JP4590674B2 - 多層セラミック基板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、多層セラミック基板の製造方法に関するもので、特に、銅を主成分とする配線導体を有する多層セラミック基板の製造方法における焼成工程の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多層セラミック基板は、半導体チップ部品やその他のチップ部品等を搭載し、これらの電子部品を相互に配線するために用いられている。そのため、多層セラミック基板は、複数の積層されたセラミック層を備えるとともに、上述した相互配線を可能にするための配線導体を備えている。
【0003】
配線導体としては、セラミック層間の特定の界面および/または多層セラミック基板の外表面に形成される導体膜や、セラミック層を貫通するように形成されるビアホール導体等がある。
【0004】
このような配線導体は、通常、導電成分としての金属粉末ならびにバインダおよび溶剤からなる有機ビヒクルを含むペーストを、所望のパターンをもって印刷し、セラミックの焼成と同時に焼成されることによって形成される。
【0005】
上述した配線導体を構成する金属として、低抵抗かつ高信頼性の点で、銅を主成分とするものが有利に用いられている。しかしながら、このような銅を主成分とする配線導体が形成された多層セラミック基板を製造するにあたっては、銅の酸化を防止するため、多層セラミック基板となるべき生の積層体を還元性雰囲気中で焼成することが必要である。そのため、特に、脱バインダおよび脱カーボンのための工程に要する時間が長くなってしまうという問題がある。
【0006】
この問題を改善するため、配線導体を形成するために用いられるペーストにおいて、金属銅ではなく、CuOまたはCu2 Oからなる粉末を含有させたものを用いることが提案されている。
【0007】
たとえば、CuO粉末を含有するペーストが用いられる場合には、酸化性雰囲気中で脱バインダおよび脱カーボン工程が実施され、次いで、水素またはアンモニア分解ガス中でCuOをCuに還元し、さらに、非酸化性ガス中でセラミックとCuとを一体に焼結する工程が実施される。
【0008】
上述した方法は、還元性雰囲気中では、セラミックグリーンシートや配線導体のためのペーストに含まれるバインダが熱分解されにくい点に着目し、たとえば空気中のような酸化性雰囲気中で脱バインダおよび脱カーボン工程を実施するようにしたものであるが、その後に実施される還元工程において、CuOからCuへ還元されるとき、体積収縮が生じ、この体積収縮が、比較的低温の段階、すなわちセラミックグリーンシートに含まれるセラミックが未だ脆い状態で生じるため、セラミック層側に悪影響を及ぼし、得られた多層セラミック基板においてクラックや反りが発生しやすいという問題に遭遇することがある。また、3段階の焼成工程が必要であり、焼成工程の能率化を図る上で障害となっている。
【0009】
他方、Cu2 O粉末を含有するペーストを用いる多層セラミック基板の製造方法は、たとえば、特開平5−291754号公報または特開平6−6038号公報に記載されている。Cu2 Oは、上述したCuOに比べると、Cuへの還元が起こりやすく、また、還元収縮が小さいため、上述した公報では、セラミックグリーンシートとの整合性が良好であると記載している。
【0010】
しかしながら、上述した公報に記載の方法では、空気中での脱バインダおよび脱カーボン工程と、還元性雰囲気中での焼結工程との2段階の焼成工程が必要である。しかも、脱バインダおよび脱カーボン工程は、空気中において、350〜450℃あるいは350〜650℃の温度領域で行なうと記載されているが、これらの温度領域では、Cu2 Oとして存在するよりはCuOとして存在する方が安定であるため、体積変化を伴って、Cu2 OからCuOへの酸化が進み、その結果、Cu2 Oを用いた効果が十分に発揮されないことになってしまう。
【0011】
