JP2001196652A - 圧電体素子およびその製造方法ならびにそれを用いたインクジェット式プリンタヘッド - Google Patents

圧電体素子およびその製造方法ならびにそれを用いたインクジェット式プリンタヘッド

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JP2001196652A
JP2001196652A JP2000326947A JP2000326947A JP2001196652A JP 2001196652 A JP2001196652 A JP 2001196652A JP 2000326947 A JP2000326947 A JP 2000326947A JP 2000326947 A JP2000326947 A JP 2000326947A JP 2001196652 A JP2001196652 A JP 2001196652A
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piezoelectric
piezoelectric element
lower electrode
film
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Toshimi Fukui
俊巳 福井
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Kansai Research Institute KRI Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 圧電体膜の圧電特性を向上させることを可能
にする圧電体素子を提供し、インクジェット式プリンタ
ヘッドの高性能化や耐久性の向上を図る。 【手段】 下部電極6と上部電極8とで挟まれた圧電体
膜7を、化学式Pb(Zr1−xTi)O(0.3
≦x≦0.9)で表されるPZTで形成しまたはPZT
を主成分として形成し、圧電体膜におけるジルコニウム
に対するチタンの濃度比が、上部電極側から下部電極側
に向かって漸次増加もしくは漸次減少するようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えばインクジ
ェット式プリンタヘッドにおいて、インク室に満たされ
たインクを、インク経路を通ってインクノズルから噴射
させるために、インク室の容積を変化させるアクチュエ
ータに用いられる圧電体素子、および、その圧電体素子
を製造する方法、ならびに、その圧電体素子を用いて構
成されるインクジェット式プリンタヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット式プリンタヘッドは、一
般にヘッド基台と振動板およびアクチュエータとから構
成されている。図7に一部を拡大して模式的に示すよう
に、ヘッド基台11には、インクを噴射する多数のイン
クノズル、それぞれのインクノズルに個別に連通する多
数のインク経路、および、それぞれのインク経路に個別
に連通する多数のインク室12が形成されている(図7
では、1つのインク室12のみを示し、インク経路やイ
ンクノズルの図示を省略している)。このヘッド基台1
1の上面全体を覆うように振動板13が取り付けられ、
この振動板13によってヘッド基台11の全てのインク
室12の上面開口が閉塞されている。振動板13上に
は、それぞれのインク室12と個別に対応した位置に、
振動板13に振動駆動力を与えるための圧電体素子15
が被着形成されている。そして、多数の圧電体素子15
を備えたアクチュエータ14の電源19を制御して、所
望の選択された圧電体素子15に電圧を印加することに
より、圧電体素子15を変位させて、その部分の振動板
13を振動させる。これにより、振動板13の振動に対
応した部分のインク室12の容積を変化させて、インク
経路を通ってインクノズルからインクを押し出すように
なっている。
【0003】圧電体素子15は、下部電極16の表面に
圧電体膜17を形成し、その圧電体膜17の表面に上部
電極18を形成して、下部電極16と上部電極18とで
圧電体膜17を挟んで構成されている。圧電体膜17
は、一般的に、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,T
i)O;PZT)で形成され、またはPZTを主成分
として形成されている。このような組成の圧電体膜17
は、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法、レーザーアブ
レーション法、ゾル−ゲル法、厚膜法(圧電ペーストを
用いる方法)などにより形成される。
【0004】例えば特開平9−92897号公報、特開
平10−139594号公報、特開平10−29003
5号公報等には、ゾル−ゲル法を利用し、下部電極上に
圧電体材料を含むゾルを複数回に分けて塗布し加熱処理
を繰り返すことにより、インクジェット式プリンタヘッ
ドに用いられる圧電体素子の圧電体膜を形成する方法が
開示されている。
【0005】なお、特開平9−92897号公報には、
PbZrO/PbTiO/Pb(A)O
(x+y=1;A:Mg等、B:Nb等)の組成を有
する圧電体膜と下部電極との界面で、A、Bのうち少な
くとも1種の濃度が極大値を示すようにすることによ
り、下部電極と圧電体膜との密着性が充分に得られるよ
うにした圧電体素子が記載されている。特開平10−1
39594号公報には、マグネシウム酸ニオブ酸鉛(P
MN)、ジルコン酸鉛およびチタン酸鉛の三成分系圧電
体材からなる母層と、母層に比べて結晶化温度の低いジ
ルコン酸鉛およびチタン酸鉛の二成分系圧電体材料から
なる部分層とから圧電体膜を形成することにより、厚膜
化しても圧電ひずみ定数値が低下しないようにする技術
が記載されている。また、特開平10−290035号
公報には、まず、下部電極上にゾル−ゲル法を用いて下
層PZT膜を形成した後、下層PZT膜をプレアニール
して、下部電極側からチタンと鉛がジルコニウムより先
に結晶化しかつジルコニウムが膜表面に偏析しやすくな
るように下層PZT膜を結晶化させ、次いで、下層PZ
T膜上にゾル−ゲル法を用いて上層PZT膜を形成した
後、PZT膜をアニールして、下層PZT膜側からチタ
ンと鉛がジルコニウムより先に結晶化しかつジルコニウ
ムが膜表面に偏析しやすくなるように上層PZT膜を結
晶化させ、これにより、下層PZT膜および上層PZT
膜のそれぞれにおいて、ジルコニウムの含有濃度が下部
電極側で小さく上部電極側で大きくなり、チタンの含有
濃度が下部電極側で大きく上部電極側で小さくなるよう
にし、圧電体膜の圧電ひずみ定数を保持しつつ圧電体膜
の誘電率を低くすることで静電容量を小さくして発熱量
を小さくできるようにした圧電体素子が記載されてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】特開平9−92897
号公報、特開平10−139594号公報、特開平10
−290035号公報等に開示されているように、従
来、インクジェット式プリンタヘッドの高性能化や耐久
性の向上を図ることができるように、アクチュエータと
して用いられる圧電体素子の特性や動作信頼性の向上の
ための多くの提案がなされている。しかしながら、従来
