JP2001247371A - 多層セラミック基板の製造方法 - Google Patents

多層セラミック基板の製造方法

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JP2001247371A JP2000058599A JP2000058599A JP2001247371A JP 2001247371 A JP2001247371 A JP 2001247371A JP 2000058599 A JP2000058599 A JP 2000058599A JP 2000058599 A JP2000058599 A JP 2000058599A JP 2001247371 A JP2001247371 A JP 2001247371A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Cu2 Oを含むペーストを用いて銅を主成分
とする配線導体が形成された多層セラミック基板を製造
するとき、ペーストとセラミックとの収縮カーブの差に
よってクラックや反りが生じないようにする。 【解決手段】 焼成工程において、焼成炉内の温度をX
[℃]、セラミック材料の焼結開始温度[℃]±50℃
をT[℃]としたとき、焼成炉内の雰囲気の酸素分圧Y
[mmHg]を、200℃から700℃までの昇温過程
で、Y≦0.28×e0.005X、700℃からT℃までの
昇温過程で、2×10-10 ×e0.015X≦Y≦0.28×
0.005X、T℃から1000℃までの昇温過程で、Y≦
2×10-1 0 ×e0.015X、1000℃から200℃まで
の降温過程で、Y≦10-6となるように制御し、ペース
トとセラミックとの収縮カーブを近似させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、多層セラミック
基板の製造方法に関するもので、特に、銅を主成分とす
る配線導体を有する多層セラミック基板の製造方法にお
ける焼成工程の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】多層セラミック基板は、半導体チップ部
品やその他のチップ部品等を搭載し、これらの電子部品
を相互に配線するために用いられている。そのため、多
層セラミック基板は、複数の積層されたセラミック層を
備えるとともに、上述した相互配線を可能にするための
配線導体を備えている。
【0003】配線導体としては、セラミック層間の特定
の界面および/または多層セラミック基板の外表面に形
成される導体膜や、セラミック層を貫通するように形成
されるビアホール導体等がある。
【0004】このような配線導体は、通常、導電成分と
しての金属粉末ならびにバインダおよび溶剤からなる有
機ビヒクルを含むペーストを、所望のパターンをもって
印刷し、セラミックの焼成と同時に焼成されることによ
って形成される。
【0005】上述した配線導体を構成する金属として、
低抵抗かつ高信頼性の点で、銅を主成分とするものが有
利に用いられている。しかしながら、このような銅を主
成分とする配線導体が形成された多層セラミック基板を
製造するにあたっては、銅の酸化を防止するため、多層
セラミック基板となるべき生の積層体を還元性雰囲気中
で焼成することが必要である。そのため、特に、脱バイ
ンダおよび脱カーボンのための工程に要する時間が長く
なってしまうという問題がある。
【0006】この問題を改善するため、配線導体を形成
するために用いられるペーストにおいて、金属銅ではな
く、CuOまたはCu2 Oからなる粉末を含有させたも
のを用いることが提案されている。
【0007】たとえば、CuO粉末を含有するペースト
が用いられる場合には、酸化性雰囲気中で脱バインダお
よび脱カーボン工程が実施され、次いで、水素またはア
ンモニア分解ガス中でCuOをCuに還元し、さらに、
非酸化性ガス中でセラミックとCuとを一体に焼結する
工程が実施される。
【0008】上述した方法は、還元性雰囲気中では、セ
ラミックグリーンシートや配線導体のためのペーストに
含まれるバインダが熱分解されにくい点に着目し、たと
えば空気中のような酸化性雰囲気中で脱バインダおよび
脱カーボン工程を実施するようにしたものであるが、そ
の後に実施される還元工程において、CuOからCuへ
還元されるとき、体積収縮が生じ、この体積収縮が、比
較的低温の段階、すなわちセラミックグリーンシートに
含まれるセラミックが未だ脆い状態で生じるため、セラ
ミック層側に悪影響を及ぼし、得られた多層セラミック
