JP7388037B2 - ダイカストマシンの制御装置、制御パラメータの設定に用いられる指標値を取得する装置および方法 - Google Patents
ダイカストマシンの制御装置、制御パラメータの設定に用いられる指標値を取得する装置および方法 Download PDFInfo
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Description
特許文献1のダイカストマシンには、スリーブ側の吸引経路およびキャビティ側の吸引経路にそれぞれ設けられているソレノイドバルブをプランジャの進退位置に応じて開閉するための第1~第3のリミットスイッチが備えられている。第1~第3のリミットスイッチは、プランジャロッドに取り付けられたスイッチレバーにより操作される。
プランジャチップがスリーブ吸引口を閉塞する位置に達すると、第2リミットスイッチにより、スリーブ吸引経路のソレノイドバルブが閉と成る。プランジャがさらに前進してチップが射出完了位置まで達すると、第3リミットスイッチにより、キャビティ吸引経路のソレノイドバルブが閉と成り、射出工程が完了する。
したがって、スリーブの内側の真空吸引が行われる場合は、特に、スリーブ側の吸引経路に設けられているバルブをスリーブに対するプランジャの位置に応じて適時に開閉させたい。
特許文献1の構成によると、チップにより注湯口や吸引口が閉塞される位置でリミットスイッチが確実に作動するように、リミットスイッチを適切な位置に設置する試行錯誤の作業が見込まれる。
しかも、特許文献1に記載のリミットスイッチ、あるいはエンコーダ等、適切な位置に設置された位置検知手段によりプランジャの位置が正確に検出されたとしても、リミットスイッチやエンコーダ等の作動によってバルブを開閉する指令が発せられてからバルブが実際に動作するまでのタイムラグが存在するため、バルブが必ずしも適時に動作するとは限らない。
また、チップにより吸引口が閉塞された後、当該吸引口の大気開放に対してバルブの閉動作が遅れるとすれば、当該吸引口の連通する経路および真空タンク等の真空度が低下してしまう。
スリーブに対してプランジャが前進する速度(射出速度)が大きいほど、タイムラグによる影響は顕著となる。
あるいは、バルブを動作させる指令が発せられるタイミングが早められることにより、バルブの開動作が注湯口の閉塞時点よりも早ければ、注湯口から、スリーブの内部に外気が流入してしまう。
タイムラグが考慮された指標がないまま、スリーブ内の溶湯への空気の巻き込み防止、溶湯カスによる吸引経路の閉塞防止の観点からスリーブ内に外気が流入することを避けつつ、真空吸引時間、真空吸引効率を十分に確保できるバルブの動作指令のタイミングを定めることは難しい。
本制御装置は、プランジャの進退方向における位置を示し、スリーブの内側を吸引する制御に用いられる制御パラメータに値を設定する制御パラメータ設定部と、スリーブの内側の吸引状態を操作するバルブを動作させるバルブ動作指令を制御パラメータが示す位置で発するスリーブ真空制御部と、を備える。
制御パラメータ設定部は、プランジャのチップおよびスリーブの幾何学的諸元から決まる進退方向における位置であって、バルブを動作させる位置としてのバルブ動作位置と、プランジャの位置および速度を含む射出条件と、
バルブ動作指令に対するバルブの動作のタイムラグと、を用いて、バルブ動作位置からタイムラグに相当する時間分、遡った位置に相当する指標値を取得し、指標値を制御パラメータに設定可能である。
本取得装置は、プランジャのチップおよびスリーブの幾何学的諸元から決まる進退方向における位置であって、スリーブの内側の吸引状態を操作するバルブを動作させる位置としてのバルブ動作位置と、プランジャの位置および速度を含む射出条件と、制御パラメータが示す位置で発せられるバルブ動作指令に対するバルブの動作のタイムラグと、を用いて、バルブ動作位置からタイムラグに相当する時間分、遡った位置に相当する指標値を取得する。
〔ダイカストマシンの概略構成〕
図1~図3を参照し、ダイカストマシン10の構成を簡単に説明する。
ダイカストマシン10は、可動金型11および製品押出機構11Aが設けられた可動盤12と、固定金型13が設けられた固定盤14と、可動盤12および固定盤14を支持するマシンベース15と、図示しない型開閉・型締め機構と、固定盤14に設けられ、キャビティ16に向けて溶湯17を射出する射出装置20と、ダイカストマシン10の各部の動作を制御する制御装置30と、真空吸引系統40(図2)とを備えている。
