JP2001151570A - 耐還元性誘電体組成物及びそれを用いた積層セラミックコンデンサ及びその製造方法 - Google Patents

耐還元性誘電体組成物及びそれを用いた積層セラミックコンデンサ及びその製造方法

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JP2001151570A JP33123999A JP33123999A JP2001151570A JP 2001151570 A JP2001151570 A JP 2001151570A JP 33123999 A JP33123999 A JP 33123999A JP 33123999 A JP33123999 A JP 33123999A JP 2001151570 A JP2001151570 A JP 2001151570A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スイッチング電源回路、DC−DCコンバー
タ回路、照明用インバータ回路等に中高圧用として広く
使用される積層セラミックコンデンサにおいて、焼結助
剤成分を偏析させることなく主成分中に均一に分散させ
た卑金属内部電極積層セラミックコンデンサ用耐還元性
誘電体組成物を提供し、電気特性及び耐久信頼性に優
れ、中高圧用としての用途に適した特性を有する積層セ
ラミックコンデンサ及びその製造方法を提供することを
目的としている。 【解決手段】 焼結助剤成分を含むコロイド状懸濁液を
主成分のBaTiO3粉末及び微量の添加剤と共に混合
して原料粉末を作製することにより、コロイド状懸濁液
の均一分散が達成され、主成分であるBaTiO3粒子
の周囲に焼結助剤成分がより均一に分布する為、焼成時
に局部的な異常反応がなく非常に緻密な組織を形成する
ことが可能な耐還元性誘電体組成物が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内部電極が卑金属
から成り、JIS規格B特性或いはEIA規格X7R特
性を満足し、スイッチング電源回路、DC−DCコンバ
ータ回路、照明用インバータ回路等に中高圧用として広
く使用される積層セラミックコンデンサ及びその製造方
法に関するものである。
【0002】さらに本発明は、内部電極が卑金属から成
る積層セラミックコンデンサを製造する為の耐還元性誘
電体組成物に関するものである。
【0003】
【従来の技術】近年、ノート型パソコン等に代表される
様に電子機器の軽薄短小化に伴いそれに使用される重要
な受動部品の1つであるセラミックコンデンサも従来の
円板型から積層型への移行が急速に進み、スイッチング
電源回路やDC−DCコンバータ回路の小型化及び樹脂
モールド化に寄与している。また、信用調査機関のデー
タによると西暦2005年にはセラミックコンデンサの
積層化率は90%を超える事が確実であり、低定格電圧
品のみならず中高圧品、更には安全規格品の領域にまで
積層化が波及するのは時間の問題である。
【0004】例えば、スイッチング電源回路の1次側ス
ナバ用としては定格電圧が630VDCでJIS規格B
特性或いはEIA規格X7R特性を満足する中高圧用積
層セラミックコンデンサが多数使用されており、一大市
場を形成しつつある。
【0005】積層セラミックコンデンサは、セラミック
誘電体層と内部電極層が交互に複数積層され、その積層
構造の上下に全体の寸法調整と内部気密封止の為の誘電
体層が設けられている。内部電極層の電気的接続は、そ
れらの終端部分が露出した両端面に端子電極を設けるこ
とによって行い、これら端子電極表面には半田付け実装
を容易に且つ支障なく行える様に、Ni鍍金の上にSn
鍍金又はSn−Pb系の半田鍍金が層状に施された構造
となっている。
【0006】従来より、この様な積層セラミックコンデ
ンサに使用される誘電体組成物は、主成分であるBaT
iO3に数種類の添加物を加えたものが主流であり、例
えば特公平3−23504号公報にはBaTiO3にN
25とCoOを加えた組成物が開示されており、これ
によるとNb25とCoOが静電容量の温度変化率を平
坦化する成分として作用し、EIA規格X7R特性を満
足することが記載されている。同じく特公平3−612
87号公報にはBaTiO3にNb25、CoO、Ce
2及びZnOを加えた組成物が開示されており、Nb2
5とCoOが静電容量の温度変化率を平坦化し、Ce
2は焼成温度を低下し、ZnOは電気特性を改善する
ことが記載されている。
【0007】しかしながら上記誘電体組成物は、内部電
極としてPd系貴金属の使用を前提としたものであり、
特に高積層数高静電容量の品種において原材料コストの
面で問題があった。これを解決する方法として、Pd系
の貴金属に代わりコストの安いNiあるいはNiを主成
分とする合金を使用することが公知であり、積層セラミ
ックコンデンサに占める卑金属内部電極品の割合は急増
している。
【0008】Niは卑金属であるので、従来の貴金属の
積層セラミックコンデンサの様に酸素雰囲気中で焼成す
る事は不可能で、低酸素分圧雰囲気中においてNiが酸
化されないように焼成しなければならない。セラミック
コンデンサ用として公知であるBaTiO3に代表され
るペロブスカイト酸化物は、1000゜C以上の高温に
おいてNiの酸化還元平衡酸素分圧以下の雰囲気に晒さ
れると還元され、絶縁抵抗値が低下したり、電界を印加
した状態での信頼性試験、いわゆる負荷寿命での不良率
が増大し、コンデンサ用誘電体としての機能を果たさな
くなる。
【0009】この課題に対し、これらペロブスカイト酸
化物が、AサイトとBサイトに存在するイオンの化学量
論比を変化させたり、あるいは結晶格子中にドナーとな
って固溶しうる、例えば遷移金属イオン等を添加したり
することによって、前述のような熱処理を行っても還元
されにくくなる性質を利用して、ペロブスカイト酸化物
