JP2001247944A - 低磁歪二方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents
低磁歪二方向性電磁鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
その製造方法を提供する。 【解決手段】 Si≦6.5%、平均結晶粒径が板厚の
10倍以下、かつ無応力状態の鋼板の磁化容易方向に交
番磁界を印加して1.7Tまで磁化した時の磁歪が10
×10-6以下、である二方向性電磁鋼板。鋼板面内の磁
化容易方向に1MPa以上、弾性限度以下の張力付加状
態での磁歪が3.0×10-6以下である二方向性電磁鋼
板。{100}集積度が70%以上で、<001>集積
度が70%以上である上記鋼板。熱消磁かつ無応力下で
の180゜磁壁の平均間隔≦0.50mm、および/ま
たはジグザク状磁壁を有する磁区の面積率≦30%であ
る上記鋼板。表面に燐酸塩シリカ系またはアルミナ酸化
硼素系の張力皮膜を備えたものがよい。C:0.02〜
0.20%、Si≦6.5%、Mn:0.2〜2.0%
を含有し、一次再結晶後の{100}<001>方位へ
の集積度が3以上である鋼板を、脱炭もしくは脱炭と脱
Mnを促進物質を含有する焼鈍分離材を介在させて最終
焼鈍する製造方法。
Description
二方向性電磁鋼板とその製造方法に関する。
磁心材料には電磁鋼板が用いられている。磁心材料には
交流磁界中で磁気的なエネルギー損失が小さいこと、実
用的な磁界中での磁束密度が高いことが必要とされてい
る。このような特性を実現するには、鋼の電気抵抗を高
め、磁化容易方向であるbcc格子の<001>軸を使
用磁界方向に集積させることが有効とされている。特
に、磁化容易方向である<001>軸を使用磁界方向に
集積させることが磁気特性の飛躍的向上に最も有効な方
法であり、このような集合組織を備えた鋼板が望まれて
いる。
図であり、図1(a)は{110}面が鋼板面に平行
で、<001>軸が圧延方向に集積した集合組織({1
10}<001>集合組織)を示し、図1(b)は{1
00}面が鋼板面に平行で、鋼板面に平行な2つの<0
01>軸がそれぞれ圧延方向と圧延直角方向に集積した
集合組織({100}<001>集合組織)を示す。
板は巻き鉄心のように、圧延方向のみに磁束が流れる用
途に適し、一方向性電磁鋼板(珪素鋼板)と称される。
{100}<001>集合組織を有する電磁鋼板は圧延
方向と圧延直角方向の二方向に優れた磁気特性を示し、
巻き鉄心に加え、圧延方向と圧延直角方向の二方向に磁
束が流れる積み鉄心や回転機の鉄心にも好適である。こ
のように鋼板面内の直交する2つの方向に優れた磁気特
性を示す電磁鋼板は二方向性電磁鋼板と称される。
炭、もしくは脱炭と脱Mnを生じさせる高温焼鈍を利用
した製造方法が開示されている。特開平7−17345
2号公報には、質量%で(以下に示す化学組成の%表示
は質量%を意味する)C:1%以下、Si:0.2〜
6.5%、Mn:0.05〜5%を含む冷間圧延鋼板
に、焼鈍分離材として脱炭を促進する物質、もしくは脱
炭を促進する物質と脱Mnを促進する物質を用いて、タ
イトコイル焼鈍もしくは積層焼鈍することを特徴とする
{100}面を鋼板面に平行な集合組織を持つ電磁鋼板
の製造方法が開示されている。
0.2〜6.5%、Mn:0.03〜2.5%を含有す
る鋼板であって、鋼板面に平行な{100}面密度が方
位配向性のないものの面密度の10倍以上の集合組織を
有し、Mn濃度が板厚の表面に向かって減少する脱Mn
層を有し、表面部のMn濃度が板厚中心部のMn濃度の
90%以下、かつMn濃度減少割合の最大値が0.05
%/μm以下、さらに平均結晶粒径が板厚の1/4から
10倍である電磁鋼板が開示されている。
Mnを、Si(%)+0.5Mn(%)≦4およびSi
(%)−0.5Mn(%)≧1.5なる関係を満たす範
囲で含有し、鋼板面に平行な断面における平均結晶粒径
が板厚の1〜8倍であり、かつ平均結晶粒径をXとする
とき全結晶粒の70%以上がX/3から3Xの間にある
磁気特性に優れる二方向性電磁鋼板が開示されている。
2%含有し、SiとMnの含有量が上記関係式を満足す
る鋼を熱間圧延した後、750℃以上に急速加熱する中
間焼鈍をおこなう2回以上の圧延による冷間圧延を施
し、得られた鋼板を焼鈍分離材を用いて減圧下で焼鈍を
おこなうことによる二方向性電磁鋼板の製造方法が開示
されている。
在実用化され電力用変圧器の主材料となっている。他
方、二方向性電磁鋼板は鋼板面内の二方向に優れた磁気
特性を示すという特長を持ちながら未だ実用化されてい
ない。その原因は、従来の二方向性電磁鋼板は、磁化に
よる外形寸法の変化(磁歪)が一方向性電磁鋼板に比較
して一桁近く大きく、変圧器などの鉄心に使用した際の
振動や騒音が大きいことである。
に張力を付加することで磁歪が減少することが知られて
いる。すなわち、従来の二方向性電磁鋼板では、鋼板に
張力が作用していない状態(無張力状態)では、2×1
0-5前後の磁歪を示すが、例えば5MPa程度の張力を
付加すると、磁歪は付加前のそれの数分の1程度にまで
減少する。しかしながら従来の二方向性電磁鋼板では、
張力を付加することによる磁歪低減効果が十分ではな
く、また、張力の大きさが変化するとその磁歪抑制効果
も大きく変動する(損なわれる)という問題がある。
tic Materials、Vol.2、1971、
p971には、厚さが0.3mmで、結晶粒径が20m
m以上の粗大粒からなる結晶組織を有する二方向性電磁
鋼板に張力皮膜を備えさせると、その鉄損や磁歪が減少
することが報告されている。
低磁束密度での測定であるにもかかわらず、張力皮膜が
無い場合で14×10-6以上、張力皮膜を形成した状態
で2.2×10-6以上である。またその鉄損W15/60
は、張力皮膜形成後でも1.4W/kg以上と非常に悪
い、と報告されている。さらに上記文献には、鋼板に作
用する張力が変化すると磁歪特性が大きく変動する(損
なわれる)ことも記載されている。
量や鉄心を固定するための締め付け力などに起因する外
力が作用するため、電磁鋼板に付加される張力が変動す
る。従って従来の二方向性電磁鋼板では張力付加により
磁歪特性を制御するのが実用上困難であった。
特性に優れ、かつ、磁歪が小さい二方向性電磁鋼板およ
びその製造方法を提供することにある。
