JP2001238669A - ポリヒドロキシアルカノエートを生産する微生物およびこれを用いるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法 - Google Patents

ポリヒドロキシアルカノエートを生産する微生物およびこれを用いるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法

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JP2001238669A
JP2001238669A JP2000056232A JP2000056232A JP2001238669A JP 2001238669 A JP2001238669 A JP 2001238669A JP 2000056232 A JP2000056232 A JP 2000056232A JP 2000056232 A JP2000056232 A JP 2000056232A JP 2001238669 A JP2001238669 A JP 2001238669A
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polyhydroxyalkanoate
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Takeshi Imamura
剛士 今村
Tetsuya Yano
哲哉 矢野
Takashi Kenmoku
敬 見目
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フェニル基を側鎖上に置換基として有するポ
リヒドロキシアルカノエートの高い生産能を有する新規
微生物とそれを用いた3−ヒドロキシ−6−フェニルヘ
キサン酸に由来するモノマーユニットを含むポリヒドロ
キシアルカノエート製造方法の提供。 【解決手段】 6−フェニルヘキサン酸を含む培地で新
規微生物シュードモナス・プチダ・N210株(Pseudo
monas putida N210;FERM P−17744)を培養
したのち、菌体に蓄積するポリヒドロキシアルカノエー
トを抽出することにより、化学式(I): 【化1】 で表されるモノマーユニットを主に含むポリヒドロキシ
アルカノエートを製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な微生物とそ
れを利用するポリヒドロキシアルカノエート(PHA)
の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、下で
述べる化学式(I)で示されるモノマーユニットを含む
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を生産し菌体
内に蓄積する能力を有する微生物を用いて、係る微生物
産生ポリヒドロキシアルカノエートを高い選択性で製造
させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】これまで、多くの微生物がポリ−3−ヒ
ドロキシ酪酸(PHB)あるいはその他のPHAを生産
し、菌体内に蓄積することが報告されてきた(「生分解
性プラスチックハンドブック」,生分解性プラスチック
研究会編,(株)エヌ・ティー・エス,P178−19
7)。これらの微生物産生ポリマーは、従来のプラスチ
ックと同様に、溶融加工等により各種製品の生産に利用
することができる。さらに、生分解性であるがゆえに、
自然界で微生物により完全分解されるという利点を有し
ている。従って、従来用いられている、多くの合成高分
子化合物のように自然環境に残留して汚染を引き起こす
ことがなく、また、燃焼処理を行う必要もないため、大
気汚染や地球温暖化の観点でも、なんらの懸念もない材
料となる。また、生体適合性にも優れており、医療用軟
質部材等としての応用も期待されている。
【0003】微生物産生PHAは、その生産に用いる微
生物の種類や培地組成、培養条件等により、様々な組成
や構造のものとなり得ることが知られている。これまで
主に、PHAの物性の改良という観点から、微生物産生