真空吸引系統40は、キャビティ16および、キャビティ16に連通した射出装置20のスリーブ21の内部からそれぞれ真空吸引を実施可能である。
真空吸引系統40によりキャビティ16が減圧された状態で、射出装置20により、アルミニウムやアルミニウム合金等の溶湯17がキャビティ16に射出されて充填されることで、鋳造成形品が製造される。
射出装置20は、溶湯17が内側に供給される円筒状のスリーブ21と、スリーブ21内の溶湯17をキャビティ16に向けて射出するプランジャ22と、プランジャ22をスリーブ21に対して進退させる図示しない油圧シリンダ等の駆動源とを備えている。
プランジャ22が前進および後退する方向(前後方向)のことを進退方向D1と定義する。
スリーブ21の壁の後端部の上部には、図示しないラドルにより溶湯が注入される注湯口26が形成されている。
スリーブ21の壁の上部には、注湯口26よりも前方に、スリーブ21の内部の真空吸引に用いられる吸引口41~44が進退方向D1に間隔をおいて形成されている。吸引口41~44は、スリーブ21の壁を厚さ方向に貫通しており、いずれも真空吸引系統40(図2)の真空配管に接続されている。
第1吸引口41が最も後方に位置し、第4吸引口44が最も前方に位置している。
プランジャ22は、プランジャロッド23と、プランジャロッド23の前側に設けられるプランジャチップ24(以下、チップ24)とを備えている。
プランジャロッド23は、油圧シリンダのピストンロッド等に結合している。
図3に示すように、吸引用凹部25が吸引口41に連通しているとき、吸引口41を通じた吸引用凹部25の真空吸引と、吸引口42~44を通じたチップ24よりも前方の空間27(以下、前方空間27)の真空吸引とが可能である。
なお、吸引口41~44にはそれぞれ、#1,#2,#3,#4を付記している。
前方空間27への外気の流入が抑制されることで、前方空間27に貯留されている溶湯17への空気の巻き込みに起因する鋳巣(巻込み巣)の発生を防ぐことができる。また、外気の流入による溶湯17の飛散等を抑えて、溶湯17の凝固片等(溶湯カス)による吸引経路の閉塞を防ぐことができる。
なお、プランジャ22の前進を一時停止した状態で、前方空間27および吸引用凹部25の真空吸引が行われてもよい。
進退方向D1に分布している複数の吸引口41~44によれば、スリーブ21内の真空吸引が開始された後、最も前方に位置する吸引口44がチップ24により閉塞されるまでの間に亘り、少なくとも1つの吸引口を通じて前方空間27を吸引するとともに、少なくとも1つの吸引口を通じて吸引用凹部25を吸引することができる。
チップ24に吸引用凹部25が形成されることに加えて、スリーブ21の壁に少なくとも2つの吸引口が形成されていると、一方の吸引口を前方空間27の吸引に割り当て、他方の吸引口を吸引用凹部25の吸引に割り当てることで、前方空間27と吸引用凹部25との双方からの吸引を容易に実現することができる。
真空吸引系統40(図2)は、スリーブ21の内部およびキャビティ16を吸引可能に構成されている。真空吸引系統40によりスリーブ21の内部が減圧されることにより、スリーブ21の内部と連通しているキャビティ16も減圧される。スリーブ21の内部およびキャビティ16のことを、連通空間29と称する。
図2に示す例によると、スリーブ側吸引系統40Sと、金型側吸引系統40Mとが、真空タンク46を兼用した一つの系統として構成されているが、この限りではない。スリーブ側吸引系統40Sと、金型側吸引系統40Mとが別々に構成されていてもよい。
各吸引経路47には、スリーブ21内から吸引される気体の流れの上流から下流に向けて、真空吸引用の真空フィルタ411と、吸引経路47における圧力を検知する圧力計、連成計、圧力センサ等である圧力検知部412と、吸引口41~44を選択的に真空タンク46に連通させる選択バルブ413とがこの順序で設けられている。
吸引口41~44は、進退方向D1におけるプランジャ22の位置や、圧力検知部412により検知された圧力に基づく吸引口41~44からの吸引の状態、あるいは、スリーブ21への溶湯の充填率等に応じて、真空タンク46に適時に連通されることが好ましい。
エアブロウ時にも、選択バルブ413の開閉により、吸引口41~44を加圧タンク422に適時に連通させるとよい。
次に、ダイカストマシン10を制御する制御装置30(図4)について説明する。
制御装置30は、製品に使用される金型11,13や射出装置20の諸元等に応じて設定された製造条件に従い、型締め、注湯、射出、真空吸引、保圧・増圧、型開き等を制御する。
