポンジの製造法によれば、高い生産性で安価に多糖類スポンジを製造することが可能である。また、得られた多糖類スポンジは、水で膨潤させた場合、崩壊性が低いという特徴を有する。
【0002】
【従来の技術】
アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチル化セルロースなどのカルボキシル基含有多糖類およびこれらの機能性誘導体は、創傷用ドレッシング、組織再生用基材、組織癒着防止用バリアー材、細胞の三次元培養基材などの水膨潤あるいは吸収性材料として非常に有効であり、多く研究がなされている。
【0003】
カルボキシル基含有多糖類を医療用途に用いる場合には、スポンジ状体がきわめて使用しやすく、これまで種々の試みがなされており、架橋されたカルボキシル基含有多糖類ゲルを発泡体(スポンジ)として用いることはすでに知られている。例えば、特開昭48−79870号公報には、多価金属イオンで架橋されたアルギン酸からなる発泡体が開示され、特開昭51−34978号公報には、ジカルボキシ化合物によって架橋された多糖類ゲルの発泡体が開示されている。しかしながら、これらは、高い吸水性を有するスポンジを得るために凍結乾燥法を採用しており、非常に生産性が悪いものである。したがって、スポンジの価格は高いものとなり、スポンジの広範囲にわたる利用を妨げる要因となっていた。
【0004】
一方、凍結乾燥法によらない全く新しいスポンジ体の製造法についても近年開発がなされつつある。例えば、特開平8−337674号公報及び特表平6−510330号公報には、気泡形成剤、特に界面活性剤を混入したゲル化性多糖類水溶液を機械的に発泡させてゲル化し乾燥する方法(以下、発泡乾燥法と略称することがある)が開示されている。また、特開平5−254029号公報及び特開平8−208868号公報にも同様の方法が開示されている。発泡乾燥法は、凍結乾燥と異なり、高い生産性を有するものであり、スポンジの低価格製造が期待できる。
【0005】
しかし、少なくとも明細書に記述されている態様では、カルボキシル基含有多糖類の架橋結合については多価金属イオンによるイオン結合が示されているのみである。そして、このイオン結合は可逆性であるため組織内の環境によって意図しない溶解が起こったり、ゲル内部に含まれる多価金属イオンが溶け出すことで局所的に組織のイオンバランスを壊すことがある。また、多価金属イオンによる架橋によって製造されたカルボキシル基含有多糖類のスポンジは、乾燥時に著しく収縮して堅くなり、実用性の点でも不十分である。しかも、スポンジの吸水性能は凍結乾燥法により製造されたものに比較するとかなり低い。
【0006】
また、特開平8−337674号公報及び特表平6−510330号公報に記載されている共有結合架橋は、キトサン、デンプンについてのみであり、これらの公報には、このような共有結合架橋によって水への溶解を抑制されたカルボキシル基含有多糖類の各種機能、例えば吸水性、安定性、柔軟性などに対する著しい改善効果については全く示唆されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、カルボキシル基含有多糖類を医療用途に用いる場合には、スポンジ状体がきわめて使用しやすいこと、コストの高い凍結乾燥法に代わる発泡乾燥法により、ある程度の性能を有するスポンジが安価に製造できることが既に知られていた。しかしながら、従来の技術では上記した問題点があって実用性が制限されていた。従って、本発明の目的は、吸水性、安定性及び柔軟性に優れるスポンジを安価に製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討した結果、カルボキシル基含有多糖類水溶液にゲル化性多糖類を添加して共有結合架橋を形成させることにより、上記目的を達成することができることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、カルボキシル基含有多糖類水溶液を発泡させて多糖類スポンジを製造する方法において、カルボキシル基含有多糖類水溶液を発泡させる際にゲル化性多糖類を添加し、共有結合架橋を形成することを特徴とするカルボキシル基含有多糖類スポンジの製造法である。また、本発明のもう一つの発明は、該製造法により製造されたカルボキシル基含有多糖類スポンジである。
【0009】
【作用】