PHAの組成や構造を制御する方法に関する研究がなさ
れてきた。
【0004】例えば、アルカリゲネス・ユウトロファス
H16株(Alcaligenes eutropusH16、ATCC No.17699)
ならびにその変異株は、培養時の炭素源を変化させるこ
とによって、3−ヒドロキシ酪酸(3HB)と3−ヒド
ロキシ吉草酸(3HV)との共重合体を様々な組成比で
生産することが報告されている(特表平6−15604
号公報、特表平7−14352号公報、特表平8−19
227号公報 等)。
【0005】また、特許第2642937号公報には、
シュードモナス・オレオボランス・ATCC29347
株(Pseudomonas oleovorans ATCC29347)に、炭素源と
して非環状脂肪族炭化水素を与えることにより、炭素数
が6〜12までの3−ヒドロキシアルカノエートをモノ
マーユニットとするPHAを生産することが開示されて
いる。
【0006】特開平5−74492号公報では、メチロ
バクテリウム属(Methylobacteriumsp.)、パラコッカ
ス属(Paracoccus sp.)、アルカリゲネス属(Alcalige
nessp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)の微
生物を、炭素数3〜7の第一級アルコールに接触させる
ことにより、3HBと3HVとの共重合体を生産させる
方法が開示されている。
【0007】特開平5−93049号公報および特開平
7−265065号公報では、アエロモナス・キャビエ
(Aeromonas caviae)を、オレイン酸やオリーブ油を炭
素源として培養することにより、3HBと3−ヒドロキ
シヘキサン酸(3HHx)の2成分共重合体を生産する
ことが開示されている。
【0008】特開平9−191893号公報では、コマ
モナス・アシドボランス・IFO13852株(Comamo
nas acidovorans IFO13852)は、炭素源としてグルコン
酸及び1,4−ブタンジオールを用いて培養すると、3
HBと4−ヒドロキシ酪酸とをモノマーユニットに持つ
ポリエステルを生産することが開示されている。
【0009】さらに、ある種の微生物では、様々な置換
基、例えば、不飽和炭化水素基、エステル基、アリル
基、シアノ基、ハロゲン化炭化水素基、エポキシド等が
導入されたPHAを生産することが報告されており、こ
のような手法によって微生物産生PHAの物性改良を目
指す試みもなされ始めている。
【0010】例えば、Makromol. Chem., 191, 1957-196
5,1990、Macromolecules, 24, 5256-5260,1991、Chiral
ity, 3, 492-494,1991 等では、シュードモナス・オレ
オボランスが3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸(3
HPV)をモノマーユニットとして含むPHAを生産す
ることが報告されており、3HPVが含まれることに起
因すると思われる、ポリマー物性の変化が認められてい
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】以上に述べたように、
微生物産生PHAにおいて、その生産に用いる微生物の
種類や培地組成、培養条件等を変えることにより、何通
りかの組成・構造のものが得られているが、それらの試
みの主な目的は、専らPHAに含まれる複数のヒドロキ
シアルカン酸(HA)の比率を変え、プラスチックとし
ての物性の改良を図ることであった。
【0012】一方、様々な置換基を導入したPHAは、
導入された置換基の特性等に起因する、極めて有用な機
能・特性を具備した「機能性ポリマー」としての展開も
期待できる。生分解性に加え、そのような機能性をも兼
ね備えた、新たなポリマーと、微生物を利用して、その
生産を行う方法、並びに当該ポリマーを生産し菌体内に
蓄積し得る微生物の開発、選別分離は、極めて有用かつ
重要であると考えられる。
【0013】しかしながら、微生物に特殊な置換基(官
能基)を導入したモノマーユニットを含むPHAを生産
させる際、置換基を持たない直鎖のモノマーユニット、
