JP4634638B2 - 光学活性アルコールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品、農薬などの生理活性化合物の合成中間体、または液晶等の機能性材料、ファインケミカル等における合成原料として有用な光学活性アルコールの製造方法、特にヒドリド試薬を利用した不斉還元反応により、光学活性アルコールを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、光学活性アルコールは、対応するケトンの不斉還元により合成され、その合成方法として各種の方法が知られている。例えば、野依らの開発したBINAPルテニウム錯体を用いる水素添加反応(J. Am. Chem. Soc., 117, 10417-8(1995))による方法が代表的であり、ボランを用いる方法としてはCoreyらによる不斉還元反応(J. Am. Chem. Soc., 109, 5551-3(1987))による方法が実用性の高い不斉還元法として知られている。一方、特開平9-151143号公報には、実用性の高いヒドリド還元剤として知られる水素化ホウ素ナトリウムを水素源として使用する方法が開示されている。この方法は、光学活性コバルト錯体に代表される金属化合物を触媒量用い、ケトンを不斉還元することにより高い光学純度を有する光学活性アルコールを収率よく製造できるものである。
【0003】
しかしながら、この不斉ボロヒドリド還元反応において、高エナンチオ選択的に目的物を得るためには、環境への負荷が大きいハロゲン化合物を溶媒に用いる必要があり、製造に際してはハロゲン化合物の取り扱い、除害設備を必要とすること等の問題点が残されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、この不斉ボロヒドリド還元反応ではハロゲン化合物を溶媒として用いており、ハロゲン化合物の使用量の削減が強く望まれている。本発明はこの要望を満足せしめることを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような状況下に、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、非ハロゲン系溶媒を使用した反応系中に微量のハロゲン化合物を添加することにより、高い光学純度でアルコールが得られることを見出し、前記目的を達成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記一般式(d):
【化23】
[式(d)中、R7及びR8は異なる基であり、R7及びR8の一方の基はアリール基であり、他方の基は直鎖または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アルキニル基、アリール基、またはアラルキル基であり、R7及びR8は置換基を有していてもよく、またR7及びR8は相互に連結して、R7及びR8がそれぞれ結合している炭素原子と共同して環を形成していてもよい。]で表されるケトン化合物を、非ハロゲン系溶媒中で、下記一般式(b)または(c):
【化24】
【化25】
[式(b)及び(c)中、R2とR3は異なる基であり、それぞれ、水素原子、直鎖または分岐状のアルキル基もしくはアリール基であり、置換基を有していてもよく、2個のR2同士または2個のR3同士は、相互に結合して環を形成していてもよく、また、R4、R5及びR6は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、直鎖または分岐状のアルキル基もしくはアリール基、アシル基またはアルコキシカルボニル基であり、置換基を有していてもよい。式(c)中、X - はF - 、Cl - 、Br - 、I - 、OH - 、CH 3 CO 2 - 、p−CH 3 C 6 H 4 SO 3 - 、CF 3 SO 3 - 、PF 6 - 、BF 4 - 、BPh 4 - 、SbF 6 - またはClO 4 - である。]で表される光学活性コバルト錯体触媒、及び、水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化ホウ素カリウムと反応させる工程において、ハロゲン化合物を併用することを特徴とする光学活性アルコールの製造方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光学活性アルコール類の製造方法(以下、「本発明の方法」という)について詳細に説明する。
【0008】
本発明の方法において、出発原料として用いられるケトン化合物は、分子内にカルボニル基を有する化合物であれば、特に制限されず、目的のアルコールに対して適宜選択することができ、下記一般式(d):
【0009】
【化4】
【0010】
[式中、R7及びR8は異なる基であり、それぞれ、直鎖または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アルキニル基、アリール基、またはアラルキル基であり、置換基を有していてもよく、またR7及びR8は相互に連結して、R7及びR8がそれぞれ結合している炭素原子と共同して環を形成していてもよい。]で表される化合物であると好ましい。
【0011】
R7およびR8の直鎖または分岐状のアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基等が挙げられる。R7及びR8のアルキル基、シクロアルキル基、またはアルキニル基上の置換基としては、不斉還元が進行する置換基であれば特に制限はなく、例えばフッ素、塩素、臭素などのハロゲン、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのアルキルカルボニル基等が挙げられる。
