JP2001187800A - ビスフェノールaハプテン化合物、ハイブリドーマ、有機溶媒耐性を有する抗ビスフェノールa抗体及びそれらを用いたビスフェノールaの測定方法 - Google Patents

ビスフェノールaハプテン化合物、ハイブリドーマ、有機溶媒耐性を有する抗ビスフェノールa抗体及びそれらを用いたビスフェノールaの測定方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】ビスフェノールAを高感度に測定するために、
交差反応性が低くかつ有機溶媒に対して耐性を有する抗
体とその抗体を産生するハイブリドーマ、及びその製造
法、並びにビスフェノールAと高感度かつ特異的に反応
する抗体を得るためのビスフェノールA誘導体とその製
造法を提供する。 【解決手段】40%濃度以下の有機溶媒を含む水溶液中
において50%以上の抗原結合能を保持することが可能
なビスフェノールAに特異的に反応するモノクローナル
抗体、該モノクローナル抗体を産生するハイブリドー
マ、該モノクローナル抗体を用いるビスフェノールAの
測定方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビスフェノールA
のハプテン化合物、ハイブリドーマ、ビスフェノールA
を特異的に認識するモノクローナル抗体及びそれらを用
いたビスフェノールAの免疫学的測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ビスフェノールAは耐熱性食器やほ乳ビ
ンに使われているポリカーボネート樹脂の原料や安定化
剤、酸化防止剤として使用され、また缶詰の内側のコー
ティングに使用されるエポキシ樹脂や歯科治療に使用さ
れているコンポジットレジンやシーラントの原料として
も使用されている。ビスフェノールAは年間約30万ト
ン程度生産されているが、発ガン性等の毒性が低いこと
からこれまではあまり問題とされていなかった。しかし
ながら、近年ある種の化合物が人や野生動物の内分泌機
能を撹乱する作用を持つという、いわゆる「内分泌撹乱
物質」がグローバルな環境問題としてクローズアップさ
れ、ビスフェノールAもエストロジェン活性を有する内
分泌撹乱物質の一つである疑いがあることが判明したこ
とから、大きな注目を集めるようになった。特に、乳が
ん細胞を用いた実験では数ppb程度のごく微量な量で
エストロジェンと同様な作用を発揮することが確認され
ており、マウスに対するビスフェノールA投与実験で
も、精子運動性低下等といった生殖機能異常が報告され
ている。また、環境庁が実施した化学物質の環境中の安
全性調査においても、ビスフェノールAが大都市周辺の
河川や港湾の水質や底質等から検出されたことから、ビ
スフェノールAによる汚染が広範囲に広がっていること
が明らかとなり、環境中の暴露量を把握することが急務
となっている。
【0003】ビスフェノールA等の内分泌撹乱物質の測
定は高い精度の分析値が求められ、抽出、濃縮、精製と
いった各種のクロマトグラフィーや高価な質量分析装置
等の機器を用いる公定分析法に従って行われている。こ
れらの分析法は高感度で、構造の類似する複数の化合物
を一度に同定、定量できる多成分分析が可能であるが、
環境試料からの目的物質の抽出、分離、精製が煩雑で、
化合物によっては誘導体化が必要といった問題があり、
従って高価な機器に対する多大な設備投資や、分析技術
者の習熟、その他分析に時間がかかるといった問題を抱
えているのが現状である。このため精度が高くかつ簡便
な測定方法の開発が望まれており、このような問題を解
決すべく、抗体を用いた免疫測定法による環境汚染物質
の検出技術が注目されつつある。
【0004】この免疫測定法は1980年代に米国にお
いて地下水や河川水の除草剤の分析に適用され、近年、
カナダ、ヨーロッパ並びに我が国においても免疫測定法
を用いた環境汚染物質の開発が行われている。免疫測定
法とは、抗体が抗原を特異的に認識する能力を用いて微
量の抗原を検出する方法であり、抗体の抗原に対する高
い親和性と高い特異性により抗原を高感度に測定するこ
とができる。また測定方法が簡易で迅速に結果が得られ
る、多検体、多成分の同時測定が可能である、測定目的
に適した検出感度、測定レンジを有する、測定試料の精
製が不要である、測定に要するコストが低いといった種
々のメリットを持ち、医学、生化学、薬学、農学など広
い分野で利用されている。免疫測定法において測定対象
物質を検出するには、抗体または抗原を標識する必要が
あるが、その標識方法としては酵素を用いる方法、放射
性物質を用いる方法、蛍光物質を用いる方法、金属原子
を用いる方法などが挙げられる。中でも、酵素を用いた
酵素免疫測定法(EIA)は臨床検査や生化学分野での
生体試料中の目的成分の定量に応用されている。EIA
法は、抗原抗体反応の形式により、競合法と非競合法に
大別できる。非競合法は複数の抗原結合部位を持つ多価
抗原に適用でき、蛋白質など高分子の抗原や抗体の測定
が可能であるが、ビスフェノールAのような低分子化合
物は競合法によって測定する。
【0005】EIA法においては、抗原に対していかに
特異性が高く、かつ親和性の高い抗体が得られるか重要
であるが、ビスフェノールAは低分子化合物であるた
め、通常それ自体では抗体産生を誘導する能力を持たな
い。そこで、抗体産生誘導能のある高分子化合物と結合
させることにより、ビスフェノールAと特異的に反応す
る抗体産生を誘導することが可能となる。このような低
分子化合物の物質をハプテンと呼び、ハプテン分子に対
し特異的な抗体を産生させるためには、BSA(牛血清
