JP2001261595A - 光学活性1,3−プロパンジオール類の製造方法 - Google Patents

光学活性1,3−プロパンジオール類の製造方法

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JP2001261595A JP2000070712A JP2000070712A JP2001261595A JP 2001261595 A JP2001261595 A JP 2001261595A JP 2000070712 A JP2000070712 A JP 2000070712A JP 2000070712 A JP2000070712 A JP 2000070712A JP 2001261595 A JP2001261595 A JP 2001261595A
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Toru Yamada
徹 山田
Taketo Ikeno
健人 池野
Takenori Otsuka
雄紀 大塚
Takuji Nagata
卓司 永田
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Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】医薬品、農薬等の生理活性化合物の光学活性中
間体、または液晶等の機能性材料、ファインケミカル等
における光学活性中間体を製造する際に有用なキラル補
助基として、また不斉配位子の不斉源として有用な光学
活性1, 3−プロパンジオール類の新規な製造方法の提
供。 【解決手段】1, 3−ジアリール−1, 3−プロパンジ
オン類を、光学活性金属化合物と、アルコール化合物お
よび/またはカルボン酸との存在下、ヒドリド試薬と反
応させる工程を含む、光学活性1, 3−プロパンジオー
ル類の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学活性1, 3−
プロパンジオール類の製造方法に関し、特に医薬品、農
薬などの生理活性化合物の光学活性中間体、または液晶
等の機能性材料、ファインケミカル等における光学活性
中間体を製造する際に有用なキラル補助基として、また
不斉配位子の不斉源として有用な光学活性1, 3−プロ
パンジオール類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】これまで、光学活性1, 2−エタンジオ
ールやその誘導体である1, 2−エチレンジアミンは、
光学活性ビナフトールと同様に、キラル補助基や不斉配
位子の不斉源として盛んに利用されてきた。不斉源とし
て利用されるための要件としては、その性能が優れてい
ることはもちろんであるが、その大量合成が容易で、安
価に供給可能である点も重要であり、上記の化合物はこ
れらの要件を兼ね備えていると言える。一方、光学活性
1, 3−プロパンジオールとその誘導体に関しては、不
斉源としての重要性は認識されつつあるものの、有効な
合成法がほとんど開発されていないことが、不斉源とし
ての応用を阻害する原因のひとつに挙げられる。
【0003】従来、光学活性1, 3−ジアリール−1,
3−プロパンジオールの合成法としては、直接的な方法
として、均一系触媒を用いる1, 3−ジケトンの水素添
加法(佐用、野依ら、特開昭63−316742号公
報;佐分利ら、J. Chem. Soc.,Chem. Commun., 1988, 8
7)や、不均一系触媒を用いる1, 3−ジケトンの水素
添加法(田井ら、Bull. Chem. Soc. Jpn., 53, 3367 (1
980))が報告されている。例えば、Knochei らによる
と、光学活性フェロセンで修飾したホスフィン誘導体を
配位子とするルテニウム錯体を触媒として不斉水素化す
ることにより、ジベンゾイルメタンから光学活性1,3
−ジフェニル−1,3−プロパンジオールが不斉収率9
8〜99%ee、dl/meso 比=99/1で合成できる(An
gew. Chem.,Int. Ed. Engl., 38, 3212 (1999))。ま
た、カルコン由来のアリルアルコールをSharpless のエ
ポキシ化により速度論的光学分割した後、エポキシドを
ヒドリドで開環して誘導する方法(Roosら、Synlett,
1996, 1189;Tetrahedron:Asymmetry, 10, 991 (1999)
)が知られている。あるいは、微生物を用いる方法と
して、対応するラセミ体のジエステルの加水分解による
光学分割法(山本ら、J. Chem. Soc., Chem. Commun.
1987, 334 )が報告されている。しかし、これらの方法
は、1)高圧の水素雰囲気下で反応を行う必要があるた
め、対応した設備が必要になる。2)煩雑な操作が求め
られる。また、3)収率および選択性の面でも不十分で
ある等の問題点が指摘される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、医薬品、農
薬などの生理活性化合物の光学活性中間体、または液晶
等の機能性材料、ファインケミカル等における光学活性
中間体を製造する際に有用なキラル補助基として、また
不斉配位子の不斉源として有用な光学活性1, 3−プロ
パンジオール類を、取り扱いが容易なヒドリド還元剤を
用い、しかも触媒量の不斉源により高い触媒効率(ター
ンオーバー数)で製造することができる新規な方法を提
供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するために、還元剤として安全でしかも取り扱い
が容易なヒドリド還元剤を用いて、1, 3−ジケトンか
ら光学活性1, 3−プロパンジオールを合成する方法に
ついて鋭意検討を重ねてきた。その結果、光学活性金属
化合物を触媒とする反応により前記課題を解決できるこ
とを見出し、本発明に至った。
【0006】すなわち、本発明は、以下の発明を包含す
る。 (1) 1, 3−ジアリール−1, 3−プロパンジオン
類を、光学活性金属化合物の存在下、ヒドリド試薬と反
応させる工程を含む、光学活性1, 3−プロパンジオー
ルの製造方法。 (2) 1, 3−ジアリール−1, 3−プロパンジオン
類とヒドリド試薬との反応を、光学活性金属化合物およ
びアルコール化合物の存在下に行う前記(1)に記載の
方法。 (3) 1, 3−ジアリール−1, 3−プロパンジオン
類とヒドリド試薬との反応を、光学活性金属化合物およ
びカルボン酸化合物の存在下に行う前記(1)に記載の
方法。 (4) 1, 3−ジアリール−1, 3−プロパンジオン
類とヒドリド試薬との反応を、光学活性金属化合物、ア
ルコール化合物およびカルボン酸化合物の存在下に行う