と微量の添加物から構成される多くの耐還元性誘電体組
成物が考案され、開示されている。以前の耐還元性誘電
体組成物は、静電容量の温度変化率が大きいJIS規格
F特性が主流であったが、近年積極的な材料開発が行わ
れ、温度変化率が小さいJIS規格B特性或いはEIA
規格X7R特性が薄層大容量積層セラミックコンデンサ
に適用されている。例えば特開平8−124784号公
報には主成分としてBaTiO3を副成分としてMg
O、Y23、BaO及びCaOから選ばれる少なくとも
1種とSiO2とを含有するNi及びNi系合金等の卑
金属が使用可能な耐還元性誘電体組成物が開示されてい
る。また、特開平9−171938号公報にはBaTi
3系の主成分に対して、副成分としてMgO、及び焼
結助剤成分としてLi2O−B23−(Si,Ti)O2
系の酸化物を含有した耐還元性誘電体組成物が開示され
ている。これにより、静電容量の温度変化率が小さく、
しかも安価なNi系の内部電極を使用した大容量の積層
セラミックコンデンサが主として16〜50VDCの低
定格電圧品を中心に商品化されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
耐還元性誘電体組成物の多くは主成分であるペロブスカ
イト酸化物に対する微量添加物の均一な分散性や反応性
を考慮して設計されたものであるとは言い難く、工程上
制御しえない要因によって製品の特性、品質が変動し、
歩留まりの低下や信頼性不良を引き起こしている。例え
ば、従来のプロセスである仮焼混合法により作製した耐
還元性誘電体組成物は微量添加物の中でも特にLi2
−B23−(Si,Ti)O2系やBaO−SiO2系等
の焼結助剤成分を均一に分散させることが難しく、焼結
助剤成分が不均一に分散した組成物であった。その結
果、焼成時の反応過程で局部的な異常反応を起こし、結
晶粒子径のばらつきが大きくなりしかもポアーが多い不
均質な微細構造となり、静電容量や誘電体損失のばらつ
きが生じ、絶縁破壊電圧が低く、また超加速寿命試験
(HALT)における故障時間の分布が広く、平均故障
時間が短いという問題点を有していた。
【0011】そこで本発明は以上の様な課題を解決し、
焼結助剤成分を偏析させることなく主成分中に均一に分
散させた耐還元性誘電体組成物を提供し、該耐還元性誘
電体組成物を用いて初期特性及び耐久信頼性等のばらつ
きが小さく、中高圧用として優れた特性を有する卑金属
内部電極積層セラミックコンデンサ及びその製造方法を
提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に本発明の耐還元性誘電体組成物は、Ca及びBaの酢
酸塩水溶液とSiの金属アルコキシドエタノール溶液を
攪拌混合しながらアンモニア水を滴下してCa、Ba及
びSi成分を含むコロイド状懸濁液を作製する工程と、
該コロイド状懸濁液を主成分のBaTiO3粉末及び微
量の添加剤と共に混合して原料粉末を作製する工程とを
順次行うことにより製造したものである。これにより、
Ca、Ba及びSiを含有するコロイド状懸濁液の均一
分散が達成され、主成分であるBaTiO3粒子の周囲
がこれらの成分により均一にコーティングされる為、焼
成時に局部的な異常反応がなく焼結助剤成分が均一に分
散された非常に緻密な組織を形成することが可能な耐還
元性誘電体組成物が得られる。
【0013】また、本発明の積層セラミックコンデンサ
は上記した耐還元性誘電体組成物より成るセラミック誘
電体層と、Ni或いはNiを主成分とする合金より成る
内部電極層が交互に複数積層され、内部電極層の終端部
分が露出した両端面に端子電極が設けられた積層セラミ
ックコンデンサにおいて、前記セラミック誘電体層を構
成しているセラミックの結晶粒子は球状で且つ大きさが
均一で、粒子径が0.3〜0.8μmの範囲内にあるも
のである。これにより結晶粒子自体に印加される電界が
均等に分散されると同時に上記した焼結助剤成分が粒界
層を形成し該粒界層に電界が集中し焼結粒子自体に印加
される電界が抑制される為、DCバイアス電圧に対して
静電容量の減少率が小さく絶縁破壊電圧が高い積層セラ
ミックコンデンサが得られる。
【0014】また、本発明の積層セラミックコンデンサ
は、耐還元性誘電体組成物より成るセラミック誘電体層
と、Ni或いはNiを主成分とする合金より成る内部電
極層が交互に複数積層され、内部電極層の終端部分が露
出した両端面に端子電極が設けられた積層セラミックコ
ンデンサにおいて、前記内部電極層の膜厚が2〜5μm
の範囲内にあるものである。これにより、セラミック誘
電体層と内部電極層との間に良好な密着性が確保される
為、耐久信頼性に優れた積層セラミックコンデンサが得
られる。
【0015】また、本発明の積層セラミックコンデンサ
の製造方法は、耐還元性誘電体組成物の原料粉末を樹
脂、可塑剤及び溶剤から成るビヒクル中に分散してスラ
リーとし、該スラリーを基体上に塗布して10〜60μ
mの厚みのセラミック生シートを形成する積層セラミッ
クコンデンサの製造方法において、前記樹脂と可塑剤の
合計比率が原料粉末に対して9〜18重量%の範囲内に
あることを特徴とするものである。これにより、セラミ
ック誘電体層と内部電極層及びセラミック誘電体層同士
の良好な密着性及び積層性が実現できる為、積層不良に
よる層間剥離や亀裂が発生し難くなり、特に耐久信頼性
に優れた積層セラミックコンデンサが得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明
は、焼結助剤として作用する成分を含むコロイド状懸濁
液を作製する工程と、該コロイド状懸濁液を主成分の粉
末及び微量の添加剤と共に混合して原料粉末を作製する
工程とを順次行うことにより製造した耐還元性誘電体組
成物であり、主成分の粉末に対してコロイド状懸濁液を
均一に分散させ、コロイド状懸濁液に含まれる成分が主
成分粒子の周囲に均一にコーティングされた耐還元性誘
