JP2001278785A - 骨疾患の治療剤 - Google Patents

骨疾患の治療剤

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 β−アラニル−3,4−ジヒドロキシフェニ
ルアラニン(β-AD)が破骨細胞の骨吸収作用に及ぼす
影響、並びに破骨細胞の分化に及ぼす影響を解明するこ
と。 【解決手段】 β−アラニル−3,4−ジヒドロキシフ
ェニルアラニン(β-AD)、その機能性誘導体、又は生
理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含む骨
疾患の治療及び/又は予防のための医薬。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、骨疾患の治療及び
/又は予防のための医薬、破骨細胞の骨吸収作用の抑制
剤、並びに破骨細胞の分化阻害剤に関する。より具体的
には、本発明は、β−アラニル−3,4−ジヒドロキシ
フェニルアラニン(β-AD)またはその誘導体を有効成
分として含む、上記薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】昆虫は、体の損傷又は微生物感染に対す
る応答として様々な防御分子、例えば、抗細菌タンパク
質、抗菌タンパク質及びレクチンを生成することが知ら
れている(Boman,H.G.(1991) Cell 65, 205-207; Nator
i,S (1994) Antibacterial Peptides, Chiba Foundatio
n Symposium, Vol.186, pp.123-134, Wiley, Chicheste
r; Natori,S. (1998)in: Molecular Mechanisms of Imm
une Responses in Insects (Brey,P.T. and Hultmark,
D., Eds.), pp.245-260, Chapman and Hall, London;
及びHoffmann,J.A.(1995) Curr.Opin.Immunol. 7,4-1
0)。
【0003】ニクバエ(Sarcophaga peregrina)を用い
た昆虫免疫の研究中に、本発明者らは免疫した成虫の溶
解物中に新規な物質を単離し、これがN−β−アラニル
−5−S−グルタチオニル−3,4−ジヒドロキシフェ
ニルアラニン(5-S-GAD)であることを同定した(Leem
J.Y., et al. J Biol Chem 1996, 271, 13573-13577; N
atori S. Molecular Mechanisms of Immune Responses
in Insects. London,Chapman & Hall, 1998, 245-260;
及び特開平8−337594号公報)。5-S-GADは抗菌
物質として最初に発見されたが、5-S-GADの抗菌活性は
22を分解するカタラーゼで阻害されたことから、5-
S-GADの抗菌活性はそのカテコール成分由来のH22
よるものであることが示唆された。
【0004】5-S-GADは、グルタチオンとβ−アラニル
−ジヒドロキシフェニルアラニン(dopa)との複合体で
ある。昆虫が細菌に感染すると、チロシナーゼが活性化
し、グルタチオンとβ−アラニル−3,4−ジヒドロキ
シフェニルアラニン(β-AD)からの5-S-GAD合成が触媒
される。5-S-GAD中の3,4−ジヒドロキシフェニルア
ラニンの水酸基は不安定であり、過酸化水素を産生する
オルトキノンに容易に変換される。5-S-GADの抗菌活性
は、オルトキノン由来の過酸化水素によるものであるこ
とが判明した(Leem JY, et al. J Biol Chem 1996, 27
1, 13573-13577)。5-S-GADの生理活性についてはこれ
まで抗腫瘍活性など幾つか報告がある(特開平8−33
7594号公報)。β−アラニル−3,4−ジヒドロキ
シフェニルアラニン(β-AD)の生理活性についても幾
つかの報告はあるものの、未だ十分には解明されていな
い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する第1の課題は、β−アラニル−3,4−ジヒドロキ
シフェニルアラニン(β-AD)が破骨細胞の骨吸収作用
に及ぼす影響、並びに破骨細胞の分化に及ぼす影響を解
明することである。本発明が解決しようとする第2の課
題は、骨疾患、特に骨粗鬆症などの生体内での破骨細胞
の過剰な形成及び/又は過剰な機能を伴う疾患の治療及