例えば、3HBなどの一般的なモノマーユニットのみか
らなるPHAを生産させる場合と比較して、一般に微生
物菌体内に蓄積されるPHA量は大幅に低下する傾向が
ある。従って、特殊な置換基(官能基)を側鎖に導入し
たPHAを菌体内により多くの量蓄積させる方法の開発
は、当該ポリマーの用途開発を進める上で、極めて重要
な技術課題となっている。
【0014】特殊の置換基(官能基)を導入したモノマ
ーユニットを含むPHAに関して、そのPHAの菌体内
蓄積量を増大する手段の一つとして、原料基質とする所
望の置換基(官能基)を有する脂肪酸と、ノナン酸など
の補助的基質を培地に添加して微生物を培養する方法が
提案されている。しかしながら、この補助的基質を添加
する方法では、補助的基質に由来するモノマーユニット
(例えば、3−ヒドロキシノナン酸など)が、生産され
るPHA中に極めて多量に混入することが避けられな
い。それに伴い、所望の官能基に因る特性を利用する機
能性ポリマーの開発においては、前記の方法は必ずしも
好ましいものではない。
【0015】本発明は、前記の課題を解決するもので、
本発明の目的は、補助的基質に由来するモノマーユニッ
トの混入が極めて少なく、生分解性を示し、フェニル基
を置換基として有するPHAを産生する新規な微生物の
提供、ならびに、前記のフェニル基を置換基として有す
るPHAを微生物を利用して製造する方法を提供するこ
とにある。特には、ほぼ下で述べる化学式(I)で示さ
れるモノマーユニットのみを含むPHAを微生物を利用
して効率よく製造する方法、その際利用する新規な微生
物を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記の課題
を解決すべく、特に、デバイス材料や医用材料等として
有用な、フェニル基を側鎖上に置換基として有する新規
なPHAの開発を目指して、新規なPHAを生産し、菌
体内に蓄積する能力を有する微生物の探索、ならびに、
探索した微生物を用いて、所望のPHAを製造する方法
について、鋭意研究を進めた。その結果、6−フェニル
ヘキサン酸(PHxA)を原料とし、下で述べる化学式
(I)で示されるモノマーユニットを主に含むPHAを
生産し菌体内に蓄積する能力を有する新規な微生物が存
在することを見出した。特に、この新規微生物は、先に
本発明者らが下で述べる化学式(I)で示されるモノマ
ーユニットを含むPHAの生産菌として提案したシュー
ドモナス属(Pseudomonassp.)に属する菌(特願平11
−371870号明細書を参照)、例えば、シュードモ
ナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessen
ii P161、FERM P−17445)と比較しても、目
的とするPHAの菌体内蓄積量がより多いことを確認
し、本発明を完成するに至った。
【0017】すなわち、本発明が提供する新規微生物シ
ュードモナス・プチダ・N210株(Pseudomonas puti
da N210;FERM P−17744)は、下記化学式
(I):
【0018】
【化5】
【0019】で表されるモノマーユニットを含むポリヒ
ドロキシアルカノエートを生産する能力を有する微生物
である。
【0020】また、本発明が提供する新規なポリヒドロ
キシアルカノエートの製造方法は、この微生物シュード
モナス・プチダ・N210株(Pseudomonas putida N21
0;FERM P−17744)を、下記化学式(I
I):
【0021】
【化6】
【0022】で表される6−フェニルヘキサン酸を含む
培地で培養したのち、前記微生物が生産する上記化学式
(I)で示されるモノマーユニットを含むポリヒドロキ
シアルカノエートを抽出することを特徴とする、上記化
学式(I)で示されるモノマーユニットを含むポリヒド
ロキシアルカノエートの製造方法である。
【0023】通常、微生物を培養したのち、集菌して、
上記化学式(I)で表されるモノマーユニットを含むポ
リヒドロキシアルカノエートを菌体から分離・抽出する
工程を設けるとよい。また、菌体から分離したポリヒド
ロキシアルカノエートは、濾過等した後、濃縮し、再沈
澱させ、更に、溶媒に再溶解し、再び沈澱させるなどの
