JP2001269763A - ダイカストマシンの射出制御装置および射出制御方法 - Google Patents

ダイカストマシンの射出制御装置および射出制御方法

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JP2001269763A
JP2001269763A JP2000090761A JP2000090761A JP2001269763A JP 2001269763 A JP2001269763 A JP 2001269763A JP 2000090761 A JP2000090761 A JP 2000090761A JP 2000090761 A JP2000090761 A JP 2000090761A JP 2001269763 A JP2001269763 A JP 2001269763A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ダイカストマシンにおいてプランジャの射出速
度の切り換えのタイミングを最適化でき、安定した品質
の鋳造品を鋳造可能なダイカストマシンの射出制御装置
および射出制御方法を提供する。 【解決手段】プランジャ57を低速から高速に切り換え
る切換位置SEPを設定する射出条件設定部22と、プ
ランジャ57の実際の切換位置EPを検出する切換位置
検出部21と、プランジャ57の充填開始位置FPを検
出する充填開始位置検出部20と、設定された切換位置
SEPを補正する切換位置補正部23と、補正された切
換位置MEPにしたがって、プランジャ57を低速駆動
した後、高速に切り換える制御指令をダイカストマシン
1に対して出力する射出制御部25とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイカストマシン
射出制御装置および射出制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ダイカスト製品の品質は、金属溶湯を金
型内に充填する際の射出速度や射出圧力に影響されるこ
とが知られているが、ダイカストマシンにおける金型に
金属溶湯を充填する射出工程では、たとえば、以下のよ
うな射出制御を行なっている。まず、プランジャスリー
ブに金属溶湯を供給し、金属溶湯の空気の巻き込み等を
避けるためにプランジャを低速の射出速度で駆動して金
型のキャビティへの金属溶湯の充填を開始する。次い
で、金属溶湯の先端が金型の湯口に達する位置までプラ
ンジャが移動したら、プランジャを高速の射出速度に切
り換えて駆動し、金属溶湯を金型のキャビティに急速に
充填する。次いで、金型のキャビティに金属溶湯が充填
されたらプランジャの圧力を上昇させて、金属溶湯を加
圧する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のプラ
ンジャの低速の射出速度から高速の射出速度への切り換
えは、上記したように、プランジャスリーブに供給した
金属溶湯の先端が金型の湯口に達する時点で行うのが好
ましい。すなわち、プランジャスリーブおよび金型のキ
ャビティに金属溶湯を導く流路に金属溶湯が充填された
時点で、プランジャを高速の射出速度に切り換えること
が好ましい。従来、プランジャを低速の射出速度から高
速の射出速度へ切り換える切り換え位置は、たとえば、
鋳造品の重量を当該鋳造品を形成する材料の比重で除算
して鋳造品の体積を算出し、この体積に基づいてプラン
ジャの移動すべきストロークを求め、このストロークか
ら予め決定していた。しかしながら、金属溶湯の比重
は、温度によって異なる。また、低速から高速に変わる
までにプランジャを駆動する油圧シリンダおよび制御バ
ルブにタイムラグが存在する。さらに、プランジャスリ
ーブへの金属溶湯の供給量は一定とは限らず、ばらつく
ことがあり、また、供給量を積極的に増減することもあ
る。このため、切り換え位置にプランジャが到達して
も、プランジャスリーブおよび金型のキャビティへの流
路に金属溶湯が不足していたり、あるいは、湯口を通じ
てキャビティ内へ金属溶湯が既に導入されていたりする
場合がある。
【0004】たとえば、切り換え位置にプランジャが到
達した時点で、プランジャスリーブおよび金型のキャビ
ティへの流路に金属溶湯が不足している状態では、プラ
ンジャは高速に切り換わると、スリーブ内のガスがプラ
ンジャの高速動作により撹拌され金属溶湯に巻き込まれ
る。このとき、金属溶湯が湯口に到達するまでは、プラ
ンジャには殆ど抵抗が作用しないため、プランジャは大
きく加速されたのち、湯口に金属溶湯の先端が到達する
と、プランジャは湯口の抵抗の影響で減速される。この
結果、金属溶湯の先端のみがキャビティ内に入り、その
後の溶湯が続いて導入されない状態となり、金属溶湯の
先端が切れた状態となりやすい。金属溶湯の先端のみが
キャビティ内に導入されると、鋳造後の製品の表面にい
わゆる湯ジワが発生しやすいという不利益が存在する。
一方、低速で移動するプランジャが切り換え位置に到達
した時点で、すでに金属溶湯の先端がキャビティ内に導
入されていると、金属溶湯の先端の凝固が進み、鋳造さ
れた鋳造品にいわゆる湯境が発生しやすいという不利益
が存在する。
【0005】本発明は、上述の問題に鑑みて成されたも
のであって、ダイカストマシンにおいて、プランジャの
射出速度の切り換えのタイミングを最適化でき、安定し
た品質の鋳造品を鋳造可能なダイカストマシンの射出制
御装置および射出制御方法を提供することを目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の観点に係
るダイカストマシンの射出制御装置は、プランジャスリ
ーブに供給された金属溶湯を金型のキャビティへ射出す
るプランジャと、当該プランジャを駆動する射出シリン
ダを備える駆動手段と、を具備するダイカストマシンの
射出制御装置であって、前記プランジャを第1の射出速
度で駆動し、当該第1の射出速度よりも高い第2の射出
速度に切り換える速度切換位置を設定する速度切換位置
設定手段と、前記プランジャの実際の速度切換位置を検
出する切換位置検出手段と、前記プランジャスリーブお
よび前記キャビティに通じる流路に金属溶湯が充填さ
れ、前記キャビティへの金属溶湯の充填開始状態となっ
たときの前記プランジャの充填開始位置を検出する充填
開始位置検出手段と、検出した前記プランジャの充填開
始位置および速度切換位置に基づいて、設定された前記
速度切換位置を補正する切換位置補正手段と、補正され
た前記速度切換位置にしたがって、前記プランジャを第
1の射出速度で駆動した後、前記第2の射出速度に切り
換える制御指令を前記駆動手段に対して出力する射出制
御手段とを有する。
【0007】前記切換位置補正手段は、実際の速度切換
位置と充填開始位置とが一致するように前記設定された
速度切換位置を補正する。
【0008】また、本発明の射出制御装置は、前記プラ
