JP2001157579A - ヒスタミンデヒドロゲナーゼ及びその製造法 - Google Patents
ヒスタミンデヒドロゲナーゼ及びその製造法Info
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Abstract
器産業などの広い分野で行われるヒスタミンの定量に、
好適に利用可能なヒスタミンデヒドロゲナーゼを得る。 【解決手段】リゾビウム属に属し、ヒスタミンに特異的
に作用するという特徴を有し下記の理化学的性質を有す
るヒスタミンデヒドロゲナーゼ生産能を有する菌株を培
地に培養し、その培養物から該ヒスタミンデヒドロゲナ
ーゼを採取する。また、上記培養に際し、培地中にヒス
タミン又はヒスタミン塩を含有させて、該培養物に該酵
素を著量生産蓄積せしめる。 (理化学的性質) 作用:1モルのヒスタミンを電子受容体の存在下、酸化
的脱アミノ反応により1モルの4―イミダゾリルアセト
アルデヒドと1モルのアンモニアを生成する。基質特異
性:ヒスタミンに特異的に作用する。 至適温度:65〜75℃。 温度による失活の条件:pH8.0、15分処理で、0
〜60℃で安定。 分子量:約150,000(サブユニット約71,00
0×2)
Description
業、食品衛生、医療及び分析機器産業などの広い分野で
行われるヒスタミンの定量に、好適に利用可能なヒスタ
ミンデヒドロゲナーゼ及びその製造法に関する。そして
本発明は、ヒスタミンに対して特異性が高く、カダベリ
ンやプトレッシンといった生体アミンなどには作用(反
応)せず、ヒスタミンのみによく作用し、かつ至適温度
が65〜75℃であるヒスタミンデヒドロゲナーゼに関
する。また本発明は、安定剤を添加しなくとも、酵素を
水性溶液に溶解した後、常温で少なくとも1週間は安定
に保存することができるヒスタミンデヒドロゲナーゼに
関する。また、本発明は前記のヒスタミンデヒドロゲナ
ーゼを効率よく製造する方法に関する。また本発明は、
試料中から妨害物質(不純物)を除去する面倒な、前処
理操作を行うことなく、短時間に簡便な装置を用いて、
開放系で、しかも測定値の信頼性を損なうことなく、極
く微量の(すなわち感度よく)測定が可能なヒスタミン
デヒドロゲナーゼに関する。
植物の殆どすべての組織に存在する。そして、ヒスタミ
ンはそれらの細胞の増殖、核酸及びタンパク質合成、酵
素活性の調節など生物的機能において多岐にわたり関与
していることが明らかにされている。
縮、腺分泌促進など、人体において種々の生理作用をお
こす作用のあることが明らかになっており、特にアレル
ギー反応における伝達物質の役割をしており、ヒスタミ
ンはアレルギー反応の診断及び病態解析の手掛かりとな
ることから重要視されている。
111であり、後述の「化1」に示す化学反応式に記載
の化学構造式を有するアミンである。そして、ヒスタミ
ンは新鮮な魚介類や食肉には殆ど存在しないが、その腐
敗過程に出現し、ヒスチジン脱炭酸酵素活性の強い微生
物などに汚染されることにより、蛋白質組織中の遊離ア
ミノ酸のヒスチジンから後述の「化1」に示す脱炭酸作
用(化学反応式)で生成する。
食中毒の原因となる。食品が腐敗する過程では微生物の
作用により、タンパク質、核酸、多糖類、脂肪など種々
の食品成分が分解され、アンモニア、硫化水素、アミン
類、有機酸類など多種類の腐敗産物が生成される。特に
遊離アミノ酸を多量に含む魚介類では、アミノ酸を前駆
物質とするアミン類が極めて初期に生成されるため、鮮
度低下が顕著でない時期でもこれらアミンを多量に含ん
だものを食してしまう恐れがある。アミンのうち食品衛
生上注意しなければならないのは先に述べたヒスタミン
で、これを含んだ食品を摂取すると、顔面などに熱感、
頭痛、じん麻疹などが現われ、ときには下痢や嘔吐とい
った症状を伴い、アレルギ−様の食中毒を起こすとされ
ている。したがって、ヒスタミンの定量は食品衛生上重
要であるばかりでなく、食品の腐敗の程度を知る手掛か
りとなる。
を酸化分解する酵素としてアミンオキシダーゼとアミン
デヒドロゲナーゼがある。前者の酵素のうちヒスタミン
に作用するものは微生物から高等動物まで広く存在して
いるが、その特異性については広いものが多く、多少な
りとも他のアミン類に作用する。後者の酵素はアミン分
解の活性発現に酸素以外の電子受容体を必要とする脱水
