JP3782621B2 - ヒスタミンデヒドロゲナーゼ及びその製造法 - Google Patents

ヒスタミンデヒドロゲナーゼ及びその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品産業、水産業、食品衛生、医療及び分析機器産業などの広い分野で行われるヒスタミンの定量に、好適に利用可能なヒスタミンデヒドロゲナーゼ及びその製造法に関する。
そして本発明は、ヒスタミンに対して特異性が高く、カダベリンやプトレッシンといった生体アミンなどには作用(反応)せず、ヒスタミンのみによく作用し、かつ至適温度が65〜75℃であるヒスタミンデヒドロゲナーゼに関する。
また本発明は、安定剤を添加しなくとも、酵素を水性溶液に溶解した後、常温で少なくとも1週間は安定に保存することができるヒスタミンデヒドロゲナーゼに関する。
また、本発明は前記のヒスタミンデヒドロゲナーゼを効率よく製造する方法に関する。
また本発明は、試料中から妨害物質(不純物)を除去する面倒な、前処理操作を行うことなく、短時間に簡便な装置を用いて、開放系で、しかも測定値の信頼性を損なうことなく、極く微量の(すなわち感度よく)測定が可能なヒスタミンデヒドロゲナーゼに関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒスタミンは、細菌ばかりでなく動物、植物の殆どすべての組織に存在する。
そして、ヒスタミンはそれらの細胞の増殖、核酸及びタンパク質合成、酵素活性の調節など生物的機能において多岐にわたり関与していることが明らかにされている。
【0003】
また、ヒスタミンは血圧降下、平滑筋収縮、腺分泌促進など、人体において種々の生理作用をおこす作用のあることが明らかになっており、特にアレルギー反応における伝達物質の役割をしており、ヒスタミンはアレルギー反応の診断及び病態解析の手掛かりとなることから重要視されている。
【0004】
ヒスタミンは、分子式C593、分子量111であり、後述の「化1」に示す化学反応式に記載の化学構造式を有するアミンである。
そして、ヒスタミンは新鮮な魚介類や食肉には殆ど存在しないが、その腐敗過程に出現し、ヒスチジン脱炭酸酵素活性の強い微生物などに汚染されることにより、蛋白質組織中の遊離アミノ酸のヒスチジンから後述の「化1」に示す脱炭酸作用(化学反応式)で生成する。
【0005】
さらにまた、ヒスタミンは時にアレルギー食中毒の原因となる。食品が腐敗する過程では微生物の作用により、タンパク質、核酸、多糖類、脂肪など種々の食品成分が分解され、アンモニア、硫化水素、アミン類、有機酸類など多種類の腐敗産物が生成される。
特に遊離アミノ酸を多量に含む魚介類では、アミノ酸を前駆物質とするアミン類が極めて初期に生成されるため、鮮度低下が顕著でない時期でもこれらアミンを多量に含んだものを食してしまう恐れがある。
アミンのうち食品衛生上注意しなければならないのは先に述べたヒスタミンで、これを含んだ食品を摂取すると、顔面などに熱感、頭痛、じん麻疹などが現われ、ときには下痢や嘔吐といった症状を伴い、アレルギ−様の食中毒を起こすとされている。したがって、ヒスタミンの定量は食品衛生上重要であるばかりでなく、食品の腐敗の程度を知る手掛かりとなる。
【0006】
従来、ヒスタミンをはじめとするアミン類を酸化分解する酵素としてアミンオキシダーゼとアミンデヒドロゲナーゼがある。
前者の酵素のうちヒスタミンに作用するものは微生物から高等動物まで広く存在しているが、その特異性については広いものが多く、多少なりとも他のアミン類に作用する。後者の酵素はアミン分解の活性発現に酸素以外の電子受容体を必要とする脱水素酵素であるが、このような酵素の報告例は少ない。
これまでに報告されているアミンデヒドロゲナーゼとしてシュードモナス属由来(R.R.Eady et al. Biochem. J.,106,245〜255 1968)のものが知られているが、この酵素はヒスタミンに作用するが、他のアミン類にもかなり作用する(後記、表1「基質と相対活性」における「比較例の欄」参照)。そのため、ヒスタミンと他のアミン類が混在する試料からヒスタミンのみを精度よく定量することが難しい問題点を有する。
【0007】
またNocardioides simplex IFO 12067の微生物が、▲1▼ヒスタミンを特異的に分解し、ヒスタミン以外ではアグマチンに弱く作用し、その他の芳香族・脂肪族モノアミン、ジアミン及びポリアミンには全く作用しない、▲2▼最適pH及び安定pHは、ともに8.5を有し、▲3▼ヒスタミンに対するKm値が0.095mM、▲4▼分子量が170,000で分子量84,000の同一サブユニットからなる二量体である、アミンデヒドロゲナーゼを生産することが知られている(98、日本農芸化学会、大会講演要旨、335頁)。
しかし、この酵素の至適温度及び温度安定性の範囲については知られていない。
また、一般に酵素は水溶液において非常に不安定である。