また、Cu2 O粉末を含有するペーストを用いた多層セラミック基板の製造方法として、特開平10−95686号公報に記載されたものもある。この公報に記載された方法では、H2 O+N2 雰囲気中で一括焼成を実施しているが、Cu2 OがCuへ還元されることによって収縮する温度が、セラミック焼結開始温度よりも低温側であるため、Cu2 OからCuへの還元による収縮が、セラミック材料の焼結の開始よりも前に始まることになる。そのため、Cu2 O粉末を含むペーストに、難焼結材料であるAl2 3 やNi等を添加することによって、このペーストの焼結開始温度をより高温側にずらせて、セラミックグリーンシートとの整合性を図るようにしている。
【0012】
しかしながら、この従来技術では、配線導体となるペーストにAl2 3 やNi等を添加していることから、得られた配線導体の抵抗率を上げる結果となり、好ましくない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この発明の目的は、上述したような問題を解決し得る、多層セラミック基板の製造方法を提供しようとすることである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明は、1000℃以下の低温で焼結可能なセラミック材料を含むセラミックグリーンシートを用意する工程と、銅を主成分とする配線導体を形成するため、セラミックグリーンシートに関連して、Cu2 Oを含むペーストを付与する工程と、複数のセラミックグリーンシートを積層することによって、生の積層体を作製する工程と、この生の積層体を焼成炉内で焼成する工程とを備える、多層セラミック基板の製造方法に向けられる。
【0015】
この発明では、上述した技術的課題を解決するため、簡単に言えば、生の積層体を焼成する工程において、基本的に還元性雰囲気を適用しながら、特に昇温過程での温度領域に応じて、焼成炉内の雰囲気の酸素分圧を制御することによって、Cu2 Oを含むペーストの収縮カーブを、セラミックグリーンシートの収縮カーブに近似させようとすることを特徴としている。
【0016】
より詳細には、焼成する工程において、焼成炉内の温度をX[℃]としたとき、焼成炉内の雰囲気の酸素分圧Y[mmHg]を、
(1)250℃から700℃までの昇温過程では、Y≦0.28×e0.005X
(2)700℃から900℃までの昇温過程では、2×10-10×e0.015X≦Y≦0.28×e0.005X
(3)900℃から1000℃以下の焼結に至る温度までの昇温過程では、Y≦2×10-10×e0.015X
となるように制御することを特徴としている。
【0017】
この発明は、また、焼成する工程での焼成炉内の雰囲気の酸素分圧Y[mmHg]を、上記焼結に至った温度から200℃までの降温過程で、Y≦10-6となるように制御することを特徴としている。
【0018】
この発明において、セラミックグリーンシートに含まれるセラミック材料が1000℃以下の低温で焼結可能とするため、このようなセラミック材料は、ガラスとセラミックとの混合物を含んでいたり、焼成する工程において、ガラスを生成する組成を有していたりすればよい。
【0019】
また、多層セラミック基板に形成される配線導体は、たとえば、セラミックグリーンシートの主面に沿って形成される導体膜である。この導体膜は、多層セラミック基板の内部において複数のセラミックグリーンシート間の界面に沿って形成されたり、多層セラミック基板の表面上に形成されたりすることができる。また、配線導体は、セラミックグリーンシートを貫通するように形成されるビアホール導体をさらに備えていてもよい。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施形態による多層セラミック基板の製造方法において作製される生の積層体1を図解的に示す断面図である。
【0021】
図1に示すような生の積層体1を作製するため、複数のセラミックグリーンシート2が用意される。セラミックグリーンシート2は、1000℃以下の低温で焼結可能なセラミック材料を含んでいる。このようなセラミックグリーンシート2は、たとえば、次のようにして作製されることができる。
【0022】