例えば、制御装置30は、射出工程に際しては、プランジャ22の位置を検知しつつ、プランジャ22の位置および速度を含む射出条件に従い、溶湯17がランナー131を経由してゲート132に到達するまでは相対的に低い速度でプランジャ22を前進させながら連通空間29の真空吸引を実施した後、プランジャ22の速度を増加させる。
プランジャ22の前進動作の制御は、キャビティ16が溶湯17で満たされたタイミング(速度・圧力切替点;VP(Velocity Pressure)切替点)において、上記の速度制御から、キャビティ16の溶湯17の圧力に基づく圧力制御(保圧制御/増圧制御)に切り換えられる。
その他、プランジャロッド23に設けられたスイッチレバーと、スイッチレバーにより操作される複数のリミットスイッチとを用いてプランジャ22の位置を検知することも許容される。
制御装置本体31により、モニタ32に、製造条件の設定や、稼働状況の監視等に必要な種々の情報が表示される。オペレータによる入力操作や、外部機器からのデータ入力により、入出力インタフェース33を通じて、制御装置本体31が保持する制御パラメータ等の値の設定が可能である。
図5および図6は、スリーブ21内部の真空吸引に関し、制御装置30のモニタ32の画面上に表示される情報の一例を示している。
図7は、記憶部313からメモリ312に読み出されたプログラムのモジュールの一例を示している。ダイカストマシン10の制御に用いられるプログラムは、型締め、注湯、射出、真空吸引、エアブロウ、および型開き等のダイカストマシン10の主な制御を行うダイカストマシン制御部301の他、スリーブ21の内部の真空吸引に関し、スリーブ真空制御部302と、制御パラメータ設定部303と、バルブ応答タイムラグ設定部304とを含んでいる。
真空開始位置に対応する制御パラメータのことを真空開始位置パラメータP0と称する。
また、チップ24が吸引口41を閉塞する位置に対応する制御パラメータのことを第1吸引口閉塞位置パラメータP1と称する。同様に、チップ24が吸引口42,43,44をそれぞれ閉塞する位置に対応する制御パラメータのことを第2吸引口閉塞位置パラメータP2、第3吸引口閉塞位置パラメータP3、第4吸引口閉塞位置パラメータP4と称する。これらの制御パラメータP0~P4を「スリーブ真空制御パラメータ」(図5)と総称する。
スリーブ真空制御部302は、スリーブ真空制御パラメータがそれぞれ示すプランジャ22の位置で、真空バルブ40Vまたは選択バルブ413を動作させるバルブ動作指令を発する。
バルブ応答タイムラグ設定部304は、後述するバルブ応答タイムラグを設定する。
制御パラメータ入力取得部303Bは、スリーブ真空制御パラメータの外部からの入力を取得してスリーブ真空制御パラメータに値を設定可能である。
例えば、図5に示すモニタ32の画面上の真空開始位置の設定欄32Sに、制御卓の入力装置等により値が入力されると、制御パラメータ入力取得部303Bは、設定欄32Sに入力された値を取得して真空開始位置パラメータに設定することができる。
ここで、真空開始位置パラメータP0が、図8(b)に示すように、チップ24の後部202の前端202Aが注湯口26の前端26Aに到達したときのプランジャ22の位置に設定された場合を考える。図8(b)に示すように注湯口26の前端26Aでスリーブ21の内部がチップ24の後部202により閉塞されると、スリーブ21の内側においてチップ24よりも前方に区画された前方空間27の真空吸引が可能である。このプランジャ22の位置のことを、チップ24が注湯口26を閉塞する位置(注湯口閉塞位置)と称する。典型的には、注湯口閉塞位置にプランジャ22が到達した時にスリーブ21の真空吸引が開始される。
真空開始位置パラメータP0が示す図8(b)の位置(注湯口閉塞位置であり、真空開始位置)で、スリーブ真空制御部302により真空開始指令(バルブ動作指令)が発せられたならば、真空バルブ40Vが真空吸引の状態に切り替えられる。そうすると、連通空間29の圧力が減少する。
なお、必ずしも注湯口閉塞位置で真空吸引が開始されなくてもよいが、注湯口閉塞位置で真空吸引が開始されることにより、真空吸引を行う時間を最大限に得ることができる。
つまり、プランジャ22の真空開始位置への到達および真空開始指令の発生に対し、連通空間29の減圧開始までのタイムラグが存在する。このタイムラグには、真空バルブ40Vの応答時間、連通空間29の圧力が減少に転じるまでの時間、および連通空間29の圧力を検知する圧力計の応答時間等が含まれる。