(<001>軸方向)の磁歪定数は正で、4×10-5程
度の比較的大きなものである。つまりこの方向に磁化す
る結晶格子はこの方向に上記磁歪定数の比率で伸びる。
これが電磁鋼板を磁化した際に磁歪が生じる原因であ
る。交番磁界下で磁化すると上記寸法変動が繰り返し発
生し、騒音問題やエネルギー変換効率の低下などの問題
が生じる。
のように磁化が180゜磁壁の移動のみにより生じる場
合には磁化に伴う結晶格子の伸びは鋼板の外形変化とし
ては現れない。これは180°磁壁が移動しても磁化の
符号が反転するだけで伸びの方向は変化しないためであ
る。これが、一方向性電磁鋼板の磁歪が小さい理由であ
る。
常に大きい原因は、従来の二方向性電磁鋼板には90゜
磁壁が多量に存在し、磁化の際にこの90゜磁壁が移動
するため、磁化方向が90゜回転し、これに伴って結晶
格子の伸びの方向が90°回転し、これが外形変化とし
て表れることにある。
小さくするために二方向性電磁鋼板の磁区構造について
詳細な研究を重ねた結果、以下のような新たな知見を得
た。図2は、キュリー温度(Tc)以上に加熱して消磁
した後に無磁場中で冷却する熱消磁を施した二方向性電
磁鋼板で観察される磁区構造を説明するための模式図で
あり、図2(a)は、磁化方向(図中の矢印で示す)が
180°異なる磁区が隣接している領域(180°磁
区)を表す。符号2は180°磁壁である。
行な直線状であり、その間隔(d)は、結晶組織に依存
して数十μmから10mm前後の範囲内で大きく変化す
る。結晶の{100}面が鋼板面と完全に平行でないと
きは、この磁区に符号3で示すような磁化方向が異なる
補助磁区(樹枝状磁区)が多数発生する。
区が隣接している領域(90°磁区)を表す。符号5は
90°磁壁である。結晶の{100}面が鋼板面と完全
に平行でないときは、この90°磁区にも樹枝状磁区が
多数観察される。
折れ曲がった磁壁(以下、単に「ジグザグ状磁壁」と記
す)を有する磁区構造(以下、単に「ジグザグ状磁区」
と記す)を表す。ジグザグ状磁壁4の折れ曲がりの間隔
は10μm前後である場合が多い。
を説明するための模式図である。図中の矢印は磁化方向
を表す。図3に示すように、ジグザグ状磁区は、鋼板内
部に鋼板面垂直方向に磁化を持つ磁区があり、鋼板面に
おいてこの磁区と環流磁区を形成していると推定され
る。ジグザグ状磁壁4の折れ曲がりの角度(θ)は11
0゜前後(理論計算値は106゜)である。ジグザグ状
磁区は比較的結晶粒が微細で、鋼板に熱歪みなどによる
微小な歪みが分布している場合に生じる傾向がある。
板厚の10倍以下であること、{100}面集積度と鋼
板面内の<001>軸集積度が高いこと、熱消磁状態か
つ無応力下の鋼板表面で観察される磁区模様における1
80゜磁壁間の平均間隔が0.50mm以下であるこ
と、上記磁区模様におけるジグザク状磁壁を有する磁区
が面積率で30%以下であることなどのいずれかの条件
を満足する場合には、鋼板面内の磁化容易方向に交番磁
界を作用させて磁化した際の磁歪が極めて小さい。
磁状態では、一般に二方向性電磁鋼板の磁区構造は90
゜磁壁を多量に含むもので、この状態から磁化すると9
0°磁壁が移動して大きな磁歪を発生する。従来の二方
向性電磁鋼板では交番磁界中で磁化した際にも磁化途中
でこのような90°磁壁を多量に含む磁区構造となり、
引き続く磁化過程でこれらの90゜磁壁が移動して大き
な磁歪を発生する。
造を有する本発明の二方向性電磁鋼板では、交番磁界中
で磁化を繰り返している最中には、従来のものと異な
り、磁化途中で消磁状態となっても90°磁壁を生成し
ないか、生成してもその量が非常に小さいと考えられ
る。
造の変化を説明するための模式図であり、図4(a)は
従来の二方向性電磁鋼板に関する場合、図4(b)は本
発明鋼に関する場合である。
電磁鋼板では、消磁状態で磁化方向に垂直な方向に向い
た磁区が表れて90°磁壁が生成する。他方図4(b)
に示すように本発明の二方向性電磁鋼板では、消磁状態
で180°磁壁しか生成せず、そのために磁歪が発生し
ないと考えられる。
における180゜磁壁間隔(d)が0.50mm以下で
あり、180゜磁壁が密に発生し易い状態であるので、
交番磁界による磁化途中の消磁状態でも180゜磁壁が
非常に発生しやすく、90゜磁壁の生成を必要としない
のであろう。本発明の二方向性電磁鋼板も熱消磁状態で
は90°磁壁を多数含んでいるが、交番磁界中では90
°磁壁は消失するため、熱消磁状態での90゜磁壁の量
は問題とならない。
る場合は、交番磁界による磁化のときにもジグザグ状磁
区が発生しやすい。ジグザグ状磁区を有する鋼板の磁化
には90°磁壁の移動を伴うため、ジグザグ状磁区の発
生消滅が繰り返されると磁歪が大きくなる。従って磁歪
を減少させるためにはジグザグ磁区を少なくする必要が
ある。
構造を有する鋼板に適度な張力を付加することで一層磁
歪を低減し得ることも知見した。従来の二方向性電磁鋼
板においても、鋼板に張力を付加することで磁歪を軽減
し得ることが知られている。例えば従来の二方向性電磁
鋼板の磁歪は鋼板に張力が作用していない状態(無張力
状態)では2×10-5前後であるが、鋼板に例えば5M
Pa程度の張力を付加すると磁歪は数分の1程度にまで
低減する。
は、付加する張力の大きさが変化するとその磁歪抑制効
果が大きく変動する(損なわれる)という問題点があっ
た。鉄心として使用中の状態では鉄心質量や鉄心を固定
するための締め付け力等に起因する外力が電磁鋼板に作
用するため電磁鋼板に付加すべき張力が変動する。従っ
て従来の二方向性電磁鋼板では張力付加による磁歪特性
の制御が実用上困難であった。
は、張力を付加すると磁歪は10-6程度にまで低減でき
るうえ、一定値以上の張力を付加したとき張力に対する
磁歪の変化率が零に近くなる、すなわち実使用状態でも
安定して低磁歪特性を発揮することができるという特長
を有する。このような効果が得られる理由は定かではな
いが、交番磁界による磁化に際して90゜磁壁が生成し
にくいことによるものと推測される。
のみに付加するのではなくて、圧延方向、圧延直角方
向、その他面内各方向にほぼ等しい大きさの張力(「等
方的な張力」とも記す)を付加することにより、鋼板面
内の直交する2つの磁化容易方向共に優れた磁歪抑制効
果が得られる。この方法により一方向性電磁鋼板の圧延
方向と同等、もしくはそれ以上の低磁歪低鉄損特性を鋼