素酵素であるが、このような酵素の報告例は少ない。こ
れまでに報告されているアミンデヒドロゲナーゼとして
シュードモナス属由来(R.R.Eady et a
l. Biochem. J.,106,245〜255
1968)のものが知られているが、この酵素はヒス
タミンに作用するが、他のアミン類にもかなり作用する
(後記、表1「基質と相対活性」における「比較例の
欄」参照)。そのため、ヒスタミンと他のアミン類が混
在する試料からヒスタミンのみを精度よく定量すること
が難しい問題点を有する。
lex IFO 12067の微生物が、ヒスタミン
を特異的に分解し、ヒスタミン以外ではアグマチンに弱
く作用し、その他の芳香族・脂肪族モノアミン、ジアミ
ン及びポリアミンには全く作用しない、最適pH及び
安定pHは、ともに8.5を有し、ヒスタミンに対す
るKm値が0.095mM、分子量が170,000
で分子量84,000の同一サブユニットからなる二量
体である、アミンデヒドロゲナーゼを生産することが知
られている(98、日本農芸化学会、大会講演要旨、3
35頁)。しかし、この酵素の至適温度及び温度安定性
の範囲については知られていない。また、一般に酵素は
水溶液において非常に不安定である。また、常温では速
やかに失活するため、冷蔵又は冷凍保存を余儀なくされ
る。そのため、酵素は、使用の際、その都度、必要量を
水性液体に溶解して用いられており、一旦調製すると短
期間のうちに使用しなければならないという問題点を有
している。したがって、通常、ヒスタミンデヒドロゲナ
ーゼは、安定剤を添加しなければ水性溶液で長期間安定
性を確保することができない欠点を有している。
は、ヒスタミンの酵素的定量法にとって極めて有用
で、ヒスタミンを従来になく簡便な操作で、容易に、
精度良く測定することが可能な、そして、安定剤を
加えることなく、緩衝液に溶解し、水性溶液とした後で
も極めて長期間安定で、高い温度安定性を有するヒス
タミンデヒドロゲナーゼを得ること、また、試料中の
アミン類のうち、ヒスタミンに対して特異性の高い、す
なわちカダベリンやプトレッシンといった生体アミンに
は作用せず、検出目的のヒスタミンのみによく作用し
て、これを定量することが可能な、ヒスタミンデヒドロ
ゲナーゼを得ること、そしてその効率的な製造法を提
供することを目的とする。
達成するために種々検討を重ねた結果、リゾビウム属
に属する菌株が、アミン類のうちカダベリンやプトレッ
シンなどには作用せず、ヒスタミンのみによく作用し、
かつ至適温度が65〜75℃であるヒスタミンデヒドロ
ゲナーゼを生産することを見出した。そしてこの酵素
は、安定化剤を加えることなく、緩衝液に溶解し水性溶
液とした後でも極めて長期間安定な、しかも高い温度
安定性を有すること、さらにこの酵素は、ヒスタミン
の酵素的定量法にとって極めて有用で、ヒスタミンを従
来になく簡便な操作で、容易に、精度良く測定するこ
とが可能であること、そしてこの菌は培養の際培地中
に、ヒスタミン又はヒスタミン塩を含有させるとき、こ
の酵素を著量生産蓄積せしめることができることを見出
し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
ミンに特異的に作用しかつ至適温度が65〜75℃であ
るヒスタミンデヒドロゲナーゼである。
前記ヒスタミンデヒドロゲナーゼ生産能を有する菌株を
培地に培養し、その培養物から該ヒスタミンデヒドロゲ
ナーゼを採取することを特徴をするヒスタミンデヒドロ
ゲナーゼの製造法である。
前記ヒスタミンデヒドロゲナーゼ生産能を有する菌株
を、ヒスタミン又はヒスタミン塩を含有する培地に培養
し、その培養物から該ヒスタミンデヒドロゲナーゼを採
取することを特徴をするヒスタミンデヒドロゲナーゼの
製造法である。
発明の新規な酵素、ヒスタミンデヒドロゲナーゼ(以下
「本酵素」ということもある)の理化学的性質を以下に
示す。
の存在下、酸化的脱アミノ反応により1モルの4―イミ
ダゾリルアセトアルデヒドと1モルのアンモニアを生成
する。この結果より次の反応式で示される反応を触媒す
ることが認められた。
する。すなわち、ヒスタミンに特異的に作用するが、他
のアミンに対しては全く作用しないか、又は弱く作用す
る。本酵素の各種基質に対する相対活性を調べた結果を
表1に示す。