【0012】
R7及びR8のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の置換または非置換の芳香族炭化水素基、また、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル基等の置換または非置換の芳香族複素環基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。R7及びR8のアリール基、またはアラルキル基上の置換基としては不斉還元が進行する置換基であれば特に制限はなく、代表例としてハロゲン、アルキル基、アラルキル基、アルキニル基、ベンジル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等が挙げられ、置換位置は特に制限はない。
【0013】
また、R7及びR8は相互に結合して環を形成していてもよく、例えば、-(CH2)4-、-(CH2)5-等の基を介して相互に結合して5員環、6員環等の環構造を形成していてもよい。
【0014】
本発明の方法において、ケトン化合物の代表例として、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、クロロメチル(フェニル)ケトン、ブロモメチル(フェニル)ケトン、p-メトキシアセトフェノン、(o-フルオロフェニル)メチルケトン、(o-クロロフェニル)メチルケトン、(o-ブロモフェニル)メチルケトン、(o-シアノフェニル)メチルケトン、(m-フルオロフェニル)メチルケトン、(m-クロロフェニル)メチルケトン、(m-ブロモフェニル)メチルケトン、(m-シアノフェニル)メチルケトン、(p-フルオロフェニル)メチルケトン、(p-クロロフェニル)メチルケトン、(p-ブロモフェニル)メチルケトン、(p-シアノフェニル)メチルケトン、フェニルベンジルケトン、フェニルトリチルケトン、フェニル(2-フェニルエチル)ケトン、α-アセトナフトン、α-テトラロン、1-インダノン、1-ベンゾスベロン、4-クロマノン、アセチルフラン、アセチルピリジン、2-フェナシルピリジン等が挙げられる。
【0015】
本発明の方法において、前記一般式(d)で表されるケトン化合物を使用すると、下記一般式(e):
【0016】
【化5】
【0017】
[R7およびR8は前記と同義である]で表される光学活性アルコールを得ることができる。
【0018】
この一般式(e)で表される光学活性アルコールの代表例として、1-フェニルエタノール、1-フェニルプロパノール、1-フェニルブタノール、2-クロロ-1-フェニルエタノール、2-ブロモ-1-フェニルエタノール、1-(p-メトキシフェニル)エタノール、1-(o-フルオロフェニル)エタノール、1-(o-クロロフェニル)エタノール、1-(o-ブロモフェニル)エタノール、1-(o-シアノフェニル)エタノール、1-(m-フルオロフェニル)エタノール、1-(m-クロロフェニル)エタノール、1-(m-ブロモフェニル)エタノール、1-(m-シアノフェニル)エタノール、1-(p-フルオロフェニル)エタノール、1-(p-クロロフェニル)エタノール、1-(p-ブロモフェニル)エタノール、1-(p-シアノフェニル)エタノール、1,2-ジフェニルエタノール、1-トリチル-2-フェニルエタノール、1-フェニル-3-フェニルプロパノール、1-(α-ナフチル)エタノール、1-(β-ナフチル)エタノール、α-テトラノール、4-クロマノール、1-フリルエタノール、1-ピリジルエタノール等が挙げられる。
【0019】
本発明の方法において、触媒として用いられる光学活性コバルト錯体としては、特開平9-151143号公報に開示されている光学活性コバルト錯体を例示することができる。すなわち、前記光学活性コバルト錯体として下記一般式(b):
【0020】
【化6】
【0021】
で表される光学活性コバルト錯体が用いられる。
【0022】
この光学活性コバルト錯体を表す前記一般式(b)において、R2とR3は異なる基であり、それぞれ、水素原子、直鎖または分岐状のアルキル基もしくはアリール基であり、置換基を有していてもよい。この直鎖または分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が代表的である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の置換または非置換の芳香族炭化水素基;フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル基等の置換または非置換の芳香族複素環基が代表的である。
【0023】
また、2個のR2同士または2個のR3同士は、相互に結合して環を形成していてもよく、例えば、-(CH2)4-等の基を介して相互に結合して6員環等の環を形成していてもよい。
【0024】
さらに、R4、R5及びR6は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、直鎖もしくは分岐状のアルキル基、直鎖もしくは分岐状のアルケニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、またはアラルキルオキシカルボニル基であり、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及びアラルキルオキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。
【0025】