アルブミン)、OVA(卵製アルブミン)、KLH(ス
ガシガイヘモシアニン)といった免疫原性を有する高分
子化合物にビスフェノールA分子を導入することが必要
となる。
【0006】抗ハプテン抗体の性能はハプテン抗原の作
製方法に大きく影響され、ハプテン分子の設計が抗体の
特異性と親和性を決定する。ビスフェノールAに対する
抗体を得るためにも、このようなハプテン設計は重要な
要因であるが、これまでに作製されたハプテン抗原によ
って得られた抗体とビスフェノールA以外の関連物質と
の交差反応性が高いという問題点があった。また環境試
料を測定する際には、測定感度を上げるために有機溶媒
を用いた固相抽出を行う場合があるが、固相抽出を行っ
た場合、抽出後の試料には有機溶媒が混入してしまうた
め、有機溶媒に耐性を有する抗体が望まれていた。しか
しながら、これまでに得られたモノクローナル抗体は有
機溶媒に対する耐性が低く、試料中に有機溶媒が混入す
ると著しく抗原結合活性が低下する場合が多かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ビス
フェノールAを高感度に測定するために、交差反応性が
低くかつ有機溶媒に対して耐性を有する抗体とその抗体
を産生するハイブリドーマ、及びその製造法を提供する
ことを目的とする。さらに本発明は、ビスフェノールA
と高感度かつ特異的に反応する抗体を得るためのビスフ
ェノールA誘導体とその製造法を提供することを目的
し、当該化合物はビスフェノールAと特異的に反応する
ための抗体を産生するハイブリドーマを作製する際の免
疫原及びビスフェノールAを競合的に測定する際の標識
抗原となる。
【0008】
【発明を解決するための手段】本発明者らは、上記事情
に鑑み、ビスフェノールAを高感度で測定でき、かつ有
機溶媒に耐性を有する抗体を開発すべく鋭意検討した結
果、ビスフェノールAに特定の長さを有するスペーサー
化合物を導入したハプテン抗原で免疫を行うことによ
り、前記化合物に高感度かつ特異的に反応する抗体が得
られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】すなわち、本発明は以下のような構成から
なる。 (1)40%濃度以下の有機溶媒を含む水溶液中におい
て50%以上の抗原結合能を保持することが可能なビス
フェノールAに特異的に反応するモノクローナル抗体。 (2)受託番号が、FERM BP−7146、FER
M BP−7147、及びFERM BP−7148よ
りなる群から選ばれたいずれかであるハイブリドーマに
より産生される(1)記載のモノクローナル抗体。 (3)受託番号が、FERM BP−7146、FER
M BP−7147、及びFERM BP−7148よ
りなる群から選ばれたいずれかであるハイブリドーマで
あり、(1)記載のモノクローナル抗体を産生すること
を特徴とするハイブリドーマ。 (4)以下の式(I) で表される構造(式中、nは1〜
10の整数を示す)で表される構造を有することを特徴
とするハプテン化合物。
【化2】 (5)(4)記載のハプテン化合物に高分子化合物をキ
ャリアー化合物として結合させることにより得られるこ
とを特徴とする免疫抗原。 (6)高分子化合物が蛋白質である(5)記載の免疫抗
原。 (7)(4)記載のハプテン化合物に標識物質を結合さ
せることにより得られることを特徴とする標識抗原。 (8)標識物質が酵素である(7)記載の標識抗原。 (9)(4)記載のハプテン化合物のカルボキシル基末
端を活性化し、高分子化合物と結合させることを特徴と
する免疫抗原及び標識抗原の製造方法。 (10)(5)または(6)に記載の免疫抗原を動物に
免疫することにより得られる(1)記載のモノクローナ
ル抗体の製造方法。 (11)(1)記載のモノクローナル抗体と請求項7記
載の標識抗原を用いることを特徴とするビスフェノール
Aの測定方法。 (12)測定対象物をメタノールを溶媒に用いた固相抽
出法にて予め濃縮を行う (11)記載のビスフェノールAの測定方法。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のモノクローナル抗体は、
ビスフェノールAの末端に特定の長さを有するスペーサ
ー化合物を導入したハプテン化合物に高分子化合物を結
合せしめ、本複合体を免疫原としてマウス等に免疫した
後、免疫したマウスの脾臓細胞とミエローマ細胞を融合
させハイブリドーマ細胞を調製し、該ハイブリドーマ細
胞から免疫原と結合する抗体を産生する細胞を単離し、
さらに該ハイブリドーマが生産するモノクローナル抗体
を精製することにより得ることができるものである。
【0011】本発明のハプテン化合物は、以下の式(I)
により表される化合物であり、ビスフェノールAの末端
の水酸基にカルボキシル基を有するスぺーサーを結合さ
せることにより得られる。式(I)中、nは1〜10の整
数を示す。更に該ハプテン化合物のカルボキシル基をイ
ミドエステル化等で活性化し、高分子化合物と結合させ
ることにより、免疫用抗原及びビスフェノールAを競合
的に測定する際の標識抗原とすることができる。
【0012】
【化3】
【0013】以下に、本発明のハプテン化合物、ハイブ
リドーマ、モノクローナル抗体の作製、及びビスフェノ
ールAの免疫化学的測定法について説明する。
【0014】ビスフェノールAハプテン化合物の作製 本発明の式(I)で示されるハプテン化合物は公知の方
法により作製することができる。例えば、ビスフェノー
ルAの片側の水酸基とスぺーサーとなるハロゲン化アル
キルエステルとを有機溶媒中にて反応させ、エステル部