本発明の製造法によって製造される共有結合されたカルボキシル基含有多糖類スポンジは、吸水性、安定性に優れる。しかも、加熱空気によって乾燥されたスポンジには顕著な収縮は観測されず、細孔が適度に保たれて柔軟である。本発明の製造法により得られるスポンジは、多価金属イオン架橋のスポンジが収縮して堅い物体しか与えず、ほとんど吸水しないのとは対照的である。このような特性は、共有結合架橋されたカルボキシル基含有多糖類からなるスポンジであることにより発現する特性であり、この特性を発現するメカニズムを明確に説明することはできないけれども、共有結合架橋ゲルの強度、乾燥時のフィルム形成能などに起因していると推察される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に使用されるカルボキシル基含有多糖類は、カルボキシル基を含有する水溶性の多糖類であれば特に限定されるものではなく、例えば、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ジェランガム、ヒアルロン酸などのカルボキシル基含有の多糖類およびこれらの生理学的に許容される人工的な誘導体、カルボキシメチル化セルロース、カルボキシメチル化デキストラン、カルボキシメチル化プルランなどの通常ではカルボキシル基を含有しない多糖類の人工的な誘導体、カルボキシメチル化キチンなどのカルボキシル基が導入されたキチン誘導体などが例示される。以上のカルボキシル基含有多糖類は通常0.1から50重量%の範囲で水に溶解される。
【0011】
本発明の多糖類スポンジの製造法において、カルボキシル基含有多糖類水溶液を発泡させる際にゲル化性多糖類を添加することが重要である。ゲル化性多糖類は、カルボキシル基含有多糖類水溶液に含ませることにより泡を安定化させる作用を有するものであり、このようなゲル化多糖類としては、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アミロペクチン、アラビナン、イソリケナン、カードラン、寒天、カラゲナン、ジェランガム、ニゲラン、ラミナランなどの加熱すると水に溶解し冷却すると直ちにゲル化する天然多糖類を例示することができる。
【0012】
ゲル化性多糖類は、カルボキシル基含有多糖類水溶液に対して、0.05から10重量%の範囲、好ましくは0.1から2重量%の範囲になるように溶解される。ゲル化性多糖類のカルボキシル基含有多糖類水溶液への溶解は発泡操作前、途中または後でもよいが、添加されたゲル化性多糖類が硬化してしまわないように、適切な温度、例えば25〜100℃の範囲に調節するのがよい。このようにして調製された発泡混合液を冷却することでゲル化させ、泡を安定化させることができる。
【0013】
上記したカルボキシル基含有多糖類の水溶液を発泡させるには、機械的に攪拌して供給されるガスを溶液内に拡散すればよいが、加熱などにより、水不溶性気体を発生する発泡剤、例えば炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド、P−トルエンスルホニルヒドラジドなどの有機・無機発泡剤、ブタン、ヘキサン、エーテルなどの揮発性発泡剤を添加して加熱するのが好ましい。
【0014】
気泡形成剤であるイオン性または非イオン性界面活性剤を存在させると、安定した発泡を達成することができ、好ましい。イオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸塩、スルホアルキルアミドなどのアニオン性界面活性剤、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などのカチオン性界面活性剤、スルホベダイン型、β−アラニン型、イミダゾリン型活性剤などの両性活性剤などから選択することができる。
【0015】
また、非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレンオキシドアルキルエーテル類、ポリエチレンオキシドアルキルフェニルエーテル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸エステル類などから選択することができる。これに加えて卵白、ゼラチン、アルブミンなどのタンパク質、その他レシチンなども使用可能である。
【0016】
発泡させたカルボキシル基含有多糖類を含有する水溶液における泡の安定性が十分に高くないことがある。架橋が完了する前に泡が消失する場合、泡の安定化剤として、ドデシルアルコール、テトラデカノール、ヘキサデカノールなどの高級アルコール、エタノールアミンなどのアミノアルコール、カルボキシメチル化セルロースなどの水溶性高分子を添加することができる。