リットン―ロビンソン広域緩衝液(pH2〜11.5)
を用い、30℃で各pHにおける本酵素活性の測定を行
って求めた。酵素活性の測定は、各緩衝液2.4ml、
0.3mM 1−MethoxyPMS 0.1ml、
1mM WST―8 0.3mlを混和し、30℃でプ
レインキュベーションした後、10mM ヒスタミン溶
液 0.1ml及び本酵素液0.1mlを加え、30℃
で反応を行い、60分間に生成した還元型1―Meth
oxy PMSの増加量を測定することにより行った。
すなわち、還元型1―Methoxy PMSと反応し
て生じるWST―8の発色を460nm の吸光度で測
定し、還元型1―Methoxy PMSの増加量を測
定して求めた。図1は本酵素の至適pHを示すグラフで
あって、この図に示す通り本酵素の至適pHは、9.0
〜11.5である。
としてブリットン―ロビンソン広域緩衝液(pH2〜1
1.5)を用い、各pHにおいて、30℃で15分間処
理し、各pHにおける本酵素の残存活性を測定して求め
た。図2は、本酵素の安定pH範囲を示すグラフであっ
て、この図に示す通り、本酵素の安定pH範囲は7.0
〜11.5である。そして、特にpH4以下ではほぼ完
全に失活する。
る同一の基質・酵素混合液を用い、種々の温度(30〜
80℃)にて本酵素の酵素活性の測定を行った。すなわ
ち、50mMリン酸緩衝液(pH8.0)2.4ml、
0.3mM 1―Methoxy PMS水溶液0.1
ml、1mM WST―8 0.3ml及び10mM
ヒスタミン溶液0.1mlを混合し、所定温度でプレイ
ンキュベーションした後、0.1mlの本酵素液を加
え、所定温度で反応させ、60分間に生成した還元型1
―Methoxy PMSの増加量を測定することによ
り本酵素の活性測定を行った。図3は、本酵素の作用適
温の範囲を示すグラフであって、この図に示す通り、本
酵素の作用適温の範囲は、65〜75℃である。
測定法における基質・酵素混合液を用い、種々の温度に
て15分間処理(pH8.0)し、本酵素の残存活性を
測定して求めた。図4は、本酵素の熱安定性を示すグラ
フであって、この図に示す通り、本酵素は60℃近辺ま
で安定。それ以上では、急激に失活する。
elG3000SWカラム(東ソー社製)を用いた高速
液体グロマトグラフィーにより測定した。その結果、分
子量は約150,000と推定された。また、SDS−
ポリアクリルアミド電気泳動法により、本酵素のサブユ
ニットは約71,000と推定された。
ットからKm値は0.067mM(pH8.0)(ヒス
タミンに対して)である。
の方法で行い、1分間に1μmolの4―イミダゾリル
アセトアルデヒドを生成する酵素量を1単位(1U)と
する。50mMリン酸緩衝液(pH8.0)2.4m
l、0.3mM 1−Methoxy PMS水溶液
0.1ml、1mM WST―8水溶液 0.3m
l、10mM ヒスタミン溶液 0.1ml及び本酵素
液0.1mlを加え、30℃で30〜60分間反応を行
った。なお、本酵素の活性は本酵素反応において生成し
た還元型1−MethoxyPMSと反応して生じるW
ST−8の発色を460nmの吸光度にて測定した。
従って行うことができ、例えば硫安塩析法、有機溶媒沈
澱法、イオン交換体などによる吸着処理法、イオン交換
クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ
過クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフ
ィニティークロマトグラフィー、電気泳動法などを単独
又は適宜組み合わせて用いられる。
主要な理化学的性質を有するものであればよく、その他
の理化学的性質が多少の相違を示すものであっても、本
発明の酵素として包含される。本酵素は、魚肉の鮮度測
定などをする場合に、該測定対象の魚肉中のヒスタミン
の定量や、人の血清や尿などの体液中に含まれる微量の
ヒスタミンの定量に極めて有用である。そして本酵素を
用いることにより、測定対象の魚肉あるいは体液中に含
まれる種々のアミンのうち、検出する必要のないカダベ
リンやプトレッシンなどには作用せず、目的とするヒス
タミンのみによく作用して、これを精度よく定量するこ
とが可能となる。また、カダベリンやプトレッシンは、