分をアルカリ等の塩基によって加水分解することにより
得ることができる。該スぺーサーの長さは特に限定され
るものではないが、該ハプテン化合物にキャリアーとな
る高分子化合物を結合させ免疫原とする場合、抗体はキ
ャリアーとの結合部位より離れた部分を認識する場合が
多く、ある程度の長さを有することが望ましい。しか
し、長すぎる場合スぺーサー部分を認識する抗体が得ら
れる場合もあることから、スぺーサー長としては炭素数
で1〜10、好ましくは3〜6、さらに好ましい炭素数
は5である。例えば、スぺーサーとしては3−ブロモプ
ロピオン酸メチル、3−ブロモプロピオン酸エチル、γ
−ブロモ酪酸エチル、5−ブロモ吉草酸エチル、6−ブ
ロモヘキサン酸エチルなどのハロゲン化アルキルエステ
ルが挙げられるが、特に好ましいスぺーサー化合物は、
炭素数5の6−ブロモヘキサン酸エチルである。
【0015】反応時のビスフェノールAとハロゲン化ア
ルキルのモル比は1:1〜1:0.5が好ましく、特に
等モルで反応させるのが好ましい。反応に使用する溶媒
としては、DMSO、DME、DMF、THF、ヘキサ
ン、酢酸エチル、ジクロロメタン等の有機溶媒が挙げら
れるが、特に限定されるものではない。また、塩基とし
てはナトリウムアミド、炭酸カリウム、トリエチルアミ
ン、水酸化ナトリウム、酸化バリウム、酸化銀、水素化
ナトリウム等を用いることができる。反応温度は0〜9
0℃、好ましくは室温ないしは90℃、更に好ましくは
80〜85℃で、反応時間は0.5〜6時間、好ましく
は1〜3時間の間で攪拌しながら行うことが望ましい。
得られた化合物は、必要に応じてシリカゲルカラムクロ
マトグラフィーや再結晶等の精製操作によって高純度化
し、ハプテン化合物とすることができる。
【0016】免疫用抗原の作製 上述のハプテン化合物はそれ自身免疫原性を持たないた
め、単独で免疫しても目的とする抗体が得られない場合
が多い。そこで免疫原性を有する高分子化合物をキャリ
アー化合物として結合させ複合体とすることにより免疫
原とすることができる。
【0017】該キャリアー化合物として用いられる高分
子化合物は、1万以上の分子量であることが望ましく、
例えばヘモシアニン、卵白アルブミン、牛血清アルブミ
ン、ウサギ血清アルブミン等の蛋白質、MAPレジン、
ポリアミド、ポリアクロレイン等の合成高分子、デキス
トラン、アガロース等の多糖、不活化した細菌等が挙げ
られる。なかでも、スガシガイヘモシアニン及び牛血清
アルブミンが、操作性、免疫原性の点で好ましい。
【0018】ハプテン化合物とキャリアー化合物との結
合は、ハプテン化合物のカルボキシル基と高分子担体上
の反応性官能基とを反応させればよく、方法は特に限定
されないが、公知の方法として混合酸無水物法や活性エ
ステル法等が挙げられる。混合酸無水物法は、ハプテン
化合物のカルボキシル基をクロル炭酸ブチル、クロロ炭
酸エチル等のクロロアルキルホルメートと反応させ、活
性のある混合酸無水物に誘導した後、高分子担体上のア
ミノ基中に反応させアミド結合を生成する方法である。
これに対し活性エステル法は、ハプテン化合物のカルボ
キシル基をカルボジイミド型縮合剤を使用して、活性エ
ステル型に変換してから高分子担体のアミノ基に反応さ
せる方法である。いずれの方法でもハプテン化合物を結
合させることができるが、混合酸無水物法の場合、ビス
フェノールAの水酸基とも反応する場合があり、水酸基
を保護しておく必要があるのに対し、活性エステル法は
水酸基と反応せず、また得られたイミドエステルの安定
性も高く、乾燥した状態で長期間、冷凍庫中で保存する
ことができることから特に好ましい。
【0019】活性エステル法はハプテン化合物と活性エ
ステル類で最も水溶性の高いN−ヒドロキシスクシンイ
ミドとを有機溶媒中でジシクロヘキシルカルボジイミド
や水溶性カルボジイミド等のカップリング剤の存在下に
て反応させ、カルボキシル基をイミドエステル化するこ
とにより行う。反応時のハプテン化合物とN−ヒドロキ
シスクシンイミドのモル比は1:1〜1:5の範囲が好
ましく、特に好ましくは1:1である。反応温度は0〜
40℃、好ましくは10〜20℃である。反応時間は2
〜10時間、好ましくは5時間である。また反応時の有
機溶媒としてはDMSO、DME、DMF、THF、ヘ
キサン、酢酸エチル等の有機溶媒が挙げられるが、特に
限定されるものではない。得られたイミドエステル化ハ
プテン化合物は、必要に応じてシリカゲルカラムクロマ
トグラフィーや再結晶等の精製操作によって高純度化す
る。
【0020】得られたイミドエステル化ハプテン化合物
とキャリアーとの結合は、通常含水有機溶媒中で行う。
まずイミドエステル化ハプテンをメタノール、DMSO
有機溶媒に溶解する。同様に牛血清アルブミン、スガシ
ガイヘモシアニン等の担体をリン酸緩衝液、生理食塩水
等のアミノ基を含有しない緩衝液に溶解し、イミドエス
テル化ハプテン溶液中に緩衝液に溶解した担体溶液を徐
々に添加し、反応を行う。反応溶液中の有機溶媒濃度は
5〜80%、好ましくは20〜50%である。緩衝液は
アミノ基を含まないものであれば特に限定されず、緩衝
液濃度は、10〜500mmol、好ましくは50〜100
mmol、また緩衝液のpHは5〜10の間であればよく、
好ましくは6〜8の間である。イミドエステル化ハプテ
ンとキャリアーのモル比は200:1〜10:1の範囲
が好ましく、特に好ましくは100:1〜50:1の間
である。反応温度は0〜50℃の間で行うことが好まし
く、特に好ましくは20〜30℃である。反応時間は1
〜24時間の間で行えばよく、好ましくは5〜15時間
の間である。このようにして得られた免疫用抗原は、必
