JP2001173714A - 能動型制振器 - Google Patents

能動型制振器

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JP2001173714A JP36167099A JP36167099A JP2001173714A JP 2001173714 A JP2001173714 A JP 2001173714A JP 36167099 A JP36167099 A JP 36167099A JP 36167099 A JP36167099 A JP 36167099A JP 2001173714 A JP2001173714 A JP 2001173714A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 小さな供給エネルギによって、複数の乃至は
広い周波数域の振動に対して有効な能動的制振効果を発
揮し得る、新規な構造の能動型制振器を提供すること。 【解決手段】 制振対象12に取り付けられる取付部材
14に対して、互いに独立変位可能に配された複数個の
マス部材16,18をゴム弾性体20,22によって弾
性支持せしめることにより、少なくとも2自由度の振動
系を構成する一方、それら複数個のマス部材16,18
と取付部材14の対向面間に、壁部の一部がゴム弾性体
20,22で構成された作用空気室40を形成せしめ
て、該作用空気室40に圧力変動を生ぜしめることによ
り、複数個のマス部材16,18に対してそれぞれ直接
的に加振力を及ぼすようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、制振対象に装着されて制振対象
における振動を低減する制振器に係り、特に、加振手段
を備え、積極的乃至は相殺的に振動を低減することの出
来る能動型制振器に関するものである。
【0002】
【背景技術】従来から、自動車の排気管やボデー等のよ
うに振動が問題となる部材において、その振動を低減す
る手段の一つとして、動的吸振器(ダイナミックダン
パ)が知られている。また、近年では、より高度な制振
効果を得るために、特開昭61−220925号公報や
特開平3−292219号公報等に記載されているよう
に、加振手段による加振力を利用することにより、制振
対象における振動を積極的乃至は相殺的に低減せしめる
能動型の制振器が提案されている。ところが、能動型制
振器によって有効な制振効果を得るためには、防振すべ
き振動に見合うだけの加振力を制振対象に及ぼす必要が
あることから、特に自動車ボデーのように大型で振動エ
ネルギが大きい場合には、加振手段が大型化したり、加
振のための消費エネルギが大きくなることが避けられな
いこととなり、十分な加振力が得られ難いために満足で
きる制振効果を得ることが出来ない場合もあった。
【0003】そこで、このような問題に対処するため
に、特開平6−235438号公報や特開平7−190
139号公報等には、制振対象に取り付けられる取付部
材に対してマス部材を弾性支持せしめて一つの振動系を
構成すると共に、このマス部材に加振力を及ぼすことに
より、振動系における共振作用を利用して、消費エネル
ギを抑えつつ、制振対象に大きな加振力を及ぼすように
したものが提案されている。
【0004】しかしながら、このような共振作用を利用
した従来の能動型制振装置では、制振対象に対して有効
な加振力を及ぼすことの出来るのが、単一の振動系にお
ける固有振動周波数域に限られてしまい、それ以外の周
波数域では、必ずしも有効な加振力を及ぼすことが出来
ないという問題があったのであり、特に、複数の乃至は
広い周波数域の振動に対して防振効果が要求される自動
車のボデー等においては、未だ、要求される防振性能を
満足することが難しかったのである。
【0005】
【解決課題】ここにおいて、本発明は、上述の如き事情
を背景として為されたものであって、その解決課題とす
るところは、消費エネルギを抑えつつ、大きな加振力を
生ぜしめて有効な能動的制振効果を得ることが可能であ
り、しかも、複数のまたは広い周波数域の振動に対して
有効な制振効果を発揮せしめ得る、新規な構造の能動型
制振器を提供することにある。
【0006】
【解決手段】以下、このような課題を解決するために為
された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各
態様は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能であ
る。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記
載のものに限定されることなく、明細書全体および図面
に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握する