魚肉が腐敗する際、ヒスタミンとほぼ同時に生成するア
ミンであり、従来のヒスタミンの酵素的定量法ではこれ
らを何らかの方法で分離除去する必要があったのに対
し、本酵素を用いるヒスタミンの定量法では、そのすぐ
れた特性を有するため、面倒で時間を要する分離操作は
全く不要となる利点を有する。
タミンデヒドロゲナーゼの製造法について説明する。本
発明に使用される微生物としては、本酵素生産能を有す
る菌株であればいかなる菌でもよく、またこの菌の変種
または変異株でもよい。そして、この微生物の具体例と
しては、リゾビウム属に属する任意の微生物が挙げられ
る。例えばリゾビウム・エスピー(Rhizobium
sp.)4−9(以下、「本菌株」ということがあ
る)が挙げられ、該菌株の変種又は変異株も用いること
ができる。このリゾビウム・エスピー 4−9は、本発
明者らが千葉県内の土壌より分離して得た菌株であり、
その菌学的性質は以下に示すとおりである。なお、菌学
的性質の同定のための実験は、主として長谷川武治編
著、「微生物の分類と同定」、東京大学出版会(197
5年)によって行った。また、分類同定の基準として
「バージーズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ
・バクテリオロジー(Bergey’s Manual
of Determinative Bacteri
ology)」、第8版(1974年)を参考にした。
また、16SrDNAの塩基配列に基づく系統解析に
は、日本DNAデータバンクのDNAデータベースを用
いた。
m sp.)4−9の菌学的性質 (A)形態的性質 顕微鏡観察[ベンネット培地(pH8.0)、30℃、
24〜48時間培養] a)細胞の形及び大きさ:0.5〜0.6×1.2〜
2.3μmの直状桿菌である。 b)細胞の多形性の有無:無し。 c)運動性の有無:有り。2〜4の鞭毛が認められる。 d)胞子の有無:無し。 e)グラム染色性:陰性。 f)抗酸性:陰性。
で、直径1.5〜2.5mmの円形コロニーを形成す
る。コロニーは白っぽいクリーム色を呈し、表面は中央
がやや隆起し、光沢があり、粘性物質を生成する。色素
の生産は観察されない。 b)ベンネット液体培養:30℃、24時間の静置培養
では、わずかに濁り、底に糸状の生育が見られる。振盪
培養では、培地全体が混濁する。 c)肉汁ゼラチン穿刺培養:穿刺孔に沿って生育する
が、ゼラチンは液化しない。 d)リトマスミルク培養:無変化である。
ウム塩は利用しない。 j)色素の生成:生成しない。 k)ウレアーゼ:陽性。 l)オキシダーゼ:陰性。 m)カタラーゼ:弱陽性。 n)生育の範囲:温度4〜40℃、pH5.5〜9.0。 o)酸素に対する態度:好気的。 p)O―Fテスト(Hugh−Leifson法):酸
化。 q)エスクリンの分解:分解する。 r)デオキシリボヌクレアーゼ:陰性。 s)チロシン分解:分解しない。 t)カゼイン分解:分解しない。 u)フェニルアラニンデアミナーゼ:陰性。 v)トリプトファンデアミナーゼ:陰性。 w)糖類からの酸及びガスの生成:表2のとおり、D―
メレジトース以外の糖類からの酸生成が認められる。ガ
スの生成は認められない。
ることから、リゾビウム属に属するものと判定された。
また、本菌の分類学的位置を推定するために、16Sr
DNAの塩基配列に基づく系統解析を行ったところ、本
菌株はリゾビウム属の細菌であることが確認された。ま
た、本菌株は、Rhizobium legumino
sarum,Rhizobium etli,Rhiz
obium tropici,Rhizobium h
ainanensis,Rhizobium mong
olense,Rhizobium gallicum
と同一のクラスターに位置していた。しかし、このクラ
スターの中で本菌株は単独の系統枝を形成しており、1
6SrDNAの塩基配列からは近縁種の推定はできなか
った。また、本菌株の性状試験の結果をこれらリゾビウ
ム属に属する細菌と比較したところ、本菌株は、いずれ
の種とも性状が異なっていた。このような理由から、本
菌株をリゾビウム・エスピー(Rhizobium s
p.)4−9と命名した。なお、本菌株は工業技術院生
命工学技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番)に、