の圧電体素子では、圧電体膜の組成は膜全体を通して一
定であった。また、特開平10−290035号公報に
は、PZTで形成される圧電体膜中に含まれるジルコニ
ウムおよびチタンの濃度を膜厚方向において変化させる
ことが開示されているが、同号公報に記載されている圧
電体素子は、単に、圧電体膜に含有されるジルコニウム
およびチタンを、膜厚方向に濃度勾配(濃度差)を持っ
て分布させることにより、圧電体膜の圧電ひずみ定数は
そのままで、圧電体膜の誘電率を低くし静電容量を小さ
くして発熱量を抑える、といったものであり、圧電体素
子としての圧電特性を向上させる、といったものではな
い。
【0007】この発明は、以上のような事情に鑑みてな
されたものであり、圧電体膜の圧電特性を向上させるこ
とを可能にする圧電体素子を提供すること、および、そ
のような圧電体素子を好適に製造することができる圧電
体素子の製造方法を提供すること、ならびに、前記の圧
電体素子がアクチュエータに用いられたインクジェット
式プリンタヘッドを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
化学式Pb(Zr1−xTi)O(0.3≦x≦
0.9)で表される複合酸化物(PZT)で形成されま
たはそのPZTを主成分として形成された圧電体膜の両
面側に、その圧電体膜を挟むように上部電極および下部
電極が配設された圧電体素子であって、前記圧電体膜に
おけるジルコニウムに対するチタンの濃度比が、前記上
部電極側から前記下部電極側に向かって漸次増加もしく
は漸次減少することを特徴とする。
【0009】ここで、「圧電体膜におけるジルコニウム
に対するチタンの濃度比が上部電極側から下部電極側に
向かって漸次増加もしくは漸次減少する」とは、例え
ば、図2の実線Iまたは破線IIに示すように濃度比が変
化する場合、および、図3の実線IIIまたは破線IVに示
すように濃度比が階段状に変化する場合のほか、図4の
実線Vまたは破線VIに示すように、濃度比が階段状の変
化と直線的な変化とを複合したような変化を示す場合な
ども含まれる。このように濃度比が上部電極側から下部
電極側に向かって漸次増加もしくは漸次減少しているこ
とは、例えば、X線マイクロアナリシス(EPMA)に
よるライン分析を行うことにより、それを確認すること
ができる。なお、元素分析時におけるノイズにより、分
析データに微小凹凸が含まれていても、マクロ的にみ
て、圧電体膜の上部電極側から下部電極側に向かって濃
度比が漸次増加もしくは漸次減少しておれば、この発明
でいうところの「濃度比が漸次増加もしくは漸次減少す
る」といった概念に含まれる。
【0010】請求項2に係る発明は、請求項1記載の圧
電体素子において、前記圧電体膜の、前記上部電極と接
触する面側を、化学式Pb(Zr1−xTi)O
(0.45≦x≦0.50)で表されるPZTで形成
しまたはそのPZTを主成分として形成し、前記下部電
極側に向かってジルコニウムに対するチタンの濃度比を
漸次増加もしくは漸次減少させたことを特徴とする。
【0011】請求項3に係る発明は、請求項1記載の圧
電体素子において、前記圧電体膜の、前記下部電極と接
触する面側を、化学式Pb(Zr1−xTi)O
(0.45≦x≦0.50)で表されるPZTで形成
しまたはそのPZTを主成分として形成し、前記上部電
極側に向かってジルコニウムに対するチタンの濃度比を
漸次増加もしくは漸次減少させたことを特徴とする。
【0012】請求項4に係る発明は、請求項1ないし請
求項3のいずれかに記載の圧電体素子において、前記圧
電体膜の厚みを1μm〜20μmとしたことを特徴とす
る。
【0013】請求項5に係る発明は、請求項4記載の圧
電体素子において、前記圧電体膜の厚みを2μm〜12
μmとしたことを特徴とする。
【0014】請求項6に係る発明は、請求項1ないし請
求項5のいずれかに記載の圧電体素子において、前記圧
電体膜を、複数層の、ジルコニウムに対するチタンの濃
度比が異なるPZT薄膜で形成したことを特徴とする。
ここで、「複数層の、ジルコニウムに対するチタンの濃
度比が異なるPZT薄膜」とは、濃度比の異なるPZT
薄膜が複数層であることを意味し、ある濃度比を有する
PZT薄膜が、同じ濃度比の複数の層で形成されていて
も構わない。つまり、圧電体膜が複数層の濃度比の異な
るPZT薄膜で形成されていることは、圧電体膜を元素
分析したときに、図3や図4に示すように、厚み方向に
おいて濃度比が階段状の変化を示すことにより検証し得
る。しかし、圧電体膜が複数のPZT薄膜で形成されて
いても、各層間の界面が必ずしも明確である訳ではな
い。これは、圧電体膜を形成する際の焼成過程で、熱拡
散による物質の移動が起こることによるためであり、実
際には、圧電体膜中の濃度比の変化は、図4に示したよ
うに階段状の変化と直線的な変化とを複合したようなも
のになる場合がある。
【0015】請求項7に係る発明は、請求項6記載の圧
電体素子において、前記圧電体膜を、3層以上の、ジル
コニウムに対するチタンの濃度比が異なるPZT薄膜で
形成したことを特徴とする。
【0016】請求項8に係る発明は、請求項7記載の圧
電体素子において、前記圧電体膜を、4層以上の、ジル
コニウムに対するチタンの濃度比が異なるPZT薄膜で
形成したことを特徴とする。
【0017】請求項9に係る発明は、基板上に下部電極
を形成する工程と、前記下部電極上に、化学式Pb(Z
1−xTi)O(0.3≦x≦0.9)で表され
るPZTからなりまたはそのPZTを主成分とする圧電
体膜を形成する工程と、前記圧電体膜上に上部電極を形
成する工程と、を含む圧電体素子の製造方法であって、
それぞれ前記PZTおよび/またはその前駆体を含みジ
ルコニウムに対するチタンの濃度比が異なる複数種の組
成物を使用し、それらの組成物を、ジルコニウムに対す
るチタンの濃度比が漸次増加もしくは漸次減少する順に
前記下部電極上に積層して、前記圧電体膜を形成するこ
とを特徴とする。
【0018】請求項10に係る発明は、請求項9記載の
製造方法において、ジルコニウムに対するチタンの濃度
比が異なる3種以上の組成物を使用することを特徴とす
る。
【0019】請求項11に係る発明は、請求項10記載
の製造方法において、ジルコニウムに対するチタンの濃
度比が異なる4種以上の組成物を使用することを特徴と
する。
【0020】請求項12に係る発明は、請求項9ないし
請求項11のいずれかに記載の製造方法において、前記
組成物としてペーストを使用することを特徴とする。
【0021】請求項13に係る発明は、請求項9ないし
請求項11のいずれかに記載の製造方法において、前記
組成物として塗布液を使用することを特徴とする。
【0022】請求項14に係る発明は、請求項13記載
の製造方法において、前記塗布液を、金属アルコキシド
および/または金属塩を出発原料として調製することを
特徴とする。
【0023】請求項15に係る発明は、基板上に下部電
極を形成する工程と、前記下部電極上に、化学式Pb
(Zr1−xTi)O(0.3≦x≦0.9)で表
されるPZTからなりまたはそのPZTを主成分とする
圧電体膜を形成する工程と、前記圧電体膜上に上部電極
を形成する工程と、を含む圧電体素子の製造方法であっ
て、前記圧電体膜におけるジルコニウムに対するチタン
の濃度比が、前記上部電極側から前記下部電極側に向か