ことのできる発明思想に基づいて認識されるものである
ことが理解されるべきである。
【0007】すなわち、本発明は、制振対象に取り付け
られる取付部材に対して振動入力方向に離間して、複数
個のマス部材をそれぞれ独立変位可能に配設すると共
に、それら複数個のマス部材を、ゴム弾性体により、相
互に弾性連結せしめて該取付部材に弾性支持せしめるこ
とによって、複数の固有振動数を持つ振動系を構成する
一方、それら複数個のマス部材と取付部材の対向面間
に、壁部の一部が該ゴム弾性体で構成された作用空気室
を形成せしめて、該作用空気室に圧力変動を生ぜしめる
ことにより、前記複数個のマス部材に対してそれぞれ直
接的に加振力を及ぼすようにした能動型制振器を、特徴
とする。
【0008】このような本発明に従う構造とされた能動
型制振器においては、制振対象に対して複数個のマス部
材がゴム弾性体で連成的に弾性連結されて支持せしめら
れることによって、少なくとも2自由度の多自由度振動
系が構成される。そして、作用空気室に圧力変動が生ぜ
しめられて、各マス部材が直接に加振されることによ
り、かかる多自由度の振動系を介して、取付部材ひいて
は制振対象に加振力が及ぼされることとなる。
【0009】それ故、多自由度の振動系における複数の
固有振動数を適当にチューニングすることにより、それ
ら各固有振動数の周波数域において、振動系の共振作用
に基づき、加振手段による加振力が増幅されて取付部材
に及ぼされることとなる。それ故、各固有振動数を制振
すべき振動に応じて適当にチューニングすることによ
り、加振手段への供給エネルギに対して、大きな加振力
を制振対象に及ぼすことが出来るのであり、小型で消費
エネルギの小さい加振手段によって有効な制振効果を得
ることが可能となるのである。特に、多自由度の振動系
を構成する各マス部材に対して直接的に加振力が及ぼさ
れることから、振動系における各固有振動数域で、極め
て効率的な加振力の伝達率、ひいては能動的制振効果が
達成されるのである。
【0010】しかも、本発明に従う構造とされた能動的
制振器においては、作用空気室に及ぼされる空気圧変動
によって加振力が生ぜしめられるようになっていること
から、制振器の内部に特別なアクチュエータを組み込む
必要がないのであり、制振器の構造の簡略化とコンパク
ト化が有利に達成されるという利点もある。
【0011】なお、本発明において、複数の固有振動数
のチューニングに際しては、例えば、各固有振動数を、
それぞれ防振すべき異なる振動の各周波数にチューニン
グすることが有効であり、それによって、特に、防振す
べき各振動の周波数が略一定で且つ比較的狭い場合に
は、効率的な制振効果が実現され得る。また、例えば、
複数の固有振動数の二つを、防振すべき一つの振動に対
して低周波側と高周波側にずらせてチューニングするこ
とも可能であり、それによって、特に、防振すべき一つ
の振動の周波数範囲が広い場合や、防振すべき振動の周
波数が変動する場合に、効率的な制振効果を安定して得
ることが可能となる。なお、防振すべき振動に対して低
周波側と高周波側にずらせる固有振動数の範囲は、防振
すべき振動特性等に応じて適宜に設定されるものであっ
て特に限定されるものでないが、広い範囲で特に有効な
制振効果を得るためには、二つの固有振動数を、低減目
的の振動周波数中央値に対して、±20%以内で両側に
それぞれ振って設定することが望ましい。
【0012】また、本発明において作用空気室に圧力変
化を生ぜしめるためには、例えば、、電磁切換弁等を用
いて、作用空気室を負圧源と大気中とに交互に切換接続
すること等によって、有利に実現され得る。このような
空気圧制御手段を作用すれば、電気信号によって作用空
気室の空気圧変化の周波数や位相を容易に調節すること
が出来る等といった利点がある。
【0013】また、本発明において、複数のマス部材の
形状や相対的な配設構造等は、制振器の設置スペースや
要求される制振特性等に応じて適宜に設計されるもので
ある。
【0014】具体的には、本発明における複数のマス部
材の好適な配設構造としては、例えば、複数個のマス部
材を、中央マス部材と、該中央マス部材の外周側に離間
して同一中心軸上に配設された少なくとも一つの環状マ
ス部材とによって構成し、それら複数個のマス部材を、
それぞれ、取付部材に対して振動入力方向一方の側に離
間して対向配置せしめた構造が、採用され得る。このよ
うな構造を採用すれば、複数のマス部材を優れたスペー
ス効率をもって配設することが出来るのであり、また、
各マス部材の軸直角方向対向面間を周方向の全周に亘っ
てゴム弾性体で弾性連結することにより、軸直角方向の
ばね剛性を大きくして各マス部材の軸直角方向における
安定性を向上させることも可能となる。
【0015】或いはまた、本発明における複数のマス部
材の好適な配設構造としては、例えば、取付部材を軸部
材によって構成すると共に、ゴム弾性体を略円筒形状と
