JP2001226314A - 高純度ビスマストリス(β−ジケトネート)及びその製造方法 - Google Patents
高純度ビスマストリス(β−ジケトネート)及びその製造方法Info
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Abstract
i2Sr2CaCu2O8などの酸化物超電導体薄膜を
CVD法で作製するためのビスマス原料として、供給時
に、熱安定性が高く、よく昇華する高純度のBi(dp
m)3を提供する。 【解決手段】ビスマスターシャリアミロキシド1モルと
ジピバロイルメタン4モルをトルエン中で6時間加熱還
流して反応させ、次いで溶媒、副生物、過剰のジピバロ
イルメタンを留去し、次いで0.3Torr、170℃
付近で蒸発精製すると、Na2ppm、Cl1ppmの
高純度Bi(dpm)3が収率70%以上で得られる。
Description
誘電体薄膜や酸化物高温超電導体薄膜をCVD法で形成
するための原料として好適なビスマス化合物およびその
製造方法に関する。
rBi2Ta2O9、Bi3Ti4O12、Bi
3.25La0.75Ti3O12などの強誘電体薄膜
やBi2Sr2CaCu2O8などの酸化物超電導体薄
膜を、CVD法で製造することが試みられている。この
場合ビスマス原料化合物としては、トリフェニルビスマ
ス、トリメチルビスマス、トリターシャリアミロキシビ
スマスなどが多く検討されており、ビスマストリス(ジ
ピバロイルメタネート)(以下Bi(dpm)3と略
す)は少ない。しかし他の元素化合物がdpm塩の場合
には、ビスマス化合物と配位子交換が起きないように、
Bi(dpm)3を採用するのが好ましい。しかし従来
のBi(dpm)3は、揮発性や熱安定性が低く、Na
やClなどの不純物が多く、好ましいものではなかっ
た。これらの不純物が多く含まれていると、強誘電体の
リーク電流が増したり、欠陥が増したり、耐久性が低下
するという問題が発生する。
いて以下に記す。M−C.Massiani et a
l.Polyhedron Vol.10,437(1
991)は、THF溶媒中でBiCl3とNa(dp
m)とを反応させて生成する白い沈殿物をヘキサンまた
はジクロロメタンで抽出し、高真空で未反応のNa(d
pm)を昇華分離し、次いで110℃、4×10−4T
orrで昇華し、Bi(dpm)3を得た。これの融点
は78℃であり、単結晶を得ようとしてアンプル内で1
10℃で昇華を試みたが、熱分解してしまった。そのた
めBi(dpm)3は熱的に不安定で昇華しにくいと記
している。S.Yuhya et al.Mol.Cr
yst.Liq.Cryst.Vol.184,231
(1990)は、Bi(dpm)3が熱分解し、揮発せ
ずにBi2O3となったことを記している。
の単量体Bi(dpm)3をクレイムしている。その融
点は139℃である。酸素のない雰囲気中、オクタン、
THF、トルエンなどの中性溶媒中で、Na(dpm)
とBiCl3を反応させる製造方法をクレイムしてい
る。その精製法として例えば再結晶法を記載している。
しかしながら、こうして得られたBi(dpm)3の収
率やNaやClの不純物濃度は記載されていない。また
二量体である[Bi(dpm)3]2のTGAは開示さ
れているにもかかわらず、この発明の単量体Bi(dp
m)3のTGAは開示されていない。原料としてNa
(dpm)と塩化物を使用すると、再結晶や昇華で精製
しても生成物のNaやClの不純物濃度をppmオーダ
ーにすることは、通常では難しい。
の反応によりBi(dpm)3を合成し、再結晶あるい
は昇華で精製を試みたが、最終精製品の収率は0〜20
%と低く、かつNa、Clが30〜100ppm含まれ
ており、高純度とは言い難いものであった。
としてNa、K、Cl、Brが各5ppm以下である高
