JP2001272404A - 蛍光相関分光法による抗原抗体反応 - Google Patents

蛍光相関分光法による抗原抗体反応

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JP2001272404A
JP2001272404A JP2000087504A JP2000087504A JP2001272404A JP 2001272404 A JP2001272404 A JP 2001272404A JP 2000087504 A JP2000087504 A JP 2000087504A JP 2000087504 A JP2000087504 A JP 2000087504A JP 2001272404 A JP2001272404 A JP 2001272404A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 検査時間を短くし、且つ検査工程を簡便化
し、また検体量および試薬量を低減化する。 【解決手段】 抗原を検出するための方法であって、
(1)被検試料と、該被検試料に含まれる抗原に特異的
であり且つ蛍光物質の付された抗体とを同一容器内に存
在させることと、(2)複数の経過時点での蛍光強度を
測定することと、(3)前記測定により得られた蛍光強
度を自己相関関数を利用して変換することにより、蛍光
標識抗体の結合状態を決定することと、および(4)該
蛍光標識抗体の結合状態から抗原の有無を判定すること
とを具備する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗原および抗体の
検出方法に関する。詳しくは、検出系における抗体等に
おける分子運動のゆらぎの経時的変化を測定することに
よって、抗原抗体反応を検出し、それにより反応系に存
在する抗原または抗体を判定する方法に関する。特に、
本発明は、赤血球血型等、輸血時に輸血用血液や非輸血
者において判別が必要な項目を検査するための輸血方法
に有用である。
【0002】
【従来の技術】現在、臨床で使用される輸血検査方法
は、その大部分が凝集像を検出することを原理としてい
る。例えば、オリンパス社製のPK7200は、赤血球
血型や感染症検査等に広く用いられている全自動の輸血
検査装置であり、その特徴は、検査に用いるマイクロプ
レートに具備される反応ウェルの底面にある。即ち、該
反応ウェル底面は、数μm幅で溝を設けた擂り鉢状を呈
する。被検血球と抗血清試薬、または被検血清とコント
ロール血球とを混合して反応した場合、該ウェル内で一
定時間後に特異的反応が生じたウェルでは、血球と血清
が抗原抗体反応により相互に結合して凝集塊を形成し、
その凝集塊がウェル底面の溝に保持されて、ウェル底面
一面に広がった均一像として光学的に検出される。一
方、特異的な抗原抗体反応が起きなかった場合は、凝集
塊は形成されず、血球は溝を超えて沈降しウェル最低部
に丸く濃い沈降像を示す。PK7200は、これらの凝
集像(陽性)と非凝集像(陰性)をCCDカメラにより
光学的に検出し、ABO型血液型判定等を行う。このよ
うな検出装置は、明確で安定した反応像を得られること
により、高感度に検出できることで知られるが、凝集パ
ターン形成には20分から80分の反応時間が必要であ
り、また、反応液には50μLを必要とし、それにより
使用される試薬コストは低いものとは言えない。このよ
うな状況にあって、迅速性やコストの低減化が求められ
ている。
【0003】一方、オリンパス社製のマイクロタイピン
グシステムABDカード(Micro Typing
Sstem:以下、MTSと称す)は、ゲルカラム遠心
凝集法による血液型判定法であり、オリンパスより抗体
試薬、および遠心機、恒温機、分注機、読取装置等が市
販されている。その原理は、凝集反応を指標とするもの
であり、カードタイプの特殊なマイクロチューブの中に
充填したゲルカラム中に、赤血球或いは赤血球と血清
(または血漿)の混合物を注入し、その凝集反応の有無
をチューブを遠心することにより判定の高速化および反