って漸次増加もしくは漸次減少するように、スパッタ
法、真空蒸着法、CVD法、レーザーアブレーション法
などの真空法により前記下部電極上に圧電体膜を形成す
ることを特徴とする。
【0024】請求項16に係る発明は、1個もしくは2
個以上のインクノズルを有し、そのインクノズルに連通
したインク室の容積をアクチュエータによって変化さ
せ、前記インクノズルを通ってインクを噴射させるよう
にしたインクジェット式プリンタヘッドであって、前記
アクチュエータに、請求項1ないし請求項8のいずれか
に記載の圧電体素子を用いたことを特徴とする。
【0025】請求項1に係る発明の圧電体素子では、圧
電体膜におけるジルコニウムに対するチタンの濃度比
が、上部電極側から下部電極側に向かって漸次増加もし
くは漸次減少するようにすることにより、下部電極と圧
電体膜との界面における応力の発生を小さくしたり、リ
ーク特性(圧電体膜に電圧をかけたときのリーク電流量
の変化との関係を示す性状)を改善したりするなど、圧
電体膜の圧電特性を向上させることが可能になる。
【0026】請求項2に係る発明の圧電体素子では、圧
電体膜の、上部電極と接触する面側が、モルフォトロピ
ック相転移境界付近でPZTの圧電(ひずみ)定数が最
も大きくなる組成を有しており、圧電体膜は、上部電極
側において収縮が大きくなる。一方、圧電体膜は、下部
電極側において圧電定数が小さくなり、下部電極と圧電
体膜との界面における応力の発生が小さくなる。
【0027】請求項3に係る発明の圧電体素子では、圧
電体膜の、上部電極と接触する面側の組成が、モルフォ
トロピック相転移境界付近でPZTの圧電定数が最も大
きくなる組成からずれていることにより、リーク特性が
改善される。
【0028】請求項4に係る発明の圧電体素子では、圧
電体膜の厚みが1μm〜25μmとされていることによ
り、圧電体膜が薄過ぎて駆動力不足となり素子で有効な
振動が得られなかったり、圧電体膜が厚過ぎて素子を変
位させるのに大きな電圧が必要になったりする、といっ
たことがない。
【0029】請求項5に係る発明の圧電体素子では、駆
動力が適度となり有効な振動が得られるとともに、素子
を変位させるのにそれほど大きな電圧を必要とすること
もない。
【0030】請求項6に係る発明の圧電体素子では、圧
電体膜が複数層のPZT薄膜で形成されていることによ
り、各層間で発生する応力を緩和させることができる。
【0031】請求項7に係る発明の圧電体素子では、圧
電体膜が3層以上のPZT薄膜で形成されていることに
より、各層間で発生する応力を緩和させることができ、
請求項8に係る発明の圧電体素子では、圧電体膜が4層
以上のPZT薄膜で形成されていることにより、各層間
で発生する応力をより緩和させることができる。
【0032】請求項9ないし請求項15に係る各発明の
製造方法によると、請求項1に係る発明の圧電体素子が
比較的簡易な製造工程で得られる。
【0033】請求項16に係る発明のインクジェット式
プリンタヘッドは、アクチュエータとして請求項1ない
し請求項8に係る各発明の、上記特性を有する圧電体素
子を具備している。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、この発明の好適な実施形態
について図1を参照しながら説明する。
【0035】図1は、この発明の実施形態の1例を示
し、圧電体素子がアクチュエータに用いられたインクジ
ェット式プリンタヘッドの一部を拡大して模式的に示す
縦断面図である。プリンタヘッドの基本構成は、従来と
同様であり、ヘッド基台1と振動板3およびアクチュエ
ータ4とから構成されている。ヘッド基台1には、イン
クを噴射する多数のインクノズル(図示せず)、それぞ
れのインクノズルに個別に連通する多数のインク経路
(図示せず)、および、それぞれのインク経路に個別に
連通する多数のインク室2が形成されており、ヘッド基
台1の上面全体を覆うように振動板3が取り付けられ、
この振動板3によってヘッド基台1の全てのインク室2
の上面開口が閉塞されている。振動板3上には、それぞ
れのインク室2と個別に対応した位置に、振動板3に振
動駆動力を与えるための圧電体素子5が被着形成されて
いる。そして、多数の圧電体素子5を備えたアクチュエ
ータ4の電源9を制御して、所望の選択された圧電体素
子5に電圧を印加することにより、圧電体素子5を変位
させて、その部分の振動板3を振動させる。これによ
り、振動板3の振動に対応した部分のインク室2の容積
が変化して、インク経路を通ってインクノズルからイン
クが押し出されて印刷が行われることになる。
【0036】圧電体素子5は、下部電極6の表面に圧電
体膜7を形成し、その圧電体膜7の表面に上部電極8を
形成して、下部電極6と上部電極8とで圧電体膜7を挟
んだ構造を有する。下部電極6の材料は、特に限定され
ず、圧電体素子において通常用いられているものであれ
ばよく、例えば白金(Pt)や金(Au)などが使用さ
れる。また、上部電極8の材料も、特に限定されず、圧
電体素子において通常用いられているものであればよ
く、例えばAu、Ptなどが使用される。これらの電極
6、8の厚みも、特に限定されないが、例えば0.05
μm〜2μ程度とされる。また、下部電極6と圧電体膜
7との間および/または圧電体膜7と上部電極8との間
に、例えばTiから形成される密着層を設けるようにし
てもよい。
【0037】圧電体膜7は、化学式Pb(Zr1−x
)O(0.3≦x≦0.9、好ましくは0.4≦
x≦0.9)で表されるPZTで形成されまたはそのP
ZTを主成分として形成されている。ここで、圧電体膜
7の組成がx<0.3になると、圧電定数が小さくて実
用的でない。一方、圧電体膜7の組成がx>0.9にな
ると、PZTの焼結性が低下するため、圧電体膜7の製
造過程でPZT薄膜の形成に高い加熱処理温度が必要と
なり、他方、通常の焼成条件での加熱処理では、PZT
薄膜の緻密化が進行せずに圧電定数が小さくなり実用的
でなくなる。また、本発明でいうところの、xの範囲が
0.3以上で0.9以下であるとの条件は、圧電体膜全
体の平均的な組成を意味するものではなく、圧電体膜が
単層構造をとる場合にその単層が前記条件をあらゆる部
分で満たすことを意味し、また、圧電体膜が複数層構造
をとる場合には複数層の各層がすべて前記条件をあらゆ
る部分で満たすことを意味するものである。
【0038】圧電体膜7の厚みは、1μm〜25μm程
度とされる。ここで、圧電体膜7の駆動力の大きさは、
圧電体のバルク量によって左右されるため、圧電体膜7
が薄過ぎると、駆動力不足となって圧電体素子5として
の有効な振動が得られず、圧電体膜7が厚過ぎると、圧
電体素子5を変位させるのに大きな電圧が必要になる
が、圧電体膜7の厚みを1μm〜25μm程度、好まし
くは2μm〜12μmとすることにより、圧電体素子5
として有効な振動が得られるとともに、それほど大きな
電圧を必要としなくても圧電体素子5を変位させること
が可能である。
【0039】また、圧電体膜7は、複数層、好ましくは
3層〜10層の、組成の異なるPZT薄膜、すなわちジ
ルコニウムに対するチタンの濃度比が異なるPZT薄膜
で形成される。このように圧電体膜7を、好ましくは3
層〜10層、より好ましくは4層〜8層の、組成の異な
るPZT薄膜で形成することにより、隣接するPZT薄