して軸部材の径方向外方に離間して外挿配置せしめて、
該ゴム弾性体の軸方向両端部を軸部材に固定することに
より、それら軸部材とゴム弾性体の間に環状の作用空気
室を形成すると共に、複数個のマス部材を、それぞれ、
軸部材の周方向に半周以下の長さで延びる円弧ブロック
構造として、該ゴム弾性体に対して固着せしめた構造
が、採用され得る。このような構造を採用すれば、例え
ばロッド状の制振対象に対しても、該制振対象を軸部材
として利用することにより、本発明を有利に適用するこ
とが出来、軸直角方向の振動に対する有効な能動的制振
効果を得ることが可能となる。
【0016】また、本発明における複数のマス部材の好
適な配設構造としては、例えば、取付部材を軸部材によ
って構成すると共に、ゴム弾性体を略円筒形状として軸
部材の径方向外方に離間して外挿配置せしめて、該ゴム
弾性体の軸方向両端部を軸部材に固定することにより、
それら軸部材とゴム弾性体の間に環状の作用空気室を形
成すると共に、複数個のマス部材をそれぞれ円環形状と
し、相互に軸方向で離間する状態で、軸部材の径方向外
方に離間して外挿配置せしめて、ゴム弾性体に対して固
着する一方、該ゴム弾性体によって構成された前記作用
空気室の軸方向両側の壁部の軸方向傾斜角度を相互に異
ならせて、該作用空気室の圧力変動に伴うゴム弾性体の
弾性変形に基づいて、前記複数個のマス部材に軸方向の
加振力が及ぼされるようにした構造が、採用され得る。
このような構造を採用すれば、取付部材としての軸部材
の軸方向の振動に対して、有効な能動的制振効果を得る
ことが可能となる。
【0017】なお、本発明において、作用空気室に対し
てゴム弾性体により互いに並列的に配設支持されて、そ
れぞれ作用空気室の圧力変化に伴う加振力が直接的に及
ぼされるマス部材は、少なくとも二つあれば良く、三つ
以上あっても良い。また、かくの如き並列的に配設支持
された複数のマス部材に対して、別に、追加マス部材を
追加ゴム弾性体を介して弾性連結せしめて、作用空気室
とマス部材に対して直列的に配設することも可能であ
る。なお、かかる追加マス部材に対しては、作用空気室
の圧力変化に伴う加振力が、マス部材を介して間接的に
及ぼされることとなる。
【0018】また、本発明において、複数の固有振動数
は、従来から公知の2自由度や多自由度の振動系におけ
る運動方程式を解くことによって求めることが出来るこ
とから、かかる式に基づいてチューニングすることが可
能である。
【0019】
【発明の実施形態】以下、本発明を更に具体的に明らか
にするために、本発明の実施形態について、図面を参照
しつつ、詳細に説明する。
【0020】先ず、図1には、本発明の第一の実施形態
としての能動型制振器10の全体概略構成が示されてい
る。かかる制振器10においては、自動車のボデー等の
制振対象12に取り付けられる取付部材としての取付金
具14に対して、中央マス部材としての第一のマス金具
16と環状マス部材としての第二のマス金具18が、ゴ
ム弾性体としての第一のゴム弾性体20および第二のゴ
ム弾性体22によって弾性連結されており、全体として
2自由度の振動系が構成されている。そして、加振手段
としての空気圧式アクチュエータ24によって、取付金
具14と第一のマス金具16および取付金具14と第二
のマス金具18が相互に接近/離隔方向に相対変位せし
められて、制振対象12に加振力が伝達されることによ
り、制振対象12における振動を相殺的乃至は干渉的に
抑制するようになっている。なお、以下の説明中、上下
方向とは、原則として図1中の上下方向を言うものとす
る。
【0021】より詳細には、取付金具14は、薄肉の平
板形状を有しており、外周縁部には、周方向に離間して
複数個の取付孔26が形成されている。そして、この取
付金具14は、制振対象12に重ね合わされて、取付孔
26に挿通される固定ボルト28により、制振対象12
に対して固定的に取り付けられるようになっている。ま
た、取付金具14の中央には、貫通孔30が形成されて
おり、この貫通孔30に対して円筒形状の給排ポート3
2が流体密に溶着固定されている。
【0022】また、第一のマス金具16は、金属等の高
比重な剛性材によって中実のブロック形状をもって形成
されており、特に、本実施形態では、軸方向下部が逆円
錐台形状とされている。そして、この第一のマス金具1
6は、取付金具14の上方に離間して配されており、小
径側の下端面が取付金具14に対して振動入力方向一方
の側に所定距離を隔てて対向せしめられている。
【0023】更にまた、第二のマス金具18は、第一の
マス金具16と同様に金属等の高比重な剛性材によって
形成されており、環状のブロック形状を有している。ま
た、この第二のマス金具18の内径寸法は、第一のマス
金具16の外径寸法よりも大きくされており、第一のマ
ス金具16に第二のマス金具18が外挿された状態で、
第一のマス金具16の径方向外方に離間して、同一中心
