JP2001253352A - パワーステアリング装置 - Google Patents

パワーステアリング装置

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JP2001253352A
JP2001253352A JP2000064681A JP2000064681A JP2001253352A JP 2001253352 A JP2001253352 A JP 2001253352A JP 2000064681 A JP2000064681 A JP 2000064681A JP 2000064681 A JP2000064681 A JP 2000064681A JP 2001253352 A JP2001253352 A JP 2001253352A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 流量制御弁Vで制御される制御流量QPを、
パワーシリンダ8やステアリングバルブ9などの出力側
が要求する流量に近い値にして、ポンプPの駆動トルク
を抑え、省エネ制御をする。 【解決手段】 操舵トルクによるソレノイド電流指令値
I1と、スタンバイ流量を特定したソレノイド電流指令
値I3とに基づいて、ソレノイドSOLの励磁電流1を
特定するようにしている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、パワーシリンダ
側に導く流量を制御する流量制御弁を備えたパワーステ
アリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種のパワーステアリング装置に組み
込まれた流量制御弁は、本体にスプールを組み込み、こ
のスプールの一端を、ポンプポートに常時連通する一方
のパイロット室に臨ませ、スプールの他端を、スプリン
グを介在させた他方のパイロット室に臨ませている。そ
して、上記一方のパイロット室の下流側に固定オリフィ
スを設け、この固定オリフィスを介してパワーシリンダ
を制御するステアリングバルブに圧油を導くようにして
いる。
【0003】一方、上記オリフィスの上流側の圧力を上
記一方のパイロット室のパイロット圧とし、下流側の圧
力を上記他方のパイロット室のパイロット圧とし、両パ
イロット室の圧力バランスでスプールの移動位置を制御
するようにしている。このスプールの移動位置によっ
て、ポンプの吐出量を上記ステアリングバルブ側に導く
制御流量QPと、タンクまたはポンプに環流させる戻り
流量QTとに分配する構成にしている。そして、上記ス
プールは、固定オリフィス前後の差圧を一定に保って、
パワーシリンダを制御するステアリングバルブ側には、
常に、一定の制御流量QPが供給されるようにしてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のようにした従来
の装置では、流量制御弁から常に一定の制御流量QP
が、パワーシリンダを制御するステアリングバルブ側に
供給されることになる。言い換えると、この制御流量Q
Pは、車速や操舵状況に関わりなく、常に一定の制御流
量QPを上記ステアリングバルブ側に供給し続けること
になる。しかしながら、車速や操舵状況に関わりなく、
制御流量QPを特定すると、例えば、パワーシリンダが
必要とする流量QMに対して、QP>QMとなったと
き、その余剰流量を、上記ステアリングバルブを介して
タンクに戻さなければならない。
【0005】上記のように、余剰流量をステアリングバ
ルブを介してタンクに戻すということは、それだけ回路
の圧力損失を大きくしてしまう。言い換えると、ポンプ
はこの圧力損失分の駆動トルクを消費し続けなければな
らないことになる。そのために、ポンプの駆動トルクが
大きくなればなるほど、多量のエネルギーを消費するこ
とになる。
【0006】しかも、上記制御流量QPは、パワーシリ
ンダの最大必要流量にあわせて設定しているので、ほと
んどの場合、何らかの余剰流量をタンクに環流させてい
るのが現状である。そのために、この従来の装置では、
そのエネルギー損失が大きくなるという問題があった。