基板においてクラックや反りが発生しやすいという問題
に遭遇することがある。また、3段階の焼成工程が必要
であり、焼成工程の能率化を図る上で障害となってい
る。
【0009】他方、Cu2 O粉末を含有するペーストを
用いる多層セラミック基板の製造方法は、たとえば、特
開平5−291754号公報または特開平6−6038
号公報に記載されている。Cu2 Oは、上述したCuO
に比べると、Cuへの還元が起こりやすく、また、還元
収縮が小さいため、上述した公報では、セラミックグリ
ーンシートとの整合性が良好であると記載している。
【0010】しかしながら、上述した公報に記載の方法
では、空気中での脱バインダおよび脱カーボン工程と、
還元性雰囲気中での焼結工程との2段階の焼成工程が必
要である。しかも、脱バインダおよび脱カーボン工程
は、空気中において、350〜450℃あるいは350
〜650℃の温度領域で行なうと記載されているが、こ
れらの温度領域では、Cu2 Oとして存在するよりはC
uOとして存在する方が安定であるため、体積変化を伴
って、Cu2 OからCuOへの酸化が進み、その結果、
Cu2 Oを用いた効果が十分に発揮されないことになっ
てしまう。
【0011】また、Cu2 O粉末を含有するペーストを
用いた多層セラミック基板の製造方法として、特開平1
0−95686号公報に記載されたものもある。この公
報に記載された方法では、H2 O+N2 雰囲気中で一括
焼成を実施しているが、Cu 2 OがCuへ還元されるこ
とによって収縮する温度が、セラミック焼結開始温度よ
りも低温側であるため、Cu2 OからCuへの還元によ
る収縮が、セラミック材料の焼結の開始よりも前に始ま
ることになる。そのため、Cu2 O粉末を含むペースト
に、難焼結材料であるAl2 3 やNi等を添加するこ
とによって、このペーストの焼結開始温度をより高温側
にずらせて、セラミックグリーンシートとの整合性を図
るようにしている。
【0012】しかしながら、この従来技術では、配線導
体となるペーストにAl2 3 やNi等を添加している
ことから、得られた配線導体の抵抗率を上げる結果とな
り、好ましくない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明の目
的は、上述したような問題を解決し得る、多層セラミッ
ク基板の製造方法を提供しようとすることである。
【0014】
【課題を解決するための手段】この発明は、1000℃
以下の低温で焼結可能なセラミック材料を含むセラミッ
クグリーンシートを用意する工程と、銅を主成分とする
配線導体を形成するため、セラミックグリーンシートに
関連して、Cu2 Oを含むペーストを付与する工程と、
複数のセラミックグリーンシートを積層することによっ
て、生の積層体を作製する工程と、この生の積層体を焼
成炉内で焼成する工程とを備える、多層セラミック基板
の製造方法に向けられる。
【0015】この発明では、上述した技術的課題を解決
するため、簡単に言えば、生の積層体を焼成する工程に
おいて、基本的に還元性雰囲気を適用しながら、特に昇
温過程での温度領域に応じて、焼成炉内の雰囲気の酸素
分圧を制御することによって、Cu2 Oを含むペースト
の収縮カーブを、セラミックグリーンシートの収縮カー
ブに近似させようとすることを特徴としている。
【0016】より詳細には、焼成する工程において、焼
成炉内の温度をX[℃]、セラミックグリーンシートに
含まれるセラミック材料の焼結開始温度[℃]±50℃
をT[℃]としたとき、焼成炉内の雰囲気の酸素分圧Y
[mmHg]を、(1)200℃から700℃までの昇
温過程では、Y≦0.28×e0.005X、(2)700℃
からT℃までの昇温過程では、2×10-10 ×e0.015X
≦Y≦0.28×e0.005X、(3)T℃から1000℃
までの昇温過程では、Y≦2×10-10 ×e0.015Xとな
るように制御することを特徴としている。
【0017】この発明において、好ましくは、焼成する
工程での焼成炉内の雰囲気の酸素分圧Y[mmHg]
を、1000℃から200℃までの降温過程で、Y≦1
-6となるように制御することが行なわれる。
【0018】この発明において、セラミックグリーンシ
ートに含まれるセラミック材料が1000℃以下の低温
で焼結可能とするため、このようなセラミック材料は、
ガラスとセラミックとの混合物を含んでいたり、焼成す
る工程において、ガラスを生成する組成を有していたり
すればよい。
【0019】また、多層セラミック基板に形成される配