たとえば、酸化バリウム、酸化ケイ素、アルミナ、酸化カルシウムおよび酸化ホウ素を混合するとともに、この混合物に対して、ポリビニルブチラールからなるバインダと、ジ−n−ブチルフタレートからなる可塑剤と、トルエンおよびイソプロピレンアルコールからなる溶剤とをさらに混合して、スラリーを作製する。次いで、このスラリーをドクターブレード法によってシート状に成形し、乾燥させることによって、セラミックグリーンシート2を得ることができる。
【0023】
上述したセラミックグリーンシート2に含まれるセラミック材料は、焼成工程において、ガラスを生成する組成を有しているが、これに代えて、たとえばアルミナのようなセラミックと焼結助剤として作用するガラスとを混合したものを用いてもよい。
【0024】
いずれにしても、セラミックグリーンシート2に含まれるセラミック材料としては、Cu等の金属を1000℃以下の温度で同時に焼成でき、還元性雰囲気中での焼成でも、セラミック組成が還元されないものであれば、どのような組成のものを用いてもよい。
【0025】
また、セラミックグリーンシート2に含まれるバインダ、可塑剤および溶剤についても、前述したものは一例に過ぎず、これら例示されたもの以外のものを用いてもよい。
【0026】
次に、銅を主成分とする配線導体を形成するため、セラミックグリーンシート2に関連して、Cu2 Oを含むペーストが付与される。このCu2 Oを含むペーストは、たとえば、次のようにして作製されることができる。
【0027】
Cu2 O粉末に対して、バインダおよび溶剤を混合してなる有機ビヒクルを所定量加え、攪拌かつ混練することによって、ペーストを得ることができる。この場合、Cu2 O粉末の平均粒径や粒子形状については、特に限定されるものではないが、平均粒径が0.5〜10μmであり、粗大粉や極端な凝集粉がないものが好ましい。また、粒度分布において中心粒径の異なった山をもつ、あるいは扁平粉等の違った形状をもつ2種類以上の粉末を配合してもよい。
【0028】
また、バインダとしては、たとえば、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、メタクリル樹脂等を用いることができ、溶剤としては、たとえば、テレピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、アルコール類等を用いることができる。また、必要に応じて、ペースト中に、分散剤、可塑剤、活性剤等を添加してもよい。
【0029】
また、ペーストの粘度は、印刷性を考慮し、たとえば、50〜300Pa・sに選ばれる。
【0030】
また、ペースト中に、セラミックとの界面での接着強度を高めるため、ガラスフリットを添加してもよい。ガラスフリットとしては、ホウケイ酸ガラスからなるものなど、既存のガラスフリットを用いることができ、軟化点が500〜900℃であって、添加量を5体積%以下にすることが好ましい。
【0031】
セラミックグリーンシート2に関連して形成される配線導体としては、図1に示すように、セラミックグリーンシート2の主面に沿って形成される導体膜3および4と、セラミックグリーンシート2を貫通するように形成されるビアホール導体5とがある。また、導体膜3および4としては、セラミックグリーンシート2間の界面に沿って形成される内部導体膜3と、積層体1の表面上に形成される表面導体膜4とがある。
【0032】
上述したビアホール導体5が形成されるセラミックグリーンシート2にあっては、穿孔機によって貫通孔が設けられる。
【0033】
そして、各セラミックグリーンシート2上に、スクリーン印刷法によって、前述したCu2 Oを含むペーストが印刷され、それによって導体膜3および4ならびにビアホール導体5が形成される。
【0034】
なお、導体膜3および4とビアホール導体5とは、上述のように、同時に形成されてもよいが、導体膜3および4とビアホール導体5とで必要な特性が異なる場合には、それぞれについて、粉末の粒径や含有量、有機ビヒクル、粘度等の適正化を図りながら、別の工程で付与するようにしてもよい。
【0035】