前記(1)に記載の方法。 (5) 前記光学活性金属化合物が、光学活性コバルト
(II)錯体である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の
方法。 (6) 前記光学活性コバルト(II)錯体が、次式
(a):
【0007】
【化2】
【0008】(式中、R1 とR2 は異なる基であり、そ
れぞれ、水素原子、直鎖もしくは分岐状のアルキル基ま
たはアリール基であり、前記アルキル基およびアリール
基は置換基を有していてもよく、2個のR1 同士または
2個のR2 同士は、相互に結合して環を形成していても
よく、R3 、R4 およびR5 は、同一でも異なっていて
もよく、水素原子、直鎖もしくは分岐状のアルキル基、
直鎖もしくは分岐状のアルケニル基、アリール基、アシ
ル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボ
ニル基またはアラルキルオキシカルボニル基であり、前
記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基、
アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基
およびアラルキルオキシカルボニル基は置換基を有して
いてもよく、また、R4 およびR5 は、相互に連結し
て、R4 およびR5 がそれぞれ結合している炭素原子と
共同して環を形成してもよい。)で表される化合物であ
る前記(5)に記載の方法。 (7) 前記光学活性金属化合物が、光学活性コバルト
(III) 錯体である前記(1)〜(4)のいずれかに記載
の方法。 (8) 前記ヒドリド試薬が、金属水素化物である前記
(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の光学活性1, 3−
プロパンジオール類の製造方法(以下、「本発明の方
法」という。)について詳細に説明する。本発明の方法
において、出発原料として用いられる1, 3−ジアリー
ル−1,3−プロパンジオン類は、適切な置換基を有す
るプロキラルな化合物であれば、特に制限されず、目的
の光学活性1, 3−ジアリール−1, 3−ジオール類に
対応して適宜選択することができる。
【0010】本発明の方法は、特に、次式(b):
【0011】
【化3】
【0012】で表されるジケトン類を出発原料として、
対応する光学活性1, 3−プロパンジオール類を製造す
る方法として好適である。
【0013】前記一般式(b)において、R6 およびR
7 は同一でも異なっていてもよく、アリール基であり、
置換基を有していてもよい。このR6 またはR7 のアリ
ール基の代表例として、フェニル基、p−メトキシフェ
ニル基、p−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル
基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等の芳香族置換
基、また、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリ
ル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリ
ル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル
基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラリジニル
基、キノリル基、イソキノリル基等の複素環式芳香族置
換基などが挙げられる。
【0014】このR6 およびR7 が有する置換基の代表
例としては、水素原子、ハロゲン原子、直鎖または分岐
状のアルキル基、シクロアルキル基もしくはアラルキル
基、アリール基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、ア
ルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、
アルコキシカルボニル基、アルコキシチオカルボニル
基、水酸基、アミノ基、アミンオキシド基、ヒドラジン
基(−NHNH−R;R=水素、アルキル基、アリール
基、アラルキル基等)、ヒドラゾン基(−C(=N−N
H−R−R’;R,R’=水素、アルキル基、アリール
基、アラルキル基等)、アシルヒドラゾン基(−C(=
N−NH−CO−R)−R’;R,R’=水素、アルキ
ル基、アリール基、アラルキル基等)、スルフィド基、
スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、ホスフ
ィニル基、ホスホラス基、またはシリル基などが挙げら
れる。
【0015】また、R8 およびR9 は同一でも異なって
いてもよく、水素原子、ハロゲン原子、直鎖もしくは分
岐状のアルキル基、シクロアルキル基、またはアラルキ
ル基であり、置換基を有していてもよい。このR8 およ
びR9 の直鎖または分岐状のアルキル基の代表例とし
て、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル
基等が挙げられ、シクロアルキル基の代表例として、シ
クロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基
等が挙げられる。アラルキル基の代表例としてベンジル
基を挙げることができる。また、R8 とR9 は、−(C
2 4 −、−(CH2 5 −、−CH2 CH2 OCH
2 CH2 −等の基を介して相互に結合して3員環、4員
環、5員環、6員環等の環構造を形成していてもよい。
【0016】これらの中でも、本発明の方法は、出発物
質である1, 3−ジアリール−1,3−プロパンジオン
類として、下記式(b−1) で表されるジベンゾイルメ
タン類を代表例とするジケトンを使用して、対応する光
学活性ジオール類を製造する場合に特に有効である。
【0017】
【化4】
【0018】式(b−1)において、R10は水素原子、
ハロゲン原子、直鎖または分岐状のアルキル基、シクロ
アルキル基もしくはアラルキル基、アリール基、ニトロ
基、ニトロソ基、シアノ基、アルコキシ基、アラルキル
オキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル
基、アルコキシチオカルボニル基、水酸基、アミノ基、
アミンオキシド基、ヒドラジン基(−NHNH−R;R
=水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基
等)、ヒドラゾン基(−C(=N−NH−R)−R' ;
R、R'=水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキ
ル基等)、アシルヒドラゾン基(−C(=N−NH−C
O−R)−R' ;R、R'=水素原子、アルキル基、アリ
ール基、アラルキル基等)、スルフィド基、スルフィニ
ル基、スルホニル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、
ホスホラス基、またはシリル基であり、置換基を有して
いてもよい。
【0019】ハロゲン原子の代表例としては、フッ素、
塩素、臭素等が挙げられる。直鎖または分岐状のアルキ
ル基の代表例としては、メチル基、エチル基、イソプロ
ピル基、tert−ブチル基、sec −ブチル基、n−ブチル
基等が挙げられ、シクロアルキル基の代表例としては、
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル
基を挙げることができる。
【0020】アラルキル基の代表例としてはベンジル基
が挙げられる。アリール基の代表例としては、フェニル
基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、
p−フルオロフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチ
ル基、また、フラン環、チオフェン環、ピリジン環等の
置換または非置換の芳香族複素環基などが挙げられる。
【0021】アルコキシ基の代表例としては、メトキシ
基、エトキシ基等が、アラルキルオキシ基の代表例とし
てはフェノキシ基等が、アラルキルオキシ基の代表例と
してはベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0022】アルコキシカルボニル基の代表例として
は、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n
−ブトキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニ
ル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられ、ま
た、アルコキシチオカルボニル基の代表例としては、メ
トキシチオカルボニル基、エトキシチオカルボニル基、
n−ブトキシチオカルボニル基、n−オクチルオキシチ
オカルボニル基、ベンジルオキシチオカルボニル基等が
挙げられる。
【0023】アミノ基の代表例としては、ジメチルアミ
ノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられ、アミンオキシド
基の代表例としては、ジメチルアミノオキシド基、ジエ
チルアミノオキシド基等が挙げられ、ヒドラジン基の代
表例としては、メチルヒドラジン基、エチルヒドラジン
基等が挙げられ、ヒドラゾン基の代表例としては、メチ
ルヒドラゾン基、エチルヒドラゾン基等が挙げられ、ま
た、アシルヒドラゾン基の代表例としては、アセチルヒ
ドラゾン基、プロピオニルヒドラゾン基等が挙げられ
る。
【0024】スルフィド基の代表例としては、メチルス
ルフィド基、ベンジルスルフィド基、フェニルスルフィ
ド基等が挙げられ、スルフィニル基の代表例としては、
メチルスルフィニル基、ベンジルスルフィニル基等が挙
げられ、スルフォニル基の代表例としては、メチルスル
フォニル基、ベンジルスルフォニル基、フェニルスルフ
ォニル基等が挙げられる。
【0025】ホスフィノ基の代表例としては、ジメチル
ホスフィノ基、ジベンジルホスフィノ基、ジフェニルホ
スフィノ基等が挙げられ、ホスフィニル基の代表例とし
ては、ジメチルホスフィニル基、ジベンジルホスフィニ
ル基、ジフェニルホスフィニル基等が挙げられ、また、
ホスフォラス基の代表例としては、ジメチルホスフォラ
ス基、ジベンジルホスフォラス基、ジフェニルホスフォ
ラス基等が挙げられる。
【0026】シリル基の代表例としては、トリメチルシ
リル基、tert −ブチルジメチルシリル基、tert −ブ
チルジフェニルシリル基等が挙げられる。
【0027】mは1〜5の整数であり、mが2〜4の整
数であるとき、複数のR10は、同一でも異なっていても
よい。また、2個のR10同士は相互に結合してそれぞれ
結合している炭素原子と共同して環を形成していてもよ
い。例えば、ベンゼン環の隣接する2個の炭素原子に結
合する2個のR10同士が相互に連結して、−(CH2
4 −、または−CH=CH−CH=CH−となる場合、
それぞれシクロヘキサン環、またはベンゼン環が形成さ
れ、このように形成されたシクロヘキサン環、ベンゼン
環等の環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピ
ル基、イソプロピル基、sec −ブチル基、tert −ブチ
ル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリ
ール基から選ばれる1または2以上の置換基で置換され
ていてもよく、また、前記ベンゼン環は縮合し、ナフタ
レン環等の縮合多環を形成してもよい。
【0028】本発明の方法において、出発原料として用
いられる1, 3−ジアリール−1,3−プロパンジオン
類の代表例として、ジベンゾイルメタン、1, 3−ビス
(p−トリル)−プロパン−1, 3−ジオン、1, 3−
ビス(p−tert −ブチルフェニル)−プロパン−1,
3−ジオン、1, 3−ビス(4−メトキシフェニル)−
1, 3−プロパンジオン、1, 3−ビス(3, 4−ジメ
トキシフェニル)−1, 3−プロパンジオン、1, 3−
ビス(4−フルオロフェニル)−1, 3−プロパンジオ
ン、1, 3−ビス(2−フルオロフェニル)−1, 3−
プロパンジオン、1, 3−ビス(2−ナフチル)−1,
3−プロパンジオン、2−フルオロ−1, 3−ジフェニ
ル−1, 3−プロパンジオン、2, 2−ジフルオロ−
1, 3−ジフェニル−1, 3−プロパンジオン、1−
(4−クロロフェニル)−3−フェニル−1, 3−プロ
パンジオン、および(1−ベンゾイル−2−フェニルシ
クロプロピル)(フェニル)メタノン等が挙げられる。
【0029】本発明の方法は、出発物質である1, 3−
ジアリール−1, 3−プロパンジオン類として、前記一
般式(b)、特に、前記一般式(b−1) で表される
1, 3−ジアリール−1, 3−プロパンジオン類を使用
して、対応する下記式(c)、特に(c−1):
【0030】
【化5】
【0031】(式中、R6 、R7 、R8 、R9 およびR
10は、前記一般式(b)または(b−1)について定義
したとおりであり、*を付した炭素原子の絶対立体配置
はRまたはSを意味する。)で表される光学活性1, 3
−プロパンジオール類を得る方法として有用である。
【0032】この一般式(c−1)で表される光学活性
