JP2001164169A - 印刷インキ用樹脂 - Google Patents

印刷インキ用樹脂

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JP2001164169A
JP2001164169A JP35443399A JP35443399A JP2001164169A JP 2001164169 A JP2001164169 A JP 2001164169A JP 35443399 A JP35443399 A JP 35443399A JP 35443399 A JP35443399 A JP 35443399A JP 2001164169 A JP2001164169 A JP 2001164169A
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Shoichi Yano
省一 矢野
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Harima Chemical Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ホルムアルデヒドを合成過程で使用しない樹
脂であり、広い用途を持つインキ調製に適用する樹脂に
好適な程度に樹脂粘度が高く、または、高い分子量を有
し、溶剤への優れた溶解性をも示す新規な印刷インキ用
樹脂または樹脂組成物の提供。 【解決手段】 ロジン類、α,β-不飽和カルボン酸また
はその無水物、脂肪族多塩基酸、多価アルコ−ル、およ
び、例えば、炭素数8以上の直鎖状又は分岐状の第一級
アルコ−ルなどの一価の高級アルコ−ルとを加熱反応さ
せて得られる樹脂または樹脂組成物である。特には、ロ
ジン類100重量部に対して、α,β-不飽和カルボン酸
またはその無水物1〜15重量部を用いて、前記の加熱
反応を行い得られる樹脂または樹脂組成物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、印刷インキ用樹脂
に関し、具体的には、オフセット印刷用インキの調製に
用いられるインキ用樹脂または樹脂組成物に関する。特
には、オフセット印刷において、要求される優れたイン
キ性能と印刷作業性を与える印刷インキ用樹脂、ならび
に、係る特質を利用し、この印刷インキ用樹脂を用いて
調製される印刷用インキに関する。
【0002】
【従来の技術】オフセット印刷は、多様な印刷原版の印
刷が可能である利点を持ち、その利点から、広く用いら
れている代表的な印刷方式である。このオフセット印刷
方式には、熱によってインキを乾燥させるヒートセット
式のオフセット輪転印刷と乾性油を触媒に用いて硬化、
乾燥させる枚葉式印刷の二種の方式がある。オフセット
印刷に用いられるインキでは、それを構成する樹脂とし
て、天然物であるロジンを、フェノール樹脂、特にレゾ
ール樹脂で変性したロジン変性フェノール樹脂が広く用
いられている(特開平9−268211号公報等を参
照)。
【0003】このロジン変性フェノール樹脂は、ロジン
を樹脂骨格中に有しているため、顔料との濡れ性が向上
し、顔料が均一分散しやすいという利点を有している。
このロジンをフェノール樹脂で変性している理由は、ロ
ジン自体は、高分子重合を起こさないモノカルボン酸類
であるため、樹脂に必要な架橋構造を導入する必要があ
り、フェノール樹脂で変性することにより、架橋構造の
導入を図ったものである。さらに、フェノール樹脂の合
成には、主原料のフェノール類とホルムアルデヒドを、
アルカリ又は酸触媒を用いて反応させる方法が用いられ
ている。そのため、ロジン変性フェノール樹脂の合成過
程では、ホルムアルデヒドは合成上必須な構成成分とな
っている。また、フェノール樹脂、具体的には、レゾー
ル樹脂には、ホルムアルデヒドに由来する末端メチロー
ル基が存在している。
【0004】ところで、ヒートセット式のオフセット印
刷では、印刷工程中、インキ乾燥など、インキにかなり
の熱がかかる工程がある。この加熱の際、ロジン変性フ
ェノール樹脂中に、未反応のホルムアルデヒドが僅かで
も残存していれば、ホルムアルデヒドの飛散が起こる可
能性がある。また、例えば、レゾール樹脂の末端メチロ
ール基に由来するホルムアルデヒドなど、樹脂骨格より
遊離するホルムアルデヒドの飛散が起こる可能性も、必
ずしも否定することはできない。このホルムアルデヒド
は、シックハウス問題等で、大きな関心が寄せられてい
る化学物質過敏症を引き起こす原因化合物の一つである
と、指摘を受けている。
【0005】上記の理由により、印刷インキ用に用いら
れる樹脂でも、ホルムアルデヒドの遊離を抑えた樹脂の
使用が望まれ、その開発が急がれている。ホルムアルデ
ヒドの遊離を抑える手段としては、従来から検討と改良
が進められている幾つかの方法がある。例えば、ホルム
アルデヒドを含有する樹脂系に、ホルムアルデヒド捕捉
能を有する添加剤、いわゆるキャッチャーを添加する方
法などである。また、発想の転換を図って、ホルムアル
デヒドを合成過程で使用しない樹脂を用いることで、ホ
ルムアルデヒド遊離の問題を回避することも考えられ
る。
【0006】しかしながら、前者のキャッチャーを添加
する方法では、インキ化したとき、要望される作業性を
保つように、添加率を調整するのは容易ではない。そも
そも、キャッチャーの添加は、僅かに残留している未反
応ホルムアルデヒドに対しては有効な手段ではあるが、
レゾール樹脂の末端メチロール基が脱離することに由来
するホルムアルデヒドなど、経時的に徐々に遊離してく
るものは、キャッチャーのみで捕捉すること自体、相当
に難しい。
【0007】一方、後者のホルムアルデヒドを合成過程