要に応じてゲルろ過、透析等により緩衝液に置換し精製
する。
【0021】ハイブリドーマ及びモノクローナル抗体の
作製 上記の方法により得られた免疫原を用い、公知の方法に
よりモノクローナル抗体を作製することができる。以下
に例を示すが、方法は特に限定されるものではない。
【0022】本発明で使用されるような可溶性物質を抗
原として免疫する際は、通常アジュバンドとともにエマ
ルジョン状態にする。アジュバンドとしてはフロインド
・アジュバンド、ミョウバン及び百日咳死菌体が用いら
れる。
【0023】免疫する動物としては、通常BALB/cマウス
を用いるが、F1マウスやハムスター等を用いても良
い。1匹のマウスに免疫する抗原量としては、30〜5
0μg/回でよく、生理食塩水で100〜500μg/
mlになるように調製した免疫用抗原と完全フロインド
アジュバンドを2本の注射器等を用いて等量ずつ混合し
てエマルジョンを作製し、0.1〜0.2ml/匹ずつ
注射する。エマルジョンの投与は注射する部位によっ
て、(1)腹腔内注射(ip)、(2)皮下注射(sc)、静脈内
注射(iv)、筋肉内注射(im)などがあるが、腹腔内注
射及び皮下注射が望ましい。1〜2週間おきに数回免疫
する。免疫したマウスは数日後採血し、十分に抗体価が
上昇した3〜4日前には、同量の抗原を静脈内または腹
腔内に注射する。
【0024】細胞融合に用いられるミエローマ細胞に
は、マウス、ラット由来のものがあるが、多くの場合Ba
lb/cマウス由来のNS−1、P3U1、SP2、X6
3.6.5.3の骨髄腫細胞が用いられる。
【0025】細胞の融合法としてはHVJウイルスや電
気パルスを利用する方法があるが、現在では細胞毒性も
比較的少なく、融合操作の簡便なポリエチレングリコー
ル(PEG)法が用いられている。一般によく用いられる
PEGの平均分子量は1000〜6000で、30〜5
0%(v/v)濃度で使用する。
【0026】摘出した脾臓より回収した脾細胞は、無血
清培地でよく洗浄した後、対数増殖期にあるミエローマ
細胞と混合し、細胞融合を行う。ミエローマ細胞と脾細
胞の混合比は1:10〜1:1の範囲であればよく、混
合した脾細胞とミエローマ細胞を遠心してペレットに
し、PEG溶液を加え、攪拌と振とうによって融合させ
る。融合後、遠心洗浄してHAT添加増殖培地に移し、
96穴培養プレートにて培養する。HAT培地はサルベ
ージ回路をもたないミエローマ細胞は生存できず、脾細
胞と融合したハイブリドーマのみが生育する。融合して
数日後よりコロニーが形成し始めるため、コロニーの増
殖が認められたウエルの培養上清を採取し、抗原である
ビスフェノールAとの反応性をELISA法により確認
し、目的の抗体産生の有無でスクリーニングを行う。ス
クリーニングは、50%有機溶媒(例えば、メタノー
ル)中で抗原抗体反応を行い、抗原結合活性を有するク
ローンを取得し、さらに該有機溶媒中での反応性評価を
行いクローンの選抜を行う。この際、キャリアー担体由
来の抗体を排除するため、スクリーニング用抗原は免疫
用抗原として使用したハプテン複合体とは別の担体で複
合体を作製し、スクリーニング用抗原とする。例えば免
疫用抗原を牛血清アルブミンで作製した場合、スクリー
ニング用抗原は卵白アルブミンやスガシガイヘモシアニ
ンで作製する。スクリーニング後、抗体産生が確認され
たウエルを選び、限界希釈法にてクローニングを行い、
単一の抗体産生ハイブリドーマを得る。
【0027】本発明のハイブリドーマは、有機溶媒耐性
を有しかつビスフェノールAを特異的に認識するモノク
ローナル抗体を産生するハイブリドーマであれば特に限
定されないが、例えば、工業技術院生命工学研究所に寄
託された、受託番号FERMBP−7146(識別表示
BPA3B9)、FERM BP−7147(識別表示
BPA17B4)、FERM BP−7148(識別表
示 BPA10E5)などのハイブリドーマが挙げられ
る。
【0028】樹立したクローンからモノクローナル抗体
を調製するには、ハイブリドーマ細胞をプレートやフラ
スコで培養し、その培養上清を取得することにより得ら
れるが、炭酸ガス培養器に収納できる簡易フォローファ
イバー型培養装置でも培養することができる。更にハイ
ブリドーマ細胞をプリスタン前投与マウスの腹腔内に移
植し増殖させ、移植後10〜14日で腹腔に溜まった腹
水を回収することによっても得ることができる。
【0029】このようにして得られた培養液及び腹水
は、イオン交換クロマトグラフィーや疎水クロマトグラ
フィー、またプロテインAもしくはプロテインGを固定
化したアフィニティークロマトグラフィーにより必要に
応じて精製し、モノクローナル標品とすることができ
る。こうして得られたモノクローナル抗体は、40%濃
度の有機溶媒を含む水溶液中において80%以上の抗原
結合能を保持するものであり、実施例に記載された方法
により性能評価を実施した。ここで、有機溶媒とは、メ
タノール、エタノール、アセトン、DMF、DMSO、
アセトニトリルなどを指すものであるが、特に限定はさ
れない。
【0030】抗ビスフェノールAモノクローナル抗体を
用いたビスフェノールA測定法 本発明によって得られた抗ビスフェノールA抗体を用い
て、ビスフェノールAの測定を行うことができる。免疫
測定法には競合型測定法、非競合型測定法、均質法等が
あるが、ビスフェノールAは低分子化合物であるため、
競合法により行う。競合法には主にマイクロプレートの
ウエル、チューブ、磁性粒子等に抗原を固定化する間接
競合法と、ウエルやチューブに抗体を固定化する直接競
合法がある。
【0031】間接競合法では、ウエルに固定化する抗原