1, 3−プロパンジオール類として、1, 3−ジフェニ
ル−1, 3−プロパンジオール、1, 3−ビス(p−ト
リル)−プロパン−1, 3−ジオール、1, 3−ビス
(p−tert −ブチルフェニル)−プロパン−1, 3−
ジオール、1, 3−ビス(4−メトキシフェニル)−
1, 3−プロパンジオール、1, 3−ビス(3, 4−ジ
メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオール、1,
3−ビス(4−フルオロフェニル)−1, 3−プロパン
ジオール、1, 3−ビス(2−フルオロフェニル)−
1, 3−プロパンジオール、1, 3−ビス(2−ナフチ
ル)−1, 3−プロパンジオール、2−フルオロ−1,
3−ジフェニル−1, 3−プロパンジオール、2, 2−
ジフルオロ−1, 3−ジフェニル−1, 3−プロパンジ
オール、および1−(4−クロロフェニル)−3−フェ
ニル−1, 3−プロパンジオールが挙げられる。
【0033】本発明の方法において、触媒として用いら
れる光学活性金属化合物は、特に限定されず、例えば、
チタン、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、
ニッケル、ルテニウム、ロジウム、ハフニウムおよびジ
ルコニウム等から選ばれる少なくとも1種の遷移金属の
錯体を代表的なものとして挙げることができる。これら
のなかで、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、コバル
ト、ニッケル、およびルテニウムから選ばれる少なくと
も1種の遷移金属の錯体として、例えば、光学活性チタ
ン(IV) 錯体、光学活性鉄(III)錯体、光学活性ルテニ
ウム(III) 錯体、光学活性オキソバナジウム(IV)錯体、
光学活性マンガン(III) 錯体、光学活性コバルト(II)錯
体、光学活性コバルト(III) 錯体等が挙げられる。
【0034】本発明の方法において、特に、次式(a)
で表される光学活性コバルト(II)錯体を用いると、高い
光学収率で光学活性ジオールが収率良く得られるので好
ましい。
【0035】
【化6】
【0036】この光学活性コバルト(II)錯体を表す前記
一般式(a)において、R1 とR2は異なる基であり、
それぞれ、水素原子、直鎖または分岐状のアルキル基も
しくはアリール基であり、置換基を有していてもよい。
この直鎖または分岐状のアルキル基としては、メチル
基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、sec
−ブチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が代表的
である。アリール基としては、例えば、フェニル基、p
−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、p−フ
ルオロフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等
の置換または非置換の芳香族炭化水素基;フリル基、チ
エニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、
イソオキサゾル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、
イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダ
ジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル
基等の置換または非置換の芳香族複素環基が代表的であ
る。
【0037】また、2個のR1 同士または2個のR2
士は、相互に結合して環を形成していてもよく、例え
ば、−(CH2 ) 4−等の基を介して相互に結合して6員環
等の環を形成していてもよい。
【0038】さらに、R3 、R4 およびR5 は、同一で
も異なっていてもよく、水素原子、直鎖もしくは分岐状
のアルキル基、直鎖もしくは分岐状のアルケニル基、ア
リール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリー
ルオキシカルボニル基、またはアラルキルオキシカルボ
ニル基であり、前記アルキル基、アルケニル基、アリー
ル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオ
キシカルボニル基、およびアラルキルオキシカルボニル
基は置換基を有していてもよい。
【0039】直鎖または分岐状のアルキル基としては、
メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert −ブチル
基、sec −ブチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等
が代表的である。アリール基としては、フェニル基、p
−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、p−フ
ルオロフェニル基、3, 5−ジメチルフェニル基、3,
5−ジメトキシフェニル基、2, 4, 6−トリメチルフ
ェニル基、ナフチル基等の置換または非置換の芳香族炭
化水素基;フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリ
ル基、オキサゾリル基、イソオキサゾル基、チアゾリル
基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル
基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、
キノリル基、イソキノリル基等の置換または非置換の芳
香族複素環基が代表的である。
【0040】アシル基としては、アセチル基、トリフル
オロアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブ
チリル基、ピバロイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイ
ル基、3, 5−ジメチルベンゾイル基、2, 4, 6−ト
リメチルベンゾイル基、2,6−ジメトキシベンゾイル
基、2, 4, 6−トリメトキシベンゾイル基、2, 6−
ジイソプロポキシベンゾイル基、1−ナフチルカルボニ
ル基、2−ナフチルカルボニル基、9−アントリルカル
ボニル基等の芳香族アシル基等が代表的であり、アルコ
キシカルボニル基の代表例としては、メトキシカルボニ
ル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル
基、n−オクチルオキシカルボニル基、シクロペンチル
オキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル
基、シクロオクチルオキシカルボニル基、tert−ブトキ
シカルボニル基等が挙げられ、アリールオキシカルボニ
ル基の代表例としては、フェノキシカルボニル基等が挙
げられ、アラルキルオキシカルボニル基の代表例として
は、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカ
ルボニル基等が挙げられる。
【0041】また、R4 およびR5 は、相互に連結し
て、R4 およびR5 がそれぞれ結合している炭素原子と
共同して環を形成してもよい。例えば、R4 およびR5
が相互に連結して、−(CH2 ) 4 −または−CH=C
H−CH=CH−となる場合、それぞれシクロヘキサン
環またはベンゼン環が形成され、このように形成された
シクロヘキサン環、ベンゼン環等の環は、例えば、メチ
ル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、se
c −ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基;フェニ
ル基、ナフチル基等のアリール基から選ばれる1または
2以上の置換基で置換されていてもよく、また、前記ベ
ンゼン環は縮合し、ナフタレン環等の縮合多環を形成し
てもよい。
【0042】前記式(a)で表される光学活性コバルト
(II)錯体の具体例として、下記式(a−1)〜(a−2
3)で表されるもの等が挙げられる。
【0043】
【化7】
【0044】
【化8】
【0045】
【化9】
【0046】
【化10】
【0047】
【化11】
【0048】
【化12】
【0049】また、本発明の方法において、前記一般式
(a)で表される光学活性コバルト(II)錯体から誘導し
て得られる、次式(d):
【0050】
【化13】
【0051】(式中、R1 、R2 、R3 、R4 およびR
5 は前記一般式(a)について定義したとおりであり、
- は、塩を形成し得る陰イオン対を表す。)で表され
る光学活性コバルト(III) 錯体も、本発明の方法で用い
る触媒として有効である。
【0052】この一般式(d)において、X- として
は、F- 、Cl- 、Br- 、 I- 、OH- 、CH3 CO
2 - 、p−CH3 6 4 SO3 - 、CF3 SO3 -
PF6 - 、BF4 - 、BPh4 - 、SbF6 - 、ClO
4 - 等が代表的である。
【0053】前記式(d)で表される光学活性コバルト
(III) 錯体の具体例として、下記式(d−1)〜(d−
3)で表されるもの等が挙げられる。
【0054】
【化14】
【0055】前記一般式(a)で表される光学活性コバ
ルト(II)錯体、および一般式(d)で表される光学活性
コバルト(III) 錯体は、公知の方法に従って調製するこ
とができる。例えば、Y. Nishidaら、Inorg. Chim. Act
a, 38, 213 (1980); L. Claisen, Ann. Chem., 297, 5
7 (1897); E. G. Jager,Z. Chem., 8, 30, 392, および
475 (1968) に報告された方法に従って調製することが
でき、特開平9−151143号公報にも開示されてい
る。
【0056】本発明の方法において、触媒として、前記
一般式(a)で表される光学活性コバルト(II)錯体を用
いる場合、高い光学収率および高い化学収率で光学活性
ジオール化合物を得るためには、1, 3−ジアリール−
1, 3−プロパンジオン類に対して、0. 001〜50
モル%の割合、好ましくは0. 01〜50モル%の割
合、さらに好ましくは、0. 1〜20モル%の割合で使
用するのが望ましい。また、触媒として、前記一般式
(a)で表される光学活性コバルト(II)錯体の代わり
に、前記一般式(d)で表される光学活性コバルト(II
I) を用いる場合、高い光学収率および高い化学収率で
光学活性ジオール化合物を得るためには、1, 3−ジア
リール−1, 3−プロパンジオン類に対して、0.00
1〜50モル%の割合、好ましくは0.01〜50モル
%の割合、さらに好ましくは0.1〜20モル%の割合
で使用するのが望ましい。
【0057】本発明の方法は、1, 3−ジアリール−
1, 3−プロパンジオン類を、前記式(a)で表される
光学活性コバルト(II)錯体を代表例とする光学活性金属
化合物を触媒とし、ヒドリド試薬と反応させる方法であ
るが、さらに、アルコール化合物および/またはカルボ
ン酸化合物の共存下に反応を行うことが好ましい。この
アルコール化合物の代表例として、次式(e)で表され
る化合物が挙げられる。
【0058】
【化15】
【0059】式(e)において、R11、R12およびR13
は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、直鎖また
は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール
基、もしくはヘテロ原子を含む直鎖または分岐状のエー
テル基であり、水酸基、アミノ基、エステル基またはカ
ルポニル基等の置換基を有していてもよい。
【0060】式(e)における直鎖または分岐状のアル
キル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル
基、イソプロピル基、tert−ブチル基、sec −ブチル
基、n−ブチル基等が代表的である。シクロアルキル基
の代表例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル
基、シクロヘプチル基等が挙げられる。アリール基とし
ては、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロ
ロフェニル基、p−フルオロフェニル基、α−ナフチル
基、β−ナフチル基等が代表的である。ヘテロ原子を含
む直鎖または分岐状のエーテル基としては、メトキシエ
チル基、メトキシプロピル基、2−フリル基、3−フリ
ル基、2−テトラヒドロピラニル基等が代表的である。
【0061】また、R12およびR13は、相互に結合して
環を形成していてもよく、例えば、−(CH2 4 −、
−(CH2 5 −等の基を介して相互に結合して5員
環、6員環等の環を形成していてもよい。
【0062】このアルコール化合物の具体例として、メ
タノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノー
ル、ブタノール、sec −ブタノール、tert−ブタノー
ル、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロ
ヘプタノール等の脂肪族または脂環式アルコール、フェ
ノール、レゾルシン等の芳香族アルコール、エチレング
リコール、プロピレングリコール等のポリアルコール、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリ
コールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ
メチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、
テトラヒドロピレン−2−メタノール、フルフリルアル
コール、テトラヒドロ−3−フラン−メタノール等の鎖
状または環状エーテルアルコール、2−(メチルアミ
ノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、2
−ピリジンメタノール、2−ピペリジンメタノール等の
鎖状または環状アミノアルコールなどが挙げられる。こ
れらの中でも、高い光学収率および高い化学収率で光学
活性ジオール化合物が得られる点で、脂肪族アルコール
および/またはエーテルアルコールが好ましい。
【0063】本発明の方法において、前記一般式(e)
で表されるアルコール化合物は、1種単独でも2種以上
を組み合わせても用いられる。2種以上の組み合わせの
具体例としては、エタノール/エチレングリコール、エ
タノール/プロピレングリコール、エタノール/エチレ
ングリコールモノメチルエーテル、エタノール/プロピ
レングリコールモノメチルエーテル、エタノール/テト
ラヒドロフルフリルアルコール、エタノール/テトラヒ
ドロピレン−2−メタノール、エタノール/フルフリル
アルコール、エタノール/テトラヒドロ−3−フランメ
タノール、エタノール/5−メチルテトラヒドロフラン
−2−メタノール等の組合せ、および上記の組合せにお
けるエタノールの代わりに、メタノール、プロパノー
ル、ブタノール、2−プロパノール、2、2−ジメチル
エタノール、2、2、2−トリフルオロエタノール、シ
クロペンタノール、シクロヘキサノール等を、それぞれ
用いた組合せが代表的である。
【0064】また、カルボン酸化合物の代表例として、
下記式(f):
【0065】
【化16】
【0066】で表される化合物が挙げられる。
【0067】式(f)において、R14は水素原子、直鎖
または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリー
ル基、もしくはヘテロ原子を含む直鎖または分岐状のエ
ーテル基であり、水酸基、アミノ基、エステル基または
カルボニル基等の置換基を有していてもよい。
【0068】式(f)における直鎖または分岐状のアル
キル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル
基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec −ブチル基、
tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、2, 2, 2−
トリフルオロエチル基等が代表的である。シクロアルキ
ル基の代表例としては、シクロペンチル基、シクロヘキ
シル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。アリール基
としては、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−
クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、α−ナフ
チル基、β−ナフチル基等が代表的である。ヘテロ原子
を含む直鎖または分岐状のエーテル基としては、メトキ
シエチル基、メトキシプロピル基、2−フリル基、3−
フリル基、2−テトラヒドロピラニル基等が代表的であ
る。
【0069】このカルボン酸化合物の具体例として、ギ
酸、酢酸、プロピオン酸、イソブタン酸、トリフルオロ
酢酸、ペンタフルオロエタンカルボン酸、マロン酸等の
脂肪族または脂環式カルボン酸およびジカルボン酸、ま
た、安息香酸、フェニル酢酸、トリフェニル酢酸、メト
キシフェニル酢酸、ピラン−2−カルボン酸、2−チオ
フェンカルボン酸等の芳香族カルボン酸およびジカルボ
ン酸、また、メトキシ酢酸等の鎖状または環状カルボン
酸およびジカルボン酸などが挙げられる。これらの中で
も、高い光学収率および高い化学収率で光学活性ジオー
ル化合物が得られる点で、脂肪族カルボンおよび芳香族
カルボン酸が好ましい。
【0070】本発明の方法において、前記一般式(f)
で表されるカルボン酸化合物は、1種単独でも2種以上
を組み合わせても用いられる。
【0071】本発明の方法において、前記一般式(e)
および/または前記一般式(f)で表されるアルコール
化合物および/またはカルボン酸を用いる場合、これら
化合物の使用量は、高い光学収率および高い化学収率で
光学活性ジオール類を得るためには、1, 3−ジアリー
ル−1, 3−プロパンジオン類1モルに対して、0.0
1〜100モルの割合で使用するのが好ましく、さらに
2〜60モルの割合で使用するのが好ましい。
【0072】本発明の方法において、ヒドリド試薬とし
て用いられる金属水素化物は、特に限定されず、例え
ば、水素化アルミニウムリチウム、トリ(tert−ブトキ
シ)水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素リチウ
ム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、
水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素アンモニウム、
水素化シアノホウ素ナトリウム等が代表的である。
【0073】これらのヒドリド試薬は、塩化チタン、塩
化ルビジウム、塩化セリウムなどの金属塩化物、ならび
にテトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルア
ンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩と共存さ
せ金属交換を伴うヒドリド試薬でもよい。
【0074】また、トリ(メトキシ)水素化ホウ素ナト
リウム、トリ(エトキシ)水素化ホウ素ナトリウム、ト
リ(イソプロポキシ)水素化ホウ素ナトリウム、トリ
(tert−ブトキシ)水素化ホウ素ナトリウム、トリ(イ
ソプロポキシ)水素化ホウ素カリウム、トリ(tert−ブ
トキシ)水素化ホウ素カリウム等のトリアルコキシ金属
水素錯体を用いる場合は、前記一般式(e)で表される
アルコール化合物を用いなくても高い化学収率および高