で使用しない樹脂への転換は、本質的な解決策ではある
ものの、現状では、インキ用樹脂としての特性を一応満
足する樹脂ですら、限られた数しかない。インキ用樹脂
では、顔料との濡れ性から、ロジン骨格をその構成要素
として含有することが好ましい。ロジン骨格を含み、ホ
ルムアルデヒドを合成過程で使用しない樹脂の一つに、
ロジンの多価アルコールエステル類があり、特定用途の
インキ用樹脂として使用されている。すなわち、このロ
ジンと多価アルコールのエステル化反応により得られた
樹脂は、高分子量化が不十分なため、広い用途を持つイ
ンキ調製に適用する樹脂としては、その樹脂粘度がなお
低く、特定用途にしか利用できないものである。従っ
て、前記ロジンの多価アルコールエステル類など、現在
知られているホルムアルデヒドを合成過程で使用しない
樹脂は、広い用途を持つインキ調製に適用を図る上で
は、今後さらなる改良・解決すべき問題点を残してい
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の課題
を解決するもので、本発明の目的は、ホルムアルデヒド
を合成過程で使用しない樹脂であり、広い用途を持つイ
ンキ調製に適用する樹脂に好適な程度に樹脂粘度が高
く、あるいは、高い分子量を有する新規な印刷インキ用
樹脂または樹脂組成物を提供することにある。より具体
的には、本発明の目的は、その合成において、ホルムア
ルデヒドを原料として用いず、あるいは、加熱した際、
容易にホルムアルデヒドとして遊離するメチロール基を
含まない樹脂または樹脂組成物であり、オフセット印刷
用インキの調製に利用する際、好適な樹脂粘度又は分子
量を持つ新規な樹脂または樹脂組成物を提供することに
ある。さらに、本発明は、上記の樹脂または樹脂組成物
を用いて、調製される良好な印刷特性を有する新規なオ
フセット印刷用インキを提供することをも目的とする。
すなわち、本発明の目標とする印刷インキ用樹脂は、現
状オフセット印刷用インキの調製に利用されているロジ
ン変性フェノール樹脂を代替できる特性、すなわち、ロ
ジン変性フェノール樹脂と比較して、遜色の無い樹脂粘
度又は分子量を持ちつつ、その合成において、ホルムア
ルデヒドを原料として用いず、あるいは、加熱した際、
容易にホルムアルデヒドとして遊離するメチロール基を
含まない樹脂である。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく、鋭意研究を進め、分子内にロジン骨格
を保持し、加えて、樹脂に必要な架橋構造をも持ち、高
い分子量ならびに高い粘度を持つ新規な樹脂の合成を行
った。その過程において、ロジン類、α、β−不飽和カ
ルボン酸、脂肪族多塩基酸および多価アルコールとのエ
ステル化反応を行い得られる樹脂は、前記する要件を満
たす樹脂であるとして、係る新規な樹脂の発明を完成さ
せ、既に特許出願を行った(特願平11−185749
号に添付の明細書を参照)。本発明者らは、さらに研究
を進めたところ、エステル結合に脂溶性を持たせるた
め、多価アルコールの一部を一価の高級アルコールに置
き換えて、反応系に加えると、一価の高級アルコールに
由来して、樹脂に分岐構造が与えられ、脂溶性が増大す
ることを見出した。それに起因して、樹脂の分子量が大
きくてもインキ溶剤に対する溶解性が更に向上し、か
つ、本樹脂を用いて調製した印刷インキは流動性が向上
し、光沢が良好になることを見出した。係る知見に基づ
き、本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち、本発明の印刷インキ用樹脂は、
ロジン類、α,β−不飽和カルボン酸またはその無水
物、脂肪族多塩基酸、多価アルコールおよび一価の高級
アルコールとを加熱反応させて得られる樹脂または樹脂
組成物である。特には、ロジン類100重量部に対し
て、α,β−不飽和カルボン酸またはその無水物1〜1
5重量部、より好ましくは3〜12重量部を用いて、前
記の加熱反応を行い得られる樹脂または樹脂組成物であ
る。すなわち、ロジン類の主成分であるアビエチン酸と
その類縁体1分子に対して、α,β−不飽和カルボン酸
またはその無水物を、0.01〜0.6分子の割合、好
ましくは、0.1〜0.5分子の割合で用い、前記の加
熱反応を行い得られる樹脂または樹脂組成物である。
【0011】つまり、ロジン類とα,β−不飽和カルボ
ン酸またはその無水物とを加熱して、ロジン骨格にα,
β−不飽和カルボン酸が付加反応した、α,β-不飽和カ
ルボン酸とロジン類との付加体とするとともに、反応系
内に生成するα,β-不飽和カルボン酸とロジン類との付
加体、残留するロジン類とα,β−不飽和カルボン酸ま
たはその無水物、脂肪族多塩基酸、多価アルコールおよ
び一価の高級アルコールとをさらに加熱反応させて、エ
ステル結合形成による架橋構造の導入を行ったものであ
る。従って、多価アルコールをエステルの原料に用いる
ので、最終的に得られる樹脂には、原料のロジン類に由
来するロジン炭素骨格を保持するとともに、エステル結
合形成による架橋構造をとり、高い分子量となり、その
粘度も印刷インキ用樹脂に好ましい程度に高いものとな
る。加えて、エステル結合を形成する一価の高級アルコ
ールに伴い、溶剤への溶解性も向上がなされる。
【0012】なお、上述するように、ロジン類とα,β
−不飽和カルボン酸またはその無水物とを加熱して、付
加反応させたα,β-不飽和カルボン酸とロジン類との付
加体を主要な中間原料とする。従って、予め、ロジン類
とα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物とを加熱
して、付加反応させた中間原料混合物を別途に調製し、
その後、この中間原料混合物に、脂肪族多塩基酸、多価