膜同士間での圧電定数値の差を小さくして、各層間で発
生する応力を緩和させることができる。一方、余り層を
多くすると、素子の製造工程が繁雑になるので好ましく
ない。図示例では、圧電体膜7が、下層、中間層および
上層の3層のPZT薄膜7a、7b、7cで形成されて
いる。そして、PZT薄膜7a、7b、7cは、圧電体
膜7の厚み方向においてPZT中のジルコニウムに対す
るチタンの濃度比が漸次増加もしくは漸次減少するよう
にされている。
【0040】圧電体膜7の構成の具体例を示すと、上部
電極8側のPZT薄膜7cを、化学式Pb(Zr1−x
Ti)O(0.45≦x≦0.50)で表されるP
ZTで形成しまたはそのPZTを主成分として形成し、
下部電極6側に向かってそれぞれのPZT薄膜7c、7
b、7a中のジルコニウムに対するチタンの濃度比が漸
次増加もしくは漸次減少するようにする。このような構
成の圧電体膜7では、上部電極8側のPZT薄膜7c
が、モルフォトロピック相転移境界付近でPZTの圧電
定数が最も大きくなる組成を有することになる。このた
め、圧電体膜7は、上部電極8側において収縮が大きく
なり、圧電体素子5としての機能が充分に発揮されるこ
とになる。一方、圧電体膜7は、下部電極6側のPZT
薄膜7aの圧電定数が小さくなり、下部電極6と圧電体
膜7との界面における応力の発生が小さくなる。この結
果、圧電体素子5を長期間にわたって使用したときに、
下部電極6と圧電体膜7との界面付近における素子の劣
化が防止され、圧電体素子5を長期間にわたり安定して
使用することが可能になる。
【0041】また、圧電体膜7の、下部電極6側のPZ
T薄膜7aを、化学式Pb(Zr −xTi)O
(0.45≦x≦0.50)で表されるPZTで形成
しまたはそのPZTを主成分として形成し、上部電極8
側に向かってそれぞれのPZT薄膜7a、7b、7c中
のジルコニウムに対するチタンの濃度比が漸次増加もし
くは漸次減少するようにする。このような構成の圧電体
膜7では、圧電体膜7の、上部電極8側のPZT薄膜7
cの組成が、モルフォトロピック相転移境界付近でPZ
Tの圧電定数が最も大きくなる組成からずれていること
により、リーク特性が改善される。より詳しく説明する
と、圧電体膜7は、本来絶縁体であるので、電気を流さ
ないことが好ましいが、現実には粒界や組成ずれなどの
影響により微少電流が流れる。圧電体膜7に電流が流れ
てしまうと、圧電体膜7に有効に電界をかけることがで
きなくなるため、リーク電流をできるだけ少なくする必
要がある。ところが、上記化学式において0.45≦x
≦0.50の組成のPZTでは、結晶構造が不安定(正
方晶から菱面体晶へ結晶構造が変化する)であり、リー
ク電流の生成原因となる欠陥構造や組成ずれが起きやす
いと推定される。そこで、PZTの結晶構造の安定なチ
タンまたはジルコニウムの過剰域へ上部電極8側のPZ
T薄膜7cの組成をずらすことにより、リーク特性が改
善されると考えられる。したがって、上部電極8側のP
ZT薄膜7cをリーク防止層とするためには、組成を上
記化学式の0.45≦x≦0.50から相当にずらすこ
とがよい。そして、圧電体膜7におけるリーク特性が改
善される結果、圧電体素子5を長期間にわたり安定して
使用することが可能になる。
【0042】上記した組成の圧電体膜7は、圧電体ペー
ストを塗布する方法、ゾル−ゲル法、スパッタ法、真空
蒸着法、CVD法、レーザーアブレーション法などを利
用して形成される。圧電体ペーストの塗布法やゾル−ゲ
ル法を利用する方法では、PZTおよび/またはその前
駆体を含む組成物を使用し、それらの組成物を下部電極
上に塗り重ね焼成して圧電体膜を形成する。PZTおよ
び/またはその前駆体を含む組成物は、具体的には、P
ZT粉末、PZT前駆体の粉末(例えば(Zr 1−x
粉末とPbO粉末との混合物)、PZT前
駆体の粉末と溶液との混合物(例えばPbO粉末とZr
およびTiの各アルコキシドを含む溶液またはそれらの
加水分解・重合物との混合物)、PZT前駆体の溶液
(Zr、TiおよびPbの各アルコキシドもしくは金属
塩またはそれらの加水分解・重合物)、PZT粉末とP
ZT前駆体の粉末との混合物、PZT粉末とPZT前駆
体の粉末と溶液との混合物、あるいは、PZT粉末とP
ZT前駆体の溶液との混合物である。この圧電体ペース
トの塗布法およびゾル−ゲル法を利用する方法の例につ
いて、より詳しく以下に説明する。
【0043】ペーストを用いることにより圧電体膜7を
形成する方法では、まず、PZTおよび/またはその前
駆体を含みジルコニウムに対するチタンの濃度比が異な
る、好ましくは3種〜10種、より好ましくは4種〜8
種のペーストを調製する。このペーストは、それぞれ相
当する組成のPZT粉末と有機バインダとを溶剤中に添
加して調製される。それぞれの組成のPZT粉末は、原
料粉末の固相反応、金属アルコキシドや金属塩を出発原
料とするゾル−ゲル法、共沈法、水熱法、噴霧分解法な
どの公知の方法により製造される。有機バインダとして
は、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプ
ロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ナイロン、
(メタ)アクリル酸の単独重合体や共重合体などが使用
される。溶剤は、ペーストの塗布性などの作業性を良好
にするために用いられ、各種溶剤の中から適宜選択して
使用すればよいが、例えばエチルセロソルブなどが溶剤
として使用される。なお、PZTは、ペースト中に高濃
度に配合されても、分散性は良好である。
【0044】PZTまたはその前駆体を含む複数種のペ
ーストが得られると、それらのペーストを、ジルコニウ
ムに対するチタンの濃度比が漸次増加および漸次減少す
る順に、ジルコニア等の基板上に例えば厚膜法(導電ペ
ーストを用いる方法)、スパッタ法、蒸着法等により形
成された下部電極上に塗布していき、必要により塗布の
都度乾燥させて溶剤を除去し、複数層に塗り重ねる。ペ
ーストの塗布方法は、特に限定されず、慣用のコーティ
ング方法、例えばスクリーン印刷法、スピンコーティン
グ法、ディッピング法、キャスト法、ドクターブレード
法などが用いられる。一連のペースト塗布工程が終了す
ると、焼成を行う。焼成は、適当な温度、例えば300
℃〜1,400℃、好ましくは600℃〜1,200℃
程度の温度で行う。また、焼成は、不活性ガス雰囲気、
酸素含有雰囲気(空気中等)、PbO雰囲気など、任意
の雰囲気下で行えばよく、常圧下または減圧下で行うこ
とができる。通常は、空気中で、室温から300℃〜
1,400℃程度まで昇温させて、数分間〜24時間を
かけて焼成を行う。また、焼成の際に、段階的な昇温を
行うようにしてもよい。このような焼成により、有機成
分がほぼ消失して、緻密な構造の圧電体膜が得られる。
下部電極上に圧電体膜が形成されると、圧電体膜上に、
常法により、例えば厚膜法(導電ペーストを用いる方
法)、スパッタ法、蒸着法等により上部電極を形成し
て、圧電体素子とされる。
【0045】次に、ゾル−ゲル法を利用して圧電体膜7
を形成する方法は、まず、PZTおよび/またはその前
駆体を含みジルコニウムに対するチタンの濃度比が異な
る、好ましくは3種〜10種、より好ましくは4種〜8
種の塗布液を調製する。この塗布液は、例えば、鉛、チ