上記と同じタイムラグ(100ms)でも、プランジャ22の速度が0.5m/sであるならば、真空バルブ40Vが動作する時点で、プランジャ22は、真空開始指令が発せられた位置から50mm前方に移動している。つまり、プランジャ22の速度が速いほど、タイムラグに起因して、真空開始指令発生時点のプランジャ22の位置に対し、真空バルブ40Vが動作する時点のプランジャ22の位置に顕著なシフトが発生する。
つまり、図8(b)に示すプランジャ22の位置で真空開始指令が発せられたとしても、真空開始指令から遅れて、図8(a)に示すようにプランジャ22が前進した位置で真空バルブ40Vが動作したならば、真空吸引の時間を最大限に確保することはできず、また、図8(a)に示すようにチップ24が第2吸引口42の一部を閉塞していることで、吸引用の開口面積が減少してしまう。
しかし、タイムラグが考慮された指標が無いとすれば、どれほど後方の位置で真空開始指令を発生させるべきか、つまり、真空開始指令を発生させる位置を示す真空開始位置パラメータの値の決め方が難しい。
そのため、注湯口閉塞位置よりも後方の位置で、真空開始指令が早く発せられた結果、図8(c)に示す位置で真空バルブ40Vが動作したとする。このとき、注湯口26と前方空間27とが吸引用凹部25およびチップ24とスリーブ21との隙間を介して連通しているため、注湯口26を通じて前方空間27に外気が流入し易い。
しかし、タイムラグが考慮された指標が無いとすれば、どれほど後方の位置で吸引口閉塞指令を発生させるべきか、つまり、吸引口閉塞パラメータの値の決め方が難しい。
ここで、真空開始位置および吸引口閉塞位置のいずれについても、スリーブ21に対してプランジャ22が前進する速度(射出速度)が大きいほど、タイムラグによる影響は顕著となる。更に、吸引口閉塞位置については、チップ24の後部202の軸方向長さが短いほど、吸引口が大気開放されるまでの距離が短くなるため、タイムラグによる影響が顕著となる。つまり、射出速度が大きいほど、また、チップ24の後部202が短いほど、各バルブを適時に動作させるために適切な時点で指令を発生させる必要性が高くなる。
そのため、本実施形態の制御装置30は、タイムラグが考慮された指標として、スリーブ真空制御パラメータの指標値を提供する。
制御パラメータ設定部303の指標値取得部303Aは、上記のバルブ動作位置からタイムラグに相当する時間分、遡った位置に相当する指標値を取得する。
以下、スリーブ真空制御パラメータの指標値の取得に用いられる上記要素(1)~(3)について説明する。
ここで言うバルブ動作位置は、図9に示すように、スリーブ21の注湯口26や吸引口41~44に関する進退方向D1の寸法、チップ24の前部201や吸引用凹部25の進退方向D1の寸法等の幾何学的諸元から導かれる。バルブ動作位置Vs0~Vs4は、図9に示すように、原点位置にあるプランジャ22のチップ24の先端24Bの位置を基準として示すことができる。
真空開始位置指標値の取得に用いられるバルブ動作位置Vs0は、チップ24が注湯口26を閉塞する位置(注湯口閉塞位置)に相当する。第1吸引口閉塞位置指標値の取得に用いられるバルブ動作位置Vs1は、チップ24が、吸引口41を閉塞する位置(吸引口閉塞位置)に相当する。同様に、第2~第4吸引口閉塞位置指標値の取得に用いられるバルブ動作位置Vs2~Vs4も、チップ24が、該当の吸引口を閉塞する位置(吸引口閉塞位置)に相当する。
射出条件は、スリーブ21やチップ24の幾何学的諸元と同様、製造前に予め設定され、記憶部313に記憶される。図10は、射出条件の位置および速度の波形の一例を示している。横軸はプランジャ22の原点位置からの射出ストロークを示し、縦軸はプランジャ22の速度を示している。
射出条件は、相対的に低速で移動するプランジャ22のチップ24により溶湯17をスリーブ21から押し出した後、プランジャ22の速度を急激に増加させるという基本的な動作に基づいて設定される。
射出条件の位置および速度を設定することにより、加速度等が相違する種々の射出設定波形を実現可能である。
位置・時間データにおける「時間」は、射出条件に基づいて、前進するプランジャ22が、進退方向D1の基準位置(ここではプランジャ22の原点位置)から、進退方向D1の任意の位置に到達するまでの経過時間を意味する。この意味で、位置・時間データの「時間」を経過時間と称する。
射出ストロークの全域に亘り経過時間が与えられている位置・時間データに基づけば、射出ストローク上の任意の位置における経過時間から、タイムラグに相当する時間を遡った時間に対応する位置を容易に特定することができる。