応結果の可視化を行う。MTSを使用した場合、反応が
陰性であれば赤血球は凝集せずにマイクロチューブの底
に集まり、陽性の場合は凝集してゲルの上部から中間部
に補足される。つまり、ゲル中の赤血球の凝集位置で判
定を行い弱陽性判定を含む半定量性を有している。この
方法は、試験管やマイクロプレートを用いた輸血検査シ
ステムに比較すれば判定時間が短く、結果が明瞭に判定
でき、血液検体は微量で済む。また、操作技術が簡単で
あり、反応像が長時間安定である等の特徴があるが、近
年要求される程の迅速性を満たすには不十分である。ま
た、MTSは、インキュベーション時間を必要とし、凝
集パターンを介して間接的に検出する方法であるため、
必要となる試薬コストや周辺機器の多さから、マイクロ
プレート方式を凌駕するものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、検査時間を短くし、且つ検査工程を簡便化し、また
検体量および試薬量を低減化することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明者等は、鋭意研究の
結果、上記の課題を解決し目的を達成する手段を開発し
た。即ち、抗原を検出するための方法であって、(1)
被検試料と、該被検試料に含まれる抗原に特異的であ
り且つ蛍光物質の付された抗体とを同一容器内に存在さ
せることと、(2)複数の経過時点での蛍光強度を測定
することと、(3)自己相関関数を利用して得られた蛍
光強度を変換することにより、蛍光標識抗体の存在状態
を決定することと、および(4)該蛍光標識抗体の存在
状態から抗原の有無を判定することとを具備する方法で
ある。
【0006】
【発明の実施の形態】1.測定原理 本発明は、試料中の抗原と抗体との反応を、標識化抗体
の運動状態を蛍光相関分光法を用いて直接的に観察する
ことにより、標識化抗体の存在状態を解析し、それによ
って試料中で抗原抗体反応が生じているか否かを判定す
る方法である。
【0007】従って、本方法は、例えば、血球血型の判
定、特に、赤血球血型オモテ試験およびウラ試験、不規
則抗体の検出、抗血球特異抗原および抗体の検出、ウイ
ルスおよび細菌等の抗原および抗体の検出等の目的に使
用することが可能である。
【0008】具体的には、本方法は、試料中の検出対象
となる抗原または抗体を検出するために、蛍光物質を付
した前記抗原または抗体に特異的な抗体または抗原を使
用し、前記蛍光物質の蛍光強度のゆらぎを経時的に測定
し、得られたデータを蛍光自己相関関数で変換すること
により、蛍光物質を具備する分子の分子数および大きさ
を検出することが可能である。
【0009】本発明の方法では、測定開始から終了する
までの間、試料に存在する物質を何れもB−F分離等の
分離操作を行うことなく標的分子の運動状態を測定する
ことが可能である。本方法における標識分子の運動状態
の測定は、試料および任意の試薬を反応容器に添加した
時点から、経時的に該容器中で反応が進行する過程にお
いて継続して追跡することにより行われる。従って、抗
原抗体反応による標識分子の運動状態の変化を経時的に
測定することが可能である。また、この測定は、該反応
系において進行する抗原抗体反応に応じた自然状態のま
まで高精度に測定することが可能である。
【0010】例えば、本発明を血型試験に使用した場
合、夫々の血型に特異的に起こる検体の抗原または抗体
と標識試薬の反応を1血球レベルで捕らえ、複数の経過
時点で標識物質を測定し、その時間的な位置変化を検出
することが可能である。この位置変化は分子の大きさに
依存して生じるため、その変化を定量的に検出すること
により、標識試薬が検体に含まれる標的に結合した場合
の特異的反応の進行を動的に計測することが可能であ
る。
【0011】従って、従来の輸血検査で実施されていた
凝集反応または洗浄反応、遠心反応凝集パターン形成等
の特異反応そのもの以外の工程は不要であり、検体と試
薬の混合直後にリアルタイムに測定開始できる。このた
め、従来法に比較して検査時間を短縮し検査工程を簡便
化すること可能であり、非特異反応も低減できる。