平成10年(1998)9月14日付けでFERM P
−16992(FERM BP−6861)として寄託
されている。
本酵素生産のための微生物の種類、培養法及びその条件
には、本発明の目的を特に阻害しない限りにおいて制約
されない。すなわち、本酵素生産能を有する微生物、例
えばリゾビウム属に属し本酵素生産能を有する微生物の
生育及び本酵素の生産が可能な環境を与えるいかなる培
養方法及びいかなる培養条件が採用され得る。培養法と
しては、通常の固体培養でもよいが、液体培養法が好ま
しい。そしてその培地としては、炭素源、窒素源、無機
物、その他の栄養素を適度に含有するものであれば、合
成培地、天然培地又は半合成培地のいずれでも使用でき
る。
物であればよく、例えばマルトース、グルコース、グリ
セリン、フラクトースなどが使用される。また窒素源と
しては、本酵素は、ヒスタミンにより誘導生成されるた
めヒスタミン又はヒスタミン塩が望ましいが、本酵素を
発現する窒素源であれば任意のものが利用できる。例え
ば酵母エキス、ポリペプトン、肉エキス、コーンスチー
プリカー、大豆粉、アミノ酸、硫安、硝酸アンモニウム
などが使用される。
ミン又はヒスタミン塩を添加すると、酵素の生産蓄積量
を著しく増大できる。このヒスタミン塩としてはヒスタ
ミン塩酸塩及びヒスタミンリン酸塩などが好ましい。
ム、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウムなどの種
々の塩類が好ましい。
ン類などが使用できる。これらの栄養源はそれぞれ単独
で用いることもでき、また組み合わせて用いることもで
きる。なお、このほか必要により消泡剤などを添加して
もよい。
本酵素を製造するには、通気撹拌深部培養又は振盪培養
などにより好気的に培養するのが好ましい。その際に、
培地の初発pHを6.0〜7.0程度に調整し、25〜
37℃、好ましくは30℃前後の温度で24〜96時
間、好ましくは48時間前後培養する。かかる培養によ
り、培養物中に本酵素が生成し、蓄積される。
常の酵素採取手段を用いることができる。本酵素は、主
に菌体内に存在する酵素であるため、培養物から、例え
ば濾過、遠心分離などの操作により菌体を分離し、この
菌体から本酵素を採取するのが好ましい。この場合、菌
体をそのまま用いることができるが、例えば超音波破砕
機、フレンチプレス、ダイナミルなどの種々の機械的破
砕手段を用いて菌体を破壊する方法、リゾチームなどの
細胞壁溶解酵素を用いて菌体細胞壁を溶解する方法、ト
リトンX−100などの界面活性剤を用いて菌体から酵
素を抽出する方法などを単独又は組み合わせて採用する
ことができる。次いで、これを濾過又は遠心分離などに
よって不溶物を除き、本酵素の粗酵素液を得る。
素を単離精製するには、前記精製方法が適用できる。本
酵素の単離、精製は常法にしたがって行うことができ、
例えば硫安塩析法、有機溶媒沈澱法、イオン交換体など
による吸着処理法、イオン交換クロマトグラフィー、疎
水クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、
吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラ
フィー、電気泳動法などを単独又は適宜組み合わせて用
いられる。
ーゼを用いたヒスタミンの定量法について説明する。
の好適な具体例としては、(a)本発明のヒスタミンデ
ヒドロゲナーゼ、(b)電子キャリアーおよび(c)還
元型電子キャリアー発色剤を含むものが挙げられる。
3〜0.3U/mlの本発明のヒスタミンデヒドロゲナ
ーゼおよび10〜200mMの緩衝剤を含有するpH8
〜10の系、0.03〜3.0mMの電子キャリアー
(例えば1−MethoxyPMS)および10〜20
0mMの緩衝剤を含有するpH8〜10の系および
0.1〜10mMのWST−8を含有する10〜200
mMの緩衝剤を含有するpH8〜10の系の組合せが挙
げられる。
例えばリン酸カリウムなどのリン酸塩、トリス−塩酸
塩、酢酸塩などが挙げられる。
じて慣用の種々の添加成分、例えば溶解補助剤、安定化
剤などを添加することもできる。
(トリトンX−100、ブリッJ35、ツイーン80、
コール酸など)、還元剤(メルカプトエタノール、ジチ