線導体は、たとえば、セラミックグリーンシートの主面
に沿って形成される導体膜である。この導体膜は、多層
セラミック基板の内部において複数のセラミックグリー
ンシート間の界面に沿って形成されたり、多層セラミッ
ク基板の表面上に形成されたりすることができる。ま
た、配線導体は、セラミックグリーンシートを貫通する
ように形成されるビアホール導体をさらに備えていても
よい。
【0020】
【発明の実施の形態】図1は、この発明の一実施形態に
よる多層セラミック基板の製造方法において作製される
生の積層体1を図解的に示す断面図である。
【0021】図1に示すような生の積層体1を作製する
ため、複数のセラミックグリーンシート2が用意され
る。セラミックグリーンシート2は、1000℃以下の
低温で焼結可能なセラミック材料を含んでいる。このよ
うなセラミックグリーンシート2は、たとえば、次のよ
うにして作製されることができる。
【0022】たとえば、酸化バリウム、酸化ケイ素、ア
ルミナ、酸化カルシウムおよび酸化ホウ素を混合すると
ともに、この混合物に対して、ポリビニルブチラールか
らなるバインダと、ジ−n−ブチルフタレートからなる
可塑剤と、トルエンおよびイソプロピレンアルコールか
らなる溶剤とをさらに混合して、スラリーを作製する。
次いで、このスラリーをドクターブレード法によってシ
ート状に成形し、乾燥させることによって、セラミック
グリーンシート2を得ることができる。
【0023】上述したセラミックグリーンシート2に含
まれるセラミック材料は、焼成工程において、ガラスを
生成する組成を有しているが、これに代えて、たとえば
アルミナのようなセラミックと焼結助剤として作用する
ガラスとを混合したものを用いてもよい。
【0024】いずれにしても、セラミックグリーンシー
ト2に含まれるセラミック材料としては、Cu等の金属
を1000℃以下の温度で同時に焼成でき、還元性雰囲
気中での焼成でも、セラミック組成が還元されないもの
であれば、どのような組成のものを用いてもよい。
【0025】また、セラミックグリーンシート2に含ま
れるバインダ、可塑剤および溶剤についても、前述した
ものは一例に過ぎず、これら例示されたもの以外のもの
を用いてもよい。
【0026】次に、銅を主成分とする配線導体を形成す
るため、セラミックグリーンシート2に関連して、Cu
2 Oを含むペーストが付与される。このCu2 Oを含む
ペーストは、たとえば、次のようにして作製されること
ができる。
【0027】Cu2 O粉末に対して、バインダおよび溶
剤を混合してなる有機ビヒクルを所定量加え、攪拌かつ
混練することによって、ペーストを得ることができる。
この場合、Cu2 O粉末の平均粒径や粒子形状について
は、特に限定されるものではないが、平均粒径が0.5
〜10μmであり、粗大粉や極端な凝集粉がないものが
好ましい。また、粒度分布において中心粒径の異なった
山をもつ、あるいは扁平粉等の違った形状をもつ2種類
以上の粉末を配合してもよい。
【0028】また、バインダとしては、たとえば、エチ
ルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、
メタクリル樹脂等を用いることができ、溶剤としては、
たとえば、テレピネオール、ブチルカルビトール、ブチ
ルカルビトールアセテート、アルコール類等を用いるこ
とができる。また、必要に応じて、ペースト中に、分散
剤、可塑剤、活性剤等を添加してもよい。
【0029】また、ペーストの粘度は、印刷性を考慮
し、たとえば、50〜300Pa・sに選ばれる。
【0030】また、ペースト中に、セラミックとの界面
での接着強度を高めるため、ガラスフリットを添加して
もよい。ガラスフリットとしては、ホウケイ酸ガラスか
らなるものなど、既存のガラスフリットを用いることが
でき、軟化点が500〜900℃であって、添加量を5
体積%以下にすることが好ましい。
【0031】セラミックグリーンシート2に関連して形
成される配線導体としては、図1に示すように、セラミ
ックグリーンシート2の主面に沿って形成される導体膜
3および4と、セラミックグリーンシート2を貫通する
ように形成されるビアホール導体5とがある。また、導
体膜3および4としては、セラミックグリーンシート2
間の界面に沿って形成される内部導体膜3と、積層体1
の表面上に形成される表面導体膜4とがある。
【0032】上述したビアホール導体5が形成されるセ
ラミックグリーンシート2にあっては、穿孔機によって
貫通孔が設けられる。
【0033】そして、各セラミックグリーンシート2上