この発明の目的は、車両の走行条件や操舵状況に応じ
て、制御流量QPを制御することによって、エネルギー
損失を最小限に抑えたパワーステアリング装置を提供す
ることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、次の構成を
前提にする。本体にスプールを組み込み、このスプール
の一端を、ポンプポートに常時連通する一方のパイロッ
ト室に臨ませ、スプールの他端を、スプリングを介在さ
せた他方のパイロット室に臨ませている。そして、上記
一方のパイロット室の下流側にオリフィスを設け、この
オリフィスを介してパワーシリンダを制御するステアリ
ングバルブに圧油を導くようにしている。一方、上記オ
リフィスの上流側の圧力を上記一方のパイロット室のパ
イロット圧とし、下流側の圧力を上記他方のパイロット
室のパイロット圧とし、両パイロット室の圧力バランス
でスプールの移動位置を制御する。そして、スプールの
移動位置に応じて、ポンプの吐出圧を上記ステアリング
バルブ側に導く制御流量QPと、タンクまたはポンプに
環流させる戻り流量QTとに分配する構成にしている。
【0008】上記の装置を前提にしつつ、第1の発明
は、次の点に特徴を有する。すなわち、上記オリフィス
を、ソレノイドの励磁電流Iに応じて開度を制御する可
変オリフィスとするとともに、この可変オリフィスのソ
レノイドの励磁電流Iを制御するコントローラを設けて
いる。しかも、このコントローラには操舵トルクセンサ
ーを接続し、コントローラはこの操舵トルクセンサーか
らの操舵トルク信号に応じたソレノイド電流指令値I1
を演算または記憶するようにしている。そして、このソ
レノイド電流指令値I1にスタンバイ用のソレノイド電
流指令値I3を加算し、この加算した指令値を基に可変
オリフィスのソレノイドの励磁電流Iを制御する構成に
している。
【0009】第2の発明は、コントローラに車速センサ
ーを接続し、コントローラは、車速センサーからの車速
信号に応じたソレノイド電流指令値I2を演算または記
憶する一方、ソレノイド電流指令値I1にソレノイド電
流指令値I2を積算し、その積算値にスタンバイ用のソ
レノイド電流指令値I3を加算する構成にした点に特徴
を有する。
【0010】第3の発明は、コントローラに車速センサ
ーを接続し、コントローラは、車速センサーからの車速
信号に応じたソレノイド電流指令値I2を演算または記
憶する一方、ソレノイド電流指令値I1に対して、車速
信号によるソレノイド電流指令値I2を限界値とし、そ
の限界値以内のソレノイド電流指令値をスタンバイ用の
ソレノイド電流指令値I3に加算する構成にした点に特
徴を有する。
【0011】第4の発明は、コントローラは、ソレノイ
ドの励磁電流Iと可変オリフィスの開度で決まる制御流
量QPとの特性、および操舵トルクとソレノイド指令値
I1との特性を積算して、操舵トルクとソレノイド電流
I1に応じた可変ソレノイドの開度で決まる制御流量Q
Pとがリニアな特性になる構成にした点に特徴を有す
る。
【0012】
【発明の実施の形態】本体Bには、流量制御弁Vのスプ
ール1とともにポンプPも一体的に組み込んでいる。上
記スプール1は、その一端を一方のパイロット室2に臨
ませ、他端を他方のパイロット室3に臨ませている。上
記一方のパイロット室2は、ポンプポート4を介してポ
ンプPに常時連通している。また、他方のパイロット室
3にはスプリング5を介在させている。このようにした
両パイロット室2,3は、ソレノイドSOLの励磁電流
Iに応じて開度を制御する可変オリフィスaを介して、
互いに連通している。
【0013】すなわち、一方のパイロット室2は、流路
6→可変オリフィスa→流路7を経由してパワーシリン
ダ8を制御するステアリングバルブ9の流入側に連通し
ている。また、他方のパイロット室3は、流路10およ
び流路7を介してステアリングバルブ9の流入側に連通
している。したがって、上記両パイロット2,3は、可
変オリフィスaを介して連通することになり、可変オリ
フィスaの上流側の圧力が一方のパイロット室2に作用
し、下流側の圧力が他方のパイロット室3に作用するこ