ンジャの前記金属溶湯に対する充填圧力を検出する圧力
検出手段と、前記プランジャの変位を検出する変位検出
手段と、前記プランジャの速度を検出する速度検出手段
と、を有し、前記充填開始位置検出手段は、前記プラン
ジャの変位、速度および充填圧力の変化に基づいて前記
プランジャの充填開始位置を決定する。
【0009】また、本発明の射出制御装置は、前記圧力
検出手段の検出した充填圧力を時系列データとして記憶
保持する圧力データ保持部と、前記変位検出手段の検出
した前記プランジャの変位を時系列データとして記憶保
持する変位データ保持部と、前記速度検出手段の検出し
た前記プランジャの速度を時系列データとして記憶保持
する速度データ保持部と、前記充填圧力の時系列データ
に基づいて、前記プランジャによる前記キャビティへの
金属溶湯の充填開始後の充填圧力の平均値を算出し、前
記充填圧力および変位の時系列データから、前記プラン
ジャの充填圧力が前記平均値に対して所定の割合に達す
る当該プランジャの位置を検出し、当該位置を前記充填
開始位置とする充填開始位置算出部とを有する。
【0010】前記充填開始位置算出部は、前記充填圧
力、変位および速度の時系列データから、前記キャビテ
ィへ金属溶湯が充填した時点の前記プランジャの位置を
検出し、当該充満時のプランジャの位置からプランジャ
の進行方向に遡った所定の距離の範囲での充填圧力の平
均値を算出する。
【0011】また、本発明の射出制御装置は、前記変位
検出手段によって検出された前記プランジャの変位から
当該プランジャの射出速度を算出する速度算出部と、前
記速度検出手段の検出した射出速度の時系列データを記
憶保持する速度データ保持部と、前記速度および変位の
時系列データから前記プランジャの実際の速度切換位置
を検出する切換位置検出部とを有する。
【0012】前記切換位置検出部は、前記変位および前
記速度の時系列データから、前記プランジャの第1の射
出速度を検出し、かつ、当該第1の射出速度に対して所
定の割合の速度に上昇する当該プランジャの位置を検出
し、当該プランジャの位置を実際の速度切換位置とす
る。
【0013】また、本発明の射出制御装置は、前記切換
位置補正手段によって補正された速度切換位置に応じ
て、前記第2の射出速度を最適化する高速速度最適化手
段をさらに有する。
【0014】好適には、前記高速速度最適化手段は、前
記補正された速度切換位置と補正前の速度切換位置との
差に応じて前記第2の射出速度を調整する。
【0015】さらに好適には、前記切換位置補正手段
は、複数回の射出動作によって得られる複数の前記プラ
ンジャの充填開始位置データおよび速度切換位置データ
の平均値に基づいて前記速度切換位置を補正する。
【0016】また、本発明の射出制御装置は、前記検出
された充填開始位置および実際の切換位置の情報を画面
上に表示する表示手段をさらに有する
【0017】本発明の第2の観点に係るダイカストマシ
ンの射出制御装置は、プランジャスリーブに供給された
金属溶湯を金型のキャビティへ射出するプランジャと、
当該プランジャを駆動する射出シリンダを備える駆動手
段と、を具備するダイカストマシンの射出制御装置であ
って、前記プランジャスリーブおよび前記キャビティに
通じる流路に金属溶湯が充填され、前記キャビティへの
金属溶湯の充填開始状態となったときの前記プランジャ
の充填開始位置を前記プランジャの充填圧力に基づいて
検出する充填開始位置検出手段と、前記充填開始位置検
出手段の検出した前記プランジャの充填開始位置に基づ
いて、当該プランジャの射出速度の射出切換位置を決定
する切換位置決定手段と、前記プランジャを第1の射出
速度で駆動し、前記決定された速度切換位置にしたがっ
て当該第1の射出速度よりも高い第2の射出速度に切り
換える制御指令を前記駆動手段に対して出力する射出制
御手段とを有する。
【0018】本発明の第1の観点に係るダイカストマシ
ンの射出制御方法は、プランジャスリーブに供給された
金属溶湯に対してプランジャを第1の射出速度で駆動し
たのち、当該第1の射出速度より高い第2の射出速度に
切り換えて金型のキャビティへ金属溶湯を射出するダイ
カストマシンの射出制御方法であって、金属溶湯が供給
された前記プランジャスリーブに対してプランジャを第
1の射出速度で駆動し、予め設定された設定切換位置で
前記プランジャを第2の射出速度に切り換えて駆動し、
キャビティへ金属溶湯を充填する充填ステップと、前記
充填ステップにおいて検出された前記プランジャの金属
溶湯に対する充填圧力および前記プランジャの変位およ
び速度の時系列データから、前記プランジャスリーブお
よび前記キャビティに通じる流路に金属溶湯が充填さ
れ、前記キャビティへの金属溶湯の充填開始状態となっ
たときの前記プランジャの充填開始位置を検出する充填
開始位置検出ステップと、前記充填ステップにおいて検
出された前記プランジャの変位および速度の時系列デー
タから、前記プランジャの射出速度の実際の切換位置を
検出する切換位置検出ステップと、前記検出された実際
の切換位置と充填開始位置に基づいて、前記プランジャ
の充填開始位置と切換位置とが一致するように前記設定
切換位置を補正する切換位置補正ステップとを有する。
【0019】前記切換位置変更ステップは、変更した切
換位置に応じて、前記第2の射出速度を最適化する最適
化ステップをさらに有する。
【0020】本発明の第2の観点に係るダイカストマシ
ンの射出制御方法は、プランジャスリーブに供給された
金属溶湯に対してプランジャを第1の射出速度で駆動し
たのち、当該第1の射出速度よりも高い第2の射出速度
に切り換えて金型のキャビティへ金属溶湯を射出するダ
イカストマシンの射出制御方法であって、プランジャス
リーブ内に所定量の金属溶湯を供給する供給ステップ
と、金属溶湯が供給された前記プランジャスリーブに対
してプランジャを第1の射出速度で駆動する低速駆動ス
テップと、駆動される前記プランジャの金属溶湯に対す
る充填圧力の変化から、前記プランジャスリーブおよび
キャビティに通じる流路に金属溶湯が充填され、前記キ
ャビティへの金属溶湯の充填開始状態となったことを前
記プランジャの充填圧力に基づいて検出する充填開始状
態検出ステップと、前記充填開始状態の検出に応じて前
記プランジャを第2の射出速度に切り換えて駆動する高
速駆動ステップとを有する。
【0021】本発明の第1の観点に係る射出制御装置お
よび射出制御方法では、予め設定された射出条件にした
がって、金型に金属溶湯を充填してダイカスト製品の鋳
造を行う。このとき、プランジャの変位、速度および金
属溶湯に対する充填圧力を計測し、これらの時系列デー
タを記憶保持する。次いで、上記の変位、速度および充
填圧力の時系列データの変化からキャビティへの金属溶
湯の充填開始状態となったときのプランジャの充填開始
位置を検出する。さらに、プランジャの変位および速度
からプランジャの実際の速度切換位置を検出する。次い