に、スクリーン印刷法によって、前述したCu2 Oを含
むペーストが印刷され、それによって導体膜3および4
ならびにビアホール導体5が形成される。
【0034】なお、導体膜3および4とビアホール導体
5とは、上述のように、同時に形成されてもよいが、導
体膜3および4とビアホール導体5とで必要な特性が異
なる場合には、それぞれについて、粉末の粒径や含有
量、有機ビヒクル、粘度等の適正化を図りながら、別の
工程で付与するようにしてもよい。
【0035】上述のようにして導体膜3および4ならび
にビアホール導体5を形成するためのCu2 Oを含むペ
ーストが付与された複数のセラミックグリーンシート2
は、次いで、積層され、積層方向にプレスすることによ
って、図1に示すような生の積層体1が得られる。
【0036】この生の積層体1は、次いで、焼成炉内で
焼成され、目的とする多層セラミック基板が得られる。
【0037】上述した焼成工程において、焼成炉内の雰
囲気の酸素分圧を、焼成炉内の温度に応じて、次のよう
に制御することによって、ペースト中のCu2 Oの還元
が生じる時点を、セラミック材料の焼結が始まる時点に
合わせ、それによって、ペーストの収縮カーブをセラミ
ックグリーンシート2の収縮カーブに近似させることが
行なわれる。
【0038】すなわち、焼成炉内の温度をX[℃]、セ
ラミック材料の焼結開始温度[℃]±50℃をT[℃]
としたとき、焼成炉内の酸素分圧Y[mmHg]は、
(1)200℃から700℃までの昇温過程では、Y≦
0.28×e0.005X、(2)700℃からT℃までの昇
温過程では、2×10-10 ×e0.015X≦Y≦0.28×
0.005X、(3)T℃から1000℃までの昇温過程で
は、Y≦2×10-10 ×e0.015Xとなるように制御され
る。
【0039】そして、好ましくは、降温過程において
も、酸素分圧が制御される。すなわち、1000℃から
200℃までの降温過程において、焼成炉内の酸素分圧
Y[mmHg]が、Y≦10-6となるように制御され
る。
【0040】上述したような酸素分圧Yの制御は、たと
えば、窒素雰囲気中に空気を適量混合することによって
行なうことができる。また、必要に応じて、H2 O、H
2 、アンモニア分解ガス等を雰囲気制御のために用いて
もよい。
【0041】図2は、CuO、Cu2 OおよびCuの各
々が安定して存在し得る焼成炉内の温度Xおよび酸素分
圧Yの関係を示している。
【0042】図2において、CuOとCu2 Oとの安定
境界線を近似すれば、Y=0.28×e0.005Xで表わさ
れ、Cu2 OとCuとの安定境界線を近似すれば、Y=
2×10-10 ×e0.015Xで表わされる。
【0043】したがって、前述したT、すなわちセラミ
ック材料の焼結開始温度[℃]±50℃をT[℃]が9
00℃であるとすれば、昇温過程における各温度領域で
の酸素分圧Yは、図2において、斜線を施した領域内に
入るように設定されることになる。
【0044】すなわち、200℃から700℃までの昇
温過程では、Y≦0.28×e0.00 5Xとなるように、酸
素分圧Yが制御され、それによって、Cu2 Oが、たと
えばCuOへ酸化されることなく、Cu2 Oとして安定
に存在するようにされる。
【0045】次に、700℃から900℃までの昇温過
程では、2×10-10 ×e0.015X≦Y≦0.28×e
0.005Xとなるように、酸素分圧Yが制御され、それによ
って、Cu2 Oが、CuOへ酸化されたりCuへ還元さ
れたりすることなく、Cu2 Oとして安定に存在するよ
うにされる。
【0046】次に、900℃から1000℃までの昇温
過程では、Y≦2×10-10 ×e0. 015Xとなるように、
酸素分圧Yが制御され、それによって、Cu2 OがCu
へ還元されるように強制される。
【0047】このとき、上述の還元に伴い、ペーストに
おいて、たとえば40%以上の収縮率をもって体積収縮
が生じるが、900℃±50℃の温度で、セラミックグ
リーンシート2に含まれるセラミック材料の焼結が開始
している、あるいは開始しようとしているので、図3に
示すように、「Cu2 Oペースト」で示したCu2 Oを
含むペーストの収縮カーブを、「セラミック」で表示し
たセラミックグリーンシート2の収縮カーブに近似させ
ることができる。
【0048】なお、図3において、Cuを含むペースト
についての収縮カーブが「Cuペースト」で表示されて
いる。このように、Cuペーストを用いた場合には、セ
ラミックと収縮カーブを合わせることは到底不可能であ
る。