アルコールおよび一価の高級アルコールを加えて、加熱
反応させることによっても、実質的に同じ樹脂を調製す
ることができる。
【0013】例えば、ロジン類とα,β-不飽和カルボン
酸と付加反応させて調製されるα,β-不飽和カルボン酸
とロジン類との付加体類、脂肪族多塩基酸、多価アルコ
ールおよび一価の高級アルコールとを加熱反応させて得
られる印刷インキ用樹脂も、実質的に、本発明の印刷イ
ンキ用樹脂に包含される。
【0014】本発明の印刷インキ用樹脂は、好ましく
は、原料のロジン類、α,β−不飽和カルボン酸または
その無水物及び脂肪族多塩基酸中のカルボキシル基1当
量に対して、多価アルコールおよび一価の高級アルコー
ル中の水酸基を、少なくとも、0.3当量以上、好まし
くは0.5〜2当量、より好ましくは0.9〜1.2当
量の割合で添加して、加熱反応させて得られる樹脂また
は樹脂組成物である。なお、その際、多価アルコールを
主成分とし、一価の高級アルコールは主成分の多価アル
コールに対して、副次的な量を使用するものである。
【0015】本発明の印刷インキ用樹脂は、より好まし
くは、原料のロジン類、α,β−不飽和カルボン酸また
はその無水物、脂肪族多塩基酸、多価アルコールおよび
一価の高級アルコールの重量総和に対して、0.1%〜
2%の2価金属化合物を添加して、加熱反応を行い得ら
れる樹脂または樹脂組成物である。なお、本発明の印刷
インキ用樹脂は、その樹脂分子内に一価の高級アルコー
ルに由来する炭素鎖を内在しないもの、すなわち、原料
のロジン類、α,β−不飽和カルボン酸またはその無水
物、脂肪族多塩基酸、多価アルコールのエステル化反応
で得られる樹脂をも、不可避的に一部含むものとなる。
【0016】加えて、本発明の印刷インキ用樹脂は、上
記の加熱反応時に、石油樹脂を存在させ、加熱反応を行
い得られる樹脂に石油樹脂が添加されている樹脂組成物
とすることもできる。この石油樹脂としては、主とし
て、C5系のオレフィンを重合して得られる脂肪族系石
油樹脂を用いるとより好ましい。
【0017】さらに、本発明の印刷用インキは、上記本
発明の印刷インキ用樹脂、乾性油、溶剤及び顔料を必須
成分として含み、これらを混練して得られるインキであ
る。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の印刷インキ用樹脂は、ロ
ジン類、α,β−不飽和カルボン酸またはその無水物、
脂肪族多塩基酸、多価アルコールおよび一価の高級アル
コールとを混合し、加熱反応を行わせて、得られる高い
分子量の樹脂としたものである。この加熱反応におい
て、次に述べる二種の反応が起こり、樹脂内に架橋構造
および分岐構造が導入されたものとなる。すなわち、加
熱を行うと、ロジン類とα,β−不飽和カルボン酸また
はその無水物とが付加反応し、反応系内にα,β−不飽
和カルボン酸とロジン類との付加体が生成する。さら
に、このα,β−不飽和カルボン酸とロジン類との付加
体、残留するロジン類とα,β−不飽和カルボン酸また
はその無水物を、反応系内に存在する脂肪族多塩基酸と
ともに、多価アルコールおよび一価の高級アルコールと
エステル化反応を行わせることにより、多価アルコール
とのエステル結合により、樹脂が架橋構造を形成するこ
とができ、分子量の増大がなされる。さらに、一価の高
級アルコールの導入によってエステル結合に脂溶性と分
岐構造が与えられる。従って、得られる樹脂または樹脂
組成物は、架橋構造および分岐構造を有する高い分子量
となり、それに伴い樹脂粘度も高いものとなる。
【0019】なお、上記の加熱反応において、ロジン類
とα,β-不飽和カルボン酸またはその無水物の付加反応
と、多価アルコールおよび一価の高級アルコールとのエ
ステル化反応とは、競合して起こるため、反応生成物
は、種々の構成単位からなる混合物となる。ロジン類と
α,β-不飽和カルボン酸またはその無水物の付加反応が
優先的に進行する条件とすると、樹脂粘度は一層高いも
のとなる。すなわち、アルダーのエン反応またはディー
ルズ-アルダー反応は、通常、加熱のみで反応が開始す
るが、これら付加反応を触媒する化合物を添加すると、
より好ましい結果が得られる。なお、α,β-不飽和カル
ボン酸のエステル化が先に進行した際にも、α,β-不飽
和カルボン酸エステルも前記のアルダーのエン反応また
はディールズ-アルダー反応における反応性を保持する
ので、著しい差異とはならない。
【0020】本発明の樹脂調製に用いるロジン類として
は、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、また
はこれらの混合物が挙げられる。さらには、前記ロジン
の変性物を用いることもできる。変性物としては、部分
的水素添加、不均化、重合化、エステル化などの変性処
理を施したものを例示できる。一般に、ロジンとは、マ
ツ科植物から得られる樹脂油をもとに、精油などの揮発
性物質を留去したあとの残留樹脂であり、組成にバラツ
キはあるものの、アビエチン酸とその類縁体を主成分と
する樹脂酸と少量の中性成分を含有する混合物である。
このアビエチン酸とその類縁体に存在する不飽和結合に
おいて、下記のα,β−不飽和カルボン酸との付加反応
を行うことを、本発明は大きな特徴の一つとしている。
【0021】α,β−不飽和カルボン酸またはその無水
物としては、アルダーのエン反応またはディールズ-ア
ルダー反応において利用される種々のα,β−不飽和カ
ルボン酸またはその無水物を用いることができる。なか
でも、炭素数3〜5の鎖状α,β-不飽和モノカルボン
酸、α,β-不飽和ジカルボン酸またはその無水物、ある
いは、前記鎖状α,β-不飽和モノカルボン酸等の炭素-