び/又は予防に有用な薬剤を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために、破骨細胞とβ-ADを用いてピットフ
ォーメーションアッセイを行うことにより破骨細胞の骨
吸収作用を評価するとともに、β-ADが破骨細胞の分化
に及ぼす影響を検討した結果、β-ADはこの系で破骨細
胞の骨吸収作用を高めることができ、また破骨細胞の分
化を阻害できることを見出した。本発明はこれらの知見
に基づいて完成したものである。
【0007】即ち、本発明によれば、β−アラニル−
3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(β-AD)、そ
の機能性誘導体、又は生理学的に許容されるそれらの塩
を有効成分として含む骨疾患の治療及び/又は予防のた
めの医薬が提供される。好ましくは、骨疾患は破骨細胞
の骨吸収作用又は細胞数の増大を伴う疾患であり、特に
好ましくは骨粗鬆症である。
【0008】本発明の別の側面によれば、β−アラニル
−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(β-AD)、
その機能性誘導体、又は生理学的に許容されるそれらの
塩を有効成分として含む、破骨細胞の骨吸収作用の抑制
剤が提供される。本発明の別の側面によれば、β−アラ
ニル−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(β-A
D)、その機能性誘導体、又は生理学的に許容されるそ
れらの塩を有効成分として含む、破骨細胞の分化阻害剤
が提供される。
【0009】本発明の別の観点によれば、骨疾患の治療
及び/又は予防のための方法であって、薬理学的に有効
量のβ-AD、その機能性誘導体、又は生理学的に許容さ
れるそれらの塩をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程
を含む方法;破骨細胞の骨吸収作用を抑制するための方
法であって、薬理学的に有効量のβ-AD、その機能性誘
導体、又は生理学的に許容されるそれらの塩をヒトを含
む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;並びに破骨細
胞の分化を阻害するための方法であって、薬理学的に有
効量のβ-AD、その機能性誘導体、又は生理学的に許容
されるそれらの塩をヒトを含む哺乳類動物に投与する工
程を含む方法が提供される。
【0010】本発明のさらに別の観点によれば、骨疾患
の治療及び/又は予防のための医薬の製造におけるβ-A
D、その機能性誘導体、又は生理学的に許容されるそれ
らの塩の使用;破骨細胞の骨吸収作用の抑制剤の製造に
おけるβ-AD、その機能性誘導体、又は生理学的に許容
されるそれらの塩の使用;並びに破骨細胞の分化阻害剤
の製造におけるβ-AD、その機能性誘導体、又は生理学
的に許容されるそれらの塩の使用;が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の骨疾患の治療及び/又は
予防のための医薬、破骨細胞の骨吸収作用の抑制剤、並
びに破骨細胞の分化阻害剤(本明細書中において、これ
らをまとめて本発明の薬剤と称する場合もある)の有効
成分は、β−アラニル−3,4−ジヒドロキシフェニル
アラニン(β-AD)、その機能性誘導体、又は生理学的
に許容されるそれらの塩から選択される化合物である。
β-ADの化学構造を以下に示す。
【0012】
【化1】
【0013】β-ADには不斉炭素が存在するが、その不
斉炭素の立体配置は特に限定されず、S-又はR-配置(α
位又はβ位と呼ぶ場合もある)のいずれであってもよ
い。本発明で用いるβ-ADは、不斉炭素に基づく異性体
として存在可能であり、立体化学的に純粋な形態の任意
の異性体(光学異性体、ジアステレオ異性体など)や、
任意の異性体の混合物又はラセミ体などを用いることが
できる。
【0014】また、β-AD又はその機能性誘導体は、生
理学的に許容される塩の形態で本発明の薬剤に配合して
もよい。さらに、遊離形態又は塩の形態のβ-ADの水和
物又は溶媒和物を本発明の薬剤に有効成分として配合し
て用いてもよい。
【0015】生理学的に許容される塩には酸付加塩、塩
基付加塩、及びアミノ酸付加塩などが包含される。酸付
加塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸
塩、リン酸塩等の無機酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸
塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンス
ルホン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、ク
エン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩等の有機酸塩を挙げるこ
とができる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム
塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの
金属塩、アンモニウム塩、メチルアミン塩、トリエチル
アミン塩などのアミン塩を用いることができる。アミノ
酸付加塩としては、例えば、グリシン、フェニルアラニ
ン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の付加塩を用いる
ことができる。
【0016】本発明の薬剤で有効成分として用いるβ−
アラニル−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(β
-AD)の製造方法は特に限定されず、有機化学合成分野
の当業者であれば、適宜合成することができ、例えば、
具体的には、特開平8−337594号公報、Leem JY,
et al. J Biol Chem 1996, 271, 13573-13577、並びに
Ito S, et al. J Med Chem 1981, 124, 673-677等に記
載の製造方法に準じて、当業者ならば容易に製造するこ
とができる。
【0017】β-ADは、はアミノ酸の縮合合成法及び酵
素処理法の両方を利用して合成することもできる。具体
的には、t−ブトキシカルボニル−β−アラニル−N−
ヒドロキシスクシンイミドとL−β−3,4−ジヒドロ
キシフェニルアラニン(dopa)とをジクロロメタ
ン、トリエタノールアミン、シアン化メチル及びジメチ
ルフルオリドの存在下に反応させ、反応混合物に1N塩
酸を添加して酸性条件下で酢酸エチルを用いて抽出処理
を行う。酢酸エチル層について減圧下で濃縮して析出す
る結晶を回収し、溶解後、HPLCにより精製してβ−
アラニル−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(β
-AD)を得ることができる。また、β−アラニル−3,
4−ジヒドロキシフェニルアラニン(β-AD)は、液相
ペプチド合成法により調製することもできる。
【0018】本発明ではβ-ADの機能性誘導体を有効成
分として使用することもできる。β-ADの機能性誘導体
とは、β-ADに存在する1以上の官能基を適当な置換基
で修飾した誘導体であって、β-ADと同等以上の破骨細
胞の骨吸収抑制作用、又は破骨細胞の分化阻害作用を有
する誘導体を言う。修飾される官能基としては、例え
ば、β-ADにおける1つのカルボキシル基、1つのアミ
ノ基または2つの水酸基の何れか1つ以上が挙げられ
る。カルボキシル基の修飾の例としては、アルコールと
反応させてエステル体としたもの、又はアミン化合物と
反応させてアミド体としたもの等が挙げられる。また、
アミノ基の修飾の例としては、カルボン酸と反応させて
アミド体としたもの、アミノ基中の片方又は両方の水素
原子を置換基(好ましくは低級アルキル基など)で置換
したもの等が挙げられる。また、水酸基の修飾の例とし
ては、カルボン酸と反応させてエステル体としたもの、
水酸基中の水素原子を置換基(好ましくは低級アルキル
基など)で置換したもの等が挙げられる。これらのβ-A
Dの機能性誘導体は、上記した5-S-GADの製造方法に準じ
て通常の有機化学合成法に従って入手することができ
る。
【0019】本発明の一つの態様によれば、β-AD、そ
の機能性誘導体、又は生理学的に許容されるそれらの塩
を有効成分として含む、骨疾患の治療及び/又は予防の
ための医薬が提供される。本発明の別の態様によれば、
5-S-GAD、その機能性誘導体、又は生理学的に許容され
るそれらの塩を有効成分として含む、破骨細胞の骨吸収
作用の抑制剤並びに破骨細胞の分化阻害剤が提供され
る。
【0020】破骨細胞は、直径20〜100μmの大き
さを有し、約50個ほどの核を含む大型多核細胞で、骨
細胞を吸収及び除去する作用を有する。健常な生体にお
いては、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収
はバランスよく保たれ、その結果、骨組織は基本的形状
を変えることなく常に新生骨と置換されて健常な状態が
保たれている。また、このバランスは、血中のカルシウ