操作を施し、精製回収を行うことができる。
【0024】
【発明の実施の形態】まず、本発明の製造方法は、6−
フェニルヘキサン酸(PHxA)を原料(基質)として
用いて、化学式(I)で示されるモノマーユニットを主
に含むPHAを生産し、菌体内に蓄積するという能力を
有する新規な微生物シュードモナス・プチダ・N210
株(Pseudomonas putida N210;FERM P−1774
4)を利用する方法である。このN210株は、本発明
者らの探索において、このような酵素反応性を示す新規
な微生物として、新たに土壌より分離した微生物であ
る。このN210株は、下記するような菌学的な性質を
有する。
【0025】<N210株の菌学的性質>(a)形態学的性質 細胞の形 :短桿菌 細胞の大きさ :0.6μm× 1μm 細胞の多形性の有無 :なし 運動性 :+ 鞭毛の着生状態 :極毛 胞子形成 :− グラム染色性 :−(b)培養的性質 コロニー形状 :円形、全縁なめらか、低凸状、光沢、淡黄色 肉汁液体培地 :懸濁 リトマスミルク :−(c)生理学的性質 硝酸塩の還元 :− 亜硝酸塩還元 :− 脱窒反応 :− MRテスト :− VPテスト :− インドールの生成 :− 硫化水素の生成 :− 蛍光色素の生成 King'sB寒天培地 :+ デンプンの加水分解 :− クエン酸の利用 Koser :+ Christensen :+ Simmons :+ 無機窒素源の利用 :+ ウレアーゼ :− オキシダーゼ :+ カタラーゼ :+ アルギニンジヒドロラーゼ :+ 生育温度 5℃ :+ 20℃ :+ 30℃ :+ 37℃ :+ 42℃ :− 嫌気培養 :+ O/F試験 :酸化型 ブドウ糖酸性化 :− エスクリン加水分解 :− ゼラチンの加水分解 :− カゼイン加水分解 :− チロシンの加水分解 :+ レシチナーゼ :− Tween80 :− Tween20 :− 3−ケトラクトース産生 :− グルコン酸の利用 :− マロン酸の利用 :− Thornleyアルギニン :+ PHBでの発育 :+ PHBの細胞内蓄積 :− シアン化カリウムの耐性 :+ Cetrimide agarでの生育 :+w オルニチンデカルボキシラーゼ :− リジンデカルボキシラーゼ :+ β−ガラクトシダーゼ :− レシチナーゼ :− フェニルアラニンデアミナーゼ :− DNase :−ペプトン水での酸産生/ガス産生 L−アラビノース :−/− D−キシロース :−/− D−フラクトース :−/− グリセリン :−/−アンモニア寒天での酸産生 グルコース :+ エタノール :− アドニット :− アラビノース :+ セロビオース :− ズルシット :− 果糖 :− グリセリン :− イノシット :− ラクトース :− マルトース :− マンニット :− ラフィノース :− ラムノース :− サリシン :− ソルビット :− 白糖 :− トレハロース :− キシロース :−基質(炭素源)資化能 ブドウ糖 :+ L−アラビノース :+ D−マンノース :+ D−マンニトール :− N−アセチル−D−グルコサミン:− マルトース :− グルコン酸カリウム :+ n−カプリン酸 :+ アジピン酸 :− dl−リンゴ酸 :+ クエン酸ナトリウム :+ 酢酸フェニル :+
【0026】以上の菌学的性質から、バージェーズ・マ
ニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー
・第1巻(Bergey's Manual of Systematic Bacteriolo
gy,Volume1)(1984年)及びバージェーズ・マニュ
アル・オブ・ディタミネーティブ・バクテリオロジー
(Bergey' s Manual of Determinative Bacteriology)
第9版(1994年)に基づいて検索したところ、N2
10株は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas puti
da)に属すると判明した。
【0027】従って、このN210株をシュードモナス
・プチダ・N210株(seudomonasputida N210)と命
名した。なお、シュードモナス・プチダ・N210株
