JP2001179540A - 歯切り盤 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 精度良く波動歯車装置の剛性内歯歯車、可撓
性外歯歯車の製作可能な歯切り盤を提案すること。 【解決手段】 歯切り盤は、その回転部分である主軸や
テーブルの動力伝達機構に波動歯車装置を採用してい
る。波動歯車装置はその角度伝達誤差に低周波成分が少
ないので、当該波動歯車装置を用いた歯切り盤は、かみ
合い歯数が多い歯車を製作する場合に極めて有効であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、波動歯車装置を構
成している歯車を精度良く製作できる歯切り盤に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術および解決しようとする課題】歯切り盤の
主軸やテーブルは、ウォーム歯車や平歯車を備えた伝達
機構を介して駆動モータにより回転駆動されるので、加
工された歯車の回転精度は主に、伝達機構を構成してい
るウォーム歯車や平歯車の精度により左右される。従っ
て、高精度に歯切り加工を行うためには、高精度のウォ
ーム歯車や平歯車を歯切り盤に採用する必要がある。し
かし、使用する歯車の高精度化には限界があり、また、
高精度の歯車は高価である。

【０００３】ここで、減速歯車装置としては波動歯車装
置が知られており、この波動歯車装置は、環状の剛性内
歯歯車と、環状の可撓性外歯歯車と、この内側に嵌め込
まれた剛性の波動発生器から基本的に構成されている。
波動発生器は一般に楕円形輪郭をしており、この波動発
生器によって可撓性外歯歯車は楕円形に撓められて、そ
の楕円形の長軸の両端位置において剛性内歯歯車にかみ
合った状態になる。波動発生器をモータ等により回転さ
せると、両歯車のかみ合い位置も円周方向に移動する。

【０００４】可撓性外歯歯車の歯数は、剛性内歯歯車よ
りも２ｎ（ｎは正の整数）、一般には２枚少なく設定さ
れているので、かみ合い位置の移動に伴って、両歯車に
は相対回転が発生する。よって、一方の歯車を回転しな
いように固定しておけば、歯数差に応じて大幅に減速さ
れた減速回転出力を他方の歯車から取出すことができ
る。かかる波動歯車装置の構成、減速原理は公知である
ので、これ以上の説明は省略する。

【０００５】この波動歯車装置に使用されている剛性内
歯歯車および可撓性外歯歯車は、一般にかみ合い歯数が
多いので、高精度の歯切り加工が要求される。剛性内歯
歯車の歯切り加工にはギヤシェーパが使用され、可撓性
外歯歯車の歯切り加工にはホブマシンが使用されてい
る。これらの歯切り加工においても、歯切り盤に使用さ
れている歯車の精度以上の精度で内歯歯車、外歯歯車を
製作できない。

【０００６】本発明の課題は、コスト高を招くことなく
歯切り加工を高精度で行うことのできる歯切り盤を提案
することにある。特に、本発明は、かみ合い歯数の多い
歯車を製作するのに適した歯切り盤を提案することにあ
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明は、回転駆動源と、主軸、テーブル等の回
転部と、この回転部に対して前記回転駆動源からの回転
力を伝達する伝達機構とを有し、この伝達機構は減速歯
車機構として波動歯車装置を備えていることを特徴とし
ている。

【０００８】詳細に説明すると、波動歯車装置は、その
剛性内歯歯車と可撓性外歯歯車のかみ合い歯数が多く、
また、楕円形の長軸両端の２個所でかみ合うので、歯車
装置としての角度伝達誤差は歯車の偶数成分の累積ピッ
チ誤差で決まるという特性を備えている。ここで、波動
歯車装置における歯車の累積ピッチ誤差の高周波成分は
かみ合い歯数が多いので相殺されるが、低周波成分はそ
のまま誤差となって現れる。しかしながら、波動歯車装
置の特徴として、歯車の累積ピッチ誤差の低周波成分は
極めて少ない。このために、波動歯車装置を歯切り盤の
伝達機構に使用すれば、高精度の歯切り加工を実現でき
る。

【０００９】例えば、ＤＩＮ１級のウォーム歯車を主軸
駆動用の伝達機構に使用した歯切り盤を用いて波動歯車
装置の剛性内歯歯車を製作したとき、ウォーム歯車の累
積ピッチ誤差が剛性内歯歯車に転写されたとする。図１
（ａ）は、かかる加工誤差を備えた剛性内歯歯車（Ｃ／
Ｓ）が組み込まれた場合における波動歯車装置において
予想される角度伝達誤差を示すグラフである。

【００１０】これに対して、角度伝達誤差が１６秒の一
般的な波動歯車装置を、ウォーム歯車の代わりに採用し
た歯切り盤を用いて、波動歯車装置の剛性内歯歯車を製
作したとき、歯切り盤に組み込まれている波動歯車装置
の累積ピッチ誤差が製作対象の剛性内歯歯車に転写され
たとし、この場合において予想される角度伝達誤差を図
１（ｂ）のグラフに示してある。

【００１１】図１（ａ）、（ｂ）のグラフから分かるよ
うに、最高級のウォーム歯車を使用した場合に対して、
一般的な波動歯車装置を使用した歯切り盤を用いた場合
の方が約３倍よい結果（角度伝達誤差が約１／３に減
少）が得られる。

【００１２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の歯切り盤
は、その主軸やテーブル等の回転部の伝達機構に波動歯
車装置を採用している。波動歯車装置では、その角度伝
達誤差の成分に低周波成分が少なく、また、角度伝達誤
差の主成分である高周波成分はかみ合い歯数が多いので
相殺される。よって、波動歯車装置の剛性内歯歯車や可
撓性外歯歯車のようなかみ合い歯数の多い歯車を製作す
る場合には、角度伝達誤差に低周波成分が少ない波動歯
車装置を用いた本発明の歯切り盤を使用すれば、高精度
の歯切り加工を実現できる。

【００１３】特に、本発明の歯切り盤で歯切り加工され
た剛性内歯歯車および可撓性外歯歯車を備えた波動歯車
装置を歯切り盤に組み込めば、よりよい精度の剛性内歯
歯車および可撓性外歯歯車を製作できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ａ）はウォーム歯車を備えた歯切り盤により
製作した歯車が組み込まれた波動歯車装置の角度伝達誤
差の予測値を示すグラフであり、（ｂ）は波動歯車装置
を備えた歯切り盤により製作した歯車が組み込まれた波
動歯車装置の角度伝達誤差の予測値を示すグラフであ
る。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山崎 宏 長野県南安曇郡穂高町大字牧1856−１ 株 式会社ハーモニック・ドライブ・システム ズ穂高工場内 (72)発明者 見村 功 長野県南安曇郡穂高町大字牧1856−１ 株 式会社ハーモニック・ドライブ・システム ズ穂高工場内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 回転駆動源と、主軸、テーブル等の回転
   部と、この回転部に対して前記回転駆動源からの回転力
   を伝達する伝達機構とを有し、この伝達機構は減速歯車
   機構として波動歯車装置を備えていることを特徴とする
   歯切り盤。