とになる。
【0014】そして、スプール1は、一方のパイロット
室2の作用力と、他方のパイロット室3の作用力とがバ
ランスした位置を保つが、そのバランス位置において、
前記ポンプポート4とタンクポート11との開度が決め
られる。今、エンジン等からなるポンプ駆動源12が停
止していると、ポンプポート4に圧力が供給されない、
ポンプポート4に圧力が供給されなければ、両パイロッ
ト室2,3には圧力が発生しないので、スプール1はス
プリング5の作用で図示のノーマル位置を保つ。
【0015】上記の状態からポンプPが駆動して、ポン
プポート4に圧油が供給されると、可変オリフィスaに
流れができるので、そこに圧力損失が発生する。この圧
力損失の作用で、両パイロット室2,3に圧力差が発生
し、この圧力差に応じてスプール1がスプリング5に抗
して移動し、上記バランス位置を保つ。このように、ス
プール1がスプリング5に抗して移動することによっ
て、タンクポート11の開度を大きくするが、このとき
のタンクポート11の開度に応じて、ステアリングバル
ブ9側に導かれる制御流量QPと、タンクTあるいはポ
ンプPに環流される戻り流量QTの分配比が決まる。言
い換えれば、タンクポート11の開度に応じて制御流量
QPが決まることになる。
【0016】上記のように制御流量QPが、スプール1
の移動位置で決まるタンクポート11の開度に応じて制
御されるということは、結局は、可変オリフィスaの開
度に応じて制御流量QPが決まることになる。なぜな
ら、スプール1の移動位置は、両パイロット室2,3の
圧力差で決まるとともに、この圧力差を決めているのが
可変オリフィスaの開度だからである。
【0017】したがって、車速や操舵状況に応じて、制
御流量QPを制御するためには、可変オリフィスaの開
度、すなわちソレノイドSOLの励磁電流を制御すれば
良いことになる。なぜなら、可変オリフィスaは、ソレ
ノイドSOLが非励磁状態のときにその開度を最小に保
ち、励磁電流を大きくしていくにしたがってその開度を
大きくするからである。
【0018】なお、前記ステアリングバルブ9は、図示
していないステアリングホィールの操舵トルクに応じ
て、パワーシリンダ8への供給量を制御するものであ
る。例えば、操舵トルクが大きければ、パワーシリンダ
8への供給量を大きくし、操舵トルクが小さければそれ
に応じて供給流量も少なくするようにしている。この操
舵トルクとステアリングバルブ9との切り換え量は、図
示していないトーションバーなどのねじれ反力によって
決まることになる。
【0019】上記のように、操舵トルクが大きいとき
に、ステアリングバルブ9の切り換え量を大きくすれ
ば、その分、パワーシリンダ8によるアシスト力が大き
くなる。反対に、ステアリングバルブ9の切り換え量を
小さくすれば、上記アシスト力は小さくなる。そして、
操舵トルクによって決まるパワーシリンダ8の必要(要
求)流量QMと、流量制御弁Vで決められる制御流量Q
Pとを、なるべく等しくすれば、ポンプP側のエネルギ
ー損失を低く抑えることができる。なぜなら、ポンプP
側のエネルギーロスは、制御流量QPとパワーシリンダ
8の要求流量QMとの差によって発生するからである。
【0020】上記のように、制御流量QPをパワーシリ
ンダ8の要求流量QMにできるだけ近づけるために、可
変オリフィスaの開度を制御するのが、ソレノイドSO
Lに対する励磁電流であり、この励磁電流を制御するの
が、コントローラCである。このコントローラCには、
操舵トルクセンサー16と車速センサー17とを接続
し、これら両センサーの出力信号に基づいて、ソレノイ
ドSOLの励磁電流を制御するようにしている。
【0021】なお、図中符号18はスプール1の先端に
形成したスリットで、スプール1が図示の位置にあると
きにも、一方のパイロット室2が、このスリット18を
介して、流路7に常時連通するようにしている。言い換
えると、スプール1が図示の状態にあって、流路6を閉
じているようなときにも、ポンプPの吐出圧が、このス
リット18を介して、ステアリングバルブ9側に供給さ
れるようにしている。
【0022】このように微少流量であるが、ステアリン