タンおよびジルコニウムのそれぞれのアルコキシドおよ
び/または塩を出発原料とし、それらの原料を含む溶液
を加水分解・重合させて調製する。金属アルコキシドと
しては、特に限定されないが、好ましくはアルコキシル
基の炭素数が1〜15であるものが使用され、より好ま
しくはアルコキシル基の炭素数が1〜4のものが使用さ
れる。金属塩としては、酢酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、
塩化物などが使用される。
【0046】金属アルコキシドおよび/または金属塩を
溶解させる溶剤としては、出発原料および加水分解に用
いる水が可溶であれば、単一溶剤でも混合溶剤でもよ
く、特に限定されず、例えば極性溶剤と非極性溶剤との
組合せでも使用可能である。水を添加する温度域での粘
度や除去の容易さから、アルコールやアミド類などが用
いられる。また、トルエンや炭化水素などの非極性溶剤
の併用も可能である。例えば、アルコールとしては、炭
素数が1〜5であるメタノール、エタノール、プロパノ
ール、ブタノールなどの1級アルコール、エチレングリ
コールやプロピレンアルコールなどの2級アルコール、
2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2
−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノー
ルなどのアルコキシアルコールが用いられる。また、酸
アミド類としては、ホルムアミドやN,N−ジメチルホ
ルムアミド(DMF)などが用いられる。そのほか、ト
ルエンなどの芳香族、ヘキサンやシクロヘキサンなどの
炭化水素、酢酸メチルや酢酸エチルなどのエステル類、
アセトニトリルなどが用いられる。
【0047】また、塗布液の安定性を向上させるため
に、金属アルコキシドおよび/または金属塩を含む溶液
にモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエ
タノールアミンなどのアルカノールアミン、アセチルア
セトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルなどのβ
−ジケトン類などを添加するようにしてもよい。
【0048】また、金属アルコキシドおよび/または金
属塩を含む溶液の加水分解には、例えば金属アルコキシ
ドおよび/または金属塩の0.05モル倍〜2モル倍の
水が用いられ、より好ましくは0.5モル倍〜1.5モ
ル倍の水が用いられる。この加水分解には、酸触媒およ
び/または塩基触媒を用いるようにしてもよく、好まし
くは、塩酸などの鉱酸や酢酸などの有機酸が用いられ
る。
【0049】金属アルコキシドおよび/または金属塩を
含む溶液の加水分解によってPZTまたはその前駆体を
含む複数種の塗布液が調製されると、それらの塗布液を
下部電極の表面に塗布し乾燥させ焼成して、下部電極上
に圧電体膜を形成する。これには、PZTまたはその前
駆体を含む複数種の塗布液を、ジルコニウムに対するチ
タンの濃度比が漸次増加もしくは漸次減少する順に、成
膜、乾燥および仮焼成の各工程を繰り返して下部電極上
に塗り重ね、最後に焼成する。塗布液の塗布方法は、特
に限定されないが、通常はスピンコート法が用いられ
る。仮焼成の温度は、例えば300℃〜400℃程度と
し、最後に行われる焼成の温度は、例えば500℃〜
1,000℃程度とする。なお、ジルコニウムに対する
チタンの濃度比が同じである各塗布液を、それぞれ複数
回ずつ塗布・乾燥・仮焼成して、それぞれのPZT薄膜
を形成するようにしてもよい。下部電極上に圧電体膜が
形成されると、圧電体膜上に、常法により上部電極を形
成して、圧電体素子とされる。
【0050】以上、ペーストを用いて圧電体膜を形成す
る方法、および、ゾル−ゲル法を利用し塗布液を用いて
圧電体膜を形成する方法について説明したが、それらの
ペーストおよび塗布液以外でも、PZTまたはその前駆
体を含んでいて、下部電極上に塗布し積層することによ
り圧電体膜を形成することができる組成物であれば、ど
のようなものでも使用することが可能である。
【0051】なお、圧電体膜中の元素分析を行う場合に
は、膜厚が10μm前後以上であるときは、X線マイク
ロアナリシス(EPMA)により分析が可能であり、ま
た、膜厚が数μm以下であるときは、エネルギー分散型
X線マイクロアナリシス(EDX)、X線光電子分光分
析(ESCA)、二次イオン質量分析(SIMS)およ
びオージェ分析(AES)により分析が可能である。
【0052】
【実施例】以下、この発明のより具体的な実施例につい
て説明する。
【0053】〈圧電体ペーストの調製〉各組成のPZT
粉末は、相当する組成の(Zr1−xTi
末(堺化学製)とPbO粉末(高純度化学製)とを、メ
タノールを媒質としてボールミル混合した後、650℃
の温度で焼成し、得られた焼成物を、ジルコニアボール
を用いてメタノール中で16時間、ボールミル粉砕して
作製した。得られたPZT粉末の平均粒径は、0.2μ
mであった。また、LaまたはNbを添加
したPZT粉末は、LaまたはNbの酸化
物原料を(Zr −xTi粉末(堺化学製)
とPbO粉末(高純度化学製)とに加え、上記と同様の
方法により作製した。
【0054】得られたPZT粉末100重量部とヒドロ
キシプロピルセルロース(日本曹達製、HPC−L)9
重量部とをエチルセロソルブ8重量部に加え、三本ロー
ルミキサーを用いて混練し、各組成のPZTを含みまた
はPZTを主成分として含むペースト1〜ペースト15
を調製した。
【0055】 ペースト1:Pb(Zr0.6Ti0.4)O ペースト2:Pb(Zr0.56Ti0.44)O ペースト3:Pb(Zr0.52Ti0.48)O ペースト4:Pb(Zr0.45Ti0.55)O ペースト5:Pb(Zr0.4Ti0.6)O ペースト6:Pb(Zr0.3Ti0.7)O ペースト7:Pb(Zr0.2Ti0.8)O ペースト8:0.02La−0.98Pb(Zr
0.52Ti0.48)O ペースト9:0.02La−0.98Pb(Zr
0.45Ti0.55)O ペースト10:0.02La−0.98Pb(Z
0.4Ti0.6)O ペースト11:0.02Nb−0.98Pb(Z
0.52Ti0.4 )O ペースト12:0.02Nb−0.98Pb(Z
0.45Ti0.5 )O ペースト13:0.02Nb−0.98Pb(Z
0.4Ti0.6)O ペースト14:Pb(Zr0.55Ti0.45)O ペースト15:Pb(Zr0.5Ti0.5)O
【0056】〔実施例1〜14〕図1に示したような構
成のインクジェット式プリンタヘッド用の圧電体素子を
作成するために、振動板となる厚さ10μmのジルコニ
ア基板上に、下部電極として焼成後の厚さが5μmとな
るようにPtペーストをスクリーン印刷した後、各種ペ
ーストを、圧電体膜の全体の厚さが10μmでサイズが
200μm×3mmとなるようにそれぞれスクリーン印
刷した多層膜を作成した。多層膜における各層の厚さ
は、実施例1、2、5〜8:下部電極側から2μm、2
μm、6μm;実施例3:下部電極側から1μm、1.
5μm、1.5μm、6μm;実施例4:下部電極側か
ら1μm、1μm、1μm、1μm、6μm;実施例
9、10、13、14:下部電極側から6μm、2μ
m、2μm;実施例11:下部電極側から6μm、1.