で、検出したプランジャの充填開始位置とプランジャの
実際の速度切換位置とが一致していることが、ダイカス
トマシンで鋳造される鋳造品の品質の観点からは望まし
いことから、プランジャの充填開始位置と速度切換位置
とが一致するように、設定された速度切換位置を補正す
る。補正された速度切換位置にしたがって、再度、射出
動作を行うことにより、プランジャの実際の速度切換位
置が最適化され、鋳造された鋳造品の品質が安定化す
る。
【0022】さらに、上記のように設定された速度切換
位置を補正すると、これに応じて、高速である第2の射
出速度でプランジャが駆動される距離も変化する。この
ため、本発明では、検出された充填開始位置および実際
の速度切換位置に応じて、第2の射出速度である高速射
出速度を最適化する。たとえば、検出された実際の速度
切換位置が充填開始位置の手前である場合には、この検
出された実際の速度切換位置に基づいて補正された速度
切換位置で速度切換を行うと、プランジャの高速射出速
度による駆動距離が以前より短くなる。このため、プラ
ンジャの高速射出速度による駆動距離が短くなった分高
速射出速度を高める。
【0023】また、本発明の第2の観点に係る射出制御
装置および射出制御方法では、金属溶湯が供給されたプ
ランジャスリーブに対して、まず、プランジャを低速の
第1の射出速度で駆動する。このとき、金属溶湯に対す
るプランジャの充填圧力を同時に計測する。プランジャ
スリーブおよび金型のキャビティに通じる流路に金属溶
湯が充填されると、金属溶湯の先端部はキャビティに通
じる湯口に到達する。湯口は流路に対して開口が絞られ
ているため、金属溶湯の先端部が湯口に到達すると、プ
ランジャに作用する抵抗が増加し、充填圧力が上昇す
る。この充填圧力の上昇の検出に応じて、プランジャを
高速射出速度である第2の射出速度に切り換えて駆動す
る。これにより、プランジャの実際の速度切換位置と充
填開始位置とが略一致し、鋳造品の品質が安定化され
る。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照して説明する。第1実施形態 図1は、本発明が適用されるダイカストマシンの一例を
示す構成図である。図1において、ダイカストマシン1
は、ベースBS上に設けられた固定ダイプレート54
と、この固定ダイプレート54に固定された固定金型5
2と、固定ダイプレート54に対向してベースBS上に
移動可能設けられた可動ダイプレート55と、この可動
ダイプレート55に固定金型52に対向するように設け
られた可動金型53と、固定金型52と可動金型53と
の間に形成されたキャビティCに流路Laを通じて連通
しているプランジャスリーブ56と、プランジャスリー
ブ56に移動自在に嵌合しているプランジャチップ57
aおよびこのプランジャチップ57aが先端に設けられ
たプランジャロッド57bからなるプランジャ57とを
備えている。上記の固定ダイプレート54の背後には、
図示しないトグル機構を備えた型締装置が設けられてお
り、この型締装置によって固定金型52と可動金型53
は所定の型締力で型締される。
【0025】また、ダイカストマシン1は、プランジャ
57を駆動する駆動手段としての射出シリンダ部70を
備えている。この射出シリンダ部70は、連結部材57
cによってプランジャロッド57bと連結されプランジ
ャ57を駆動する射出用ピストンロッド58のピストン
58aを内蔵する射出用シリンダ70aと、射出用ピス
トンロッド58の背部に設けられた昇圧用ピストン59
を内蔵する昇圧用シリンダ70bとを備える。射出シリ
ンダ部70には、アキュミュレータ71が接続されてお
り、アキュミュレータ71に蓄えられた油圧が射出用シ
リンダ70aまたは昇圧用70bに供給され、これによ
り、射出用ピストンロッド58および昇圧用ピストン5
9が駆動される。射出シリンダ部70は、アキュミュレ
ータ71からシリンダ70a,70bへ供給される圧油
の圧力および流量を制御する制御弁72、73および7
4を備えており、これらの制御弁72、73および74
によって、プランジャ57の駆動および昇圧が行われ
る。
【0026】射出シリンダ部70の射出用シリンダ70
aには、アキュミュレータ71から作動油が供給される
側の油圧を検出する圧力センサS2と、作動油を排出す
る側の油圧を検出する圧力センサS3とが設けられてい
る。これら、圧力センサS2,S3は、ダイカストマシ
ン1に対して設けられた制御装置10に接続されてお
り、圧力センサS2,S3の検出した各圧力P1および
P2は制御装置10に入力される。
【0027】また、ピストンロッド58に対し変位セン
サS1が設けられている。この変位センサS1は、たと
えば、ピストンロッド58の軸方向に沿って等間隔に形
成された溝に埋め込まれた図示しないメッキ部の変位
を、たとえば、光学的あるいは磁気的に読み取り、ピス
トンロッド58の移動量に応じたパルス信号を発生する
変位センサである。変位センサS1は、制御装置10に
接続されており、プランジャ57の移動量に応じたパル
ス信号が制御装置10に入力される。
【0028】制御装置10は、基本的には、ラドル90
によってプランジャスリーブ56の注湯口56aを通じ
て所定量の金属溶湯がプランジャスリーブ56内に供給
された状態で、まず、射出用ピストンロッド58を動作
させる。このとき、金属溶湯の空気の巻き込み等を避け
るためにプランジャ57を低い速度で駆動し、金属溶湯
の先端が流路Laを通って金型の湯口Lbに達する位置
までプランジャ57のプランジャチップ57aが移動し
たら、プランジャ57の射出速度を高速にし、金属溶湯
を金型のキャビティCに急速に充填する。さらに、金型
のキャビティCに金属溶湯が充填されたら、昇圧用ピス
トン59を動作させる。これにより、プランジャ57の
圧力を上昇させて、キャビティCに充填された金属溶湯
を加圧する。なお、この昇圧動作は、鋳造品にひけや巣
が発生するのを防ぐため等の理由で行う。
【0029】図2は、本発明の射出制御装置の一実施形
態に係る制御装置10の構成を示す構成図である。制御
装置10は、入力部11,12および13と、速度算出
部15と、変位データ保持部16と、速度データ保持部
17と、充填圧力算出部18と、圧力データ保持部19
と、充填開始位置算出部20と、切換位置検出部21
と、射出条件設定部22と、切換位置補正部23と、高
速速度最適化部24と、射出制御部25と、表示部26
と、表示装置27とを備えている。
【0030】ここで、射出条件設定部22は本発明の速
度切換位置設定手段、切換位置補正部23は本発明の切
換位置補正手段、高速速度最適化部24は本発明の高速
速度最適化手段、射出制御部25は本発明の射出制御手
段、表示部26および表示装置27は本発明の表示手段
をそれぞれ構成している。また、変位データ保持部1
6、速度データ保持部17および切換位置検出部21は