炭素二重結合と共役しえる芳香環が置換している置換鎖
状α,β-不飽和モノカルボン酸等が好ましく、例えば、
アクリル酸(2-プロペン酸)、メタクリル酸(α-メチ
ルアクリル酸)、マレイン酸(cis-ブテン二酸)、無水
マレイン酸、フマル酸(trans-ブテン二酸)、イタコン
酸(メチレンコハク酸)、無水イタコン酸、クロトン酸
(trans-2-ブテン酸)あるいはケイ皮酸(3-フェニル-2
-プロペン酸)等をより好ましいα,β-不飽和モノカル
ボン酸、α,β-不飽和ジカルボン酸またはその無水物等
の例として挙げることができる。
【0022】本発明の樹脂調製に利用される脂肪族多塩
基酸は、主として、多価アルコールとエステル結合を形
成して、樹脂の架橋構造の一部などとなる。従って、種
々の脂肪族ポリカルボン酸類を利用できるが、炭素数2
〜32の直鎖アルカン二酸またはその無水物が好まし
く、例えば、コハク酸(ブタン二酸)、アジピン酸(ヘ
キサン二酸)、アゼライン酸(1,7-ヘプタンジカルボン
酸)、セバシン酸(1,8-オクタンジカルボン酸)ならび
にこれらの無水物、例えば、無水コハク酸などはより好
ましい。さらには、ダイマー酸、トリマー酸、不飽和脂
肪酸とα,β-不飽和カルボン酸の反応で得られるダイア
シッドまたは不飽和脂肪酸付加体等、もしくはこれらに
対応する酸無水物等も、同様に好ましいものとして挙げ
ることができる。例えば、ダイマー酸、トリマー酸は、
種々の不飽和脂肪酸を二量化、三量化したものである
が、植物油に由来するオレイン酸などを原料とし、比較
的高分子量のものが利用され、市販されているダイマー
酸、商品名ハリダイマーDA−270S、DA−25
0、DA−200K(ハリマ化成(株)製)等を利用する
ことができる。これらの脂肪族多塩基酸を分子内に含む
ことで、インキ用溶剤への溶解性向上を図る作用をも有
する必須構成成分である。なお、長鎖の炭素鎖を有する
脂肪族多塩基酸においては、その長鎖の炭素鎖に付随し
て、前記の溶剤への溶解性向上の効果が増す。原料中に
おける脂肪族多塩基酸とロジン類との比率は、目標とす
る粘度または分子量に応じて、適宜選択することができ
るが、従来のロジン変性フェノール樹脂に相当する粘度
を目標とする際には、ロジン類100重量部に対して、
一般に、0.1〜20重量部、好ましくは、1〜10重
量部の範囲に選択するとよい。およそ、ロジン類1分子
に対して、脂肪族多塩基酸を0.01〜0.7分子の比
率、より好ましくは、0.05〜0.5分子の比率に選
択するとよい。
【0023】本発明の樹脂調製に利用される一価の高級
アルコールには、それを構成する炭素鎖に由来して、脂
溶性を示すものが利用される。従って、炭素数が8以上
の鎖式又は環状の一価のアルコールから選択するが、例
えば、より脂溶性に優る炭素数8以上の直鎖または分岐
を有する第一級アルコールなどは好適に用いることがで
きる。その炭化水素鎖は、直鎖状をとり、その末端にヒ
ドロキシル基が存在する第一級アルコールを用いるとよ
り好ましい。また、前記直鎖状炭化水素鎖は飽和である
か、不飽和結合を有する際には、その不飽和結合は末端
に位置する構造がより好ましい。例えば、炭素数8以上
の飽和な第一級アルコールとして、1−オクタノール、
1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノー
ル、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テト
ラデカノール、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカ
ノール、1−ヘプタデカノール、1−オクタデカノー
ル、1−ノナデカノール、1−イコサノール、1−ヘン
イコサノール、1−ドコサノール、1−トリコサノー
ル、1−テトラコサノール、1−ペンタコサノール、1
−ヘキサコサノール、1−ヘプタコサノール、1−オク
タコサノール、1−ノナコサノール、1−トリアコンタ
ノール、1−ヘントリアコンタノール、1−ドトリアコ
ンタノール、1−トリトリアコンタノール、1−テトラ
トリアコンタノール、1−ペンタトリアコンタノール、
1−ヘプタトリアコンタノール、さらに、炭素数8以上
のβ、γ−不飽和第一級アルコールとして、2−オクテ
ン−1−オール、2−ドデセン−1−オール、2−ウン
デセン−1−オール、2−テトラデセン−1−オール、
2−ペンタデセン−1−オール、2−ヘキサデセン−1
−オール、2−ヘプタデセン−1−オール、2−オクタ
デセン−1−オール、加えて、炭素数8以上の末端不飽
和アルコールとして、8−ノネン−1−オール、10−
ウンデセン−1−オール、11−ドデセン−1−オー
ル、12−トリデセン−1−オール、15−ヘキサデセ
ン−1−オール等を例示することができる。さらには、
前記の直鎖状炭化水素鎖を有する第一級アルコール類に
加えて、その長鎖炭素骨格に短い炭化水素基が置換し
て、分岐を形成するものの、長鎖炭素骨格に由来する脂
溶性を実質的に保持する類似の一価アルコール、例え
ば、ヒドロキシル基の存在する炭素に短い炭化水素基が
存在する第二級アルコールなども好ましいものとなる。
これらの一価の高級アルコールを分子内に含むことで、
エステル結合に脂溶性が付与され、かつ樹脂に分岐構造
が導入されるため、インキ用溶剤への溶解性の更なる向
上が図ることができる。なお、上記する長鎖の炭素鎖を
有する高級アルコールにおいては、その長鎖の炭素鎖に
付随して、インキ用溶剤への溶解性向上の効果が増大す
る。ここで使用される一価の高級アルコールは、その炭
素鎖の構造が目的に合致する限り、天然アルコールある
いは合成アルコールのいずれでも良い。例えば、好適な
合成アルコールとして、ドバノール23、25、45、