5μm、1.5μm、1μm;実施例12:下部電極側
から6μm、1μm、1μm、1μm、1μmとなる。
そして、得られた多層膜を所定の温度で5時間、PbO
雰囲気中で焼成し、下部電極上に圧電体膜を形成した。
得られた圧電体膜の上部電極側表面の面分析をEDXに
より行い、Ti/Zr比率を確認した。また、下部電極
面から圧電体膜を剥離して、圧電体膜の下部電極側表面
の面分析をEDXにより行い、Ti/Zr比率を確認し
た。さらに、上部電極側から下部電極側へ向けてEPM
Aによりライン分析を行い、圧電体膜の厚み方向におけ
るTi/Zr比率の変化を確認した。最後に、圧電体膜
上に、上部電極としてAuをスパッタ法により成膜し、
圧電体素子を作成した。
【0057】得られた圧電体素子の評価は、30Vの電
界印加時における素子の振動幅を、Tencor段差計
を用いて測定することにより行った。また、I−V特性
を測定することにより、30Vの電界印加時における圧
電体素子のリーク特性についての評価を行った。ペース
ト組成および焼成温度と評価結果、ならびに、圧電体膜
の下部電極側および上部電極側における各Ti/Zr比
率ならびにTi/Zr比率の増減のタイプ(図3参照)
を表1にまとめて示す。なお、表1中において(後述す
る表2においても同じ)、「下部電極側Ti/Zr比
率」および「上部電極側Ti/Zr比率」の各欄に示し
た数値は、実測値を平均化し概括化したものである。ま
た、上記した実施例9で得られた圧電体素子のI−V特
性を、図5に実線Aで示す。
【0058】
【表1】
【0059】〔実施例15〕上記した実施例1と同様の
条件により、圧電体素子を作成した。このとき、下部電
極側からペースト5、ペースト4、ペースト3の順番で
塗布し、焼成後における各層の厚さが下部電極側からそ
れぞれ3μm、3μm、14μmとなり圧電体膜全体の
厚さが20μmとなるように、素子を作成した。得られ
た圧電体膜の上部電極側表面の面分析をEDXにより行
い、Ti/Zr比率を確認した。また、下部電極面から
圧電体膜を剥離して、圧電体膜の下部電極側表面の面分
析をEDXにより行い、Ti/Zr比率を確認した。さ
らに、上部電極側から下部電極側へ向けてEPMAによ
りライン分析を行い、圧電体膜の厚み方向におけるTi
/Zr比率の変化を確認した。
【0060】40Vの電界印加時における素子の振動幅
を測定し、またI−V特性を測定することにより、40
Vの電界印加時における圧電体素子のリーク特性につい
ての評価を行った。このときのペースト組成および焼成
温度と評価結果、ならびに、圧電体膜の下部電極側およ
び上部電極側における各Ti/Zr比率ならびにTi/
Zr比率の増減のタイプ(図3参照)を表1に示す。
【0061】〔実施例16〕上記した実施例1と同様の
条件により、圧電体素子を作成した。このとき、下部電
極側からペースト1、ペースト3、ペースト4の順番で
塗布し、焼成後における各層の厚さが下部電極側からそ
れぞれ2μm、6μm、2μmとなり圧電体膜全体の厚
さが10μmとなるように、素子を作成した。得られた
圧電体膜の上部電極側表面の面分析をEDXにより行
い、Ti/Zr比率を確認した。また、下部電極面から
圧電体膜を剥離して、圧電体膜の下部電極側表面の面分
析をEDXにより行い、Ti/Zr比率を確認した。さ
らに、上部電極側から下部電極側へ向けてEPMAによ
りライン分析を行い、圧電体膜の厚み方向におけるTi
/Zr比率の変化を確認した。
【0062】40Vの電界印加時における素子の振動幅
を測定し、またI−V特性を測定することにより、40
V電界印加時における圧電体素子のリーク特性について
の評価を行った。このときのペースト組成および焼成温
度と評価結果、ならびに、圧電体膜の下部電極側および
上部電極側における各Ti/Zr比率ならびにTi/Z
r比率の増減のタイプ(図3参照)を表1に示す。
【0063】〔実施例17〕上記した実施例1と同様の
条件により、圧電体素子を作成した。このとき、下部電
極側からペースト4、ペースト3、ペースト1の順番で
塗布し、焼成後における各層の厚さが下部電極側からそ
れぞれ2μm、6μm、2μmとなり圧電体膜全体の厚
さが10μmとなるように、素子を作成した。得られた
圧電体膜の上部電極側表面の面分析をEDXにより行
い、Ti/Zr比率を確認した。また、下部電極面から
圧電体膜を剥離して、圧電体膜の下部電極側表面の面分
析をEDXにより行い、Ti/Zr比率を確認した。さ
らに、上部電極側から下部電極側へ向けてEPMAによ
りライン分析を行い、圧電体膜の厚み方向におけるTi
/Zr比率の変化を確認した。
【0064】40Vの電界印加時における素子の振動幅
を測定し、またI−V特性を測定することにより、40
V電界印加時における圧電体素子のリーク特性について
の評価を行った。このときのペースト組成および焼成温
度と評価結果、ならびに、圧電体膜の下部電極側および
上部電極側における各Ti/Zr比率ならびにTi/Z
r比率の増減のタイプ(図3参照)を表1に示す。
【0065】〔比較例1〜3〕ペースト3のみ、ペース
ト8のみ、ペースト11のみをそれぞれ用い、上記した
実施例1と同様の方法により、図7に示したような構成
の圧電体素子を作成した。得られた圧電体素子の、30
V電界印加時における素子の振動幅を測定し、またI−
V特性を測定することにより、30V電界印加時におけ
る素子のリーク特性についての評価を行った。このとき
のペースト組成および焼成温度と評価結果とを表1に示
す。また、比較例3で得られた圧電体素子のI−V特性
を、図5に破線aで示す。
【0066】圧電体膜の、上部電極側のPZT薄膜の組
成がTi/Zr=48/52である実施例1〜6の各圧
電体素子は、30V電圧印加時における振幅幅が約0.