ム濃度を一定に保つなど生体の恒常性維持のためにも重
要な役割を果たしている。一方、このバランスが崩れた
場合、特に骨吸収量が骨形成量を上回るような場合に
は、骨関連の疾患のみならずその他の種々の疾患が惹き
起こされることとなる。
【0021】破骨細胞の形成の機構は、例えば、促進因
子としてインターロイキン−1や阻害因子としてインタ
ーロイキン−4等が確認されているにも拘わらず、未だ
完全に解明されたと言えない。これは、生体における破
骨細胞の形成も、他の生体内での種々の現象と同様に、
数多くの促進因子や阻害因子が複雑に且つ密接に関わり
合って制御されているためであると考えられている。
【0022】本発明の薬剤は、骨疾患の治療及び/又は
予防のために使用することができる。骨疾患としては、
骨量減少等の内因性骨疾患、及び物理的骨折等の外因性
骨疾患の両方を含み、本発明の薬剤は上記骨疾患の治療
及び/又は予防、あるいは上記骨疾患の治療期間の短縮
のために使用することができる。内因性骨疾患として
は、生体内での破骨細胞の過剰な形成及び/又は過剰な
機能を伴う全ての疾患が包含される。骨疾患の具体例と
しては、骨粗鬆症、高カルシウム血症、骨ページェット
病、破骨細胞腫、骨肉腫、関節症、慢性関節リウマチ、
変形性骨炎、原発性甲状腺機能亢進症、骨減少症、骨多
孔症、骨軟化症、外傷性骨折、疲労骨折、又は栄養障
害、悪性腫瘍など他の疾病が原因による骨組織の脆弱化
及び骨折などが挙げられるが、これらに限定されるわけ
ではない。
【0023】上記の骨疾患の一例として挙げた骨粗鬆症
は、骨の量的減少により骨折しやすくなる疾患である。
骨の量は、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸
収という一連の過程により維持されているが、骨形成と
骨吸収は、通常、量的に平衡が保たれるように厳密にコ
ントロールされている。しかしながら、内分泌異常およ
び栄養障害等の原因により骨吸収が骨形成を上回ると骨
粗鬆症となる。本発明の薬剤は、好ましくは、骨粗鬆症
の治療及び/又は予防のために用いられる。
【0024】本発明の薬剤は、β−アラニル−3,4−
ジヒドロキシフェニルアラニン(β-AD)、その機能性
誘導体、又は生理学的に許容されるそれらの塩を有効成
分として含有するものであり、インビトロ、インビボを
問わず、破骨細胞の骨吸収作用の抑制、又は破骨細胞の
分化阻害のために用いられる全ての形態を包含する。本
発明の薬剤は、例えば、(1)破骨細胞の骨吸収作用を
抑制して、所望の細胞の維持、増殖及び/又は分化を良
好にするための動物細胞等の細胞培養用の培地成分とし
て、(2)骨疾患の治療剤又は予防剤のスクリーニング
用キットの構成物として、(3)骨吸収調節剤として、
また、(4)骨疾患の治療及び/又は予防のために用い
ることができる。ここでいう骨吸収調節剤とは、生体内
での破骨細胞の形成を阻害することにより骨吸収を正常
な域に調節して、比較的軽微な関節痛などの体調不良を
改善する薬剤及び健康食品等を包含する。
【0025】破骨細胞の骨吸収作用の抑制は、例えば、
ピットフォーメーションアッセイと称されるアッセイ系
によって評価することができる。ピットフォーメーショ
ンアッセイでは、適当な大きさの象牙にマウスやウサギ
などから取り出した破骨細胞を移植する。本発明の薬剤
の存在下でこの破骨細胞を培養すると、時間の経過とと
もに、破骨細胞の骨吸収作用に応じて骨基質が吸収さ
れ、ピットと呼ばれる小さな穴(吸収窩)が形成され
る。従って、染色を施し、それを顕微鏡で観察し、ピッ
ト(吸収窩)の個数、面積、形状などを測定することに
より、破骨細胞の骨吸収作用を測定することができる。
【0026】破骨細胞の分化阻害は、例えば、以下の方
法で評価することができる。先ず、破骨細胞の前駆細胞
である骨髄細胞を採取し、適当な培養下で培養した後、
破骨細胞分化促進因子(Osteoclast differentiation f
actor)と本発明の薬剤を添加してさらに一定時間培養
する。一定時間培養後、TRAP染色を行い、多核(3
核以上)の成熟破骨細胞数を測定することにより、破骨
細胞の分化阻害を評価することができる。
【0027】本発明の薬剤としては、β−アラニル−
3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(β-AD)、そ
の機能性誘導体、又は生理学的に許容されるそれらの塩
から選択される少なくとも1種をそのまま単独で用いて
もよいが、通常は製剤学的に許容される製剤用添加物を
用いて医薬組成物の形態で供給することが好ましい。本