電体組成物を実現できるという作用を有する。
【0017】本発明の請求項2に記載の発明は、Ca及
びBaの酢酸塩水溶液とSiの金属アルコキシドエタノ
ール溶液を攪拌混合しながらアンモニア水を滴下してC
a、Ba及びSi成分を含むコロイド状懸濁液を作製す
る工程と、該コロイド状懸濁液を主成分のBaTiO3
粉末及び微量の添加剤と共に混合して原料粉末を作製す
る工程とを順次行うことにより製造した耐還元性誘電体
組成物であり、Ca、Ba及びSiを含有するコロイド
状懸濁液の均一分散が達成され、主成分であるBaTi
3粒子の周囲がこれらの成分により均一にコーティン
グされる為、焼成時に局部的な異常反応がなく焼結助剤
成分が均一に分散された非常に緻密な組織を形成するこ
とが可能な耐還元性誘電体組成物を実現できるという作
用を有する。
【0018】本発明の請求項3に記載の発明は、請求項
2に記載の発明においてコロイド状懸濁液は主成分のB
aTiO3粉末100モルに対してCa及びBa成分の
内少なくとも1種以上を各々0.5〜1.5モル、Si
成分を1.0〜3.0モル含み、Ca、Ba及びSiよ
り成る非常に薄い非晶質粒界層をBaTiO3粒子の周
囲に形成するという作用を有している。
【0019】本発明の請求項4に記載の発明は、請求項
2に記載の発明において添加剤は主成分のBaTiO3
粉末100モルに対して各々0.03〜1.0モルのD
2 3、MgO及びMn34の内から選ばれた少なくと
も1種類以上を含有しており、焼成温度においてNiの
酸化還元平衡酸素分圧以下の雰囲気中で優れた耐還元性
を実現するという作用を有している。また、電気的初期
特性及び静電容量の温度変化率を目標値に制御するとい
う作用を有する。
【0020】本発明の請求項5に記載の発明は、耐還元
性誘電体組成物より成るセラミック誘電体層と、Ni或
いはNiを主成分とする合金より成る内部電極層が交互
に複数積層され、内部電極層の終端部分が露出した両端
面に端子電極が設けられた積層セラミックコンデンサに
おいて、前記セラミック誘電体層を構成しているセラミ
ックの結晶粒子は球状で且つ大きさが均一で、粒子径が
0.3〜0.8μmの範囲内にあることを特徴とするも
のであり、結晶粒子自体に印加される電界が均等に分散
されると同時に上記した焼結助剤成分が粒界層を形成し
該粒界層に電界が集中し焼結粒子自体に印加される電界
が抑制される為、DCバイアス電圧に対して静電容量の
減少率が小さく絶縁破壊電圧が高い積層セラミックコン
デンサが得られるという作用を有する。
【0021】本発明の請求項6に記載の発明は、耐還元
性誘電体組成物より成るセラミック誘電体層と、Ni或
いはNiを主成分とする合金より成る内部電極層が交互
に複数積層され、内部電極層の終端部分が露出した両端
面に端子電極が設けられた積層セラミックコンデンサに
おいて、前記内部電極層の膜厚が2〜5μmの範囲内に
あることを特徴とするものであり、これによりセラミッ
ク誘電体層と内部電極層との間に良好な密着性が確保さ
れる為、耐久信頼性に優れた積層セラミックコンデンサ
が得られるという作用を有する。
【0022】本発明の請求項7に記載の発明は、耐還元
性誘電体組成物より成るセラミック誘電体層と、Ni或
いはNiを主成分とする合金より成る内部電極層が交互
に複数積層され、内部電極層の終端部分が露出した両端
面に端子電極が設けられた積層セラミックコンデンサに
おいて、前記端子電極はNi或いはNiを主成分とする
合金の上にAgが付与され、その上にNi鍍金及びSn
若しくは半田鍍金が形成された4層構造であることを特
徴とするものであり、内部電極層と端子電極との接続を
確実にすると共に両端面を完璧に被覆することにより湿
気の進入による特性的劣化を防止するという作用を有す
る。
【0023】本発明の請求項8に記載の発明は、耐還元
性誘電体組成物より成るセラミック誘電体層と、Ni或
いはNiを主成分とする合金より成る内部電極層が交互
に複数積層され、内部電極層の終端部分が露出した両端
面に端子電極が設けられた積層セラミックコンデンサに
おいて、セラミック誘電体層の膜厚に対して4.0VD
C/μmのDCバイアス電圧を印加した時の静電容量減
少率が35%以下であることを特徴とするものであり、
例えばセラミック誘電体層の膜厚が50μmで630V
DCの定格電圧を有するJIS規格B特性を3216サ
イズ(L:3.2mm,W:1.6mm)で素体設計し
て10000PFの静電容量を有する積層セラミックコ
ンデンサを試作して、スイッチング電源回路の1次スナ
バ用に供した場合、200VDCバイアス印加時の静電
容量が7000PF程度であり、静電容量の減少率が従
来の同品種に比べ約10%小さく、電源関係の市場にお
いて優位性を確保できるという作用を有する。
【0024】本発明の請求項9に記載の発明は、耐還元
性誘電体組成物の原料粉末を樹脂、可塑剤及び溶剤から
成るビヒクル中に分散してスラリーとし、該スラリーを
基体上に塗布して10〜60μmの厚みのセラミック生
シートを形成する積層セラミックコンデンサの製造方法
において、前記樹脂と可塑剤の合計比率が原料粉末に対
して9〜18重量%の範囲内にあることを特徴とするも
のであり、セラミック誘電体層と内部電極層及びセラミ
ック誘電体層同士の良好な密着性及び積層性が実現でき
る為、積層不良による層間剥離や亀裂が発生し難くな
り、特に耐久信頼性に優れた積層セラミックコンデンサ
が実現できるという作用を有する。
【0025】本発明の請求項10に記載の発明は、基体
上に耐還元性誘電体組成物の原料粉末より成るスラリー
を塗布して形成したセラミック生シートと、基体上にN
i或いはNiを主成分とする合金より成るペーストを印
刷して形成した内部電極シートを交互に複数積層するこ
とによりラミネート体を得る積層セラミックコンデンサ
の製造方法において、前記ペーストが液相法により合成
されたNi或いはNiを主成分とする合金を含むことを