3μm程度であり、比較例1〜3に比べて大きくなり、
その素子構成の効果が認められる。一方、下部電極側の
PZT薄膜の組成がTi/Zr=48/52である実施
例9〜12の各圧電体素子は、振幅幅が約0.2μm程
度で比較例と同程度であるが、30V電圧印加時におけ
るリーク電流が比較例に比べて1/2程度まで小さくな
り、I−V特性が改善されていることが分かる。
【0067】〈圧電体塗布液の調製〉各構成元素の出発
原料として、酢酸鉛脱水物、酢酸ランタン、ペンタエト
キシニオブ、テトラ−i−プロポキシチタンおよびテト
ラ−n−ブトキシジルコニウムをそれぞれ用いた。
【0068】上記ペーストと同一組成となるように、そ
れぞれの出発原料を2−メトキシエタノールに添加し、
120℃の温度で6時間加熱処理した。これにより、褐
色の均質溶液を得た。得られた溶液中に、2−メトキシ
エタノールで希釈した0.1M塩酸を滴下した。水の添
加量は、使用するアルコキシドと等モル量にした。ま
た、溶液に、増粘剤としてヒドロキシプロピルセルロー
ス(HPC−L)の2−メトキシエタノール溶液を添加
した。PZT前駆体に対するヒドロキシプロピルセルロ
ースの添加量は、10%とした。そして、塗布液の酸化
物濃度が20重量%となるように調製した。
【0069】各塗布液の組成は、上記ペースト1〜13
と同一であり、それぞれ対応する組成のものを塗布液1
〜13とする。
【0070】〔実施例18〜27〕図1に示したような
構成のインクジェット式プリンタヘッド用の圧電体素子
を作成するために、振動板となる厚さ5μmのジルコニ
ア基板上に、下部電極としてTi膜を50nm、Pt膜
を0.5μmの厚みにそれぞれスパッタ法で形成した。
そして、下部電極上に、塗布液をスピンコート法(1,
200rpmの回転数で30秒間)により塗布して成膜
した後、塗布膜を120℃の温度で乾燥させ、400℃
の温度で仮焼成(昇温速度:20℃/分、15分間保
持)した。各塗布液を用い、これらの操作を、全体の膜
厚が5μmになるまでそれぞれ繰り返した後、得られた
多層膜を900℃の温度で焼成(昇温速度:10℃/
分、15分間保持)した。各組成の塗布液の成膜回数
は、それぞれ同一とした。得られた圧電体膜の上部電極
側表面の面分析をEDXにより行い、Ti/Zr比率を
確認した。また、下部電極面から圧電体膜を剥離して、
圧電体膜の下部電極側表面の面分析をEDXにより行
い、Ti/Zr比率を確認した。さらに、上部電極側か
ら下部電極側へ向けてEPMAによりライン分析を行
い、圧電体膜の厚み方向におけるTi/Zr比率の変化
を確認した。そして、得られた圧電体膜上に、フォトレ
ジストを用いてパターニングし、ケミカルエッチング処
理して、圧電体膜のサイズが200μm×3mmとなる
ようにパターン形成した。得られた圧電体膜上に、上部
電極としてAuをスパッタ法により成膜し、圧電体素子
を作成した。
【0071】得られた圧電体素子の評価は、15Vの電
界印加時における素子の振動幅を、Tencor段差計
を用いて測定することにより行った。また、I−V特性
を測定することにより、15Vの電界印加時における圧
電体素子のリーク特性についての評価を行った。塗布液
の組成と評価結果、ならびに、圧電体膜の下部電極側お
よび上部電極側における各Ti/Zr比率ならびにTi
/Zr比率の増減のタイプ(図3参照)を表2にまとめ
て示す。また、上記した実施例24で得られた圧電体素
子のI−V特性を、図6に実線Bで示す。
【0072】
【表2】
【0073】〔比較例4〜6〕塗布液3のみ、塗布液8
のみ、塗布液10のみをそれぞれ用い、上記した実施例
1と同様の方法により、膜厚が5μmになるまで成膜、
乾燥および仮焼成を繰り返した後、900℃の温度で焼
成して、図7に示したような構成の圧電体素子を作成し
た。得られた圧電体素子の、15V電界印加時における
素子の振動幅とI−V特性とを測定した。このときの塗
布液の組成と評価結果とを表2に示す。また、比較例4
で得られた圧電体素子のI−V特性を、図6に破線bで
示す。
【0074】〔実施例28〕上記した実施例18と同様
にして基板上に形成されたPt下部電極上に、Pb(D
PM)、テトラ-t-ブトキシジルコニウムおよびテトラ
-i-プロポキシチタニウムを出発原料として、MOCV
D法により、酸素分圧2.2torr、基板温度600
℃の条件で、PZTを成膜した。成膜の際、初期組成が
Ti/Zr=60/40となるように各原料の流量をそ
れぞれ調整した。そして、膜厚が2μmとなった時点で
Ti/Zr比率が48/52となるように、時間の経過
とともにTi原料およびZr原料の流量をそれぞれ変化
させた。その後、最終的に膜厚が5μmになるまで成膜
した。成膜後、900℃の温度でPZT膜を再焼成し、
圧電体膜を形成した。得られた圧電体膜の上部電極側表
面の面分析をEDXにより行い、Ti/Zr比率を確認
した。また、下部電極面から圧電体膜を剥離して、圧電
体膜の下部電極側表面の面分析をEDXにより行い、T
i/Zr比率を確認した。さらに、上部電極側から下部
電極側へ向けてEPMAによりライン分析を行い、圧電
体膜の厚み方向におけるTi/Zr比率の変化を確認し
た。そして、得られた圧電体膜上に、上部電極としてA
uをスパッタ法により成膜し、圧電体素子を作成した。
【0075】得られた圧電体素子の評価は、15Vの電
界印加時における素子の振動幅を、Tencor段差計
を用いて測定することにより行った。また、I−V特性
を測定することにより、15Vの電界印加時における圧
電体素子のリーク特性についての評価を行った。評価結
果と、圧電体膜の下部電極側および上部電極側における
各Ti/Zr比率およびTi/Zr比率の増減のタイプ
(図2参照)とを表2に示す。
【0076】〔実施例29〕上記実施例28と同様の方
法により、初期組成がTi/Zr=48/52となるよ
うに各原料の流量をそれぞれ調整し、膜厚が3μmとな
った時点でTi/Zr比率が40/60となるように、
時間の経過とともにTi原料およびZr原料の流量をそ
れぞれ変化させた。その後、最終的に膜厚が5μmにな
るまで成膜した。成膜後、900℃の温度でPZT膜を
再焼成し、圧電体膜を形成した。得られた圧電体膜の上
部電極側表面の面分析をEDXにより行い、Ti/Zr
比率を確認した。また、下部電極面から圧電体膜を剥離
して、圧電体膜の下部電極側表面の面分析をEDXによ
り行い、Ti/Zr比率を確認した。さらに、上部電極
側から下部電極側へ向けてEPMAによりライン分析を
行い、圧電体膜の厚み方向におけるTi/Zr比率の変
化を確認した。そして、上記実施例18と同様にして圧
電体膜上に上部電極を形成し、圧電体素子を作成した。
【0077】得られた圧電体素子の評価は、15Vの電
界印加時における素子の振動幅を、Tencor段差計
を用いて測定することにより行った。また、I−V特性
を測定することにより、15Vの電界印加時における圧
電体素子のリーク特性についての評価を行った。評価結
果と、圧電体膜の下部電極側および上部電極側における
各Ti/Zr比率およびTi/Zr比率の増減のタイプ
(図2参照)とを表2に示す。
【0078】以上の結果より、塗布液を用いて作成した
実施例18〜27の圧電体素子、ならびに、CVD法に
より作成した実施例28、29の圧電体素子について
も、ペーストを用いた上記圧電体素子と同様の効果があ
ることが確認された。
【0079】上記した実施例9および実施例24で得ら
れた圧電体素子を用いてインクジェット式プリンタヘッ
ドを作成したところ、双方とも、インクの吐出が確認さ
れた。また、同様にして、複数個のインクノズルを設け
たインクジェット式プリンタヘッドを作成したところ、
同様にインクの吐出が確認された。これにより、本発明
の圧電体素子がインクジェット式プリンタヘッドとして
有用であることが分かった。
【0080】
【発明の効果】請求項1に係る発明の圧電体素子を使用
すると、従来の素子に比べてより大きな変位が得られ、
またリーク特性が改善され、圧電体膜の圧電特性を向上
させることができる。
【0081】請求項2に係る発明の圧電体素子では、特
に変位の改善効果が大きい。