【0049】前述のように、焼成炉内の雰囲気の酸素分
圧Yを制御することによって、ペーストの収縮カーブを
セラミックグリーンシート2の収縮カーブに近似させる
ことができ、それによって、クラックや反りが生じにく
い状態で、所望の多層セラミック基板を得ることができ
る。
【0050】次に、1000℃から200℃までの降温
過程では、Y≦10-6となるように、酸素分圧Yが制御
される。これによって、導体膜3および4ならびにビア
ホール導体5のための導電性成分として前述したような
Cu2 Oからの還元によってに生成されたCuが、降温
過程において、Cu2 OあるいはCuOへ酸化されてし
まうことが防止される。
【0051】以上説明した焼成工程における各温度領域
での酸素分圧の好ましい条件を確認するため、以下のよ
うな実験を実施した。
【0052】酸化バリウム、酸化ケイ素、アルミナ、酸
化カルシウムおよび酸化ホウ素の各粉末を混合したセラ
ミック材料に対して、バインダとしてのポリビニルブチ
ラールと、可塑剤としてのジ−n−ブチルフタレート
と、溶剤としてのトルエンおよびイソプロピレンアルコ
ールとを添加し混合することによって、スラリーを作製
し、このスラリーをドクターブレード法によってキャリ
アフィルム上でシート状に成形し、乾燥させることによ
って、セラミックグリーンシートを作製した。
【0053】他方、Cu2 O粉末に対して、バインダと
してのエチルセルロースおよび溶剤としてのテレピネオ
ールを含む有機ビヒクルを所定量加え、攪拌擂潰機およ
び3本ロールによって、攪拌かつ混練して、Cu2 Oを
含むペーストを作製した。
【0054】次に、穿孔機によって所定のセラミックグ
リーンシートに貫通孔を形成し、次いで、各セラミック
グリーンシート上に、スクリーン印刷法によって、上述
のペーストを印刷し、内部導体膜および表面導体膜なら
びにビアホール導体となるべき配線導体を形成した。
【0055】次に、上述の複数のセラミックグリーンシ
ートを積層し、温度80℃、圧力200kgf/cm2
の条件で、積層方向にプレスし、生の積層体を得た。
【0056】次に、この生の積層体を、表1に示すよう
な種々の酸素分圧条件にて焼成し、試料となる多層セラ
ミック基板を得た。そして、この多層セラミック基板に
ついて、クラックおよび反りの発生の有無を評価すると
ともに、導体膜の状態を評価した。これらの結果が、表
1に示されている。
【0057】なお、この実験で用いたセラミック材料
は、焼結開始温度が900℃のものであった。また、酸
素分圧を制御するため、窒素雰囲気中に空気を混合する
ことを行なった。
【0058】
【表1】
【0059】焼成工程における酸素分圧は、表1に示す
ように、昇温過程では3つの温度領域に分けてそれぞれ
設定され、かつ降温過程においても所定の値に設定され
た。たとえば、試料1について言えば、酸素分圧は、2
5〜700℃の昇温過程では、10mmHgに設定さ
れ、700〜900℃の昇温過程では、10mmHgに
設定され、900〜1000℃の昇温過程では、10-4
mmHgに設定され、1000〜25℃の降温過程で
は、10-6mmHgに設定された。
【0060】また、表1の「クラック」および「反り」
の各欄において、「○」はこれらクラックまたは反りが
生じなかったことを示し、「×」はこれらクラックまた
は反りが生じたことを示している。また、「導体膜状
態」の欄において、特に「表面」および「内部」の表示
のないのものについては、表面導体膜および内部導体膜
の双方について「Cu」または「Cu2 O」が生成して
いることを示し、「表面Cu」および「内部Cu2 O」
と記載したものについては、表面導体膜においてCuが
生成し、内部導体膜においてCu2 Oが生成したことを
示している。
【0061】表1に示した試料の内、試料3〜5、9お
よび11が、この発明の範囲内にあるものであり、昇温
過程での酸素分圧については、図2において斜線を施し
た領域内に入っているものである。これら試料3〜5、
9および11によれば、クラックや反りがなく、導体膜
についても、表面導体膜および内部導体膜の双方におい
てCuが生成された、多層セラミック基板を得ることが
できた。
【0062】これに対して、試料1および2では、25
〜700℃の昇温過程における酸素分圧が高すぎたた
め、Cu2 Oは体積変化を伴ってCuOへと酸化され、
得られた多層セラミック基板においてクラックを発生し
た。
【0063】また、試料6においては、700〜900
℃の昇温過程において、酸素分圧が低すぎたため、セラ