発明の薬剤は経口的又は非経口的に投与することができ
る。経口投与に適する薬剤としては、例えば、錠剤、顆
粒剤、カプセル剤、散剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤
などを挙げることができ、非経口投与に適する薬剤とし
ては、例えば、注射剤、点滴剤、坐剤、経皮吸収剤など
を挙げることができるが、本発明の薬剤はこれらの製剤
に限定されることはない。
【0028】本発明の薬剤の製造に用いられる製剤用添
加物の種類は特に限定されず、当業者が適宜選択可能で
ある。例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、分散剤、懸濁
剤、乳化剤、緩衝剤、抗酸化剤、防腐剤、等張化剤、pH
調節剤、溶解剤、安定化剤などを用いることができ、こ
れらの目的で使用される個々の具体的成分は当業者に周
知されている。
【0029】本発明の薬剤はヒトを含む哺乳動物に投与
することができる。本発明の薬剤の投与量は患者の年
齢、性別、体重、症状、及び投与経路などの条件に応じ
て適宜増減されるべきであるが、一般的には、成人一日
あたり1μg/kgから1,000mg/kg程度の範囲で
あり、好ましくは10μg/kgから100mg/kg程
度の範囲である。上記投与量の薬剤は、毎日投与しても
よいしあるいは数日間隔で投与してもよく、例えば1〜
4日毎に投与される。以下の実施例により本発明をさら
に具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例によって
限定されることはない。
【0030】
【実施例】実施例1:定量的吸収窩形成アッセイ(ピッ
トフォーメーションアッセイ)を用いたβ-ADによる破
骨細胞の骨吸収作用の抑制の評価 (1)全骨細胞培養物の調製 生後11〜12週齢のICRマウス(Charles River)
をエーテル麻酔により殺処分した後、直ちに70%エタ
ノールに浸し消毒した。アルコール消毒した眼科バサミ
及びピンセットを用いて、マウスの両足の踵に切り込み
を入れ、足の付け根まで裂いた。皮膚をめくりとり、大
腿部を露呈させた。眼科バサミを用いて筋肉を切り取っ
た。関節部分を脱臼させ、大腿骨近位を胴体より分離し
た。分離した骨は、氷冷下、100U/mlペニシリ
ン、100mg/mlストレプトマイシンを含むα−M
EM(Flow Laboratories)培養液(以下、培養液と略
す)中に入れた。同様に、全てのマウスの両足の骨を分
離した。大腿骨と脛骨の間(膝関節)をハサミで切断
し、骨に付着した筋肉及び軟組織を取り除いた。
【0031】得られた骨を全て5%FCSを含む培養液
2mlを含む35ml培養用シャーレへ移し、約5分間
眼科バサミを用いて細かく切断した。5%FCSを含む
培養液2mlをシャーレに加え、よく懸濁した後、上清
を50mlの遠沈チューブに移した。上記切断及び懸濁
の操作を2回繰り返した後、25mlのピペットを用い
て骨切片全てを50mlチューブに移した。細胞及び骨
切片懸濁液を5%FCSを含む培養液を用いて50ml
にメスアップした。25mlのピペット(Sumilon)を
用いて5回懸濁した後、3分間静置し、骨切片を沈殿さ
せた。静かに上清を取り、メッシュ(セルストレーナー
70iμm、Falcon)に通しながら別の50ml
の遠沈チューブに移した。一部を分取し、細胞数をカウ
ントした。12000rpmで5分間遠心した後、5%
FCSを含む培養液を用いて懸濁し、細胞濃度を1×1
7細胞/mlに調整した。この細胞をラット副甲状腺
ホルモン10-8M(ratPTH、合成1〜34残基、
BACHEM)及び5%FCSを含む培養液を用いて、細胞濃
度4×106細胞/mlに調整し、75cm2の培養用フ
ラスコ(Sumilon)1本当たり15ml入れ(6×107
細胞/ボトル)、37℃で5%CO2インキュベーター
内で7日間培養した。
【0032】(2)象牙切片の調製 象牙片を厚さ150μmに精密低速切断機を用いて切断
した。切断した象牙片を直径6mmの円状に1穴パンチ
を用いて切り抜いた。象牙片を70%エタノールに浸
し、5分間ずつ2回超音波で処理した。象牙片を滅菌P
BS(リン酸緩衝生理食塩水)で3回、培養液で2回洗
浄した後、以下の定量的吸収窩形成アッセイで使用し
た。
【0033】(3)定量的吸収窩形成アッセイ 上記(2)で調製した象牙片を96穴プレート(Falco
n)に入れ、種々の濃度(0.01、0.1、1、10
及び100μg/ml)のβ−アラニル−3,4−ジヒ
ドロキシフェニルアラニン(β-AD)の入った培養液1
00mlを添加した。次いで、上記(1)で調製したラ