本発明の切換位置検出手段を構成している。さらに、圧
力センサS2,S3、充填圧力算出部18、圧力データ
保持部19、変位センサS1、変位データ保持部16、
速度データ保持部17および充填開始位置算出部20は
本発明の充填開始位置検出手段を構成している。
【0031】入力部11は、プランジャ57の変位量C
Mを検出する変位センサS1の検出信号が入力される。
変位センサS1の検出信号は、たとえば、パルス信号と
して入力されるため、入力部11はこのパルス信号をカ
ウントしてディジタル値に変換し、変位データ保持部1
6に逐次出力する。
【0032】入力部12は、射出用シリンダ70aの作
動油供給側の油圧P1を検出する圧力センサS2の検出
信号が入力される。圧力センサS2の検出信号は、たと
えば、アナログ信号として入力されるため、入力部12
は、このアナログ信号をディジタル信号に変換して充填
圧力算出部18に逐次出力する。入力部13は、射出用
シリンダ70aの作動油排出側の油圧P2を検出する圧
力センサS3の検出信号が入力される。この入力部13
は、入力部12と同様に、圧力センサS3の検出信号を
ディジタル信号に変換して充填圧力算出部18に逐次出
力する。
【0033】速度算出部15は、プランジャ57の変位
量を検出する変位センサS1の検出信号が入力され、こ
の検出信号からプランジャ57の射出速度CVを算出し
て、速度データ保持部17に逐次出力する。この速度算
出部15は、たとえば、パルス信号の周波数を電圧に変
換するF/V変換器と、この電圧をディジタル信号に変
換するA/D変換器とで構成することができる。
【0034】変位データ保持部16は、入力部12を通
じて入力されたプランジャ57の変位データを時系列デ
ータとして記憶保持する。この変位データ保持部16は
メモリから構成される。
【0035】速度データ保持部17は、速度算出部15
から入力されたプランジャ57の射出速度データを時系
列データとして記憶保持する。この速度データ保持部1
7はメモリから構成される。
【0036】充填圧力算出部18は、入力部13,14
からそれぞれ入力された射出用シリンダ70aの作動油
供給側の油圧P1および作動油排出側の油圧P2から、
プランジャ57のプランジャチップ57aの金属溶湯に
対する充填圧力CPを算出する。充填圧力算出部18
は、充填圧力CPを次式(1)によって算出する。
【0037】 CP=P1−{(d12 −d22 )/d12 }・P2 …(1) なお、d1はピストン部58aの直径であり、d2はピ
ストンロッド58の直径である。
【0038】圧力データ保持部19は、充填圧力算出部
18から逐次入力される充填圧力CPの時系列データを
記憶保持する。この圧力データ保持部19は、メモリか
ら構成される。
【0039】射出条件設定部22は、鋳造品に応じた各
種の射出条件データを保持している。具体的には、プラ
ンジャ57を駆動するときの低速射出速度および高速射
出速度、低速射出速度から高速射出速度への切換位置、
昇圧の際の圧力等の各種データである。
【0040】ここで、図3はダイカストマシン1におい
て金型のキャビティCに金属溶湯を充填する直前の状態
を示す断面図である。図3は、所定量の金属溶湯MLを
プランジャスリーブ56内に供給した状態からプランジ
ャ57を低速で駆動している状態を示している。図3に
示す状態では、プランジャチップ57aの前方には金属
溶湯MLとともにガスGが存在しており、プランジャス
リーブ56内の金属溶湯MLをキャビティCに導く流路
LbにもガスGが存在している。また、図3に示す位置
FPは、プランジャチップ57aがこの位置FPまで到
達すると、プランジャスリーブ56内および流路Laに
金属溶湯MLが充填され、金属溶湯MLの先端部が湯口
Lbに達する位置、すなわち、キャビティCへの金属溶
湯MLの充填が開始される充填開始位置である。上述し
たように、この充填開始位置FPでプランジャチップ5
7aが低速の射出速度から高速の射出速度に切り換わる
ことが好ましい。
【0041】たとえば、図3に示す充填開始位置FPの
手前にある位置EPA でプランジャチップ57aが低速
の射出速度から高速の射出速度に切り換わると、プラン
ジャチップ57aは金属溶湯MLからの抵抗をほとんど
受けないため、急激に加速され、ガスGが金属溶湯ML
に撹拌される。プランジャチップ57aが前進して金属
溶湯MLの先端部が湯口Lbに到達すると、湯口Lbの
断面積は流路Laの断面積よりも絞ってあるので、その
抵抗によりプランジャチップ57aは急激に減速され、
その結果、金属溶湯MLの先端部のみが湯口Lbを通じ
てキャビティC内に導入してしまうことが発生しやす
い。このため、鋳造品の表面に湯ジワが発生しやすい。
【0042】一方、図3に示す充填開始位置FPの後方
にある位置EPC でプランジャチップ57aが低速の射
出速度から高速の射出速度に切り換わると、高速充填が
行われる以前に、キャビティC内に金属溶湯MLの先端
部が低速で射出されるため、この先端部の凝固が進行し
すぎて湯境が発生しやすい。
【0043】切換位置検出部21は、速度データ保持部
17に保持された射出速度CVの時系列データおよび変
位データ保持部16に保持された変位CMの時系列デー
タからプランジャ57の実際の速度切換位置EPを検出
し、この速度切換位置EPのデータを切換位置補正部2
3および表示部26に出力する。すなわち、切換位置検
出部21は、図3に示した、実際の切換位置EPA 〜E
PC を検出する。なお、具体的な検出方法については後
述する。
【0044】充填開始位置算出部20は、圧力データ保
持部19に保持された充填圧力CPの時系列データ、変
位データ保持部16に保持されたプランジャ57の変位
CMの時系列データおよび速度データ保持部17に保持
されたプランジャ57の射出速度CVの時系列データに
基づいて、プランジャスリーブ56およびキャビティC
に通じる流路Laに金属溶湯MLが充填され、キャビテ
ィCへの金属溶湯MLの充填開始状態となったときのプ
ランジャ57の充填開始位置を算出する。すなわち、充
填開始位置算出部20は、図3に示した充填開始位置F
Pを算出し、切換位置補正部23に出力する。なお、具
体的な算出方法については後述する。
【0045】切換位置補正部23は、充填開始位置算出
部20および切換位置検出部21で検出した充填開始位
置FPおよび切換位置EPのデータに基づいて、射出条
件設定22に設定された、プランジャチップ57aを低
速の射出速度から高速の射出速度に切り換える設定切換
位置SEPを補正し、補正された設定切換位置MEPを
射出条件設定部22および高速速度最適化部24に出力
する。
【0046】具体的には、切換位置補正部23は、実際
の切換位置EPと検出した充填開始位置FPとが一致す
るように設定切換位置SEPを補正する。たとえば、設
定切換位置SEPと充填開始位置FPとを同じである
と、低速で駆動されるプランジャチップ57aが設定切