上述のようにして導体膜3および4ならびにビアホール導体5を形成するためのCu2 Oを含むペーストが付与された複数のセラミックグリーンシート2は、次いで、積層され、積層方向にプレスすることによって、図1に示すような生の積層体1が得られる。
【0036】
この生の積層体1は、次いで、焼成炉内で焼成され、目的とする多層セラミック基板が得られる。
【0037】
上述した焼成工程において、焼成炉内の雰囲気の酸素分圧を、焼成炉内の温度に応じて、次のように制御することによって、ペースト中のCu2 Oの還元が生じる時点を、セラミック材料の焼結が始まる時点に合わせ、それによって、ペーストの収縮カーブをセラミックグリーンシート2の収縮カーブに近似させることが行なわれる。
【0038】
すなわち、焼成炉内の温度をX[℃]としたとき、焼成炉内の酸素分圧Y[mmHg]は、
(1)250℃から700℃までの昇温過程では、Y≦0.28×e0.005X
(2)700℃から900℃までの昇温過程では、2×10-10×e0.015X≦Y≦0.28×e0.005X
(3)900℃から1000℃以下の焼結に至る温度までの昇温過程では、Y≦2×10-10×e0.015X
となるように制御される。
【0039】
そして、降温過程においても、酸素分圧が制御される。すなわち、上記焼結に至った温度から200℃までの降温過程において、焼成炉内の酸素分圧Y[mmHg]が、Y≦10-6となるように制御される。
【0040】
上述したような酸素分圧Yの制御は、たとえば、窒素雰囲気中に空気を適量混合することによって行なうことができる。また、必要に応じて、H2 O、H2 、アンモニア分解ガス等を雰囲気制御のために用いてもよい。
【0041】
図2は、CuO、Cu2 OおよびCuの各々が安定して存在し得る焼成炉内の温度Xおよび酸素分圧Yの関係を示している。
【0042】
図2において、CuOとCu2 Oとの安定境界線を近似すれば、Y=0.28×e0.005Xで表わされ、Cu2 OとCuとの安定境界線を近似すれば、Y=2×10-10 ×e0.015Xで表わされる。
【0043】
したがって、セラミック材料の焼結開始温度[℃]±50℃が900℃であるとすれば、昇温過程における各温度領域での酸素分圧Yは、図2において、斜線を施した領域内に入るように設定されることになる。
【0044】
すなわち、250℃から700℃までの昇温過程では、Y≦0.28×e0.005Xとなるように、酸素分圧Yが制御され、それによって、Cu2Oが、たとえばCuOへ酸化されることなく、Cu2Oとして安定に存在するようにされる。
【0045】
次に、700℃から900℃までの昇温過程では、2×10-10 ×e0.015X≦Y≦0.28×e0.005Xとなるように、酸素分圧Yが制御され、それによって、Cu2 Oが、CuOへ酸化されたりCuへ還元されたりすることなく、Cu2 Oとして安定に存在するようにされる。
【0046】
次に、900℃から1000℃以下の焼結に至る温度までの昇温過程では、Y≦2×10-10 ×e0.015Xとなるように、酸素分圧Yが制御され、それによって、Cu2OがCuへ還元されるように強制される。
【0047】
このとき、上述の還元に伴い、ペーストにおいて、たとえば40%以上の収縮率をもって体積収縮が生じるが、900℃±50℃の温度で、セラミックグリーンシート2に含まれるセラミック材料の焼結が開始している、あるいは開始しようとしているので、図3に示すように、「Cu2 Oペースト」で示したCu2 Oを含むペーストの収縮カーブを、「セラミック」で表示したセラミックグリーンシート2の収縮カーブに近似させることができる。
【0048】
なお、図3において、Cuを含むペーストについての収縮カーブが「Cuペースト」で表示されている。このように、Cuペーストを用いた場合には、セラミックと収縮カーブを合わせることは到底不可能である。
【0049】
前述のように、焼成炉内の雰囲気の酸素分圧Yを制御することによって、ペーストの収縮カーブをセラミックグリーンシート2の収縮カーブに近似させることができ、それによって、クラックや反りが生じにくい状態で、所望の多層セラミック基板を得ることができる。
【0050】