特徴とするものであり、液相法により合成されたNi及
びNiを含む合金は粉末の粒度分布がブロードで形が不
定形である為、それによるペーストは焼成時に急激な収
縮を起こさず緩やかに収縮する為セラミック誘電体層と
の間に良好な密着性を確保できるという作用を有する。
また、従来より主として低圧用大容量積層セラミックコ
ンデンサに多く使用されている気相法により製造された
Niによるペーストに比べ、より安価であるため製造コ
ストの引下げに寄与する。
【0026】本発明の請求項11に記載の発明は、請求
項10記載の発明においてNi或いはNiを主成分とす
る合金より成るペーストは、セラミック誘電体層を構成
する耐還元性誘電体組成物と同じ材質のセラミック粉末
を10〜20重量%含むことを特徴とするものであり、
セラミック誘電体層と内部電極層及び端子電極とセラミ
ック誘電体層との適合性を向上させ耐久信頼性に優れた
積層セラミックコンデンサが得られるという作用を有す
る。
【0027】本発明の請求項12に記載の発明は、耐還
元性誘電体組成物から成るセラミック生シートとNi或
いはNiを主成分とする合金から成る内部電極シートよ
り形成されたラミネート体を切断してグリーンチップと
し、該グリーンチップを熱処理した後、水及びメディア
と共にバレル中に投入して回転しながら面取りする積層
セラミックコンデンサの製造方法において、前記熱処理
によるグリーンチップの重量減少率が4〜8%の範囲内
であることを特徴とするものであり、面取り時のグリー
ンチップの機械的損傷を防止し過度の面取りを抑制し、
また面取り後の乾燥時にグリーンチップ同士の付着を防
止するという作用を有する。
【0028】そして、本発明の請求項13に記載の発明
は、耐還元性誘電体組成物から成るセラミック生シート
とNi或いはNiを主成分とする合金から成る内部電極
シートより形成されたラミネート体を切断してグリーン
チップとし、該グリーンチップを熱処理した後、メディ
アと共にジルコニア質ポットに投入して回転しながら面
取りする積層セラミックコンデンサの製造方法におい
て、前記熱処理によるグリーンチップの重量減少率が1
〜4%の範囲内であることを特徴とするものであり、面
取り時のグリーンチップの塑性的異常変形を防止し、適
正な面取りができるという作用を有する。
【0029】本発明の実施において使用するチタン酸バ
リウム粉末は、平均粒子径と粒子径分布の幅が小さいも
のが好ましい。また、反応性についてはそれが小さい方
がB特性あるいはX7R特性の発現が容易であるので、
結晶化度の高い粉末を使用するのが好ましい。このよう
なチタン酸バリウム粉末を製造する工程において混入す
る不純物としては、バリウム以外のアルカリ土類金属や
鉄、珪素及びアルミニウム等があるが、これら不純物は
数千ppmのオーダで含有されていても特に支障はな
い。
【0030】チタン酸バリウム粉末を混合するコロイド
状懸濁液の出発材料であるCa及びBaの酢酸塩及びS
iのアルコキシドは一般的市販品が使え、これらに含有
される不純物は似通った化学的性質を有する金属である
ため、前述のチタン酸バリウムと同様に数千ppmのオ
ーダで含有されていても特に支障はない。また、アルコ
キシドを溶解させるエタノールも一般的な市販品が使用
できる。
【0031】これら酢酸塩やアルコキシドは水−エタノ
ール溶液中で水和したイオンとして存在し、後のアンモ
ニア水の滴下によって微細な水酸化物をコロイド状懸濁
液の形で生成し、これをチタン酸バリウムと混合した
際、均一な状態で分散されるのが望ましい為、アンモニ
ア水の濃度は1モル/リットル以下、工程の設備的、時
間的余裕がある場合にはより低濃度にするのが望まし
い。アンモニア水の濃度が1モル/リットルを超えて濃
厚になると、前述の水酸化物が偏って生成し組成的に不
均一な状態でチタン酸バリウム粉末と混合される為、最
終的に組成不均一な耐還元性誘電体組成物となり、本発
明の意図するところとは全く異なった結果となる。
【0032】チタン酸バリウム粉末に対して添加される
各添加物の量は、製造する積層セラミックコンデンサの
誘電率と誘電体損失、静電容量の温度変化率、絶縁抵
抗、絶縁破壊電圧、高温負荷寿命及び焼成温度における
耐還元性の観点から限定される。チタン酸バリウム10
0モルに対しDy23が1.0モルを超えると焼成によ
る緻密化が不完全になる為誘電率が低下し、また0.0
3モル未満になると静電容量の温度変化率が大きくな
り、高温負荷寿命が短くなる。チタン酸バリウム100
モルに対しMgOが1.0モルを超えると誘電率の低下
と誘電体損失の増大を招き、また0.03モル未満にな
ると焼成温度における耐還元性が損なわれ、電気特性及
び寿命の全般にわたって劣化する。チタン酸バリウム1
00モルに対しMn34が1.0モルを超えると誘電体
損失が増加し、また0.03モル未満になると絶縁抵抗
及び絶縁破壊電圧が低下し、高温負荷寿命が短くなる。
【0033】さらに、Ca及びBaに関しては、チタン
酸バリウム100モルに対しCa及びBa成分の内少な
くとも1種が1.5モルを超えると誘電率が低下すると
共に高温負荷寿命が劣化し、また0.5モル未満になる
と焼結助剤としての効果が得られず、焼成による緻密化
が不完全となり最適焼成温度が高くなる。Si成分に関
しても同様に、3.0モルを超えると誘電率が低下する
と共に高温負荷寿命が劣化し、また1.0モル未満にな
るとと焼結助剤としての効果が得られず、焼成による緻
密化が不完全となる。
【0034】
【実施例】次に、本発明の具体例を説明する。
【0035】(実施例1)実験の概略は、(表1)に示
した組成表に従って、主成分であるBaTiO3粉末
(堺化学製BT−03)と添加剤であるDy23、Mg
O及びMn34の配合物と、Ca,Ba及びSiより成
る焼結助剤成分のコロイド状懸濁液をボールミルで混合
して各々の出発原料粉末を作製する。
【0036】
【表1】
【0037】使用する原材料のメーカとグレードは(表