【0017】
カルボキシル基含有多糖類の水溶液を発泡させると、単位重量あたりの体積(以下、発泡倍率と略称することがある)が次第に増加する。このとき、発泡倍率は1.1〜100倍まで自由に変化させることができるが、ゲル化させたスポンジの安定性や乾燥スポンジの強度を考慮すると、1.1〜20倍までの範囲の発泡倍率とするのが好ましい。
【0018】
本発明におけるスポンジの製造法においては、カルボキシル基含有多糖類が、発泡操作と同時にまたは発泡操作の後に共有結合により架橋されることで溶液全体がゲル化し、発泡構造がそのまま固定化される。共有結合による架橋には、架橋剤、触媒、縮合剤または開始剤などの化学物質をそれぞれ単独または組み合わせて添加しなければならない場合がある。このときこれらの化学物質は発泡操作前、途中または後のカルボキシル基含有多糖類水溶液に添加される。
【0019】
カルボキシル基含有多糖類の共有結合架橋に用いられる架橋方法については、カルボキシル基含有多糖類の水酸基、カルボキシル基を利用して架橋されるものであれば特に限定されず、何れの方法も選択し得る。多官能性の架橋剤を添加して架橋を形成させる方法では、架橋剤として1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、エピクロルヒドリン、N,N−ジグリシジルアニリンなどのエポキシ類(エーテルまたはエステル結合)、N,N’−ジメチロール尿素などのメチロールアミド類(エーテル結合)、ジビニルスルホン、メチレンビスアクリルアミドなどのα,β−不飽和カルボニル類(エーテル結合)、エチレンジアミン、プロパンジアミンなどのジアミン類と縮合剤(例えば、1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドのような水溶性のカルボジイミド)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド類などを用いることができる。架橋反応を速く進行させるため塩酸、硫酸、酢酸などの酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基を添加することも可能である。また、必要に応じて熱を与えることで反応を制御することもできる。
【0020】
さらに、本発明における共有結合架橋のもう一つの態様としてカルボキシル基含有多糖類に予め導入された官能基に架橋を形成させる方法がある。これは例えば、カルボキシル基含有多糖類に桂皮酸基、チミン基、マレイミド基などの光二量化性基、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、アリル基などの重合性基などを導入しておき、発泡操作と同時または発泡操作の後に光や熱などの刺激を与えて共有結合架橋をさせる方法である。光二量化性基および重合性基の導入は、カルボキシル基含有多糖類の水酸基に対して有機溶媒中で、例えば桂皮酸クロライドやアクリル酸クロライド、アクリル酸無水物、N−メチロールアクリルアミドなどを用いることで導入できるが、このような方法のみに限定されるわけではない。
【0021】
本発明の製造法においては、カルボキシル基含有多糖類が共有結合架橋されていることが必須であるが、以上のような共有結合架橋に加えカルシウムイオンや鉄イオンなどの多価金属イオンによる架橋をさらに導入してもよい。
【0022】
共有結合架橋されたカルボキシル基含有多糖類混合溶液を発泡させて製造したスポンジに、各種の用途に最適に利用できる形、例えば糸状、膜状、管状、粒状、塊状、板状などの特定の形を付与することも可能である。すなわち、発泡操作前または途中のカルボキシル基含有水溶液を、紡糸口金から吐出すれば糸状、精密な鋳型へ導入することによって精密な形状、平板上に流延すれば任意の厚みを持つ膜状、適当な溶媒中でエマルジョン化すれば粒子状となって、その後に発泡およびゲル化を完了させれば成形スポンジとすることができる。発泡操作後のカルボキシル基含有水溶液を以上と同様の方法を使用して成形し、ゲル化を完了させることで成形スポンジとすることもできる。このような成形、加工の方法は目的に応じて任意に選択することができる。
【0023】