【0012】蛍光強度のゆらぎを観察する手段は、以下
に説明する蛍光相関分光法を使用することが可能であ
る。
【0013】2.蛍光相関分光法 蛍光相関分光法(Fluorescence Corr
elation Spectroscopy,以下FC
Sと称す)の原理等を以下に示す。また、金城政孝によ
り特許出願中の「核酸配列の増幅反応を用いた標的核酸
の検出方法においても、FCSの測定原理および光学系
の構成その他が記載されているので参照されたい。
【0014】FCSは、蛍光標識分子の運動状態を測定
し、得られたデータを自己相関関数を用いて変換し、個
々の標的分子の微小運動を正確に測定する技術である。
FCSを用いた生物学的材料に関する測定データの演算
手法は、これまでに、標識された核酸プローブと標的核
酸分子とのハイブリダイゼーション反応において利用さ
れた方法等が開示されている(Kinjo,M.,Ri
gler,R.,Nucleic Acids Res
earch,23,1795−1799,1995)。
【0015】まず、測定装置の構成、顕微鏡視野下の極
微小領域における平均数個の蛍光分子のブラウン運動に
由来する蛍光の「ゆらぎ」を通して、均一系の溶液に含
まれる蛍光分子の濃度や分子間作用を物理的な分離過程
を経ずに、しかもほぼ実時間でモニタできることであ
る。このようにFCSは溶液中の自由な分子運動を検出
しているため、幅広い研究対象に応用できると期待され
ている技術である。
【0016】3.FCS装置 基本的な測定系を図1に例示する。このFCS装置は、
共焦点光学系を用いた倒立型の蛍光顕微鏡1と試料から
の蛍光を測定するためのフォトマルチプライヤ2と測定
データを受信して自己相関関数による演算を行って数値
化またはグラフ化を行うデータ処理装置3と、演算結果
を画面上に表示する表示装置4とを備えている。
【0017】試料含有液11は、図1に示す通り、試料
台12に載せたスライドガラス13上に点着させること
で、簡単にセットできる。この装置では、特に、微量の
試料含有液11を用いるため、水分蒸発を防止するため
の蓋14をスライドガラス13上にかぶせてある。この
蓋14は、好ましくは、光透過性がなるべく低いものを
用いることで、気密性と遮光性を同時に得られる。ただ
し、蓋の内面は、励起光線の反射を防止するように、で
きるだけ光反射性の低いものを使用するのが好ましい。
試料含有液11が位置するスライドガラス13部分の真
下には、試料含有液11中で焦点を結ぶように設定した
対物レンズ15が配置してある。
【0018】なお、蛍光顕微鏡1は、落射型でもよい。
落射型においては、対物レンズ15のレンズ下面に直接
的に試料含有液11を点着してもよい。また、蛍光顕微
鏡1の光源であるレーザー発生装置16は、図1ではア
ルゴン(Ar)イオンレーザーを使用しているが、蛍光
の種類に応じてクリプトンアルゴン(Kr−Ar)イオ
ンレーザー、ヘリウムネオン(He−Ne)レーザー、
ヘリウムカドミウム(He−Cd)レーザー等に種々変
更してかまわない。また、蛍光顕微鏡1におけるスライ
ドガラス13の搬入や搬出、スライドガラス13等への
試料含有液の点着、蓋14の開閉等の各種動作は、必要
に応じて適宜自動化してもよい。
【0019】図2は、図1の蛍光顕微鏡1の測定部分を
示す拡大図である。図2において、スライドガラス13
と所定の開口数(図ではFA=1.2)の対物レンズ1
5との位置関係により、微小視野領域20が形成され
る。この微小視野領域20は、図3に示すように、実際
には、ボリュームを持ったレーザ光線の焦点(図では中
間のくびれた部分)から上下に伸びた略円柱状の視野を
有している。この視野領域20は、焦点を基準位置とし
て、光軸上の長さZと平均半径Wにより既定される。こ
のような、微小領域20における蛍光測定は、蛍光分子
の微小運動を追跡し得る最小限の領域にまで小さくする
こにより、試料含有液11中の焦点付近以外の蛍光分子
に由来するノイズを有効に除去し、1個ずつ蛍光分子を
正確に測定するのに寄与している。
【0020】以上、FCS装置の例を記載したが、本方