グバルブ9側に圧油を供給するようにしたのは、装置全
体の焼き付きの防止、キックバック等の外乱の防止、お
よび応答性の確保を目的にしているからである。ただ
し、これらの目的は、後で説明するスタンバイ流量を確
保することでも達成できるので、詳細な説明は後に譲る
ことにする。また、符号19は、コントローラCとソレ
ノイドSOLとの間に接続したドライバーである。
【0023】上記コントローラCの制御システムは、図
2に示すとおりである。すなわち、コントローラCに
は、操舵トルクセンサー16からの操舵トルク信号と、
車速センサー17からの車速信号とが入力する。そし
て、上記操舵トルクに基づいて、上記要求流量QMを推
定するようにしている。
【0024】ここで、操舵トルクとソレノイド電流指令
値I1とは、その操舵トルクと制御流量との関係がリニ
アな特性になる理論値を基にして決めている。ただし、
操舵トルクが、ある設定以上にならなければ、上記指令
値I1はゼロを出力するようにしている。つまり、ステ
アリングホイールが中立あるいはその近傍にあるときに
は、上記指令値I1がゼロになるようにしている。そし
て、この操舵トルクに対するソレノイド電流指令値I1
は、テーブル値としてコントローラCにあらかじめ記憶
させておいてもよいし、操舵トルクを基にして、その都
度、コントローラCに演算させるようにしてもよい。
【0025】いずれにしても、操舵トルクを基にしてソ
レノイド電流指令値I1を求め、この値に車速信号に基
づいたソレノイド電流指令値I2を積算する。ただし、
上記車速信号に基づいたソレノイド電流指令値I2は、
車速が低速域では1を出力し、高速域ではゼロを出力す
るとともに、その間の中間域では、1からゼロまでの小
数点以下の値を出力する。
【0026】したがって、上記ソレノイド電流指令値I
1に車速信号に基づいたソレノイド電流指令値I2を積
算すれば、車速の低速域ではI1がそのまま出力される
し、高速域ではI1がゼロになる。また、中速域では速
度が上がればそれに反比例した値が出力されることにな
る。上記のようにI1×I2が求まったら、さらにそれ
にスタンバイソレノイド電流指令値I3を加算する。つ
まり(I1×I2)+I3=I(ソレノイド電流指令
値)として、ドライバー19から出力させる。
【0027】上記スタンバイソレノイド電流指令値I3
は、常に、所定の電流が可変オリフィスaのソレノイド
SOLに供給されるようにするためのものである。この
ようにスタンバイソレノイド電流指令値I3が供給され
た可変オリフィスaは、操舵トルクおよび車速を基にし
たソレノイド電流指令値I1,I2が、たとえゼロだっ
たとしても、その開度を一定に保つとともに、一定のス
タンバイ流量を確保する。
【0028】ただし、省エネという観点からすると、パ
ワーシリンダ8およびステアリングバルブ9側の要求流
量QMがゼロなら、流量制御弁Vの制御流量QPもゼロ
にするのが理想的であるが、その理由は次の通りであ
る。制御流量QPをゼロにするということは、ポンプP
の吐出量全量をタンクポート11からポンプPまたはタ
ンクTに環流させることを意味する。そして、タンクポ
ート11からポンプPまたはタンクTに環流する流路は
本体B内にあって、非常に短いので、その圧力損失がほ
とんどない。圧力損失がほとんどないので、ポンプPの
駆動トルクも最小に抑えられ、その分、省エネにつなが
ることになる。このような意味から、要求流量QMがゼ
ロのときに、制御流量QPもゼロにするのが省エネとい
う観点からは、絶対に有利になる。
【0029】それにもかかわらず、要求流量QMがゼロ
でもスタンバイ流量QSを確保したのは、次の3つの理
由からである。 装置の焼き付き防止 ある程度の油を装置に環流させておいた方が、その油に
よる冷却効果が期待できるが、スタンバイ流量はこの冷
却機能を果たすことになる。 キックバック等の外乱やセルフアライニングトルクに対
抗 タイヤに外乱やセルフアライニングトルク等による効力
が作用すると、それがパワーシリンダ8のロッドに作用
する。もし、スタンバイ流量を確保しておかなければ、
この外乱やセルフアライニングトルクによる抗力で、タ