経過時間は、射出条件の値が変更された際には、変更後の射出条件に基づいて再計算され、記憶部313に記憶された経過時間のデータが書き換えられる。
異なる射出条件にそれぞれ対応する経過時間データが予め射出条件から算出され、記憶部313に記憶されている場合は、射出条件変更時の再計算や、記憶部313におけるデータの書き換えが必ずしも必要ない。
プランジャ22の位置と経過時間とが紐付けられている限り、経過時間データは、任意のデータ形式であってよい。経過時間データが、例えば、行列状のテーブルデータであったり、あるいは、1~1200mmの各位置と紐付けられた経過時間が、記憶部313に用意されている記憶領域(バッファ)に個別に格納されていたりしてもよい。
次に、スリーブ真空制御パラメータの指標値の取得に用いるタイムラグは、バルブ動作指令の発生から、真空バルブ40Vおよび選択バルブ413等の動作までのタイムラグを想定したバルブ応答タイムラグに相当する。
このバルブ応答タイムラグは、リニアエンコーダ等によるバルブ動作位置の検知およびバルブ動作指令発生に対する連通空間29の減圧開始までのタイムラグを用いて定めることができる。
ここで、真空バルブ40Vや圧力計G1の応答性、およびキャビティ16の容積等によっては、真空バルブ40Vが切り替えられたならば瞬時にキャビティ16の減圧が開始されて圧力計G1の測定値に反映される。
しかし、多くの場合、キャビティ16の減圧開始が圧力計G1の測定値に基づいて検知されるためには、真空開始指令の発生A1に遅れて真空バルブ40Vが切り替えられた後、スリーブ21内部が吸引口41~44を通じて真空吸引されたことでキャビティ16の圧力が減少に至り、さらにキャビティ16の圧力減少に圧力計G1が応答するまでの時間を要する。
なお、図12に示す例では、スリーブ21の真空吸引開始の指令発生(A1)に対して、吸引部19を通じたキャビティ16の真空吸引開始の指令発生(A2)が先行しているが、これは一例であって、これには限られない。キャビティ16が目標の真空度に到達するように、真空開始指令の発生時(A1,A2)を適宜に定めることができる。
但し、タイムラグTL1を安定して得る観点からは、スリーブ21に近い圧力計G1により検知された圧力R1の時間変化に基づいてキャビティ16の減圧開始を精度よく把握することが好ましい。
バルブ応答タイムラグは、タイムラグTL1の係数の乗算に限らず、適宜な計算で求めることができる。
図5は、スリーブ真空制御パラメータの設定が可能な画面の一例を示している。この例では、ダイカストマシン10におけるスリーブ21の真空吸引機能を使用するか否かの設定項目(使用/不用)、各吸引口41~44の使用/不用の設定項目、スリーブ真空制御パラメータの設定項目320~324が画面に表示されている。
画面上の推奨範囲の下限は、上述したスリーブ真空制御パラメータ指標値(Pi0~Pi4)、つまり、幾何学的に得られるバルブ動作位置Vs0~Vs4に対して、バルブ応答タイムラグの分、後方の位置に相当する。例えば、真空開始位置パラメータP0の推奨範囲下限(Pi0)は、バルブ動作位置Vs0に対して、バルブ応答タイムラグVt0の分、後方の位置に相当する。第1吸引口閉塞位置パラメータP1の推奨範囲下限は、バルブ動作位置Vs1に対して、バルブ応答タイムラグVt1の分、後方の位置に相当する。第2~第4吸引口閉塞位置パラメータP2~P4についても同様である。
画面上の推奨範囲の上限は、幾何学的に得られるバルブ動作位置Vs0~Vs4に相当する。
但し、スリーブ真空制御パラメータの設定画面上に、推奨値(Pi0~Pi4)のみが表示されている場合であっても、当該推奨値に基づいて、制御パラメータP0~P4に適切な値を設定することができる。
ダイカストによる鋳造の手順の例を簡単に説明する。
図14は、ダイカストによる鋳造の各ステップを示している。鋳造の1サイクルは、型締め(ステップS1)、スリーブ21への注湯(ステップS2)、プランジャ22による射出の開始(ステップS3)、スリーブ21の真空吸引を実施する場合(ステップS4でYes)の処置(ステップS5)、保圧・増圧(ステップS6)、キャビティ16における溶湯の冷却(ステップS7)、型開き(ステップS8)、金型11,13からの製品の取出し(ステップS9)、製品の検知(ステップS10)、金型11,13への離型剤の供給(ステップS11)、プランジャ22の後退(ステップS12)、およびチップ24への潤滑剤の供給(ステップS13)からなる。