(Pseudomonas putida N210)は寄託番号「FERM P
−17744」として、通商産業省 工業技術院 生命
工学工業技術研究所(特許微生物寄託センター)に寄託
されている。
【0028】本発明のポリヒドロキシアルカノエートの
製造方法においては、前記N210株を6−フェニルヘ
キサン酸(PHxA)を原料(基質)として含む培地で
培養して、上記化学式(I)で示されるモノマーユニッ
トを含むPHAを生産させる。
【0029】本発明に利用する微生物を通常増殖させる
場合は、微生物の生育や生存に悪影響を及ぼすものでな
い限り、一般的な天然培地(肉汁培地等)や栄養源を添
加した合成培地等、いかなる種類の培地をも用いること
ができる。
【0030】本発明に利用する微生物は、3−ヒドロキ
シ−6−フェニルヘキサン酸(3HPHx)に由来する
化学式(I):
【0031】
【化7】
【0032】で表される側鎖にフェニル基が置換するモ
ノマーユニットを含むPHAを生産・蓄積させる高い能
力を具えている。本発明の方法では、例えば、酵母エキ
スやグルコースなどの増殖用炭素源と基質PHxAとを
含む無機培地などで対数増殖後期から定常期時点まで培
養し、一旦菌体を遠心分離などで回収し、基質PHxA
を含むが、窒素源を含まない無機培地で更に培養して、
目的のPHAを蓄積した菌体を回収する。また、酵母エ
キスやグルコースなどの増殖用炭素源と基質PHxAと
を含む無機培地などで培養し、対数増殖後期から定常期
時点で目的のPHAを蓄積した菌体を回収する。これら
の回収された菌体から、蓄積されているPHAを抽出す
る。
【0033】なお、他のモノマーユニットを含むPHA
が混在してもよい場合は、増殖用炭素源としてオクタン
酸やノナン酸等の中鎖の脂肪酸と、PHxAとを含んだ
無機培地等で対数増殖後期から定常期の時点まで培養
し、菌体を遠心分離等で回収したのち、中鎖の脂肪酸と
PVAとを含んだ、窒素源が存在しない無機培地で更に
培養する方法を用いることもできる。あるいは、無機塩
培地中の窒素源濃度を1/10程度に制限し、中鎖の脂
肪酸とPHxAとを与えて培養し、対数増殖後期から定
常期の時点で菌体を回収して所望のPHAを抽出する方
法を用いることもできる。これら増殖用炭素源として、
中鎖の脂肪酸を培地に添加する方法では、取得されるP
HAは、増殖用炭素源として添加した中鎖の脂肪酸に由
来するモノマーユニットが混在しているPHAとなって
いる。
【0034】本発明のPHAの製造方法では、上記のN
210株を用いて、ほぼ化学式(I)で示されるモノマ
ーユニットのみを選択的に含むPHAを生産・蓄積させ
る際には、酵母エキスやグルコースなどの増殖用基質と
PHxAとを含む培地で微生物を培養すると好ましい。
例えば、培地に、酵母エキスを0.1%から1.0%程
度、及び、PHxAを0.01%から0.5%程度含ん
だ無機培地等を用いて、対数増殖後期から定常期の時点
まで微生物を培養し、菌体を遠心分離等で回収した後、
PHxAを0.01%から0.5%程度を含んだ、窒素
源が存在しない無機培地で更に培養する二段階の培養方
法をとることができる。また、酵母エキスやグルコース
などの増殖用基質とPHxAとを含む培地、例えば、酵
母エキスを0.1%から1.0%程度、及び、PHxA
を0.01%から0.5%程度含んだ無機培地で培養
し、対数増殖後期から定常期の時点で菌体を回収して、
菌体から所望のPHAを抽出する一段階の培養方法とす
ることもできる。
【0035】前記の培養方法において、培地の調製に用
いる無機培地は、リン源(例えば、リン酸塩等)、窒素
源(例えば、アンモニウム塩、硝酸塩等)等、微生物が
増殖し得る成分を含んでいるものであればいかなるもの
でも良く、例えば、MSB培地、M9培地等を挙げるこ
とができる。なお、後述する本発明の具体例である、実
施例において用いるM9培地の組成は以下の通りであ
る。
【0036】 Na2HPO4:6.2 g KH2PO4:3.0 g NaCl:0.5 g NH4Cl:1.0 g (培地1リットル中、pH7.0)
【0037】また、培地に添加する原料のPHxAの濃
度は、微生物の菌体密度、あるいは培養方法に応じて適
宜選択するものであるが、通常、培地中の含有率を0.