また、常温では速やかに失活するため、冷蔵又は冷凍保存を余儀なくされる。
そのため、酵素は、使用の際、その都度、必要量を水性液体に溶解して用いられており、一旦調製すると短期間のうちに使用しなければならないという問題点を有している。
したがって、通常、ヒスタミンデヒドロゲナーゼは、安定剤を添加しなければ水性溶液で長期間安定性を確保することができない欠点を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、▲1▼ヒスタミンの酵素的定量法にとって極めて有用で、▲2▼ヒスタミンを従来になく簡便な操作で、容易に、▲3▼精度良く測定することが可能な、▲4▼そして、安定剤を加えることなく、緩衝液に溶解し、水性溶液とした後でも極めて長期間安定で、▲5▼高い温度安定性を有するヒスタミンデヒドロゲナーゼを得ること、▲6▼また、試料中のアミン類のうち、ヒスタミンに対して特異性の高い、すなわちカダベリンやプトレッシンといった生体アミンには作用せず、検出目的のヒスタミンのみによく作用して、これを定量することが可能な、ヒスタミンデヒドロゲナーゼを得ること、▲7▼そしてその効率的な製造法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記目的を達成するために種々検討を重ねた結果、▲1▼リゾビウム属に属する菌株が、アミン類のうちカダベリンやプトレッシンなどには作用せず、ヒスタミンのみによく作用し、かつ至適温度が65〜75℃であるヒスタミンデヒドロゲナーゼを生産することを見出した。そして▲2▼この酵素は、安定化剤を加えることなく、緩衝液に溶解し水性溶液とした後でも極めて長期間安定な、しかも▲3▼高い温度安定性を有すること、さらに▲4▼この酵素は、ヒスタミンの酵素的定量法にとって極めて有用で、ヒスタミンを従来になく簡便な操作で、容易に、▲5▼精度良く測定することが可能であること、▲6▼そしてこの菌は培養の際培地中に、ヒスタミン又はヒスタミン塩を含有させるとき、この酵素を著量生産蓄積せしめることができることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明は、ヒスタミンに特異的に作用しかつ至適温度が65〜75℃であるヒスタミンデヒドロゲナーゼである。
【0011】
また第2の発明は、リゾビウム属に属し、前記ヒスタミンデヒドロゲナーゼ生産能を有する菌株を培地に培養し、その培養物から該ヒスタミンデヒドロゲナーゼを採取することを特徴をするヒスタミンデヒドロゲナーゼの製造法である。
【0012】
また第3の発明は、リゾビウム属に属し、前記ヒスタミンデヒドロゲナーゼ生産能を有する菌株を、ヒスタミン又はヒスタミン塩を含有する培地に培養し、その培養物から該ヒスタミンデヒドロゲナーゼを採取することを特徴をするヒスタミンデヒドロゲナーゼの製造法である。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の新規な酵素、ヒスタミンデヒドロゲナーゼ(以下「本酵素」ということもある)の理化学的性質を以下に示す。
【0014】
(作用)
1モルのヒスタミンを電子受容体の存在下、酸化的脱アミノ反応により1モルの4―イミダゾリルアセトアルデヒドと1モルのアンモニアを生成する。
この結果より次の反応式で示される反応を触媒することが認められた。
【0015】
【化1】
Figure 0003782621
【0016】
(基質特異性)
ヒスタミンに特異的に作用する。
すなわち、ヒスタミンに特異的に作用するが、他のアミンに対しては全く作用しないか、又は弱く作用する。
本酵素の各種基質に対する相対活性を調べた結果を表1に示す。
【0017】
Figure 0003782621
【0018】
(至適pH)
至適pHは、緩衝液としてブリットン―ロビンソン広域緩衝液(pH2〜11.5)を用い、30℃で各pHにおける本酵素活性の測定を行って求めた。
酵素活性の測定は、各緩衝液2.4ml、0.3mM 1−MethoxyPMS 0.1ml、1mM WST―8 0.3mlを混和し、30℃でプレインキュベーションした後、10mM ヒスタミン溶液 0.1ml及び本酵素液0.1mlを加え、30℃で反応を行い、60分間に生成した還元型1―Methoxy PMSの増加量を測定することにより行った。
すなわち、還元型1―Methoxy PMSと反応して生じるWST―8の発色を460nm の吸光度で測定し、還元型1―Methoxy PMSの増加量を測定して求めた。
図1は本酵素の至適pHを示すグラフであって、この図に示す通り本酵素の至適pHは、9.0〜11.5である。
【0019】
(安定pH範囲)
安定pH範囲は、緩衝液としてブリットン―ロビンソン広域緩衝液(pH2〜11.5)を用い、各pHにおいて、30℃で15分間処理し、各pHにおける本酵素の残存活性を測定して求めた。
図2は、本酵素の安定pH範囲を示すグラフであって、この図に示す通り、本酵素の安定pH範囲は7.0〜11.5である。