スリーブ21の真空吸引の処理概要としては、プランジャ22の前進に伴い、スリーブ真空制御部302により、スリーブ真空制御パラメータP0~P4が示す位置でそれぞれ、真空バルブ40Vあるいは選択バルブ413に対するバルブ動作指令が発せられる。バルブ動作指令の発生によって、指令に対応する真空バルブ40Vあるいは選択バルブ413が動作する。
制御パラメータP0~P4は、上述したようにバルブ応答タイムラグを考慮して設定されているため、制御パラメータP0~P4がそれぞれ示す位置で発せられた指令に遅れて、真空バルブ40Vおよび選択バルブ413が適時に動作することとなる。
本実施形態では、吸引用凹部25が形成されたチップ24が使用されているため、以下に説明するように、各吸引口41~44が、前方空間27または吸引用凹部25の吸引に使用される。各吸引口41~44が、プランジャ22の前進により大気に開放されるよりも前に、各吸引口41~44に対応する選択バルブ413が閉状態に切り替えられる。
ステップS101では、真空タンク46の内部が十分な真空度にまで達したことが圧力計により検知されたことにより、真空吸引の準備完了の信号が発せられる。
このとき、図16(a)に示すように、プランジャ22は原位置にある。
ステップS103では、ステップS102で発せられた真空開始指令によって真空バルブ40Vが真空吸引に切り替えられる。このときに、プランジャ22は、図16(b)に示す位置と同様の位置にある。つまり、チップ24の後部202が注湯口26を閉塞する位置で真空バルブ40Vが真空吸引に切り替えられる。そうすると、真空吸引系統40(図2)により、吸引口41を通じて吸引用凹部25が吸引されるとともに、吸引口42~44を通じて前方空間27が吸引される。
次いで、図17(a)に示すように第2吸引口42が吸引用凹部25に連通する。このとき、第1吸引口41および第2吸引口42を通じて吸引用凹部25が吸引されるとともに、第3吸引口43および第4吸引口44を通じて前方空間27が吸引される。
ステップS104で発せられた第1吸引口閉塞指令により、第1吸引口41に対応する第1の選択バルブ413が閉状態に切り替えられる(ステップS105)。このとき、プランジャ22は、図17(b)に示す位置と同様の位置にある。つまり、後部202が第1吸引口41を閉塞する位置で第1の選択バルブ413が閉状態に切り替えられる。これによって、第1吸引口41に対応する吸引経路47を通じた真空吸引が終了する。
第2吸引口閉塞指令により、第2吸引口42に対応する第2の選択バルブ413が閉状態に切り替えられる(ステップS107)。このとき、プランジャ22は、図18(a)に示す位置と同様の位置にある。つまり、後部202が第2吸引口42を閉塞する位置で第2の選択バルブ413が閉状態に切り替えられる。これによって、第2吸引口42に対応する吸引経路47を通じた真空吸引が終了する。
また、後部202により第2吸引口42が閉塞されるとき、第1吸引口41が大気に開放されるが、既に、第1吸引口41に対応する第1の選択バルブ413が閉状態に切り替えられているため、第1吸引口41に対応する吸引経路47を通じて真空タンク46の真空度が低下することは避けられる。
その後、第3吸引口閉塞位置パラメータP3が示す位置へプランジャ22が到達すると、第3吸引口閉塞指令が発せられる(ステップS108)。
第3吸引口閉塞指令により、第3吸引口43に対応する第3の選択バルブ413が閉状態に切り替えられる(ステップS109)。このとき、プランジャ22は、図18(c)に示す位置と同様の位置にある。つまり、後部202が第3吸引口43を閉塞する位置で第3の選択バルブ413が閉状態に切り替えられる。これによって、第3吸引口43に対応する吸引経路47を通じた真空吸引が終了する。
その後、図19(b)および(c)に示すように、第4吸引口44が大気に開放される。
エアブロウを実施するため、真空バルブ40Vをエアブロウに切り替え、吸引口41~44に対応する選択バルブ413を1箇所ずつ順番に、設定した時間だけ開状態とする。
そうすると、加圧空気供給系統40Pにより、吸引口41~44を通じてスリーブ21内に加圧空気を噴出させるエアブロウが行われる。
エアブロウを終えたならば、真空バルブ40Vを中立に切り替える。
真空バルブ40Vや選択バルブ413が適時に動作することで、真空吸引時間を最大限に確保することができ、また、吸引用の開口面積を十分に確保できるので、スリーブ21内およびキャビティ16を効率よく減圧させて、巻込み巣の発生を防ぐことができる。