軸上に第二のマス金具18が配設されている。そして、
第二のマス金具18も、第一のマス金具16と同様に、
取付金具14の上方に離間して配されており、軸方向下
端面が取付金具14に対して振動入力方向一方の側に所
定距離を隔てて対向せしめられている。
【0024】また、これら第一のマス金具16と第二の
マス金具18の径方向対向面間には、第一のゴム弾性体
20が介装されている。この第一のゴム弾性体20は、
略円環形状乃至は円筒形状を有しており、その内周面に
対して第一のマス金具16の逆テーパ状外周面が加硫接
着されていると共に、その外周面に対して第二のマス金
具18の円筒状内周面が加硫接着されている。要する
に、第一のゴム弾性体20は、第一のマス金具16と第
二のマス金具18の径方向対向面間において周方向の全
周に亘って連続して配設されており、この第一のゴム弾
性体20によって第一のマス金具16と第二のマス金具
18が相互に弾性的に連結されていると共に、第一のマ
ス金具16と第二のマス金具18の径方向対向面間が流
体密に閉塞されている。
【0025】さらに、第二のマス金具18と取付金具1
4の対向面間には、第二のゴム弾性体22が配設されて
いる。この第二のゴム弾性体22は、円環形状乃至は円
筒形状を有しており、軸方向下端面が取付金具14に加
硫接着されていると共に、軸方向上端面には、かしめ固
定金具34が加硫接着されている。かかるかしめ固定金
具34は、第二のゴム弾性体22の上端面に加硫接着さ
れた円環板形状の接着部36を有しており、また、接着
部36の外周縁部には、軸方向上方に向かって延び出す
円筒状部38が一体形成されている。そして、円筒状部
38が第二のマス金具18に外挿されて、軸方向上端を
径方向内方にかしめ加工されることにより、かしめ固定
金具34が第二のマス金具18の外周縁部にかしめ固定
されているのであり、これにより、第二のマス金具18
の外周縁部と取付金具14の対向面間が第一のゴム弾性
体20で連結されて、第二のマス金具18が取付金具1
4によって弾性支持せしめられている。
【0026】また、かしめ固定金具34は、第二のマス
金具18に対して流体密に組み付けられており、以て、
取付金具14と第一及び第二のマス金具16,18の対
向面間には、外周壁部が第二のゴム弾性体22で構成さ
れて、外部空間に対して密閉された略円盤形状の作用空
気室40が画成されている。要するに、上述の如き構造
とされた能動型制振器10においては、取付金具14に
対して、第一のマス金具16と第二のマス金具18が、
第一のゴム部材20と第二のゴム部材22を介して、順
次、直列的に弾性連結されて、2自由度の振動径が構成
されている。また、それら第一のマス金具16と第二の
マス金具18は、作用空気室40に対して並列的に配設
されており、第一のマス金具16と第二のマス金具18
が、何れも、作用空気室40内に直接に露出して晒され
て、作用空気室40の内圧が各マス金具16,18の軸
方向下端面に対して直接に及ぼされるようになってい
る。
【0027】さらに、作用空気室40には、接続ポート
32を通じて外部エア管路42が接続されるようになっ
ており、外部エア管路42上に配設された電磁式の切換
弁44の切換作動に基づいて、作用空気室40が、負圧
源と大気中とに交互に切換接続されるようになってい
る。そして、切換弁44の切換作動により作用空気室4
0に負圧と大気圧が交互に及ぼされて空気圧変動が生ぜ
しめられることにより、作用空気室40の壁部の一部を
構成する第一のマス金具16と第二のマス金具18に対
して、それぞれ、取付金具14への接近/離隔方向の加
振力が直接的に及ぼされるようになっており、以て、第
一及び第二のゴム弾性体20,22の弾性変形に基づい
て、それら第一のマス金具16と第二のマス金具18
が、相互に独立的に軸方向(図1中の上下方向)に加振
変位せしめられるようになっている。なお、このことか
ら明らかなように、本実施形態では、作用空気室40
と、該作用空気室40に空気圧変化を及ぼすための切換
弁44等を含んで、空気圧式アクチュエータ24が構成
されている。
【0028】而して、このような構造とされた能動型制
振器10は、前述の如く取付金具14を制振対象12に
対して固定ボルト28で固定すること等によって、第
一、第二のマス金具16,18の弾性変位方向(中心軸
の方向)が、制振対象12における防振すべき振動方向
(図1中の上下方向)に略一致する状態で装着される。
【0029】上述の如き構造とされた制振器70におい
ては、その装着状態下において、電磁式エア切換弁44
を、制振対象12における制振すべき振動に対応した周
波数や位相で切換制御すると、作用空気室40に生ぜし
められる圧力変動に基づく加振力が、第一のマス金具1
6と第二のマス金具18に対してそれぞれ直接的に及ぼ
されることとなり、以て、第一及び第二のマス金具1