法は、これに限定されるものではない。この発明の実施
の形態の各項制は、各種の変形、変更が可能である。以
下、好ましい態様について更に説明する。
【0021】微小分子の運動状態の測定手段は、焦点付
近の回折限定領域に齎される微小視野内での測定を実施
できる光学系を有する手段が好ましい。または、測定手
段は共焦点光学系により形成される微小視野内での測定
を実施する顕微鏡を有する手段が好ましい。
【0022】測定工程の微小視野が、共焦点光学系によ
り形成されることにより、被写界深度の深い測定データ
が得られるので、個々の任意の標識分子が視野内でに常
に合焦して性格内地および出力データを測定手段に供給
することが出来る。微小視野が、焦点付近の回折限定領
域であることにより、ここの標識分子高いS/N比で測
定できる。
【0023】回折限定領域は、平均直径30±20μm
のアパーチャーにより形成されるのが好ましい。また、
回折限定領域は、平均直径20±10μmのアパーチャ
ーにより形成されるのが好ましい。また、微小視野は平
均半径200±50nmおよび光軸上の平均長さ200
0±500nmの略円柱状領域であるのが好ましい。
【0024】微量領域が平均半径200±50nmおよ
び光軸上の平均長さ2000±500nmの略円柱状領
域であることにより、測定視野内に照準された標識分子
に関する自由な微小運動を効率よく取得することが出来
る回折限定が平均直径15±5μmのピンホールにより
形成されることにより、少数の選ばれた標識分子からの
測定データを効率よく得ることが出来る。
【0025】微小の測定視野内を出入りする標識分子の
運動速度を、所定の空間内において1以上のここの標識
分子から測定される出力強度の増減または消出を指標と
して測定している。従って、基質分子を標識する標識分
子の種類は複数の測定時点において、長時間に亘り略一
定の出力を維持するような標識材料であるのが好まし
い。標識に用いる蛍光色素としては、DAPI、FIT
C、ローダミン、Cy3、CY3.5、Cy5、Cy
5.5、Cy7等の種々の公知物質が含まれる。
【0026】また、各項目の抗体試薬は蛍光物質の種類
で標識して判別することも可能である。更に、抗原抗体
反応に影響を与えない蛋白質で修飾することにより分子
量で変化を付ける方法も実施することも可能である。こ
の場合、どの分子量の抗体試薬の移動速度に変化が生じ
たかが検出の指標であり、用いる蛍光物質は1種類で多
項目の判定が可能となる。
【0027】測定工程が、蛍光分子の液中での動き易さ
を測定する場合には、フォトマルチプライヤやフォトダ
イオード等の蛍光測定手段により蛍光データを受光する
ことができる。蛍光測定手段は、単一フォトンを計測し
得るような測定モードを備えている方が蛍光分子関する
個別の測定を行うのに有利である。
【0028】本方法の測定工程は、標識分子の液対中の
ゆらぎ運動を測定するものであるため、個々の標的分子
の微小運動を正確に測定することができる。ゆらぎ運動
の測定を行うにあたっては、自己相関関数(Autoc
orrelation function)を用いて演
算する。特に、本方法は標識分子として蛍光を用いてい
るので、自己相関蛍光分光法(Fluoresende
Correlation Spectroscop
y、略してFCS)を採用するのが好ましい。
【0029】測定手法は、抗原抗体反応に伴う標識分子
の大きさ変化に関する測定を行うものであれば適宜選択
してよいが、蛍光顕微鏡等が有効に利用できる。測定工
程が、3次元の微小視野内において実行されることによ
り、標的分子の試料含有液中における自由な微小運動を
抗原抗体反応に応じて自然状態のままで高精度に測定で
きる。これに対して二次限的な視野内で測定すると、ブ
ラウン運動のように、標識分子の三次限的に自由な移動
をもれなく捕らえることができなので、測定精度が低
い。極微小の平均半径からなるアパーチャー(ピンホー
ル、光ファイバ端面等)から出射するように光学設計す
ることによって得ることがもできるが、レーザー光線に
よる収束光が好ましい。
【0030】励起光であるレーザー光は、試料溶液のほ