板面内の直交する二方向で実現することができる。
現させるはかりではなく、磁歪を通した応力の磁化への
影響を軽減し、電磁鋼板の鉄損を低減したり、鋼板に応
力が加わったときの鉄損の劣化をも防止する役割を果た
す。
たものであり、その要旨は下記(1)〜(6)に記載の
低磁歪二方向性電磁鋼板および(7)〜(9)に記載の
その製造方法にある。
均結晶粒径が板厚の10倍以下であり、無応力状態の鋼
板の磁化容易方向に交番磁界を印加して最大1.7Tの
磁束密度まで磁化したときに発生する磁歪が10×10
-6以下であることを特徴とする低磁歪二方向性電磁鋼
板。
均結晶粒径が板厚の10倍以下であり、鋼板面内の磁化
容易方向に平行に1MPa以上、鋼の弾性限度以下の張
力を付加した状態で交番磁界を印加して最大1.7Tの
磁束密度まで磁化したときに発生する磁歪が、鋼板面内
の二つの磁化容易方向の内の少なくとも一つの方向にお
いて3.0×10-6以下であることを特徴とする低磁歪
二方向性電磁鋼板。
均結晶粒径が板厚の10倍以下であり、鋼板面に平行、
かつ実質的に面内等方向の1MPa以上、鋼の弾性限度
以下の張力を付加した状態で交番磁界を印加して最大
1.7Tの磁束密度まで磁化したときに発生する磁歪
が、二つの磁化容易方向で共に3.0×10-6以下であ
ることを特徴とする低磁歪二方向性電磁鋼板。
傾斜角度が15°以下である{100}面を有する結晶
粒の面積率が70%以上、かつ、鋼板面内の直交する2
つの方向から20°以内に<001>軸を有する結晶粒
の面積率が70%以上であることを特徴とする上記
(1)〜(3)のいずれかに記載の低磁歪二方向性電磁
鋼板。
観察される磁区模様が、下記a項および/またはb項に
記載の条件を満足するものであることを特徴とする上記
(1)〜(4)のいずれかに記載の低磁歪二方向性電磁
鋼板; a:180゜磁壁間の平均間隔が0.50mm以下であ
る、 b:ジグザク状磁壁を有する磁区の面積率が30%以下
である。
有する張力皮膜、または、アルミナとホウ酸塩とを含有
する張力皮膜を備えたことを特徴とする上記(1)〜
(5)のいずれかに記載の低磁歪二方向性電磁鋼板。
%、Si:6.5%以下、Mn:0.2〜2.0%を含
有し、冷間圧延後一次再結晶させた後の表面における
{100}<001>方位への集積度が方位配向性のな
いものの集積度の3倍以上である鋼板を、脱炭促進物
質、もしくは脱炭促進物質と脱Mn促進物質とを含有す
る焼鈍分離材を該鋼板間に介在させて、減圧雰囲気下で
焼鈍する最終焼鈍を施すことを特徴とする低磁歪二方向
性電磁鋼板の製造方法。
%、Si:6.5%以下、Mn:0.2〜2.0%を含
有する冷間圧延鋼板を、脱炭促進物質、もしくは脱炭促
進物質と脱Mn促進物質とを含有する焼鈍分離材を該冷
間圧延鋼板間に介在させて減圧雰囲気下で最終焼鈍する
二方向性電磁鋼板の製造方法であって、該最終焼鈍の5
50〜700℃の間の加熱速度を20℃/分以下とする
ことを特徴とする低磁歪二方向性電磁鋼板の製造方法。
塩とコロイダルシリカとを含有する溶液、または、アル
ミナゾルと硼酸化合物とを含有する溶液を塗布し、30
0℃以上に加熱して鋼板表面に張力皮膜を形成すること
を特徴とする上記(7)または(8)に記載の低磁歪二
方向性電磁鋼板の製造方法。
る。 (a)鋼の化学組成 C:製品段階では、磁気時効を生じさせないために30
ppm以下とすることが好ましい。
る際には、最終焼鈍前の鋼板には0.02%以上のCを
含有させるのが好ましい。その理由は、最終焼鈍におい
て脱炭を利用した組織制御を可能とするためである。よ
り好ましくは0.03%以上、さらに好ましくは0.0
4%以上である。
多くなると(α+γ)2相域の上限温度が低くなり、焼
鈍温度が低く制限されて脱炭終了までの最終焼鈍時間が
長くなり、生産性を損なう。また、鋼が脆化し素材の圧
延が困難になる。このような不都合を避けるためにC含
有量は0.20%以下とするのがよい。より好ましくは
0.10%以下、さらに好ましくは0.08%以下であ
る。
減する作用があるので、鉄損を低減するためにSiは
0.5%以上含有させるのが好ましい。より好ましくは
1.5%以上、さらに好ましくは2%以上である。Si
を多量に含有させると鋼の飽和磁束密度が減少するう
え、鋼が脆くなり加工性を損なう。このような不都合を
避けるためにSi含有量は6.5%以下とする。好まし
くは5%以下、より好ましくは4%以下である。
め渦電流損失を低減する作用があり、鋼の鉄損を低減す
るために含有させても構わない。しかしながら多量に含
有させると飽和磁束密度が減少するうえ、鋼が脆くなり
加工性を損なう。従ってMnを含有させる場合でも2%
以下とするのがよい。
鉄損を低減する作用があるので含有させても構わない。
しかしながらAlを過度に含有させると磁歪が増加する
ため、含有させる場合でも2%以下とするのがよい。
の元素はα−フェライト中に固溶して電気抵抗を高めて
鉄損を低減する作用があり、また、Coに関しては飽和
磁束密度を増加させる作用がある。従ってこれらの効果
を得るために含有させても構わない。しかしながらCo
は高価であるうえ、過度に含有させると磁歪が増すので
含有させる場合でも1.0%以下とするのがよい。Cr
は飽和磁化を過度に減少させないため含有させる場合で
も2.0%以下とするのが好ましい。
るため0.05%以下の範囲で含有させてもよい。上記
以外はFeおよび不可避的不純物である。 (b)結晶組織 低磁歪低鉄損特性を有する二方向性電磁鋼板とするため
に、その結晶組織を鋼板面に平行な断面で観察したとき
の平均結晶粒径が板厚の10倍以下であるものとする。
好ましくは5倍以下、より好ましくは3倍以下、さらに
好ましくは2倍以下である。
が高い鋼板では、結晶間の粒界のほとんどは小角粒界と
なっている。本発明では両側の結晶方位に1゜以上の角
度差がある境界を結晶粒界と定義し、この結晶粒界で囲
まれた粒を結晶粒と定義する。結晶粒径は結晶粒の面積
と等面積の円の直径と定義する。双晶境界は結晶粒界と
は見なさない。
を小さくして磁歪を減少させるためには、鋼板面に垂直
な断面で観察したときに鋼板の厚さ方向に貫通していな
い結晶粒の存在比率を面積率で3%以上とするのが好ま
しい。結晶粒径や未貫通結晶粒の比率がこの条件を満足
しない場合には、磁区構造が変化し磁歪・鉄損特性共に
劣化することがあるからである。
EBSP法(Electron Back Scatt