として免疫原に用いた抗原もしくは他の担体とハプテン
化合物の複合体を用いる。まずハプテン複合体をマイク
ロプレート等のウエルに固相化する。次いでウエルに抗
原が結合していない部分を牛血清アルブミン、カゼイン
等の市販のブロッキング剤でブロックする。このウエル
に検体と一次抗体である抗ビスフェノールA抗体を加え
て、検体と固相化抗原を抗体に対して競合反応させる。
固相化抗原と結合しなかった抗体を洗浄除去後、同ウエ
ルに二次抗体としてヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体を
ペルオキシダーゼ(PEO)やアルカリフォスファター
ゼ(ALP)等の酵素で標識した酵素標識抗体を加え
て、固相化抗原と結合した一次抗体と結合させる。緩衝
液で数回洗浄した後、酵素基質を加えて発色した酵素反
応生成物の吸光度を測定する。
【0032】酵素にペルオキシダーゼを用いる場合は、
基質に過酸化水素、発色剤にo−フェニレンジアミンや
テトラメチルベンジジンを使用する。アルカリフォスフ
ァターゼでは基質にp−ニトロフェニルリン酸が一般的
に用いられる。また基質の反応生成物が蛍光であった
り、酵素標識抗原に酵素の代わりに、蛍光物質を標識し
て用いる場合には蛍光測定器で測定する。これに化学発
光物質を用いると化学発光測定器での測定が可能とな
り、より感度のよい測定法となる。
【0033】直接競合法は、ウエルに抗体を固相化して
ブロッキングした後、別途調製したハプテン化合物と酵
素を結合した酵素標識抗原と検体を加え、固相抗体と検
体及び酵素標識抗体とを競合反応させる。抗体と結合し
なかった標識抗原を洗浄除去し、酵素基質を加えて反応
生成物の吸光度を測定する。この方法でも標識物質を変
えることにより、より感度の高い測定法を構築すること
ができる。
【0034】競合測定法に使用する酵素標識抗原は、免
疫抗原と同様の方法で作製することができる。すなわち
免疫抗原作製時に用いた牛血清アルブミン等のキャリア
ー担体の代わりに、ペルオキダーゼやアルカリフォスフ
ァターゼ等の酵素を使用することにより標識抗原を得る
ことができる。また上述のように、ローダミン等の蛍光
物質や化学発光物質で標識体を作製することもできる。
【0035】競合測定法の場合、得られた標識抗原が検
体よりも抗体と強い親和性を有する場合、検体と標識抗
原との競合反応が起こりにくくなる。その結果測定感度
が低くなる場合があり、標識抗原の作製方法によって測
定感度は左右される。一般に標識抗原の親和力が小さい
ほど感度としては高くなる傾向があり、標識酵素に導入
されるハプテン化合物数の量に応じて親和性は変化す
る。このため、標識抗原作製時の標識用酵素とハプテン
化合物の反応モル比は1:1〜1:50で行うことが好
ましく、更に好ましくは1:10〜1:20である。
【0036】上述の測定方法において、検体を添加しな
い反応溶液の吸光度に対し、検体を添加した反応溶液の
吸光度の減少を阻害率として測定する。その際、既知濃
度のビスフェノールA標準溶液より検量線を作成し、得
られた検量線からビスフェノールA濃度を算出すること
ができる。なお、この測定を行う前に、測定対象物を予
めメタノールを溶媒として用いた固相抽出法により濃縮
を行っておくことも好ましい。
【0037】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】実施例1 ビスフェノールAハプテン化合
物の合成 ビスフェノールA (1) 51g(224mmol)と、5−
ブロモヘキサン酸エチルエステル 50g(224mmol)
をジメチルホルムアミド500mlに溶解し、炭酸カリ
ウム46g(336mmol)を加えて80〜85℃で2時間
反応させた。反応液は水にクエンチ後、酢酸エチルで抽
出し、水で洗浄を行った後、シリカゲルカラム(酢酸エ
チル:ヘキサン=1:6)で精製し、ビスフェノールモ
ノヘキサン酸エチルエステル (2)を 37g(収率44.
7%)得た。次いで、得られたビスフェノールモノヘキ
サン酸エチルエステル(2) 37gを70%エタノール水
溶液220mlに溶解し、85%水酸化カリウム溶液を
13.2g(200mmol)加えた後、75〜80℃で1時
間攪拌した。反応混合物を水にクエンチした後、6規定
の塩酸でpHを1に調整し、酢酸エチルで抽出し、温水
で洗浄後、クロロホルムで再結晶を行い、ビスフェノー
ルAハプテン(3)を26.1g(収率76.3%)得た。
以下に反応スキームを示す。
【0039】
【化4】
【0040】実施例2 免疫用抗原の作製 実施例1により作製したビスフェノールAハプテン化合
物を用い、活性エステル法により免疫用抗原を作製し
た。以下に反応スキームを示す。まず、実施例1で得ら
れたハプテン化合物(3)30.8g(90mmol)をジメチ
ルホルムアミド300mlに溶解し、N−ヒドロキシス
クシンイミド10.4g(90mmol)とジシクロヘキシル
カルボジイミド18.6g(90mmol)を加えて、室温で
5時間攪拌した。反応混合物を氷水にクエンチ後、酢酸
エチルで抽出を行い、温水で洗浄後、シリカゲルカラム
(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)で精製し、イミドエス
テル化ビスフェノールAハプテン(4)を10.0g(収率
24.7%)得た。
【0041】
【化5】
【0042】得られたイミドエステル化ハプテンとキャ
リアー担体である牛血清アルブミンとの結合は以下の方
法により実施した。まず牛血清アルブミン0.2g
(3.02μmol)を100mmolのホウ酸緩衝液(pH8.