【0082】請求項3に係る発明の圧電体素子では、特
にリーク特性の改善効果が大きい。
【0083】請求項4に係る発明の圧電体素子では、確
実に有効な振動が得られ、駆動電圧もそれほど大きくす
る必要が無い。
【0084】請求項5に係る発明の圧電体素子では、よ
り確実に有効な振動が得られ、駆動電圧もそれほど大き
くする必要が無い。
【0085】請求項6に係る発明の圧電体素子では、各
層間で発生する応力が緩和させられるので、素子の劣化
が防止される。
【0086】請求項7に係る発明の圧電体素子では、各
層間で発生する応力がより緩和させられるので、素子の
劣化が防止される。
【0087】請求項8に係る発明の圧電体素子では、各
層間で発生する応力がより一層緩和させられるので、素
子の劣化が防止される。
【0088】請求項9ないし請求項15に係る各発明の
製造方法によると、上記した効果を奏する圧電体素子を
比較的簡易な製造工程により得ることができる。
【0089】請求項16に係る発明のインクジェット式
プリンタヘッドは、アクチュエータとして、上記特性を
有する圧電体素子を具備していることにより、高性能化
や耐久性の向上が図られることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態の1例を示し、圧電体素子
がアクチュエータに用いられたインクジェット式プリン
タヘッドの一部を拡大して模式的に示す縦断面図であ
る。
【図2】この発明でいう「圧電体膜におけるジルコニウ
ムに対するチタンの濃度比が上部電極側から下部電極側
に向かって漸次増加もしくは漸次減少する」ことの1つ
の形態を示す図である。
【図3】同じく、別の形態を示す図である。
【図4】同じく、さらに別の形態を示す図である。
【図5】この発明の実施例9で得られた圧電体素子およ
び比較例3で得られた圧電体素子のそれぞれのI−V特
性を示す図である。
【図6】この発明の実施例24で得られた圧電体素子お
よび比較例4で得られた圧電体素子のそれぞれのI−V
特性示す図である。
【図7】従来の圧電体素子がアクチュエータに用いられ
たインクジェット式プリンタヘッドの一部を拡大して模
式的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ヘッド基台 2 インク室 3 振動板 4 アクチュエータ 5 圧電体素子 6 下部電極 7 圧電体膜 7a、7b、7c 下層、中間層、上層のPZT薄膜 8 上部電極 9 電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01L 41/22 H01L 41/22 Z

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学式Pb(Zr1−xTi)O
    (0.3≦x≦0.9)で表される複合酸化物で形成
    されまたはその複合酸化物を主成分として形成された圧
    電体膜の両面側に、その圧電体膜を挟むように上部電極
    および下部電極が配設された圧電体素子であって、 前記圧電体膜におけるジルコニウムに対するチタンの濃
    度比が、前記上部電極側から前記下部電極側に向かって
    漸次増加もしくは漸次減少することを特徴とする圧電体
    素子。
  2. 【請求項2】 前記圧電体膜の、前記上部電極と接触す
    る面側が、化学式Pb(Zr1−xTi)O(0.
    45≦x≦0.50)で表される複合酸化物で形成され
    またはその複合酸化物を主成分として形成され、前記下
    部電極側に向かってジルコニウムに対するチタンの濃度
    比が漸次増加もしくは漸次減少する請求項1記載の圧電
    体素子。
  3. 【請求項3】 前記圧電体膜の、前記下部電極側と接触
    する面側が、化学式Pb(Zr1−xTi)O
    (0.45≦x≦0.50)で表される複合酸化物で
    形成されまたはその複合酸化物を主成分として形成さ
    れ、前記上部電極側に向かってジルコニウムに対するチ
    タンの濃度比が漸次増加もしくは漸次減少する請求項1
    記載の圧電体素子。
  4. 【請求項4】 前記圧電体膜の厚みが1μm〜25μm
    である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の圧電
    体素子。
  5. 【請求項5】 前記圧電体膜の厚みが2μm〜12μm
    である請求項4記載の圧電体素子。
  6. 【請求項6】 前記圧電体膜が、複数層の、ジルコニウ
    ムに対するチタンの濃度比が異なる複合酸化物薄膜で形
    成された請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の圧
    電体素子。
  7. 【請求項7】 前記圧電体膜が、3層以上の、ジルコニ
    ウムに対するチタンの濃度比が異なる複合酸化物薄膜で
    形成された請求項6記載の圧電体素子。
  8. 【請求項8】 前記圧電体膜が、4層以上の、ジルコニ
    ウムに対するチタンの濃度比が異なる複合酸化物薄膜で
    形成された請求項7記載の圧電体素子。
  9. 【請求項9】 基板上に下部電極を形成する工程と、 前記下部電極上に、化学式Pb(Zr1−xTi)O
    (0.3≦x≦0.9)で表される複合酸化物からな
    りまたはその複合酸化物を主成分とする圧電体膜を形成
    する工程と、 前記圧電体膜上に上部電極を形成する工程と、を含む圧
    電体素子の製造方法であって、 それぞれ前記複合酸化物および/またはその前駆体を含
    みジルコニウムに対するチタンの濃度比が異なる複数種
    の組成物を使用し、それらの組成物を、ジルコニウムに
    対するチタンの濃度比が漸次増加もしくは漸次減少する
    順に前記下部電極上に積層して、前記圧電体膜を形成す
    ることを特徴とする圧電体素子の製造方法。
  10. 【請求項10】 ジルコニウムに対するチタンの濃度比
    が異なる3種以上の組成物が使用される請求項9記載の
    圧電体素子の製造方法。
  11. 【請求項11】 ジルコニウムに対するチタンの濃度比
    が異なる4種以上の組成物が使用される請求項10記載
    の圧電体素子の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記組成物がペーストである請求項9
    ないし請求項11のいずれかに記載の圧電体素子の製造
    方法。
  13. 【請求項13】 前記組成物が塗布液である請求項9な
    いし請求項11のいずれかに記載の圧電体素子の製造方
    法。
  14. 【請求項14】 前記塗布液が、金属アルコキシドおよ
    び/または金属塩を出発原料として調製される請求項1
    3記載の圧電体素子の製造方法。
  15. 【請求項15】 基板上に下部電極を形成する工程と、 前記下部電極上に、化学式Pb(Zr1−xTi)O
    (0.3≦x≦0.9)で表される複合酸化物からな
    りまたはその複合酸化物を主成分とする圧電体膜を形成
    する工程と、 前記圧電体膜上に上部電極を形成する工程と、 を含む圧電体素子の製造方法であって、 前記圧電体膜におけるジルコニウムに対するチタンの濃
    度比が、前記上部電極側から前記下部電極側に向かって
    漸次増加もしくは漸次減少するように、真空法により前
    記下部電極上に圧電体膜を形成することを特徴とする圧
    電体素子の製造方法。
  16. 【請求項16】 1個もしくは2個以上のインクノズル
    を有し、そのインクノズルに連通したインク室の容積を
    アクチュエータによって変化させ、前記インクノズルを
    通ってインクを噴射させるようにしたインクジェット式
    プリンタヘッドであって、 前記アクチュエータに、請求項1ないし請求項8のいず
    れかに記載の圧電体素子を用いたことを特徴とするイン
    クジェット式プリンタヘッド。
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