ering Pattern)を用いて3次元結晶方位
分布を求めるなどの手段により確認できる。
板面からの傾斜角度が15°以下である{100}面を
有する結晶粒の面積率(Ffa)が70%以上、かつ、鋼
板面内の直交する2つの方向から20°以内に<001
>軸を有する結晶粒の面積率(Fax)が70%以上であ
る集積度の高い集合組織を有するものとするのが好まし
い。
は、上述の{100}面を有する結晶粒の面積率Ffa
は、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以
上である。また上述の<001>軸を有する結晶粒の面
積率Faxの好ましい範囲は80%以上、さらに好ましく
は90%以上である。
方向(容易磁化方向)は圧延方向と圧延直角方向とする
のが好適であるが、容易磁化方向は必ずしも上記方向に
限定する必要はなく、圧延方向と圧延直角方向から任意
の方向にそれぞれ同一角度だけ回転した場合であって
も、その方向に磁化することにより本発明が目的とする
優れた磁気特性と低磁歪性能を十分に発揮することがで
きる。
磁歪を低下させるために、熱消磁状態かつ無応力状態の
鋼板表面の磁区構造は、ジグザク状磁区の比率(Aj )
が面積率で30%以下、かつ、180°磁壁の平均間隔
(d)が0.50mm以下のものとするのが好ましい。
鋼板面内の磁化容易方向とは、鋼板面に平行で互いに直
交する<001>軸の平均の集積方向を意味する。
が認められると磁歪が大きくなるので、その比率(Aj
)は面積率で30%以下とするのが好ましい。より好
ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下であ
る。
80°磁壁の平均間隔(d)が0.50mmを超えると
交番磁界中で90°磁壁が消滅しなくなり磁歪改善効果
が得られない可能性があるので、dは0.50mm以下
とするのが好ましい。より好ましくは0.3mm以下、
さらに好ましくは0.2mm以下である。
し、応力除去と熱消磁した試料を用いてSEM(Sca
nning Electron Microscop
e)により観察する等の方法で確認できる。
いて鋼板の伸びを検出する方法やレーザーとドップラー
効果を用いて鋼表面の伸長速度を検出する方法(レーザ
ードップラー法)などで測定できる。何れも、磁化が零
の状態を基準(伸び零)として磁化方向の伸びを求める
のが通例である。磁化方向に収縮する場合の磁歪は負と
して表示される。本発明における磁歪は、磁化サイクル
における磁歪の変化量(最大磁歪と最小磁歪の差)を意
味し、λp-p として表示する。
態の鋼板の磁歪が、商用周波数(50〜60Hz)の交
番磁界を磁化容易方向に作用させて最大1.7Tの磁束
密度まで磁化したときに発生する磁歪がλp-p で10×
10-6以下である場合に、特に顕著な効果が得られる。
従って低磁歪二方向性電磁鋼板としては無応力状態の鋼
板の上記条件での磁歪がλp-p で10×10-6以下のも
のとする。張力付加の効果をさらに大きくする観点か
ら、好ましくはλp-p が8×10-6以下、より好ましく
はλp-p が6×10-6以下のものである。
弾性限度以下の張力が付加された二方向性電磁鋼板であ
って、上記と同様の商用周波数の交番磁界を印加して最
大1.7Tの磁束密度まで磁化したときの磁歪がλp-p
で、鋼板面内の二つの磁化容易方向の内の少なくとも一
つの方向において3.0×10-6以下である場合には磁
歪の張力依存性が小さく、張力変動に伴う磁歪変化が小
さいので実使用環境において優れた磁歪特性が発揮され
る。従って低磁歪二方向性電磁鋼板としては上記張力を
付加した状態で発生する磁歪のλp-p が3.0×10-6
以下であるものがよい。
れる積み鉄心や回転機の鉄心に使用する電磁鋼板では、
上記2つの方向の磁歪が小さいことが望まれる。鋼板面
内で直交する2つの方向での磁歪が共に3.0×10-6
以下であれば実使用環境において優れた性能を発揮する
ことができる。
上の張力を付加するのが好ましい。付加する張力の大き
さはより好ましくは5MPa以上である。塑性変形が生
じると磁気特性が劣化するので張力の上限は鋼の弾性限
度以下とするのがよい。鋼板面内の一つの磁化容易方向
に平行な方向でもよい。この場合には張力方向の磁歪特
性が向上する。
等方的な張力でもよい。実質的にとの意味は、少なくと
も鋼板面内で直交する2つの磁化容易方向にほぼ同じ大
きさの張力が付加されていればよいことを意味する。こ
の場合には鋼板面内で直交する2つの磁化容易方向の磁
歪特性が共に向上する。
鋼板に対する引張り力を機械構造的に外部から付加する
方法や、鋼板表面に公知の張力皮膜を備えさせるなどの
方法が好適である。
いが、燐酸塩と珪素酸化物とを含有するのも(以下、単
に「燐酸塩シリカ系皮膜」とも記す)、または、アルミ
ナ(Al2O3)と酸化硼素(B2O3)を含有する張力皮
膜(以下、単に「アルミナ酸化硼素系皮膜」と記す)が
好適である。
含有量は、乾燥皮膜質量を100%とした場合の質量%
(以下、単に「乾燥皮膜あたり」とも記す)で20%以
上、80%以下とするのがよい。珪素酸化物の含有量が
20%に満たない場合には鋼板に十分な張力を付与する
ことができず、80%を超える場合には、鋼板と皮膜と
の間の熱膨張係数差が過大になり、皮膜の密着性が低下
する。珪素酸化物としては、特にコロイダルシリカ(コ
ロイド珪酸)を塗布、乾燥して得られるものがよい。
膜の熱膨張係数を調整し、皮膜の強さや密着性を確保す
るために含有させるものであり、その含有量は、乾燥皮
膜あたりで25%以上、75%以下とするのがよい。2
5%に満たない場合には皮膜の強さや密着性が十分でな
いために鋼板に十分な張力を付与することができず、7
5%を超える場合には鋼板に付与される張力が低下す
る。
アルミニウム)もしくはMgの燐酸塩(燐酸マグネシウ
ム)を主成分とするものがよい。Sr、Ba、Feなど
の燐酸塩を用いることもできる。
着性を向上させるためにさらに、無水クロム酸、クロム
酸、重クロム酸からなる群の内の1種または2種以上を
乾燥皮膜あたり1%以上、20%以下含有させても構わ
ない。
無定型のアルミナ水和物、もしくは、結晶質または無定
型の水酸化アルミニウムの微粉末を溶液中に分散させて
得られるアルミナゾルと、硼酸とを主成分とする溶液
を、鋼板表面に塗布し、乾燥して得られるものである。