0) 10mlに溶解した後、5mlの無水DMFを添加
しキャリアー蛋白質溶液とした。次いで本溶液中に5m
lのDMFに溶解したイミドエステル化ビスフェノール
A 68mg(0.154mmol)を徐々に添加し、25℃
で18時間攪拌し反応を行った。反応終了後、モノエタ
ノールアミン2.5mlを添加し、25℃で2時間攪拌
を行い残存する活性エステルをブロックした後、PBS
に対して透析を行い、ビスフェノールA−BSA複合体
を得た。ビスフェノールA−BSA複合体に導入された
ハプテン数は、TNBS法によりアミノ基の定量を行う
ことにより算出したところ40個であった。
【0043】実施例3 動物への免疫 実施例2で作製した免疫用抗原2mgを1mlのPBS
に溶解し、等量の完全アジュバントと混和し1mg/m
l濃度のエマルジョン溶液を作製した。このエマルジョ
ン溶液を6匹のBalb/cマウスに一匹に対し総量0.1m
lになるよう各々2箇所に腹腔内投与した。同様の操作
で2週間おきに3回追加免疫を行った。各回の免疫一週
間後に採血を行い、血液を室温1時間放置後、血餅を分
離し抗血清を得た。
【0044】実施例4 抗体価の測定 実施例2に記載した免疫用抗原の作製法と同様に牛血清
アルブミンの代わりに、卵白アルブミンを用いて抗体価
測定用の抗原を作製した。この抗原を0.1mg/ml
になるようにPBSに溶解し96ウエルマイクロプレー
トに100μl/ウエルになるよう分注し、37℃、2
時間インキュベートし固相化を行った。抗原溶液を除去
後、0.05% Tween20を含むPBSにて3回洗浄し、
5倍希釈のブロッキング溶液(ナカライテスク製)を30
0μlずつ分注し、4℃で一晩静置してブロッキングを
行い、抗体価測定用プレートを作製した。
【0045】このプレートにPBSで4倍希釈系列で希
釈した抗血清を50μl/ウエル添加し、37℃、2時
間反応させた。同プレートを、Tween20を0.05%含
むPBSで3回洗浄した後、PBSで4000倍希釈し
たPEO標識抗マウスIgGウサギ抗体(ZYMED社製)を
50μl/ウエル添加し、37℃、1時間反応させた。
更にTween20を0.05%含むPBSで3回洗浄後、TMB
Microwell Peroxidase Substrate(KPL社製)を50μ
l/ウエル添加し、遮光下、37℃で反応させた。20
分後、0.5mol/Lの硫酸を100μl/ウエル添加
して発色を停止し、450nmの吸光度を測定し抗体価
を求めた。
【0046】実施例5 ハイブリドーマ及び抗ビスフェ
ノールAモノクローナル抗体の作製 抗体価が最も高かったマウスについて最終免疫として1
mg/ml濃度の免疫用抗原100μlを腹腔内投与し
た。最終免疫の3日後、常法に従って無菌的に脾臓を摘
出し、脾細胞を分散させて、RPMI1640培地にて
3回洗浄し、脾細胞浮遊液を調製した。細胞数をカウン
トし、予め培養していたSp/2ミエローマ細胞と脾細
胞が1:10の割合になるよう混合し、遠心後、上清を
除去した。上清除去後、PEG溶液を0.5ml加え、
細胞を攪拌し、更に2〜3分かけて徐々に25mlのR
PMI1640培地を加え細胞融合を行った。次に遠心
により上清を除去し、HAT培地を加えた後、細胞を浮
遊させ、96穴培養プレートに撒種し37℃の炭酸ガス
培養器内で培養を行った。
【0047】培養開始後1週間目より、細胞の増殖の見
られたウエルの培養上清を用いてスクリーニングを行っ
た。スクリーニングは、卵白アルブミンを用いて作製し
た抗体価測定用の抗原を、0.1mg/mlになるようにP
BSに溶解し96ウエルマイクロプレートに100μl
/ウエルになるよう分注し、37℃、2時間インキュベ
ートし固相化を行った。抗原溶液を除去後、0.05%
Tweenを含むPBSにて3回洗浄し、5倍希釈のブロッ
キング溶液(ナカライテスク製)を300μlずつ分注
し、4℃で一晩静置してブロッキングを行い、抗体価測
定用プレートを作製した。得られたハイブリドーマの培
養上清は等量のメタノールを添加しメタノール濃度50
%になるよう調製した。このサンプルを、採取した培養
上清を50μl/ウエルになるように上記抗体価測定用
プレートに添加し、37℃、2時間反応させ、抗ビスフ
ェノールA抗体を産生しているかどうか調べた。同プレ
ートをTween20を0.05%含むPBSで3回洗浄した
後、PBSで4000倍希釈したPEO標識抗マウスI
gGウサギ抗体(ZYMED社製)を50μl/ウエル添加
し、37℃、1時間反応させた。更にTween20を0.0
5%含むPBSで3回洗浄後、TMB Microwell Peroxida
se Substrate(KPL社製)を50μl/ウエル添加し、
遮光下37℃で反応させた。20分後、0.5mol/Lの
硫酸を100μl/ウエル添加して発色を停止し、45
0nmの吸光度を測定し抗体結合活性を有するクローン
を選抜した。高い抗体価が確認されたハイブリドーマに
ついて、限界希釈法によるクローニングを3回行い、モ
ノクローン化ハイブリドーマを得た。
【0048】これらのハイブリドーマは0.5% ウル
トラ-Low IgGウシ胎児血清含有Hybridoma-SFM(GIBCO BR
L社製)中で炭酸ガス培養器内で37℃、1週間培養し培
養上清を取得した。培養上清はプロテインAカラムでア
フィニティー精製後、PBSに対して透析を行いモノク
ローナル抗体とした。得られたモノクローナル抗体を用
いて以下の実施例に示す各種試験を行った。
【0049】実施例6 各モノクローナル抗体の交差反
応評価 各モノクローナル抗体のビスフェノールA関連化合物に
対する交差反応性を間接競合法により検討した。検討に