換位置SEPに到達してから高速速度に切り換わるまで
にタイムラグが存在するため、実際の切換位置EPと充
填開始位置FPとが一致しないため、このタイムラグ等
を考慮して設定切換位置SEPを補正する。
【0047】高速速度最適化部24は、切換位置補正部
23で得られた補正された設定切換位置MEPに応じ
て、射出条件設定部22で設定されている高速射出速度
HCVを最適化し、最適化された高速射出速度OCVを
射出条件設定部22に出力する。具体的には、高速速度
最適化部24は、補正された切換位置MEPと補正前の
切換位置SEPとの差に応じて高速射出速度HCVを最
適化する。すなわち、たとえば、検出された実際の切換
位置が充填開始位置FPの手前EPA である場合には、
この実際の切換位置EPA に基づいて切換位置補正部2
3で補正された補正後の切換位置で設定切換位置MEP
で速度切換を行うと、プランジャチップ57の高速射出
速度による駆動距離が補正前より短くなってしまい、鋳
造品の品質に影響を与える。このため、プランジャ57
の高速射出速度HCVを駆動距離の短縮に応じて高め
る。
【0048】射出制御部25は、射出条件設定部22に
おいて設定された各種の射出条件データとともに、補正
された設定切換位置MEPおよび最適化された高速射出
速度OCVにしたがって、ダイカストマシン1の制御バ
ルブ72、73および74の駆動制御を行う。制御バル
ブ72、73および74にはそれぞれ駆動モータ72
a、73aおよび74aと、これらの駆動モータ72
a、73aおよび74aの回転位置を検出するエンコー
ダ72b、73bおよび74bとが備わっており、射出
制御部25は、駆動モータ72a、73aおよび74a
からのフィードバック情報に基づいて駆動モータ72
a、73aおよび74aを駆動制御する。
【0049】表示部26は、圧力データ保持部19、変
位データ保持部16、速度データ保持部17、充填開始
位置算出部20、切換位置検出部21等から得られる情
報を、たとえば、グラフ化して表示装置27の画面に表
示する。表示装置27の画面に、たとえば、図3に示し
たように、充填開始位置FPを基準として、実際の切換
位置EPが充填開始位置FPより手前にある場合には画
面上に「+」と表示し、実際の切換位置EPが充填開始
位置FPより後方にある場合には「−」と表示するな
ど、充填開始位置FPおよび実際の切換位置EPを視覚
的に把握できるように表示することが好ましい。なお、
表示装置27には、液晶表示装置、CRT等が使用され
る。
【0050】次に、上記構成の制御装置10を用いたダ
イカストマシン1による射出制御方法について図4に示
すフローチャートを参照して説明する。まず、プランジ
ャスリーブ56の注湯口56aを通じて所定量の金属溶
湯MLをラドル90を使用して供給する(ステップS
1)。
【0051】次いで、金型のキャビティCに金属溶湯を
射出動作により充填する(ステップS2)。すなわち、
制御装置10の射出制御部25は、射出条件設定部22
に設定された射出条件にしたがって、プランジャ57を
低速の射出速度LCVで駆動し、プランジャ57が設定
切換位置SEPに到達したら、高速の射出速度HCVに
切り換えて駆動し、キャビティCに金属溶湯MLが充填
されることによってプランジャ57の速度が減速した
ら、昇圧用ピストン59を動作させて昇圧する。その
後、金型を開いて鋳造品を取り出す。この鋳造の際に
は、変位センサS1、圧力センサS2およびS3は、プ
ランジャ57の変位CM、射出速度CVおよび充填圧力
CPを計測されており、鋳造が間隙した時点で変位デー
タ保持部16、速度データ保持部17および圧力データ
保持部19にそれぞれ時系列データが保持されている。
【0052】ここで、図5〜図7に上記の鋳造によって
得られるプランジャ57の速度データおよび充填圧力デ
ータの一例を示す。なお、図5は実際の切換位置EPが
充填開始位置FPより手前に位置する場合であり、図6
は実際の切換位置EPが充填開始位置FPと一致する場
合であり、図7は実際の切換位置EPが充填開始位置F
Pよりも後方に位置する場合のグラフである。
【0053】図5に示すように、実際の切換位置EPが
充填開始位置FPより手前に位置した状態で、プランジ
ャ57の速度切り換えが行われると、射出速度CVが大
きく増加し、ピーク速度CVmax に到達した後、高速の
射出速度に安定する。このとき、充填圧力CPは、プラ
ンジャ57が急激に加速されるため、図5のCPaで示
すように、若干上昇した後、降下し、充填開始位置FP
から再度上昇し、プランジャ57が高速の射出速度で移
動している間は、略一定の値をとる。その後、充填圧力
CPは昇圧によって急上昇する。一方、プランジャ57
の速度は、プランジャ57が高速の射出速度で移動して
いる間は、略一定の値をとり、キャビティCの金属溶湯
MLが充満すると、プランジャ57は減速する。
【0054】図6に示すように、実際の切換位置EPが
充填開始位置FPと一致する場合では、プランジャ57
の速度切り換えが行われても、射出速度CVは略一定の
値に上昇し、その後下降する。また、充填圧力CPもプ
ランジャ57の速度切り換えに応じて上昇し、略一定の
値をとったのち、昇圧によって急上昇する。
【0055】図7に示すように、実際の切換位置EPが
充填開始位置FPよりも後方に位置する場合には、プラ
ンジャ57が充填開始位置FPを通過すると、速度切り
換えが行われる前に充填圧力CPはある程度上昇し、プ
ランジャ57の速度切り換えに応じてさらに上昇し、略
一定の値をとったのち、昇圧によって急上昇する。
【0056】ダイカストマシン1による鋳造完了後に
は、制御装置10の速度データ保持部17および圧力デ
ータ保持部19には、上記の図5〜図7のようなデータ
のうちいずれかが保持されている。
【0057】次に、充填開始位置算出部20において充
填開始位置FPを検出する。まず、充填開始位置算出部
20では、速度データ保持部17の速度CVの時系列デ
ータからピーク速度CVmax の有無を判断する(ステッ
プS3)。たとえば、速度データ保持部17および圧力
データ保持部19に図5に示したようなデータが保持さ
れているとすると、ピーク速度CVmax が存在する。
【0058】この場合には、速度データ保持部17に保
持された時系列データからピーク速度CVmax および高
速射出速度CVhを検出する(ステップS4)。
【0059】次いで、充填開始位置算出部20は、ま
ず、高速の射出速度で駆動されるプランジャ57が減速
するポイントPA を検出する。この減速ポイントPA
は、たとえば、高速射出速度CVhから5%速度が低下
した位置とする(ステップS5)。
【0060】次いで、プランジャ57によるキャビティ
Cへの金属溶湯MLの充填開始後の充填圧力の平均値C
Pmを算出する(ステップS6)。この充填圧力の平均
値CPmは、減速ポイントPA から、予定の距離、たと