ミックの焼結が開始する前にCu2 OからCuへの収縮
を伴う還元が生じ、得られた多層セラミック基板におい
て反りが生じた。
【0064】また、試料7および8では、900〜10
00℃の昇温過程において、酸素分圧が高すぎたため、
Cu2 OからCuへの還元が生じず、したがって、セラ
ミックの焼結が進行しているのも関わらず、ペーストに
おける収縮が生じず、得られた多層セラミック基板にお
いてクラックおよび反りが発生した。
【0065】なお、試料7と試料8とを比較すると、試
料7では、表面導体膜および内部導体膜の双方において
Cu2 Oであったのに対し、試料8では、表面導体膜が
Cuであり、内部導体膜がCu2 Oであった。これは、
試料8では、1000〜25℃の降温過程において、酸
素分圧を10-6mmHgというように、より低く設定し
たので、焼成炉内の雰囲気によりさらされやすい表面導
体膜において、Cu2Oが還元され、Cuを生成したも
のと考えられる。これに対して、試料7では、1000
〜25℃の降温過程において、酸素分圧を10-3mmH
gというように、より高く設定したので、表面導体膜お
よび内部導体膜のいずれにおいても、Cu2 Oが還元さ
れることがなく、Cu2 Oのまま残存したものと考えら
れる。
【0066】上述のことから、昇温過程の最終段階で、
導体膜にCuを生成していたにもかかわらず、1000
〜25℃の降温過程において、酸素分圧を高くすれば、
CuがCu2 OまたはCuOに酸化される可能性がある
ため、酸素分圧を低くすることが好ましいことがわか
る。そして、このような酸化を確実に防止するために
は、試料8のように、むしろ還元を生じさせる酸素分圧
である10-6またはそれ以下にすることが好ましい。
【0067】また、試料8からわかるように、降温過程
において焼成炉内の雰囲気の影響を受けやすいのは、表
面導体膜である。したがって、このような表面導体膜を
焼結後の積層体上に形成する場合には、焼結された積層
体を得るための焼成時の降温過程での酸素分圧の制御は
特に必要でないこともある。
【0068】また、試料10においては、700から1
000℃までの昇温過程での酸素分圧の切り替えを、セ
ラミックの焼結開始温度である900℃より100℃低
い800℃で行なったため、少なくとも800℃から8
50℃の温度領域における酸素分圧が低くなりすぎてい
る。そのため、試料6の場合と同様、得られた多層セラ
ミック基板において反りが発生した。
【0069】また、試料12においては、700から1
000℃までの昇温過程での酸素分圧の切り替えを、セ
ラミックの焼結開始温度である900℃より70℃高い
970℃で行なっている。そのため、少なくとも950
℃から970℃までの温度領域では、酸素分圧が高くな
りすぎている。そのため、試料7および8の場合と同
様、得られた多層セラミック基板においてクラックおよ
び反りが発生した。
【0070】また、試料12においては、試料8の場合
と同様、表面導体膜においてはCuを生成したが、内部
導体膜においてはCu2 Oが残存した。
【0071】このように、表1に示す結果は、図2に示
した各温度領域における好ましい酸素分圧の範囲を裏付
けるものである。
【0072】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、銅を
主成分とする配線導体を形成するため、Cu2 Oを含む
ペーストを用い、このペーストをセラミックグリーンシ
ートとともに焼成するにあたって、焼成炉内の温度をX
[℃]、セラミック材料の焼結開始温度[℃]±50℃
をT[℃]としたとき、特に昇温過程において、焼成炉
内の雰囲気の酸素分圧Y[mmHg]を、(1)200
℃から700℃までの昇温過程では、Y≦0.28×e
0.005X、(2)700℃からT℃までの昇温過程では、
2×10-10 ×e0.015X≦Y≦0.28×e0.005X
(3)T℃から1000℃までの昇温過程では、Y≦2
×10-10 ×e0.015Xとなるように、温度領域に応じて
制御し、それによって、ペーストの収縮カーブをセラミ
ックグリーンシートの収縮カーブに近似させるようにし
ているので、得られた多層セラミック基板においてクラ
ックや反りが発生しにくくすることができる。
【0073】したがって、このCu2 Oを含むペースト
によって形成される配線導体とセラミックとの界面での
整合性が良好であるため、配線導体が表面導体膜である
場合には、このような表面導体膜の半田付け強度を高く
維持することができ、また、配線導体が内部導体膜であ
る場合には、この内部導体膜による多層セラミック基板