ダイアドール13等(いずれも三菱化学(株)製)などが
挙げられる。また、炭素鎖長の類似する複数種の混合物
を用いることもできる。
【0024】本発明の樹脂調製に利用される多価アルコ
ールとしては、例えば、鎖状の多価アルコールである、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチ
レングリコール、ポリエチレングリコール、プロプレン
グリコール(1,2-プロパンジオール)、ジプロピレング
リコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコ
ール(ブタンジオール)、ネオペンチルグリコール(2,
2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、ヘキサンジオー
ル、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチ
ロールプロパン、ペンタエリトリトール(C(CH2O
H)4)、ジペンタエリトリトール、D-ソルビトール(D-
グルシトール)など、ならびに脂環式の多価アルコール
である、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキ
サンジメタノール(1,4-ジメチロ−ルシクロヘキサン)
等が挙げられる。
【0025】出発原料として、多価アルコールならびに
一価の高級アルコールは、樹脂形成のエステル化反応に
使用されるものであり、ロジン類、α,β-不飽和ジカル
ボン酸、脂肪族多塩基酸が有するカルボキシル基1当量
に対して、その添加量中に含まれる水酸基が、少なくと
も、0.3当量〜過剰量となる量を添加すればよい。カ
ルボキシル基1当量に対して、0.5〜2当量の割合で
添加するとより好ましく、0.9〜1.2当量を添加し
て、反応を行うと一層好ましい。樹脂の主成分となる
α,β-不飽和ジカルボン酸とロジン類との付加体は、多
価アルコールとエステルを形成し、この多価アルコール
に残るヒドロキシル基と脂肪族多塩基酸がエステルを形
成することにより、樹脂に架橋構造、分岐構造が導入さ
れるとより好ましいものとなる。一方、一価の高級アル
コールは、α,β-不飽和ジカルボン酸とロジン類との付
加体ならびに脂肪族多塩基酸とエステルを形成し、脂溶
性を付与する分岐構造を、樹脂の主鎖骨格に付加する。
つまり、多価アルコールおよび一価の高級アルコールの
添加量合計を、おおむね前記二種類のエステル化反応に
要する量である、カルボキシル基1当量に対して、0.
9〜1.2当量とすると一層好ましい。その際、樹脂全
体の主骨格構成に利用される多価アルコールが、アルコ
ール類全体の大部分を占める構成とする。従って、一価
の高級アルコール添加量は、アルコール類全体の水酸基
の量中、10%未満となるように、好ましくは、1〜5
%の範囲に留めるとよい。また、エステル化反応によ
り、樹脂に架橋構造が導入される点を考慮すると、多価
アルコールは、ジオールのみではなく、3価アルコール
以上の多価アルコールを含むものを用いると、そこに架
橋構造の形成がなされるので、より好ましい結果が得ら
れる。
【0026】加熱反応を行う際、原料のロジン類、α,
β-不飽和ジカルボン酸、脂肪族多塩基酸、多価アルコ
ールおよび一価の高級アルコールを、無触媒又は触媒の
存在下に同時に反応させる手法を採ることができる。あ
るいは、予め、ロジン類とα,β-不飽和ジカルボン酸と
を加熱反応させ、次いで、脂肪族多塩基酸、多価アルコ
ールおよび一価の高級アルコールを加えてエステル形成
を行う手法を採ることもできる。すなわち、採用する反
応方法、手順に応じて、各原料の添加順序、添加時期を
適宜選択することができる。さらには、予め、ロジン類
とα,β-不飽和ジカルボン酸とを加熱反応させた生成物
を出発原料として、脂肪族多塩基酸、多価アルコールお
よび一価の高級アルコールを加えて、エステル形成を行
う方法を採用しても、得られる樹脂に実質的な差異はな
いものとなる。
【0027】加熱反応において、触媒を使用する際に
は、エステル化反応に対する触媒となる、水酸化カルシ
ウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウムな
どの2価金属化合物、または、公知の酸触媒、例えば、
硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸など
の有機スルホン酸類を添加すると好ましい。前記の触媒
として添加する化合物のうちでも、得られる樹脂の粘度
をより高くする上では、ロジン類、α,β-不飽和ジカル
ボン酸またはその無水物、脂肪族多塩基酸、多価アルコ
ールおよび一価の高級アルコールの重量総和に対して、
2価金属化合物を0.1%〜2%添加するのが好まし
く、具体的には、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の
2価金属化合物、特に、これら2価金属、つまり、亜
鉛、マグネシウム、カルシウムの酸化物、水酸化物等を
使用するとより好ましい。
【0028】また、上記加熱反応において、その反応温
度は、100〜290℃の範囲に選択するのが適当であ
り、特に、200〜270℃の範囲に選択するとより好
ましい。なお、加熱反応温度は、用いられる原料とその
組成に応じて、上記の好適な範囲と実質的に差異のない
温度を選択することもできる。最適な反応時間は、原料
中のロジン類、α,β-不飽和ジカルボン酸またはその無
水物、脂肪族多塩基酸、多価アルコールおよび一価の高
級アルコール各成分比率、さらには、触媒として添加さ
れる亜鉛、マグネシウム、カルシウムの酸化物、水酸化