そして、特にpH4以下ではほぼ完全に失活する。
【0020】
(至適温度)
後述する力価の測定法における同一の基質・酵素混合液を用い、種々の温度(30〜80℃)にて本酵素の酵素活性の測定を行った。
すなわち、50mMリン酸緩衝液(pH8.0)2.4ml、0.3mM 1―Methoxy PMS水溶液0.1ml、1mM WST―8 0.3ml及び10mM ヒスタミン溶液0.1mlを混合し、所定温度でプレインキュベーションした後、0.1mlの本酵素液を加え、所定温度で反応させ、60分間に生成した還元型1―Methoxy PMSの増加量を測定することにより本酵素の活性測定を行った。
図3は、本酵素の作用適温の範囲を示すグラフであって、この図に示す通り、本酵素の作用適温の範囲は、65〜75℃である。
【0021】
(温度による失活の条件)
後述する力価の測定法における基質・酵素混合液を用い、種々の温度にて15分間処理(pH8.0)し、本酵素の残存活性を測定して求めた。
図4は、本酵素の熱安定性を示すグラフであって、この図に示す通り、本酵素は60℃近辺まで安定。
それ以上では、急激に失活する。
【0022】
(分子量)
本酵素の分子量を、TSK−GelG3000SWカラム(東ソー社製)を用いた高速液体グロマトグラフィーにより測定した。その結果、分子量は約150,000と推定された。また、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法により、本酵素のサブユニットは約71,000と推定された。
【0023】
(Km値)
ラインウエバー・バークのプロットからKm値は0.067mM(pH8.0)(ヒスタミンに対して)である。
【0024】
(力価の測定法)
酵素の力価の測定は以下の方法で行い、1分間に1μmolの4―イミダゾリルアセトアルデヒドを生成する酵素量を1単位(1U)とする。
50mMリン酸緩衝液(pH8.0)2.4ml、0.3mM 1−Methoxy PMS水溶液 0.1ml、1mM WST―8水溶液 0.3ml、10mM ヒスタミン溶液 0.1ml及び本酵素液0.1mlを加え、30℃で30〜60分間反応を行った。
なお、本酵素の活性は本酵素反応において生成した還元型1−MethoxyPMSと反応して生じるWST−8の発色を460nmの吸光度にて測定した。
【0025】
(精製方法)
本酵素の単離、精製は常法に従って行うことができ、例えば硫安塩析法、有機溶媒沈澱法、イオン交換体などによる吸着処理法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動法などを単独又は適宜組み合わせて用いられる。
【0026】
本酵素は前記した作用、基質特異性などの主要な理化学的性質を有するものであればよく、その他の理化学的性質が多少の相違を示すものであっても、本発明の酵素として包含される。
本酵素は、魚肉の鮮度測定などをする場合に、該測定対象の魚肉中のヒスタミンの定量や、人の血清や尿などの体液中に含まれる微量のヒスタミンの定量に極めて有用である。
そして本酵素を用いることにより、測定対象の魚肉あるいは体液中に含まれる種々のアミンのうち、検出する必要のないカダベリンやプトレッシンなどには作用せず、目的とするヒスタミンのみによく作用して、これを精度よく定量することが可能となる。
また、カダベリンやプトレッシンは、魚肉が腐敗する際、ヒスタミンとほぼ同時に生成するアミンであり、従来のヒスタミンの酵素的定量法ではこれらを何らかの方法で分離除去する必要があったのに対し、本酵素を用いるヒスタミンの定量法では、そのすぐれた特性を有するため、面倒で時間を要する分離操作は全く不要となる利点を有する。
【0027】
次に、ヒスタミンに特異的に作用するヒスタミンデヒドロゲナーゼの製造法について説明する。
本発明に使用される微生物としては、本酵素生産能を有する菌株であればいかなる菌でもよく、またこの菌の変種または変異株でもよい。
そして、この微生物の具体例としては、リゾビウム属に属する任意の微生物が挙げられる。
例えばリゾビウム・エスピー(Rhizobium sp.)4−9(以下、「本菌株」ということがある)が挙げられ、該菌株の変種又は変異株も用いることができる。このリゾビウム・エスピー 4−9は、本発明者らが千葉県内の土壌より分離して得た菌株であり、その菌学的性質は以下に示すとおりである。
なお、菌学的性質の同定のための実験は、主として長谷川武治編著、「微生物の分類と同定」、東京大学出版会(1975年)によって行った。
また、分類同定の基準として「バージーズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ・バクテリオロジー(Bergey’s Manual of Determinative Bacteriology)」、第8版(1974年)を参考にした。
また、16SrDNAの塩基配列に基づく系統解析には、日本DNAデータバンクのDNAデータベースを用いた。