2)にまとめて記載した。
【0038】
【表2】
【0039】次に、作製した粉末を使用して、形状が3
216サイズで定格電圧が630VDCを保証し100
00PFの静電容量値が取得可能な積層セラミックコン
デンサを試作して総合評価する。
【0040】以下に積層セラミックコンデンサの詳細な
試作手順と評価方法について説明する。
【0041】主成分であるBaTiO3粉末及び添加剤
であるDy23、MgO及びMn3 4の各粉末を(表
1)の組成表に基ずいて電子天秤で所定量を秤量し、5
mmφのZrO2質ボールが350g入った内容積が6
00CCのポリエチレン製ポットミル中に投入する。次
にBa、Caの酢酸塩及びTEOS(テトラエトキシシ
ラン)の所定量を電子天秤で秤量した後、酢酸塩は10
0CCの純水に、またTEOSは150CCのエタノー
ルに別々に溶解させる。そして、該水溶液をエタノール
溶液中に投入して攪拌を続けながら1規定のアンモニア
水を所定量滴下して、焼結助剤成分より成るコロイド状
懸濁液を得た。次に、該コロイド状懸濁液を上記ボール
ミル中に投入し100rpmの回転速度で20時間混合
した。混合物は150メッシュのシルクスクリーンで濾
過して、テフロンシートを敷いたステンレスバット中に
投入し、ドラフト中で加温しながらエタノール分を揮発
させ、アルミ泊で蓋をして150゜Cの温度で乾燥し
た。乾燥した塊状物はアルミナ乳鉢中で解砕した後、3
2メッシュのナイロン篩を通過してアルミナ製坩堝に入
れて400゜C/2時間(昇降温速度:200゜C/
H)の条件で熱処理してスラリー用粉末とした。
【0042】次に、内容積が600CCのポリエチレン
製ポットミル中にスラリー用粉末100gと、溶剤とし
て作用する酢酸ブチル、2−n−ブトキシエタノール及
びエタノールさらに可塑剤として作用するブチルベンジ
ルフタレートをそれぞれ所定量投入し、10mmφZr
2ボール440gを用いて100rpmの回転速度で
6時間混合することにより湿潤した。6時間湿潤後、ス
ラリーをスポイドで平滑なガラス板上に滴下して、成膜
し、光学顕微鏡で分散状態を観察して凝集がないことを
確認した。そして、湿潤が完了した上記ボールミルに、
ポリビニルブチラール樹脂より成るビヒクルを50g投
入し100rpmの回転速度で12時間混合してシート
成形用スラリーとした。ここで、ポリビニルブチラール
樹脂と可塑剤としてのブチルベンジルフタレートの合計
比率は粉末に対して9〜18重量%の範囲内であれば後
の積層工程で良好な転写性が得られる。
【0043】次に、該スラリーを150メッシュのシル
クスクリーンで濾過した後、75μmの基体上に成膜し
て20〜25μmの厚みを有するセラミック生シートを
得た。そして、該セラミック生シートと、Niペースト
(住友金属鉱山製NLP−43195)より作製した内部
電極シートを用いて転写工法により所定の層数に積層し
た後、切断してグリーンチップを得た。ここで、セラミ
ック生シートの厚みは10〜60μmの範囲内であれば
工程管理上差し支えない。また、使用するNiペースト
中のNiは気相法若しくは液相法により合成されたも
の、或いは両方法により合成されたものの混合物を使用
できる。
【0044】次に、湿式法で得られたグリーンチップの
面取りを実施した。まず、可塑剤であるブチルベンジル
フタレートを揮発させる為にグリーンチップを160〜
200゜Cの温度で、重量減少率が4〜8%の範囲内に
なる様に熱処理した。そして、このグリーンチップを4
00CCの純水と専用のメディアと共に面取り専用のポ
ットに投入し、205rpmで4〜7分間回転した後、
該グリーンチップを120゜Cで乾燥した。なお、純水
中での面取りでグリーンチップに不具合が生じる場合
は、例えばグリーンチップの重量減少率が1〜4%の範
囲内になる様に熱処理した後、専用のメディアと共にZ
rO2質ポット中に投入して所定の回転速度で回転する
いわゆる乾式法を採用する。
【0045】面取りしたグリーンチップの両端面にNi
ペースト(住友金属鉱山製NLP−43195より作製
したもの)を塗布し120゜Cで10分間乾燥して脱脂
した。脱脂は、該グリーンチップをAS−2100ジル
コニア粉末を敷いた焼成専用のジルコニアコートさや中
に投入して、N2ガス中で400゜Cで4時間保持して
実施した。そして、回転式雰囲気炉により還元雰囲気焼
成を実施した。グリーンガス、CO2及びN2により調整
したNiの平衡酸素分圧よりも2桁低い酸素分圧雰囲気
中で1250゜Cの温度で2時間保持した。なお、グリ
ーンチップの両端面に塗布するNiペーストは該チップ
との良好な密着性を確保する為、チップを形成している
セラミックと同材質のセラミック粉末を10〜20重量
%含有させても差し支えない。
【0046】そして、焼成したチップの両端面にAgを
塗布して大気中600゜Cの温度で焼き付けた後、Ni
鍍金及びSn鍍金を施して積層セラミックコンデンサを
完成させた。
【0047】次に、試作した積層セラミックコンデンサ
の電気特性を評価した。静電容量(Cap)と誘電体損
失(tanδ)はYHP製LCRメータ4284Aを使
用して1V/1KHzの信号電圧下で測定した。絶縁抵
抗値(IR)はアドバンテスト社製絶縁抵抗計R834
0Aを使用して500VDCを1分間印加して測定し
た。絶縁破壊電圧(BDV)は菊水電子製耐圧計を使用
して空気中で直流破壊電圧を測定した。静電容量の温度
変化率(Cap−TC)は恒温槽にYHP製LCRメー
タ4284Aを接続して−55〜+125゜Cの範囲内
で測定した。静電容量と誘電体損失は各々20個測定に
供し、絶縁抵抗値と絶縁破壊電圧は各々10個、温度変
化率は2個測定し、平均値を算出してそれらの結果を
(表3)に示した。
【0048】
【表3】
【0049】ここで、(表3)の試料Noは(表1)の
試料Noに対応している。また、これらの表中の試料N
oに※印を記したものは、電気特性や焼結性などの設定