物等の量に依存して、変化するが、前記の温度範囲にお
いては、通常、2〜20時間の範囲であり、好ましく
は、3〜10時間の範囲とする。
【0029】本発明の印刷インキ用樹脂は、上記の加熱
反応で得られる、α,β-不飽和ジカルボン酸とロジン類
との付加体、残留するロジン類とα,β-不飽和ジカルボ
ン酸、脂肪族多塩基酸、多価アルコールおよび一価の高
級アルコールとがエステル結合して、高分子化した樹脂
を主成分とするが、本発明の目的を逸脱しない範囲で、
これに石油樹脂を添加して、樹脂組成物とすることもで
きる。ここで石油樹脂は、主に、石油分解油留分から得
られる低分子量の熱可塑性炭化水素樹脂を意味し、さら
には、石油化学において副産物として得られる石油副生
成物樹脂、コールタール樹脂等をも含む。なお、添加す
る石油樹脂は、その後インキを調製する際、インキ用溶
剤に対する溶解性を増す目的と効果を持つ。その目的で
は、主として、C5系のオレフィンを重合して得られる脂
肪族系石油樹脂を用いるとより好ましい。
【0030】石油樹脂の添加時期は、加熱反応後、冷却
すると本発明の印刷インキ用樹脂は、粘度が高く、均一
な混合を行うには、多くの労力を要するので、予め加熱
反応を行う際に添加するとよい。すなわち、上記の樹脂
原料を反応容器に入れる際に、石油樹脂を加えることが
できる。なお、加熱反応中、あるいは、加熱反応後に石
油樹脂を添加しても、得られる樹脂組成物の特性は、実
質的に差異を与えるものでない。
【0031】また、加熱反応時に発生する泡を消泡する
目的で、シリコン系の消泡剤を添加することもできる。
加えて、上記混合物に、印刷インキに使用可能な溶剤
類、例えば、0号ソルベント(日本石油化学(株)製)、
AFソルベント(日本石油化学(株)製)等、テレピン油
等を適宜添加できる。これら溶剤類の添加により、反応
終了時に樹脂を反応釜から取り出す際、その作業が容易
となる。この消泡剤や、溶剤等の付加的な添加剤につい
ては、エステル化反応時においても適宜添加することは
可能である。
【0032】なお、本発明の印刷インキ用樹脂は、上記
のロジン類、α,β-不飽和ジカルボン酸またはその無水
物、脂肪族多塩基酸、多価アルコールおよび一価の高級
アルコールを加熱反応させて得られる高分子化した樹脂
を主成分とする点に特徴を持つものであるが、上述する
石油樹脂の他、本発明の目的を逸脱しない範囲で、これ
に従来から知れている他の樹脂、例えば、ロジン類のエ
ステルなどの樹脂成分を加えて、複合型樹脂組成物とす
ることもできる。
【0033】以上の合成反応により調製できる、本発明
の印刷インキ用樹脂を用い、オフセット印刷用インキの
調製方法について説明する。
【0034】本発明のオフセット印刷用インキは、本発
明の印刷インキ用樹脂、乾性油、溶剤及び顔料を必須成
分として含み、これらを混練して得られる。なお、顔料
は、所望の色とするため、適宜選択する顔料が用いられ
る。つまり、顔料は、被印刷物に色付けを行うためのも
ので、必要に応じて、黄色、紅色、藍色または黒色等の
顔料が選択される。
【0035】本発明の印刷インキ用樹脂は、原料のロジ
ン類に由来する炭素骨格を有するので、ロジン類と同等
の顔料との濡れ性を保持している。その顔料との濡れ性
は優れており、例えば、従来のロジン変性フェノール樹
脂を用いるインキに利用されている顔料を同様に利用す
ることができる。これらの顔料は、本発明の印刷インキ
用樹脂に均一に分散させることができる。
【0036】乾性油は、例えば、アマニ油、桐油等が挙
げられる。また、半乾性油であるが大豆油等を、前記の
乾性油に代えて用いることもできる。これらは、ドライ
ヤーと呼ばれる触媒によって、印刷後に乾性油同士が重
合し、皮膜が硬化する。従って、インキを調製する際、
前記乾性油の種類と添加量に合わせて、適合するドライ
ヤー、例えば、ナフテン酸マンガン溶液などを適量添加
することもできる。
【0037】溶剤は、インキ粘度の調整と印刷後のイン
キ乾燥性を早めるために添加される。従来のロジン変性
フェノール樹脂を用いるインキに利用されていた溶剤
を、そのまま利用することができる。好適に利用できる
市販の溶剤として、例えば、0号ソルベント、0号ソル
ベントS、0号ソルベントH、AF4〜7号ソルベント
(以上日本石油化学(株)製)等を挙げることができる。
【0038】本発明の印刷インキ用樹脂は、従来のロジ
ン変性フェノール樹脂と比較して、遜色のない粘度の高
さ、顔料に対する優れた濡れ性、溶剤に対する溶解性を
示すので、これら顔料、乾性油、溶剤の使用量は、従来
のロジン変性フェノール樹脂を利用したインキにおける
使用量と実質的に一致するものとなる。すなわち、従来
のロジン変性フェノール樹脂を利用したインキ(特開平
9−268211号公報等を参照)の組成、調製法に準
じ、ロジン変性フェノール樹脂を本発明の印刷インキ用
樹脂に置き換えることのみで、従来のロジン変性フェノ
ール樹脂を利用したインキと同等のインキ特性を達成で
きるものである。
【0039】その他、インキにゲル味を持たせ、印刷特
性を向上させる目的で、ゲル化剤等を添加することもで
きる。また、印刷後の印刷光沢性を向上させる目的で、
脂肪酸エステル等を添加することもできる。このゲル化
剤や脂肪酸エステル等の添加は、本発明のインキにおい
て好ましい態様である。
【0040】
【実施例】以下に具体例を挙げて、本発明の印刷インキ
用樹脂、その調製方法、さらに本発明の印刷インキ用樹
脂を用いたインキの印刷特性について、より詳細に説明
する。
【0041】(実施例1)反応容器中で、トール油ロジ
ン1500gに、アクリル酸120g、セバシン酸45
g、ペンタエリトリトール226g、ドバノール45
(C14、C15の混合物;三菱化学(株)製)を14.