んの1点に集中され、且つ共焦点光学系の特性からその
1点からの蛍光発光を検出系で捕らえることになる。実
際の容器中の測定領域は理想的な点ではなく、図3に示
すような円柱状の領域となる。その大きさは例えば、直
径約500nm、軸長約2000nm、容積としてフェ
ムトリットルである。FCSの測定領域は溶液であり、
領域中に存在する蛍光分子はブラウン運動を行ってい
る。従って、一定の測定領域のおける分子の数は常に一
定ではなく、ある値を中心に変動して「数ゆらぎ」が生
じている。更にこの数ゆらぎに起因して、測定される蛍
光強度に「強度ゆらぎ」が発生する。この蛍光強度のゆ
らぎを解析することで拡散速度に関する情報と分子の数
に関する情報を得ることが出来る。
【0031】また、評価手段は、所定時間内に得られる
複数の測定データを記憶する手段と、記憶した複数の測
定データを自己相関関数で演算する演算手段とを有する
のが好ましい。更に、この評価手段は、所定の測定領域
内で得られる複数の標識分子に関する測定データを記憶
する手段と、記憶した測定データをここの標識分子倍に
自己相関関数で演算する演算手段とを有するのが好まし
い。
【0032】また、データ出力手段は、自己相関関数で
演算された結果に基づいて、複数の追跡データに関する
時間的な位置変化を表現する統計学的データに変換する
変換手段を含むのが好ましい。
【0033】評価手段は、所定時間内に得られる複数の
測定データを記憶する手段と、記憶した複数の測定デー
タを自己相関関数で演算する演算手段とを有する。更
に、この評価手段は所定の測定領域内で得られる複数の
標識分子に関する測定データを記憶する手段と、記憶し
た測定データを個々の標識分子毎に自己相関関数で演算
する演算手段とを有する。
【0034】データ出力手段は、自己相関関数で演算さ
れた結果に基づいて、複数の追跡データに関する時間的
な位置変化を表現する統計学的データに変換する変換手
段を含むのが好ましい。
【0035】本方法に使用することが可能な反応容器
は、上述で示したスライドグラスに点着するタイプ(図
4)、マイクロウェルを多数設けたマイクロプレート
(図5および6)または適当な数のウェルを具備するプ
レート(図7、8および9)を使用することが可能であ
る。その場合、必要な反応容量は微量で十分であるた
め、384ウェル等の超マイクロウェルプレートタイプ
も適用可能で輸血検査を極めて高速のハイスループット
化することが出来る。
【0036】4.自己相関関数 上述の装置により測定され、得られたデータの好ましい
解析方法を以下に説明する。蛍光信号を約1分間測定す
る。得られた蛍光信号を逐次記憶部に記憶させると共
に、蛍光自己相関関数G(t)に適用させることにより
解析されるようにプログラミングして評価する。好まし
いの蛍光自己相関関数G(t)は、測定領域内での蛍光
分子の平均数N、蛍光標識物質を含む非反応分子として
の遊離の標識化基質分子の並進時間τmonoと、抗原
抗体反応後に標的分子に結合した標識化基質分子の並進
時間τpolyとから、Rigler等の方法(Flu
orescence Spectroscopy−Ne
w Methods andapplication
s, Springer Berlin, 13−2
4,In J. R. Ladowicz(Ed.),
1992を参照されたい)に基づき、以下の式1によっ
て計算した。
【0037】
【化1】
【0038】数式1において、yは反応成分の割合τ
mono=Wo/4Dmono、τ poly=Wo
/4Dpoly、S=Wo/Zo(ここで、Woは焦点
付近の微小視野に形成される略円柱状の測定領域(図3
を参照されたい))の体積要素の径であり、2Zoはそ
の長さを意味する)、DmonoおよびDpolyは夫
々非結合成分および結合成分の並進拡散係数である。
【0039】FCSにより生物化学によける2つの重要
なパラメータを得ることが可能である。検出領域(10
−15L)における分子の平均数と分子の並進拡散係数
である。本発明では、FCSを1分子計測の道具として
用いて抗原抗体反応に関する解析を行った。