上述した制御によれば、スリーブ21の壁に形成された複数の吸引口41~44と、吸引用凹部25が形成されたチップ24とを用いてスリーブ21を真空吸引する場合でも、図16~図19に例示したように、バルブ動作指令に対して遅れる真空バルブ40Vや選択バルブ413の一連のバルブ動作が、それぞれ適切な位置で行われる。そのため、外気流入による溶湯の暴れを抑制して吸引経路47の閉塞を防ぐことのできる観点でも、スリーブ21内およびキャビティ16を効率よく減圧させて鋳造品の品質確保に寄与できる。
上記の制御パラメータ指標値取得装置により、既設の制御装置に対して、スリーブ真空制御パラメータの指標値を提供することも可能である。
11 可動金型
11A 製品押出機構
12 可動盤
13 固定金型
14 固定盤
15 マシンベース
16 キャビティ
17 溶湯
18 タイバー
19 吸引部
20 射出装置
21 スリーブ
21A 内周部
22 プランジャ
23 プランジャロッド
24 プランジャチップ
24A 前端
24B 先端
25 吸引用凹部
26 注湯口
26A 前端
26B 後端
27 前方空間
28A,28B シール部材
29 連通空間
30 制御装置
31 制御装置本体
32 モニタ(表示部)
32S 制御パラメータの設定欄
33 入出力インタフェース
40 真空吸引系統
40M 金型側吸引系統
40P 加圧空気供給系統
40S スリーブ側吸引系統
40V 真空バルブ
41~44 吸引口
45 真空ポンプ
46 真空タンク
47 吸引経路
48 合流・分配部
131 ランナー
132 ゲート
201 前部
202 後部
202A 前端
203 小径部
301 ダイカストマシン制御部
302 スリーブ真空制御部
303 制御パラメータ設定部
303A 指標値取得部
303B 制御パラメータ入力取得部
303C 射出条件データ変換部
304 バルブ応答タイムラグ設定部
311 演算部
312 メモリ
313 記憶部
320~324 制御パラメータの設定項目
401 真空フィルタ
402 圧力検知部
403 真空バルブ
411 真空フィルタ
412 圧力検知部
413 選択バルブ
421 圧縮空気源
422 加圧タンク
D1 進退方向
G1,G2 圧力計
P0 真空開始位置パラメータ(制御パラメータ)
P1 第1吸引口閉塞位置パラメータ(制御パラメータ)
P2 第2吸引口閉塞位置パラメータ(制御パラメータ)
P3 第3吸引口閉塞位置パラメータ(制御パラメータ)
P4 第4吸引口閉塞位置パラメータ(制御パラメータ)
Pi0~Pi4 指標値
R1,R2 ガス圧力
TL1 タイムラグ
Vs0~Vs4 バルブ動作位置
Vt0~Vt4 バルブ応答タイムラグ
p0 大気圧
p1,p2 圧力
φ1~φ4 直径
Claims (12)
- 注湯口から溶湯が注入されるスリーブと、前記溶湯をキャビティに向けて射出するプランジャとを備え、前記キャビティと連通した前記スリーブの内側を吸引可能に構成されたダイカストマシンを制御する装置であって、
前記プランジャの進退方向における位置を示し、前記スリーブの内側を吸引する制御に用いられる制御パラメータに値を設定する制御パラメータ設定部と、
前記スリーブの内側の吸引状態を操作するバルブを動作させるバルブ動作指令を前記制御パラメータが示す位置で発するスリーブ真空制御部と、を備え、
前記制御パラメータ設定部は、
前記プランジャのチップおよび前記スリーブの幾何学的諸元から決まる前記進退方向における前記チップの位置であって、前記バルブを動作させる位置としてのバルブ動作位置と、
前記プランジャの位置および速度を含む射出条件と、
前記バルブ動作指令に対する前記バルブの動作のタイムラグと、を用いて、
前記バルブ動作位置から前記タイムラグに相当する時間分、遡った位置に相当する指標値を取得し、前記指標値を前記制御パラメータに設定可能である、
ことを特徴とするダイカストマシンの制御装置。 - 前記指標値および前記バルブ動作位置のうち、少なくとも前記指標値を表示する表示部を備える、
請求項1に記載のダイカストマシンの制御装置。 - 前記制御パラメータ設定部は、
前記指標値と前記バルブ動作位置との間の推奨範囲において入力された値を前記制御パラメータに設定可能である、
請求項1または2に記載のダイカストマシンの制御装置。 - 前記制御パラメータ設定部は、前記射出条件の位置および速度から、位置および時間のデータへと変換した位置・時間データを前記指標値の取得に用いる、