本発明の製造法におけるスポンジへの形状付与のもう一つの態様には、他の基材や部位に塗布、コーティング、含浸、付着または埋没されることなどが包含される。他の基材や部位とは、例えば、ガーゼ、編織布、不織布、綿状体、糸状体、フィルム、多孔性スポンジ、ゴム、プラスチック、金属、人工臓器、生体組織の表面、切断面、傷口などである。発泡操作前または途中のカルボキシル基含有水溶液を他の基材や部位に塗布、コーティング、含浸、付着、または埋没された後に、発泡およびゲル化を完了して目的を達せられる。発泡操作後のカルボキシル基含有水溶液を以上と同様に処理してもよい。
【0024】
成形された後に共有結合架橋が進行して完全にゲル化するとスポンジが得られる。得られた成形スポンジはそのまま、または一旦乾燥した後に水、アセトン、エタノールまたはイソプロパノールなどの溶剤を使用して洗浄することもできる。これは未反応の架橋剤、過剰の発泡剤、気泡形成剤やこれらの分解物などを除去するのに有効な手段である。本発明のカルボキシル基含有多糖類スポンジが共有結合架橋されたものであることは、アミド結合の存在をUVなどで観察することにより確認することができる。
【0025】
このようにして成形されたスポンジは、そのまま利用されるか、少なくとも一部の水が除かれて利用される。水を除くには、凍結乾燥法以外の乾燥方法、とりわけ加熱空気による乾燥か減圧乾燥、または両者の組み合わせによってなされるが、設備などを考慮すると加熱空気による乾燥がより好ましい形態である。このとき温度は5℃〜200℃、より望ましくは25℃〜100℃の間に制御される。また、成形したスポンジを、水と混和する有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、アセトンなどの水混和性の溶剤に浸漬してスポンジ内部の水の少なくとも一部分をこれらの溶剤と交換させた後、加熱空気によって乾燥することもできる。
【0026】
乾燥後のスポンジはしばしば堅くなることがあり、生体組織と接触させるには相応しくない場合がある。これを避けるために、例えばグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、マルチトールなどの多価アルコール、ジメチルスルホキシド、水などを、可塑剤または軟化剤として含ませることもできる。これらは成形されたスポンジの乾燥後に付与するか、または予め洗浄液に添加しておいてスポンジ内部に含浸させるか、もし洗浄を必要としないのであれば発泡操作前、途中または後のカルボキシル基含有多糖類水溶液に添加することが可能である。
【0027】
本発明の製造法により得られるスポンジは、高度に吸水した状態では、その小孔にも水分を蓄え、さらにスポンジを構成する高分子ゲル自体も吸水して膨潤するものである。本発明の製造法により製造されるカルボキシル基含有多糖類スポンジは、次式で定義される膨潤度が1〜5000のものが好ましい。2〜500のものがさらに好ましい。
【0028】
膨潤度=[Wg1(水膨潤ゲル)−Wg2(乾燥ゲル)]/Wg2(乾燥ゲル)
【0029】
ここで、Wg2(乾燥ゲル)は乾燥した高分子ゲルの重量であり、Wg1(水膨潤ゲル)は乾燥高分子ゲルまたは水系溶媒を含む高分子ゲルを24時間以上生理的食塩水に浸漬した後の重量である。膨潤度がこれを越えて高くなると発泡体の強度が低くなる傾向にあり、これ以下になると吸水性が低くなることがある。以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0030】
【実施例】
実施例1
1.5重量%アルギン酸ナトリウム(君津化学工業製)水溶液100ミリリットル(mL)に、界面活性剤(ナカライ製トリトンX−100)0.3mL及びエチレンジアミン2N−ヒドロキシスクシンイミド塩(神戸天然物化学製)0.33gを加え、ビーターで攪拌した。65℃まで昇温し、1gのκ−カラゲナン(和光純薬社製)粉末を加えて15分間攪拌した。この時点での発泡倍率は約2倍であった。
【0031】
この発泡混合液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(ペプチド研究所製)2.4gを加え、さらに5分間攪拌した。この発泡混合液30gを10cm×10cmのテフロン被覆トレーに入れ、室温で50時間かけて硬化させた。得られたスポンジ状ゲルを、まず2.5ミリモル(mM)の塩化カルシウムと143mMの塩化ナトリウムを溶解したイオン交換水でよく洗浄し、その後イオン交換水で洗浄した。洗浄後、スポンジ状のゲルを60℃に設定した乾燥器で5時間乾燥して、10cm×10cmの柔軟なスポンジを得た。
【0032】