イヤがふらついてしまう。しかし、スタンバイ流量を確
保しておけば、たとえ上記抗力が作用したとしても、タ
イヤがふらついたりしない。すなわち、上記パワーシリ
ンダ8のロッドには、ステアリングバルブ9を切り換え
るためのピニオン等がかみ合っているので、上記抗力が
作用すると、ステアリングバルブも切り換わって、その
抗力に対抗する方向にスタンバイ流量を供給することに
なる。したがって、スタンバイ流量を確保しておけば、
上記キックバックによる外乱や、セルフアライニングト
ルクに対抗できることになる。
【0030】応答性の確保 例えば、図3に示すように、スタンバイ流量QSを確保
しておけば、それが全然ないときよりも、目的の制御流
量QPに到達する時間が短くて済む。この時間差が応答
性になるので、結局、スタンバイ流量QSを確保した方
が、応答性を向上させることができる。
【0031】次に、この実施態様の作用を説明する。例
えば、車速が低速域にある状態で操舵すれば、そのとき
の操舵トルクによって、ソレノイド電流指令値I1が決
まる。そして、この指令値I1に車速に応じたソレノイ
ド電流指令値I2=1を積算する。その積算値であるI
1にスタンバイ流量を確保するためのソレノイド電流指
令値I3をさらに加算する。すなわち、低速域では、ソ
レノイド電流指令値1が、I=I1+I3ということに
なる。
【0032】また、上記のように低速域で走行中でも、
直進走行時などでステアリングホィールを中立位置近傍
に保っているときには、操舵トルクによるソレノイド電
流指令値I1は、ゼロになってしまう。しかし、この場
合にも、ソレノイド電流指令値I3だけは出力されるの
で、スタンバイ流量は必ず確保されることになる。した
がって、低速域での直進走行時であっても、装置の冷却
効果を期待できるとともに、キックバック等による外乱
にも対抗できる。しかも、スタンバイ流量を確保してい
るので、応答性も良好に保つことができる。また、この
スタンバイ流量の効能は、低速域、中速域および高速域
での走行中にも全て同じように当てはまる。
【0033】車速が高速域にあるときには、車速による
ソレノイド電流指令値I2がゼロになる。この電流指令
値I2がゼロになれば、I1×I2=0となるので、制
御流量QPは、スタンバイ流量QSだけとなり、パワー
アシスト力もほとんどなくなる。そして、中速域での走
行中には、その速度に応じて、車速によるソレノイド電
流指令値I2が小さくなっていくので、それに伴って制
御流量QPも少なくなる。したがって、パワーアシスト
力もその分小さくなっていく。
【0034】なお、通常の走行では、高速走行中にステ
アリングホィールを大きく切ることはない。ステアリン
グホィールを大きく切るのは、ほとんど低速域である。
その関係を示したのが、図4である。これらの図からも
明らかなように、車速が高くなるにしたがって、操舵ト
ルクの範囲が、中立を中心に狭くなっていく。したがっ
て、車速と、操舵トルクの範囲とは相関性があるといえ
る。このことから車速センサーの代わりに操舵角を代用
することが可能になる。ただし、車速センサー17によ
ってソレノイド電流指令値I2を考慮した方が、実際の
走行により適した制御が可能になる。
【0035】図5に示した第2の実施態様は、操舵トル
クによるソレノイド電流指令値I1を実際の状況により
近づけたことに特徴を有し、これが第1の実施態様との
相違点である。第1の実施態様との相違点は、次のこと
を考慮している。ドライバーの操舵感覚を基にすれば、
図6に示すように、操舵トルクとそれによって特定され
る制御流量QPとは、リニアな特性を維持するのが理想
的である。ところが、ソレノイド電流指令値Iとソレノ
イドSOLによる可変オリフィスaの開度で決まる制御
流量QPとは、図7に示すように、二乗特性に近いもの
になる。これは可変オリフィスaを構成するポペット等
の質量とか、ソレノイドの性能とが相乗的に作用した結
果である。
【0036】しかし、第1および第2の実施態様も、操
舵トルクによってソレノイド電流指令値1を求め、この
指令値I1で制御流量QPを特定しようとしているの