項目の少なくとも1つについて良好な評価が得られなか
った試料である。
【0050】(表1)及び(表3)より明らかな様に、
チタン酸バリウム100モルに対しDy23が1.0モ
ルを超えると、1250゜Cの焼成で若干焼結性が劣化
するため、静電容量が低下し、また0.03モル未満に
なると静電容量の温度変化率が大きくなる傾向にあっ
た。チタン酸バリウム100モルに対しMgOが1.0
モルを超えると静電容量の低下と誘電体損失の増大を招
き、また0.03モル未満になると焼成時の耐還元性が
損なわれる為、誘電体損失が増大し、絶縁破壊電圧及び
絶縁抵抗が劣化した。チタン酸バリウム100モルに対
しMn34が1.0モルを超えると静電容量の低下と誘
電体損失の増加を招き、また0.03モル未満になると
絶縁抵抗及び絶縁破壊電圧が急激に劣化した。さらに、
焼結助剤成分に関しては、チタン酸バリウム100モル
に対しCa及びBa成分の内少なくとも1種が1.5モ
ルを超えると静電容量が低下し、また0.5モル未満に
なると焼結助剤としての効果が得られず焼結性が損なわ
れる為、絶縁抵抗及び絶縁破壊電圧が劣化した。また、
Si成分に関してはチタン酸バリウム100モルに対し
て1.0モル未満及び3.0モルを超えた場合について
Ca及びBa成分と同様の傾向であった。
【0051】これに対し、主成分のBaTiO3粉末1
00モルに対して、Dy23、MgO及びMn34の内
から選ばれた少なくとも1種以上を各々0.03〜1.
0モル含み、且つ主成分のBaTiO3粉末100モル
に対してCa及びBa成分の内少なくとも1種以上を各
々0.5〜1.5モル、Si成分を1.0〜3.0モル
含む組成物により作製した積層セラミックコンデンサは
良好な焼結性と電気特性とを有し、またEIA規格X7
R特性及びJIS規格B特性を満足し、形状が3216
サイズで定格電圧が630VDCを保証し、10000
PFの静電容量値を有する中高圧用積層セラミックコン
デンサとして使用可能なものであった。
【0052】以上のように、本発明の耐還元性誘電体組
成物によれば、良好な焼結性と電気特性を有し、内部電
極としてNiを用いた中高圧用積層セラミックコンデン
サを実現することができる。
【0053】(実施例2)主成分であるBaTiO3
末及び添加剤であるDy23、MgO及びMn3 4の各
粉末を((表1)のRunNo.17組成に基ずいて電
子天秤で所定量を秤量し、5mmφのZrO2質ボール
が2100g入った内容積が2800CCのボールミル
中に投入する。次にBa、Caの酢酸塩及びTEOS
(テトラエトキシシラン)の所定量を電子天秤で秤量し
た後、酢酸塩は600CCの純水に、またTEOSは9
00CCのエタノールに別々に溶解させる。そして、該
水溶液をエタノール溶液中に投入して攪拌を続けながら
1規定のアンモニア水を240CC滴下して、焼結助剤
成分より成るコロイド状懸濁液を得た。次に、該コロイ
ド状懸濁液を上記ボールミル中に投入し50rpmの回
転速度で20時間混合した。混合物は150メッシュの
シルクスクリーンで濾過して、テフロンシートを敷いた
ステンレスバット中に投入し、ドラフト中で加温しなが
らエタノール分を揮発させ、アルミ泊で蓋をして150
゜Cの温度で乾燥した。乾燥した塊状物はアルミナ乳鉢
中で解砕した後、32メッシュのナイロン篩を通過して
アルミナ製坩堝に入れて400゜C/2時間(昇降温速
度:200゜C/H)の条件で熱処理してスラリー用粉
末を約700g作製した。
【0054】次に、内容積が900CCのポリエチレン
製ポット中に作製した粉末を300g、酢酸ブチルを1
05g、2−n−ブトキシエタノールを50g及びエタ
ノールを3gさらにブチルベンジルフタレートを1.5
g投入し、10mmφZrO 2ボール1320gを用い
て100rpmの回転速度で15時間混合することによ
り湿潤した。そして、湿潤が完了した上記ボールミル中
に、ポリビニルブチラール樹脂より成るビヒクルを14
6g投入し100rpmの回転速度で6時間混合してシ
ート成形用スラリーとした。ここで、ポリビニルブチラ
ール樹脂とブチルベンジルフタレートの合計比率は粉末
に対して14重量%である。
【0055】次に、該スラリーを150メッシュのシル
クスクリーンで濾過した後、75μmの基体上に成膜し
て24〜28μmの厚みを有するセラミック生シートを
得た。そして、設計に基ずいて該セラミック生シート
と、Niペースト(住友金属鉱山製NLP−43195)
より作製した内部電極シートを用いて転写工法により積
層した。すなわち、有効層は12層で、1層を3枚のセ
ラミック生シートで構成し、また寸法調整及び内部気密
封止の為に有効層を挟む上下の誘電体層は製品寸法の規
格値を考慮して各々14枚のセラミック生シートで構成
した。そして、積層体を専用の切断機で切断して、長
さ:4.0mm、幅:2.03mm、厚み:1.50m
mのグリーンチップを得た。
【0056】得られたグリーンチップは、乾燥機を用い
て200゜Cの温度で熱処理して硬化させた。この時の
グリーンチップの重量減少率は5.8%であった。そし
て、このグリーンチップを400CCの純水と専用のメ
ディアと共に専用のポットに投入し、205rpmで5
分間回転して面取りした後、該グリーンチップを120
゜Cで乾燥した。
【0057】次に、面取りしたグリーンチップの内部電
極層の終端部分が露出している両端面にNi系のペース
ト(住友金属鉱山製NLP−43195より作製したも
の)を塗布し120゜Cで10分間乾燥して、脱脂し
た。脱脂は、該グリーンチップをAS−2100ジルコ
ニア粉末を敷いた焼成専用のジルコニアコートさや中に
投入して、N2ガス中で400゜Cで4時間保持して実
施した。そして、(株)モトヤマ製回転式雰囲気炉を用
いてグリーンガス、CO2及びN2により調整した雰囲気
中で1250゜Cの温度で2時間保持しと焼成した。
【0058】そして、焼成チップの両端面に(株)ナミ