オスレイトール、L−システインなど)、牛血清アルブ
ミン、糖類(グリセリン、乳糖、ショ糖など)などが挙
げられる。
な段階で添加し、1種または2種以上を組合せて用いる
こともできる。このような試薬(添加剤)は、乾燥物ま
たは溶解したものを用いてもよいし、薄膜状の担体、例
えばシート含浸性の紙などに含浸させてもよい。また、
使用する本発明のヒスタミンデヒドロゲナーゼは、常法
により固定化させて反復使用してもよい。上述した試薬
は、各種の試料中に含有されるヒスタミンを簡単な操作
で精度よく定量することができる。
タミン含有試料に本発明のヒスタミンデヒドロゲナーゼ
を添加作用させて、生成物を測定することにより行うも
のである。
(またはその塩でもよい)を含有するものであれば、如
何なるものでもよく、例えば液状または固形状の食品、
尿や血清などの生体内物質や生体組織などが挙げられ
る。
緩衝液などで抽出、濾過した後、ヒスタミンが適当な濃
度となるように、濃縮して、または水、アルコール、緩
衝液などで希釈して定量に供してもよい。
調整でもよいが、適当なpH調整剤、例えば塩酸、硫
酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど酸やアルカ
リを用いてpH8〜10に調整することが望ましい。
酵素の添加量は、該試料中に含まれるヒスタミン含有
量、酵素作用条件などにより適宜選択されるが、通常本
酵素を終濃度0.03〜3U/mlになるように添加す
る。
生成物を測定する手段としては、任意の手段を採用する
ことができるが、ヒスタミン含有試料に本酵素および電
子キャリアーを作用させ、生成する還元型電子キャリア
ー、4−イミダゾリルアセトアルデヒドまたはアンモニ
アなどを測定する方法が好ましい。
は、20〜70℃、好ましくは30〜50℃である。こ
のときの作用時間は、ヒスタミン含有試料の該ヒスタミ
ンを分解するのに十分な時間であればよく、1〜60
分、好ましくは2〜20分である。
子キャリアー、4−イミダゾリルアセトアルデヒド、ア
ンモニアなどを定量する方法は、特に制限されず、公知
の測定手段を用いて行えばよい。
スタミンの検量線を用いて、試料中のヒスタミンの定量
を行う。
は、例えばヒスタミン含有試料にフェナジンメトサルフ
ェートやメルドラブルーなどのテトラゾリウム系の電子
キャリアーおよびMTT、Nitro−TB、WST−
8などのテトラゾリウム系の還元型発色試薬の存在下、
ヒスタミンデヒドロゲナーゼを添加して酵素作用を行わ
せ、生成する色素を定量する。
の定量方法としては、例えば4−イミダゾリルアセトア
ルデヒドにアルデヒドデヒドロゲナーゼを作用させ、こ
の際の共役作用、すなわち、酸化型ニコチンアミドアデ
ニンジヌクレオチド(NAD +)→還元型ニコチンアミ
ドアデニンジヌクレオチド(NADH)で生成したNA
DH量を340nmにおける吸光度増加にて測定する方
法などが挙げられる。
ヒドリン作用法、インドフェノールブルー吸光光度法、
イオン電極法など既知の種々の方法を利用することがで
きる。
法の好適な一例を示す。ヒスタミンを含有する試料に、
0.03〜0.3U/mlの本発明のヒスタミンデヒド
ロゲナーゼ、電子キャリアー及び緩衝剤10〜200m
Mを加え、pH8〜10、温度30〜50℃で酵素作用
させる。
るに十分な時間であればよく、1〜60分間、好ましく
は2〜20分間である。
4―イミダゾリルアセトアルデヒド、アンモニアなどの
含有量を公知の方法によって定量し、予め同方法で定量
して作成したヒスタミンの検量線を用いて、試料中のヒ
スタミンの定量値を算出する。
に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により限
定されるものではない。
0.1%(W/V)、酵母エキス0.2%(W/V)、
ヒスタミン二塩酸塩0.1%(W/V)、K2HPO4
0.05%(W/V)及び水道水からなる培地(pH
6.75)100mlを坂口コルベンに入れて、120
℃で15分間殺菌し、培地を調製した。これを2本分調
製した。それぞれにリゾビウム・エスピー (Rhiz
obium sp.)4−9(FERM BP−686
1)の保存スラントより1白金耳接種し、それぞれ30
℃で約72時間、振盪数140rpmで振盪培養して種
培養液を調製した。