用いた化合物はビスフェノールA及びビスフェノールA
の構造類似物質であるフェノール、p-tert-butyl pheno
lの3種類を選定した。まず各抗体を10〜100ng
/mlの濃度範囲になるようにPBSで希釈し、この抗
体溶液と0〜10μg/mlの間で希釈系列を作製した
抗原溶液を等量混合し、ビスフェノールAハプテンを固
相した抗体価測定用プレートに50μl/ウエルずつ分
注して、37℃で2時間反応させた。検討に用いた抗原
はビスフェノールAとその構造類似物質であるTween20
を0.05%含むPBSで3回洗浄した後、PBSで4
000倍希釈したPEO標識抗マウスIgGウサギ抗体
(ZYMED社製)を50μl/ウエル添加し、37℃、1時
間反応させた。更にTween20を0.05%含むPBSで
3回洗浄後、TMB Microwell Peroxidase Substrate(KP
L社製)を50μl/ウエル添加し、遮光下37℃で反
応させた。20分後、0.5mol/Lの硫酸を100μ
l/ウエル添加して発色を停止し、450nmの吸光度
を測定した。抗原を添加していないサンプルの吸光度を
100%として、各抗原の阻害率を算出し交差反応性の
評価を行った。その結果、ビスフェノールAと選択的反
応し、他の構造類似物との反応性が低いクローンとして
3B9、5G9、10E5、17B4、の4クローンを
選定した。
【0050】実施例7 各モノクローナル抗体の有機溶
媒耐性評価及びハイブリドーマの選定 有機溶媒を含有した条件で各モノクローナル抗体を反応
させ、どの程度の有機溶媒中での反応性評価を行った。
まず各抗体を10〜100ng/mlの濃度範囲になる
ようにPBSで希釈し、この抗体溶液と0〜100μg
/mlの間で希釈系列を作製したメタノール水溶液を等
量混合し、ビスフェノールAハプテンを固相した抗体価
測定用プレートに50μl/ウエルずつ分注して、37
℃で2時間反応させた。Tween20を0.05%含むPB
Sで3回洗浄した後、PBSで4000倍希釈したPE
O標識抗マウスIgGウサギ抗体(ZYMED社製)を50μ
l/ウエル添加し、37℃、1時間反応させた。更にTwe
en20を0.05%含むPBSで3回洗浄後、TMB Microw
ell Peroxidase Substrate(KPL社製)を50μl/ウ
エル添加し、遮光下37℃で反応させた。20分後0.
5mol/Lの硫酸を100μl/ウエル添加して発色を
停止し、450nmの吸光度を測定した。メタノールを
含有していないサンプルの吸光度を100%として、各
メタノール濃度での抗原結合活性を算出した。図1にそ
の結果を示した。3B9、10E5、17B4の抗原結
合活性は、40%メタノール濃度においても、それぞれ
53%、82%、88%であり、いずれも50%以上の
抗原結合活性を有していた。5G9については、40%
メタノール共存下での抗原結合活性は1%であった。
【0051】実施例8 各モノクローナル抗体のサブク
ラスの決定 各モノクローナル抗体のサブクラスはMouse MonoAB ID
KIT(Zymed社製)を用いて決定した。タイピングした結
果、5G9抗体のサブクラスはIgG2bであり、3B9
抗体、10E4抗体、17B4抗体のサブクラスはいず
れもIgG1であった。
【0052】実施例9 メタノール存在下での直接競合
法によるビスフェノールA量の測定 各モノクローナル抗体を用いて直接競合法によるビスフ
ェノールA量測定を検討した。またこの測定系でのメタ
ノールの影響も同時に検討した。結果をそれぞれ図2、
図3、図4、図5に示した。
【0053】直接競合法で使用したペルオキシダーゼ標
識ビスフェノールAは以下の方法により作製した。まず
西洋ワサビペルオキシダーゼ100mg(2.5μmol)
を100mmolのリン酸緩衝液(pH8.0) 4mlに溶
解した後、3mlの無水DMFを添加しペルオキシダー
ゼ溶液とした。次いで本溶液中に1mlのDMFに溶解
したイミドエステル化ビスフェノールA 11mg
(0.025mmol)を徐々に添加し、25℃で18時間攪
拌し反応を行った。反応終了後、モノエタノールアミン
2.5mlを添加し、25℃で2時間攪拌を行い残存す
る活性エステルをブロックした後、PBSに対して透析
を行い、ペルオキシダーゼ標識ビスフェノールAを得
た。
【0054】直接競合法は以下の方法により行った。ま
ず各抗ビスフェノールAモノクローナル抗体250μg
/mlになるようにPBSに溶解し96ウエルマイクロ
プレートに100μl/ウエルになるよう分注し、37
℃、2時間インキュベートし抗体の固相化を行った。抗
体溶液を除去後、0.05% Tween20を含むPBSにて
3回洗浄し、5倍希釈のブロッキング溶液(ナカライテ
スク製)を300μlずつ分注し、4℃で一晩静置して
ブロッキングを行い、抗体固相化プレートを作製した。
【0055】次に上記のペルオキシダーゼ標識ビスフェ
ノールAを5ng/mlになるようにPBSで希釈し、
0.5mlずつ試験管に分注した。この標識抗原溶液に
0〜60%濃度のメタノールを含むPBSで0〜10μ
g/mlの間で希釈系列を作製したビスフェノールA溶
液を0.5ml添加し、この混合溶液を上記の抗体固相
化プレートに50μl/ウエルずつ分注して、25℃で
1時間反応させた。反応後、Tween20を0.05%含む
PBSで3回洗浄し、TMB Microwell Peroxidase Subst
rate(KPL社製)を50μl/ウエル添加し、遮光下3
7℃で反応させた。20分後、0.5mol/Lの硫酸を
100μl/ウエル添加して発色を停止し、450nm