【0028】
リゾビウム・エスピー(Rhizobium sp.)4−9の菌学的性質
(A)形態的性質
顕微鏡観察[ベンネット培地(pH8.0)、30℃、24〜48時間培養]
a)細胞の形及び大きさ:0.5〜0.6×1.2〜2.3μmの直状桿菌である。
b)細胞の多形性の有無:無し。
c)運動性の有無:有り。2〜4の鞭毛が認められる。
d)胞子の有無:無し。
e)グラム染色性:陰性。
f)抗酸性:陰性。
【0029】
(B)各培地における生育状態
a)ベンネット寒天培養:30℃、60時間の静置培養で、直径1.5〜2.5mmの円形コロニーを形成する。コロニーは白っぽいクリーム色を呈し、表面は中央がやや隆起し、光沢があり、粘性物質を生成する。色素の生産は観察されない。
b)ベンネット液体培養:30℃、24時間の静置培養では、わずかに濁り、底に糸状の生育が見られる。振盪培養では、培地全体が混濁する。
c)肉汁ゼラチン穿刺培養:穿刺孔に沿って生育するが、ゼラチンは液化しない。
d)リトマスミルク培養:無変化である。
【0030】
(C)生理学的性質
a)硝酸塩の還元:還元する。
b)脱窒反応:無し。
c)MRテスト:陰性。
d)VPテスト:陽性。
e)インドールの生成:生成しない。
f)硫化水素の生成:生成しない。
g)デンプンの加水分解:加水分解しない。
h)クエン酸の利用:利用する。
i)無機窒素源の利用:硝酸塩は利用するが、アンモニウム塩は利用しない。
j)色素の生成:生成しない。
k)ウレアーゼ:陽性。
l)オキシダーゼ:陰性。
m)カタラーゼ:弱陽性。
n)生育の範囲:温度4〜40℃、pH5.5〜9.0。
o)酸素に対する態度:好気的。
p)O―Fテスト(Hugh−Leifson法):酸化。
q)エスクリンの分解:分解する。
r)デオキシリボヌクレアーゼ:陰性。
s)チロシン分解:分解しない。
t)カゼイン分解:分解しない。
u)フェニルアラニンデアミナーゼ:陰性。
v)トリプトファンデアミナーゼ:陰性。
w)糖類からの酸及びガスの生成:表2のとおり、D―メレジトース以外の糖類からの酸生成が認められる。ガスの生成は認められない。
【0031】
Figure 0003782621
【0032】
本菌株は、以上のごとき菌学的性質を有することから、リゾビウム属に属するものと判定された。
また、本菌の分類学的位置を推定するために、16SrDNAの塩基配列に基づく系統解析を行ったところ、本菌株はリゾビウム属の細菌であることが確認された。
また、本菌株は、Rhizobium leguminosarum,Rhizobium etli,Rhizobium tropici,Rhizobium hainanensis,Rhizobium mongolense,Rhizobium gallicumと同一のクラスターに位置していた。しかし、このクラスターの中で本菌株は単独の系統枝を形成しており、16SrDNAの塩基配列からは近縁種の推定はできなかった。
また、本菌株の性状試験の結果をこれらリゾビウム属に属する細菌と比較したところ、本菌株は、いずれの種とも性状が異なっていた。このような理由から、本菌株をリゾビウム・エスピー(Rhizobium sp.)4−9と命名した。
なお、本菌株は工業技術院生命工学技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番)に、平成10年(1998)9月14日付けでFERM P−16992(FERM BP−6861)として寄託されている。
【0033】
次に、本酵素の製造法について説明する。
本酵素生産のための微生物の種類、培養法及びその条件には、本発明の目的を特に阻害しない限りにおいて制約されない。
すなわち、本酵素生産能を有する微生物、例えばリゾビウム属に属し本酵素生産能を有する微生物の生育及び本酵素の生産が可能な環境を与えるいかなる培養方法及びいかなる培養条件が採用され得る。
培養法としては、通常の固体培養でもよいが、液体培養法が好ましい。
そしてその培地としては、炭素源、窒素源、無機物、その他の栄養素を適度に含有するものであれば、合成培地、天然培地又は半合成培地のいずれでも使用できる。
【0034】
上記炭素源としては、同化可能な炭素化合物であればよく、例えばマルトース、グルコース、グリセリン、フラクトースなどが使用される。
また窒素源としては、本酵素は、ヒスタミンにより誘導生成されるためヒスタミン又はヒスタミン塩が望ましいが、本酵素を発現する窒素源であれば任意のものが利用できる。
例えば酵母エキス、ポリペプトン、肉エキス、コーンスチープリカー、大豆粉、アミノ酸、硫安、硝酸アンモニウムなどが使用される。
【0035】
本酵素は、培地中に窒素源として、ヒスタミン又はヒスタミン塩を添加すると、酵素の生産蓄積量を著しく増大できる。
このヒスタミン塩としてはヒスタミン塩酸塩及びヒスタミンリン酸塩などが好ましい。
【0036】
また無機物としては、食塩、塩化カリウム、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウムなどの種々の塩類が好ましい。