で、そのままだと、操舵トルクと制御流量QPとがリニ
アな関係にならない。そこで、この第2の実施態様で
は、操舵トルクによるソレノイド電流指令値I1を図5
に示すように、制御流量QPが最大流量に達するまでを
曲線状にしたものである。
【0037】ただし、この曲線を得るのに、例えば、操
舵トルクと制御流量QPとが、図6に示すリニアな特性
になるポイントを、実験によってプロットしてもよい
し、図7の曲線と図6の曲線とを数式化し、図6の値を
図7で除算して求めてもよい。このようにした第2の実
施態様によれば、操舵トルクと制御流量QPとがリニア
な関係になるので、操舵感覚と出力とを一致させること
ができる。
【0038】また、この第2の実施態様では、車速によ
るソレノイド電流指令値I2をリミッターとして利用し
た点も、第1の実施態様とは相違する。つまり、第1の
実施態様では、この指令値I2を指令値I1に積算して
いた。しかし、指令値I2を積算してしまうと、車速が
高くなればなるほど、実質的に計数が小さくなる。計数
が小さくなれば、グラフの傾きがそれだけ緩やかにな
る。傾きが緩やかになれば、応答性が悪くなる。そこ
で、この第2の実施態様では、上記のように車速による
ソレノイド電流指令値I2をリミッターとして利用し、
ソレノイド電流指令値Iの傾きを一定に保つようにした
ものである。
【0039】ただ、上記傾きの変化は、実際には、ほん
のわずかなので、それを無視してもそれほど大きな影響
を及ぼさない。なお、この第2の実施態様においても、
スタンバイ流量を確保するようにした点は、第1の実施
態様と全く同様である。
【0040】
【発明の効果】第1の発明の装置によれば、操舵トルク
を検出することによって、制御流量QPを制御すること
ができる。したがって、上記制御流量QPを適正に確保
して、省エネ制御ができる。また、ステアリングホィー
ルを止めた保舵時には、操舵トルクによって制御流量Q
Pを適正に確保し、セルフアライニングトルクに対抗さ
せることができる。さらに、直進走行のように操舵トル
クによるソレノイド電流指令値I1がゼロであっても、
スタンバイ流量を確保できる。したがって、装置の焼き
付きを防止できるし、キックバック等の外乱にも対応す
ることができる。さらには、良好な応答性をも確保する
ことができる。
【0041】いずれにしても、ステアリングホィールを
切っている操舵時、ステアリングホィールを止めている
保舵時、あるいは直進走行のいずれの場合にも、、制御
流量QPを適正に確保し、ポンプPを駆動するためのト
ルクを必要以上大きくならないようにして、的確な省エ
ネ制御を実現できる。
【0042】なお、パワーステアリング装置において、
出力側の操舵反力を制御したり、ステアリングバルブの
感度を制御したりするために、操舵トルクあるいは車速
等の信号を利用することは、従来から行われている。し
かし、この発明のように、制御流量QPを制御して、省
エネをテーマにしたもので、操舵トルクあるいは車速等
の信号を利用したものは従来にはない。しかも、この発
明のように、操舵トルクを直接検出することによって、
他のセンサーや、演算手段を必要とせず、より正確な値
が得られる。この発明は、省エネをテーマにして、操舵
トルクあるいは車速等の信号を利用した点に最大の特徴
を有する。
【0043】第2の発明の装置によれば、速度感応タイ
プにしているので、車速に応じた省エネ制御が可能にな
る。第3の発明の装置によれば、車速感応タイプではあ
るが、車速によるソレノイド電流指令値I2を、リミッ
ターとして利用しているので、応答性をより良好に保つ
ことができる。第4の発明の装置によれば、操舵トルク
に対する制御流量QPの特性をよりリニアにすることが
できるので、操舵フィーリングを向上させることができ
る。
【0044】
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施態様の油圧回路図である。
【図2】第1の実施態様のコントローラの制御系を示す
説明図である。
【図3】スタンバイ流量と応答性の関係を示したグラフ
である。
【図4】操舵トルクと車速との相関性を示したグラフで
ある。