い光学収率で光学活性ジオール類を得ることができる。
【0075】トリ(酢酸)水素化ホウ素ナトリウム、ト
リ(エチルカルボン酸)水素化ホウ素ナトリウム、トリ
(テトラヒドロ−2−フランカルボン酸)水素化ホウ素
ナトリウム、等のトリカルボン酸金属水素錯体を用いる
場合は、前記一般式(f)で表されるカルボン酸化合物
を用いなくても高い化学収率および高い光学収率で光学
活性ジオール類を得ることができる。
【0076】また、本発明の方法において、前記反応
は、好ましくは液相中で行われる。このとき、必要に応
じて、溶媒を使用することができる。用いられる溶媒と
しては、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶
媒、脂環式炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル
系溶媒、およびハロゲン系溶媒が有効である。特に、ジ
クロロメタン、クロロホルム、フロン113等のハロゲ
ン系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、あるい
は酢酸エチル等のエステル系溶媒が好ましい。
【0077】溶媒を用いる場合、溶媒の使用量は、通
常、1, 3−ジアリール−1, 3−プロパンジオン類1
ミリモルに対して、1mL〜1L程度の割合であり、5
〜100mL程度の使用量が、高い光学収率および高い
化学収率で光学活性ジオール類を得ることができるた
め、有効である。
【0078】反応温度は、通常、−100 〜50℃の範囲が
好ましく、さらに好ましくは−80〜30℃の範囲、特に好
ましくは−60〜25℃である。また、反応圧力は、溶媒が
気化しないかぎり、常圧で実施可能である。
【0079】また、反応時間は、通常、1 分〜10日程
度であり、逐次、反応混合物のサンプルを採取して、薄
層クロマトグラフィー(TLC )、ガスクロマトグラフィ
ー(GC)等により分析して、反応の進行状況を確認する
ことができる。
【0080】本発明の方法において、以上の反応によっ
て得られる反応混合物から、目的の光学活性ジオール化
合物の回収および精製は、公知の方法、例えば、蒸留、
吸着による方法、抽出、再結晶等の方法を組み合わせて
行うことができる。
【0081】また、本発明の方法により得られる光学活
性ジオール化合物は、公知の方法に従って、光学純度を
損なうことなく対応する光学活性ジアミン化合物へと変
換できる。例えば、P. Salavadori ら(Synthesis, 19
90, 1023)により報告された方法に従って、定量的に光
学活性1, 3−ジアミンを得ることができる。ここで得
られる光学活性ジアミン化合物もまた不斉配位子の不斉
源として有用な化合物である。
【0082】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明は、これらの実施例に限定されるものでは
ない。
【0083】実施例 1 水素化ホウ素ナトリウム 28 mg (0.75 mmol)のクロロホ
ルム懸濁液(22 ml) に、窒素雰囲気下、−20℃でエタノ
ール 0.13 ml (2.25 mmol)、ついでテトラヒドロフルフ
リルアルコール 1.0 ml (10.5 mmol) を滴下し、15分間
攪拌して修飾ボロヒドリド還元剤溶液を調製した。
【0084】この還元剤溶液に対し、前記式(a−4)
で表される光学活性コバルト(II)錯体 1.4 mg (0.002
5 mmol) のクロロホルム溶液(4 ml)、さらにジベンゾイ
ルメタン 56 mg (0.25 mmol)のクロロホルム溶液(4 m
l)を滴下し、−20℃で40時間反応させた。リン酸緩衝
液を加えて反応を停止し、生成物をジクロロメタンで抽
出した。
【0085】有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナ
トリウムで乾燥した。溶液をろ過し、溶媒をロータリー
エバポレーターで減圧留去した。得られた混合物をシリ
カゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製したとこ
ろ、1, 3−ジフェニル−1,3−プロパンジオールを
定量的に得た(57 mg) 。
【0086】この生成物の光学純度を高速液体クロマト
グラフィー( 光学活性カラム :ダイセル化学工業社製、
CHIRALPAK AD ; Ethanol 1.2 % in Hexane, 流速1.0
ml/min, 保持時間 32.4 min, 52.9 min)で分析したとこ
ろ、98%ee であった。dl/meso 比は、生成物をジクロロ
メタン中、無水酢酸、ピリジンと反応させてアセチル化
した誘導体の 1HNMRの積分値から、84/16 であるこ
とがわかった。
【0087】実施例 2 水素化ホウ素ナトリウム 5.06 g (134 mmol)のクロロホ
ルム懸濁液(350 ml)にエタノール 15.5 ml (268 mmol)
、ついでテトラヒドロフルフリルアルコール 90.7 ml
(936 mmol) を滴下し、窒素雰囲気下、−20℃で15分間
攪拌して修飾ボロヒドリド還元剤溶液を調製した。
【0088】続いて、この還元剤溶液に前記式(a−1
3)で表される光学活性コバルト(II)錯体 500 mg
(0.64 mmol) のクロロホルム溶液(25 ml) 、さらにジベ
ンゾイルメタン 10.0 g (44.6 mmol) のクロロホルム溶
液(25 ml )を滴下し、−20℃で3日間撹拌した。リン
酸緩衝液を加えて反応を停止し、生成物をジクロロメタ
ンで抽出した。
【0089】有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナ
トリウムで乾燥した後、溶媒をロータリーエバポレータ
ーで減圧留去した。さらに減圧下でテトラヒドロフルフ
リルアルコールを留去した。粗生成物を酢酸エチル/ヘ
キサンで洗浄した後に、酢酸エチルから再結晶させて光
学的に純粋な1, 3−ジフェニル−1, 3−プロパンジ
オール 6.15 g (収率 60%)を得た。
【0090】実施例 3 水素化ホウ素ナトリウム 56 mg (1.5 mmol) のクロロホ
ルム懸濁液(15 ml) に、窒素雰囲気下、−20℃でエタノ
ール 0.26 ml (4.5 mmol) 、ついでテトラヒドロフルフ
リルアルコール 2.0 ml (21 mmol) を滴下し、15分間攪
拌して修飾ボロヒドリド還元剤溶液を調製した。
【0091】この還元剤溶液に、前記式(a−11)で
表される光学活性コバルト(II)錯体 3.5 mg (0.0050
mmol) のクロロホルム溶液(2.5 ml)、さらにジベンゾイ
ルメタン 112 mg (0.50 mmol) のクロロホルム溶液(2.