【0040】以下に示す本発明の1つの好ましい例は、
特異的反応前と反応後におけるこうした情報の時間的な
変化を検出、変換して図10から13に示したように拡
散速度から分子の大きさを検出することを利用した血型
の同定方法である。また、本発明の他の好ましい例は、
後述する血型に関する方法のみならず、同様の構成によ
ってウィルスや細菌等の感染症またはその他抗原抗体反
応を介した判定検査に応用することも可能である等の幅
広い応用が可能である。
【0041】[実施例] FCS測定 以下の試験は、図1に示したFCS装置を用いてFCS
測定を実行した。即ち、その試料液滴を試料用スライド
に添加した状態で市販のFCS装置(ConfoCo
r,CarlZissJe naGmbH)の試料台に
載せ、倍率40倍の対物レンズ(C−Apochrom
at,NA=1.2)により、レンズ内を通ってきたC
W Ar+レーザービームで励起し、得られる放出光は
アバランシュ・ダイオード(APD)であるSPCM−
200−PQ(EG&G社)でシングル・フォトン・カ
ウンティング・モードによりその蛍光信号として測定し
た。測定した蛍光信号は、デジタル・コリレーターであ
るALV5000/E(ALV GmbH)で解析する
ことにより評価した。焦点領域の試料体積は、ローダミ
ン6Gの拡散係数値から決定した。また、体積要素は、
フルオレッセインとFlu−dUTPの溶液の濃度を用
いて定めた。
【0042】例1:赤血球血液型オモテ試験 図8のような複数の凹みを有したスライドガラス状の測
定用容器のコントロールウェルには、FITC等の蛍光
で標識した抗体試薬を分注し、直ちに測定する。測定容
器の体積は、例えば10μl前後であればFCSの測定
領域として十分である。また、コントロールウェルと測
定用ウェルを各々別にする必要性は必ずしもなく、試薬
混合の前後を夫々コントロールと被検試料群として測定
する方式でもよい。
【0043】また、使用する試料中の赤血球濃度は、通
常の血液型オモテ試験に使用されるものに比較して、低
い濃度、即ち、10〜10cells/μLでよく、好ま
しくは2〜5×10cells/μLである。従って、本発
明の方法を血型試験に使用すれば、従来法と比較してよ
り少ない採血量で試験を行うことが可能である。即ち、
全血の希釈率は0.1%前後でよい。
【0044】反応系としては、図9のように、FITC
で標識した抗A抗体および抗B抗体を夫々別々のウェル
で試験する反応系以外に、図7のような1つのウェル内
でに、抗A抗体をFITCで、抗B抗体をCy3で標識
して同じウェルにて混合する系も可能である。試験の判
定は、標識した蛍光物質の移動度に変化があったもの
を、抗体と血球とが反応した反応陽性(+)とし、移動
度に変化のないものを、抗体と血球とが反応しなかった
反応陰性(−)とする。
【0045】
【表1】
【0046】本反応方法によれば、抗原と抗体とを混合
するワンステップのみで測定することが可能である。従
って、凝集パターン形成に必要なインキュベーション時
間や遠心操作は不要となる。また、測定領域が極微小で
あるために、反応に要する検体血球や抗体試薬も微量で
よく、従って、反応コストが低減できる。また、固相面
や凝集パターンを介さずに、純粋に、抗原抗体1分子間
の反応の有無を蛍光分子の移動度の変化で直接捕らえる
ため、非特異性の反応が生じる機会が少なく、測定数値
として定量的判定が可能である。このことは、現在の輸
血検査で問題となっている亜型の判定上からも重要な特
徴である。
【0047】更に、実施例図7で示したように1検体の
判定につき、同一容器で複数項目測定でき、測定時間の
短縮や検体および試薬量等の削減も可能となる。
【0048】また、反応系の試料を超音波等の適切な手
段により攪拌してもよい。
【0049】例2:赤血球血液型ウラ試験 A型およびB型の標準血球と被検血清とを混合した後
で、これを、蛍光標識した標準抗体を予め分注しておい
たウェルに添加し、混合して直ちに測定する。この場合
の判定原理は、被検血清中の抗血液型抗体と標準抗体と
の競合反応によるものである。