直鎖または分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が代表的である。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の置換または非置換の芳香族炭化水素基;フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル基等の置換または非置換の芳香族複素環基が代表的である。
【0026】
アシル基としては、アセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、3,5-ジメチルベンゾイル基、2,4,6-トリメチルベンゾイル基、2,6-ジメトキシベンゾイル基、2,4,6-トリメトキシベンゾイル基、2,6-ジイソプロポキシベンゾイル基、1-ナフチルカルボニル基、2-ナフチルカルボニル基、9-アントリルカルボニル基等の芳香族アシル基が代表的であり、アルコキシカルボニル基の代表例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロオクチルオキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基が挙げられ、アリールオキシカルボニル基の代表例としては、フェノキシカルボニル基が挙げられ、アラルキルオキシカルボニル基の代表例としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0027】
また、R 5及びR6は、相互に連結して、R5及びR6がそれぞれ結合している炭素原子と共同して環を形成してもよい。例えば、R5及びR6が相互に連結して、-(CH2)4-または-CH=CH-CH=CH-となる場合、それぞれシクロヘキサン環またはベンゼン環が形成され、このように形成されたシクロヘキサン環、ベンゼン環等の環は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基から選ばれる1または2以上の置換基で置換されていてもよく、また、前記ベンゼン環は縮合し、ナフタレン環等の縮合多環を形成してもよい。
【0028】
前記式(b)で表される光学活性コバルト錯体の具体例として、下記式(b-1)〜(b-7)で表されるもの等が挙げられる。
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
【化10】
【0033】
【化11】
【0034】
【化12】
【0035】
【化13】
【0036】
また、本発明の方法において、前記一般式(b)で表される光学活性コバルト(II)錯体から誘導して得られる、次式(c):
【0037】
【化14】
【0038】
[式中、R2、R3、R4、R5、R6は前記一般式(b)について定義したとおりであり、式中X-は、塩を形成し得る陰イオン対を表す。]で表される光学活性コバルト(III)錯体も、本発明の方法で用いる触媒として有効である。
【0039】
この一般式(c)において、X-としては、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、CH3CO2 -、p-CH3C6H4SO3 -、CF3SO3 -、PF6 -、BF4 -、BPh4 -、SbF6 -、ClO4 -等が代表的である。
【0040】
前記式(c)で表される光学活性コバルト(III)錯体の具体例として、下記式(c-1)〜(c-3)で表されるもの等が挙げられる。
【0041】
【化15】
【0042】
【化16】
【0043】
【化17】
【0044】
本発明の方法において触媒として用いる前記一般式(b)で表される光学活性コバルト(II)錯体、または前記一般式(c)で表される光学活性コバルト(III)錯体は、基質となるケトン化合物、使用するヒドリド試薬及びアルコール化合物、並びに溶媒に応じて適宜選択されるが、好ましくはケトン化合物1モルに対して0.01〜20モル%の割合で使用し、より好ましくは0.1〜5モル%の割合で使用する。
【0045】
本発明の方法において、添加剤として用いるハロゲン化合物は、下記一般式(a) :
【0046】
【化18】
【0047】
[式中、Xはハロゲン原子、R1は水素原子、直鎖または分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、もしくはアルコキシカルボニル基であり、置換基を有していてもよく、2個以上のR1は同一でも異なっていてもよい]で表される化合物であると、好ましい。
【0048】
R1の直鎖または分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が代表的であり、R1のアルキル基上の置換基としては不斉還元が進行する置換基であれば特に制限はなく、代表例としてアルキル基、アラルキル基、アルキニル基、ベンジル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等が挙げられ、置換位置は特に制限はない。
【0049】
R1のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。R1のアリール基、またはアラルキル基上の置換基としては不斉還元が進行する置換基であれば特に制限はなく、代表例としてアルキル基、アラルキル基、アルキニル基、ベンジル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等が挙げられ、置換位置は特に制限はない。
【0050】
R1のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。R1のアルコキシカルボニル基上の置換基としては不斉還元が進行する置換基であれば特に制限はなく、代表例としてアルキル基、アラルキル基、アルキニル基、ベンジル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等が挙げられ、置換位置は特に制限はない。