【0037】
またその他の栄養源としては、各種ビタミン類などが使用できる。これらの栄養源はそれぞれ単独で用いることもでき、また組み合わせて用いることもできる。
なお、このほか必要により消泡剤などを添加してもよい。
【0038】
このようにして調製した液体培地を用いて本酵素を製造するには、通気撹拌深部培養又は振盪培養などにより好気的に培養するのが好ましい。
その際に、培地の初発pHを6.0〜7.0程度に調整し、25〜37℃、好ましくは30℃前後の温度で24〜96時間、好ましくは48時間前後培養する。
かかる培養により、培養物中に本酵素が生成し、蓄積される。
【0039】
この培養物から本酵素を採取するには、通常の酵素採取手段を用いることができる。
本酵素は、主に菌体内に存在する酵素であるため、培養物から、例えば濾過、遠心分離などの操作により菌体を分離し、この菌体から本酵素を採取するのが好ましい。
この場合、菌体をそのまま用いることができるが、例えば超音波破砕機、フレンチプレス、ダイナミルなどの種々の機械的破砕手段を用いて菌体を破壊する方法、リゾチームなどの細胞壁溶解酵素を用いて菌体細胞壁を溶解する方法、トリトンX−100などの界面活性剤を用いて菌体から酵素を抽出する方法などを単独又は組み合わせて採用することができる。
次いで、これを濾過又は遠心分離などによって不溶物を除き、本酵素の粗酵素液を得る。
【0040】
このようにして得られた粗酵素液から本酵素を単離精製するには、前記精製方法が適用できる。
本酵素の単離、精製は常法にしたがって行うことができ、例えば硫安塩析法、有機溶媒沈澱法、イオン交換体などによる吸着処理法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動法などを単独又は適宜組み合わせて用いられる。
【0041】
ここで、本発明のヒスタミンデヒドロゲナーゼを用いたヒスタミンの定量法について説明する。
【0042】
上記定量法に用いるヒスタミン定量用試薬の好適な具体例としては、(a)本発明のヒスタミンデヒドロゲナーゼ、(b)電子キャリアーおよび(c)還元型電子キャリアー発色剤を含むものが挙げられる。
【0043】
定量用試薬の有利な系としては、▲1▼0.03〜0.3U/mlの本発明のヒスタミンデヒドロゲナーゼおよび10〜200mMの緩衝剤を含有するpH8〜10の系、▲2▼0.03〜3.0mMの電子キャリアー(例えば1−MethoxyPMS)および10〜200mMの緩衝剤を含有するpH8〜10の系および▲3▼0.1〜10mMのWST−8を含有する10〜200mMの緩衝剤を含有するpH8〜10の系の組合せが挙げられる。
【0044】
これらの系に用いられる緩衝剤としては、例えばリン酸カリウムなどのリン酸塩、トリス−塩酸塩、酢酸塩などが挙げられる。
【0045】
これらの系に、前記成分以外に、必要に応じて慣用の種々の添加成分、例えば溶解補助剤、安定化剤などを添加することもできる。
【0046】
このような具体例としては、界面活性剤(トリトンX−100、ブリッJ35、ツイーン80、コール酸など)、還元剤(メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、L−システインなど)、牛血清アルブミン、糖類(グリセリン、乳糖、ショ糖など)などが挙げられる。
【0047】
これらの成分は、前記の系を調製する適当な段階で添加し、1種または2種以上を組合せて用いることもできる。
このような試薬(添加剤)は、乾燥物または溶解したものを用いてもよいし、薄膜状の担体、例えばシート含浸性の紙などに含浸させてもよい。
また、使用する本発明のヒスタミンデヒドロゲナーゼは、常法により固定化させて反復使用してもよい。
上述した試薬は、各種の試料中に含有されるヒスタミンを簡単な操作で精度よく定量することができる。
【0048】
次に、ヒスタミンの定量を行うには、ヒスタミン含有試料に本発明のヒスタミンデヒドロゲナーゼを添加作用させて、生成物を測定することにより行うものである。
【0049】
ヒスタミン含有試料としては、ヒスタミン(またはその塩でもよい)を含有するものであれば、如何なるものでもよく、例えば液状または固形状の食品、尿や血清などの生体内物質や生体組織などが挙げられる。
【0050】
そして、該試料は、そのまま、または水、緩衝液などで抽出、濾過した後、ヒスタミンが適当な濃度となるように、濃縮して、または水、アルコール、緩衝液などで希釈して定量に供してもよい。
【0051】
定量に際して、これらの試料のpHは、無調整でもよいが、適当なpH調整剤、例えば塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど酸やアルカリを用いてpH8〜10に調整することが望ましい。
【0052】