【0050】オモテ試験と同様に異なる蛍光物質を標識
に用いることにより、A型およびB型の両方の標準血
球、並びに抗Aおよび抗B両方の蛍光標識標準抗体を1
検体について、同一ウェル内にて反応することが可能で
ある。
【0051】試験の判定は、標識した蛍光物質の移動度
に変化があったものを、抗体と血球とが反応した反応陽
性(+)とし、移動度に変化のないものを、抗体と血球
とが反応しなかった反応陰性(−)とする。
【0052】
【表2】
【0053】例3:不規則性抗体のスクリーニング試験 赤血球に対する不規則性抗体のスクリーニング試験を行
うためには、反応ウェルに二次抗体である抗ヒトグロブ
リン血清を蛍光標識したものを予め分注しておく。次
に、標準血球、即ち、臨床的に重要な抗体を検出するの
に十分な抗原構成とした、通常2〜3種類のO型正常ヒ
ト血球と被検血清とを混合し、これを前記反応ウェルに
分注して、直ちに測定を行う。
【0054】被検血清中に遊離している不規則性抗体以
外のグロブリンに対しても蛍光標識血清は結合し、それ
により蛍光物質の移動度に変化が現れる。しかしなが
ら、標準血球に結合した不規則抗体が存在する場合に
は、蛍光物質の移動速度の変化は前者の場合よりも顕著
に大きく変化するので、不規則性抗体の存在の判定は容
易である。
【0055】例4:応用 本発明の方法は、スクリーニング後の抗体同定にも応用
することが可能である。この場合、臨床的に重要な抗原
構成をパネルとして配分した抗体同定用のパネル血球を
別ウェルで反応を用い、その反応パターンを解析するこ
とにより抗体を同定する。
【0056】また、標準血球を用いた反応を用いる場
合、所望に応じて標準血球を反応容器に固相化するこ
と、あるいは、仕切りを設けて微小視野内に血球が侵入
しないような反応容器を使用することも好ましい。これ
により、バックグラウンドを最小とすることが可能であ
る。
【0057】実施例1〜3に示したように、本発明は、
解決すべき課題の項で述べた現状の輸血検査の各問題点
の全てを解決するものである。
【0058】
【発明の効果】本発明の適用により、従来、このような
試験方法の簡易化、自動化および反応時間の短縮化にお
いて問題となっていた遠心洗浄等によるB−F分離の操
作が一切不要である。
【0059】また、本発明の方法は、抗原抗体反応1分
子の測定であるため標準血球は複数種の混合が可能であ
り、オモテ試験およびウラ試験と同様に、不規則性抗体
等のスクリーニングも1ウェル中で行うことが可能であ
る。
【0060】本発明では、発光する信号を検出する領域
が、実施例で示した通り数μの赤血球を個別に測定でき
る程度の微小領域であり、測定に必要となる検体体積及
び試薬体積が微量である。従って、血型のように、複数
の判別項目を有する検査を行っても検体も試薬も微量で
済み、また全ての血型について小型の容器に一括して収
めることも可能である。従って、検体量および試薬量を
低減するばかりでなく、検査時間を短縮し、検査を高速
で行うことが可能である。
【0061】また、従来法では、血型等の多型を検査す
る手法では、何れも多型の数に応じて異なる容器中で多
型毎に反応させ測定することが必要である。しかしなが
ら、本発明では、異なる特異性を有した試薬をそれぞれ
異なる蛍光物質で標識することにより、どの蛍光物質に
動的変化が生じたかを容易に検出することが可能であ
る。従って、同一容器内で異なる血型に特異性を有する
複数の試薬を混合して、複数の検査が同時に判定でき、
且つ検体の必要量および反応容器数を低減することが可
能でであり検査の簡便化が可能である。
【0062】また、検体と試薬の混合のみの検査工程で
あり、全自動のシステム化も容易に実現できる。
【0063】従来法では、異なる特異性を有した試薬を
夫々の特異性、多型に応じて異なる容器中で反応させる
場合には、96ウェルプレートタイプ、またそれに相当
する形状大きさの容器を用いる必要がある。これらの従
来の手法では、検体となる血液サンプルや試薬を多量に
要するばかりでなく、同時に測定できる項目数が限られ
てしまう。しかしながら、本方法を使用すれば、ウェル