ナには皮膜強度を高めて鋼板に付与する張力を高める作
用がある。この効果を確保するために、アルミナ含有量
は乾燥皮膜あたり30%以上とするのがよい。アルミナ
を過度に含有させると皮膜の密着性が低下するので、そ
の含有量は90%以下とするのがよい。
膨張係数を調整する作用がある。これらの効果を確保す
るために、酸化硼素含有量は乾燥皮膜あたり10%以上
とするのがよい。酸化硼素含有量が過大になると皮膜強
度が低下し、鋼板に付与される張力が低下する。従って
その含有量は70%以下とするのがよい。なお、上記張
力皮膜には、上記組成物以外に、耐熱性向上のために、
Si、Al、Ti、Bなどの酸化物や窒化物を適量含有
させても構わない。
m2 以上、40g/m2 以下とするのがよい。張力皮膜
の厚さが上記下限に満たない場合には鋼板に十分な張力
を付与できない。好ましくは2g/m2 以上である。張
力皮膜の厚さが40g/m2を超えると、鋼板を積層し
た際の占積率が低下するのでよくない。これを避けるた
めに、張力皮膜の厚さは20g/m2 以下とするのが好
ましい。
学蒸着法)によるTiN皮膜、あるいはほうろう系のガ
ラス質皮膜などを施して鋼板に張力を付加することもで
きる。
は、例えば、酸洗などの方法で鋼板片面の張力皮膜を除
去し、発生する鋼板のそり量を鋼板の弾性変形として、
鋼板に作用する張力を計算する、などの方法で求めるこ
とができる。
使用する際の鋼板の間の電気絶縁性を確保するため、鋼
板表面に絶縁皮膜を塗布することが好ましい。絶縁皮膜
の材質には、リン酸塩系やCr酸塩系の溶液を鋼板に塗
布し焼き付ける無機質系の絶縁皮膜や、上記無機質系溶
液にポリアクリルタイプエマルジョン等の有機樹脂を混
合したものを鋼板に塗布し焼き付ける有機−無機混合皮
膜が好適である。
ないが、渦電流損失を低下させ、鉄損を低減するために
0.5mm以下とするのが好ましい。厚さの下限は特に
限定するものではなく、公知の冷間圧延方法で製造可能
な厚さであればよい。
{100}<001>集合組織を有し鋼板の圧延方向と
圧延直角方向に容易磁化方向を有する低磁歪二方向性電
磁鋼板の場合を例として以下に説明する。
利用した組織制御を可能とするために0.02%以上の
Cを含有し、C以外は上記a項に記載の条件を満たすも
のとする。
圧延する方法や連続鋳造する方法等公知の方法で鋼片と
した後、熱間圧延して熱延板とする。溶鋼をストリップ
キャスティングして直接熱延板としても構わない。熱間
圧延条件は特に限定する必要はないが、熱延板の厚さは
5mm以下1mm以上とするのが好ましい。得られた熱
延板は酸洗など任意の方法で表面の酸化物を除去した後
冷間圧延して冷延板とする。冷間圧延に供する前に、熱
延板に焼鈍を施しても構わない。
間圧延としておこなう。その場合の中間焼鈍温度は再結
晶温度以上とし、それぞれの冷間圧延の圧下率は35〜
80%の範囲でおこなうのがよい。
終焼鈍を施すが、一次再結晶が終了した段階での鋼板
は、その表面における{100}<001>方位の集積
度が、集合組織のない試料の強度に対する比(ランダム
比、If )で3倍以上、好ましくは6倍以上、より好ま
しくは10倍以上であるものとするのがよい。
記集積度を満足していない場合には、最終焼鈍過程で
{111}面などの好ましくない方位の増加や、結晶粒
の異常な粗大化、あるいは好ましくない磁区構造の生成
などのために低磁歪特性を得ることが困難となる。
の集積度(If )を高めるには、一次再結晶が生じる温
度範囲の昇温速度を遅くするのがよい。すなわち、一次
再結晶が生じる温度領域である550℃以上、700℃
以下の範囲での加熱速度を20℃/分以下とするのがよ
い。上記一次再結晶は、最終焼鈍工程とは別の一次再結
晶焼鈍工程によりおこなってもよいが、最終焼鈍時の加
熱速度を上記の条件を満足するように徐加熱とすること
で一次再結晶焼鈍工程を省略しても構わない。
促進する物質、もしくは脱炭と脱マンガンの両方を促進
する物質を含有する焼鈍分離材を介在させ、冷延板が鋼
帯である場合にはこれらをコイル状に巻き、鋼板である
場合にはこれらを積層して焼鈍すればよい。冷延板間に
焼鈍分離材を介在させることにより、最終焼鈍中に脱
炭、もしくは脱炭と脱マンガンの両方を生じさせ、それ
に伴うγ→α変態によって鋼板表面と平行に(100)
面を高密度に持つ集合組織を発達させると共に、磁気特
性に有害なCの含有量を十分に低くすることができる。
表面から内部へと順次進行するが、本発明の規定する焼
鈍条件下では、(100)面を鋼板面と平行する結晶粒
の表面エネルギーが他の方位の結晶粒の表面エネルギー
よりも格段に低くなる為、(100)面を鋼板面と平行
する結晶粒が優先的に表面から内部へと成長し、鋼板面
と平行に(100)面を高密度に持つ集合組織が発達す
ると考えられる。
O2 などのSi酸化物を用いることができる。Si酸化
物は室温では安定であるが1000℃程度の高温領域で
は不安定になり、鋼中の炭素によって還元され、生じた
Siは鋼に溶解する。鋼中の炭素は次式のような反応が
生じてCOガスとなり鋼板の間隙から排出され脱炭が進
行する。 SiO2+2C[鋼中]→Si[鋼中]+2CO[ガ
ス] 上記脱炭作用を有する物質としては、Si酸化物の他に
Cr2 O3 、TiO2、FeO、MnO、V2 O3 、V
2 O5 、VOなど、高温の適切な雰囲気下で比較的不安
定になる、すなわち、焼鈍温度で分解して酸素を発生
し、脱炭を促進する酸化物を用いることもできる。
アルカリ金属の炭酸塩、CaCO3、NaCO3 等の非
常に不安定な酸化物の使用を避けるのが望ましい。この
ような炭酸塩は、低酸素雰囲気下で高温にすると多量の
酸素を発生し、鋼板中のSiやMnを酸化して鋼板表面
のエネルギー状態を変化させ、ひいては(100)面密
度を低下させるので好ましくない。
混合して使用してもよい。また、脱炭反応速度の調整
や、焼鈍後に鋼板から焼鈍分離材を剥離しやすくするた
めに、高温で安定な無機物、例えばAl2 O3 などの酸
化物、BNやSiCなどの安定な窒化物や炭化物を上記
酸化物に混合しても構わない。
2 を含む酸化物である。この酸化物を脱炭促進材に使用
すると上記の反応式からわかるように、酸化物が還元さ
れ生成する物質が元々鋼板中に添加されているSiであ
り、容易に鋼中に溶解すると共に、溶解しても鋼板の磁
気特性を阻害しないばかりか電気抵抗を高め鉄損を低下