01%から0.5%程度に選択して、添加するとよい。
加えて、培地に酵母エキスやグルコースなど増殖用基質
を同時に添加すると好ましく、その際、添加する酵母エ
キス濃度あるいはグルコース濃度は、微生物の菌体密
度、あるいは培養方法に応じて適宜選択するものである
が、通常、培地中の含有率を0.1%から1.0%程度
に選択して、添加するとよい。
【0038】また、上記の培養方法は、バッチ式、流動
バッチ式、連続培養、リアクター形式等、通常の微生物
の培養に用いるいかなる方法をも用いることができる。
その際、培養温度は、利用する微生物が生育・増殖が可
能な温度範囲、例えば、20℃〜35℃程度に維持する
とよい。
【0039】本発明の製造方法においては、培養菌体か
らのPHAの回収は、通常行われているクロロホルム等
の有機溶媒による抽出が最も簡便である。この有機溶媒
を用いる抽出法以外にも、有機溶媒を用いず、例えば、
SDS等の界面活性剤処理、リゾチーム等の酵素処理、
EDTA、次亜塩素酸ナトリウム、アンモニア等の薬剤
処理によってPHA以外の菌体内成分を除去することに
よって、PHAのみを回収する方法を採ることもでき
る。
【0040】なお、本発明において、微生物の培養、微
生物によるPHAの生産と菌体内への蓄積、並びに、菌
体からのPHAの回収は、上に例示した具体的な方法に
限定されるものではない。
【0041】
【実施例】以下に、具体例を示し、本発明の製造方法を
より詳しく説明する。これらの具体例は、本発明におけ
る最良の態様の一例であるが、本発明は以下の具体例に
よってなんら限定されるものではない。
【0042】(実施例1)酵母エキス0.5%、PHx
A0.1%を含むM9培地200mlにN210株を植
菌し、30℃、125ストローク/分で振盪培養した。
22時間後、菌体を遠心分離によって回収し、冷メタノ
ールで一度洗浄して凍結乾燥した。
【0043】この凍結乾燥ペレットを20mlのクロロ
ホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽
出した。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィル
ターでろ過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮
し、濃縮液を冷メタノール中で再沈殿させ、更に沈殿の
みを回収して真空乾燥してPHAを得た。
【0044】上記のPHAをクロロホルム1mlに溶解
し、次にノルマルヘキサンを白濁するまで添加した。こ
れを遠心分離して沈殿部分を回収し、真空乾燥した。こ
れを再びクロロホルム1mlに溶解し、ノルマルヘキサ
ンを添加し、沈殿部分を回収する操作を3回繰返して行
った。
【0045】得られた沈殿部分は、常法に従ってメタノ
リシスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー−質量分
析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で
分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物
の同定を行った。また、このPHAの分子量を、ゲルパ
ーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソー・
HLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリー・P
Lgel・MIXED−C・5μm、溶媒;クロロホル
ム、ポリスチレン換算分子量)により測定した。
【0046】表1に、同定結果、平均分子量、ならびに
凍結乾燥ペレット、回収ポリマーの収量、収率を示す。
その結果、表1に示す通り、ほぼ化学式(I)で示され
る3HPHx由来のモノマーユニットのみを含むPHA
であることが確認された。その生産性は、培地1L当た
り、回収ポリマーの収量は270mgに達し、菌体乾燥
重量当たりの収率も28%であった。
【0047】
【表1】
【0048】なお、先に本発明者らが提案したシュード
モナス ジェッセニイ P161株(Pseudomonas jessen
ii P161;FERM P−17445)を用いて、基質P
HxAから化学式(I)で示される3HPHx由来のモ
ノマーユニットのみを含むPHAを製造する方法では、
上記とほぼ同じ条件でP161株を培養して、表2に示
す凍結乾燥ペレット、回収ポリマーの収量、収率を得て
いる。すなわち、シュードモナス ジェッセニイ P16
1株(Pseudomonas jessenii P161;FERMP−17
445)を用いた場合の生産性は、培地1L当たり、回
収ポリマーの収量は91mgであり、菌体乾燥重量当た
りの収率は12%であった。
【0049】
【表2】
【0050】本実施例のように、N210株を酵母エキ
スと原料の6−フェニルヘキサン酸を添加した無機培地
で培養すると、菌体内に蓄積されるPHAは、ほぼ化学
式(I)で示される3HPHx由来のモノマーユニット