えば、20mm手前に遡った位置までの範囲の充填圧力
CVの平均から求める。こにようにして高速で駆動され
るプランジャ57の平均充填圧力CPmを求めること
で、その後の算出値の精度のばらつきを抑制することが
できる。
【0061】次いで、充填圧力CVデータを射出が完了
した時点Pfから遡ってサーチし、充填圧力CVの値が
平均充填圧力CPmに対して、所定の割合、たとえば、
90%となる時点PB を特定し、この時点PB に対応す
るプランジャ57の位置を充填開始位置FPとする(ス
テップS7)。このような処理によって、充填開始位置
算出部20で充填開始位置FPが特定される。
【0062】一方、図6および図7に示したように、充
填開始位置FPと実際の切換位置EPが一致あるいは切
換位置EPが充填開始位置FPより前方に位置する場合
には、ピーク速度CVmax が存在しない。この場合に
は、圧力データ保持部19に保持された充填圧力CPの
時系列データをサーチし、圧力の上昇点を検出する(ス
テップS8)。すなわち、図6において説明したよう
に、充填開始位置FPと実際の切換位置EPが一致して
いる場合には、昇圧による充填圧力CPの上昇を除く
と、充填開始による圧力上昇点Pjのみであるが、図7
に示した切換位置EPが充填開始位置FPより前方に位
置する場合には、圧力上昇点PgおよびPhの2つが存
在する。
【0063】したがって、圧力上昇点Pjのみの場合に
は、この圧力上昇点Pgに対応するプランジャ57の位
置を充填開始位置FPとし、圧力上昇点PgおよびPh
の2つが存在する場合には、手前の圧力上昇点Pgに対
応するプランジャ57の位置を充填開始位置FPとする
(ステップS9)。
【0064】次いで、切換位置検出部21において、図
5〜図7に示す実際の切換位置EPA ,EPB ,EPC
を検出する(ステップS10)。切換位置検出部21
は、低速の射出速度CVLに対して、速度CVが所定の
割合の増加、たとえば、5%増加する時点Pcに対応す
るプランジャ57の位置を実際の切換位置EPとする。
【0065】次いで、切換位置補正部23において、設
定切換位置SEPを補正し、補正した設定切換位置ME
Pを射出条件設定部22に設定する(ステップS1
1)。具体的には、切換位置補正部23は、次回の射出
動作において実際の切換位置EPと検出した充填開始位
置FPとが一致するように設定切換位置SEPを補正
し、たとえば、設定切換位置SEPと充填開始位置FP
とを同じであると、低速で駆動されるプランジャ57が
設定切換位置SEPに到達してから高速速度に切り換わ
るまでにタイムラグが存在するため、実際の切換位置E
Pと充填開始位置FPとが一致ないため、このタイムラ
グ等を考慮して設定切換位置SEPを補正する。
【0066】次いで、高速速度最適化部24において、
切換位置補正部23で得られた補正された設定切換位置
MEPに応じて、射出条件設定部22で設定されている
高速射出速度HCVを最適化し、最適化された高速射出
速度OCVを射出条件設定部22に設定する(ステップ
S12)。
【0067】次いで、金属溶湯MLをプランジャスリー
ブ56に供給した後、射出条件設定部22に設定した射
出条件、すなわち、補正した設定切換位置MEP、最適
化された高速射出速度OCVにしたがって、再度、金型
のキャビティCに金属溶湯を射出動作により充填する
(ステップS13)。
【0068】一方、上記の各処理に加えて、制御装置1
0の表示部26は、たとえば、図5〜図7に示したよう
なグラフを表示装置27の画面に表示する。鋳造技術者
は、表示装置27の画面から、低速から高速への切換
が、充填開始位置FPの手前で行われたか、あるいは、
充填開始位置FPの後方で行われたかを視覚的に把握す
ることができる。
【0069】以上のように、本実施形態によれば、プラ
ンジャ57の射出速度切換を予め設定された切換位置に
おいて行うのではなく、プランジャスリーブ56および
金型のキャビティCに金属溶湯MLを導く流路Laに金
属溶湯MLが充填された状態を、プランジャ57の変
位、速度および充填圧力から間接的に検出し、この充填
開始位置FPと実際のプランジャ57の切換位置EPと
が一致するように設定切換位置MEPを補正する。この
結果、プランジャ57の充填開始位置FPと実際の切換
位置EPとが一致し、理想的な状態でキャビティCへの
金属溶湯MLの充填が行われ、品質の安定した鋳造品が
得られる。また、補正された設定切換位置MEPに応じ
て高速射出速度を最適化することで、プランジャ57が
高速で駆動される距離が変化しても鋳造品の品質を一定
に保つことができる。
【0070】なお、上述した実施形態では、一回の射出
動作によって得られるプランジャ57の変位、速度およ
び充填圧力のデータに基づいて、実際の切換位置EPお
よび充填開始位置FPを検出し、これらに基づいて、設
定切換位置を補正し、高速射出速度を最適化する構成と
したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、複数
回の射出動作によって得られる複数のプランジャ57の
充填開始位置データおよび速度切換位置データの平均値
に基づいて設定切換位置を補正し、この補正された設定
切換位置に応じて高速射出速度を最適化する構成とする
ことも可能である。
【0071】第2実施形態 図8は、本発明の第2の実施形態に係る制御装置の構成
を示す構成図である。図8に示す制御装置101は、入
力部102,103と、圧力算出部104と、射出条件
設定部105と、充填開始位置検出部106と、切換位
置決定部107と、射出制御部108とを備えている。
ここで、充填開始位置検出部106は本発明の充填開始
位置検出手段、切換位置決定部107は本発明の切換位
置決定手段、射出条件設定部105および射出制御部1
08は本発明の射出制御手段23を構成している。
【0072】第1の実施形態に係る制御装置10は、射
出動作を行うことで得られるプランジャ57の変位、速
度および充填圧力の時系列データに基づいて、プランジ
ャ57の射出速度の切換位置を最適化する構成とした
が、本実施形態では、射出動作中にリアルタイムにプラ
ンジャ57の射出速度の切換位置を最適化する点で構成
が異なっている。
【0073】入力部102および入力部103は、第1
の実施形態に係る入力部13および14と同様の構成で
あり、射出用シリンダ70aの作動油供給側の油圧P1
を検出する圧力センサS2の検出信号および作動油排出
側の油圧P2を検出する圧力センサS3の検出信号がそ
れぞれ入力され、これらを充填圧力算出部104に逐次
出力する。
【0074】充填圧力算出部104は、上記の充填圧力
算出部18と同様の構成であり、入力部102,103
からそれぞれ入力された射出用シリンダ70aの作動油
供給側の油圧P1および作動油排出側の油圧P2から、
プランジャ57のプランジャチップ57aの金属溶湯に
対する充填圧力CPを算出する。