させる役割を果たす。またSiO2 の還元を利用して脱
炭させる場合には含有される合金元素の中で最も酸化さ
れやすいSi酸化物が還元される条件下にあり、したが
って鋼板表面では酸化が生じないので、上述の(10
0)面を鋼板面と平行する結晶粒の表面エネルギーを低
下させる意味からも好適である。
Ti酸化物(TiO2 )がある。鋼板中のMnは適切な
雰囲気において鋼板表面から昇華し、鋼板表面近傍には
Mn欠乏層(脱Mn層)が形成される。TiO2 は鋼板
から昇華するMnと複合酸化物(TiMnO2 )を形成
し、Mnを吸収することによって、脱Mnを促進すると
考えられる。
鈍中に鋼板から昇華するMnを吸収する物質であり、脱
炭反応や、鋼板の表面エネルギー状態に悪影響を及ぼさ
ないものであればよい。TiO2 以外にZrO2 やTi
2 O3 を用いても構わない。特にTiO2 は脱炭促進作
用も有するのでTiO2 単独でも脱炭と脱Mnの双方が
促進されるので好適である。
的に生じさせ、さらに(100)面の表面エネルギーを
低めて{100}<001>集合組織の発達を促進する
ために、SiO2 とTiO2 を共に含むものがよい。よ
り好ましくは、最終焼鈍した鋼板からの焼鈍分離材の剥
離性を改善するために、SiO2 とTiO2 に加えてA
l2 O3 を含有させる。
分離材構成物質を、例えば板状、粉末状、繊維状、繊維
をシート状にしたもの、これらの繊維やシートにさらに
粉末を混入させたものなどがある。最も望ましい形態は
繊維状または繊維をさらにシート状に加工したものであ
る。このような形態にすれば取り扱いが容易であるう
え、繊維間に多量の空隙があるので脱炭反応によって生
じた一酸化炭素の系外への排出やMnの昇華が容易にな
るという利点がある。
雰囲気は水素ガス、不活性ガス、または両者の混合ガス
を主体とする雰囲気、さらには真空あるいは減圧雰囲気
がよい。好ましい減圧雰囲気の真空度は13KPa以
下、なお好ましくは130Pa以下である。真空度が1
3KPaを超えると{100}面密度が低下する。
域で焼鈍して脱炭または脱炭と脱Mnをおこなわせ、脱
炭後はα単相となる温度域で焼鈍するのがよい。好まし
いのは、{100}面集積度を高めるために850℃以
上のα+γ二相共存温度域である。保持温度は1300
℃以下が望ましい。1300℃を超える焼鈍温度は工業
的に実現するのが困難である。
鈍を終了するのがよい。過度に焼鈍を行うと結晶組織が
粗大化するのでよくない。例えば1100℃の温度では
炭素量が30ppmを下回った後5時間以上均熱しない
方がよい。{100}<001>集合組織の集積度の高
い材料ほど脱炭が完了した後の結晶粒粒の粗大化が生じ
難く、均熱時間の制御が容易となる。これは、{10
0}<001>集合組織の集積度の高い材料ほど粒界移
動速度の小さな小角粒界の存在頻度が高いためであると
考えられる。
発明以外の方向である鋼板を得るには、上記一次再結晶
終了時の鋼板表面の集合組織が、所望の方位の集積度が
ランダム比で3以上のものを最終焼鈍に供すればよい。
は、鋼板間の焼鈍分離材を除去した後、燐酸塩と珪素酸
化物とを主成分とする燐酸塩シリカ系皮膜用溶液、また
は、アルミナゾルと硼酸とを主成分とするアルミナ酸化
硼素系皮膜用溶液(以下、「皮膜組成物溶液」と総称す
る)を、所望の厚さの乾燥皮膜が得られるように鋼板表
面に塗布し、乾燥および焼付け処理を施すのがよい。
いた全容液に対する質量比で(以下、皮膜組成物溶液の
組成は、希釈水を除いた全容液に対する質量%を意味す
る)燐酸塩を3%以上、60%以下、珪素酸化物を3%
以上、60%以下含有させたものがよい。燐酸塩が3%
に満たない場合には、得られる皮膜の機械的強度や鋼板
との密着性が十分ではなく、60%を超えると鋼板との
熱膨張係数差が大きくなりすぎて過大な応力が皮膜に作
用し、鋼板と皮膜の密着性が損なわれる。珪素酸化物が
3%に満たない場合には、皮膜とした後の張力が十分で
はなく、60%を超えると、鋼板との熱膨張係数差が大
きくなりすぎて過大な応力が皮膜に作用し、密着性が損
なわれる。
めに、Alの燐酸塩(燐酸アルミニウム)やMgの燐酸
塩(燐酸マグネシウム)などが好適であるが、Sr、B
a、Feなどの燐酸塩を使用しても構わない。
ために、珪素酸化物と燐酸塩に加えて、無水クロム酸、
クロム酸、重クロム酸からなる群の内の1種または2種
以上を15%以下含有させても構わない。また、耐熱性
を向上させる目的で、Si、Al、Ti、Bなどの酸化
物や窒化物を含有させても構わない。
または無定型のアルミナ水和物、あるいは、結晶質また
は無定型の水酸化アルミニウムの微粉末を溶液中に分散
させたアルミナゾルを5%以上、50%以下、および、
硼酸を2%以上、30%以下含有させたものがよい。
限に満たない場合には、鋼板に十分な張力を与えること
ができない。また、上記上限を超える場合には皮膜が容
易に剥離するので十分な張力が得られない。アルミナ酸
化硼素系皮膜用溶液の残部は水でよい。塗布量は、乾燥
膜厚が所望の値になるように、溶液の希釈度に応じて定
めればよい。
℃以上で焼付けるのがよい。良好な密着性と張力を得る
ために、より好ましくは600℃以上で焼付ける。焼付
け時の雰囲気は大気でもよいが、不活性ガス、水素ガ
ス、COガス、あるいはこれらの混合ガスを用いるのが
好ましい。
終焼鈍して脱炭、または脱炭と脱Mnをおこなった鋼板
に、必要に応じて平坦化を目的としたスキンパス圧延、
あるいは連続焼鈍などを施した後がよい。
上記皮膜処理の前に、脱脂、酸洗、あるいは、Niフラ
ッシュめっきなどの前処理を施しても構わない。また、
燐酸塩、無水珪酸塩、水ガラスなどを含む皮膜を下地と
して鋼板表面に設けた後に上記皮膜処理をおこなっても
よい。
する際の鋼板の間の電気絶縁性を確保するため、リン酸
塩系やクロム酸塩系の公知の無機質系溶液、あるいは、
上記無機質系溶液にポリアクリルタイプエマルジョン等
の公知の有機樹脂を混合した有機−無機混合溶液を公知
の方法により塗布し、焼付けても構わない。
の鋼Aに記載の化学組成を有する鋼塊を熱間鍛造して厚
さが70mmの鋼片を得た。
れを酸洗して表面の酸化物を除去した後、冷間圧延して
厚さ:0.90mmの冷延板とし、次いで1050℃に
加熱する中間焼鈍を施した後、再度冷間圧延して厚さ:
0.35mmの冷延板を作製した。得られた冷延板に、