得られた乾燥スポンジを生理的食塩水を十分に含ませたポリウレタンスポンジ上に置き、37℃の恒温槽中に静置し、吸水させたところ、24時間後の膨潤度は約23となった。このときゲルの崩壊または溶解は全く観測されなかった。
【0033】
実施例2
1.5重量%アルギン酸ナトリウム水溶液100mLに、実施例1で使用したものと同じ界面活性剤0.3mL及びエチレンジアミン2N−ヒドロキシスクシンイミド塩0.33gを加え、ビーターで攪拌した。65℃まで昇温し、0.5gのκ−カラゲナン粉末を加えて15分間攪拌した。この時点での発泡倍率は約2.5倍であった。
【0034】
この発泡混合液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩2.4gを加え、さらに5分間攪拌した。この発泡混合液30gを10cm×10cmのテフロン被覆トレーに入れ、室温で50時間かけて硬化させた。得られたスポンジ状ゲルを、まず2.5mMの塩化カルシウムと143mMの塩化ナトリウムを溶解したイオン交換水により60℃でよく洗浄し、その後、イオン交換水により室温で洗浄した。洗浄後、スポンジ状のゲルを60℃に設定した乾燥器で5時間乾燥して、10cm×10cmの柔軟なスポンジを得た。
【0035】
得られた乾燥スポンジに、実施例1と同様にして生理的食塩水を吸収させたところ、24時間後の膨潤度が約75となった。また、25kGyのγ線照射により滅菌された乾燥スポンジの吸水性を同様にして評価したところ、24時間後の膨潤度は約44倍となった。スポンジは吸水してもその形状を十分に保持しており、崩壊または溶解は全く観測されなかった。
【0036】
比較例1
2重量%アルギン酸ナトリウム水溶液100mLに、実施例1で使用したものと同じ界面活性剤0.1mLを加え、ビーターで攪拌した。攪拌後の発泡倍率は3.5倍であった。この発泡溶液30gを10×10cmのテフロン製トレーに入れ、5重量%塩化カルシウム水溶液100mLに12時間浸漬し、硬化させた。スポンジ状のゲルを70℃に設定した乾燥器で2時間乾燥したところ、6cm×6cm程度に収縮して堅くなったスポンジが得られた。このスポンジを37℃で生理的食塩水に浸漬したところ、24時間後の膨潤度は約0.7であった。
【0037】
比較例2
アルギン酸ナトリウム(和光純薬製、100〜150cP)3.8gおよび炭酸ナトリウム1.9gをイオン交換水84gに完全に溶解し、炭酸カルシウム0.5gを添加して十分に攪拌した。一方、上記アルギン酸ナトリウム(和光純薬製、100〜150cP)3.8gをイオン交換水80gに完全に溶解した後、酢酸3.6gを添加して十分に攪拌して得た溶液を別に調製した。このようにして調製した二つのアルギン酸ナトリウム溶液を20gずつ混合したところ、急激に発泡した。この発泡溶液を10cm×10cmのテフロン製トレーに入れ、室温で0.5時間かけて硬化させた後、70℃に設定した乾燥器で2時間乾燥した。10cm×10cmの嵩高さがなく堅いフィルムが得られた。得られたフィルムを37℃で生理的食塩水に浸漬したところ、3時間後には発泡体が溶解し、その形状を保持していなかった。
【0038】
【発明の効果】
本発明により、共有結合架橋されたカルボキシル基含有多糖類スポンジを生産性よく製造可能な製造法を提供することができる。本発明の製造法により得られた多糖類スポンジは、吸水性、安定性及び柔軟性に優れており、従来架橋に用いられていた多価金属イオンをほとんど含有していないため、生体組織と接触させた場合に局所的なイオンのバランスを崩す心配も少ない。したがって、本発明の製造法は、医療用途、特に創傷用ドレッシング、組織再生用基材、組織癒着防止用バリアー剤などの水膨潤または吸収性材料として好適に利用されるスポンジの製造法として有用である。
Claims (5)
- カルボキシル基含有多糖類水溶液を発泡させて多糖類スポンジを製造する方法において、カルボキシル基含有多糖類水溶液を発泡させる際にゲル化性多糖類を添加し、共有結合架橋を形成することを特徴とするカルボキシル基含有多糖類スポンジの製造法。
- さらに、発泡剤を添加する請求項1に記載の多糖類スポンジの製造法。
- さらに、気泡形成剤であるイオン性または非イオン性界面活性剤を添加する請求項2に記載の多糖類スポンジの製造法。
- 請求項1〜3いずれかに記載の製造法により製造されたカルボキシル基含有多糖類スポンジ。
- 膨潤度が1〜5000である請求項4に記載の多糖類スポンジ。
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