た培地20リットル(L)を30L容ジャーファーメン
ターへ入れ、これに前記の種培養液約200ml(坂口
コルベン2本分)を無菌的に接種し、30℃、回転数2
00rpm、通気量10L/minの条件で48時間通
気撹拌培養した。培養終了後、培養液20Lをマイクロ
ーザ(旭化成工業社製、限外濾過膜、登録商標名)を用
いて菌体を集め、50mMリン酸緩衝液(pH8.0)
にて菌体を洗浄した後、菌体を同緩衝液約1Lに懸濁し
た。
なった。 ステップ1: (粗酵素液の調製):前記菌体懸濁液に、トリトンX−
100、リゾチウム、EDTAをそれぞれ0.5%、
0.1%(W/V)、20mM添加混合し、室温で一晩
放置した。その後遠心分離(8000rpm、60mi
n)して、上清を採取し、粗酵素液を調製した。
和で沈澱するタンパクを遠心分離(8000rpm、6
0min)によって回収した。得られた沈殿物を13%
(W/V)硫安を含んだ20mMのリン酸緩衝液(pH
7.0)で溶解した。
の酵素溶解液をブチルトヨパール650カラム(2.5
×30cm)に吸着させたのち、13%(W/V)硫安
を含んだ20mMのリン酸緩衝液(pH7.0)にて洗
浄し、次に、13%(W/V)硫安を含んだ20mMの
リン酸緩衝液(pH7.0)と20mMのリン酸緩衝液
(pH8.5)を用い、直線濃度勾配法により溶出さ
せ、約7〜9%(W/V)硫安を含有するリン酸緩衝液
にて溶出された活性画分を集めた。これに60%飽和と
なるように硫安を添加し、低温で一晩放置し、その後遠
心分離(8000rpm、60min)により得られた
沈殿物を20mMトリス―塩酸緩衝液(pH8.0)で
溶解した。この酵素溶解液を透析膜を用いて前記緩衝液
に対して透析した。
をDEAE−セファセルの充填したカラム(2.5×3
0cm )の該セファセルに吸着させたのち、20mM
トリス―塩酸緩衝液(pH8.0)にて洗浄し、次に、
0M〜1.0M塩化ナトリウムを含有するリン酸緩衝液
にて直線濃度勾配法により溶出させ、約0.4M塩化ナ
トリウムを含有するリン酸緩衝液にて溶出された活性画
分を集めた。
た該活性画分は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気
泳動によりほぼ均一と判断され、精製標品であることが
確認された。この標品は、全タンパク量が1.06m
g、全活性が6.64U、比活性が6.26U/mgで
あった。
H9の50mM トリス−塩酸緩衝液に上記実施例1で
得られたヒスタミンデヒドロゲナーゼを0.03U/m
lの濃度となるように添加溶解し、25℃で保存し、4
日後及び7日後に、活性を測定した。初発(0日目)の
活性を100%としたとき、4日後の残存活性は88
%、7日後のそれは80%であって、非常に安定である
ことが判明した。
ダベリン及びプトレッシンには作用しない、実施例1で
得られた本酵素を作用させ、生成する還元型電子キャリ
アーを測定するヒスタミンの定量法において、使用する
ヒスタミン定量用試薬の調製例) 精製水に以下の3の成分をそれぞれ以下の濃度又は単位
で溶解し、3つの成分からなるヒスタミン定量用試薬を
調製した。
カダベリン及びプトレッシンには作用しない、実施例1
で得られた本酵素を作用させ、生成する還元型電子キャ
リアーを測定するヒスタミンの定量法)参考例1で示し
た表3記載の3つの成分を測定直前に混合することによ
り、ヒスタミン定量用試薬(反応試薬液)を調製した。
このヒスタミン定量用試薬を用いて既知濃度のヒスタミ
ン定量を行った。先ず反応試薬液2.8mlに各濃度の
ヒスタミン標準溶液を0.1ml加え、37℃で5分間
保温した。これを96穴のマイクロプレートのウェルに
200μlずつ分注し、その後ヒスタミンデヒドロゲナ
ーゼ(0.03U/ml)を10μl添加し、37℃で
30分間作用させた。そして作用開始後、経時的にプレ
ートリーダーにより、490nmにおける吸光度を測定
し、該吸光度増加量(△OD)の値を求めた。この値
(Y)とヒスタミン含有量(X)との関係から検量線を
作成した。その検量線を図5に示す。該検量線の式は、
y=0.4575x−0.0016(r=0.999)
となる。これから、△ODとヒスタミン含有量との間に
は直線的な相関があって、検量線として有効であること
がわかり、しかも試料に含まれるヒスタミン濃度が0.