純度ビスマストリス(β−ジケトネート)を提供するこ
とである。さらに、本発明は、その化合物の製造方法を
提供することである。
してNa、K、Cl、Brが各5ppm以下であること
を特徴とする高純度ビスマストリス(β−ジケトネー
ト)である。本発明は、この高純度ビスマストリス(β
−ジケトネート)の製造方法であり、ビスマストリター
シャリアミロキシドとβ−ジケトンを有機溶媒中で反応
し、次いで溶媒、副生物、未反応物を留去し、次いで減
圧下で、蒸発あるいは昇華により精製する方法である。
本発明は、不純物濃度としてNa、K、Cl、Brが各
5ppm以下である高純度ビスマストリス(ジピバロイ
ルメタネート)である。本発明は、この高純度ビスマス
トリス(ジピバロイルメタネート)の製造方法であり、
ビスマストリターシャリアミロキシドとジピバロイルメ
タンを有機溶媒中で反応し、次いで溶媒、副生物、未反
応物を留去し、次いで減圧下で、蒸発あるいは昇華によ
り精製する方法である。
ストリターシャリアミロキシドBi(OC(CH3)2
C2H5)3(以下Bi(OtAm)3と表す)を用い
る。Bi(OtAm)3は単量体であり、融点90℃、
87℃で0.1Torrの蒸気圧があり、蒸留精製が可
能なほぼ唯一のビスマスアルコキシドである。蒸留精製
することにより、容易に不純物濃度としてNa、K、C
l、Brをppmオーダーにすることが可能である。
される。M.A.Matchett,M.Y.Chia
ng,W.E.Buhro,Inorg.Chem.V
ol.29,(1990)360は、ジメチルアミノビ
スマスBi(N(CH3)2)3とターシャリアミルア
ルコールHOC(CH3)2C2H5と反応させ、次い
で、昇華することにより、収率90%以上でBi(Ot
Am)3を得ている。本発明者らは、臭化ビスマスBi
Br3とナトリウム(ターシャリアミロキシド)Na
(OtAm)と反応させ、次いで、蒸留することによ
り、収率70%以上で高純度のBi(OtAm)3を得
る方法を開発している。
C(CH3)3)3〕は単量体で蒸気圧が高いが、融点
が150℃で蒸留精製が難しいので、本発明の原料とし
ては、好適ではない。ビスマスイソプロポキシド〔Bi
(OCH(CH3)2)3〕やビスマスエトキシド〔B
i(OC2H5)3〕は多量体なので、蒸気圧は低く、
蒸留精製はしにくく、高純度のものは得難い。ビスマス
イソプロポキシドまたはビスマスエトキシドをジピバロ
イルメタンC11H20O2(以下dpmHと表す)と
反応させても、Bi(dpm)3の蒸発精製工程で熱分
解してしまい、ほとんどBi(dpm)3を得ることは
できなかった。この原因はビスマスイソプロポキシドや
ビスマスエトキシドは単量体でないためにアルコキシド
基がdpmHで完全に置換するのが難しいためか、不純
物のNaやClが熱分解を促進しているためかは、不明
である。いずれにせよビスマスイソプロポキシドやビス
マスエトキシドは本発明の原料としては使えない。
トネート)のβ−ジケトネートとしては、ジピバロイル
メタネート(=2,2,6,6−テトラメチル−3,5
−ヘプタンジオネート)、2,6−ジメチル−3,5−
ヘプタンジオネート、2,2,6,6−テトラメチル−
3,5−オクタンジオネート、2,2,6−トリメチル
−3,5−ヘプタンジオネート、6−エチル−2,2−
ジメチル−3,5−オクタンジオネートなどである。
どのイナートな有機溶媒が使える。反応条件は100〜
120℃程度で2〜10時間である。副生するターシヤ
リアミルアルコールを反応蒸留により留出できれば最も
好ましい。しかしdpmH/Bi(OtAm)3の仕込
みモル比を3より大きい3.3〜5にしておけば、Bi
−OtAmが未反応で残ることはない。反応後、溶媒や
副生したターシヤリアミルアルコールを常圧で留去し、
さらに、減圧で未反応のdpmHなどを留去する。残っ