の吸光度を測定した。結果からもわかるように、実施例
7で有機溶媒耐性の高かった3クローンについては、0
〜40%濃度のメタノールを含有した状態で2〜50n
g/mlの範囲でビスフェノールAの量を測定すること
ができたが、3B9については、メタノール濃度が高く
なるにつれ測定感度が大きく低下することがわかった。
環境試料を測定する場合、固相抽出等の前処理工程によ
り試料を濃縮するが、濃縮後はメタノール等の有機溶媒
に置換されているため、有機溶媒に耐性を有することは
大きなメリットであると言える。
【0056】実施例10 メタノール存在下での直接競
合法による交差反応性評価 有機溶媒耐性の高かった3クローンについて、50%メ
タノール存在下で直接競合法によるビスフェノールA及
びビスフェノールA構造類似物の反応性を検討した。抗
原はビスフェノールA及びビスフェノールAの構造類似
物質であるフェノール、p-tert-butyl phenolの計3種
類を用いた。抗原液はサンプル0〜50%濃度のメタノ
ールを含むPBSで0〜10μg/mlの間で希釈系列
を作製し、他は実施例9に記載の方法に従い、反応性の
検討を行った。結果をそれぞれ図6、図7、図8に示し
た。3B9抗体、10E5抗体、17B4抗体のいずれ
も、ビスフェノールAの測定が可能な範囲では構造類似
物であるフェノール、 p-tert-butyl phenolとはほとん
ど反応しなかった。
【0057】
【発明の効果】上述したように、本発明のモノクローナ
ル抗体は有機溶媒に対する耐性を有することから、有機
溶媒存在下でも高感度でビスフェノールAを測定するこ
とができ、環境分析等に広く応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各モノクローナル抗体のメタノール耐性を示す
図である。
【図2】3B9抗体を用いたメタノール存在下でのビス
フェノールA測定を示す図である。
【図3】10E5抗体を用いたメタノール存在下でのビ
スフェノールA測定を示す図である。
【図4】17B4抗体を用いたメタノール存在下でのビ
スフェノールA測定を示す図である。
【図5】5G9抗体を用いたメタノール存在下でのビス
フェノールA測定を示す図である。
【図6】3B9抗体のメタノール存在下での交差反応性
を示す図である。
【図7】10E5抗体のメタノール存在下での交差反応
性を示す図である。
【図8】17B4抗体のメタノール存在下での交差反応
性を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/535 C12R 1:91) 33/577 (C12P 21/08 //(C12N 5/10 C12R 1:91) C12R 1:91) C12N 5/00 B (C12P 21/08 15/00 C C12R 1:91) C12R 1:91) (72)発明者 川村 良久 福井県敦賀市東洋町10番24号 東洋紡績株 式会社敦賀バイオ研究所内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 40%濃度以下の有機溶媒を含む水溶液
    中において50%以上の抗原結合能を保持することが可
    能なビスフェノールAに特異的に反応するモノクローナ
    ル抗体。
  2. 【請求項2】 受託番号が、FERM BP−714
    6、FERM BP−7147、及びFERM BP−
    7148よりなる群から選ばれたいずれかであるハイブ
    リドーマにより産生される請求項1記載のモノクローナ
    ル抗体。
  3. 【請求項3】 受託番号が、FERM BP−714
    6、FERM BP−7147、及びFERM BP−
    7148よりなる群から選ばれたいずれかであるハイブ
    リドーマであり、請求項1記載のモノクローナル抗体を
    産生することを特徴とするハイブリドーマ。
  4. 【請求項4】 以下の式(I) で表される構造(式中、
    nは1〜10の整数を示す)で表される構造を有するこ
    とを特徴とするハプテン化合物。 【化1】
  5. 【請求項5】 請求項4記載のハプテン化合物に高分子
    化合物をキャリアー化合物として結合させることにより
    得られることを特徴とする免疫抗原。
  6. 【請求項6】 高分子化合物が蛋白質である請求項5記
    載の免疫抗原。
  7. 【請求項7】 請求項4記載のハプテン化合物に標識物
    質を結合させることにより得られることを特徴とする標
    識抗原。
  8. 【請求項8】 標識物質が酵素である請求項7記載の標
    識抗原。
  9. 【請求項9】 請求項4記載のハプテン化合物のカルボ
    キシル基末端を活性化し、高分子化合物と結合させるこ
    とを特徴とする免疫抗原及び標識抗原の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項5または6に記載の免疫抗原を
    動物に免疫することにより得られる請求項1記載のモノ
    クローナル抗体の製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項1記載のモノクローナル抗体と
    請求項7記載の標識抗原を用いることを特徴とするビス
    フェノールAの測定方法。
  12. 【請求項12】 測定対象物をメタノールを溶媒に用い
    た固相抽出法にて予め濃縮を行う請求項11記載のビス
    フェノールAの測定方法。
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