ックス製Agペーストを塗布して大気中600゜Cの温
度で焼き付けた後、Ni鍍金及びSn鍍金を施して積層
セラミックコンデンサを完成させた。
【0059】図1は、作製した本発明の積層セラミック
コンデンサの断面斜視図である。ここに、11は約51
μmの膜厚を有する誘電体層であり、12は約3μmの
膜厚を有する内部電極層であり、また端子電極としては
13が内部電極層12に接続しているNi系電極であ
り、14がAg電極である。さらに、Ag電極14の上
に鍍金層15として半田耐熱性及び半田付け性を考慮し
てNi鍍金及びSn鍍金が施されている。
【0060】それによると、誘電体層と内部電極層及び
誘電体層同士の界面に積層不良による層間剥離や亀裂が
なく、優れた内部構造を有していた。また、誘電体層1
1を希硝酸でエッチングした後、走査型電子顕微鏡で微
構造を観察した。誘電体層を形成しているセラミックの
結晶粒子径は約0.5μmで、ほぼ球状をなし、しかも
大きさは均一で、全体的に非常に緻密で均質な組織を有
していた。
【0061】次に、作製した積層セラミックコンデンサ
の寸法と電気特性を測定したところ、設計通り寸法は3
216サイズの規格値を満足し、また静電容量、誘電体
損失、絶縁抵抗、絶縁破壊電圧及び静電容量の温度変化
率も設計品種である630VDC定格の10000PF
品(EIA規格X7R特性及びJIS規格B特性)の規
格値を満足していた。そして、作製した本発明の積層セ
ラミックコンデンサと、従来の耐還元性誘電体組成物を
用いて従来の製造方法により作製した積層セラミックコ
ンデンサのDCバイアス電圧に対する静電容量の変化率
を測定した。すなわち、YHP製LCRメータ4284
Aに接続した安定化直流電源の電圧を徐々に増加して、
1V/1KHzの信号電圧下における積層セラミックコ
ンデンサの静電容量を実測し、結果を図2に示した。そ
れによると、Bの従来の積層セラミックコンデンサはセ
ラミック誘電体層の1μmの膜厚に対して4.0VDC
のDCバイアス電圧を印加した時の静電容量の減少率が
40%を超えたのに対して、Aの本発明の積層セラミッ
クコンデンサは静電容量の減少率が30%程度であり、
スイッチング電源回路やDC−DCコンバータ回路等の
用途に対して回路設計上非常に有利であることが判明し
た。
【0062】さらに、本発明の積層セラミックコンデン
サの耐久信頼性を評価する為に温度で高温負荷寿命試験
を実施した。85゜Cの恒温槽中にセットした50個の
コンデンサに1260VDCの直流電圧を印加して、所
定の印加時間における静電容量と絶縁抵抗を測定し、各
々の平均値を算出した。結果を図3に示したが、それに
よると1000時間印加後、静電容量の大きな低下は無
く、また絶縁抵抗も安定しており、本発明の積層セラミ
ックコンデンサは優れた耐久信頼性を有していた。
【0063】以上の様に本発明の積層セラミックコンデ
ンサの製造方法によれば、セラミックの結晶粒子が球状
で且つ大きさが均一で粒子径が0.5μm程度の非常に
緻密な微細構造を有する誘電体層が得られるため、電気
特性及びDCバイアス特性と耐久信頼性に優れた中高圧
用積層セラミックコンデンサを実現することができる。
【0064】
【発明の効果】以上の様に本発明によれば、Ca、Ba
及びSi成分を含むコロイド状懸濁液を主成分のBaT
iO3粉末及び微量の添加剤と共に混合することにより
作製した耐還元性誘電体組成物であるため、セラミック
の結晶粒子径が微細で、非常に緻密で均一な組織を有す
る誘電体層が実現できるため、電気的特性及び耐久信頼
性に優れた積層セラミックコンデンサが得られる。
【0065】また、本発明による積層セラミックコンデ
ンサは絶縁破壊電圧が高く、DCバイアス電圧に対して
静電容量の減少率が小さいため中高圧用としてスイッチ
ング電源回路等に適用した場合、優れたノイズ吸収性能
を発揮するという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層セラミックコンデンサの断面斜視
【図2】DCバイアス電圧に対する静電容量の変化率を
示すグラフ
【図3】本発明の積層セラミックコンデンサの高温負荷
寿命特性を示すグラフ
【符号の説明】
11 誘電体層 12 内部電極層 13 Ni系電極 14 Ag電極 15 鍍金層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金山 熊夫 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 山本 益裕 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 岡野 和之 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 4G031 AA03 AA04 AA06 AA07 AA11 AA19 AA30 AA39 BA09 CA03 CA04 CA08 GA01 GA05 GA15 5E001 AB03 AC03 AC04 AC09 AD03 AE00 AE02 AE03 AE04 AF00 AF06 AH01 AH07 AH08 AH09 AJ01 AJ02 AJ03 5G303 AA01 AB02 AB06 AB07 AB11 AB14 AB20 BA12 CA01 CB03 CB06 CB17 CB18 CB30 CB35 CB41 DA06

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】焼結助剤として作用する成分を含むコロイ
    ド状懸濁液を作製する工程と、該コロイド状懸濁液を主
    成分の粉末及び微量の添加剤と共に混合して原料粉末を
    作製する工程とを順次行うことにより製造した耐還元性
    誘電体組成物。
  2. 【請求項2】Ca及びBaの酢酸塩水溶液とSiの金属