次に、上記焼結に至った温度から200℃までの降温過程では、Y≦10-6となるように、酸素分圧Yが制御される。これによって、導体膜3および4ならびにビアホール導体5のための導電性成分として前述したようなCu2Oからの還元によってに生成されたCuが、降温過程において、Cu2OあるいはCuOへ酸化されてしまうことが防止される。
【0051】
以上説明した焼成工程における各温度領域での酸素分圧の好ましい条件を確認するため、以下のような実験を実施した。
【0052】
酸化バリウム、酸化ケイ素、アルミナ、酸化カルシウムおよび酸化ホウ素の各粉末を混合したセラミック材料に対して、バインダとしてのポリビニルブチラールと、可塑剤としてのジ−n−ブチルフタレートと、溶剤としてのトルエンおよびイソプロピレンアルコールとを添加し混合することによって、スラリーを作製し、このスラリーをドクターブレード法によってキャリアフィルム上でシート状に成形し、乾燥させることによって、セラミックグリーンシートを作製した。
【0053】
他方、Cu2 O粉末に対して、バインダとしてのエチルセルロースおよび溶剤としてのテレピネオールを含む有機ビヒクルを所定量加え、攪拌擂潰機および3本ロールによって、攪拌かつ混練して、Cu2 Oを含むペーストを作製した。
【0054】
次に、穿孔機によって所定のセラミックグリーンシートに貫通孔を形成し、次いで、各セラミックグリーンシート上に、スクリーン印刷法によって、上述のペーストを印刷し、内部導体膜および表面導体膜ならびにビアホール導体となるべき配線導体を形成した。
【0055】
次に、上述の複数のセラミックグリーンシートを積層し、温度80℃、圧力200kgf/cm2 の条件で、積層方向にプレスし、生の積層体を得た。
【0056】
次に、この生の積層体を、表1に示すような種々の酸素分圧条件にて焼成し、試料となる多層セラミック基板を得た。そして、この多層セラミック基板について、クラックおよび反りの発生の有無を評価するとともに、導体膜の状態を評価した。これらの結果が、表1に示されている。
【0057】
なお、この実験で用いたセラミック材料は、焼結開始温度が900℃のものであった。また、酸素分圧を制御するため、窒素雰囲気中に空気を混合することを行なった。
【0058】
【表1】
Figure 0004590674
【0059】
焼成工程における酸素分圧は、表1に示すように、昇温過程では3つの温度領域に分けてそれぞれ設定され、かつ降温過程においても所定の値に設定された。たとえば、試料1について言えば、酸素分圧は、250〜700℃の昇温過程では、10mmHgに設定され、700〜900℃の昇温過程では、10mmHgに設定され、900〜1000℃の昇温過程では、10-4mmHgに設定され、1000〜200℃の降温過程では、10-6mmHgに設定された。
【0060】
また、表1の「クラック」および「反り」の各欄において、「○」はこれらクラックまたは反りが生じなかったことを示し、「×」はこれらクラックまたは反りが生じたことを示している。また、「導体膜状態」の欄において、特に「表面」および「内部」の表示のないものについては、表面導体膜および内部導体膜の双方について「Cu」または「Cu2O」が生成していることを示し、「表面Cu」および「内部Cu2O」と記載したものについては、表面導体膜においてCuが生成し、内部導体膜においてCu2Oが生成したことを示している。
【0061】
表1に示した試料の内、試料3〜5、9および11が、この発明の範囲内にあるものであり、昇温過程での酸素分圧については、図2において斜線を施した領域内に入っているものである。これら試料3〜5、9および11によれば、クラックや反りがなく、導体膜についても、表面導体膜および内部導体膜の双方においてCuが生成された、多層セラミック基板を得ることができた。
【0062】
これに対して、試料1および2では、250〜700℃の昇温過程における酸素分圧が高すぎたため、Cu2Oは体積変化を伴ってCuOへと酸化され、得られた多層セラミック基板においてクラックを発生した。
【0063】