のデラミネーションを生じにくくすることができる。
【0074】また、配線導体を形成するためのペースト
に含まれるCu2 Oは、焼成工程を経たとき、Cuに還
元され、また、このようなペーストに難焼結材料を添加
してセラミックとの収縮挙動の整合を図る必要がないの
で、低抵抗であり、半田付け性やめっき性に優れた配線
導体を得ることができる。
【0075】この発明において、焼成炉内の雰囲気の酸
素分圧Y[mmHg]を、1000℃から200℃まで
の降温過程においても、Y≦10-6となるように制御す
るようにすれば、昇温過程の最終段階で、導体膜にCu
を生成していたにもかかわらず、降温過程において、C
uがCu2 OまたはCuOに酸化されることを確実に防
止することができる。したがって、このような降温過程
での酸素分圧の制御は、特に、焼成されるべき生の積層
体が表面導体膜を形成している場合に、顕著な効果を発
揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態による多層セラミック基
板の製造方法において作製される生の積層体1を図解的
に示す断面図である。
【図2】CuO、Cu2 OおよびCuの各々が安定して
存在し得る温度Xおよび酸素分圧Yの関係を示す図であ
る。
【図3】焼成工程における、セラミック、この発明に係
るCu2 Oペースト、およびCuペーストの各収縮カー
ブを対比して示す図である。
【符号の説明】
1 生の積層体 2 セラミックグリーンシート 3 内部導体膜 4 表面導体膜 5 ビアホール導体

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1000℃以下の低温で焼結可能なセラ
    ミック材料を含むセラミックグリーンシートを用意する
    工程と、 銅を主成分とする配線導体を形成するため、前記セラミ
    ックグリーンシートに関連して、Cu2 Oを含むペース
    トを付与する工程と、 複数の前記セラミックグリーンシートを積層することに
    よって、生の積層体を作製する工程と、 前記生の積層体を焼成炉内で焼成する工程とを備え、 前記焼成する工程において、前記焼成炉内の温度をX
    [℃]、前記セラミック材料の焼結開始温度[℃]±5
    0℃をT[℃]としたとき、前記焼成炉内の雰囲気の酸
    素分圧Y[mmHg]を、 (1)200℃から700℃までの昇温過程では、Y≦
    0.28×e0.005X、 (2)700℃からT℃までの昇温過程では、2×10
    -10 ×e0.015X≦Y≦0.28×e0.005X、 (3)T℃から1000℃までの昇温過程では、Y≦2
    ×10-10 ×e0.015Xとなるように制御することを特徴
    とする、多層セラミック基板の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記焼成する工程において、前記焼成炉
    内の雰囲気の酸素分圧Y[mmHg]を、1000℃か
    ら200℃までの降温過程で、Y≦10-6となるように
    制御する、請求項1に記載の多層セラミック基板の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 前記セラミックグリーンシートに含まれ
    るセラミック材料は、ガラスとセラミックとの混合物を
    含む、請求項1または2に記載の多層セラミック基板の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 前記セラミックグリーンシートに含まれ
    るセラミック材料は、前記焼成する工程において、ガラ
    スを生成する組成を有する、請求項1または2に記載の
    多層セラミック基板の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記配線導体は、前記セラミックグリー
    ンシートの主面に沿って形成される導体膜を備える、請
    求項1ないし4のいずれかに記載の多層セラミック基板
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記配線導体は、前記セラミックグリー
    ンシートを貫通するように形成されるビアホール導体を
    さらに備える、請求項5に記載の多層セラミック基板の
    製造方法。
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