    アルコキシドエタノール溶液を攪拌混合しながらアンモ
    ニア水を滴下してCa、Ba及びSi成分を含むコロイ
    ド状懸濁液を作製する工程と、該コロイド状懸濁液を主
    成分のBaTiO3粉末及び微量の添加剤と共に混合し
    て原料粉末を作製する工程とを順次行うことにより製造
    した耐還元性誘電体組成物。
  3. 【請求項3】前記、コロイド状懸濁液は主成分のBaT
    iO3粉末100モルに対してCa及びBa成分の内少
    なくとも1種以上を各々0.5〜1.5モル、Si成分
    を1.0〜3.0モル含むことを特徴とする請求項2記
    載の耐還元性誘電体組成物。
  4. 【請求項4】前記、添加剤は主成分のBaTiO3粉末
    100モルに対して各々0.03〜1.0モルのDy2
    3、MgO及びMn34の内から選ばれた少なくとも
    1種類以上を含むことを特徴とする請求項2記載の耐還
    元性誘電体組成物。
  5. 【請求項5】耐還元性誘電体組成物より成るセラミック
    誘電体層と、Ni或いはNiを主成分とする合金より成
    る内部電極層が交互に複数積層され、内部電極層の終端
    部分が露出した両端面に端子電極が設けられた積層セラ
    ミックコンデンサにおいて、前記セラミック誘電体層を
    構成しているセラミックの結晶粒子は球状で且つ大きさ
    が均一で、粒子径が0.3〜0.8μmの範囲内にある
    ことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
  6. 【請求項6】耐還元性誘電体組成物より成るセラミック
    誘電体層と、Ni或いはNiを主成分とする合金より成
    る内部電極層が交互に複数積層され、内部電極層の終端
    部分が露出した両端面に端子電極が設けられた積層セラ
    ミックコンデンサにおいて、前記内部電極層の膜厚が2
    〜5μmの範囲内にあることを特徴とする積層セラミッ
    クコンデンサ。
  7. 【請求項7】耐還元性誘電体組成物より成るセラミック
    誘電体層と、Ni或いはNiを主成分とする合金より成
    る内部電極層が交互に複数積層され、内部電極層の終端
    部分が露出した両端面に端子電極が設けられた積層セラ
    ミックコンデンサにおいて、前記端子電極はNi或いは
    Niを主成分とする合金の上にAgが付与され、その上
    にNi鍍金及びSn若しくは半田鍍金が形成された4層
    構造であることを特徴とする積層セラミックコンデン
    サ。
  8. 【請求項8】耐還元性誘電体組成物より成るセラミック
    誘電体層と、Ni或いはNiを主成分とする合金より成
    る内部電極層が交互に複数積層され、内部電極層の終端
    部分が露出した両端面に端子電極が設けられた積層セラ
    ミックコンデンサにおいて、セラミック誘電体層の膜厚
    に対して4.0VDC/μmのDCバイアス電圧を印加
    した時の静電容量減少率が35%以下であることを特徴
    とする積層セラミックコンデンサ。
  9. 【請求項9】耐還元性誘電体組成物の原料粉末を樹脂、
    可塑剤及び溶剤から成るビヒクル中に分散してスラリー
    とし、該スラリーを基体上に塗布して10〜60μmの
    厚みのセラミック生シートを形成する積層セラミックコ
    ンデンサの製造方法において、前記樹脂と可塑剤の合計
    比率が原料粉末に対して9〜18重量%の範囲内にある
    ことを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方
    法。
  10. 【請求項10】基体上に耐還元性誘電体組成物の原料粉
    末より成るスラリーを塗布して形成したセラミック生シ
    ートと、基体上にNi或いはNiを主成分とする合金よ
    り成るペーストを印刷して形成した内部電極シートを交
    互に複数積層することによりラミネート体を得る積層セ
    ラミックコンデンサの製造方法において、前記ペースト
    が液相法により合成されたNi或いはNiを主成分とす
    る合金を含むことを特徴とする積層セラミックコンデン
    サの製造方法。
  11. 【請求項11】前記、Ni或いはNiを主成分とする合
    金より成るペーストは、セラミック誘電体層を構成する
    耐還元性誘電体組成物と同じ材質のセラミック粉末を1
    0〜20重量%含むことを特徴とする請求項10に記載
    の積層セラミックコンデンサの製造方法。
  12. 【請求項12】耐還元性誘電体組成物から成るセラミッ
    ク生シートとNi或いはNiを主成分とする合金から成
    る内部電極シートより形成されたラミネート体を切断し
    てグリーンチップとし、該グリーンチップを熱処理した
    後、水及びメディアと共にバレル中に投入して回転しな
    がら面取りする積層セラミックコンデンサの製造方法に
    おいて、前記熱処理によるグリーンチップの重量減少率
    が4〜8%の範囲内であることを特徴とする積層セラミ
    ックコンデンサの製造方法。
  13. 【請求項13】耐還元性誘電体組成物から成るセラミッ
    ク生シートとNi或いはNiを主成分とする合金から成
    る内部電極シートより形成されたラミネート体を切断し
    てグリーンチップとし、該グリーンチップを熱処理した
    後、メディアと共にジルコニア質ポットに投入して回転
    しながら面取りする積層セラミックコンデンサの製造方
    法において、前記熱処理によるグリーンチップの重量減
    少率が1〜4%の範囲内であることを特徴とする積層セ
    ラミックコンデンサの製造方法。
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