また、ヒスタミン含有試料に作用させる本酵素の添加量は、該試料中に含まれるヒスタミン含有量、酵素作用条件などにより適宜選択されるが、通常本酵素を終濃度0.03〜3U/mlになるように添加する。
【0053】
ヒスタミン含有試料に本酵素を作用させ、生成物を測定する手段としては、任意の手段を採用することができるが、ヒスタミン含有試料に本酵素および電子キャリアーを作用させ、生成する還元型電子キャリアー、4−イミダゾリルアセトアルデヒドまたはアンモニアなどを測定する方法が好ましい。
【0054】
この場合、本酵素を作用させるときの温度は、20〜70℃、好ましくは30〜50℃である。
このときの作用時間は、ヒスタミン含有試料の該ヒスタミンを分解するのに十分な時間であればよく、1〜60分、好ましくは2〜20分である。
【0055】
作用終了後、作用液中に生成する還元型電子キャリアー、4−イミダゾリルアセトアルデヒド、アンモニアなどを定量する方法は、特に制限されず、公知の測定手段を用いて行えばよい。
【0056】
そして、予め同方法で定量して作成したヒスタミンの検量線を用いて、試料中のヒスタミンの定量を行う。
【0057】
還元型電子キャリアーの定量方法としては、例えばヒスタミン含有試料にフェナジンメトサルフェートやメルドラブルーなどのテトラゾリウム系の電子キャリアーおよびMTT、Nitro−TB、WST−8などのテトラゾリウム系の還元型発色試薬の存在下、ヒスタミンデヒドロゲナーゼを添加して酵素作用を行わせ、生成する色素を定量する。
【0058】
また、4−イミダゾリルアセトアルデヒドの定量方法としては、例えば4−イミダゾリルアセトアルデヒドにアルデヒドデヒドロゲナーゼを作用させ、この際の共役作用、すなわち、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)→還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)で生成したN ADH量を340nmにおける吸光度増加にて測定する方法などが挙げられる。
【0059】
また、アンモニアの定量法に関してはニンヒドリン作用法、インドフェノールブルー吸光光度法、イオン電極法など既知の種々の方法を利用することができる。
【0060】
次に、本酵素を利用するヒスタミンの定量法の好適な一例を示す。
ヒスタミンを含有する試料に、0.03〜0.3U/mlの本発明のヒスタミンデヒドロゲナーゼ、電子キャリアー及び緩衝剤10〜200mMを加え、pH8〜10、温度30〜50℃で酵素作用させる。
【0061】
このときの作用時間はヒスタミンを分解するに十分な時間であればよく、1〜60分間、好ましくは2〜20分間である。
【0062】
次いで、生成する還元型電子キャリアー、4―イミダゾリルアセトアルデヒド、アンモニアなどの含有量を公知の方法によって定量し、予め同方法で定量して作成したヒスタミンの検量線を用いて、試料中のヒスタミンの定量値を算出する。
【0063】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0064】
実施例1
(ヒスタミンデヒドロゲナーゼの製造法)
グルコース0.1%(W/V)、酵母エキス0.2%(W/V)、ヒスタミン二塩酸塩0.1%(W/V)、K2HPO4 0.05%(W/V)及び水道水からなる培地(pH 6.75)100mlを坂口コルベンに入れて、120℃で15分間殺菌し、培地を調製した。これを2本分調製した。
それぞれにリゾビウム・エスピー (Rhizobium sp.)4−9(FERM BP−6861)の保存スラントより1白金耳接種し、それぞれ30℃で約72時間、振盪数140rpmで振盪培養して種培養液を調製した。
【0065】
次いで、前記と同様にして殺菌し、調製した培地20リットル(L)を30L容ジャーファーメンターへ入れ、これに前記の種培養液約200ml(坂口コルベン2本分)を無菌的に接種し、30℃、回転数200rpm、通気量10L/minの条件で48時間通気撹拌培養した。
培養終了後、培養液20Lをマイクローザ(旭化成工業社製、限外濾過膜、登録商標名)を用いて菌体を集め、50mMリン酸緩衝液(pH8.0)にて菌体を洗浄した後、菌体を同緩衝液約1Lに懸濁した。
【0066】
次いで以下の方法により本酵素の精製を行なった。
ステップ1:
(粗酵素液の調製):
前記菌体懸濁液に、トリトンX−100、リゾチウム、EDTAをそれぞれ0.5%、0.1%(W/V)、20mM添加混合し、室温で一晩放置した。
その後遠心分離(8000rpm、60min)して、上清を採取し、粗酵素液を調製した。
【0067】
ステップ2:
(硫安分画)
粗酵素液に硫安を添加し、40〜60%飽和で沈澱するタンパクを遠心分離(8000rpm、60min)によって回収した。
得られた沈殿物を13%(W/V)硫安を含んだ20mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で溶解した。
【0068】
ステップ3:
(ブチルトヨパール650・クロマトグラフィー)
上記の酵素溶解液をブチルトヨパール650カラム(2.5×30cm)に吸着させたのち、13%(W/V)硫安を含んだ20mMのリン酸緩衝液(pH7.0)にて洗浄し、次に、13%(W/V)硫安を含んだ20mMのリン酸緩衝液(pH7.0)と20mMのリン酸緩衝液(pH8.5)を用い、直線濃度勾配法により溶出させ、約7〜9%(W/V)硫安を含有するリン酸緩衝液にて溶出された活性画分を集めた。
これに60%飽和となるように硫安を添加し、低温で一晩放置し、その後遠心分離(8000rpm、60min)により得られた沈殿物を20mMトリス―塩酸緩衝液(pH8.0)で溶解した。
この酵素溶解液を透析膜を用いて前記緩衝液に対して透析した。
【0069】
ステップ4:
(DEAE−セファセル・クロマトグラフィー)
透析液をDEAE−セファセルの充填したカラム(2.5×30cm )の該セファセルに吸着させたのち、20mMトリス―塩酸緩衝液(pH8.0)にて洗浄し、次に、0M〜1.0M塩化ナトリウムを含有するリン酸緩衝液にて直線濃度勾配法により溶出させ、約0.4M塩化ナトリウムを含有するリン酸緩衝液にて溶出された活性画分を集めた。
【0070】
(酵素精製標品)
以上の精製操作により得た該活性画分は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によりほぼ均一と判断され、精製標品であることが確認された。
この標品は、全タンパク量が1.06mg、全活性が6.64U、比活性が6.26U/mgであった。
【0071】
実施例2
(溶液状ヒスタミンデヒドロゲナーゼの安定性試験)
pH9の50mM トリス−塩酸緩衝液に上記実施例1で得られたヒスタミンデヒドロゲナーゼを0.03U/mlの濃度となるように添加溶解し、25℃で保存し、4日後及び7日後に、活性を測定した。
初発(0日目)の活性を100%としたとき、4日後の残存活性は88%、7日後のそれは80%であって、非常に安定であることが判明した。
【0072】
参考例1
(ヒスタミン含有試料にヒスタミンには作用するが、カダベリン及びプトレッシンには作用しない、実施例1で得られた本酵素を作用させ、生成する還元型電子キャリアーを測定するヒスタミンの定量法において、使用するヒスタミン定量用試薬の調製例)
精製水に以下の3の成分をそれぞれ以下の濃度又は単位で溶解し、3つの成分からなるヒスタミン定量用試薬を調製した。
【0073】
Figure 0003782621
【0074】
応用例1
(ヒスタミン含有試料に、ヒスタミンには作用するが、カダベリン及びプトレッシンには作用しない、実施例1で得られた本酵素を作用させ、生成する還元型電子キャリアーを測定するヒスタミンの定量法)
参考例1で示した表3記載の3つの成分を測定直前に混合することにより、ヒスタミン定量用試薬(反応試薬液)を調製した。
このヒスタミン定量用試薬を用いて既知濃度のヒスタミン定量を行った。
先ず反応試薬液2.8mlに各濃度のヒスタミン標準溶液を0.1ml加え、37℃で5分間保温した。これを96穴のマイクロプレートのウェルに200μlずつ分注し、その後ヒスタミンデヒドロゲナーゼ(0.03U/ml)を10μl添加し、37℃で30分間作用させた。
そして作用開始後、経時的にプレートリーダーにより、490nmにおける吸光度を測定し、該吸光度増加量(△OD)の値を求めた。
この値(Y)とヒスタミン含有量(X)との関係から検量線を作成した。
その検量線を図5に示す。
該検量線の式は、y=0.4575x−0.0016(r=0.999)
となる。
これから、△ODとヒスタミン含有量との間には直線的な相関があって、検量線として有効であることがわかり、しかも試料に含まれるヒスタミン濃度が0.05mM〜0.5mM(即ち約5〜50ppm)の極微量のヒスタミンを迅速かつ高感度に定量できることが判る。
【0075】
応用例2
(サバ水煮缶詰中の該サバ肉に含まれるヒスタミンの定量)
1)試料の調製
サバ水煮缶詰の該サバ肉を5g定量し50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)を35ml加え、ストマッカーにて試料を細かくした後、電子レンジにて加熱させた。放冷後、同緩衝液にて50mlにメスアップし、これをNo.2の濾紙及び0.45μmのディスミックフィルターで濾過したものを分析試料とした。
【0076】
2)ヒスタミンの定量用試薬の調製及び定量法
ヒスタミンの定量用試薬の調製及び定量法については参考例1及び応用例1と同様に行った。
分析試料のヒスタミン量については分析して得られた各△ODを用い応用例1で求めた検量線の式から算出した。
【0077】
比較例
比較のため、同一の分析試料に含まれるヒスタミンを精度よく定量できると言われるHPLC法(従来法)にて定量した。
【0078】
応用例2と従来法の測定値の相関関係を調べた。
その結果を図6に示す。