5g添加・混合し、さらに触媒として酸化マグネシウム
1.5gを添加し、均一化した。この反応容器を、27
5℃に加熱し、その後8時間反応を行い、樹脂を作製し
た。
【0042】得られた樹脂について、軟化点、酸価と、
インキ用樹脂として重要な特性、粘度(アマニ油粘
度)、溶剤への溶解性(0号ソルベント溶解性)、重量
平均分子量を評価した。なお、評価方法は、以下のよう
に行った。結果を、表1に示す。アマニ油粘度(ガード
ナー気泡型粘度):アマニ油と樹脂とを、重量比2:1
の割合で配合し、加熱溶解させたものを、ガードナー気
泡型粘度計により測定した。
【0043】0号ソルベント溶解性:樹脂を0号ソルベ
ントに溶解し、25℃に放置したときに、白濁しない最
小量の樹脂の重量%を測定した。
【0044】重量平均分子量:GPCによるポリスチレ
ン換算の分子量を測定した。
【0045】表1に示すとおり、この樹脂のアマニ油粘
度、0号ソルベント溶解性ともに、従来のフェノール変
性ロジン樹脂:ロジンフェノール樹脂ハリフェノールP
−600(ハリマ化成(株)製)と比較し、遜色のないも
のである。
【0046】ついで得られた樹脂を細かく砕き、この粉
砕された樹脂40重量部、アマニ油20重量部、AF6
号溶剤40重量部を反応容器にいて、窒素ガスを吹き込
みながら昇温し、200℃で攪拌しながら30分保温し
ワニスを得た。得られたワニスを100℃に冷却し、ゲ
ル化剤を添加した。ゲル化剤は、ALCH(川研ファイ
ンケミカルス(株)製)1.4重量部を、AF6号溶剤
1.4重量部で希釈したものを用いた。さらに、再度2
00℃に昇温し、1時間保温しインキ用ゲルワニスを得
た。
【0047】ついで、この得られたゲルワニス60重量
部に紅色顔料としてカーミン6B(東洋インキ製造(株)
製)18重量部を三本ロールミルを用いて分散し、さら
に、タックが8〜9になるように調整するため、AF6
号溶剤とゲルワニスを適量添加して、総量100重量部
とし、ついで6%ナフテン酸マンガン溶液(ハリマ化成
(株)製ドライヤー)0.5重量部を添加した。これを
均一に混合して、印刷用インキを得た。
【0048】表2に、得られたインキの特性評価の結果
を示す。なお、表2には、実施例、比較例の各物性の測
定結果とともに、各物性に対する許容される範囲(目標
値の範囲)についても掲載した。
【0049】表2に示す物性の評価方法は以下のように
行った。
【0050】光沢値:インキ0.3ccをRIテスター
((株)明製作所製)全面ロールでアート紙に展色した
後、24時間経過した時点で、光沢値を60°−60°
光沢計で測定した。
【0051】セット:インキ0.1ccをRIテスター
((株)明製作所製)4カットロールで展色した後、展色
物を切り、それを別のアート紙に貼り合わせる。この試
料について、RIテスターのロールを用いて、インキが
アート紙に付着しなくなるまでの時間(分)を測定し
た。
【0052】通常、この評価では、12〜21分の範囲
が最適とされる。12分より短くなるにつれ、インキの
保存性が悪いことが多くなり、また、21分より長くな
るにつれ、印刷物を重ねたときに、裏写りが発生しやす
い。従って、おおよそ前記12〜21分の範囲から大き
く外れなければ、作業性の低下は引き起こされない。な
お、含まれる溶剤の自然蒸発等を考慮すると、21分を
若干超えるものも最適な範囲と見なせる。
【0053】紙上乾燥性:インキ0.1ccをRIテス
ター((株)明製作所製)4カットロールで硫酸紙に展色
した後、硫酸紙を重ね合わせ、朝陽会式乾燥試験器にセ
ットし0.1rpmの条件で乾燥時間を比較した。
【0054】ここで採用した評価基準は、以下の通りで
ある。 ◎:乾燥時間が、 4時間未満である。最も良好なレベ
ルである。 ○:乾燥時間が、4以上7時間未満である。良好なレベ
ルである。 △:乾燥時間が、7以上10時間未満である。普通のレ
ベルである。 ×:乾燥時間が、10時間以上である。不適なレベルで
ある。
【0055】インキ粘度及び降伏値:L型粘度計(東洋
精機(株)製)により測定した。
【0056】フロー60s:離合社(株)のスプレッドメ
ーターによるインキの広がり(直径)を測定した。
【0057】最大乳化量:リソトロニック乳化試験器
(Novocontrol社製)を用いて、40℃において、25
gのインキに2ml/分の速度で水を添加し、インキが
飽和した時点の水分量を測定した。(乳化試験器の回転
数:1200rpm) 表2に示すとおり、比較例1に示すフェノール変性ロジ
ン(従来樹脂)を用いたインキと比較して、すべての評
価項目について、全く遜色はなく、性能的には同等なイ
ンキが得られたと判断される。なお、タック値、フロー
60s、セットの各項目は、含まれる溶剤量に大きく依
存するもので、表2に示す値は、実用上いずれも好適な
範囲と判断される。特に、本発明のインキ用樹脂自体、
その流動性と溶剤への溶解性が向上しており、インキに
調製した際、前記の特性と関連性を有するフロー60s
などは、含まれる溶剤量により依存したものとなる。流
動性の向上に伴い、含まれる溶剤量を減じて、所望のフ
ロー60sに調整することが可能となる。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】(実施例2)反応容器中で、トール油ロジ
ン1125gに、アクリル酸120g、セバシン酸45
g、石油樹脂T200A(丸善石油化学(株)製)37
5g、ペンタエリトリトール196.9gおよびドバノ
ール23(C12、C13の混合物;三菱化学(株)製)
10.7gを添加・混合し、さらに、触媒として酸化マ
グネシウム1.5gを添加した。この反応容器を、27
5℃に加熱し、その後6時間反応を行い、樹脂を作製し
た。得られた樹脂について、上記実施例1の同じ項目に
ついて、同じ評価方法により、樹脂特性を評価した。表