昇温速度(Vu )を種々変更して750℃に加熱する一
次再結晶焼鈍を施した。
を質量比で55:45の割合で含有する非晶質酸化物か
らなる繊維を布状に織り、これにTiO2 粉末を混合し
た焼鈍分離材シートを作製した。混合比は非晶質酸化物
繊維からなる布:50質量%、TiO2 :42質量%、
残部は結合材としてのアクリル系樹脂である。
シートとを交互に積層して加熱炉に装入し、真空度:
0.13Paの減圧雰囲気で1℃/分の昇温速度で加熱
して1100℃で12時間保持する最終焼鈍を施した。
最終焼鈍終了後の鋼板の化学組成はC:0.0015
%、Si:2.97%、Mn:0.75%であった。
晶組織と集合組織をEBSP(Electron Ba
ck Scattering Pattern)法を用
いて解析した。一次再結晶集合組織は、鋼板表面から得
た結晶方位のデータから3次元結晶方位分布を求め、そ
の{100}<001>方位の強度を方位配向性のない
ものの集積度に対する比(It )として算出した。最終
焼鈍後の試料については、鋼板表面に平行な面のEBS
Pのデータから1゜以上の角度差を持つ結晶粒界を求
め、これらの結晶粒界で囲まれた結晶粒の結晶方位と結
晶粒直径を算出し、板面垂直方向から15°以内に<0
01>軸を有する結晶粒の面積率(Ffa)、および圧延
方向と圧延直角方向から20°以内に<001>軸を有
する結晶粒の面積率(Fax)を求めた。また、結晶粒の
平均直径(D)を調査し、鋼板厚さ(t)に対する比
(D/t)を計算した。
に研磨し、歪み除去と熱消磁のため900℃で10分間
焼鈍した後、SEM(Scanning Electr
onMicroscope)により観察し、ジグザグ状
磁区面積率(Aj )および180°磁壁間隔(d)を求
めた。
向または圧延直角方向を長手方向とする長さ:100m
m、幅:30mmの短冊板を切りだし、歪み取り焼鈍を
施した後、各短冊の長手方向に0〜10MPaの範囲の
張力(一軸方向の張力)を機械的に付加し、単板磁化測
定装置を用いて測定した。磁歪はレーザドップラー法を
用いて上記短冊の長手方向に50Hzの交番磁界を印加
して最大磁束密度が1.7Tになるように磁化し、λ
p-p を測定した。磁気特性および磁歪は鋼板の磁化方向
に張力を付加した場合についても測定した。
結果を表2に記す。
を有し、λp-p は、無応力下(張力0)で10×10-6
以下の小さな磁歪しか発生しなかった。張力を付加する
と磁歪が大幅に減少し、特に試番1〜3では2.9MP
a以上の張力を付加すると2×10-6以下の低磁歪特性
を有していた。また張力が変動しても磁歪の変化が非常
に小さく、安定して低磁歪特性を発揮した。
0}<001>集合組織の集積度(It )が3に満たな
かった鋼板を最終焼鈍した試番6〜8では結晶組織、集
合組織あるいは磁区構造などが本発明が既定する条件外
であり、磁束密度がよくないうえ磁歪が大きく、磁歪の
張力による変動も大きかった。
ついて測定した磁歪曲線の例を示すグラフであり、図5
(a)は張力を付加しない場合であり、図5(b)は圧
延方向に2.9MPaの張力を作用させた場合である。
図中には参考のためにλp-pの測定範囲を示した。本発
明例においては1.7Tまで磁化したときの磁歪の値が
小さいだけでなく、磁化途中の磁歪の変化も単調で高調
波騒音を発生し難い磁束密度−磁歪特性となっているこ
ともわかる。
鋼A〜Eを真空溶解鋳造し、熱間鍛造して厚さが40m
mの鋼片を得た。これらを熱間圧延して厚さが2.7m
mの熱延板とし、酸洗して表面の酸化物を除去した後、
中間焼鈍を挟む二回の冷間圧延により厚さが0.30m
mの冷延板を得た。これらの冷延板と実施例1に記載し
たのと同様の焼鈍分離材シートとを交互に積層し、真空
度が0.13Paの減圧雰囲気で0.5℃/分の昇温速
度で1080℃に加熱し、14時間保持する最終焼鈍を
施した。なお、最終焼鈍時には各鋼板から小試験片を採
取して上記と同一条件で700℃まで加熱した後冷却
し、これを調査して各鋼板の一次再結晶後のItを求め
た。
を有する厚さが2.7mmの熱延板を上記と同様の条件
で作製し、これを1000℃で2時間焼鈍し、酸洗して
表面の酸化物を除去した後、中間焼鈍を挟む二回の冷間
圧延により厚さが0.30mmの冷延板とした。その
後、真空中で1200℃に加熱し24時間保持する焼鈍
を施し、結晶粒径が20mm以上の粗大な結晶粒を有す
る二方向性電磁鋼板を得た。上記鋼Fに適用した製造方
法は表面エネルギーによる二次再結晶を利用する従来の
製造方法によるものであり、鋼B〜Eに適用した焼鈍分
離材を介在させて最終焼鈍する製造方法とは根本的に異
なるものである。これらの材料について実施例1に記載
したのと同様の方法で鋼板の化学組成、結晶組織、集合
組織、磁区構造、磁気特性および磁歪を測定した。
結果を示す。表3からわかるように鋼A〜E、G、Hお
よびIはいずれも十分に脱炭されていた。これらの鋼で
は脱Mn反応によりMn含有量も減少していた。鋼Fの
化学組成は変らなかった。
ずれも優れた磁束密度を有しており、無張力下での磁歪
や張力変動に対する磁歪の変化率も小さく、安定した低
磁歪特性を備えていた。鋼Fを用いて表面エネルギーに
よる二次再結晶法で製造した試番29で得られた鋼板は
最終焼鈍後の結晶粒が粗大であるうえ、180゜磁壁間
隔(d)も大きく非常に大きな磁歪を発生した。
終焼鈍した鋼板の結晶粒の方位を100極点図上に表し
たものである。図6には53個の結晶粒の方位が表示さ
れているが、{100}<001>方位に強く集積して
いることがわかる。
示すグラフであり、図7(a)、(b)はそれぞれ試番
21の鋼Aの一次再結晶後の鋼板表面の{100}極点
図および{100}<001>方位への集積を示す3次
元方位分布解析例である。これはRoeの表示形式でΦ
=45゜断面を示しており、等高線で配向性が無い材料
に対する倍率を示す。図上端中央の反射強度の高い部分
が{100}<001>方位に対応し、本発明の鋼板は
{100}<001>方位に強く集積した集合組織を有
していることがわかる。
磁壁と樹枝状磁区の例を示す写真であり、図9は鋼Dで
観察されたジグザグ状磁壁に囲まれた磁区の例を示す写
真である。
9で作製した種々の磁歪を有する二方向性電磁鋼板を用
いて、鉄心の外形寸法が高さ:500mm、幅:500
mm、厚さ:25mmである3相3脚型のモデル変圧器
を作製し、周波数が50Hzの励磁電流を印加して、発