図6の結果から応用例2の結果(本酵素を用いたヒシタミンの定量法)と従来法との間には、直線的な相関があり、相関を示す式はy=1.0045x−4.6656(r=0.998)となる。そして本酵素を用いたヒシタミンの定量法は、従来のHPLC法と非常に良好な相関性を示すことが判明した。このことから、本酵素を用いたヒスタミンの定量法は、測定値の信頼性が高いことが判る。また、試料中より面倒な妨害物質(不純物)を除去する前処理操作の要らない、定量に要する時間が短時間である、極めて高感度で定量することができる、簡便な装置を用いて測定することができる、作用セルは液密的条件下で操作する必要がない(すなわち開放系で操作することが可能である)ことが判る。
【0079】
応用例3
(ヒスタミンばかりでなく、カダベリン及びプトレッシンも含有する試料に「ヒスタミンには作用するが、カダベリン及びプトレッシンには作用しない、実施例1で得られた本酵素」を作用させ、生成する還元型電子キャリアーを測定するヒスタミンの定量法)
上記応用例1のヒスタミンの定量法において、「各濃度のヒスタミン標準溶液」に代えて、「各濃度のヒスタミン標準溶液に該ヒスタミンと同濃度のカダベリン及びプトレッシンを含有させた試料液」を用いる以外は、全く同様にして、ヒスタミンの定量を行った。
また、比較のため、上記と同一の試料液についてHPLC法(従来法)によりヒスタミンを定量した。これらの測定値の相関関係を調べたところ、図6と全く同じ結果が得られた。即ち、「各濃度のヒスタミン標準溶液に該ヒスタミンと同濃度のカダベリン及びプトレッシンを含有させた試料液」を用いた場合も、ヒスタミンの標準液を用いた場合と比べ、反応液の発色量に差が全くみられなかった。
従って本酵素を用いたヒスタミンの定量法は、他のアミン類には影響されずにヒスタミンだけを効率よく定量できることが判る。特にカダベリン及びプトレッシンは、魚肉が腐敗する際、ヒスタミンとほぼ同時に生成するアミンであり、従来法ではこれらを何らかの方法で、分画(分離)除去する必要があったのに対し、本発明では、ヒスタミンには作用するが、カダベリン及びプトレッシンには作用しない基質特異性を有する酵素を用いることにより、面倒で時間を要する分離操作は全く行うことなくヒスタミンの定量を行うことができることが判る。
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、ヒスタミンに対して特異性の高い、すなわち試料中のアミン類のうち、カダベリンやプトレッシンといった生体アミンなどには反応せず、検出目的のヒスタミンのみによく作用(反応)して、これを選択的に定量することが可能な、ヒスタミンデヒドロゲナーゼを得ることができる。また 本発明は、安定剤を添加しなくとも、水性溶液に溶解した後、常温で少なくとも1週間は安定に保存することができるヒスタミンデヒドロゲナーゼを得ることができる。
また、試料中より面倒な妨害物質(不純物)を除去する前処理操作を行うことなく、短時間に、極微量の(すなわち感度よく)ヒスタミンを、簡便な装置を用いて、開放系で、しかも測定値の信頼性を損なうことなく、測定することが可能なヒスタミンデヒドロゲナーゼを得ることができる。
また、本発明はこのような特徴を有するヒスタミンデヒドロゲナーゼを、効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本酵素の至適pHを示すグラフ。
【図2】本酵素の安定pH範囲を示すグラフ。
【図3】本酵素の作用適温の範囲を示すグラフ。
【図4】本酵素の熱安定性を示すグラフ。
【図5】本酵素を用いたヒスタミンの定量法に利用される検量線を示すグラフ。
【図6】サバ水煮缶詰の該サバ肉に含まれるヒスタミン量を、本酵素を用いたヒスタミンの定量法と従来のHPLC法とで分析したときの相関関係を示すグラフ。

Claims (3)

  1. 以下の理化学的性質を有することを特徴とするヒスタミンデヒドロゲナーゼ。
    作用:1モルのヒスタミンを電子受容体の存在下、酸化的脱アミノ反応により1モルの4−イミダゾリルアセトアルデヒドと1モルのアンモニアを生成する。
    基質特異性:ヒスタミンに特異的に作用する。
    至適温度:65〜75℃。
    温度による失活の条件:pH8.0、15分処理で、0〜60℃で安定。
    分子量:約150,000(サブユニット約71,000×2)。
  2. リゾビウム属に属し、請求項1記載のヒスタミンデヒドロゲナーゼ生産能を有する菌株を培地に接種培養し、その培養物から該ヒスタミンデヒドロゲナーゼを採取することを特徴とするヒスタミンデヒドロゲナーゼの製造法。
  3. リゾビウム属に属し、請求項1記載のヒスタミンデヒドロゲナーゼ生産能を有する菌株を、ヒスタミン又はヒスタミン塩を含有する培地に接種培養し、その培養物から該ヒスタミンデヒドロゲナーゼを採取することを特徴とするヒスタミンデヒドロゲナーゼの製造法。
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