また、試料6においては、700〜900℃の昇温過程において、酸素分圧が低すぎたため、セラミックの焼結が開始する前にCu2 OからCuへの収縮を伴う還元が生じ、得られた多層セラミック基板において反りが生じた。
【0064】
また、試料7および8では、900〜1000℃の昇温過程において、酸素分圧が高すぎたため、Cu2 OからCuへの還元が生じず、したがって、セラミックの焼結が進行しているのも関わらず、ペーストにおける収縮が生じず、得られた多層セラミック基板においてクラックおよび反りが発生した。
【0065】
なお、試料7と試料8とを比較すると、試料7では、表面導体膜および内部導体膜の双方においてCu2Oであったのに対し、試料8では、表面導体膜がCuであり、内部導体膜がCu2Oであった。これは、試料8では、1000〜200℃の降温過程において、酸素分圧を10-6mmHgというように、より低く設定したので、焼成炉内の雰囲気によりさらされやすい表面導体膜において、Cu2Oが還元され、Cuを生成したものと考えられる。これに対して、試料7では、1000〜200℃の降温過程において、酸素分圧を10-3mmHgというように、より高く設定したので、表面導体膜および内部導体膜のいずれにおいても、Cu2Oが還元されることがなく、Cu2Oのまま残存したものと考えられる。
【0066】
上述のことから、昇温過程の最終段階で、導体膜にCuを生成していたにもかかわらず、1000〜200℃の降温過程において、酸素分圧を高くすれば、CuがCu2OまたはCuOに酸化される可能性があるため、酸素分圧を低くすることが好ましいことがわかる。そして、このような酸化を確実に防止するためには、試料8のように、むしろ還元を生じさせる酸素分圧である10-6またはそれ以下にすることが好ましい。
【0067】
また、試料8からわかるように、降温過程において焼成炉内の雰囲気の影響を受けやすいのは、表面導体膜である。したがって、このような表面導体膜を焼結後の積層体上に形成する場合には、焼結された積層体を得るための焼成時の降温過程での酸素分圧の制御は特に必要でないこともある。
【0068】
また、試料10においては、700から1000℃までの昇温過程での酸素分圧の切り替えを、セラミックの焼結開始温度である900℃より100℃低い800℃で行なったため、少なくとも800℃から850℃の温度領域における酸素分圧が低くなりすぎている。そのため、試料6の場合と同様、得られた多層セラミック基板において反りが発生した。
【0069】
また、試料12においては、700から1000℃までの昇温過程での酸素分圧の切り替えを、セラミックの焼結開始温度である900℃より70℃高い970℃で行なっている。そのため、少なくとも950℃から970℃までの温度領域では、酸素分圧が高くなりすぎている。そのため、試料7および8の場合と同様、得られた多層セラミック基板においてクラックおよび反りが発生した。
【0070】
また、試料12においては、試料8の場合と同様、表面導体膜においてはCuを生成したが、内部導体膜においてはCu2 Oが残存した。
【0071】
このように、表1に示す結果は、図2に示した各温度領域における好ましい酸素分圧の範囲を裏付けるものである。
【0072】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、銅を主成分とする配線導体を形成するため、Cu2Oを含むペーストを用い、このペーストをセラミックグリーンシートとともに焼成するにあたって、焼成炉内の温度をX[℃]、セラミック材料の焼結開始温度[℃]±50℃を900℃としたとき、特に昇温過程において、焼成炉内の雰囲気の酸素分圧Y[mmHg]を、(1)250℃から700℃までの昇温過程では、Y≦0.28×e0.005X、(2)700℃から900℃までの昇温過程では、2×10-10×e0.015X≦Y≦0.28×e0.005X、(3)900℃から1000℃以下の焼結に至る温度までの昇温過程では、Y≦2×10-10×e0.015Xとなるように、温度領域に応じて制御し、それによって、ペーストの収縮カーブをセラミックグリーンシートの収縮カーブに近似させるようにしているので、得られた多層セラミック基板においてクラックや反りを発生しにくくすることができる。