【0051】
このハロゲン化合物の代表例として(トリフルオロメチル)ベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、ジクロロ酢酸メチル、塩化ベンジル、塩化ベンザル、ジブロモメタン、ブロモホルム、四臭化炭素、ブロモエタン、1,2-ジブロモエタン、ヨウ化メチル、ジヨードメタン、ヨードホルム、四ヨウ化炭素などが挙げられる。これらの中で、高い光学収率及び高い化学収率で光学活性アルコールが得られる点で、(トリフルオロメチル)ベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1,1-トリクロロエタン、塩化ベンザル、ブロモホルム、ヨードホルムが好ましい。
【0052】
本発明の方法において、前記一般式(a)で表されるハロゲン化合物を用いる場合、ハロゲン化合物は、高い光学収率及び高い化学収率で光学活性アルコールが得られるために、ケトン化合物1モルに対して、0.001〜10モルの割合で使用するのが好ましく、さらにケトン化合物1モルに対して0.01〜5モルの割合で使用するのが好ましい。
【0053】
本発明の方法において、反応系中に共存させるアルコール化合物としては、特開平9-151143号公報に開示されているアルコール化合物を使用できる。すなわち、このアルコール化合物の代表例として、次式(f):
【0054】
【化19】
【0055】
で表される化合物が挙げられる。
【0056】
式(f)において、R9、R10およびR11は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、直鎖または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、もしくはヘテロ原子を含む直鎖または分岐状のエーテル基であり、水酸基、アミノ基、エステル基またはニトロ基等の置換基を有していてもよい。
【0057】
式(f)における直鎖または分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が代表的である。シクロアルキル基の代表例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が代表的である。ヘテロ原子を含む直鎖または分岐状のエーテル基としては、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、2-フリル基、3-フリル基、2-テトラヒドロピラニル基等が代表的である。
【0058】
また、R9およびR10は、相互に結合して環を形成していてもよく、例えば、-(CH2)4-、-(CH2)5-等の基を介して相互に結合して5員環、6員環等の環を形成していてもよい。
このアルコール化合物の具体例として、メタノール、エタノール、2-プロパノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール等の脂肪族または脂環式アルコール、フェノール、レゾルシノール等の芳香族アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のポリオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、高い光学収率および高い化学収率で光学活性アルコール化合物が得られる点で、脂肪族アルコール及びエーテルアルコールが好ましい。
【0059】
本発明の方法において、前記一般式(f)で表されるアルコール化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせても用いられる。2種以上の組み合わせの具体例としては、エタノール/エチレングリコールモノメチルエーテル、エタノール/テトラヒドロフルフリルアルコール、エタノール/フルフリルアルコール等の組合せ、および上記の組合せにおけるエタノールの代わりに、メタノール、2-プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等を、それぞれ用いた組合せが代表的である。
【0060】
前記アルコール化合物の使用量は、高い光学収率及び高い化学収率で光学活性アルコールが得られる点で、ケトン化合物1モルに対して、0.1〜50モルの割合で使用するのが好ましく、1〜10モルの割合で使用するのがさらに好ましい。
【0061】
本発明の方法において、ヒドリド試薬として用いられる金属水素化物としては、特開平9-151143号公報に開示されているいずれの金属水素化物を使用してもよいが操作性の面で、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムが特に好ましい。そして、ケトン化合物1モルに対して1〜2モルの割合で用いればよい。
【0062】
また、本発明の方法において、前記反応は、好ましくは液相中で行われる。用いられる溶媒としては、非プロトン性溶媒であれば特に制限はなく、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒等の溶媒が用いられる。特に、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、あるいは酢酸エチル等のエステル系溶媒が好ましい。
【0063】
反応温度は、通常、-80〜30℃が好ましく、さらに、-60〜10℃が好ましい。また、反応圧力は、溶媒が気化しないかぎり、常圧で十分である。
【0064】
また、反応時間は、通常、数分から5時間程度である。さらに、逐次、反応混合物のサンプルを採取して、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)等により分析して、反応の進行状況を確認することができる。