請求項1から3のいずれか一項に記載のダイカストマシンの制御装置。 - 前記制御パラメータ設定部は、前記位置・時間データとして、前記プランジャが前記進退方向の任意の位置へ到達するまでの経過時間を単位変位量毎に得る、
請求項4に記載のダイカストマシンの制御装置。 - 前記射出条件、前記制御パラメータ、および前記位置・時間データのうち、少なくとも前記位置・時間データを記憶する記憶部を備える、
請求項4または5に記載のダイカストマシンの制御装置。 - 前記制御パラメータには、前記スリーブの内側の吸引を開始する際に前記バルブを動作させる真空開始指令が発せられる時の前記プランジャの位置を示す真空開始位置パラメータが含まれ、
前記真空開始位置パラメータに対応する前記指標値の取得に用いられる前記バルブ動作位置は、
前記チップおよび前記スリーブの幾何学的諸元から、前記チップが前記注湯口を閉塞する位置である、
請求項1から6のいずれか一項に記載のダイカストマシンの制御装置。 - 前記スリーブの壁には、前記進退方向における前記注湯口よりも前方に、前記スリーブの内側の吸引に用いられる1以上の吸引口が設けられ、
前記制御パラメータには、前記吸引口に対応する前記バルブを閉状態に切り替える吸引口閉塞指令が発せられる時の前記プランジャの位置を示す吸引口閉塞位置パラメータが含まれ、
前記吸引口閉塞位置パラメータに対応する前記指標値の取得に用いられる前記バルブ動作位置は、
前記チップおよび前記スリーブの幾何学的諸元から、前記チップが前記吸引口を閉塞する位置である、
請求項1から7のいずれか一項に記載のダイカストマシンの制御装置。 - 前記スリーブの内周部に対して径方向の内側に退避し、周方向に連続する吸引用凹部が形成されたチップを含む前記プランジャと、前記進退方向に間隔をおいて2以上の前記吸引口が設けられた前記スリーブと、を備え、かつ、前記2以上の吸引口を用いて、前記チップの前端よりも前方の空間と、前記吸引用凹部の内側とを吸引可能に構成された前記ダイカストマシンの前記スリーブの内側を吸引する制御に適用される、
請求項8に記載のダイカストマシンの制御装置。 - ダイカストマシンの制御パラメータの設定に用いられる指標値を取得する取得装置であって、
前記制御パラメータは、前記ダイカストマシンのプランジャの進退方向における位置を示し、前記ダイカストマシンのスリーブの内側を吸引する制御に用いられ、
前記取得装置は、
前記プランジャのチップおよび前記スリーブの幾何学的諸元から決まる前記進退方向における前記チップの位置であって、前記スリーブの内側の吸引状態を操作するバルブを動作させる位置としてのバルブ動作位置と、
前記プランジャの位置および速度を含む射出条件と、
前記制御パラメータが示す位置で発せられるバルブ動作指令に対する前記バルブの動作のタイムラグと、を用いて、
前記バルブ動作位置から前記タイムラグに相当する時間分、遡った位置に相当する指標値を取得する、
ことを特徴とするダイカストマシンの制御パラメータの指標値取得装置。 - ダイカストマシンの制御パラメータの設定に用いられる指標値を取得する取得方法であって、
前記制御パラメータは、前記ダイカストマシンのプランジャの進退方向における位置を示し、前記ダイカストマシンのスリーブの内側を吸引する制御に用いられ、
前記取得方法は、
前記プランジャのチップおよび前記スリーブの幾何学的諸元から決まる前記進退方向における前記チップの位置であって、前記スリーブの内側の吸引状態を操作するバルブを動作させる位置としてのバルブ動作位置と、
前記プランジャの位置および速度を含む射出条件と、
前記制御パラメータが示す位置で発せられるバルブ動作指令に対する前記バルブの動作のタイムラグと、を用いて、
前記バルブ動作位置から前記タイムラグに相当する時間分、遡った位置に相当する指標値を取得する、
ことを特徴とするダイカストマシンの制御パラメータの指標値取得方法。 - 前記制御パラメータは、
前記スリーブの内周部に対して径方向の内側に退避し、周方向に連続する吸引用凹部が形成されたチップを含む前記プランジャと、前記進退方向に間隔をおいて2以上の吸引口が設けられた前記スリーブと、を備え、かつ、前記2以上の吸引口を用いて、前記チップの前端よりも前方の空間と、前記吸引用凹部の内側とを吸引可能に構成された前記ダイカストマシンの前記スリーブの内側を吸引する際の制御に用いられる、
請求項11に記載のダイカストマシンの制御パラメータの指標値取得方法。
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