5 ml)を滴下し、−20℃で40時間反応させた。リン酸緩
衝液を加えて反応を停止し、生成物をジクロロメタンで
抽出した。
【0092】有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナ
トリウムで乾燥した。溶液をろ過し、溶媒をロータリー
エバポレーターで減圧留去した。得られた混合物をシリ
カゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製したとこ
ろ、得られた1, 3−ジフェニル−1, 3−プロパンジ
オールの単離収率は93% 、光学純度は41%ee であった。
また、dl/meso 比は53/47 であった。
【0093】実施例 4〜9 各実施例において、前記式(a−11)で表される光学
活性コバルト錯体の代わりに、表1に示す光学活性コバ
ルト錯体触媒を使用した以外は実施例3と同様にして反
応を行った。得られた1, 3−ジフェニル−1, 3−プ
ロパンジオールの収率、dl/meso 比と光学純度を表1に
示す。
【0094】
【表1】
【0095】実施例 10 水素化ホウ素ナトリウム 28mg (0.75 mmol) のクロロホ
ルム懸濁液(22 ml) に、窒素雰囲気下−20℃でエタノー
ル 0.13 ml (2.25 mmol)、ついでテトラヒドロフルフリ
ルアルコール 1.0 ml (10.5 mmol) を滴下し、15分間攪
拌して修飾ボロヒドリド還元剤溶液を調製した。
【0096】この還元剤溶液に、前記式(a−4)で表
される光学活性コバルト(II)錯体7.2 mg (0.0125 mmo
l) のクロロホルム溶液(4 ml)、さらにジベンゾイルメ
タン56 mg (0.25 mmol)のクロロホルム溶液(4 ml)を
滴下し、−20℃で40時間反応させた。リン酸緩衝液を加
えて反応を停止し、生成物をジクロロメタンで抽出し
た。
【0097】有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナ
トリウムで乾燥した。溶液をろ過し、溶媒をロータリー
エバポレーターで減圧留去した。得られた混合物をシリ
カゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製したとこ
ろ、1, 3−ジフェニル−1,3−プロパンジオールが
収率96% で得られ、光学純度は99%ee であった。また、
dl/meso 比は81/19 であった。
【0098】実施例 11〜15 各例において、ジベンゾイルメタンの代わりに、表2に
示す1, 3−ジアリール−1, 3−プロパンジオン化合
物を使用した以外は実施例10と同様にして反応を行っ
た。得られた1, 3−アリール−1, 3−プロパンジオ
ール化合物の収率、dl/meso 比と光学純度を表2に示
す。
【0099】
【表2】
【0100】実施例 16 ジベンゾイルメタンの代わりに、1, 3−ビス−(p−
tert−ブチルフェニル)−プロパン−1, 3−ジオンを
使用し、エタノールの代わりにメタノールを使用した以
外は実施例10と同様にして反応を行った。その結果、
対応する1, 3−プロパンジオール化合物が単離収率94
% で得られた。dl/meso 比は80:20 、光学純度は96%ee
であった。
【0101】
【発明の効果】本発明の方法によれば、ヒドリド試薬と
して安全で安価な水素化ホウ素ナトリウム等を用い、
1, 3−ジアリール−1, 3−プロパンジオン類から光
学活性1, 3−プロパンジオール類を製造することがで
きる。この光学活性1, 3−プロパンジオール類は、医
薬品、農薬などの生理活性化合物の光学活性中間体、ま
たは液晶等の機能性材料、ファインケミカル等における
光学活性中間体を製造する際に有用なキラル補助基とし
て、また不斉配位子の不斉源として有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07C 43/23 C07C 43/23 D // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 (72)発明者 大塚 雄紀 神奈川県横浜市港北区日吉三丁目14番1号 慶應義塾大学理工学部内 (72)発明者 永田 卓司 千葉県袖ヶ浦市長浦字拓二号580番32 三 井化学株式会社内 Fターム(参考) 4H006 AA02 AC41 AC81 BA20 BA47 BA50 BE22 BE23 FC52 FE11 FE73 FE74 FG26 GP03 4H039 CA60 CB20

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1, 3−ジアリール−1, 3−プロパンジ
    オン類を、光学活性金属化合物の存在下、ヒドリド試薬
    と反応させる工程を含む、光学活性1, 3−プロパンジ
    オール類の製造方法。
  2. 【請求項2】1, 3−ジアリール−1, 3−プロパンジ
    オン類とヒドリド試薬との反応を、光学活性金属化合物
    およびアルコール化合物の存在下に行う請求項1記載の
    方法。
  3. 【請求項3】1, 3−ジアリール−1, 3−プロパンジ
    オン類とヒドリド試薬との反応を、光学活性金属化合物
    およびカルボン酸化合物の存在下に行う請求項1記載の
    方法。
  4. 【請求項4】1, 3−ジアリール−1, 3−プロパンジ
    オン類とヒドリド試薬との反応を、光学活性金属化合
    物、アルコール化合物およびカルボン酸化合物の存在下
    に行う請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】前記光学活性金属化合物が、光学活性コバ
    ルト(II) 錯体である請求項1〜4のいずれか1項に記
    載の方法。
  6. 【請求項6】前記光学活性コバルト(II) 錯体が、次式
    (a): 【化1】 (式中、R1 とR2 は異なる基であり、それぞれ、水素
    原子、直鎖もしくは分岐状のアルキル基またはアリール
    基であり、前記アルキル基およびアリール基は置換基を
    有していてもよく、2個のR1 同士または2個のR2
    士は、相互に結合して環を形成していてもよく、R3
    4 およびR5 は、同一でも異なっていてもよく、水素
    原子、直鎖もしくは分岐状のアルキル基、直鎖もしくは
    分岐状のアルケニル基、アリール基、アシル基、アルコ
    キシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基または
    アラルキルオキシカルボニル基であり、前記アルキル
    基、アルケニル基、アリール基、アシル基、アルコキシ
    カルボニル基、アリールオキシカルボニル基およびアラ
    ルキルオキシカルボニル基は置換基を有していてもよ
    く、また、R4 およびR5 は、相互に連結して、R4
    よびR5 がそれぞれ結合している炭素原子と共同して環
    を形成してもよい。)で表される化合物である請求項5
    記載の方法。
  7. 【請求項7】前記光学活性金属化合物が、光学活性コバ
    ルト(III) 錯体である請求項1〜4のいずれか1項に記
    載の方法。
  8. 【請求項8】前記ヒドリド試薬が、金属水素化物である
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005035902A (ja) * 2003-07-16 2005-02-10 Sanyo Electric Co Ltd ジカルボニル化合物及びその金属錯体並びにこれを用いた発光材料及び発光素子
JP2009534433A (ja) * 2006-04-25 2009-09-24 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 酸化防止剤
CN102850153A (zh) * 2012-07-27 2013-01-02 四川大学 一种催化α,β-不饱和烯酮及饱和酮的不对称还原反应方法

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