【0065】
以上の反応によって得られる反応混合物から、目的の光学活性アルコールの回収、精製は、公知の方法、例えば、蒸留、吸着による方法、抽出、再結晶等の方法を組み合わせて行うことができる。
【0066】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1) 反応器に式(b-4)で表される光学活性コバルト(II)錯体5.7mg(0.01mmol)、を入れ、窒素置換し、テトラヒドロフラン1ml、アセトフェノン117μl(1.0mmol)、メタノール121μl(0.3mmol)、及びクロロホルム4μl(0.05mmol)を加え、-10℃に冷却した。次に水素化ホウ素ナトリウム57mg(1.5mmol)のテトラヒドロフラン懸濁液2mlを添加した後、-10℃で2時間攪拌した。その後、食塩水を1ml加え、酢酸エチル5mlで抽出を行った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムを濾去後、減圧濃縮した。濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製すると、定量的に1-フェニルエタノールが得られた。また生成物の光学純度を高速液体クロマトグラフィー(光学活性カラム:ダイセル社製、CHIRALCEL OB-H)により分析した結果、80%eeであった。
【0068】
(実施例2〜8) 各例において、クロロホルムの代わりに表1に示すハロゲン化合物を使用した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。いずれの例においても定量的に1-フェニルエタノールが得られた。得られた生成物の光学純度を分析した結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
(参考例1) クロロホルムを添加しない以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応は2時間で完結し、定量的に1-フェニルエタノールが得られた。生成物の光学純度は15%eeであった。
【0071】
(実施例9〜11) 各例において、表2に示すクロロホルムの添加量を変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。いずれの例においても定量的に1-フェニルエタノールが得られた。得られた生成物の光学純度を分析した結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
(実施例12〜14) 各例において、メタノールの代わりに表3に示すアルコールを使用した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。いずれの例においても定量的に1-フェニルエタノールが得られた。得られた生成物の光学純度を分析した結果を表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
(実施例15〜16) 各例において、溶媒として用いるテトラヒドロフランの代わりに表4に示す溶媒を使用した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。いずれの例においても定量的に1-フェニルエタノールが得られた。得られた生成物の光学純度を分析した結果を表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
(実施例17〜19) 各例において、式(b-4)で表される光学活性コバルト錯体の代わりに表5に示すコバルト錯体を触媒として使用した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。いずれの例においても定量的に1-フェニルエタノールが得られた。得られた生成物の光学純度を分析した結果を表5に示す。
【0078】
【表5】
【0079】
(実施例20〜23) 各例において、出発原料として用いるアセトフェノンの代わりに表6に示すケトン化合物及び触媒を使用した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。いずれの例においても定量的に原料のケトン化合物に対応するアルコールが得られた。実施例20〜22の生成物の光学純度は高速液体クロマトグラフィー(光学活性カラム:ダイセル社製、CHIRALCEL OB-H)により分析した。実施例23については高速液体クロマトグラフィー(光学活性カラム:ダイセル社製、CHIRALPAK AD)により分析した。その結果を表6に示す。
【0080】
【表6】
【0081】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、ケトン化合物を微量のハロゲン化合物存在下、ヒドリド試薬を用いて、光学活性アルコールを製造することができる。この光学活性アルコールは、医薬品、農薬などの生理活性化合物の合成中間体、または液晶等の機能性材料、ファインケミカル等における合成原料として有用である。
Claims (4)
- 下記一般式(d):
- 前記反応をアルコール化合物の存在下に行う、請求項1または2に記載の光学活性アルコールの製造方法。
- 前記ハロゲン化合物をケトン化合物1モルに対して、0.001〜10モルの割合で使用する、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学活性アルコールの製造方法。
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