を使用するばかりではなく、スライドグラスに試料を点
着する方法も用いることが可能である。従って、多数の
検体数を1枚のスライドグラスで測定することが可能で
ある。また、多項目を1枚のスライドグラスで測定する
ことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法に使用するのに好ましいFCS
装置の例を示す図。
【図2】 図1に示すFCS装置に具備される蛍光顕微
鏡の測定部分の拡大図。
【図3】 微小視野領域を示す図。
【図4】 試料を点着したスライドグラスを示す断面
図。
【図5】 マイクロプレートを示す図。
【図6】 マイクロプレートを示す断面図。
【図7】 マイクロプレートを示す図。
【図8】 マイクロプレートを示す図。
【図9】 マイクロプレートを示す図。
【図10】 微小視野領域における比較的小さい分子の
動きを示す図。
【図11】 比較的小さい分子の経時的なゆらぎを示す
グラフ。
【図12】 微小視野領域における比較的大きい分子の
動きを示す図。
【図13】 比較的大きい分子の経時的なゆらぎを示す
グラフ。
【符号の説明】
1.蛍光顕微鏡 2.フォトマルチプライヤ 3.
データ処理装置 4.表示装置 11.試料含有液 12.試料台
13.スライドガラス 14.蓋 15.対物レンズ 16.レーザー発
生装置
フロントページの続き (72)発明者 高宮 裕児 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 Fターム(参考) 2G043 AA03 AA04 BA16 CA03 DA02 EA01 FA02 GA07 GB21 HA01 HA02 HA09 JA03 KA09 LA01 MA04 NA01 NA06

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 抗原を検出するための方法であって、
    (1)被検試料と、該被検試料に含まれる抗原に特異的
    であり且つ蛍光物質の付された抗体とを同一容器内に存
    在させることと、(2)複数の経過時点での蛍光強度を
    測定することと、(3)前記測定により得られた蛍光強
    度を自己相関関数を利用して変換することにより、蛍光
    標識抗体の結合状態を決定することと、および(4)該
    蛍光標識抗体の結合状態から抗原の有無を判定すること
    とを具備する方法。
  2. 【請求項2】 血球の表層抗原を検出する方法であっ
    て、(1)被検試料と、該被検試料に含まれる血球の表
    層抗原に特異的であり且つ蛍光物質の付された抗体とを
    同一容器内に存在させることと、(2)複数の経過時点
    での蛍光強度を測定することと、および(3)前記測定
    により得られた蛍光強度を自己相関関数を利用して変換
    することにより、蛍光標識抗体の結合状態を決定するこ
    とと、および(4)該蛍光標識抗体の存在状態から抗原
    の有無を判定することとを具備する方法。
  3. 【請求項3】 抗体を検出する方法であって、(1)被
    検試料と、該被検試料に含まれる抗体に特異的な抗原
    と、前記抗体に等しく且つ蛍光物質を付した抗体とを同
    一容器内に存在させることと、(2)複数の経過時点で
    の蛍光強度を測定することと、(3)前記測定により得
    られた蛍光強度を自己相関関数を利用して変換すること
    により、蛍光標識抗体の結合状態を決定することと、お
    よび(4)前記状態から抗体の有無を判定することとを
    具備する方法。
  4. 【請求項4】 請求項1から3の何れか1項に記載の検
    出方法であって、前記反応容器中の検体及び試薬の反応
    状態を、それらが担持している蛍光分子のブラウン運動
    を利用して、分子の数と分子の大きさ、または形等の物
    理量を測定する蛍光相関分光法によって測定することを
    特徴とする輸血検査方法。
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