6,18と第一及び第二のゴム弾性体20,22からな
る2自由度の振動系が強制加振されることとなる。ここ
において、かかる振動系は、第一及び第二のマス金具1
6,18の各質量と、第一及び第二のゴム弾性体20,
22における各ばね定数とから振動数方程式によって求
められる2つの固有振動数を有していることから、それ
ら各固有振動数に対応した周波数域で振動系を加振する
と、振動系の共振作用によりマス金具16,18が大き
く変位せしめられて大きな加振力が制振対象12に及ぼ
されるのであり、それ故、かかる振動系の固有振動数を
制振対象12において防振すべき振動数域にチューニン
グすることにより、それらの固有振動数域では、小さな
消費エネルギ(作用空気室40の圧力変動量)によっ
て、制振対象12に対して有効な能動的防振効果を及ぼ
すことが出来るのである。
【0030】特に、かかる制振器10においては、2自
由度の振動系を備えていることから、制振すべき振動に
対するチューニングの自由度が大きく確保されて、有効
な制振効果が容易に達成されることとなる。具体的に
は、例えば、二つの固有振動数を比較的近づけて設定す
ると、それら二つの固有振動数の間を含む広い周波数域
において共振作用に基づく能動的制振効果の向上が実現
され得るのであり、また、二つの固有振動数を比較的離
して設定すると、離れた二つの周波数域においてそれぞ
れ共振作用に基づく能動的制振効果の向上が実現され得
るのである。そこにおいて、前者の場合には、二つの固
有振動数間での能動的防振効果の落ち込みを回避しつ
つ、出来るだけ広い周波数域で有効な制振効果を得るた
めに、二つの固有振動数間を、低減目的の振動周波数中
央値に対して、±20%以内で両側にそれぞれ振って設
定することが望ましい。
【0031】なお、エア切換弁44の駆動用ソレノイド
への通電を制御して空気圧式アクチュエータ24を加振
制御する制御装置としては、制振対象12の振動状態を
検出する加速度センサ等の振動センサの検出信号に基づ
いて、その振動に対して有効な制振効果を発揮し得るよ
うに、検出信号に対応した駆動電流をエア切換弁44の
駆動用ソレノイドルに出力するものが採用される。例え
ば、予め設定されたデータに基づいて、検出信号に対応
した周波数と位相差で駆動電流を給電することによりフ
ィードフォワード的に制御するものや、或いは、それに
加えて、負圧源から作用空気室40に及ぼされる負圧の
大きさを調節する負圧力調節手段を採用し、作用空気室
40に及ぼされる圧力変動の大きさを制振対象12にお
ける振動の大きさに応じて調節し、検出信号に含まれる
制振対象12の振動値を可及的に零にするようにフィー
ドバック制御するもの等が好適に採用され得る。
【0032】因みに、本実施形態に従う構造とされた制
振器10について、正弦波外力による強制振動の加速度
応答(変位応答乃至は共振倍率と同義)の周波数特性を
測定した結果を、図2に示す。図中、実施例1は、二つ
の固有振動数を略35Hzと略105Hzに離してチューニ
ングした場合であり、実施例2は、二つの固有振動数を
相互に近づけて略30Hzと略40Hzにチューニングした
場合である。また、比較例として、第一のマス金具14
と第二のマス金具16を相互に剛結して相対変位不能と
した単一マス構造の制振器について同様な試験を行なっ
た結果を併せ示す。
【0033】かかる図2に示された結果からも明らかな
ように、本実施形態に従う構造とされた能動型制振器1
0においては、2自由度の振動系による共振作用が顕著
に発現されるのであり、それ故、各固有振動数域での共
振作用を利用することによって、広い周波数域や異なる
周波数域の振動に対しても、能動的制振効果を効果的に
得ることの出来ることが容易に理解されるところであ
る。
【0034】また、本実施形態の制振器10において
は、制振器本体の内部に特別なアクチュエータ機構を組
み込む必要がなく、単に作用空気室40を形成すれば良
いことから、部品点数の減少や製作性の向上等が有利に
達成されるのであり、例えば電磁式アクチュエータを採
用する場合に比して、給電用リード線の断線等に起因す
るトラブルも完全に防止されて、優れた耐久性も実現さ
れる。
【0035】次に、図3及び図4には、本発明の第二の
実施形態としての能動型制振器50の全体概略構成が示
されている。かかる制振器50は、軸部材としてのセン
タ軸金具52の外周側に離間してそれぞれマス部材とし
ての第一のマス金具54と第二のマス金具56が配設さ
れていると共に、筒状ゴム弾性体58によって、それら
第一及び第二のマス金具54,56が、センサ軸金具5
2に対して弾性支持せしめられている。
【0036】より詳細には、センタ軸金具52は、中実
のストレートな円形ロッド形状を有している。このセン
タ軸金具52は、それ自体が制振対象とされていても良
く、或いは、制振対象に対して固定的に取り付けられる
ようになっていても良い。