【0075】射出条件設定部105は、射出条件設定部
22と同様の構成であり、鋳造品に応じた各種の射出条
件データを保持している。
【0076】充填開始位置検出部106は、充填圧力算
出部104から入力されるプランジャ57の充填圧力デ
ータに基づいて、プランジャ57が充填開始位置FPに
到達したことを検出し、検出信号106sを切換位置決
定部107に出力する。
【0077】切換位置決定部107は、検出信号106
sが入力された時点でのプランジャ57の位置を射出速
度切換位置として、切換信号107sを射出制御部10
8に出力する。
【0078】射出制御部108は、射出条件設定部10
5に設定された射出条件にしたがって、ダイカストマシ
ン1のプランジャ57を、まず、低速の射出速度で駆動
し、切換位置決定部107からの切換信号107sの入
力に応じてプランジャ57を高速の射出速度に切り換え
て駆動する。
【0079】次に、上記構成の制御装置101を用いた
本発明の射出制御方法について説明する。まず、プラン
ジャスリーブ56内に所定量の金属溶湯MLを供給す
る。
【0080】金属溶湯MLが供給されたプランジャスリ
ーブ56に対してプランジャ57を射出条件設定部10
5に設定された低速の射出速度で駆動する。
【0081】プランジャ57のプランジャチップ57a
が上記の充填開始位置FPに到達すると、金属溶湯ML
には湯口Lbの抵抗が作用してプランジャチップ57a
の充填圧力は上昇する。制御装置101の充填開始位置
検出部106は、この湯口Lbの抵抗によるプランジャ
チップ57aの充填圧力の上昇を検出し、検出信号10
7sを切換位置決定部107に出力する。
【0082】射出制御部108は、上記の充填開始位置
FPへのプランジャチップ57aの到達の検出に応じて
プランジャチップ57aを高速の射出速度に切り換えて
駆動する。
【0083】これにより、常に安定して充填開始位置F
Pでプランジャチップ57aを低速の射出速度から高速
の射出速度に切り換えることができる。なお、本実施形
態では、切換位置の検出を射出動作中にリアルタイムに
行うため、ダイカストマシン1の射出シリンダ部70の
動作に低速から高速に切り換わるまでにタイムラグが存
在すると、充填開始位置FPと実際の切換位置EPを一
致させることは難しいが、この場合にも、充填開始位置
FPに対する実際の切換位置EPの相対関係が常に一定
するため、品質を安定化することができる。
【0084】
【発明の効果】本発明によれば、ダイカストマシンにお
いてプランジャの射出速度の切り換えのタイミングを最
適化でき、安定した品質の鋳造品を鋳造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されるダイカストマシンの一例を
示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る制御装置10の
構成を示す図である。
【図3】ダイカストマシン1において金型のキャビティ
Cに金属溶湯を充填する直前の状態を示す断面図であ
る。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る射出制御方法を
説明するためのフローチャートである。
【図5】実際の切換位置EPが充填開始位置FPより手
前に位置するときの、プランジャの速度および圧力の波
形データの一例を示すグラフである。
【図6】実際の切換位置EPが充填開始位置FPと一致
するときの、プランジャの速度および圧力の波形データ
の一例を示すグラフである。
【図7】実際の切換位置EPが充填開始位置FPよりも
後方に位置するときの、プランジャの速度および圧力の
波形データの一例を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る制御装置の構成
を示す図である。
【符号の説明】
1…ダイカストマシン 10,101…制御装置 11,12,13…入力部 15…速度算出部 16…変位データ保持部 17…速度データ保持部 18…充填圧力算出部 19…圧力データ保持部 20…充填開始位置算出部 21…切換位置検出部 22…射出条件設定部 23…切換位置補正部 24…高速速度最適化部 25…射出制御部 26…表示部 27…表示装置 56…プランジャスリーブ 57…プランジャ 57a…プランジャチップ 57b…プランジャロッド 70…射出シリンダ部

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プランジャスリーブに供給された金属溶湯
    を金型のキャビティへ射出するプランジャと、当該プラ
    ンジャを駆動する射出シリンダを備える駆動手段と、を
    具備するダイカストマシンの射出制御装置であって、 前記プランジャを第1の射出速度で駆動し、当該第1の
    射出速度よりも高い第2の射出速度に切り換える速度切
    換位置を設定する速度切換位置設定手段と、 前記プランジャの実際の速度切換位置を検出する切換位
    置検出手段と、 前記プランジャスリーブおよび前記キャビティに通じる
    流路に金属溶湯が充填され、前記キャビティへの金属溶
    湯の充填開始状態となったときの前記プランジャの充填
    開始位置を検出する充填開始位置検出手段と、 検出した前記プランジャの充填開始位置および速度切換
    位置に基づいて、設定された前記速度切換位置を補正す
    る切換位置補正手段と、 補正された前記速度切換位置にしたがって、前記プラン
    ジャを第1の射出速度で駆動した後、前記第2の射出速
    度に切り換える制御指令を前記駆動手段に対して出力す
    る射出制御手段とを有するダイカストマシンの射出制御
    装置。
  2. 【請求項2】前記切換位置補正手段は、実際の速度切換
    位置と充填開始位置とが一致するように前記設定された
    速度切換位置を補正する請求項1に記載のダイカストマ
    シンの射出制御装置。
  3. 【請求項3】前記プランジャの前記金属溶湯に対する充
    填圧力を検出する圧力検出手段と、 前記プランジャの変位を検出する変位検出手段と、 前記プランジャの速度を検出する速度検出手段と、を有
    し、 前記充填開始位置検出手段は、前記プランジャの変位、
    速度および充填圧力の変化に基づいて前記プランジャの
    充填開始位置を決定する請求項1または2に記載のダイ
    カストマシンの射出制御装置。
  4. 【請求項4】前記圧力検出手段の検出した充填圧力を時
    系列データとして記憶保持する圧力データ保持部と、 前記変位検出手段の検出した前記プランジャの変位を時
    系列データとして記憶保持する変位データ保持部と、 前記速度検出手段の検出した前記プランジャの速度を時
    系列データとして記憶保持する速度データ保持部と、 前記充填圧力の時系列データに基づいて、前記プランジ