05mM〜0.5mM(即ち約5〜50ppm)の極微
量のヒスタミンを迅速かつ高感度に定量できることが判
る。
量) 1)試料の調製 サバ水煮缶詰の該サバ肉を5g定量し50mMトリス−
塩酸緩衝液(pH8.5)を35ml加え、ストマッカ
ーにて試料を細かくした後、電子レンジにて加熱させ
た。放冷後、同緩衝液にて50mlにメスアップし、こ
れをNo.2の濾紙及び0.45μmのディスミックフ
ィルターで濾過したものを分析試料とした。
量法 ヒスタミンの定量用試薬の調製及び定量法については参
考例1及び応用例1と同様に行った。分析試料のヒスタ
ミン量については分析して得られた各△ODを用い応用
例1で求めた検量線の式から算出した。
度よく定量できると言われるHPLC法(従来法)にて
定量した。
べた。その結果を図6に示す。図6の結果から応用例2
の結果(本酵素を用いたヒシタミンの定量法)と従来法
との間には、直線的な相関があり、相関を示す式はy=
1.0045x−4.6656(r=0.998)とな
る。そして本酵素を用いたヒシタミンの定量法は、従来
のHPLC法と非常に良好な相関性を示すことが判明し
た。このことから、本酵素を用いたヒスタミンの定量法
は、測定値の信頼性が高いことが判る。また、試料中よ
り面倒な妨害物質(不純物)を除去する前処理操作の要
らない、定量に要する時間が短時間である、極めて高感
度で定量することができる、簡便な装置を用いて測定す
ることができる、作用セルは液密的条件下で操作する必
要がない(すなわち開放系で操作することが可能であ
る)ことが判る。
ンも含有する試料に「ヒスタミンには作用するが、カダ
ベリン及びプトレッシンには作用しない、実施例1で得
られた本酵素」を作用させ、生成する還元型電子キャリ
アーを測定するヒスタミンの定量法)上記応用例1のヒ
スタミンの定量法において、「各濃度のヒスタミン標準
溶液」に代えて、「各濃度のヒスタミン標準溶液に該ヒ
スタミンと同濃度のカダベリン及びプトレッシンを含有
させた試料液」を用いる以外は、全く同様にして、ヒス
タミンの定量を行った。また、比較のため、上記と同一
の試料液についてHPLC法(従来法)によりヒスタミ
ンを定量した。これらの測定値の相関関係を調べたとこ
ろ、図6と全く同じ結果が得られた。即ち、「各濃度の
ヒスタミン標準溶液に該ヒスタミンと同濃度のカダベリ
ン及びプトレッシンを含有させた試料液」を用いた場合
も、ヒスタミンの標準液を用いた場合と比べ、反応液の
発色量に差が全くみられなかった。従って本酵素を用い
たヒスタミンの定量法は、他のアミン類には影響されず
にヒスタミンだけを効率よく定量できることが判る。特
にカダベリン及びプトレッシンは、魚肉が腐敗する際、
ヒスタミンとほぼ同時に生成するアミンであり、従来法
ではこれらを何らかの方法で、分画(分離)除去する必
要があったのに対し、本発明では、ヒスタミンには作用
するが、カダベリン及びプトレッシンには作用しない基
質特異性を有する酵素を用いることにより、面倒で時間
を要する分離操作は全く行うことなくヒスタミンの定量
を行うことができることが判る。
異性の高い、すなわち試料中のアミン類のうち、カダベ
リンやプトレッシンといった生体アミンなどには反応せ
ず、検出目的のヒスタミンのみによく作用(反応)し
て、これを選択的に定量することが可能な、ヒスタミン
デヒドロゲナーゼを得ることができる。また 本発明
は、安定剤を添加しなくとも、水性溶液に溶解した後、
常温で少なくとも1週間は安定に保存することができる
ヒスタミンデヒドロゲナーゼを得ることができる。ま
た、試料中より面倒な妨害物質(不純物)を除去する前
処理操作を行うことなく、短時間に、極微量の(すなわ
ち感度よく)ヒスタミンを、簡便な装置を用いて、開放
系で、しかも測定値の信頼性を損なうことなく、測定す
ることが可能なヒスタミンデヒドロゲナーゼを得ること
ができる。また、本発明はこのような特徴を有するヒス
タミンデヒドロゲナーゼを、効率よく得ることができ
る。
る検量線を示すグラフ。
量を、本酵素を用いたヒスタミンの定量法と従来のHP
LC法とで分析したときの相関関係を示すグラフ。
Claims (4)
- 【請求項1】ヒスタミンに特異的に作用しかつ至適温度
が65〜75℃であるヒスタミンデヒドロゲナーゼ。 - 【請求項2】以下の理化学的性質を有することを特徴と
する請求項1に記載のヒスタミンデヒドロゲナーゼ。作
用:1モルのヒスタミンを電子受容体の存在下、酸化的
脱アミノ反応により1モルの4―イミダゾリルアセトア
ルデヒドと1モルのアンモニアを生成する。 基質特異性:ヒスタミンに特異的に作用する。 至適温度:65〜75℃。 温度による失活の条件:pH8.0、15分処理で、0
〜60℃で安定。 分子量:約150,000(サブユニット約71,00
0×2)。 - 【請求項3】リゾビウム属に属し、請求項1記載のヒス
タミンデヒドロゲナーゼ生産能を有する菌株を培地に培
養し、その培養物から該ヒスタミンデヒドロゲナーゼを
採取することを特徴とするヒスタミンデヒドロゲナーゼ
の製造法。 - 【請求項4】リゾビウム属に属し、請求項1記載のヒス
タミンデヒドロゲナーゼ生産能を有する菌株を、ヒスタ
ミン又はヒスタミン塩を含有する培地に培養し、その培
養物から該ヒスタミンデヒドロゲナーゼを採取すること
を特徴とするヒスタミンデヒドロゲナーゼの製造法。
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- 1999-09-24 JP JP26997499A patent/JP3782621B2/ja not_active Expired - Lifetime
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