のみを含むPHAであることが、上記表1に示す測定結
果からも確認される。加えて、それ自体高い生産性を示
すシュードモナス ジェッセニイ P161株(Pseudomo
nas jessenii P161;FERM P−17445)と比較
しても、本発明のシュードモナス・プチダ・N210株
(Pseudomonas putida N210;FERM P−1774
4)が示す生産性は格段に高いものであると判断され
る。
【0051】
【発明の効果】本発明の製造方法においては、新規微生
物シュードモナス・プチダ・N210株(Pseudomonas
putida N210)を用いることにより、微生物産生ポリヒ
ドロキシアルカノエートの一種である、化学式(I)で
示される3HPHx由来のモノマーユニットを主に含む
ポリヒドロキシアルカノエートを、より多量に生産し菌
体内に蓄積することが可能となる。特に、培養液当た
り、菌体当たりの当該ポリヒドロキシアルカノエートの
収量は格段に高い利点を持つ。この生産性の高さに加え
て、生産されるポリヒドロキシアルカノエート自体、は
ぼ化学式(I)で示されるモノマーユニットのみを選択
的に含むものである。これらの利点により、機能性ポリ
マーとして有用な置換基を有する当該ポリヒドロキシア
ルカノエートを効率的に製造でき、従って、このような
ポリマーのデバイス材料や医用材料等の各分野への応用
が期待できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12R 1:40) C12R 1:40) (72)発明者 矢野 哲哉 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 見目 敬 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 4B064 AD83 CA02 CB12 CB24 CC03 CD07 CE08 DA01 DA16 4B065 AA44X AC14 BA23 BB08 BD11 BD16 CA22 CA44 CA54

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 新規微生物シュードモナス・プチダ・N
    210株(Pseudomonas putida N210;FERM P−1
    7744)。
  2. 【請求項2】 下記化学式(II): 【化1】 で表される6−フェニルヘキサン酸を基質として、下記
    化学式(I): 【化2】 で表されるモノマーユニットを含むポリヒドロキシアル
    カノエートを生産する能力を有する請求項1記載の新規
    微生物。
  3. 【請求項3】 下記化学式(II): 【化3】 で表される6−フェニルヘキサン酸を基質として、シュ
    ードモナス・プチダ・N210株(Pseudomonas putida
    N210;FERM P−17744)に、下記化学式
    (I): 【化4】 で表されるモノマーユニットを含むポリヒドロキシアル
    カノエートを生産させる工程を有することを特徴とする
    ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  4. 【請求項4】 ポリヒドロキシアルカノエートを生産さ
    せる工程が、前記6−フェニルヘキサン酸を含む培地
    で、シュードモナス・プチダ・N210株(Pseudomona
    s putida N210;FERM P−17744)培養する工
    程を含むことを特徴とする請求項3に記載のポリヒドロ
    キシアルカノエートの製造方法。
  5. 【請求項5】 培養工程によって前記微生物が生産した
    ポリヒドロキシアルカノエートを前記微生物細胞から分
    離する工程を更に有することを特徴とする請求項4に記
    載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  6. 【請求項6】 微生物細胞から分離したポリヒドロキシ
    アルカノエートを回収する工程を更に有することを特徴
    とする請求項5に記載のポリヒドロキシアルカノエート
    の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115807044A (zh) * 2022-11-09 2023-03-17 华南理工大学 一种高效提取并纯化高纯度聚羟基脂肪酸酯的方法

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CN115807044A (zh) * 2022-11-09 2023-03-17 华南理工大学 一种高效提取并纯化高纯度聚羟基脂肪酸酯的方法
CN115807044B (zh) * 2022-11-09 2023-10-13 华南理工大学 一种高效提取并纯化高纯度聚羟基脂肪酸酯的方法

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