    ャによる前記キャビティへの金属溶湯の充填開始後の充
    填圧力の平均値を算出し、前記充填圧力および変位の時
    系列データから、前記プランジャの充填圧力が前記平均
    値に対して所定の割合に達する当該プランジャの位置を
    検出し、当該位置を前記充填開始位置とする充填開始位
    置算出部とを有する請求項3に記載のダイカストマシン
    の射出制御装置。
  5. 【請求項5】前記充填開始位置算出部は、前記充填圧
    力、変位および速度の時系列データから、前記キャビテ
    ィへ金属溶湯が充填した時点の前記プランジャの位置を
    検出し、当該充満時のプランジャの位置からプランジャ
    の進行方向に遡った所定の距離の範囲での充填圧力の平
    均値を算出する請求項4に記載のダイカストマシンの射
    出制御装置。
  6. 【請求項6】前記変位検出手段によって検出された前記
    プランジャの変位から当該プランジャの射出速度を算出
    する速度算出部と、 前記速度検出手段の検出した射出速度の時系列データを
    記憶保持する速度データ保持部と、 前記速度および変位の時系列データから前記プランジャ
    の実際の速度切換位置を検出する切換位置検出部を有す
    る請求項3〜5のいずれかに記載のダイカストマシンの
    射出制御装置。
  7. 【請求項7】前記切換位置検出部は、前記変位および前
    記速度の時系列データから、前記プランジャの第1の射
    出速度を検出し、かつ、当該第1の射出速度に対して所
    定の割合の速度に上昇する当該プランジャの位置を検出
    し、当該プランジャの位置を実際の速度切換位置とする
    請求項6に記載のダイカストマシンの射出制御装置。
  8. 【請求項8】前記切換位置補正手段によって補正された
    速度切換位置に応じて、前記第2の射出速度を最適化す
    る高速速度最適化手段をさらに有する請求項1〜7のい
    ずれかに記載のダイカストマシンの射出制御装置。
  9. 【請求項9】前記高速速度最適化手段は、前記補正され
    た速度切換位置と補正前の速度切換位置との差に応じて
    前記第2の射出速度を調整する請求項8に記載のダイカ
    ストマシンの射出制御装置。
  10. 【請求項10】前記切換位置補正手段は、複数回の射出
    動作によって得られる複数の前記プランジャの充填開始
    位置データおよび速度切換位置データの平均値に基づい
    て前記速度切換位置を補正する請求項1〜9のいずれか
    に記載のダイカストマシンの射出制御装置。
  11. 【請求項11】前記検出された充填開始位置および実際
    の切換位置の情報を画面上に表示する表示手段をさらに
    有する請求項1〜10のいずれかに記載のダイカストマ
    シンの射出制御装置。
  12. 【請求項12】プランジャスリーブに供給された金属溶
    湯を金型のキャビティへ射出するプランジャと、当該プ
    ランジャを駆動する射出シリンダを備える駆動手段と、
    を具備するダイカストマシンの射出制御装置であって、 前記プランジャスリーブおよび前記キャビティに通じる
    流路に金属溶湯が充填され、前記キャビティへの金属溶
    湯の充填開始状態となったときの前記プランジャの充填
    開始位置を前記プランジャの充填圧力に基づいて検出す
    る充填開始位置検出手段と、 前記充填開始位置検出手段の検出した前記プランジャの
    充填開始位置に基づいて、当該プランジャの射出速度の
    射出切換位置を決定する切換位置決定手段と、前記プラ
    ンジャを第1の射出速度で駆動し、前記決定された速度
    切換位置にしたがって当該第1の射出速度よりも高い第
    2の射出速度に切り換える制御指令を前記駆動手段に対
    して出力する射出制御手段とを有するダイカストマシン
    の射出制御装置。
  13. 【請求項13】プランジャスリーブに供給された金属溶
    湯に対してプランジャを第1の射出速度で駆動したの
    ち、当該第1の射出速度より高い第2の射出速度に切り
    換えて金型のキャビティへ金属溶湯を射出するダイカス
    トマシンの射出制御方法であって、 金属溶湯が供給された前記プランジャスリーブに対して
    プランジャを第1の射出速度で駆動し、予め設定された
    設定切換位置で前記プランジャを第2の射出速度に切り
    換えて駆動し、キャビティへ金属溶湯を充填する充填ス
    テップと、 前記充填ステップにおいて検出された前記プランジャの
    金属溶湯に対する充填圧力および前記プランジャの変位
    および速度の時系列データから、前記プランジャスリー
    ブおよび前記キャビティに通じる流路に金属溶湯が充填
    され、前記キャビティへの金属溶湯の充填開始状態とな
    ったときの前記プランジャの充填開始位置を検出する充
    填開始位置検出ステップと、 前記充填ステップにおいて検出された前記プランジャの
    変位および速度の時系列データから、前記プランジャの
    射出速度の実際の切換位置を検出する切換位置検出ステ
    ップと、 前記検出された実際の切換位置と充填開始位置に基づい
    て、前記プランジャの充填開始位置と切換位置とが一致
    するように前記設定切換位置を補正する切換位置補正ス
    テップとを有するダイカストマシンの射出制御方法。
  14. 【請求項14】前記切換位置変更ステップは、変更した
    切換位置に応じて、前記第2の射出速度を最適化する最
    適化ステップをさらに有する請求項13に記載のダイカ
    ストマシンの射出制御方法。
  15. 【請求項15】プランジャスリーブに供給された金属溶
    湯に対してプランジャを第1の射出速度で駆動したの
    ち、当該第1の射出速度よりも高い第2の射出速度に切
    り換えて金型のキャビティへ金属溶湯を射出するダイカ
    ストマシンの射出制御方法であって、 プランジャスリーブ内に所定量の金属溶湯を供給する供
    給ステップと、 金属溶湯が供給された前記プランジャスリーブに対して
    プランジャを第1の射出速度で駆動する低速駆動ステッ
    プと、 駆動される前記プランジャの金属溶湯に対する充填圧力
    の変化から、前記プランジャスリーブおよびキャビティ
    に通じる流路に金属溶湯が充填され、前記キャビティへ
    の金属溶湯の充填開始状態となったことを前記プランジ
    ャの充填圧力に基づいて検出する充填開始状態検出ステ
    ップと、 前記充填開始状態の検出に応じて前記プランジャを第2
    の射出速度に切り換えて駆動する高速駆動ステップとを
    有するダイカストマシンの射出制御方法。
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