【0073】
したがって、このCu2 Oを含むペーストによって形成される配線導体とセラミックとの界面での整合性が良好であるため、配線導体が表面導体膜である場合には、このような表面導体膜の半田付け強度を高く維持することができ、また、配線導体が内部導体膜である場合には、この内部導体膜による多層セラミック基板のデラミネーションを生じにくくすることができる。
【0074】
また、配線導体を形成するためのペーストに含まれるCu2 Oは、焼成工程を経たとき、Cuに還元され、また、このようなペーストに難焼結材料を添加してセラミックとの収縮挙動の整合を図る必要がないので、低抵抗であり、半田付け性やめっき性に優れた配線導体を得ることができる。
【0075】
また、この発明によれば、焼成炉内の雰囲気の酸素分圧Y[mmHg]を、上記焼結に至った温度から200℃までの降温過程においても、Y≦10-6となるように制御されるので、昇温過程の最終段階で、導体膜にCuを生成していたにもかかわらず、降温過程において、CuがCu2OまたはCuOに酸化されることを確実に防止することができる。したがって、このような降温過程での酸素分圧の制御は、特に、焼成されるべき生の積層体が表面導体膜を形成している場合に、顕著な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態による多層セラミック基板の製造方法において作製される生の積層体1を図解的に示す断面図である。
【図2】CuO、Cu2 OおよびCuの各々が安定して存在し得る温度Xおよび酸素分圧Yの関係を示す図である。
【図3】焼成工程における、セラミック、この発明に係るCu2 Oペースト、およびCuペーストの各収縮カーブを対比して示す図である。
【符号の説明】
1 生の積層体
2 セラミックグリーンシート
3 内部導体膜
4 表面導体膜
5 ビアホール導体

Claims (5)

  1. 1000℃以下の低温で焼結可能なセラミック材料を含むセラミックグリーンシートを用意する工程と、
    銅を主成分とする配線導体を形成するため、前記セラミックグリーンシートに関連して、Cu2Oを含むペーストを付与する工程と、
    複数の前記セラミックグリーンシートを積層することによって、生の積層体を作製する工程と、
    前記生の積層体を焼成炉内で焼成する工程と
    を備え、
    前記焼成する工程において、前記焼成炉内の温度をX[℃]としたとき、前記焼成炉内の雰囲気の酸素分圧Y[mmHg]を、
    (1)250℃から700℃までの昇温過程では、Y≦0.28×e0.005X
    (2)700℃から900℃までの昇温過程では、2×10-10×e0.015X≦Y≦0.28×e0.005X
    (3)900℃から1000℃以下の焼結に至る温度までの昇温過程では、Y≦2×10-10×e0.015X
    となるように制御することを特徴とするとともに、
    前記焼成する工程において、前記焼成炉内の雰囲気の酸素分圧Y[mmHg]を、前記焼結に至った温度から200℃までの降温過程で、Y≦10-6となるように制御することを特徴とする、多層セラミック基板の製造方法。
  2. 前記セラミックグリーンシートに含まれるセラミック材料は、ガラスとセラミックとの混合物を含む、請求項1に記載の多層セラミック基板の製造方法。
  3. 前記セラミックグリーンシートに含まれるセラミック材料は、前記焼成する工程において、ガラスを生成する組成を有する、請求項1に記載の多層セラミック基板の製造方法。
  4. 前記配線導体は、前記セラミックグリーンシートの主面に沿って形成される導体膜を備える、請求項1ないしのいずれかに記載の多層セラミック基板の製造方法。
  5. 前記配線導体は、前記セラミックグリーンシートを貫通するように形成されるビアホール導体をさらに備える、請求項に記載の多層セラミック基板の製造方法。
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