た生成物を蒸発管に仕込み、0.1Torr下で、加熱
浴を140℃程度にすると、その生成物は融解し、15
0〜170℃で蒸発し空冷された管壁に結晶として析出
する。無色(白色)の結晶で収率は70%以上と高い。
蒸発中に熱分解が進行して、収率が大きく低下するとい
う現象はおこらない。より高真空下で行えば、昇華精製
ができる。上記のように蒸発あるいは昇華で得たBi
(dpm)3は、すべて一度は蒸気化したものであり、
不揮発分を全く含まないので、CVDの原料としては最
適である。全てが蒸発するものであることは、溶液フラ
ッシュ法の場合には必須である。
は、 Na 2ppm K <1ppm Cl 1ppm Br 1ppm と少なく、高純度であった。そのTG−DTAを図1に
示す。測定条件は次のとおりである。 Ar1気圧下 試料重量 26.5mg 昇温速度 10.0deg/min
0℃付近から減量が始まり、330℃で50%減量し、
340℃で93.5%減量し一定となった。1気圧下の
TGAでは、蒸発温度が高くならざるを得ず、その結
果、少し熱分解が起きているが、10Torr程度の減
圧下であれば、熱分解が起きる温度より低い温度で蒸発
が完了するので、100%の減量となるはずである。こ
れからわかるように、従来の文献に記されているよう
な、熱安定性が低いという現象は起こらない。これは、
本発明のBi(dpm)3が分子構造的にも、化学純度
的にも、高純度であるためと推定される。
00ml四つ口フラスコを真空置換しアルゴン雰囲気と
し、トルエン180mlを仕込み、次いでBi(OtA
m)320.2g(43mmol)、ジピバロイルメタ
ンdpmH32g(174mmol)を仕込んだ。次い
で攪拌下昇温し、加熱還流状態で6時間反応した。次い
で1気圧下で、溶媒、副生ターシヤリアミルアルコール
などを留去し、最後に1Torr、120℃にして未反
応のdpmHなどの揮発分を留去した。フラスコ内の淡
黄色の固形物を回収し、粉砕し、蒸発管に仕込んだ。
0.3Torrに減圧し、昇温していくと加熱浴温14
0℃付近でこの粉体は融解し、さらに温度を上げていく
と、165℃付近から蒸発し、空冷された管壁に白い結
晶として析出し、175℃までで大半が蒸発析出した。
白い結晶は、23.5g(31mmol)で収率72%
であった。この結晶を湿式分解し、ICP発光分析によ
り定量した結果、Bi含量は、26.8%(計算値2
7.5%)であった。さらに不純物分析の結果、 Na 2ppm Cl 1ppm K <1ppm Br 1ppm Fe 1ppm Si 4ppm であり高純度であった。
膜やBi2Sr2CaCu2O8などの酸化物超電導体
薄膜をCVD法で作製するためのビスマス原料として、
供給時に、熱安定性が高く、よく昇華する高純度のBi
(dpm)3を提供できる。
果を示す図である。
Claims (4)
- 【請求項1】不純物濃度としてNa、K、Cl、Brが
各5ppm以下であることを特徴とする高純度ビスマス
トリス(β−ジケトネート)。 - 【請求項2】ビスマストリターシャリアミロキシドとβ
−ジケトンを有機溶媒中で反応し、次いで溶媒、副生
物、未反応物を留去し、次いで減圧下で、蒸発あるいは
昇華により精製することを特徴とする請求項1の高純度
ビスマストリス(β−ジケトネート)の製造方法。 - 【請求項3】β−ジケトネートがジピバロイルメタネー
トである請求項1の高純度ビスマストリス(ジピバロイ
ルメタネート)。 - 【請求項4】ビスマストリターシャリアミロキシドとジ
ピバロイルメタンを有機溶媒中で反応し、次いで溶媒、
副生物、未反応物を留去し、次いで減圧下で、蒸発ある
いは昇華により精製することを特徴とする請求項3の高
純度ビスマストリス(ジピバロイルメタネート)の製造
方法。
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