【0037】また、第一のマス金具54と第二のマス金
具56は、何れも、センタ軸金具52の径方向外方に離
間して、センタ軸金具52の中心軸周りに周方向に半周
以下(本実施形態では、略1/3周弱の周方向長さ)で
延びる円弧ブロック形状とされている。特に、第二のマ
ス金具56は、第一のマス金具54よりも径方向厚さが
大きくされて、質量が大きく設定されている。そして、
これら第一のマス金具54と第二のマス金具56は、セ
ンタ軸金具52を中心とする略同一円周上に配設されて
おり、センタ軸金具52を、制振すべき振動が入力され
る径方向一方向に挟んだ両側で互いに所定距離を隔てて
対向配置されている。
【0038】さらに、筒状ゴム弾性体52は、厚肉の中
央円筒状部60を挟んだ軸方向両側に、軸方向外方に行
くに従って次第に小径化するテーパ筒状部62,62が
一体形成されたテーパ付円筒形状を有している。また、
中央円筒状部60には、第一のマス金具54と第二のマ
ス金具56が、それぞれ埋設状態で加硫接着されている
と共に、各テーパ筒状部62の先端部内周面には、嵌着
スリーブ64が加硫接着されている。要するに、本実施
形態では、筒状ゴム弾性体58が、第一及び第二のマス
金具54,56と一対の嵌着スリーブ64,64を有す
る一体加硫成形品66として形成されているのである。
【0039】そして、かかる一体加硫成形品66は、セ
ンタ軸金具52に外挿されて、嵌着スリーブ64,64
がセンタ軸金具52に流体密に外嵌固定されることによ
り、センタ軸金具52に対して固定的に取り付けられて
いる。それにより、筒状ゴム弾性体58の軸方向両端開
口部が、それぞれ流体密に閉塞されており、以て、一体
加硫成形品66の内部には、センタ軸金具52の周囲に
おいて、外部空間に対して密閉された円筒形状の作用空
気室68が画成されている。また、センタ軸金具52に
は、内部を軸方向に延びるエア通孔70が形成されてお
り、このエア通孔70の内側端部が作用空気室68に連
通せしめられている一方、エア通孔70の外側端部が、
筒状ゴム弾性体58の軸方向外方において作用空気室6
8の外部に開口せしめられており、その開口部に対して
接続ポート72が螺着固定されている。そして、この接
続ポート72に対して外部エア管路74が接続されてお
り、前記第一の実施形態と同様に、該外部エア管路74
上に配設されたエア切換弁76の切換作動に基づいて、
作用空気室68に圧力変動が生ぜしめられるようになっ
ている。
【0040】このような構造とされた本実施形態の制振
器50においては、第一のマス金具54と第二のマス金
具56が筒状ゴム弾性体58で弾性連結されることによ
って、2自由度の振動系が構成されており、作用空気室
68の圧力変動によって、第一のマス金具54と第二の
マス金具56に対して、それぞれ、センタ軸金具52の
軸直角方向の加振力が直接的に及ぼされて、かかる振動
系を構成する両マス金具54,56がそれぞれ加振変位
せしめられるようになっているのである。そこにおい
て、第一のマス金具54と第二のマス金具56には、異
なる質量が設定されていることから、加振周波数によっ
てそれら両マス金具54,56の位相や振幅が相対的に
変化せしめられて、かかる振動系において2つの異なる
固有振動数が有利に発現されるのである。
【0041】従って、本実施形態の制振器50において
も、エア切換弁76を、センタ軸金具52が固設される
制振対象において制振すべき振動に対応した周波数や位
相で切換制御することにより、2自由度の振動系を強制
加振することが出来るのであり、それによって、前記第
一の実施形態と同様な効果が発揮されて、制振対象に対
して有効な能動的制振効果を得ることが出来るのであ
る。
【0042】また、図5及び図6には、本発明の第三の
実施形態としての制振器80が示されている。なお、本
実施形態は、第二の実施形態の制振器(50)に対し
て、マス金具の異なる配置形態を例示するものであっ
て、第二の実施形態と同様な構造とされた部材および部
位については、図中に、第二の実施形態と同一の符号を
付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0043】すなわち、本実施形態の制振器80におい
ては、第一のマス家具54と第二のマス金具56が、何
れも、センタ軸金具52に対して振動入力方向一方の側
に離間して配設されており、軸方向で相互に所定距離だ
け離間して位置せしめられている。
【0044】このような本実施形態の制振器80におい
ても、第二の実施形態と同様に、2自由度の振動系が構
成されており、作用空気室68の圧力変動によって、第
一のマス金具54と第二のマス金具56に対して、それ
ぞれ加振力が直接的に及ぼされて加振変位せしめられる
のであり、それ故、エア切換弁76を制振すべき振動に
応じて切換制御することにより、2自由度の振動系の共
振作用に基づいて、第二の実施形態と同様に、制振対象