生する騒音を測定した。その結果λp-p が10×10-6
以下である場合に騒音が極めて低かった。λp-p が3×
10-6以下である場合には騒音がさらに低かった。
焼鈍を終えた鋼板から50mm角の試験片を切り出し、
歪み取り焼鈍を施した後、圧延方向と圧延直角方向との
二方向に同じ大きさの引張応力が付加されるように、機
械的に引っ張った。張力の大きさは3水準に変更した。
この二方向の張力を付加することによりにより鋼板には
板面内等方的な応力が付加される。これらの試験片の磁
束密度と実施例2に記載したのと同様の条件で測定し
た。磁歪は試験片表面に歪みゲージを張り付けて測定し
た。
より磁歪特性が顕著に改善され、二方向同時に低磁歪特
性を示す鋼板が得られた。
載の張力が付与されていない鋼板の両面に、表6に示す
種々の組成の皮膜組成物溶液(質量%、残部は蒸留水)
を塗布し、水素と窒素の混合ガス中で850℃で2分間
の焼付け処理を施して鋼板表面に種々の張力皮膜を形成
した。
を直径が20mmの丸棒に沿わせて曲げて皮膜の剥離状
況を目視観察し、剥離がないものを良好として評価し
た。また、その磁気特性を実施例1に記載したのと同様
の方法で測定した。
鋼板、試番36および37は、アルミナ酸化硼素系皮膜
を備えた鋼板である。試番31〜34、36および37
はいずれも張力皮膜の密着性が良好であった。その磁歪
は、L方向、T方向共に1.4×10-6以下で、極めて
良好な磁歪特性を示した。皮膜組成物溶液としてコロイ
ダルシリカ100%溶液を使用した試番35は、張力皮
膜の密着性がよくなく、張力皮膜による磁歪改善効果は
認められなかった。
向の二方向の磁気特性が優れ、しかもその磁歪が安定し
て小さい。従って本発明の低磁歪二方向性電磁鋼板を、
変圧器、電動機、発電機などの鉄心として使用すると、
装置のエネルギー変換効率が優れるうえ、使用時の振動
や騒音が少なく、例えば変圧器の騒音防止装置が簡素化
できるなどの利点が得られる。従って装置の効率性と経
済性を大きく改善できるので、極めて有用である。
(a)は{110}<001>集合組織を示し、図
(b)は{100}<001>集合組織を示す。
構造の概念を示す模式図であり、図2(a)は180°
磁区、図2(b)はジグザグ状磁区、図2(c)は90
°磁区を示す。
式図である。
の磁区構造の変化を説明するための模式図である。
ある。
位を100極点図上に表した図である。
示形式でΦ=45゜断面で示す図である。
磁区の例を示す写真である。
区の例を示す写真である。
4:ジグザグ状磁壁、5:90°磁壁、d:180°磁
壁の間隔。
Claims (9)
- 【請求項1】 Siを6.5質量%以下含有し、平均結
晶粒径が板厚の10倍以下であり、無応力状態の鋼板の
磁化容易方向に交番磁界を印加して最大1.7Tの磁束
密度まで磁化したときに発生する磁歪が10×10-6以
下であることを特徴とする低磁歪二方向性電磁鋼板。 - 【請求項2】 Siを6.5質量%以下含有し、平均結
晶粒径が板厚の10倍以下であり、鋼板面内の磁化容易
方向に平行に1MPa以上、鋼の弾性限度以下の張力を
付加した状態で交番磁界を印加して最大1.7Tの磁束
密度まで磁化したときに発生する磁歪が、鋼板面内の二
つの磁化容易方向の内の少なくとも一つの方向において
3.0×10-6以下であることを特徴とする低磁歪二方
向性電磁鋼板。 - 【請求項3】 Siを6.5質量%以下含有し、平均結
晶粒径が板厚の10倍以下であり、鋼板面に平行、かつ
実質的に面内等方向の1MPa以上、鋼の弾性限度以下
の張力を付加した状態で交番磁界を印加して最大1.7
Tの磁束密度まで磁化したときに発生する磁歪が、二つ
の磁化容易方向で共に3.0×10-6以下であることを
特徴とする低磁歪二方向性電磁鋼板。 - 【請求項4】 鋼の結晶集合組織が、鋼板面からの傾斜
角度が15°以下である{100}面を有する結晶粒の
面積率が70%以上、かつ、鋼板面内の直交する2つの
方向から20°以内に<001>軸を有する結晶粒の面
積率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜3
のいずれかに記載の低磁歪二方向性電磁鋼板。 - 【請求項5】 熱消磁状態かつ無応力下の板表面で観察
される磁区模様が、下記a項および/またはb項に記載
の条件を満足するものであることを特徴とする請求項1
〜4のいずれかに記載の低磁歪二方向性電磁鋼板; a:180゜磁壁間の平均間隔が0.50mm以下であ
る、 b:ジグザク状磁壁を有する磁区の面積率が30%以下
である。 - 【請求項6】 表面に、燐酸塩と珪素酸化物とを含有す
る張力皮膜、または、アルミナとホウ酸塩とを含有する
張力皮膜を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいず
れかに記載の低磁歪二方向性電磁鋼板。 - 【請求項7】 質量%でC:0.02〜0.20%、S
i:6.5%以下、Mn:0.2〜2.0%を含有し、
冷間圧延後一次再結晶させた後の表面における{10
0}<001>方位への集積度が方位配向性のないもの
の集積度の3倍以上である鋼板を、脱炭促進物質、もし
くは脱炭促進物質と脱Mn促進物質とを含有する焼鈍分
離材を該鋼板間に介在させて、減圧雰囲気下で焼鈍する
最終焼鈍を施すことを特徴とする低磁歪二方向性電磁鋼
板の製造方法。 - 【請求項8】 質量%でC:0.02〜0.20%、S
i:6.5%以下、Mn:0.2〜2.0%を含有する
冷間圧延鋼板を、脱炭促進物質、もしくは脱炭促進物質
と脱Mn促進物質とを含有する焼鈍分離材を該冷間圧延
鋼板間に介在させて減圧雰囲気下で最終焼鈍する二方向
性電磁鋼板の製造方法であって、該最終焼鈍の550〜
700℃の間の加熱速度を20℃/分以下とすることを
特徴とする低磁歪二方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項9】 上記最終焼鈍を施した鋼板に、燐酸塩と
コロイダルシリカとを含有する溶液、または、アルミナ
ゾルと硼酸化合物とを含有する溶液を塗布し、300℃
以上に加熱して鋼板表面に張力皮膜を形成することを特
徴とする請求項7または8に記載の低磁歪二方向性電磁
鋼板の製造方法。
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