1に、評価結果を併せて示す。
【0061】表1に示すとおり、この樹脂のアマニ油粘
度、0号ソルベント溶解性ともに、従来のフェノール変
性ロジン樹脂:ロジンフェノール樹脂ハリフェノールP
−600(ハリマ化成(株)製)と比較し、遜色のないも
のである。
【0062】また、この樹脂を用いて、実施例1と全く
同様な調製方法により、インキを調製した。このインキ
の特性についても、実施例1に記載の評価方法で、各項
目の評価を行った。表2に、評価されたインキの特性を
併せて示す。
【0063】表2に示すとおり、比較例1に示すフェノ
ール変性ロジン(従来樹脂)を用いたインキと比較し
て、すべての評価項目について、全く遜色はなく、性能
的には同等なインキが得られたと判断される。
【0064】(比較例1)印刷インキ用樹脂として、従
来のロジンフェノール樹脂:商品名ハリフェノールP−
600(ハリマ化成(株)製)を用いて、実施例1と全く
同様な調製方法により、インキを調製した。このインキ
の特性についても、実施例1に記載の評価方法で、各項
目の評価を行った。表2に、対比のため、評価されたイ
ンキの特性を併せて示す。なお、前記ロジンフェノール
樹脂:ハリフェノールP−600(ハリマ化成(株)製)
に関しても、上記実施例1の同じ項目について、同じ評
価方法により、樹脂特性を評価した。表1に、対比のた
め、その評価結果を併せて示す。
【0065】(比較例2)セバシン酸(1,8−オクタ
ンジカルボン酸)45gに代えて、ノナン酸45gを使
用すること以外は、実施例1に記載の原料組成と同様の
合成操作を行い、樹脂を作製した。この樹脂では、アマ
ニ油粘度がWと低く、この樹脂を用いて、実施例1と同
じ条件でインキ化を試みたが、インキ化が不能であっ
た。すなわち、脂肪族ジカルボン酸に代えて、脂肪族モ
ノカルボン酸を用いているため、インキ化を行うに十分
な樹脂粘度が得られていないものであった。
【0066】
【発明の効果】本発明の印刷インキ用樹脂は、ロジン
類、α,β-不飽和カルボン酸またはその無水物、脂肪族
多塩基酸、多価アルコールおよび一価の高級アルコール
とを加熱反応させて、調製される樹脂であるので、当然
にホルムアルデヒド等、揮発性が高く、化学物質過敏症
を誘起する物質を含まないものである。加えて、加熱等
により、遊離してホルムアルデヒドの発生を起こす可能
性を持つ、合成により導入されたメチロール基をも含ま
ない。従って、いわゆるホルムアルデヒドフリーの樹脂
であり、しかもオフセット印刷に利用されるインキの調
製に適する、十分な樹脂粘度、良好なインキ用溶剤に対
する溶解性および良好なインキ流動性を有する利点を持
つ。オフセット印刷用インキの調製においては、従来か
ら用いられている、ロジンをレゾール樹脂で変性したロ
ジン変性フェノール樹脂と、樹脂としての特性は遜色な
く、ロジン変性フェノール樹脂の代替えが容易に行え
る。すなわち、本発明の印刷インキ用樹脂により、単に
ロジン変性フェノール樹脂と置き換えて調製される印刷
用インキは、従来のロジン変性フェノール樹脂を用いた
インキと比較して、なんらの遜色もないオフセット印刷
特性、作業性を具備するものとなる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09D 193/04 C09D 193/04 Fターム(参考) 4J026 AA08 BA24 BA33 BA34 BA35 FA04 4J029 AA07 AB07 AC02 AE11 BA02 BA03 BA05 BA08 BA10 BD04A BD07A BF09 BF18 CA02 CA04 CA06 FA02 FB02 FC03 FC05 FC08 GA12 GA13 GA14 GA17 GA31 GA41 GA42 GA43 GA44 HB01 HB06 4J038 BA201 BA202 CR012 DD191 DD192 DD211 DD212 DD231 DD232 JA01 JA02 KA06 KA08 MA07 MA09 4J039 AB04 AD18 AE06 BC01 BC02 BE01 BE12 CA07 EA15 EA16 EA17 EA19 EA45 GA02

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ロジン類、α,β−不飽和カルボン酸ま
    たはその無水物、脂肪族多塩基酸、多価アルコールおよ
    び一価の高級アルコールとを加熱反応させて得られる印
    刷インキ用樹脂。
  2. 【請求項2】 ロジン類、α,β−不飽和カルボン酸ま
    たはその無水物および脂肪族多塩基酸中のカルボキシル
    基1当量に対して、前記アルコール成分中の水酸基が
    0.5〜2当量となる割合で添加することを特徴とする
    請求項1に記載の印刷インキ用樹脂。
  3. 【請求項3】 加熱反応時に、原料のロジン類、α,β
    −不飽和カルボン酸またはその無水物、脂肪族多塩基
    酸、多価アルコールおよび一価の高級アルコールの重量
    総和に対して、0.1%〜2%の2価金属化合物を添加
    することを特徴とする請求項1または2記載の印刷イン
    キ用樹脂。
  4. 【請求項4】 加熱反応時に、石油樹脂を存在させるこ
    とを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷イ
    ンキ用樹脂。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の印刷イ
    ンキ用樹脂、乾性油、溶剤及び顔料を必須成分として含
    み、これらを混練して得られる印刷用インキ。
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