に対して有効な能動的制振効果を得ることが出来るので
ある。
【0045】特に、本実施形態では、第一のマス金具5
4と第二のマス金具56に対して、作用空気室68の圧
力変化による加振力が略同一方向に及ぼされることか
ら、両マス金具54,56の相加的な加振力をより効率
的に得ることが出来る等といった利点がある。
【0046】さらに、図7には、本発明の第四の実施形
態としての制振器82が示されている。なお、本実施形
態において、第三の実施形態と同様な構造とされた部材
及び部位については、図中に、第三の実施形態と同一の
符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略す
る。
【0047】すなわち、本実施形態の制振器82におい
ては、それぞれ円環ブロック形状を有する第一のマス金
具84と第二のマス金具86を備えており、これら両マ
ス金具84,86は、センタ軸金具52に外挿されて、
センタ軸金具52の中心軸上で軸方向に相互に離間して
配設されている。また、本実施形態では、第一のマス金
具54よりも第二のマス金具56の方が断面積が小さく
されて小質量とされている。
【0048】また、これら第一のマス金具84と第二の
マス金具86を弾性連結する筒状ゴム弾性体88は、軸
方向中央部分が厚肉の中央円筒状部92とされており、
この中央円筒状部92に第一のマス金具84と第二のマ
ス金具86が埋設状態で加硫接着されている。また、筒
状ゴム弾性体88の軸方向一方の側(図7中の左側)
は、第一のマス金具54から軸方向外方に行くに従って
次第に小径化するテーパ筒状部94とされている一方、
軸方向他方の側が、軸直角方向に広がる円環板状部96
とされている。
【0049】このように筒状ゴム弾性体88の内部に形
成された作用空気室68の軸方向両側の端壁部が、互い
に傾斜角度の異なるテーパ筒状部94と円環板状部96
によって構成されていることから、作用空気室68に空
気圧変動が及ぼされた際、テーパ筒状部94における軸
方向の弾性変形量と円環板状部96における軸方向弾性
変形量が相殺することなく、筒状ゴム弾性体88の全体
に軸方向変位が生ぜしめられるのであり、その結果、第
一及び第二のマス金具84,86に対して軸方向の加振
力が及ぼされるようになっているのである。
【0050】従って、本実施形態の制振器80において
は、センタ軸金具52の軸方向において2自由度の振動
系が構成されており、作用空気室68の圧力変動によっ
て、第一のマス金具84と第二のマス金具86に対し
て、それぞれ軸方向の加振力が直接的に及ぼされて加振
変位せしめられることとなる。そして、それ故、エア切
換弁76を制振すべき軸方向振動に応じて切換制御する
ことにより、2自由度の振動系の共振作用に基づいて、
センタ軸金具52の軸方向の振動に対して有効な能動的
制振効果を得ることが出来るのである。
【0051】以上、本発明の実施形態について詳述して
きたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、
これらの実施形態における具体的記載によって、何等、
限定的に解釈されるものでない。
【0052】例えば、前記実施形態では、何れも、二つ
のマス部材からなる2自由度の振動系が採用されていた
が、三つ以上のマス部材を用いて3自由度以上の多自由
度の振動系を構成することも、勿論可能である。
【0053】また、複数個のマス部材の形状や相対的な
配設形態等は、何等限定されるものでなく、例えば、第
一の実施形態において、複数個のマス部材を同一中心軸
上に配設することなく、別々に独立した位置にブロック
状のマス部材を配設し、それらのマス部材をゴム弾性体
によって相互に弾性連結して支持せしめるようにしても
良い。
【0054】更にまた、複数個のマス部材におけるそれ
ぞれの質量は、全てのマス部材の平均質量の50〜15
0%の範囲内に設定することが望ましく、それにより、
各固有振動数域において共振作用に基づく加振力の増大
効果をより有効に得ることが出来、各固有振動数域で、
何れも一層有効な防振効果を得ることが可能となる。
【0055】加えて、本発明は、自動車のボデー用の制
振器として採用されることにより、例えば、エンジンの
回転数の変化によって周波数が変化するアイドリング振
動等に対して極めて有効な制振効果を得ることが出来る
が、自動車ボデー用の制振器の他、自動車の各種部材用
の制振器等、或いは自動車以外の各種装置における能動
型制振器として、何れも適用可能であることは、言うま
でもない。
【0056】その他、一々列挙はしないが、本発明は、
当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を
加えた態様において実施され得るものであり、また、そ
のような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、