【図5】第2の実施態様のコントローラの制御系を示す
説明図である。
【図6】操舵トルクと制御流量との関係を示すグラフで
ある。
【図7】ソレノイド電流指令値と制御流量との関係を示
したグラフである。
【符号の説明】
I ソレノイド電流指令値 I1 操舵トルクによるソレノイド電流指令値 I2 車速によるソレノイド電流指令値 I3 スタンバイ流量を確保するためのソレノイド電
流指令値 QP 制御流量 QT 戻り流量 QM 要求(必要)流量 QS スタンバイ流量 B 本体 P ポンプポート a 可変オリフィス SOL ソレノイド C コントローラ T タンク 1 スプール 2 一方のパイロット室 3 他方のパイロット室 4 ポンプポート 5 スプリング 8 パワーシリンダ 9 ステアリングバルブ 16 操舵トルクセンサー 17 車速センサー

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 本体にスプールを組み込み、このスプー
    ルの一端を、ポンプポートに常時連通する一方のパイロ
    ット室に臨ませ、スプールの他端を、スプリングを介在
    させた他方のパイロット室に臨ませ、上記一方のパイロ
    ット室の下流側にオリフィスを設け、このオリフィスを
    介してパワーシリンダを制御するステアリングバルブに
    圧油を導く一方、上記オリフィスの上流側の圧力を上記
    一方のパイロット室のパイロット圧とし、下流側の圧力
    を上記他方のパイロット室のパイロット圧とし、両パイ
    ロット室の圧力バランスでスプールの移動位置を制御す
    るとともに、その移動位置に応じて、ポンプの吐出量を
    上記ステアリングバルブ側に導く制御流量QPと、タン
    クまたはポンプに環流させる戻り流量QTとに分配する
    構成にしたパワーステアリング装置において、上記オリ
    フィスは、ソレノイドの励磁電流Iに応じて開度を制御
    する可変オリフィスとするとともに、この可変オリフィ
    スのソレノイドの励磁電流Iを制御するコントローラを
    設け、かつ、このコントローラには操舵トルクセンサー
    を接続し、コントローラはこの操舵トルクセンサーから
    の操舵トルク信号に応じたソレノイド電流指令値I1を
    演算または記憶するとともに、このソレノイド電流指令
    値I1にスタンバイ用のソレノイド電流指令値I3を加
    算し、この加算した指令値を基に可変オリフィスのソレ
    ノイドの励磁電流Iを制御する構成にしたパワーステア
    リング装置。
  2. 【請求項2】 コントローラに車速センサーを接続し、
    コントローラは、車速センサーからの車速信号に応じた
    ソレノイド電流指令値I2を演算または記憶する一方、
    ソレノイド電流指令値I1にソレノイド電流指令値I2
    を積算し、その積算値にスタンバイ用のソレノイド電流
    指令値I3を加算する構成にした請求項1記載のパワー
    ステアリング装置。
  3. 【請求項3】 コントローラに車速センサーを接続し、
    コントローラは、車速センサーからの車速信号に応じた
    ソレノイド電流指令値I2を演算または記憶する一方、
    ソレノイド電流指令値I1に対して、車速信号によるソ
    レノイド電流指令値I2を限界値とし、その限界値以内
    のソレノイド電流指令値をスタンバイ用のソレノイド電
    流指令値I3に加算する構成にした請求項1記載のパワ
    ーステアリング装置。
  4. 【請求項4】 コントローラは、ソレノイドの励磁電流
    Iと可変オリフィスの開度で決まる制御流量QPとの特
    性、および操舵トルクとソレノイド指令値I1との特性
    を積算して、操舵トルクとソレノイド電流I1に応じた
    可変ソレノイドの開度で決まる制御流量QPとがリニア
    な特性になる構成にした請求項1〜3のいずれか1に記
    載のパワーステアリング装置。
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