ット副甲状腺ホルモン10-8Mの存在下で1週間培養し
た全骨細胞1×105細胞を含む培養液100μlを各
穴に添加した。アッセイ系を10%CO2インキュベー
ター内で37℃で2日間培養した。培養後、象牙片上の
細胞を2N水酸化ナトリウム液内でゴムへらを用いて除
き、水洗し、メタノールに浸した後、象牙片を48穴培
養プレートの1穴へ入れた。クマシーブリリアントブル
ー2%液約0.5mlを象牙片の入った各穴に入れ、冷
風下で2時間乾燥させた。クマシーブリリアントブルー
液が完全に乾燥したことを確認し、象牙片上の余分なク
マシーブリリアントブルーを2N水酸化ナトリウム水溶
液に浸し、表面を滑らかな紙上で擦することによって除
去した。顕微鏡下で形成された吸収窩の数を測定した。
【0034】結果を以下の表1に示す。表1中の数値
は、対照(11例)の吸収窩の平均に対する百分率で示
す。即ち、表1に示した値は、各実験における吸収窩の
数(測定値)を対照(11例)の吸収窩の数(測定値)
の平均値で割り、100倍した値である。また、表1の
結果を図1にグラフとして示した。
【0035】
【表1】
【0036】上記表1の結果から分かるように、β-AD
濃度を増加するにつれて吸収窩の数は減少している。従
って、β-ADは破骨細胞の骨吸収作用を抑制する作用を
有することが実証された。なお、吸収窩の数を50%減
少させるI50は約64μg/mlであった。
【0037】実施例2:β-ADによる破骨細胞の分化阻
害作用の評価 骨髄細胞は、6週齢のddyマウス(雄)の大腿骨より
採取し、α−MEM(10%FCS、10%M−CSF
culture sup)培地中にて培養した。マウス骨髄細胞を
2×104細胞/穴の濃度で48穴プレートにまき、翌
日100ng/mlのヒト可溶性ODF(破骨細胞分化
促進因子;Osteoclast differentiationfactor)を添加
し、また1、10、50、100、200及び500μ
g/mlのβ-ADの存在下または非存在下で、5%CO2
インキュベーター内で37℃で培養した。48時間後に
培地を交換し、同一の薬物を添加し、さらに48時間培
養した後、TRAP染色を行い、多核(3核以上)の成
熟破骨細胞数を測定した。得られた結果を図2に示す。
図2中の縦軸は、コントロール(β-ADの非存在下)の
場合の多核成熟破骨細胞数に対する百分率を示す。
【0038】図2の結果から分かるように、β-ADの濃
度が増大するにつれて、多核成熟破骨細胞数の数は減少
した。従って、β-ADは破骨細胞の分化阻害作用を有す
ることが実証された。
【0039】
【発明の効果】本発明の薬剤は、破骨細胞の骨吸収作用
を抑制し、また破骨細胞の分化を阻害することができ、
骨疾患の治療及び/又は予防のための医薬として有用で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、β-ADを用いた定量的吸収窩形成アッ
セイの結果を示すグラフである。
【図2】図2は、β-ADによる破骨細胞の分化阻害作用
の評価の結果を示すグラフである。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 β−アラニル−3,4−ジヒドロキシフ
    ェニルアラニン(β-AD)、その機能性誘導体、又は生
    理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含む骨
    疾患の治療及び/又は予防のための医薬。
  2. 【請求項2】 骨疾患が、破骨細胞の骨吸収作用又は細
    胞数の増大を伴う疾患である、請求項1に記載の医薬。
  3. 【請求項3】 骨疾患が骨粗鬆症である、請求項1又は
    2に記載の医薬。
  4. 【請求項4】 β−アラニル−3,4−ジヒドロキシフ
    ェニルアラニン(β-AD)、その機能性誘導体、又は生
    理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含む、
    破骨細胞の骨吸収作用の抑制剤。
  5. 【請求項5】 β−アラニル−3,4−ジヒドロキシフ
    ェニルアラニン(β-AD)、その機能性誘導体、又は生
    理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含む、
    破骨細胞の分化阻害剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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