何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、
言うまでもないところである。
【0057】
【発明の効果】上述の説明から明らかなように、本発明
に従う構造とされた能動型制振器においては、少なくと
も2自由度の振動系が構成されることから、かかる振動
系の共振作用に基づいて、複数のまたは広い周波数域の
振動に対しても、能動的な制振効果を有効に且つ効率的
に得ることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態としての制振器を示す
縦断面説明図である。
【図2】図1に示された制振器における受動的な共振倍
率の周波数特性を測定した結果を示すグラフである。
【図3】本発明の第二の実施形態としての制振器を示す
縦断面説明図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】本発明の第三の実施形態としての制振器を示す
縦断面説明図である。
【図6】図5におけるVI−VI断面図である。
【図7】本発明の第四の実施形態としての制振器を示す
縦断面説明図である。
【符号の説明】
10,50,80,82 制振器 12 制振対象 14 取付金具 16,54,84 第一のマス金具 18,56,86 第二のマス金具 16 第一のゴム弾性体 28 第二のゴム弾性体 24 空気圧式アクチュエータ 40,68 作用空気室 58,88 筒状ゴム弾性体

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 制振対象に取り付けられる取付部材に対
    して振動入力方向に離間して、複数個のマス部材をそれ
    ぞれ独立変位可能に配設すると共に、それら複数個のマ
    ス部材を、ゴム弾性体により、相互に弾性連結せしめて
    該取付部材に弾性支持せしめることによって、複数の固
    有振動数を持つ振動系を構成する一方、それら複数個の
    マス部材と取付部材の対向面間に、壁部の一部が該ゴム
    弾性体で構成された作用空気室を形成せしめて、該作用
    空気室に圧力変動を生ぜしめることにより、前記複数個
    のマス部材に対してそれぞれ直接的に加振力を及ぼすよ
    うにしたことを特徴とする能動型制振器。
  2. 【請求項2】 前記複数個のマス部材を、中央マス部材
    と、該中央マス部材の外周側に離間して同一中心軸上に
    配設された少なくとも一つの環状マス部材とによって構
    成し、それら複数個のマス部材を、それぞれ、前記取付
    部材に対して振動入力方向一方の側に離間して対向配置
    せしめた請求項1に記載の能動型制振器。
  3. 【請求項3】 前記取付部材を軸部材によって構成する
    と共に、前記ゴム弾性体を略円筒形状として該軸部材の
    径方向外方に離間して外挿配置せしめて、該ゴム弾性体
    の軸方向両端部を該軸部材に固定することにより、それ
    ら軸部材とゴム弾性体の間に環状の作用空気室を形成す
    ると共に、前記複数個のマス部材を、それぞれ、該軸部
    材の周方向に半周以下の長さで延びる円弧ブロック構造
    として、該ゴム弾性体に対して固着せしめた請求項1に
    記載の能動型制振器。
  4. 【請求項4】 前記取付部材を軸部材によって構成する
    と共に、前記ゴム弾性体を略円筒形状として該軸部材の
    径方向外方に離間して外挿配置せしめて、該ゴム弾性体
    の軸方向両端部を該軸部材に固定することにより、それ
    ら軸部材とゴム弾性体の間に環状の作用空気室を形成す
    ると共に、前記複数個のマス部材をそれぞれ円環形状と
    し、相互に軸方向で離間する状態で、該軸部材の径方向
    外方に離間して外挿配置せしめて、該ゴム弾性体に対し
    て固着する一方、該ゴム弾性体によって構成された前記
    作用空気室の軸方向両側の壁部の軸方向傾斜角度を相互
    に異ならせて、該作用空気室の圧力変動に伴うゴム弾性
    体の弾性変形に基づいて、前記複数個のマス部材に軸方
    向の加振力が及ぼされるようにした請求項1に記載の能
    動型制振器。
  5. 【請求項5】 前記複数の固有振動数の二つを、防振す
    べき一つの振動に対して低周波側と高周波側にずらせて
    チューニングした請求項1乃至4の何れかに記載の能動
    型制振器。
  6. 【請求項6】 前記複数の固有振動数を、それぞれ防振
    すべき異なる振動の各周波数にチューニングした請求項
    1乃至4の何れかに記載の能動型制振器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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